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第 27 回日本内視鏡外科学会総会 ランチョンセミナー 6
内視鏡下手術における超音波技術
の有用性
第 27 回日本内視鏡外科学会総会が 2014 年 10 月 2 日(木)∼ 4 日(土)の 3 日間にわたり,盛岡地域交流センター・マリオス(盛岡市)
など 4 会場で開催された。2 日に行われた日立アロカメディカル株式会社共催のランチョンセミナー 6 では,日本赤十字社医療センター院
長の幕内雅敏氏を座長に,がん研有明病院消化器外科副医長の石沢武彰氏と岩手医科大学医学部外科学講座講師の新田浩幸氏が「内視
鏡下手術における超音波技術の有用性」をテーマに講演した。
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講演
Report
腹腔鏡手術における視触診支援
∼Real-time Tissue Elastography と周辺技術∼
石沢 武彰
がん研有明病院消化器外科
人間の五感は,それぞれが相互作用し,
示され,歪みの小さい部分は硬い組織と
することで感度,特異度を向上させる研
時には変換されて知覚される。手術におい
して青く表示される。2003 年に RTE を
究を行っている。
て重要な感覚は,触覚と視覚である。本講
搭載した超音波診断装置が発売され,
第 2 の役割は,触診の代わりに腫瘍を
演のテーマであるエラストグラフィは,触
2009 年に術中用探触子が,2010 年に腹
同定することである。当院では,開腹肝
覚の情報を視覚的に表現し,変換するため
腔鏡下手術用探触子が RTE に対応し,
転移切除例で,主病変とは別に S 8 に造
の技術のひとつであると考える。
術中に使用できるようになった。
影超音波 Kupffer 相で新規病変が描出
エラストグラフィの概要と
肝切除における役割
腫瘤性病変に対するエラストグラフィ
され,触知不可であったが RTE で硬い
は,前立腺,甲状腺,乳腺など徐々に
しこりとして描出されたことから追加切
適応領域を広げ,肝臓については加藤
除を行い,大腸がん転移の診断がついた
エラストグラフィは,振動エネルギー
ら 1)や井上ら 2)が報告しているように,
症例を経験している。
と画像情報の計算方法から,大きく4 つ
術中 RTE の研究が行われている。
当院では腹 腔 鏡 下 肝 切除における
に分類される。日立アロカメディカル社
肝切除における RTE の役割としては,
RTEの有効性について,日立アロカメディ
の Real-time Tissue Elastography
第 1 に腫瘤性病変における質的診断の
カル社製超音波診断装置「ARIETTA
(RTE)は,手動で振動を与えて歪みを計
補助がある。加藤らは,RTE で組織の
60」を用いて評価を行ったので,以下に
算して画像化する Strain Elastography
硬さと分布を評価し,良性腫瘍,肝細
症例を紹介する。プローブは,RTE に
の技術である。周辺組織よりも歪みが大
胞がん,腺癌を診断する分類法 を提
対応した腹腔鏡下手術用探触子「UST-
きい部分は,軟らかい組織として赤く表
案しており,井上らはさらに細かく分類
5418」を使用している。
a
図 1 症例 1:肝転移切除(S 3)の RTE
88 INNERVISION (29・12) 2014
1)
b
図 2 症例 1:肝転移切除(S 3)の造影超音波画像
〈0913 - 8919 / 14 /¥300 / 論文 /JCOPY〉
第 27 回日本内視鏡外科学会総会 ランチョンセミナー 6
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a
b
図 3 症例 2:肝転移切除(S 7 / 8)の RTE
また,われわれは術中画像情報として
a
b
図 4 症例 3:RTE による肝転移 / 血管腫
の鑑別
図 5 症例 4:RTE による肝転移 / 肝細胞がん
の鑑別
●症例 3:肝転移 / 血管腫の鑑別
劣るが,このデメリットに対して硬さを
ICG 蛍光法を用いている。術前に投与し
症例 3 は,大腸がん肝転移術後経過
画像化する RTE を活用できると考えて
たICG が,肝細胞がんや大腸がん肝転移
観察の CT と MRI で,S 7 と S 3 に新規病
いる。
の組織周辺に集積する現象を応用して術
変が見つかった。小結節ではあるがサイ
一方,視覚については,開腹手術より
中イメージングを行い,腫瘍や切離範囲
ズが増大していたため,大腸がん肝転移
も腹腔鏡手術の方が優れていると考える。
同定,新規病変の検出に役立てている。
を疑い切除した。術中造影超音波では,
これまで“腹腔鏡だから見えた”という
境界明瞭な腫瘍として描出されたが,造
ような経験はほとんどないため,昨今議
症例提示
●症例 1:肝転移切除(S 3)
症例1は,大腸がんの肝転移で S 3 表面
影超音波前に行った RTE では,腫瘍は
論されている拡大視効果については疑問
青く描出されていなかった(図 4 a)。最
があるが,頭側・背側など,状況によっ
終的に,肉眼的また病理学的にも血管
ては視野が非常に良い。また,今後は
に病変がある症例である。RTEで,画面
腫と診断されたことから,RTE での診
画像診断や画像修飾の技術開発がさら
下部に表示されるインジケータを参考に
断が正しい症例であった。
適切な圧でプローブを当てると,病変は
●症例 4:肝転移 / 肝細胞がんの鑑別
に盛んになると思われるが,その画像を
硬い腫瘍として青く表示された(図1b)。
症例 4 は,B 型慢性肝炎のある症例で,
う腹腔鏡手術は非常に有利である。
腹腔鏡手術では,造影超音波も欠か
直腸がんの術前 CT 検査で S 4,S 8 の境
当院では,
「開腹手術からの“継続”
せない診断法である。造影超音波(図 2)
界に中肝静脈に接するように腫瘍が確
と“創造”
」を目標に,腹腔鏡手術に取
では腫瘍と本幹からグリソン鞘 3(G 3)
認された。腫瘍マーカーは正常であった
り組んでいる。開腹手術の根治性と技
末梢を確認でき,手術では G 3 を温存し
が,その他の所見から肝転移と考え,術
術的な安全性,そして,術後の機能温
活用する上で,もともとモニタを見て行
た半球状切除をめざして,プリングル法
前診断は確定的ではなかったが切除を
存に配慮した手術といったものは,腹腔
を用いてバイポーラ鉗子によるペアン破
行った。
鏡手術でも当然ながら受け継ぐべきであ
砕法で肝離断を進めた。再度超音波検
RTE では腫瘍の一部に硬さが認めら
る。ただし,開腹手術とはアプローチが
査を行うと,離断線が明瞭に描出され,
れ(図 5 a),造影超音波では Kupffer 相
異なるため,同じクオリティを保つため
G 3 の温存が可能と判断し,予定通りに
で造影欠損が見られた(図 5 c)。腹腔鏡
には,さまざまな面でイノベーションが
半球状切除を行った。腹腔鏡下手術用
手術にて部分切除を行い,中肝静脈も
必要であり,その 1 つが視覚情報の活用
の UST- 5418 は,手元の操作で探触子
合併切除して 5 mm のマージンを取った。
である。触 覚を支 援する技 術として
を 4 方向に向けることができ非常に視野
最終的に,病理診断で肝細胞がんと判
RTE がさらに発展することを期待し,ま
が良いことから,手術では不可欠である。
明した。
た,その発展に貢献したいと考えている。
本症例は,転移であればもう少し多く
症例 2 は,異時性単発の肝転移の症
のマージンを取るべきであり,肝細胞が
●参考文献
1)Kato, K., et al:Intra-operative application of
real-time tissue elastography for the diagnosis
of liver tumours. Liver International , 28・9,
1264 ∼ 1271, 2008.
2)Inoue, Y., et al:Intra-operative freehand realtime elastography for small focal liver lesions;
“Visual palpation”for non-palpable tumors.
Surgery , 148・5, 1000 ∼ 1011, 2010.
●症例 2:肝転移切除(S 7 / 8)
例である(図 3)。腹腔鏡画像で肝表に突
んとの診断がついていれば,開腹手術で
出した白い結節を確認したが,ICG 蛍光
S 4,S 8 の一部の系統的切除をすべき症
像で内側に広がる蛍光領域が認められ,
例であった。このような病変の鑑別に,
こちらが腫瘍本体であると考えられた。
RTE が非常に有用な情報を提供しうる
RTE でも,蛍光領域と同じ場所に腫瘍
と考えられる。
が認められた(図 3 b)。この症例は 92 歳
と高齢のため非常に肝臓がもろく,腫瘍
腹腔鏡手術を支援する RTE
と周辺組織の硬さの差が大きいことから,
腹腔鏡手術にはメリットとデメリット
RTE では腫瘍が硬い結節として明瞭に
がある。触覚は,手のひらで肝全体や腫
描出された。
瘍に触れることができる開 腹 手 術に
石沢 武彰 (Ishizawa Takeaki)
2000 年 千葉大学医学部卒業。東京逓信病院,東京大学
医学部附属病院などを経て,2009 年 東京大学大学院
医 学 系 研 究 科 にて 博 士 号 取 得。2011 年 パリ・Institut
Mutualiste Montsouris IHPBAフェロー。2013 年 東京大
学医学部附属病院人工臓器・移植外科特任講師。2014 年∼
がん研有明病院消化器外科副医長。
INNERVISION (29・12) 2014 89
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