当日配布資料(0.99MB)

N型糖タンパク質糖鎖のコア構造の
型糖タンパク質糖鎖のコア構造の
効率的生産技術の開発
新潟大学 農学部 応用生物化学科
特定研究員 仁平 高則
1
糖鎖・複合糖鎖
糖鎖
各種単糖類(グルコース,ガラクトース,マンノース,
N-アセチルグルコサミン,フコース,シアル酸など)が
グルコシド結合で連なった一群の化合物。
結合様式,重合度,構成糖による構造多様性に
起因する機能性,分子認識性を有する。
複合糖鎖
タンパク質や脂質などに糖鎖が結合した化合物で,
それぞれ糖タンパク質や糖脂質などと呼ばれる。
N 型糖鎖,O 型糖鎖,糖脂質,GPIアンカー,プロテ
オグリカン,ペプチドグリカン,リポ多糖,S層糖タン
パク質,莢膜多糖など
細胞分化、老化、免疫応答など生命現象
病原体による宿主認識、癌転移、炎症などの疾患に深く関与
2
アスパラギン結合型糖鎖
アスパラギン結合型糖鎖
N 型糖鎖の構造
細胞接着
免疫調整
シグナル伝達
糖タンパク質の安定性・溶解性
β β
コア構造
マンノース
GlcNAc
ガラクトース
シアル酸
β-1,4-Mannosyl-N,N’-diacetylchitobiose
HO
HO
OH
OH
O
OH
NHAc
O
HO
O
O
HO
O
NHAc
OH
OH
62,000 円 / 10 μg
(ProZyme Inc.)
糖鎖およびそのコア構造を安価に
生産できれば,医薬品素材として
有効
3
従来技術とその問題点
(1)有機合成
○多様な構造に
対応
保護
合成
×β-マンノシドなど
合成困難
脱保護
×多段階反応
○厳密な位置選択性
○重合度制御
(2)糖転移酵素
NDP
NDP
×酵素,糖ヌクレオ
チドが不安定
(3)加リン酸分解酵素(ホスホリラーゼ)
4
ホスホリラーゼ
ホスホリラーゼ
+
オリゴ糖
P
リン酸
P
糖1リン酸
+
単糖
可逆反応
厳密な位置選択性
オリゴ糖生産に有効
ホスホリラーゼによる
高純度のオリゴ糖生産
還元末端側の糖の変更に
よるオリゴ糖の多様性増大
5
β-マンノシドホスホリラーゼの探索
マンノシドホスホリラーゼの探索
BT_1033
322AA
18%
R. albus ManGlcP
386AA
56%
58%
335AA
R. albus 1,4-β-Mann P
390AA
B. fragilis ManGlcP
ManGlcP: Mannosylglucose phosphorylase
1,4-β-Mann P: Mannooligosaccharide phosphorylase
amnA phoA mfsT nahA nanH pufA enhA susD susC
B. thetaiotaomicron
?
1038
1033
1032
1035
1036
マンノース
ガラクトース
1032 1033 1034 1035 1036 1037 1038 1039 1040
GlcNAc
シアル酸
amn: α-Mannosidase
pho: GH130 Phosphorylase
mfsT: Major facilitator superfamily transporter
nah: β-N-Acetylhexosaminidase
nanH: α-Sialidase
enh: Endo-β-N-Acetyl-glucosaminidase
sus: Sus(Starch utilization system)-like system
6
β-マンノシドに作用するホスホリラーゼの発見
マンノシドに作用するホスホリラーゼの発見
HO
HO
HO
OH
O
Man1P
GlcNAc
+ R OH
O
O
P OO-
Activity of BT_1033
Km
(mM)
ROH
GlcNAc
HO
HO
HO
OH
O
OR
+
O
HO P O O-
GlcNAc 2
3.8
27
kcat
(s-1)
kcat/Km
(mM-1s-1)
37
9.6
22
0.8
反応生成物
β-1,4-Mannosyl N-acetyl glucosamine phosphorylase
NMR
ManGlcNAc
Pi
α-Mannosyl
1-phosphate
GlcNAc
Nihira et al., J. Biol. Chem., 288, 27366 (2013).
7
N 型糖鎖コア構造の生産法の開発
新規酵素4-O-β-D-mannosyl-N-acetyl-D-glucosamine phosphorylaseの発見
Synthesis
αマンノース1-リン酸
β-1,41,4-マンノシルN
マンノシルNアセチルグルコサミン
N-アセチルグルコサミン
Synthesis
HO
HO
OH
OH
O
O
N,N’-ジアセチルキトビオース
OH
NHAc
HO
O
OH
αマンノース1-リン酸
リン酸
O
HO
O
OH
NHAc
β-1,4-マンノシル- N,N’
-ジアセチルキトビオース
リン酸
N,N’-diacetylchitobiose
Core trisacchride of N-linked sugar chain
1 g・・・
¥620,000,000
β-1,4-Mannosyl-N,N’diacetylchitobiose
60 min
10 min
0 min
standard
Retention time(min)
8
ホスホリラーゼによる生産法の問題点
β-1,4-Mannosyl N-acetyl glucosamine phosphorylase
+
+
α-Man1P
GlcNAc
ManGlcNAc
Pi
糖1リン酸が高価
(αMan1P : 834,000円/g)
安価な天然糖質からホスホリラーゼおよび
各種酵素を用いて糖1リン酸を獲得する
9
ホスホリラーゼによるオリゴ糖生産システム
糖1リン酸をつくる
ホスホリラーゼ
安価な糖質
Pi
糖1リン酸
Pi
リン酸
変換
可能ならば
変換・利用
Pi
ホスホリラーゼ
オリゴ糖
オリゴ糖をつくる
糖受容体
10
糖1リン酸の生産および変換
麦芽糖
澱粉
ショ糖
GP
SP
MP
αGlc1P
α-PGM
GalT
GalE
Glc6P
β-PGM
G6PI
βGlc1P
β-グルコシドの合成
M6PI
αGal1P
β-ガラクトシドの合成
PMM
α-グルコシドの合成
αMan1P
β-マンノシドの合成
MP: maltose phosphorylase, SP: sucrose phosphorylase, GP: glycogen phosphorylase, PGM: phosphoglucomutase,
G6PI: glucose 6-phosphate isomerase, M6PI: mannose 6-phosphate isomerase, PMM: phosphomannomutase
11
ManGlcNAcの調製(ショ糖出発)
ManGlcNAcの調製(ショ糖出発)
α-ホスホ P
P グルコムターゼ
スクロース
ホスホリラーゼ
αGlc1P
αGlc1P
ショ糖
Glc6P
Glc6P
Glc6P
イソメラーゼ
P
P
Fru
Fru6P
Fru6P
Man6P
イソメラーゼ
GlcNAc
P
P
ManGlcNAc
ManGlcNAc P αMan1P
αMan1P
ホスホ
Man6P
Man6P
マンノムターゼ
*ManGlcNAcP: β-1,4-Mannosyl N-acetyl glucosamine phosphorylase
*ManGlcNAc: β-1,4-Mannosyl N-acetyl glucosamine
12
ManGlcNAcの調製(ショ糖出発)
ManGlcNAcの調製(ショ糖出発)
250 mM
250 mM
10 mM
100 mM
20 μg/mL
33 μg/mL
340 μg/mL
370 μg/mL
230 μg/mL
2.4 mg/mL
83 μg/mL
ショ糖
N-アセチルグルコサミン
MgCl2
リン酸ナトリウム
グルコース1,6-ビスリン酸
スクロースホスホリラーゼ
α-ホスホグルコムターゼ
グルコース6-リン酸イソメラーゼ
マンノース6-リン酸イソメラーゼ
ホスホマンノムターゼ
ManGlcNAc ホスホリラーゼ
Fructose
Sucrose
ManGlcNAc
30℃
収率42%で合成
0 2 4 6 8
Suc 1 3 5 7 Fru
Time (day) MGN
13
新技術の特徴・従来技術との比較
•従来技術では合成困難なβ-マンノシドを,簡便
に生産することに成功した。
•従来の合成法では,有機溶媒の使用やスケール
アップの点で生成糖の用途が限られていたが,
One-pot酵素合成法により安全性を担保した大量
生産が可能となった。
14
想定される用途
•安全性の高い医薬品の原材料としての用途
をはじめ,医療分野全般,食品分野,化粧
品分野などへの利用が想定される。
•具体的には,疾病用のマーカー,iPSやES細
胞の分化後の識別用マーカー,癌細胞や病
原菌の除去フィルター,ドラッグデリバ
リーシステム,免疫寛容を組み込んだ糖タ
ンパク質製剤としての利用など。
15
実用化に向けた課題
•出発材料にショ糖を用いた生産システムを開発
したが,廃糖蜜などの廃棄物を利用した更なる
低コスト化が可能か検討する必要がある。
•水酸基を修飾した糖を使用した実験データを取
得し,有機合成法と連携をとる場合の条件設定
を行なっていく。
•食品利用の場合,微生物汚染防止の観点から
60℃程度の高温反応が望まれるため,耐熱性
酵素の探索が必要である。
16
企業への期待
•有機合成法,糖転移酵素による合成法など,
従来の技術をもつ医薬品分野の企業で,本技
術で生産されるマンノシドを材料とできる企業
•食品分野の企業で廃棄物(廃糖蜜など)利用を
展開を考えている企業
•キチンオリゴ糖生産技術をもつ水産加工系企業
で,糖鎖合成分野への展開を考えている企業
などで,本技術が有効と考えられ,
共同研究・開発を希望する。
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本技術に関する知的財産権
•発明の名称: オリゴ糖合成酵素およびアスパラギン
結合型糖タンパク質のコア糖鎖構造の
製造方法
•出願番号: 特開2014-045704
新潟大学,農研機構食品総合研究所
•出願人:
中井博之,仁平高則,鈴木絵里香,
•発明者:
大坪研一,北岡本光
他,未公開特許1件
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お問い合わせ先
新潟大学 産学地域連携推進機構
産学地域連携推進センター
TEL 025-262 -7554
FAX 025-262 -7513
e-mail [email protected]
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