C型慢性肝炎について(PDF)

第21回肝臓病教室
C型慢性肝炎について
C型肝炎ウイルス(HCV)
HCVがパチンコ玉くらいと
すると(1.1cm)
HCV
55~65nm
ヒトの肝細胞は・・・
ヒトの肝細胞
20μm
nm:ナノメートル、1ミリの1000分の1の1000分の1
HCVの増殖
★ HCVは肝細胞に感染すると
肝細胞と自分の作る酵素を
利用して増殖します
★ 増殖して肝細胞から分泌
されても、肝細胞が破壊
されることはありません
★ 肝細胞の各装置を利用してせっせと増殖
HCVの構造
1本鎖 RNA:約9500塩基対
p7
5’
C
E1
E2
NS2
NS3
NS4A/B
NS3
NS5A/B
3’
NS5B
NS5A
NS2
C
p7
小胞体膜
NS4A
E1
E2
構造タンパク
プロテアーゼ
NS4B
NS5A
非構造タンパク
ポリメラーゼ
HCV感染の診断
★ HCV感染の診断は、まずHCV抗体の有無で行います
★ HCV抗体が陽性ということは、これまでの人生でHCVに
感染したことがある、ということを示します
HCV抗体が陽性でも、感染が持続しているかどうかは
HCV-RNAの存在の有無を調べないといけません
★ HCV抗体は中和抗体ではなく、感染防御になりません
★ HCV抗体は抗体が認識する部位により多くの種類があります
HCV のコア粒子に対する抗体
C22-3 抗体
JCC-2 抗体
HCV のエンベロープに対する抗体 E2/NS1抗体
HCV の非構造領域に対する抗体
C100-3抗体 NS5抗体
HCVの分類
★ HCVはRNAウイルスであるので高率に変異します
1人の患者さんのなかでも遺伝子配列がわずかに異なる
HCVが混在している状態となっています
世界中でみるとHCVはきわめて多くの種類があります
そこで・・・
塩基配列の60%が同じものをゲノタイプ
塩基配列の80%が同じものをサブタイプ
6種類
40種類以上
塩基配列が異なると同じHCVでも性質が変わります
HCVセロタイプ
NS4領域にゲノタイプにより配列の異なる部分の存在し、
さらにその部分に対する抗体が大きく2つ存在することが
わかりました(C14-1、C14-2)
グループ1
serotype
グループ2
genotype
1a
1b
2a
2b
日本における
頻度
0%
70%
20%
10%
IFN治療効果
低い
低い
高い
中等度
日本人ではC-14抗体陽性率は高いが、C14-1とC14-2両方に反応する場合
(判定保留)や、両方とも反応しない場合(判定不能)があります。
HCV感染の自然史
HCV感染
30%
急性肝炎
70%(感染持続)
HCV自然排除
HCVキャリア
慢性肝炎
慢性肝炎
0.5~5%/年
肝硬変
肝癌
肝硬変
8%/年
30~40年
20~30年
肝不全
治療が急がれるのは
年齢:65歳≦
肝線維化:F2≦
ALT値:30 IU/L<
AFP値:10 ng/mL≦
血小板数:<15 万/μl
C型肝炎の患者さんで、
いずれかの項目に該当する方は、
肝発癌の高リスク群だと
考えられています
C型慢性肝炎の治療
1. C型肝炎ウイルスの排除をめざす治療
いままでは…
★ インターフェロンを中心とした治療
そしてついに
★ インターフェロンを使わない治療
2. 肝臓の炎症を抑える治療(≒肝庇護療法)
C型慢性肝炎治療の変遷
1992 インターフェロン単独療法
2001
2003
2004
2006
インターフェロン、リバビリン併用療法
ペグ・インターフェロン単独療法
ペグ・インターフェロン、リバビリン併用療法
除鉄療法
2011 ペグ・インターフェロン、リバビリン、
直接抗ウイルス薬3者併用療法
2014 経口薬2剤
インターフェロンの発癌抑制効果
◎
C型肝炎ウイルスが排除されれば、発がんのリスクは
著明に低下する。
◎ 効果が一過性であっても、発がんのリスクを
低下させることができる
さらにウイルスを排除できなくても、ALT(GPT)を 80 IU/ml以下に
下げることができれば発癌のリスクが低下すると言われている。
無効
肝
発
が
ん
リ
ス
ク
再燃
著効
治療後期間(年)
C型肝炎ウイルス治療薬の作用機序
抗ウイルス蛋白の誘導
インターフェロン
免疫の誘導
直接作用薬(飲み薬)
プロテアーゼ
HCVに直接作用します
・プロテアーゼ阻害剤
・ポリメラーゼ阻害剤
ポリメラーゼ
NS5A
・NS5A阻害剤
C型肝炎ウイルス
p7
5’
C
E1
E2
主な直接作用薬
NS2
NS3
NS4A/B
プロテアーゼ
NS5A阻害薬
プロテアーゼ阻害薬
・Telaprevir(田辺三菱)
・Boceprevir(Merk)
第二世代:
・Simeprevir(ヤンセン)
・Faldaprevir(ベーリンガー)
・Vaniprevir(MSD)
・Asunaprevir(ブリストル)
・ABT-450(アッヴィ)
・Sovaprevir(Achillion)
・GS-9256(Gilead)
・MK5172(Merk)
・Daclatasvir(ブリストル)
・Ledipasvir(Gilead)
・ABT-267(アッヴィ)
・PPI-668(ベーリンガー)
・PPI-461(Presidio)
・AZD7295(アストラゼネカ)
・GSK2336805(GSK)
・IDX719(Idenix)
第二世代:
・ACH-3102(Achillion)
・MK8742(Merk)
・GS-5816(Gilead)
・EDP239(Novartis)
NS5A/B
NS5A
ポリメラーゼ
ポリメラーゼ阻害薬
核酸型:
・Sofosbuvir(Gilead)
・Mercitabine(Roche)
非核酸型:
・Deleobuvir(ベーリンガー)
・ABT-333(アッヴィ)
・ANA598(Anadys)
・VCH-759(Vertex)
・VCH-916(Vertex)
・PF-868554(Pfizer)
・GS-9190(Gilead)
・MK3281(Merk)
3’
3者併用療法の成績
ペグインターフェロン+リバビリン+シメプレビル
100
91.7
96.8
1型高ウイルス
SVR24率(%)
90
80
70
60
50
38.5
40
30
20
10
0
初回治療
前治療再燃
前治療無効
経口2剤療法の成績
1型高ウイルス
SVR24率(%)
ダクラタスビル+アセナプレビル
100
87.4
90
80.5
90.9
84.7
84.0
合計
なし
80
70
60
50
40
30
20
10
0
不適格・不能
前治療無効
あり
代償性肝硬変
現時点での治療対象
ダクラタスビル+アセナプレビル
NS5A阻害剤
1型高ウイルス
プロテアーゼ阻害剤
★ インターフェロンによる治療が向かない人
貧血、うつ病、血小板減少症、重い心臓病 など
★ インターフェロンによる治療が副作用で
中止になった人
★ インターフェロンによる治療で効果がなかった人
近々でてくる治療
★ バニプレビル+ペグインターフェロン+リバビリン
1型高ウイルス
★ テラプレビル+ペグインターフェロン+リバビリン
2型
★ ソフォスブビル+レディパスビル
2型
1型
薬剤耐性
治療前から薬剤耐性ウイルスを持っている可能性もあります
治療中に薬剤耐性ウイルスに変異する可能性もあります
NS3/4Aプロテアーゼ阻害薬の耐性変異
V36A/M
Telaprevir
Boceprevir
SCH 900518
BILN-2061
ITMN 191
MK 7009
TMC 435
Bl 201335
MK 5172
GS-9256
ABT 450
BMS-791325
T54A
V55A
Q80R/K
R155K/T/Q
A156S
A156V/
T
D168A/V/T/
H
V170A
新しい治療の問題点
★ 薬剤耐性ウイルスについて
◎ もともと耐性ウイルスを持っている場合も
◎ その耐性は将来の新規薬に対しても耐性
◎ 薬剤耐性の検査が保険適応でない
◎ 薬剤耐性検査の信頼度が未知数
★ 直接ウイルス作用薬によるSVRは発癌を抑えるか
★ 高い!
肝臓の炎症を抑える治療
ウルソデオキシコール酸
グリチルリチン製剤(強力ネオミノファーゲンC)
小柴胡湯
インターフェロン少量長期療法
瀉血療法