本科 / 実戦トレーニング期 / Z Study 解答解説編 / 京大コース 化学

 本科 / 実戦トレーニング期 / Z Study 解答解説編 /
京大コース 化学
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XCAR2A-Z1C2-01
《酸化還元滴定》
次の文章を読み,問 1∼問 4 に答えよ。ただし,問 2∼問 4 については有効数字 3 桁で答え
よ。
(25点)
水の汚染度を示すものとして COD(化学的酸素要求量)がある。これは,水中の汚染物質(還
元性有機物)を酸化して,主として無機の酸化物とガス体にするために消費される酸化剤の量
を酸素の量に置き換えたものであり,通常,試料水 1 L 当たりの酸素の質量〔mg〕で与えられ
る。
COD を測定するために,以下のような実験操作ア∼ウを行った。
ア
まず,試料水中の汚染物質(還元性有機物)を酸化するため,用意した試料水 100 mL に硫
酸を加えて酸性にした後,5:00 £ 10¡3 mol=L の過マンガン酸カリウム KMnO4 水溶液を 10.0
mL 加えて十分に反応させた。
ここで加えた KMnO4 の物質量; 5:00 £ 10¡3 £
イ
10:0
〔mol〕
1000
次に,1:25 £ 10¡2 mol=L のシュウ酸ナトリウム Na2 C2 O4 水溶液を 10.0 mL 加えて過剰の
過マンガン酸カリウムを還元した。
ここで加えた Na2 C2 O4 の物質量; 1:25 £ 10¡2 £
ウ
10:0
〔mol〕
1000
次に,5:00 £ 10¡3 mol=L の過マンガン酸カリウム水溶液を加えて滴定を行ったところ,終
点までに 4.80 mL を要した。
ここで加えた KMnO4 の物質量; 5:00 £ 10¡3 £
4:80
〔mol〕
1000
問1
過マンガン酸カリウムとシュウ酸ナトリウムの反応を化学反応式で示せ。
問2
試料水中の汚染物質の酸化に消費された過マンガン酸カリウムの物質量〔mol〕を求め
(6点)
よ。
問3
(5点)
過マンガン酸カリウム 1.00 mol は,酸化剤として酸素 O2 (分子量 32.0)何 mg に相当す
るか。ただし,酸素が酸化剤として働くときの電子 e¡ を含むイオン反応式は以下のとおり
である。
O2 + 4H+ + 4e¡ ¡! 2H2 O
(7点)
XCAR2A-Z1C2-02
MnO4 + 8H+ + 5e¡ ¡! Mn2+ + 4H2 O と電子 e¡ の係数をそろえて MnO4 と O2 を比較。
¡
¡
問4
この試料水の COD〔mg=L〕を求めよ。
(7点)
試料水 1 L 当たりであることに注意! (滴定で用いたのは 100 mL)
解 答
MnO4 ¡ + 8H+ + 5e¡ ¡! Mn2+ + 4H2 O
C2 O4
2¡
¡! 2CO2 + 2e
¡
…………①
……………………………②
①式 £ 2 + ②式 £ 5 より
2MnO4 ¡ + 5C2 O4 2¡ + 16H+
………………③
¡! 2Mn2+ + 10CO2 + 8H2 O
③式の両辺に 2K+ ,10Na+ ,8SO4 2¡ をたして整理すると,化
学反応式が得られる。
答
2KMnO4 + 5Na2 C2 O4 + 8H2 SO4
¡! 2MnSO4 + 10CO2 + 8H2 O + 5Na2 SO4 + K2 SO4
問2
イで使用した Na2 C2 O4 の物質量は
1:25 £ 10¡2 £
10:0
= 1:25 £ 10¡4〔mol〕
1000
この Na2 C2 O4 と反応する KMnO4 は,問 1 より
1:25 £ 10¡4 £
2
= 5:00 £ 10¡5〔mol〕
5
使用したすべての KMnO4 は,ア,ウより
5:00 £ 10¡3 £
10:0
4:80
+ 5:00 £ 10¡3 £
1000
1000
= 7:40 £ 10¡5〔mol〕
よって,汚染物質の酸化に消費された KMnO4 は
7:40 £ 10¡5 ¡ 5:00 £ 10¡5 = 2:40 £ 10¡5〔mol〕
答 2:40 £ 10¡5 mol
問 3
MnO4 ¡ + 8H+ + 5e¡ ¡! Mn2+ + 4H2 O
+
O2 + 4H + 4e
¡
¡! 2H2 O
よ り,1 mol の MnO4 ¡ は 5 mol の 電 子 e¡ を 受 け 取 る。こ れ は
① 式,② 式 を 正 確 に 書 き 出
す。
▲
e¡ を消去するように連立。
▲
れ
答案作成のポイント
実 験 操 作 ア ∼ ウ よ り,
KMnO4 の 量 的 関 係 を 導
く。
▲
KMnO4 と Na2 C2 O4 の電子 e¡ を含むイオン反応式はそれぞ
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
問1
電 子 e¡ の 数 を そ ろ え て
¡
MnO4 と O2 を比較する。
▲
32:0 £ 1:00 £
5
£ 103 = 4:00 £ 104〔mg〕
4
答
問4
4:00 £ 104 mg
問 3 よ り,KMnO4 1:00 mol は 4:00 £ 104 mg の O2 に 相 当 す
る。したがって,試料水 1 L 当たりでは
2:40 £ 10¡5 £ 4:00 £ 104 £
1000
= 9:60〔mg〕
100
答
9:60 mg=L
COD の定義を理解する。
▲ ▲
問 2,問 3 の 答 を 関 連 づ け
て考える。
試料水 1 L 当たりに換算す
る。
▲
5
mol の O2 に相当する。よって,求める O2 (分子量 32.0)の質
4
量は
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
XCAR2A-Z1C2-03
▲
還元剤(汚染物質 +Na2 C2 O4 )
と酸化剤 KMnO4 で授受する
電子の量は等しい。
過剰量:6:50 £ 10¡5 £
▲
なる。
2
5
= 2:60 £ 10¡5〔mol〕
過剰量:2:40 £ 10¡5 £
▲
ア∼ウの操作の順に物質量の関係を図示すると,次のように
5
2
= 6:00 £ 10¡5〔mol〕
滴下量:5:00 £ 10¡3 £
▲
問2
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
解 説
4:80
1000
= 2:40 £ 10¡5〔mol〕
問 1 本問では,酸性水溶液中での KMnO4 水溶液の反応となるが,中性∼塩基性水溶液中ではどの
ような反応が起こるか,液性による KMnO4 水溶液の反応の違いをみてみよう。
酸性水溶液中
MnO4 ¡ + 8H+ + 5e¡ ¡! Mn2+ + 4H2 O
(赤紫色)
(ほとんど無色)
中性∼塩基性水溶液中
MnO4 ¡ + 2H2 O + 3e¡ ¡! MnO2 + 4OH¡
(赤紫色)
(黒色沈殿)
なお,酸性水溶液中の方が酸化力が強いことが知られている。