装備化 - 公益財団法人防衛基盤整備協会

水 上艦用魚雷防御 システム の開発、装備化
株式会社 日立製作所
小澤 義 幸
村上 泰
高野 正 彦
1,は じめに
将来、高性能化 が予想される魚雷 に対 し、現有装備 では高性能魚雷 に対す る防御機能 は
皆無 に近 い状況である。そ こで、高性能魚密 に対 して も十分な防御能力を持つ新 しい魚雷
防御 システムを開発 した。
水 上艦用魚雷防御システム (以下、 「
本 システム」 とい う。)は 、 自艦 に向か つて 高速 で
ー
攻撃 して くる音響ホ ミング魚密 に対 して音響的手段 を用 いて 自艦 を防御する システ
ムで あ り、魚替を捜索、探知、追尾す る 自艦音響セ ンサ、魚雷 に対 して妨害,欺 まんを行
う防御武器及びこれ らの装置 を一元的 に管制する指揮管制部か ら構成される。
本 システムは、防衛省技術研究本部殿 にて試作開発 され、平成 14年 度∼ 16年 度 の技
術試験、平成 15年 度∼ 16年 度 の実用試験 での評価 を経て、平成 19年 度護衛艦 か ら実
艦装備 された国内初のシステムである。
2,本 システムの構成
本 システムは、ツーナー部、防御武器部及び指揮管制部か ら構成 され る。
ソーナー部 は既存 の水上艦用ソーナー 、え い航式パ ッシプソーナー に加 え、魚雷探信音
の捜索 、探知、追尾を行 う魚雷捜索用逆探ソーナーで構成 される。
防御武器部は既存 の え い航具 に加え、魚雷 に対 して音響的妨害 を与 える投射製静止式
ジャマー (FAJ阻
)、魚雷探信音に対する擬似 エコー等 を送波 し、魚雷 を誘引させる自走式デ
〕
コイ {h10D欄
)、FAJ及 び MODを 射出するランチャーで構成 される。
指揮管制部は 16DDH向 け攻撃 ・防御機能 プ ログラム をベー スに魚 雷防御機能 を追加 し
た ものであ り、水上艦 用 ソー ナー シス テム OQQ一()艦 上部 に組み込 まれて いる。
本 システム の概要 を図 1に 示す。
泣)FAJ:王 loating AcoustiCユ
ammerの略
MOD:地 bile ttecOyの
略
OQQ―│)艦 上部
ノ隅
' 夕
“
)
指 揮管制
. _ _ . _ _ _ _ _ .
音響的妨 害
轟
魚雷捜索用逆探ソー
魚 雷探知
護衛艦
潜水艦
図 1.水 上艦用魚雷防御 システムの概要
3.開 発 の 目的
高性能化が予想 される魚雷 に対 し、現有装備では魚雷 防御能力が不足するため、音響的
手段 (妨害,欺 まん)を 用 いた新 しい魚雷防御 システムを開発す ることであ り、主な開発
の 目的は以下のとお りである。
(1)魚 替捜索機能 の向上
従来は既存 の 自艦音響セ ンサによ り魚雷航走音を探知 し、魚雷 の方位及び航走音周波数
を分析す るのみであったが、魚雷捜索用逆探ソーナエ によ り魚雷深信音を探知 し、魚替 の
方位、受信普圧 レベル、探信周波数、パルス幅及び探信周期 の分析 を可能にする。
(2)防 御能力の向上
魚密 に対 して音響的ノイズを送波じ魚雷 の音響能力を低下 させることを可能にする。
また 自ら航走 し、 自艦 の擬似航走普及び魚雷探信音 に対す る擬似 エコー を送波 して魚替
を欺まん し、自艦 と異なる方向へ誘引させる ことを可能にする。
(3)指 揮管制機能 の構築
16DDH向け攻撃 ,防 御機能 プ ログラム をベ ー スに魚宙防御機能 を追加 し、19DD向 け攻
撃 ・防御機能 プ ログラムを構築す る。
4.開 発内容
雷捜索用逆探ソーナー
魚雷投索用逆探 ソーナー は魚雷探信音 の捜索を行 うものであ り、要求 された周波数帯域
4.1 魚
を確 保す るため、逆探アレイ には高感度,広 帯域化 を期待で きる素子 を選定 した。 しか し
アレイに構成 した場合、本 システムの使用周波数帯 では素子 の静電容量が小さ くな り、配
線長 を長 く取る と感度低下するため、受信回路を逆探アレイ内部 の素子近傍 に実装 し、配
線長が最短となるよう設計 したと
また、逆探 ア レイ と入力処理器間の信号伝送 に光通信方式 を採用 したことで、電気信号
で問題 となって いた電線 か らの雑音回 り込みを除去 し、艦艇 が大型化 し入力処理器間の電
路長が長 くなる場合 でも設計変更する ことな く装備す ることが可能である。
4.2 投
射型静止式 ジ ャマー (FAJ)
FAJは 魚雷 に対 して音響ノイズを送波 し、魚雷 の音響能力を低下 させるものである。FAJ
に要求 される妨害機能は広帯域ノイズを連続的 に送波 し、送波 レベルは研試時 よ りも高 い
レベルが要求 され、 これを研試時 と同等の音響体に収納する必要があった。 このため送波
感度が高 く指向性利得 の大きい送波器方式 を採用 し、送信回路は送波器 とのマ ッチ ングを
確保 し、かつ小型で高効率 の送信回路を開発 した。また高出力化 に伴 う放熱対策や海水電
池の性能向上等 について も検討を行 い、要求された広帯域 ノイズの連続送波 を可能 とした。
4.3 自
走式デ コイ (MOD}
MODは 自ら航走 し、魚替 に対 して音響的欺 まんを行 うことによ り魚雷 を誘 引す るもの
である。MODの 音響欺 まんモー ドは、魚密 の作動 に合わせてアクテ ィプ、パ ッシプ及 び
そ の組合せ となる コ ンビネー ションの 3通 りを開発 した。以下 に音響欺 まんモー ドの概
要 を示す。
(1)ア クティプモー ド
魚留探信音に対 し、擬似エコー を生成 し返信する。
{2)パ ッシプモー ド
水上艦 (自艦)の 航走音を模擬 した広帯域連続音を送出する。
(3)コ ンビネー ションモー ド
MOD発 射後はパ ッシプモー ドで作動 し、魚雷探信音を受信 した場合 はアクティプモー
ドに切替る。魚雷探信音を 10秒以上連続 して受信 しな い場合は、パ ッシプモー ドに
切替る。
4.4 指
揮管制機能
16DDH向け攻撃 ・防御機能 プ ログラムをベー スに、以下 の魚雷防御機能 を追加 し、19DD
向け攻撃 ・防御機能 プ ログラム を構築 した。
(1)自 艦音響セ ンサか らの探知情報 に基づき、魚雷 の位置局限を行 う。
(2)母 解音響セ ンサか らの探知情報 に基づき、FAJ及び MODの 発射方位 の リコメン ドを
行 う。
(3)l10Dの調定 、FAJ及び l10Dの
発射管制を行 う。
( 4 ) 白 艦音響セ ンサか らの探知情報 に基づき、 白1 監
の い1 避針路及 び速力 の リコ メン ドを
予う。
作
5. お オ
つりに
この度 、 「
水上艦川魚 宙防御 システムの 開発、装備化」 に対 しま して高 い評価 を頂 き、防
衛基盤整備 脇会F t を受賞できま した ことを大変光栄 に思 ってお ります。
コの受賞 を 励み とし、今後 もお客様 に必 要 とされ る防衛 装備i l i 1 1開発
今に
の ・製造 に努 力 し
て い く所 存 です。
1設
後 に、本 システムの l j l lにあた
りご指導 頂 きま したれ 上林 僚監部殿 、防衛省技術研究
発
本部殿 をは じめ、 関係ヤ の 皆様 に対 しま して 、深 く感謝 中 し上げると共 に、 今後 も一層 の
ご指導、 ご鞭撻 を賜 りますよ うお願 い 中 し, L げます。