3.信頼性データの統計的解析

講義予定
(1) 2014年10月 7日(火) 信頼性と信頼性工学(イントロダクション)
(2) 2014年10月14日(火) 信頼性解析の基礎数理1(確率論の基礎)
(3) 2014年10月21日(火) 信頼性解析の基礎数理2(信頼性の基本量)
(4) 2014年10月28日(火) 信頼性解析の基礎数理3(故障率と確率分布)
(5) 2014年11月 4日(火) 信頼性データの統計解析1(統計データ処理)
(6) 2014年11月11日(火) 信頼性データの統計解析2(最尤法と確率紙)
(7) 2014年11月18日(火) 中間試験
(8) 2014年11月25日(火)システムの信頼性1(直列・並列システム)
(9) 2014年12月 2日(火) システムの信頼性2(一般システムと信頼性設計)
(10) 2014年12月 9日(火) 故障モードの同定(FMEA, FTA, ETA)
(11) 2014年12月16日(火) 構造物の信頼性工学1(破壊確率と信頼性指標)
(12) 2015年 1月 6日(火) 構造物の信頼性工学2(信頼性解析モデル)
(13) 2015年 1月13日(火) モンテカルロ・シミュレーション
(14) 2015年 1月20日(火) 期末試験
信頼性工学
第8回
2014.11.25
千葉大学 工学部 都市環境システム学科
山崎 文雄
http://ares.tu.chiba-u.jp/
2
1
仮説検定(hypothesis testing)
3.信頼性データの統計的解析
母集団について仮定された命題を標本に基づいて検証
すること.
3.1 統計データの処理
3.2 確率分布のあてはめと標本分布
(例) コインを10回投げて表が8回出た。
この結果からコインは歪んでいるといえるか?
•モーメント法
•最尤推定法
•標本分布の区間推定
3.3 確率紙による母数の推定
3.4 適合度検定
帰無仮説(null hypothesis)
設定された仮説。「コインは歪んでいない」
今日はここから
3
対立仮説(alternate hypothesis)
帰無仮説と対立する仮説。 「コインは歪んでいる」
4
有意水準(significance level)
仮説検定の例
 起こる確率がこの確率 より小さければ,帰無仮説を
棄却(reject)する.また,逆にこの確率以上であれば帰
無仮説を採択(accept)する.
 コインが歪んでいない(
)と仮定すれば, 10
回中8回以上表が出る確率は,
10
1
1
p    (10 C 10 10 C 9 10 C 8 ) 
(1  10  45)  0.055
1024
2
 有意水準は5%か1%に
設定することが多い.
 有意水準を5%にとることにすれば、 10回中8回以上
表が出る確率は有意水準より大きいので帰無仮説は
採択される(棄却できない).
 即ち,コインは歪んでいる(
)と結論づけること
はできない.
問題によって,両側検定と片側検定
がある.
帰無仮説H0が棄却された場合,対立仮説H1を積極的に支持.
帰無仮説H0が棄却されなかった場合は,疑わしさを立証できな
かったに過ぎない.
6
5
適合度検定(Goodness-of-fit test)
棄却/採択と誤り
観測データが理論的な確率モデルに適合しているかどう
かの仮説検定のこと
真実
帰無仮説 帰無仮説
を採択
を棄却
検定結果
帰無仮説が正しい
対立仮説が正しい
正解
第2種の誤り
(error of the second kind)
第1種の誤り
(error of the first kind)
カイ二乗(2)検定:
頻度分布(ヒストグラム)と理論
的な確率密度関数を比較するも
の
有意水準を大きくするまたは,標
本数を増やすことで小さくする
正解
有意水準そのもの
 第1種の誤り
歪んでいないコインを歪
んでいると判断してしまう
コロモゴロフースミルノフ検定
(Kolmogorov-Smirnov Test ):
観測データの累積率と理論的な
確率分布関数を比較するもの
 第2種の誤り
歪んでいるコインを歪ん
でいないと判断してしまう
7
8
カイ二乗検定の手順(1)
カイ二乗検定の手順(2)
手順1: 仮説の設定
帰無仮説 H0 : 例)得られたデータは正規分布である.
対立仮説 H1 : 例)得られたデータは正規分布であるとはいえない.
手順2: 有意水準の設定
有意水準は帰無仮説が正しいにもかかわらず,帰無仮説が誤って
いると判断する(棄却する)確率.通常5%で考える.
手順3: 検定方式と棄却域の設定
ヒストグラムと理論度数の比較なので,カイ二乗検定を用い,有意水
準と自由度f から2の上側確率に対応する値C(, f)を求める.
f=
C(, f)
9
χ2分布のに対応する値C(, f)
自由度 f
1
2
3
4
5
6
7
8
9
10
11
12
13
14
15
16
17
18
19
20
30
40
50
60
70
80
90
100
0.99
0
0.02
0.11
0.3
0.55
0.87
1.24
1.65
2.09
2.56
3.05
3.57
4.11
4.66
5.23
5.81
6.41
7.01
7.63
8.26
14.95
22.16
29.71
37.48
45.44
53.54
61.75
70.06
EXCELで作成
0.98
0
0.04
0.18
0.43
0.75
1.13
1.56
2.03
2.53
3.06
3.61
4.18
4.77
5.37
5.98
6.61
7.25
7.91
8.57
9.24
16.31
23.84
31.66
39.7
47.89
56.21
64.63
73.14
データに基づき検定統計量の値を求める.カイ二乗検定では,観
測度数niの期待度数eiからの乖離の指標 χ2 (カイ二乗)を計算 .
2 
手順5: 判定と結論
検定統計量の値が棄却域に入っている場合には,帰無仮説H0
を棄却し,対立仮説H1を有意と判断する.  2  C ( , f )
棄却域に入っていない場合には,H0を棄却することができず,
H1を有意とは判断できない.
 2  C ( , f )
有意水準 
k: データの級の(区分)数
m:未知のパラメータの数
2分布の上限確率

0.95
0.9
0
0.02
0.1
0.21
0.35
0.58
0.71
1.06
1.15
1.61
1.64
2.2
2.17
2.83
2.73
3.49
3.33
4.17
3.94
4.87
4.57
5.58
5.23
6.3
5.89
7.04
6.57
7.79
7.26
8.55
7.96
9.31
8.67
10.09
9.39
10.86
10.12
11.65
10.85
12.44
18.49
20.6
26.51
29.05
34.76
37.69
43.19
46.46
51.74
55.33
60.39
64.28
69.13
73.29
77.93
82.36
手順4: 検定統計量の計算
10
C(, f)
カイ二乗検定の例
有意水準 
0.5
0.45
1.39
2.37
3.36
4.35
5.35
6.35
7.34
8.34
9.34
10.34
11.34
12.34
13.34
14.34
15.34
16.34
17.34
18.34
19.34
29.34
39.34
49.33
59.33
69.33
79.33
89.33
99.33
0.1
2.71
4.61
6.25
7.78
9.24
10.64
12.02
13.36
14.68
15.99
17.28
18.55
19.81
21.06
22.31
23.54
24.77
25.99
27.2
28.41
40.26
51.81
63.17
74.4
85.53
96.58
107.57
118.5
挿入関数統計CHIINV
0.05
3.84
5.99
7.81
9.49
11.07
12.59
14.07
15.51
16.92
18.31
19.68
21.03
22.36
23.68
25
26.3
27.59
28.87
30.14
31.41
43.77
55.76
67.5
79.08
90.53
101.88
113.15
124.34
0.02
5.41
7.82
9.84
11.67
13.39
15.03
16.62
18.17
19.68
21.16
22.62
24.05
25.47
26.87
28.26
29.63
31
32.35
33.69
35.02
47.96
60.44
72.61
84.58
96.39
108.07
119.65
131.14
0.01
6.63
9.21
11.34
13.28
15.09
16.81
18.48
20.09
21.67
23.21
24.73
26.22
27.69
29.14
30.58
32
33.41
34.81
36.19
37.57
50.89
63.69
76.15
88.38
100.43
112.33
124.12
135.81
CHIINV(, f)
C(, f)
頻度分布図が2つの理論分布と
比較して,相対的にどのような
適合度を示すか,有意水準5%
のカイ二乗検定により比較せよ.
自由度 f =
C(, f)= C(0.05, 5)=
2
 Normal
 10.73  11.07
2
 Lognormal
 7.97  11.07
11
両方の分布とも妥当性は有意水
準5%で否定できない.しかし,対
数正規分布の方が乖離が小さく,
この場合はより当てはまりがよい.
12
コロモゴロフースミルノフ検定
Table 7: Kolmogorov-Smirnov Test
(If calculated ratio is greater than value shown, then reject the null hypothesis at the chosen level of confidence.)
(Kolmogorov-Smirnov Test )
観測データの累積率:
i
Sn 
( xi  x  xi 1 )
n
理論的確率分布関数: FX (x)
観測データと理論モデルの最大
の隔たり:
n
Dn  max FX ( x)  S n
i 1
n
 max
i 1

Dnと限界値 Dn を比較し,
なら仮定した分布は
有意水準で採択される.
13
LEVEL OF SIGNIFICANCE FOR D = MAXIMUM [ F0(X) - Sn(X) ]
SAMPLE SIZE
(N)
.20
.15
.10
.05
.01
5
.446
.474
.510
.565
.669
6
.410
.436
.470
.521
.618
7
.381
.405
.438
.486
.577
8
.358
.381
.411
.457
.543
9
.339
.360
.388
.432
.514
10
.322
.342
.368
.410
.490
11
.307
.326
.352
.391
.468
12
.295
.313
.338
.375
.450
13
.284
.302
.325
.361
.433
14
.274
.292
.314
.349
.418
15
.266
.283
.304
.338
.404
16
.258
.274
.295
.328
.392
17
.250
.266
.286
.318
.381
18
.244
.259
.278
.309
.371
19
.237
.252
.272
.301
.363
20
.231
.246
.264
.294
.356
25
.210
.220
.240
.270
.320
30
.190
.200
.220
.240
.290
35
.180
.190
.210
.230
.270
OVER 35
1.07
____
 N
1.14
____
 N
1.22
____
 N
1.36
____
 N
1.63
____
 N
http://www.eridlc.com/onlinetextbook/appendix/table7.htm
14
コロモゴロフースミルノフ検定 (例題)
ある25個のデータを正規分布で
モデル化して,その累積率を理論
分布と比較してプロットしたところ,
最大差がDn=0.16 であった.
このデータを正規分布とみなし
てよいか,有意水準5%のコロモ
ゴロフースミルノフ検定 を行え.
(解答) 表より
これより
4.システムの信頼性
4.1 直列,並列システムの信頼性
4.2 一般的システムの信頼性
4.3 信頼性設計
0.05
Dn  D25

Dn  Dnが成立する.
したがって,この観測データが正規分布であるという仮説は採択される.
15
16
4.1 直列,並列システムの信頼性
R1(t)
R2(t)
直列システムの信頼度
直列システムの信頼度:Rs,n(t)
1個の要素の信頼性は(2.35)で表されるので
Rn (t)
図4.1 直列システム
R(t ) 
直列システム(series system):
複数(n個)の構成要素から成り,いずれか1個の要素
が故障するとシステムが故障状態となる.
直列システムの信頼度は,すべての構成要素が故障
しない確率となる.
(2.35)
n個の構成要素がすべて故障しない確率は,各要素の
故障発生が独立である場合には,
 t

RS ,n (t )   Ri (t )   exp    i ( )d 
i 1
i 1
 0

n
n
(4.1)
ここでRi(t), i(t)は構成要素iの信頼度関数と故障率.
n
RS ,n (t )   Ri (t ) 
i 1
17
18
直列システムの信頼度(2)
冗長系(redundant system)
直列システムの各要素の故障発生時間が指数分布なら,
冗長系: 同一機能を有する構成要素を複数個併用して,
そのうち一部が故障してもシステム全体の機能が維持で
きるように設計したシステム
1
並列系(parallel system)
2
m/n冗長系(m out of n system)
待機冗長系(stand by system)
  n  
RS ,n (t )  exp    i t   exp( S ,nt )
  i 1  
(4.2)
S , n 
(4.3)
ただし
これより,直列システムの故障率は,各構成要素が指数分
布なら同じく指数分布となり,要素の故障率の和となる.
平均寿命は,(2.48)より
1

T 
(4.4)
S , n
直列システムの故障率は,信頼度の最も低い要素の故障
率以下となる.
19
n
並列系
1
2
m/n
選択器
1
2
n
m/n冗長系
待機冗長系
20
並列システムの信頼度
並列システムの信頼度(2)
並列システム
複数(n個)の構成要素から成り,すべての要素が故障
するとシステムが故障状態となる.
並列システムの信頼度は,すべての構成要素が故障
する事象の補事象の確率となる.
n個の構成要素がすべては故障しない確率は,各要素
の故障発生が独立である場合には,
RP ,n (t ) 
n 
 t

 1   1  exp    i ( )d 
i 1 
 0


R1(t)
R2(t)
補事象 E
簡単のために,2つの要素から成り,各要素の故障発生
時間が指数分布とするなら,この並列システムの信頼度
は(4.5)より
事象E
事象E
RP , 2 (t )  exp( 1t )  exp( 2t )  exp  (1  2 )t  (4.6)
Rn (t)
全部同時には故障しない
図4.2 並列冗長システム
21
22
並列システムの信頼度(3)
直列,並列システムの信頼度

平均寿命と故障時間の密度関数は, T   tf (t )dt (2.43)
0
部分積分を行うと,平均寿命と信頼度の関係は,

T    t
0
dR(t )
dt 
dt
(4.5)
3個の構成要素から成る直列システムの信頼性
R1=R2=R3=0.9とすれば
RS ,3 
(2.44)
1
2
3
(4.6)を(2.44)に代入すると平均寿命は


0
0
3個の構成要素から成る並列システムの信頼性
R1=R2=R3=0.9とすれば
T   RP , 2 (t )dt   exp( 1t )  exp( 2t )  exp  (1  2 )t dt


(4.7)
注)
1
1
 exp( t )dt  
RP , 3 
2
0
(4.7)より 1  2   の場合には平均寿命は 3 /( 2 )
に延びる.
3
23
24