US US Report US2 講演 Report インナビネット ▶▶ http://www.innervision.co.jp/ad/suite/hitachi 腹腔鏡下肝切除における 造影超音波の有用性 新田 浩幸 岩手医科大学医学部外科学講座 腹腔鏡下肝切除は 2010 年に保険収載 は,マイクロ波凝固装置(Microtaze) 技は,①ポート挿入,気腹,② 腹腔内 され,手術器具の進歩と相まって低侵襲な やラジオ波焼灼装置(Cool-tip)を用い 観察,超音波検査,③授動,④肝門部 手技として普及してきた。本講演では,岩 て前凝固を行い,超音波外科吸引装置 操作,⑤肝実質切離,⑥自動縫合機に 手医科大学外科における腹腔鏡下肝切除 (Cavitron Ultrasonic Surgical Aspira- よるグリソン鞘および肝静脈の切離, の現状と日立アロカメディカル社製の超音 tor:CUSA)あるいは超音波凝固切開装 ⑦切除肝の回収,という手順で進められ 波診断装置「ARIETTA 70」を用いた術 置(Harmonic)を使用してきた。2011年 る。肝門部操作については,葉切除は血 頃から,肝臓に流入する血流を遮断する 管の個別の処理,亜区域切除,前 / 後区 プリングル法(Pringle method)を導入 域切除はグリソン一括にて行っている。 中造影超音波の有用性を中心に報告する。 当科における 腹腔鏡下肝切除の現状 したことで出血が抑えられるようになり, モノポーラ(IO 電極)と Clamp-Crush 術中造影超音波の有用性 当科では,1997 年 3月から2014 年 9 月 法,バイポーラ系の V e s s e l S e a l i n g 術中超音波は,視野の限られた腹腔 まで,完全腹腔鏡下 266 例,腹腔鏡補 System(LigaSure or EnSeal)を使う 鏡下切除術において,腫瘍とその周囲の 助下 182 例,計 448 例の腹腔鏡下肝切 ことで,よりシンプルで安全な手技が可 関係を把握するため,腹腔鏡下手術を 除術を行ってきた(図 1)。1997年から完 能になっている 全内視鏡下の肝切除を導入し,当初は部 ( 図 2) 。小さな 分切除あるいは外側区域切除を年間数 肝腫瘍に対する 例行うという状況であった。2002 年か 手術から始まっ ら小開腹創をおいた腹腔鏡補助下切除 た腹 腔 鏡 下 肝 術(ハイブリッド手術)を導入し,葉切 切除は,さまざ 除など広範囲切除にも適応することで症 まなデバイスの 例が増え,その後も症例数が徐々に増 進化によって, 加している。 現 在は完 全 腹 腔 鏡 下で解 剖 腹腔鏡下肝切除術に使用する 機器と術式 学的な切除まで 腹腔鏡下肝切除術にはさまざまな機 腹腔鏡下肝 器を使用するが,当科では初期において 切 除の手 術 手 可能になった。 (1997年3月~2014年9月 448例) 完全腹腔鏡下 266 部分切除 亜区域切除 外側区域切除 区域切除(外側区域以外) 葉切除 ドナー 147 25 37 22 22 13 腹腔鏡補助下 • v 部分切除 亜区域切除 外側区域切除 区域切除(外側区域以外) 葉切除 三区域切除 ドナー レシピエント 182 HCC Meta CCC Benign Donor Other Donor 12% Benign 5% 3% CCC 14 10 6 37 67 5 39 4 n =171 n =170 n =13 n =23 n =52 n =19 4% 38% HCC 38% Meta 図 1 岩手医科大学外科における腹腔鏡下肝切除術 (例) 術中超音波 60 VSS LigaSure or EnSeal Harmonic 80 CUSA Microtaze Clamp-Crush Cool-tip TissueLink IO電極 Pringle’ s method 40 Totally laparoscopic partial resection and left lateral sectionectomy Laparoscopy-assisted major hepatectomy 20 0 Totally laparoscopic anatomical resection 97 98 99 00 01 02 03 04 05 06 07 08 09 10 11 12 13 14 (年) 巨大腫瘍,他臓器・血管浸潤,高度癒着例は開腹手術を選択 図 2 腹腔鏡下肝切除における使用機器の変遷 90 INNERVISION (29・12) 2014 術中超音波探触子:UST-5418 RIGHT UP LEFT DOWN LEFT 90° UP 90° RIGHT DOWN φ10mm 造影超音波の有用性 病変の描出 Surgical marginの確保 阻血部位の描出 図 3 ARIETTA 70 と術中超音波探触子 UST- 5418 〈0913 - 8919 / 14 /¥300 / 論文 /JCOPY〉 第 27 回日本内視鏡外科学会総会 ランチョンセミナー 6 US Report 切離線 図 4 症例 1:大腸がん肝転移に対する腹腔鏡下肝 S 8 部分切除 開始した当初から使用してきた。現在は, 動脈塞栓術 A R I E T T A 7 0 と術 中 超 音 波 探 触 子 (TAE)が行わ 「UST- 5418」を使用し,ソナゾイドを用 れており,その いた術中造影超音波を行っている(図3) 。 影響による癒着 腹腔鏡用の超音波探触子である UST- が見られたが, 5418は,先端部が上下左右4方向に90° の S 3 のグリソン鞘 屈曲が可能で,可動性が高いプローブで を 確 認 してク ある。この UST- 5418 と ARIETTA 70 リップし,表面 による造影超音波は, 病変の描出, surgical のデ マルケ ー margin の確保,阻血部位の描出などに ションラインと 有用性が高い。 造 影 超 音 波で 図 5 症例 2:肝硬変合併肝細胞がんに対する腹腔鏡下肝 S 3 亜区域切除 S3 S2 図 6 症例 2:肝硬変合併肝細胞がんに対する腹腔鏡下肝 S 3 亜区域切除(S 3 グリソン鞘のクリップ後) 以下に,ARIETTA 70 を用いた腹腔 虚 血 域を確 認 鏡下肝切除術について,実際の術中映 してマーキングを行い,クラッシュ法に 出血量 608 mL と 111 mL,術後在院日 像を供覧する。 て離断を進めた(図 5)。造影超音波では, 数 16 日と 9 日などとなっている。長期 ● 症例 1:大腸がん肝転移の腹腔鏡 下肝 S 8 部分切除 虚血域がはっきりと確認でき,腫瘍と離 成績についても HCC と同様に両者に差 断面の関係をリアルタイムに確認しなが はないが,腹腔鏡下肝切除術の有用性 肝 S 8 にある転移性肝がんに対して腹 ら手技を進めることが可能となる。本症 については検討が続けられており,今後 の成果を期待したい。 腔鏡下肝部分切除を行った。腫瘍は肝 例では肝硬変が進行しており,クラッシュ 表面近くにあるが露出しておらず,腫瘍 しづらい部分もあったが,肝静脈に沿っ 深部のマージン確保が重要となるため, た切離が可能であり,S 3 の亜区域切除 ソナゾイドを用いて術中造影超音波を施 を終了することができた。切離後,残存 腹腔鏡下肝切除はもはや特別な手技で 行した(図 4)。ARIETTA 70 は解像度 するソナゾイドで S 2 の造影超音波を行い, はなく,社会的要因,術者要因,患者要 が高く,ソナゾイドによる腫瘍の濃染も クリアに確認できる。手術時間は 2 時間 前後だが,その間ソナゾイドは残留して おり,切除中も繰り返し超音波による撮 腫瘍が切除されていることを確認した (図 6) 。 肝細胞がんに対する手術成績 腹腔鏡下肝切除に求められること 因をトータルに判断して適正に行ってい くことが求められる。デバイスの使用を 含めたコストや手術時間の短縮などの安 全性,それに伴う手術成績の向上を追究 像を行い,切除部分の細かな脈管や血 肝細胞がんに対する手術成績を,腹腔 していくことが求められる。その中で,造 管の走行を確認することができた。手技 鏡下手術と開腹手術について 2010 年ま 影超音波と高解像度の超音波診断装置 では術中超音波画像によって十分なマー での症例で比較した。肝細胞がんでは, などが開発されて,それらが手技に取り ジンを取って切除が行えたことが確認で 開腹 81 例,腹腔鏡 59 例であり,手術成 入られることで精度が向上し,いっそう きたほか,切除する腫瘍以外の病変につ 績は手術時間 305 分と 249 分,出血量 の普及につながることが期待される。 いても造影超音波で確認し安全に進め 1038mLと448mL,術後在院日数31.3日 ることができた。 と 14 . 6 日などとなっているが,長期成 ● 症例 2:肝硬変合併肝細胞がん (Child-Pugh A,ICGR 15 27%) の腹腔鏡下肝 S 3 亜区域切除 んでは開腹 69 例,腹腔鏡 101 例で,開 肝予備能が不良なC型肝硬変の症例 術式も開腹が大きな肝切除が多かった。 で,S 3 亜区域切除を選択した。事前に 手術成績では,手術時間 277 分と 224 分, 績では変わりはない。また,転移性肝が 腹の方が腫瘍径の大きい症例が多く, 新田 浩幸 (Nitta Hiroyuki) 1993年 岩 手 医 科 大 学 卒 業。1997年 同 大 学 院 卒 業。 2002年 岩手医科大学医学部外科学講座助手。2007年∼ 同講師。 INNERVISION (29・12) 2014 91
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