日本基礎心理学会第 33 回大会 プログラム - 首都大学東京

日本基礎心理学会第 33 回大会 プログラム
The 33rd Annual Meeting of the Japanese Psychonomic Society Program
2014 年 12 月 6 日(土)- 7 日(日)
首都大学東京 南大沢キャンパス
ご挨拶
日本基礎心理学会第 33 回大会は,2014 年 12 月 6 日(土)と 7 日(日)に首都大学
東京南大沢キャンパスで開催させていただくことになりました。
首都大学東京(旧東京都立大学)では,3 回目の開催となります。第 5 回大会(1986
年)を東京都立大学の目黒キャンパスにおいて,第 14 回大会(1995 年)を南大沢へ移
転した現在のキャンパスにおいて開催いたしました。今回は,首都大学東京として初め
ての大会となります。
東京都立大学の校章は都鳥(みやこどり)をデザインしたものでした。その後,1999
年に開学 50 周年記念事業の一環として,デフォルメされた 2 羽の都鳥のデザインに変
わりました。さらに,2005 年に,4 つの都立の大学,短大を統合して発足した首都大
学東京では,4 つの大学,短大を象徴した 4 つの四角形を組み合わせた校章に変わりま
した。本大会ロゴは,東京都立大学の最初の都鳥のデザインと,首都大学東京のシンボ
ルとされている建物(光の塔)を組み合わせて,大学院の伊藤紗也香さんがデザインし
たものです。
本大会では,基礎心理学ではなじみの深い「言語と脳機能」,
「顔」,
「デザイン」とい
う研究テーマを新たな視点からとらえ直す特別講演,シンポジウムを企画しています。
また,大会前日の 5 日(金)には,同じく南大沢キャンパスにおいて,若手研究者によ
るサテライトオーラルセッションも開催いたします。
基礎心理学の大会は,さまざまな研究テーマを持つ研究者が研究成果やアイデアを発
表し合って,お互いの情報交換や研究活性化の場を提供することを目的としています。
したがって,まだアイデアの段階のもの,研究に対する主張や考えの発表も歓迎いたし
ます。また,若手研究者養成の場でもありますので,大学院生の積極的な発表を歓迎い
たします。
皆様の多数のご参加とご発表を,心よりお待ち申し上げております。
2014 年 10 月吉日
日本基礎心理学会第 33 回大会準備委員会
委員長
1
山下 利之
会場とアクセス
大会会場
首都大学東京 南大沢キャンパス
〒192-­0397 東京都八王子市南大沢1-1
アクセス
JR 八王子駅よりお越しの場合
電車
「八王子駅」から JR 横浜線(町田・南神奈川方面)乗車
て京王相模原線(調布・新宿方面)乗換
→ 「橋本駅」に
→ 「南大沢駅」下車,徒歩5分
バス
京王バス「八王子駅南口」
(南大沢駅行)乗車 →
京王バス「南大沢駅」下
車,徒歩6分
JR 新宿駅よりお越しの場合
京王線「新宿駅」から京王相模原線(橋本方面)乗車
→
「南大沢駅」下
車,徒歩5分
または京王線「新宿駅」から京王線(八王子・高尾山口方面)乗車
→ 「調
布駅」にて京王相模原線(橋本方面)に乗換 → 「南大沢駅」下車
※ 大学の駐車場はご利用頂けませんので,お車でお越しの方は近隣の有料駐車場を
ご利用下さい。
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京王線相模原線「南大沢」駅改札口から徒歩約5分
※改札口を出て右手にキャンパスが見えます。
3
4
大会スケジュール
第 1 日目
9:00〜
12 月 6 日(土)
受付開始(9:50 までにポスター掲示)
10:00〜12:00
ポスター発表 1A,1B(10:00〜12:00)
奇数番号発表者の在席責任時間:10:00〜11:00
偶数番号発表者の在席責任時間:11:00〜12:00
12:00〜13:00
昼休み
13:00〜14:20
特別企画講演(6 号館 110 室)
14:30〜16:30
シンポジウム 1(6 号館 110 室)
16:30〜17:15
総会(6 号館 110 室)
17:30〜18:00
ポスターフリーセッション(在席自由のディスカッション)
18:30〜20:30
懇親会(国際交流会館内 ルヴェソンヴェール南大沢)
第 2 日目
9:00〜
12 月 7 日(日)
受付開始(9:50 までにポスター掲示)
10:00〜11:00
ポスター発表 2A, 2B(10:00〜11:00)
奇数番号発表者の在席責任時間:10:00〜11:00
11:00〜12:00
「心の実験パッケージ」開発委員会セッション(6 号館 110 室)
12:00〜13:00
昼休み
13:00〜15:20
シンポジウム 2(6 号館 110 室)
15:30〜16:30
ポスター発表 2A,2B
偶数番号発表者の在席責任時間:15:30〜16:30
16:30〜17:00
ポスターフリーセッション(在席自由のディスカッション)
17:30
閉会
※ポスター発表:7 号館 101 室(スタジオ),5 号館 1 階ホールの 2 か所です。
※企業展示の会場は 5 号館 1 階の各室です。
編集委員会 12 月 6 日(土) 9:30〜10:30(6 号館 105 室)
旧理事会
12 月 6 日(土)10:30〜11:30(6 号館 104 室)
新理事会
12 月 6 日(土)11:30〜12:30(6 号館 104 室)
5
会場見取り図
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参加者へのご案内
1. 大会受付は 5 号館 143 室です。両日とも午前 9 時から受付を開始いたします。
2. 大会参加費・懇親会費を前納された方は,受付にて振込控えをお示し下さい。当日
参加の方は,受付にて参加申込書に必要事項をご記入の上,参加費をお支払い下さ
い。
3. 大会参加費・懇親会費は下記の通りです。
(1)大会参加費
前納 5,000 円(院生 1,000 円)
当日 7,000 円(院生 3,500 円)
(非会員一般 9,000 円,非会員院生 4,500 円,学部生 1,000 円)
(2)懇親会会費
前納 6,000 円(院生 5,000 円)
当日 7,000 円
4. 参加者には参加証をお渡しします。会場でご提示下さい。
5. クロークは,大会受付(5 号館 143 室)に設けております。
6. 休憩所は 5 号館 1 階に設けております。
7. 会期中の呼び出し等は原則として行いませんのでご了承願います。
8. 宅配便の発送や書類のコピーなどは大会本部では受け付けておりません。近隣のコ
ンビニエンスストア等をご利用下さい。
9. 会場から徒歩圏内に飲食店が多数ございます。昼食はそちらをご利用下さい。
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大会行事のご案内
1. 研究発表は,ポスター発表形式で行います。発表会場は 2 か所に分かれています。
A 会場の発表は 7 号館 101 室(スタジオ)で,B 会場の発表は 5 号館 1 階ホールで
行います。また在席自由のフリーセッションを設けます。発表延長等にご利用下さ
い。
2. 研究機器と書籍の展示は,5 号館 1 階の各室にて行います。
3. 特別企画講演「言葉を学ぶ脳 -分子と社会をつなぐ架け橋-」は,12 月 6 日(土)
13:00 より 6 号館 110 室で行います。
4. シンポジウム 1「顔を使う」は,12 月 6 日(土)14:30 より 6 号館 110 室で行いま
す。
5. 総会は,12 月 6 日(土)16:30 より 6 号館 110 室で行います。
6. 懇親会は,12 月 6 日(土)18:30 より国際交流会館内,ルヴェソンヴェール南大沢
にて行います。皆様お誘い合わせの上ぜひご参加下さい。なお,第 6 回錯視コンテ
ストならびに授賞式を懇親会において行います。
7. 「心の実験パッケージ」開発委員会セッションは,12 月 7 日(日)11:00 より 6 号
館 110 室で行います。
8. シンポジウム 2「デザインによって活かす」は,12 月 7 日(日)13:00 より 6 号館
110 室で行います。
8
発表者へのご案内
1. 研究発表はポスター形式となります。
2. 会場は,7 号館 101 室(スタジオ)または 5 号館 1 階ホールです。
3. ポスター掲示板の大きさは,幅 120cm×高さ 170cm です。
4. ポスターの上部には,発表題目と発表者全員の氏名と所属を明記して下さい。連名
の場合には主発表者に○印を付けて下さい。
5. 連名発表で主発表者が欠席の場合には,大会準備委員長の承認を得た場合に限り連
名発表者の 1 人が代行できます。ポスター会場受付にお申し出下さい。
6. 発表ポスターは,発表当日の午前のセッションの 10 分前(9:50)までに掲示し,
フリーセッション終了時(1 日目は 18:00,2 日目は 17:00)まで掲示して下さい。
7. 発表会場は 2 か所に分かれています。発表番号に A とあるものは 7 号館 101 室(ス
タジオ)で,B とあるものは 5 号館 1 階ホールで行います。在席責任時間は以下の
通りです。
1 日目ポスター発表
奇数番号:10:00〜11:00
偶数番号:11:00〜12:00
2 日目ポスター発表
奇数番号:10:00〜11:00
偶数番号:15:30〜16:30
8. 両日の夕方に設けた「ポスターフリーセッション」
(1 日目 17:30〜18:00,2 日目
16:30〜17:00)での在席は義務ではありませんが,在席責任時間では発表討議の時
間が足りなかった,発表者と質問者のセッションが重なった,予定が合わなかった,
といった場合に是非ご活用下さい。
9. 配布資料は発表者ご自身でご用意下さい。
10. コンピューター等をご利用の場合は,発表者ご自身でご準備下さい。電源等の設備
はご用意出来ませんのでご了承下さい。
11. 主発表者が 2015 年 3 月末において満 35 歳未満である発表は,本学会の「優秀発表
賞」の審査対象になります。
発表者へのお願い
ウェブにてご登録頂いた発表要旨を『基礎心理学研究』にも掲載いたします。『基礎
心理学研究』掲載用要旨は 12 月 8 日(月)まで修正が可能です。多様化しつつある出
版形態や閲覧手段に今後とも学会が対応していくために,この発表要旨の著作権を学会
に譲渡して頂くことをご了承下さい。ご理解とご協力のほど,何卒宜しくお願い申し上
9
げます。
注意
『基礎心理学研究』掲載要旨が大会当日の発表内容(発表題目・発表者氏名を含む)
と異なりますと,正式発表として認められません。ご注意下さい。
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特別企画講演「言葉を学ぶ脳 ―分子と社会をつなぐ架け橋―」
日時
12 月 6 日(土)13:00〜14:20
場所
6 号館 110 室
講演者
萩原 裕子(首都大学東京 人文科学研究科 言語科学教室)
司
石原 正規(首都大学東京)
会
講演概要
「言語と脳」は古くて新しいテーマである。古くは,脳損傷による失語症の研究から脳の異
なった部位が別々の機能を担っていることが明らかになり,近年ではさまざまな脳機能イメー
ジング技法の開発により,それを支える神経ネットワークの存在も示され,言語機能の神経基
盤は解明し尽くされたかのように見える。しかしその一方で,子供が母語や外国語を習得する
プロセスの神経基盤は不明のままで,未だ多くの謎に包まれている。本講演では,言語機能の
神経基盤の動向を紹介するとともに,演者が JST/RISTEX 研究開発プロジェクト『脳科学と教
育』の一環として行った小学生の言語習得の大規模コホート調査の成果とその後の展開につい
て紹介する。学童期である 7 歳から 12 歳という年齢は,構造的にも機能的にも生涯を通じて脳
の発達が最も著しい時期である。また,公教育がはじまり文字の読み書きを学ぶとともに,就
学前とは学習環境も大きく変化する。そのような時期に,日本人の子供たちが外国語として英
語を学ぶときには,どのような変化が生じるのだろうか。言語テストやアンケート調査に加え
て,事象関連電位と近赤外分光法を用いて脳機能計測を行い脳活動の変化を捉えた。母語単語
処理の脳内での定着期,語彙意味の習得にみられる母語と外国語の類似性,英語学習における
学習開始年齢と接触量の比較,大人とは異なる左右両半球の役割,脳活動にみられる性差など
を取り上げて紹介する。最後に,近年目覚ましい発展を遂げているゲノム科学が,言語習得と
脳の発達研究にどのような影響を及ぼすのかを予測し,これからの新しい言語学習の可能性に
ついても探る。
講演者プロフィール
マッギル大学大学院博士課程終了 Ph. D.(言語学)
,金城学院大学文学部助教授,東京都立大
学人文学部助教授などを経て,首都大学東京大学院人文科学研究科教授。文部科学省中央教育
審議会教育課程部会専門委員,JST/RISTEX 『脳科学と教育』研究代表者等を歴任,2014 年
9 月より首都大学東京「言語の脳遺伝学研究センター」センター長。著書に『脳にいどむ言語学』
(岩波書店)他。市川三喜賞他受賞。専門は心理言語学,神経言語学,言語脳科学。
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CMC
CMC
"For sale: baby shoes, never worn"
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された同じ言葉を,さまざまな文脈でさまざまな意味で使う我々には,テキストのみに表情を
も埋め込むことはなかなかできない。その時,われわれは,自分たちが,顔というメディアに
予想以上に頼っていることを知る。顔文字は,普段我々がどのように顔を使っているのかを示
す鏡なのである。ここでは,顔文字研究のレビューを通して,顔を使うという意味を議論した
い。
■橋本卓弥
(電気通信大学)
将来的に期待される人間とロボットとが共存する社会について考えた場合,ロボットが如何
に人間と円滑にコミュニケーションできるかが大きな課題となる。そこで私達は,対面コミュ
ニケーションにおける表情の重要性に着目し,人間のように豊かな表情を表出することができ
る顔ロボットの研究・開発を行っている。そこで,顔ロボットによる表情表出のメカニズムや
顔ロボットを応用したアンドロイド・ロボットSAYAについて紹介すると共に,実用化に向けた
実社会での活用方法について議論したい。
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日本基礎心理学会「心の実験パッケージ」開発委員会
ワークショップ
これからの知覚心理学教育を考える
-小・中学生を対象とした心理学実験ワークショップを通して-
日時
12 月 7 日(日)11:00〜12:00
場所
6 号館 110 室
講演者
日本基礎心理学会「心の実験パッケージ」開発委員会
池田まさみ(十文字学園女子大学)
渡邊
淳司(NTT コミュニケーション科学基礎研究所)
北崎
充晃(豊橋技術科学大学)
茅原
拓朗(宮城大学)
吉田
成朗(東京大学大学院)
上田
祥代(お茶の水女子大学大学院)
企画要旨
「心理学」は一般にも耳慣れた学問分野であり,多くの人が興味・関心をもっていると思わ
れるが,その理解やイメージは,実際の学術の在り方とは「乖離」していることがある。特に
基礎系の心理学研究は,臨床系などの応用領域に比べ,研究成果や社会とのつながりが具体的
に見えにくいこともあり,その乖離は大きい。また,心理学が高校以前の教科にないことも乖
離の一因である。大学入学まで,心理学の学問的内容だけでなく,本質的な意義や面白さを伝
える場がないままでは,「科学としての心理学」の位置づけが危ういものとなる可能性がある。
さらに,視点を変えてみると,近年,児童・生徒の科学的思考力や科学的リテラシーの低下が
懸念されているが,そこには,科学=自然科学の図式が根強く存在しており,人文や自然を問
わず共通する科学的思考を養うといった感が薄い。しかし一方で,初等・中等教育の現場では,
科学教育の充実が重要課題となっており,科学的思考や態度を育成するための効果的な教材や
メソッドが不足しているのも事実である。
こうした背景を踏まえ,「心の実験パッケージ開発委員会」では,心理学と脳科学を繋ぐ題材
として「触二点閾」を採用し,教材および教授法(メソッド)の開発を進めてきた。子どもた
ちに,人間を対象とした実証的な研究手法や研究の意義,面白さを伝えることは,人文・自然
に共通する「科学的なものの見方」や「探究心」を育成することにつながり,ひいては,心理
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学の理解に留まらず,心理学研究者の誕生や心理学研究そのものの発展につながる可能性があ
る。本ワークショップでは,2 年にわたる授業実践と授業を通して開発した教材を紹介すると同
時に,これからの「子どものための“知覚・認知”科学教育」の在り方について議論する。
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「錯視コンテスト」 授賞式
日時
12 月 6 日(土)18:30〜
場所
国際交流会館
懇親会会場
昨年度に引き続き,第 6 回錯視コンテストの作品を募集しました。今年度も,日本基
礎心理学会第 33 回大会の 12 月 6 日(土)に行われる懇親会で,錯視コンテストの受
賞作品の紹介および授賞式を行います。
応募された方もそうでない方も,どうぞお楽しみに。
審査委員長: 北岡 明佳
審査委員
: 蘆田
椎名
宏,羽倉弘之,原島 博,一川
誠,中島祥好,
健,高島 翠,吉田正高
(敬称略,委員長以外はアルファベット順)
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研究発表プログラム
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A 会場:7 号館 101 室(スタジオ),B 会場:5 号館 1 階ホール
12 月 6 日(土)
○は主発表者
※は非会員連名発表者
全てのポスターを 9:50 までに掲示して下さい。
在席着任時間は,奇数番号 10:00〜11:00,偶数番号
11:00〜12:00
フリーセッション(延長希望者のみ)17:30〜18:00
【7 号館 101 室(スタジオ)】
1A01
初期視覚系における拡大感受性ニューロン
○石金 浩史
松崎 みどり
1A02
晃洋
大久保 街亜
文
東京大学
東京大学
山下 淳
東京大学
淺間 一
東京大学
全盲の視覚障がい者におけるユニバーサルデザインの妥当性に関する研究
○長崎 郁夫
佐藤 千秋
1A06
専修大学
連続制御における課題のパフォーマンスが運動主体感に与える影響
○温
1A05
専修大学大学院
非線形最適化問題と最適化法によるパラメータの変動
○浅川 伸一
1A04
専修大学
ワーキングメモリ要素に対するプレッシャーの効果
○小林
1A03
専修大学
山形大学
山形県立山形盲学校
拡張した仮想身体の操作が身体性自己意識および身体表現に与える影響
○渋谷 賢
杏林大学
大木 紫
杏林大学
20
1A07
文章の読みやすさを決める漢字の量的要因
○杉山 美智子
1A08
土田 優
東京女子大学
小田 浩一
東京女子大学
「映画の逆回し」と事物の知覚的恒常
○鷲見 成正
1A09
東京女子大学大学院
慶應義塾大学
自然な物体における視覚,聴覚,触覚の感覚間協応
‐木の質感知覚を例として‐
○金谷 翔子
1A10
産業技術総合研究所
時田 みどり
お茶の水女子大学
苅谷 健司
住友林業株式会社
藤崎 和香
産業技術総合研究所
コンデンス書体の可読性とクラウディング効果
--低視力シミュレーションによる検討-○中野 泰志
小松 真也
1A11
1A12
慶應義塾大学
東京大学大学院
キーが近いことによる分けにくさは,学習により解消される
○渡辺 友里菜
愛知淑徳大学
吉崎 一人
愛知淑徳大学
図地の成立におけるテクスチャの効果
○高島 翠
いわき明星大学
篠原 幸喜
獨協大学
藤井 輝男
敬愛大学
椎名 健
筑波大学
21
1A13
視覚性ワーキングメモリにおける選択的注意の効果
―色と空間に基づく選択の比較―
○李
琦
齋木 潤
1A14
1A15
1A16
1A18
京都大学
ドレミファソラシは虹の七色:色聴におけるピッチクラスと色の対応
○伊藤 浩介
新潟大学脳研究所
中田 力
新潟大学脳研究所
顔の視覚的な気づきに右紡錘状回顔領域は重要である:脳磁場反応解析
○久米 迪子
九州大学
前川 敏彦
九州大学
浦川 智和
九州大学
緒方 勝也
九州大学
廣永 成人
九州大学
執行 真旗
九州大学
飛松 省三
九州大学
課題非関連特徴が価値駆動的に注意を捕捉する
○峯
1A17
京都大学
知里
京都大学大学院
齋木 潤
京都大学大学院
高解像度ディスプレイとロービジョンの関係(2)
○大西 まどか
東京女子大学大学院
小田 浩一
東京女子大学大学院
個人間で共通する芸術作品に対する感性の定量評価の試み
○若林 正浩
大阪大学
22
1A19
幼児における虚記憶の発生メカニズムと自己制御機能の関係
○堀越 歩
1A20
小林 正法
名古屋大学大学院
真田 原行
東京大学大学院
榎本 玲子
専修大学
山上 精次
専修大学
ニオイの選好判断に及ぼす接触順序の影響
○中野 詩織
綾部 早穂
1A21
1A22
筑波大学大学院
筑波大学
運動視の同化・対比と脳内の神経伝達物質との関係
○吉本 早苗
日本女子大学
竹内 龍人
日本女子大学
島田 育廣
ATR-­Promotions
河内山 隆紀
ATR-­Promotions
近藤 洋史
NTT コミュニケーション科学基礎研究所
黒子が男に見えるとき ―自己の身体能力に基づいた他者判断―
○岸本 励季
1A23
専修大学大学院
九州大学大学院
佐々木 恭志郎
九州大学大学院
郷原 皓彦
九州大学大学院
小代 裕子
九州大学大学院
南
九州大学大学院
智然
三浦 佳世
九州大学大学院
山田 祐樹
九州大学
無意味図形に対する直感的選好と脳領域間の位相同期
○武田 裕司
(独)産業技術総合研究所
木村 元洋
(独)産業技術総合研究所
23
1A24
1A25
洞察問題解決における認知資源と拡散的処理モードの影響
○西田 勇樹
立命館大学
織田 涼
立命館大学
服部 雅史
立命館大学
表情変化の速度が知覚される感情に与える影響
○乙訓 輝実
1A26
実験環境が情動刺激処理に及ぼす影響:木質空間と非木質空間の比較
○木村 元洋
1A27
1A28
住友林業株式会社
永井 聖剛
愛知淑徳大学
処理の流暢性が刺激の美的評価に及ぼす影響
○森田 磨里絵
東京女子大学
田中 章浩
東京女子大学
無意味刺激に有意味さを知覚する現象(パレイドリア)の個人差
東京家政学院大学
北村 美穂
NTT コミュニケーション科学基礎研究所
北川 智利
NTT コミュニケーション科学基礎研究所
香りの二者択一課題におけるサンプリングバイアス
○満田 隆
1A30
産業技術総合研究所
苅谷 健司
○加地 雄一
1A29
東京女子大学大学院
立命館大学
ギャップ前後での時間マーカーの空間周波数変化による時間分解能の低下
○廣瀬 信之
九州大学
山本 美和
九州大学
奥田 譲
九州大学
森
九州大学
周司
24
1A31
多段階抽選ゲームでの反応時間に対する結果パターンの効果5
○大森 貴秀
1A32
原田 隆史
同志社大学
坂上 貴之
慶應義塾大学
衣食住におけるストレスを軽減する配色に関する研究
○袁
1A33
1A34
1A36
東
○竹内 龍人
日本女子大学
吉本 早苗
日本女子大学
島田 育廣
ATR-­Promotions
河内山 隆紀
ATR-­Promotions
近藤 洋史
NTT コミュニケーション科学基礎研究所
継起音の“等時隔”の知覚に及ぼす併存音群の効果
敦史
明星大学
ベクションにおける奥行き手がかりの効果
○瀬谷 安弘
立命館大学
篠田 博之
立命館大学
乳児における運動情報による対象表面の素材質感の知覚
○伊村 知子
白井 述
1A37
北海道大学
視覚野における GABA 濃度と運動視における周辺抑制
○境
1A35
慶應義塾大学
新潟国際情報大学
新潟大学
増田 知尋
(独)農業・食品産業技術総合研究機構食品総合研究所
和田 有史
(独)農業・食品産業技術総合研究機構食品総合研究所
ヒト幼児におけるパターン優位性効果と探索非対称性
○後藤 和宏
相模女子大学
飯島 真応
京都大学
板倉 昭二
京都大学
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1A38
1A39
1A40
袋文字の読みにくさと線頻度の関係
○高橋 あおい
東京女子大学
小田 浩一
東京女子大学
交差・反発事象への音の効果は視聴覚の主観的同時性に依存する
○北川 智利
NTT コミュニケーション科学基礎研究所
北村 美穂
NTT コミュニケーション科学基礎研究所
経験は文字認知にいかなる影響を及ぼすのか?
-帰国児童の「ひらがな」認知特性をめぐって-
○佐藤 智子
1A41
視野を変換,制限,あるいは遮蔽する 3 事態での移動空間の形成機序
○佐々木 正晴
1A42
東京大学大学院学際情報学府
弘前学院大学
鳥居 修晃
東京大学
佐藤 佑介
日本大学
日本人の色の好みは何で決まるか?
:色から連想される物体と抽象的イメージの影響
○浅野 倫子
立教大学
金沢 菜々実
東京大学
Karen Schloss
Brown University
Stephen Palmer
University of California, Berkeley
横澤 一彦
東京大学
26
【5 号館 1 階ホール】
1B01
同時に呈示された複数の物体に対する魅力の判断-刺激固有性の検討-
○鑓水 秀和
1B02
中京大学
顔の肥痩判断と錯視:顔の布置情報の変化に対する過小評価
○河野 直子
1B03
名古屋大学
矢野 円郁
神戸女学院大学
大川 佳純
名古屋大学
田中 聡
名古屋大学
飯高 哲也
名古屋大学
西岡 和郎
名古屋大学
尾崎 紀夫
名古屋大学
デンショバトにおける微細な「速さ」(反応間距離/反応間時間:IRD/IRT)
反応次元の継時弁別訓練効果
1B04
○茅野 一穂
明星大学
小美野 喬
明星大学
乳児の側頭領域における顔の人種効果の検討
○小林 恵
自然科学研究機構生理学研究所/
日本学術振興会
1B05
Lee Kang
University of Toronto
金沢 創
日本女子大学
山口 真美
中央大学
柿木 隆介
自然科学研究機構生理学研究所
多数の画像刺激の系列的評価に及ぼす提示順序の効果
○坂上 貴之
慶應義塾大学
増田 真也
慶應義塾大学
森井 真広
慶應義塾大学大学院
大久保 重孝
慶應義塾大学
27
1B06
注意が目覚める間に確立される知覚的構え
○犬飼 朋恵
1B07
下村 智斉
中京大学
河原 純一郎
中京大学
エビングハウス錯視の左右配置が錯視量に及ぼす影響について
○実吉 綾子
1B08
1B10
1B11
筑波大学大学院
三原 鉄也
筑波大学大学院
森田 ひろみ
筑波大学
拡大錯視の測定と生起条件の検討
○近藤 あき
東京大学
高尾 沙希
立正大学
有賀 敦紀
立正大学
高橋 康介
東京大学
渡邊 克巳
東京大学
広視野 3D 運動ドットが注意の瞬きに与える影響
○髙川 慎哉
鹿児島大学
木原 健
鹿児島大学
大塚 作一
鹿児島大学
影を手がかりとした形状知覚の発達
○佐藤 夏月
1B12
帝京大学
情報端末でマンガコンテンツを読む場合の読み特性
○濱田 宰
1B09
神戸親和女子大学
中央大学大学院/日本学術振興会
金沢 創
日本女子大学
山口 真美
中央大学
反応競合文脈の獲得・持続に及ぼす観察者の移動効果
○蔵冨 恵
河原 純一郎
愛知淑徳大学大学院
中京大学大学院
28
1B13
不確実状況における顔向きの知覚
UNSW Australia
○大塚 由美子
Mareschal Isabelle
Queen Mary University of London, The University of Sydney
Clifford Colin
1B14
注意の捕捉効果と視覚的印付け効果の加算性
○大杉 尚之
林
大輔
村上 郁也
1B15
1B16
東京大学
東京大学
江原 玲
東京大学
横澤 一彦
東京大学
非意識性情報の記憶保持特性に関する検討
首都大学東京
首都大学東京
Implied motion 知覚の初期発達
○白井 述
伊村 知子
新潟大学
新潟国際情報大学
Point-LightWalker の性別を特徴づける肩と腰の動きの周波数分析
○麻野井 千尋
小田 浩一
1B19
東京大学
○新美 亮輔
石原 正規
1B18
東京大学
上から見た物体はなぜわかりにくい?
○中野 俊
1B17
UNSW Australia
ネットワークアシストたかおか
東京女子大学
乳幼児の顔認知における人物処理と表情処理の独立性
○市川 寛子
中央大学・日本学術振興会
金沢 創
日本女子大学
山口 真美
中央大学
29
1B20
1B21
1B22
眉とアイシャドウによる目の大きさ錯視とデルブーフ錯視との関係
○森川 和則
大阪大学
松下 戦具
大阪大学
富田 瑛智
大阪大学
山南 春奈
資生堂
倒立は質的にも量的にも顔処理を変化させる
○松吉 大輔
東京大学
守田 知代
大阪大学
河内山 隆紀
株式会社国際電気通信基礎技術研究所
田邊 宏樹
名古屋大学
定藤 規弘
自然科学研究機構生理学研究所
柿木 隆介
自然科学研究機構生理学研究所
吹き出し内の発話の本心らしさ評価に対する表情の影響
:健聴者と聴覚障害者の比較
○三枝 千尋
1B23
生田目 美紀
筑波技術大学
渡邊 克巳
東京大学
非言語的図形の検索誘導性忘却
○小林 正法
1B24
東京大学
名古屋大学・日本学術振興会
大北 碧
麻布大学
川口 潤
名古屋大学
読書評価における読み材料の検討
○小田 浩一
東京女子大学大学院
乙訓 輝実
東京女子大学大学院
髙橋 あおい
東京女子大学大学院
大西 まどか
東京女子大学大学院
杉山 美智子
東京女子大学大学院
30
A
7
101
B
5
1
9:50
10:00
11:00
16:30
31
15:30
17:00
16:30
2A06
ニワトリ(Gallus gallus domesticus)における歩行時頭部運動の視覚性制御
の検討
○幡地
2A07
祐哉
京都大学
大瀧
翔
京都大学
藤田
和生
京都大学
標的カテゴリと妨害カテゴリの似ているところを見つけるだけで探索の効率
は悪くなる−カテゴリ探索におけるトップダウン的要因による標的-妨害刺激
類似性の変化について−
○大北
小林
2A08
碧
麻布大学
正法
名古屋大学大学院
いろいろとありがとうございます ―他者の不幸は嬉しいしクリエイティブ
にもしてくれる―
○佐々木
山田
2A09
綾部
道又
石口
筑波大学大学院
早穂
筑波大学
健吾
上智大学大学院
爾
上智大学
祥代
お茶の水女子大学
彰
お茶の水女子大学
ケーキナッペ技術の時間・動作によるパフォーマンス評価と比較の試み
○松熊
2A13
緑
視聴覚刺激の同時呈示課題による分散知覚処理過程の検討
○上田
2A12
九州大学
対連合学習課題時の正解刺激に対する視線の偏りについて
○田根
2A11
祐樹
九州大学/日本学術振興会特別研究員
ニオイへの反復接触による好ましさ上昇におけるラベルの影響 2
○小川
2A10
恭志郎
亮
首都大学東京
視覚探索の試行間プライミングにおける視覚的アウェアネスの役割
○小川
洋和
関西学院大学
32
2A14
2A15
視線が向きやすい方向に注意も向きやすい:視線・頭部方向と視覚的注意
○中島
亮一
理化学研究所
熊田
孝恒
京都大学
他者の視線知覚における空間の異方性
○森
将輝
渡辺
2A16
利夫
慶應義塾大学
表情認知における顔色の影響
○高橋
2A17
慶應義塾大学大学院
文代
北海道大学大学院
フサオマキザルとヒトにおける生体力学的に可能な身体姿勢と不可能な身体
姿勢の視知覚弁別
○松野
藤田
2A18
松本
大久保
2A21
和生
京都大学
朋也
神戸大学
絵理子
神戸大学
非注意による見落としは意味の類似性で変化する
○鈴木
2A20
法政大学
ワーキングメモリと選択的注意との関連:ERP による検討
○川島
2A19
響
玄
街亜
専修大学大学院
専修大学
バイオロジカルモーションからの感情判断課題におけるクラウディング
○池田
華子
立教大学
渡邊
克巳
東京大学
両眼刺激の視差勾配による近接する単眼刺激の視方向の偏位
○草野
勉
東京海洋大学大学院
相田
紗織
東京海洋大学大学院/日本学術振興会
下野
孝一
東京海洋大学大学院
33
2A22
2A23
ニオイ発生源の定位に風圧手がかりが及ぼす影響
○安藤
史織
筑波大学大学院
綾部
早穂
筑波大学
注意の瞬きにおける訓練効果―T2 を着色した課題の短縮版による検討
○橋本
2A24
2A25
2A27
福山大学
顔から性格を推測する際に用いられる評価軸:日本人大学生の場合
○池田
功毅
中京大学
齋藤
慈子
東京大学大学院
デジタル数字のクラウディング効果と視覚処理の階層性の関係
○林
2A26
優花里
大輔
東京大学大学院
大西
まどか
東京女子大学大学院
山上
精次
専修大学
経頭蓋直流電気刺激による美的選好の形成
○中村
航洋
慶應義塾大学大学院
川畑
秀明
慶應義塾大学
錯覚により生じる Intentional Binding 現象における先行経験の影響
○吉田
史明
立命館大学大学院
34
2A28
イルカの視覚メカニズムを求めて
○山田
祐樹
九州大学
妹尾
武治
九州大学
駒場
昌幸
九十九島水族館「海きらら」
池田
比佐子
九十九島水族館「海きらら」
松谷
綾夏
九十九島水族館「海きらら」
佐藤
瞭一
九十九島水族館「海きらら」
駒場
久美子
九十九島水族館「海きらら」
晶博
九十九島水族館「海きらら」
川久保
2A29
北岡
明佳
立命館大学
友永
雅己
京都大学
運動知覚における方位情報の役割: 心理物理学的解析
○原田
2A30
大輔
工学院大学
本吉
勇
東京大学
蒲池
みゆき
工学院大学
恋は時を歪ませる? —恋愛対象者の顔刺激提示中の時間認知特性
○新井
2A31
2A32
2A33
志帆子
慶應義塾大学大学院
中村
航洋
慶應義塾大学大学院
川畑
秀明
慶應義塾大学
反応抑制刺激嫌悪効果の生起における注意の役割
○井上
和哉
日本学術振興会・関西学院大学
佐藤
暢哉
関西学院大学
視覚・触覚情報間に存在する量的な規則性に対する知覚
○坂野
逸紀
関西学院大学
佐藤
暢哉
関西学院大学
道具の使用方向と身体近傍空間の変容の関連についての検討
○榎本
玲子
専修大学
山上
精次
専修大学
35
2A34
児童期における線運動錯視知覚
○和泉
2A35
絵里香
新潟大学
伊村
知子
新潟国際情報大学
白井
述
新潟大学
自然画像における人物検出の検討
○立花
行場
2A36
2A37
次朗
東北大学大学院文学研究科
○北村
美穂
NTT コミュニケーション科学基礎研究所
渡邊
克巳
東京大学先端科学技術研究センター
北川
智利
NTT コミュニケーション科学基礎研究所
眼球運動による幻効果の検討
大久保
2A39
東北大学大学院文学研究科
感情特性と感情状態が知覚的統合処理に及ぼす影響
○加藤
2A38
良
雅士
街亜
専修大学大学院
専修大学
分裂錯覚の生起に影響を与える視覚刺激の特性
○竹島
康博
東北大学大学院文学研究科/日本学術振興会
行場
次朗
東北大学大学院文学研究科
Iowa Gambling Task における曖昧性とリスクとの関連 ―後悔傾向,
numeracy,及び価値割引による検討―
○長谷川
秋山
2A40
千洋
学
神戸学院大学
神戸学院大学
周波数距離が 2 音の同時性知覚に与える影響
○岡崎
聡
千葉大学
一川
誠
千葉大学
36
2A41
色覚障害者,色弱模擬フィルタ装着の色覚正常者,色覚正常者の色彩感情の
測定
○野口
三星
2A42
由梨亜
神奈川大学大学院
宗雄
神奈川大学
非接触型アイマークカメラを用いた視線情報のフィードバックによる影響
○松田
典子
大阪市立大学大学院
岡田
明
大阪市立大学大学院
山下
久仁子
大阪市立大学
37
【5 号館 1 階ホール】
2B01
2 次元刺激の数量順応は 3 次元刺激の数量/密度判断に影響するか?
○相田
2B02
紗織
東京海洋大学・日本学術振興会
草野
勉
東京海洋大学
下野
孝一
東京海洋大学
視覚的運動情報による時間知覚の変化―先行刺激および対象の運動が及ぼす
影響とその相互作用―
2B03
○佐藤
駿
専修大学
中沢
仁
専修大学
視覚刺激の分散抽出過程における情報処理特性
○時田
2B04
2B05
みどり
お茶の水女子大学
上田
祥代
お茶の水女子大学
石口
彰
お茶の水女子大学
往復効果における身体活動の影響
○小澤
良祐
大阪大学大学院
藤井
慶輔
名古屋大学
北澤
茂
大阪大学大学院
神﨑
素樹
京都大学大学院
位置関係の知覚における haptic egocentre の検討
○若生
綾部
2B06
遼
筑波大学
早穂
筑波大学
多感覚特徴の共起による知覚変容の検討
○熊倉
横澤
恵梨香
東京大学大学院
一彦
東京大学大学院
38
2B07
2B08
周辺視での刺激の見えを決定する情報統合の時間窓
○寺尾
将彦
東京大学大学院
村上
郁也
東京大学大学院
単一セッション内でみる反応復活
○藤巻
坂上
2B09
千葉大学
めぐみ
札幌大谷大学短期大学
隆博
岩手県立大学
香りと色により産出されるオノマトペ表現
○甲村
美帆
群馬県立女子大学
金子
有貴
群馬県立女子大学
ハトのプラッド運動知覚に及ぼす空間周波数・コントラスト分化の効果
○大瀧
2B14
誠
千葉大学
注意の瞬き現象から見た表情の知覚特性:怒り顔は注意を惹かない?
○桐田
2B13
慶應義塾大学
選好は揺らがないのか
○川口
2B12
貴之
淳二
一川
2B11
慶應義塾大学大学院
運動定義運動の知覚的同期
○柳
2B10
峻
翔
京都大学
Bucher Benoit
京都大学
幡地
祐哉
京都大学
藤田
和生
京都大学
視覚的フィードバックの遅延に対する気付きが身体運動-視覚間時間再較正
に及ぼす影響
○辻田
一川
匡葵
千葉大学
誠
千葉大学
39
2B15
3D プリンタで作成した幾何学的“錯触”刺激の錯触量測定
○宮岡
2B16
行場
次朗
東北大学大学院
神奈川大学
和氣
洋美
神奈川大学
斎田
真也
神奈川大学
観察者の眼間距離は錯視量の個人差を予測するか
岡部
2B20
東北大学大学院
允範
○田谷
2B19
陸
視覚が及ぼす主観的音量弁別への影響
○康
2B18
静岡理工科大学
感覚モダリティ内群化は音による視覚的時間知覚の伸縮効果を消失させる
○朝岡
2B17
徹
修一郎
大正大学
香菜
大正大学
複数の刺激セットで探る探索非対称性のメカニズム
○上田
祥行
京都大学
黒須
慎吾
京都大学
齋木
潤
京都大学
自己運動知覚における皮膚感覚情報の役割:実際の移動を含めた検討
○村田
佳代子
首都大学東京
小松
英海
慶應義塾大学
中野
泰志
慶應義塾大学
市原
茂
(株)メディア・アイ
石原
正規
首都大学東京
増田
直衛
慶應義塾大学
40
感性評価研究所
2B21
触運動による対象同定過程に及ぼす対象の大きさと重さの影響:大学生と幼
児を対象者として
○小松
小原
2B22
2B24
慶應義塾大学
健一郎
明星大学
「おべんとう絵本」の事象知覚に関する実験的研究
○鈴木
2B23
英海
清重
慶應義塾大学/立教大学
時間再生課題における脳波基礎律動の検討
○富永
大悟
北海道大学大学院
室橋
春光
北海道大学大学院
口の動的変化による目の微表情変化の抑制
○野口
泰基
神戸大学
41
42
研究発表要旨
1 日目
12 月 6 日(土)
43
A
7
101
B
5
1
9:50
10:00
11:00
17:30
44
11:00
18:00
12:00
1A02
ワーキングメモリ要素に対するプレッシャーの効果
○小林
晃洋
大久保 街亜
専修大学大学院
専修大学
プレッシャーによりパフォーマンスが低下するあがり現象は,ワーキングメモリの働きがプ
レッシャーによって妨害されることで生じると考えられている。本研究では,注意の焦点,直
接アクセス領域,活性化された長期記憶という複数のワーキングメモリ要素からなる Oberauer
のモデルを基に,プレッシャーが各要素に及ぼす効果を検討した。参加者は低プレッシャー条
件と高プレッシャー条件で,3 つのワーキングメモリ要素を独立に測定する記憶更新課題
(Oberauer, 2002) を行った。プレッシャーは注意の焦点の切り替えを促進させた。一方,直接
アクセス領域の処理は妨害せず,活性化された長期記憶の処理を妨害することが示された。こ
こからプレッシャーは,ワーキングメモリに一様の影響を与えるのでなく,ある領域には促進
的な影響を及ぼし,またある領域には抑制的な影響をもつことが明らかになった。
1A03
非線形最適化問題と最適化法によるパラメータの変動
○浅川 伸一
東京大学
非線形回帰を行うことは難しい問題である。入出力データ関係を調べることは容易ではない。
データの真のモデルは知らされず,未知の汎化テストで最適な成績を求めることが要求される
からである。この時汎化データに対して最も適合するパラメータを探す必要がある。非線形近
似の場合,パラメータに関するヘシアン H の計算量からジャコビアン J を代替する方法が提案
されてきた。ガウス・ニュートン法に対してマルカールトは単位行列を J の対角要素で置き換え
る方法を提案した。しかしこの方法は収束の状況によりの調整が必要である。加えての大きさ
に依存して,推定すべき各パラメータの重みが変化する。パラメータ変化の意味とベイズ流推
論との関係を議論することは可能であるが,オッカム因子の導入と事前分布の仮定が必要とな
る。この OF も正則化法の一つであり各種正則化法と同じと見做すことが出来る。そこで,正則
化法とその影響がパラメータの決定に及ぼす意味について考察を加えた。
45
1A04
連続制御における課題のパフォーマンスが運動主体感に与える影響
○温
文
東京大学
山下 淳
東京大学
淺間 一
東京大学
運動主体感(sense of agency)とは,ある外部の事象を変化させた主体は自分であるという主
観的な感覚である。本研究では,連続的な操作において,課題のパフォーマンスが運動主体感
に与える影響を調べた。実験参加者は左右の方向キーを押すことで,ディスプレイ内で運動す
る物体の方向を制御し,可能な限り早く目的地に到着させる課題を行った。各試行において,
自分の制御がどのぐらい効いたのかを答えた。実験課題において,すべての操作が実行される
条件(統制条件)とコンピューターが誤った操作を無視する条件(補助条件)が設けられた。
その結果,補助条件においては,実験参加者のコントロールが弱まったものの,課題のパフォ
ーマンスが向上し,統制条件よりも運動主体感が強かった結果が見られた。人間が運動主体感
を判断する際に,単に自分の行動とフィードバックを照合するのではなく,望みに基づいた感
覚的な推論にも頼っていると考えられる。
1A05
全盲の視覚障がい者におけるユニバーサルデザインの妥当性に関する研究
○長崎 郁夫
佐藤 千秋
山形大学
山形県立山形盲学校
今日障がい者及び高齢者,また健常者が共有しうる物品の形状やデザインとして,ユニバー
サルデザインが様々な場面で見受けられる。その中で特に視覚障がいを意識し作成されたデザ
インを見ることができるが,その際,視覚障がい者特に弱視であるか全盲であるか,さらには
先天的な全盲者であるか中途視覚障がいによる全盲なのかにより,デザインの認知のしかたに
差を生じていることがしばしば見られる。そこで本研究では,触覚による形状から知覚するこ
とを目的としたデザインについて,全盲者のうち先天的全盲者と,中途視覚障がい者について,
その知覚による認知のあり方の差異の発生について,実際のデザインとそれぞれの条件を有す
る視覚障がい者により検証するものである。このことにより個々のユニバーサルデザインが,
より有効性をもつものとして効果を高めることへつなげることができるものと考える。
46
1A06
拡張した仮想身体の操作が身体性自己意識および身体表現に与える影響
○渋谷 賢
杏林大学
大木 紫
杏林大学
被験者の右手と連動する仮想の右手(12cm 前方)の周期運動(4 分間)により,錯覚を誘導
した。誘導時の仮想の手の配置(一致・不一致)と運動様式(能動・受動運動)を操作した。
1)右手の視覚性位置判断(VJ),2)右手の到達運動(TR),3)閉眼両手位置合わせ(BM)
が誘導前後で実施された。従来の報告通り,身体性自己意識に関する質問紙評価は,身体所有
感と運動主体感の二重乖離を示した。BM の固有感覚ドリフト(PD)は,運動様式に関わらず
一致条件でのみ認められた。VJ と TR の PD は不一致条件よりも一致条件の方が,また受動運動
よりも能動運動の方が有意に大きかった。重回帰分析の結果,BM のみが身体性自己意識と有意
な相関を示し,特に身体所有感と関連していた。以上の結果は,拡張した仮想身体の操作が複
数の身体表現を異なる形で変えうること,これらの身体表現の変化の一部分が身体所有感と連
関していることを示唆する。
1A07
文章の読みやすさを決める漢字の量的要因
○杉山 美智子
東京女子大学大学院
土田 優
東京女子大学
小田 浩一
東京女子大学
目的:国や役所の公文書の文章は難解で日本語母語話者でも読みにくいことがある(庵, 功雄, 岩田, 森 2011)。本研究では読みやすい文章の特徴を検討するため,読書実験から,漢字含有量・
漢字連続量・難単語の有無の 3 つの量的要因が読みやすさをどれくらい説明するか調べた。方
法:公文書から 100 文字程度の文章を 60 種類抜粋し,
「やさしい日本語」ルールで書き換え,
計 120 種類の刺激文を作成した。暗室にて PC 画面に刺激文を1つずつ提示し,出来るだけ速く
正確に音読させ,読み速度を計測した。実験参加者は正常視力を有する日本語母語話者 18 名で
あった。結果と考察:読み時間と正読字数から1分当たりの読速度を求め,漢字含有率・漢字
連続率・難単語の有無で重回帰分析を行った結果,3つの要因は全て有意になり,全体で読速
度の分散の 56%を説明した。これは文章中の漢字を量的に減らせば公文書は相当に読みやすく
なることを示唆している。
47
1A08
「映画の逆回し」と事物の知覚的恒常
○鷲見 成正
慶應義塾大学
吐いたタバコの煙りが口の中に吸い込まれていく,食べた物が口から吐き出される;映画で
は「覆水盆に返る」の現実を目の当たりにすることができる。大きさの恒常を「視物 ID」と奥
行きへの視覚刺激の知覚的分岐効果と考えるならば,変化する事物の恒常は「事象 ID」と時間
経過への刺激の分岐効果とみすことができる(鷲見,心理学評論,1991)。「トリ ID」と若さへ
の分岐はヒナ鳥に愛らしさを感じさせ,
「友人 ID」と歳月への分岐は深く刻まれた旧友の皺顔に
その過去をみる。しかし老人に扮した少年に年月を経た「人 ID」を認めるのは難しい。時間方
向に関する類同要因の‘まとまり’や分岐効果を妨げるシンメトリー要因の働きなどから事物の
たんなる継起的な配列だけでは「事象 ID」への分岐は認められないことを示した Sumi(5th ICEPA, 1989)により,
「映画の逆回し」現象が知覚的分岐効果と密接な関係にあることを知り得
た。
1A09
自然な物体における視覚,聴覚,触覚の感覚間協応
‐木の質感知覚を例として‐
○金谷 翔子
産業技術総合研究所
時田 みどり
お茶の水女子大学
苅谷 健司
住友林業株式会社
藤崎 和香
産業技術総合研究所
感覚間協応とは音高と図形の大きさのように直接関係のない二つの感覚属性の間に,何らか
の対応関係が感じられる現象であり,外界における物理特徴の共起関係を反映したものではな
いかと議論されている。しかし先行研究では単純かつ人工的な刺激が用いられており,現実世
界に存在する自然な物体において感覚間協応が見られるかは未解明である。そこで本発表では,
自然な物体(木)について視,聴,触覚で独立に質感評価を行った藤崎・時田・苅谷 (2013,
視覚学会)の実験データの一部を,感覚間協応の問題に焦点を当てて再分析した結果を報告す
る。具体的には,表面の明るさ(視),音の鋭さ(聴),ざらざら感(触)について,実際の知
覚評価と,他のモダリティから想像した知覚評価との比較を行った。分析の結果いずれの評価
項目においても視触覚,聴触覚の評定の間に有意な正の相関がみられた。一方で視聴覚の間に
は有意な正の相関は見られなかった。
48
1A10
コンデンス書体の可読性とクラウディング効果
--低視力シミュレーションによる検討-○中野 泰志
小松 真也
慶應義塾大学
東京大学大学院
文字を横方向に圧縮するコンデンス書体は,限られたスペースに文章を配置したり,ルビを
表示する際に有効だと考えられる。しかし,圧縮することによって可読性は低下する。中野(2013)
は,圧縮率と可読性の関係を調べた結果,圧縮率が上がる程,可読性が低下することを明らか
にした。本研究では,圧縮率を上げることによる可読性の低下をクラウディングの観点から検
討した。横幅を 50%に圧縮したコンデンス書体を用い,文字間隔を文字幅の 0%,18%,36%,
55%に変化させたときの可読性を MNREAD-­J を用いて比較した。その結果,臨界文字サイズと
最大読書速度には有意な差はなかったが,読書視力については 0%とそれ以外の間に有意な差が
認められた。つまり,文字間隔を 18%以上空けることで,読書視力が向上することがわかった。
1A11
キーが近いことによる分けにくさは,学習により解消される
○渡辺
友里菜
吉崎 一人
愛知淑徳大学
愛知淑徳大学
近年,身体の動きと認知的活動の関係を探る Embodied Cognition の研究が行われている。
Lakens et al. (2011) は,反応キーの近接性が,空間が関与しないストループ効果(干渉)を増大
させることを示した。この効果は実験初期試行のみでみられることが示されているが,生起要
因は明確ではない。本研究は,反応キーの近接性による干渉量の変化が,刺激と反応の連合学
習過程であるかを検討した。参加者は,反応手とターゲットとの対応(例:右手が白色,左手が
黒色)が共通した 2 課題(サイモン/ストループ課題)を,反応キー間が近い場合と遠い場合で
行った。反応キーの近接性による干渉量の増大が,刺激と反応の連合学習量によるものなら,
前半課題(例:サイモン課題)でみられ,後半課題(例:ストループ課題)ではみられないと
予想した。結果はこれを支持した。この結果は,反応キーの近接性による干渉量の増加は,刺
激と反応の連合学習の初期段階で生じることを示唆した。
49
1A12
図地の成立におけるテクスチャの効果
○高島 翠
いわき明星大学
篠原 幸喜
獨協大学
藤井 輝男
敬愛大学
椎名 健
筑波大学
これまでどのような領域が図になりやすいのかに注目した研究が多くなされてきた。たとえ
ば Oyama(1960)では,図になりやすい要因として方位や面積,明度が挙げられている。また,
盛永(1960)は,図の背後で地の領域がつながって見えることを重視している。本研究ではど
のようなテクスチャが図になりやすいのかについて,運動情報の有無とアモーダル知覚との関
係から検討する。6 等分した円の隣り合わない 3 つの領域を中灰,残りの領域を黒と白のテクス
チャとした。テクスチャは正円および楕円による同心円を作成し,中灰の領域とテクスチャの
領域のどちらが図になりやすいのか検討する。
1A13
視覚性ワーキングメモリにおける選択的注意の効果
―色と空間に基づく選択の比較―
○李
琦
齋木 潤
京都大学
京都大学
In the present study, we investigated the effects of feature-­ and location-­based selection on visual working memory (VWM) encoding and maintenance by manipulating cue type (color, location) and cue timing (precue, retro-­cue) in a change detection task. In two experiments using different stimuli, results consistently showed a significantly greater effect for color precues than for color retro-­cues, but no difference between location pre-­ and retro-­cues. This indicates that the attentional modulation via color is more effective during VWM encoding than during maintenance, whereas the modulation via location is similar in the two cases. More surprisingly, the color precue effect was significantly greater than the location precue effect, suggesting that color information influences VWM encoding more than does location information. The third experiment using a perceptual task (visual search) showed a greater location than color precue effect, indicating that the color precue advantage in the VWM task is related to the modulation of memory encoding rather than of sensation and perception. Our findings reveal new aspects of the interaction between attention and VWM.
50
1A14
ドレミファソラシは虹の七色:色聴におけるピッチクラスと色の対応
○伊藤 浩介
新潟大学脳研究所
中田 力
新潟大学脳研究所
音や音楽を聴くと色を感じるタイプの共感覚を色聴という。色聴では,どのピッチクラス(ド
レミファソラシ)に対して何色を感じるかは個人差が大きく,その対応関係に普遍性はないと
されている。この定説がどの程度正しいか,32 名の色聴保持者で検討した。各ピッチクラスに
感じる色をコンピュータ上で選ばせたところ,既報通り,かなりの個人差が認められた。しか
し,得られた色の RGB 値を被験者間で平均すると,ドの赤からシの紫まで,7つのピッチクラ
スが可視光スペクトルに順序良く対応する隠れた関係が現れた。さらに,色聴のない被験者 16
名に色を強制的に選ばせたところ,その平均値にも同様の虹色のパターンが認められた。つま
り,色聴保持者におけるピッチクラスと色の連合は,ヒトに普遍的に潜在的に備わる視聴覚連
合が何らかの要因で顕在化したものと推測される。しかし,なぜ7つの階名が光スペクトルに
順序良く対応するのか,その機序は不明である。
51
1A15
顔の視覚的な気づきに右紡錘状回顔領域は重要である:脳磁場反応解析
○久米 迪子
九州大学
前川 敏彦
九州大学
浦川 智和
九州大学
緒方 勝也
九州大学
廣永 成人
九州大学
執行 真旗
九州大学
飛松 省三
九州大学
顔や物体を呈示したとき,紡錘状回顔領域(FFA)から生じる脳磁場反応(N170m)は,右優位で
顔に対してより速く大きく反応することが知られている。FFA の顔認知に関連する脳活動が,
刺激特性の入力だけで出現するのか,あるいは視覚的な気づきが生じて出現するのかを,擬視
野闘争(PSE)と両眼視野闘争(BR)条件下で検討した。PSE では,N170m は右優位かつ顔に対して
N170m が出現した。BR では,顔の刺激が視覚的に抑制された時は,ほぼ N170m が誘発されな
かった。しかし,顔に対して視覚的な気づきが生じたときには N170m が誘発された。この N170m
潜時は受動的に顔の知覚が生じた時(PSE)と変わらなかった。視覚的な気づきに伴う N170m の振
幅は右優位に大きかった。以上より,顔認知に関連する N170m の誘発には視覚的な気づきが不
可欠であり,右 FFA がより重要な役割を担っていることが示唆された。
52
1A16
課題非関連特徴が価値駆動的に注意を捕捉する
○峯
知里
京都大学大学院
齋木 潤
京都大学大学院
報酬学習によって報酬と結びついた刺激特徴は,注意を捕捉することが知られている。しか
し,報酬学習が成立するための必要条件については明らかにされていない。本研究では,フラ
ンカー課題を用いた2つの実験によって,報酬が課題遂行とは無関連な刺激特徴と結びつき,
注意を捕捉するかどうかを検討した。実験1の学習フェイズでは,標的が位置で定義されるフ
ランカー課題において課題非関連な特徴である文字の色と報酬を結びつけた。さらに,実験2
ではフランカー課題の周囲に提示された枠の色と報酬を結びつけた。報酬学習の影響は,学習
フェイズ終了後の視覚探索課題によって検討した。その結果,視覚探索課題において,高報酬
条件は低報酬条件や統制条件に比べて反応時間が有意に遅延した。このことから,報酬が課題
非関連な刺激特徴と結びついた場合においても,高報酬と結びついた刺激は注意を捕捉するこ
とが示唆された。
1A17
高解像度ディスプレイとロービジョンの関係(2)
○大西 まどか
東京女子大学大学院
小田 浩一
東京女子大学大学院
大西・小田(2014)は,文字を構成するピクセル数を変えることで解像度を変化させてコントラ
スト閾を比較し,高解像度の表示では文字の認識に必要な基本周波数の成分が多く,閾値が低
くなると報告した。しかし,解像度の変化と刺激同士の類似性が共変していたため,本研究で
は解像度による類似性の変化が少ない刺激を使い,解像度の違いが文字のコントラスト閾に与
える影響を再検討した。文字に似たモノクロ画像(視角 18.9 分,解像度による刺激の類似性の変
化は 2%以下)を刺激に用い,6,8,12,16,24,32,48pixel/文字の解像度を設定して,それぞれ上下法で
コントラスト閾の測定を行った。コントラスト閾に対する分散分析の結果,解像度の主効果が
有意となり,先行研究と同様の結果が得られた。類似性の影響を最小限にしたので,基本空間
周波数の成分の変化によって高解像度表示における視認性が向上した可能性が強まった。
53
1A18
個人間で共通する芸術作品に対する感性の定量評価の試み
○若林 正浩
大阪大学
芸術作品に対する「感性」では,作品鑑賞能力だけでなく,他者との円滑なコニュニケーシ
ョンを可能とする能力として個人間で共通する「感性」の重要性が指摘されている。しかしな
がら,これまでの感性心理学研究において,感性が個人間でどの程度共通性を持つのか,とい
う点についてはほとんど検討されてこなかった。本研究では,画像印象評定課題として 77 名の
被験者に 30 枚の画像(風景画 15 枚,風景写真 15 枚)を提示し,23 形容詞対による SD 法と因子
分析を実施した。画像毎に算出される因子得点について,被験者間で最も相関の高い因子を対
象として再度因子分析を行った。その結果,第 1 因子については,被験者間で共通した 1 つの
潜在因子で説明され,個人の印象評定の約 30%を説明することが明らかとなった。この因子成
分による出力を利用することで,ヒトは他者が芸術作品についてどのような印象をもつのかを
推測している可能性が考えられる。
1A19
幼児における虚記憶の発生メカニズムと自己制御機能の関係
○堀越 歩
専修大学大学院
小林 正法
名古屋大学大学院
真田 原行
東京大学大学院
榎本 玲子
専修大学
山上 精次
専修大学
6 歳,8 歳,10 歳の児童を対象に虚記憶と実行機能の関係性を検討した Ruffman, Rustin, Garnham, & Parkin (2001) はそれらに負の関連を見出した。本研究では就学前の幼児を対象に虚記憶と実
行機能の関連を検討した。31 名の幼児 (M = 5 歳 7 ヵ月, SD = 7 ヵ月) に対し,実行機能と近い
概念である自己制御機能を保育士評定にて測定した後,聴覚提示による DRM 手続きを行った。
実験の結果,自己制御機能が正再生数に正の影響 (β = .43, p = .01) を与え,正再生数が虚再生数
に正の影響 (β = .41, p = .02) を与えていた (CFI = 1.00, RMSEA = .00) 。自己制御機能の高い幼児
は聴覚課題に固執しすぎず記銘に注意を分配できるため正再生数が増加するが,意味的処理が
導かれ虚再生数が増加したと推測される。
54
1A20
ニオイの選好判断に及ぼす接触順序の影響
○中野 詩織
綾部 早穂
筑波大学大学院
筑波大学
複数のニオイの中から最も好きなものを選ぶ際,最初に嗅いだニオイへ選好が偏る傾向があ
る(中野・綾部,2011)。本研究では,接触順序による選好への影響について,選択肢間の比較
難易度(弁別性)を要因として調べた。弁別性低セットとしてジャスミンティー4 種類,弁別性
高セットとしてフレーバーティー4 種類の 2 セットを用いた。各ニオイへの接触順序とセット順
序は参加者間でカウンターバランスをとった。実験の結果,弁別性高セットでは接触順序間で
選好に偏りは無かったが(χ2(3) = 1.81, ns),弁別性低セットでは 1 番目に嗅いだニオイを選好し
た参加者が他の順序よりも有意に多かった(χ2(3) = 34.38, p < .01)。一週間後に,一日目とは接
触順序を変えて再度各セットの選好判断を求めた場合でも同様の傾向がみられた。これより,
選択肢が互いに似通っている場合には,どの順番で接触したかが選好に重要である可能性が示
唆された。
1A21
運動視の同化・対比と脳内の神経伝達物質との関係
○吉本 早苗
日本女子大学
竹内 龍人
日本女子大学
島田 育廣
ATR-­Promotions
河内山 隆紀
ATR-­Promotions
近藤 洋史
NTT コミュニケーション科学基礎研究所
運動方向が曖昧なテスト刺激は,先行する運動刺激の持続時間が短いとそれと同方向に見え
(同化),持続時間が長いと反対方向に見える(対比)。同化から対比に切り替わる先行刺激の
持続時間には大きな個人差があるが,その理由は明らかではない。そこで本研究では,脳内の
神経伝達物質の濃度と運動視の時間的な同化・対比の個人差との関係を検討した。MR スペクト
ロスコピーにより,神経細胞の抑制を担う γ-­アミノ酪酸(GABA)および興奮を担うグルタミン
酸(Glu)濃度を計測した。合わせて,同化から対比へ切り替わるときの先行刺激の持続時間を
心理物理学的に推定した。その結果,Glu 濃度に関しては持続時間と前部帯状皮質との間に正の
相関,および MT 野との間に負の相関が認められた。一方で,持続時間と GABA 濃度との間に
は相関が認められなかった。運動視の同化と対比における個人差は,興奮を担うグルタミン酸
の濃度差を基盤とした同化の機能の違いに基づいている可能性が示唆される。
55
1A22
黒子が男に見えるとき ―自己の身体能力に基づいた他者判断―
○岸本 励季
九州大学大学院
佐々木 恭志郎
九州大学大学院
郷原 皓彦
九州大学大学院
小代 裕子
九州大学大学院
南
九州大学大学院
智然
三浦 佳世
九州大学大学院
山田 祐樹
九州大学
人のシルエットや声について社会的カテゴリ判断を行うと,男性や外集団のメンバーなどの
自己に危害を及ぼす可能性の高いものの方向に判断が偏る。このような判断バイアスは,たと
えエラーを伴うおそれがあったとしても,脅威となりうる他者を効率的に検出し,排除するた
めに生じていると考えられている。本研究では,この判断バイアスが身体的負荷や体力によっ
て影響を受ける可能性について検討した。参加者は,錘の入ったリュック (大負荷条件) あるい
は錘の入っていないリュック (小負荷条件) を背負いながら,男性らしさと女性らしさを 21 段
階で変化させたシルエット刺激の性別判断を行った。結果として,負荷条件間で判断成績に差
はない一方で,女性参加者でのみ BMI と血中酸素飽和度が低いほど性別判断が男性方向へ偏る
ことが明らかになった。本研究の結果は,女性が一時的な身体的負荷よりも自身の身体能力を
基に社会的判断を行いやすいことを示唆する。
56
1A23
無意味図形に対する直感的選好と脳領域間の位相同期
○武田 裕司
(独)産業技術総合研究所
木村 元洋
(独)産業技術総合研究所
これまでの研究において,物品の写真画像に対する直感的選好判断課題では,ポジティブな
選好判断を行っている場合に刺激提示後 150-­350 ミリ秒付近における低ガンマ帯域(30-­40 Hz)
の脳領域間位相同期性が高いことが示されている。このことは,単位時間あたりの脳領域間の
情報伝達量(情報処理量)が多い場合に「好き」と答えやすいことを示している。本研究では
無意味図形に対する選好と脳領域間位相同期性の関係を検討した。その結果,物品の写真画像
に対する判断時とは逆に,ポジティブな選好判断を行っている場合に低ガンマ帯域(ピークは
刺激提示から 292 ミリ秒後)の脳領域間位相同期性が低下することが示された。このことは,
刺激への情報処理量が多い場合に「好き」と答えやすいのか,逆に情報処理量が少ない場合に
「好き」と答えやすいのかが,判断対象となる刺激の種類によって異なることを示している。
1A24
洞察問題解決における認知資源と拡散的処理モードの影響
○西田 勇樹
立命館大学
織田 涼
立命館大学
服部 雅史
立命館大学
近年の洞察問題解決研究では,二重課題法による認知負荷が気づきを伴わない潜在ヒントの
利用を促進するという研究結果が報告されている(服部・織田, 2013)。しかし,その促進効果は,
認知負荷が認知資源の分散をもたらしたことによる効果なのか,収束的思考を抑制したことに
よるものなのかが明らかではない。そこで,本研究では,洞察問題開始前に収束的処理に誘導
する計算課題,または拡散的処理に誘導するアイデア生成課題を行うことで,認知負荷がもた
らす潜在ヒント利用促進効果について検討した。実験の結果,アイデア生成課題を実施した認
知負荷なし条件において,洞察問題開始後 95 秒時点で正答率の上昇がみられた。また,認知負
荷による促進効果自体は見られなかったが,アイデアを多く生成した参加者は認知負荷によっ
てむしろ解決が抑制された。以上の結果から,処理モード操作とアイデア生成数が後続の洞察
問題解決に与える影響について考察した。
57
1A25
表情変化の速度が知覚される感情に与える影響
○乙訓 輝実
東京女子大学大学院
目的:人は他人の表情から複雑な感情を知覚するが,表情変化の速度によって複雑感情の知
覚に影響がみられる(Kamachi et al.,2001)。本研究では表情変化速度を変えたときの,感情の知
覚の仕方について検討する。方法:表情は 4 種類(喜び,驚き,怒り,悲しみ)である。表情変化刺激
は真顔から始まり4表情のうちの1表情で終わる動画である。表情変化速度は 100ms-­3200ms の
6 種類。視力条件は正常視力-­0.1 の 4 条件とし,刺激サイズは視角 1.44 度である。感情評価は自
慢,楽観,夢中,安堵,憤慨,嫉妬,苦痛,失望,恥ずかしい,無視,同情,驚きの 12 感情に
対し知覚強度を 5 件法で評価をさせた。結果と考察:各表情から知覚した複雑感情は主に表情
と同じ感情カテゴリの下位に属し,表情変化の速度によって各感情の知覚強度に違いがあった。
複雑感情により知覚速度が異なるため,表情からの知覚感情に差異が起こると考えた。
1A26
実験環境が情動刺激処理に及ぼす影響:木質空間と非木質空間の比較
○木村 元洋
産業技術総合研究所
苅谷 健司
住友林業株式会社
永井 聖剛
愛知淑徳大学
心理学や神経科学実験では,複数の条件を同一の実験室で行うのが一般的である。しかし我々
を取り巻く環境の多様性を考えると,環境自体が人間の認知機能に与える影響の理解もまた重
要な研究課題といえる。本研究では,情動刺激処理に対する実験環境の影響を調べた。木質お
よび非木質空間において不快・快・中性画像を呈示し,被験者(成人 48 名)には,普段と同じ
ように画像を観察するよう求めた。画像に対する事象関連脳電位(ERPs)を測定した結果,中
心-­頭頂部を優位とする後期陽性電位(LPP)が,画像呈示後約 600-1500 ms にわたって観察さ
れた。非木質空間に比べ木質空間での LPP は,画像の種類を問わず,1000-1500 ms 区間で減衰
した。LPP は情動刺激に対する自動的・持続的な注意を反映していると考えられている。本研
究結果は,木質空間では情動刺激へ向いた注意が拡散しやすくなる可能性を示唆している。
58
1A27
処理の流暢性が刺激の美的評価に及ぼす影響
○森田 磨里絵
東京女子大学
田中 章浩
東京女子大学
人はどのようなものを見ると,美しさや好ましさを感じるのだろうか。同一の視覚刺激に複
数回曝露されると当該刺激に対する知覚情報処理は流暢になり,知覚情報処理の流暢性が高ま
るほど美的評価も高まることが知られている。しかし,刺激に関する情報処理は,知覚レベル
よりも高次のレベル(概念レベルなど)でも行われる。本研究では,画像に対する知覚レベル
および概念レベルの情報処理の流暢性が美的評価に及ぼす影響について検討した。実験では,
New 画像および Old 画像に対して,Remember/Know 判断および美的評価(美しさ,好ましさ)
を求めた。画像に対する Know 判断は知覚レベルの流暢性,Remember 判断は概念レベルも含め
た流暢性を反映していると仮定する。実験の結果,Old 画像のうち,Know 判断された画像と比
べて Remember 判断された画像に対する美的評価が有意に高く,概念レベルも含めた流暢性が美
的評価を高める可能性が示唆された。
1A28
無意味刺激に有意味さを知覚する現象(パレイドリア)の個人差
○加地 雄一
東京家政学院大学
北村 美穂
NTT コミュニケーション科学基礎研究所
北川 智利
NTT コミュニケーション科学基礎研究所
無意味刺激に有意味さを知覚する現象をパレイドリアという。本研究ではパレイドリアの個
人差(性別,性格,感情)を検討した。参加者は大学生 166 名であった。性格は TIPI-­J(外向性,
協調性,勤勉性,神経症傾向,開放性の 5 因子)
,感情は日本語版 PANAS(陽性,陰性の 2 因子)
で測定した。無意味刺激(ランダムドット)を呈示し,何か形が見えたらペンでその形をふち
取り(何も見えない場合はその旨を報告)するよう求めた。結果,パレイドリアは 128 名に生
じ,38 名には生じなかった。パレイドリアの有無を従属変数とし,性別,性格 5 因子,感情 2
因子を独立変数とするロジスティック回帰分析を行ったところ,パレイドリアは女性ほど,神
経症傾向が高いほど,陽性感情が高いほど,陰性感情が低いほど生じやすいという結果が得ら
れた。パレイドリアの物理特性の個人差を検討したところ,開放性が高いほど面積が大きかっ
た。
59
1A29
香りの二者択一課題におけるサンプリングバイアス
○満田 隆
立命館大学
眼前に提示された 2 枚の画像から好きな画像1枚を選択するとき,選択直前に視線は選択側
の画像に向く傾向がある。視線が向けられた画像は,単純接触効果によって他方の画像に比べ
て好意度が増す可能性があることから,これまで多くの研究者によって視線バイアスと選好判
断の関係が研究されてきた。しかし,視覚以外の選好判断においても同様のバイアスが生じる
かどうかは,これまでほとんど検証されていない。そこで本研究では,アロマオイルの選択課
題中の嗅動作を計測した。実験の結果,好きな香りの選択課題では選択直前に選択側を嗅ぐ傾
向が強いのに対して,嫌いな香りの選択課題ではその傾向が弱かった。しかし,より男性的な
香り,または女性的な香りの選択課題においても,選択直前に選択側の香りを嗅ぐ傾向が見ら
れた。この結果は,香りの選択課題における嗅動作のバイアスが,選好に限定されない一般的
な性質であることを示している。
1A30
ギャップ前後での時間マーカーの空間周波数変化による時間分解能の低下
○廣瀬 信之
九州大学
山本 美和
九州大学
奥田 譲
九州大学
森
九州大学
周司
聴覚では,無音前後の音の周波数が同一である周波数内無音検出と比べ,周波数が異なる周
波数間無音検出において時間分解能が低下する。これは無音を挟む先行マーカーと後続マーカ
ーが異なる周波数チャンネルで処理され,無音(時間ギャップ)の検出にチャンネルをまたい
だ時間処理が必要であるためと考えられている。視覚系には特定の周波数帯域に選択的に応答
する複数の空間周波数チャンネルが存在することが知られている。本研究では,Gabor パッチを
時間マーカーとした時間ギャップ検出課題を用い,視覚における時間分解能を測定した。ギャ
ップ前後のマーカーの方位が同じ場合(実験1)も両者の間に 15 度の方位差を設けた場合(実
験2)も,一部の条件を除き,周波数間条件では周波数内条件と比べてギャップ検出感度の有
意な低下が認められた。したがって,空間周波数次元におけるチャンネル間処理によって時間
分解能が低下する可能性が示された。
60
1A31
多段階抽選ゲームでの反応時間に対する結果パターンの効果5
○大森 貴秀
慶應義塾大学
原田 隆史
同志社大学
坂上 貴之
慶應義塾大学
3段階の抽選を経てアタリが確定するスロットマシン型ゲームにおいて,各段階の通過確率
配分と結果パターンが反応潜時に及ぼす効果が検討されてきた。スロットマシン実機筐体を用
いたシミュレータでの先行研究で,アタリとニアミス(1,2番目の停止図柄がアタリ図柄で
あるハズレ)が次試行の開始ボタンの反応潜時を増大させる効果が確かめられ,その効果がア
タリの生起頻度と報酬を変化させることで変化し,ゲーム全体の反応潜時と面白さの評価にも
影響する可能性が示された。本研究のシミュレータ実験では,2種類のアタリ図柄間でアタリ
の生起頻度と報酬のいずれかのみを変化させる条件の導入を試みた。これによりこの2つのゲ
ーム要素が反応潜時,ゲームの主観評価に対して持つ効果を分離し,多段階抽選ゲームの魅力
の規定因をより詳細に把握することを目指す。
1A32
衣食住におけるストレスを軽減する配色に関する研究
○袁
東
北海道大学
近年,色彩セラピーや色彩心理のように,色と人々の感情の関係に注目が集まっている。ま
た,人々は色にさまざまなイメージを持っており,その時の感情でインテリアや服の色を選ぶ
ことがあると言われている。たとえば,興奮しているときは赤系の色,悲しいときは青系の色
などが挙げられる。あるヨーロッパの出来事で,うつ病の患者の部屋の色を青色から赤色に変
えたところ,うつ病が改善したという事例がある。また,現代はストレス社会と言われるよう
に,多くの人がストレスを抱えているようである。学生の私たちにも少なからずストレスを感
じる場面があり,そのストレスを少しでも軽減する方法はないかと考えた。本研究では,衣食
住における色とストレスの関係について調査し,ストレス原因に適した癒しの色彩の提案に寄
与することを目的としていて,及び異文化においての選定メカニズムについて調査する。
61
1A33
視覚野における GABA 濃度と運動視における周辺抑制
○竹内 龍人
日本女子大学
吉本 早苗
日本女子大学
島田 育廣
ATR-­Promotions
河内山 隆紀
ATR-­Promotions
近藤 洋史
NTT コミュニケーション科学基礎研究所
運動するパターンの方向弁別は,その大きさが増加するにつれて困難になる。この現象は,
中心における運動検出に対して周辺から抑制がかかることにより生じていると考えられている。
周辺からの抑制の強さには個人差があるが,その神経基盤については明らかでない。もし周辺
抑制が抑制性の神経細胞の働きによるのであれば,抑制を担う脳内 GABA(γ-­アミノ酪酸)濃度
と周辺抑制の強度との間には相関がみられる可能性がある。そこで,MR スペクトロスコピーに
より各部位における神経伝達物質の濃度を計測した。その結果,周辺抑制の強度と V1(第一次
視覚野)における GABA 濃度との間に正の相関がみられた。一方で,MT 野や前部帯状皮質,
前頭前野といった部位での相関はみられなかった。また,興奮を担う脳内グルタミン酸濃度と
の相関はどの部位においてもみられなかった。以上の結果は,周辺抑制の個人差は,視覚の低
次レベルにおける抑制作用に依存する可能性を示唆している。
1A34
継起音の“等時隔”の知覚に及ぼす併存音群の効果
○境
敦史
明星大学
「音の継起のペースが一定である」と知覚される場合,我々は,「時間」概念を用いて,或い
は「時計時間」を念頭に置いて,“音は等しい間隔で鳴っている”と言う。1000Hz 純音から作成
した 5ms のクリックを3回反復呈示する際,第1音と第2音との SOA よりも第2音と第3音と
の SOA を短く設定した上で,第1音と第2音との SOA に 500Hz 純音のクリックを反復的に併
存させると,3つの 1000Hz クリック同士の“間隔は等しい”と知覚されることを見出した。この
現象の生起条件を,併存音の配置を操作し,精神物理学的測定によって検討した。
62
1A35
ベクションにおける奥行き手がかりの効果
○瀬谷 安弘
立命館大学
篠田 博之
立命館大学
ベクションは様々な要因の影響を受けることが知られているが,そのような要因の 1 つとし
て,両眼視差や視覚物体の大きさの変化といった奥行き手がかりが挙げられている。本研究で
は奥行き手がかりのベクションへの効果の更なる理解を目的とし,奥行き手がかりを操作し,
それらのベクションへの効果を詳細に検討した。実験では,観察者が前進または後退運動時に
生じる視覚パターンの運動を模したオプティカルフローを被験者に提示した。ドットの大きさ
や両眼視差が観察者からの距離に応じて変化する大きさ手がかりや両眼視差手がかりの有無を
操作した。結果は,大きさ変化または両眼視差のいずれかまたは両者が付加された場合に,い
ずれの手がかりも付加されていない場合よりもベクションが大きくなった。この結果は奥行き
手がかりによってベクションが向上することを示唆する。
1A36
乳児における運動情報による対象表面の素材質感の知覚
○伊村 知子
白井 述
新潟国際情報大学
新潟大学
増田 知尋
(独)農業・食品産業技術総合研究機構食品総合研究所
和田 有史
(独)農業・食品産業技術総合研究機構食品総合研究所
成人では,貫入運動における貫入前後の速度差および加速度変化が,物体表面の材質の知覚
に影響を及ぼす (Masuda, et al., 2011)。本研究では,発達初期における貫入運動による材質知覚
について,生後 9-­12 ヶ月の乳児を対象に馴化-­脱馴化法を用いて検討した。成人には固い表面が
知覚される刺激として,貫入後に速度,加速度の増加する動画を 2 種類と,柔らかい表面が知
覚される刺激として速度,加速度の減少する動画を 2 種類用いた。馴化試行ではいずれかの質
感を生じさせる動画 1 種類に馴化させた後,テスト試行では馴化試行と同じ質感の動画もう 1
種類と,異なる質感の動画 1 種類を提示した。その結果,いずれの質感動画に馴化させた場合
でも,テスト試行において新奇な固さの表面の方を有意に長く注視する傾向が見られた。この
ことから,生後 9 ヶ月以降に,貫入前後の速度及び加速度の変化から対象表面の固さを区別で
きる可能性が示唆された。
63
1A37
ヒト幼児におけるパターン優位性効果と探索非対称性
○後藤 和宏
相模女子大学
飯島 真応
京都大学
板倉 昭二
京都大学
ヒト成人が線分方向の弁別をする場合,線分だけが呈示されるよりも線分にL字の文脈が付
加されることで弁別が容易になる(パターン優位性効果)。これは,線分と文脈のまとまりによ
るゲシュタルトが創発するからであると考えられる。本研究では,4 歳児においてパターン優位
性効果を検討した。実験は四肢選択課題であり,標的刺激だけが 3 つの妨害刺激とは異なって
いた。標的刺激と妨害刺激は,それだけが呈示される場合と,弁別とは直接関係ない視覚的文
脈上に呈示される場合があった。実験で用いたすべての刺激に関して,幼児は刺激単独呈示よ
りも,それらが冗長な文脈上に呈示された場合に反応時間が短いというパターン優位性効果が
示された。さらに,幼児は成人では見られなかった探索非対称性が示された。この結果は,創
発性は成人同様,幼児にも知覚されるが,形の知覚が一様の速度で成熟するわけではないこと
を示唆している。
1A38
袋文字の読みにくさと線頻度の関係
○高橋 あおい
東京女子大学
小田 浩一
東京女子大学
【目的】袋文字は広く使われている書体であるがその視認性は低い。Arditi ら(1997)はアルフ
ァベットの袋文字の視認性の低さを示したが,本研究では漢字の袋文字の視認性を線頻度(Majaj
ら,2002)と認知閾の関係性から検討する。また,観察者の最小分離角と線頻度から認知閾を説明
できるかについても検討する。【方法】刺激は 3 種類の線頻度グループを設定し,各 10 文字ず
つ漢字を選び,袋文字と非袋字で表記した。刺激は恒常法で提示し,50%の確率で読み取れる認
知閾サイズを推定した。被験者は正常視力を有する男女 12 名。【結果と考察】線頻度グループ
と書体を要因とする二要因分散分析より,袋文字は非袋文字よりも視認性が低いことが分かっ
た。線頻度と認知閾の関係を示す回帰式から,袋文字は非袋文字よりも線頻度が高くなるため
に視認性が低下すると読み取れた。また,認知閾は最小分離角×線頻度で予測できることが分か
った。
64
1A39
交差・反発事象への音の効果は視聴覚の主観的同時性に依存する
○北川 智利
NTT コミュニケーション科学基礎研究所
北村 美穂
NTT コミュニケーション科学基礎研究所
視聴覚情報の統合(視聴覚錯覚の生起)が,視覚事象と聴覚事象の物理的同期と主観的同時
性のどちらに依存するのかを,交差・反発事象を用いて検討した。左右にすれ違う二つの円盤
は,中心で交差するようにも反発するようにも見えるが,交差する時点に短い音を提示すると,
反発知覚が優位になる。円盤の交差に対して様々な時間差で音が呈示され,参加者は「交差/
反発のどちらに見えるか」,「円盤が重なった瞬間と音が同時/非同時のどちらだったか」を答
える二重課題を行った。交差・反発知覚を,主観的に同時と感じられた試行と非同時と感じら
れた試行に分けて分析すると,反発知覚の割合は物理的な時間差によらずほぼ一定であった。
一方,主観的に同時と答えた試行で反発知覚が優位に生じた。交差・反発事象への音の効果が
主観的同時性に依存していて,物理的同期からは独立であるという結果は,視聴覚統合が主観
的な同時性に基づいて生じることを示唆する。
1A40
経験は文字認知にいかなる影響を及ぼすのか?
-帰国児童の「ひらがな」認知特性をめぐって-
○佐藤 智子
東京大学大学院学際情報学府
小学校入学前後の時期を複数言語環境で過ごした子供たちは,日本で教育を受けた子供たち
と比べ日本語を使用する機会が少ない。このような日本語経験の多寡は,彼らの日本語文字の
知覚・認知にどのような影響を与えているのだろうか。人間の知覚や認知のもつ多重同時制約
性は,刺激が不完全であるほど重要度を増し,もとの刺激を補おうとする。この傾向を利用し
た,
「ひらがな」版の文字完成テスト(以下 LCT)を改変した「マス」あり・「マス」なし・中
心点版を用い,日本語学習で使用される「マス」や文字の中心に打った点(中心点)が文字認
知の際の制約となっているかを検討した。具体的には,帰国児童(小学校 3 年生~6 年生)を対
象に三つの版を使って実験を行い,佐藤(2011,2014)の実験による小学生や留学生の結果と比
較,分析した。結果として,帰国後半年以上日本語を学習した帰国児童でも,日本の小学生よ
り留学生に似た傾向を示すことが明らかになった。
65
1A41
視野を変換,制限,あるいは遮蔽する 3 事態での移動空間の形成機序
○佐々木 正晴
弘前学院大学
鳥居 修晃
東京大学
佐藤 佑介
日本大学
通常視野を変換,制限,あるいは遮蔽し,歩こうとすると,新しい空間にぶつかる。転んだ
り,行き先を見失ったり,基本的な知覚行動につまずきが起こる。このような状況を打開し,
外界と矛盾しない知覚行動空間図式はいかなる過程を経て形成されるのだろう。外界と身体を
行動的につなげる移動方略の変換過程の観点から探索する。このような実験場面では,行動の
つまずきの度合いが大きい程,その変換過程が浮き彫りになる。前回の報告(基礎心 2013)で
は,視野の上下反転,左右反転,上下反転+右方向 90°回転という 3 事態において,a).視点が徐々
に体から離れ,身体外空間が拡大する, b).能動的に体を動かすと“視野の揺れ”が消える,c).上
下反転+右方向 90°回転事態では深刻な身体の“二重定位”が起こることが見出された。今回の報
告では,このような状況を視野を制限あるいは遮蔽する事態での実験結果と比較し,その三者
間の共通性/特異性を探索する。
66
1A42
日本人の色の好みは何で決まるか?
:色から連想される物体と抽象的イメージの影響
○浅野 倫子
立教大学
金沢 菜々実
東京大学
Karen Schloss
Brown University
Stephen Palmer
横澤 一彦
University of California, Berkeley
東京大学
色彩の嗜好度(好悪の度合い)が決まる仕組みについて Palmer & Schloss (2010) は,色から連
想される物体の好ましさが色の好ましさを決定づけるという生態学的誘発理論を提唱した。本
研究では,色から連想される具象的な物体だけではなく,抽象的なイメージも日本人の色彩嗜
好に影響している可能性について検討した。実験ではそれぞれ別群の日本人被験者に(1)様々な
色相,色調の 32 色の嗜好度,(2)各色から連想される抽象的イメージ,(3)(2)の抽象的イメージ
の嗜好度の回答を求めた。その結果,(1)の色彩嗜好度と(3)の各色から連想された抽象的イメー
ジの嗜好度の間には中程度の正の相関がみられた。この相関の強さは,同様の手続きで得られ
た日本人の色彩嗜好度と色から連想された物体の嗜好度の相関の強さにほぼ匹敵するものであ
った。さらに重回帰分析により,色から連想された抽象的イメージと物体の両方の嗜好度が日
本人の色彩嗜好に影響していることが明らかになった。
67
【5 号館 1 階ホール】
1B01
同時に呈示された複数の物体に対する魅力の判断-刺激固有性の検討-
○鑓水 秀和
中京大学
鑓水・河原(2014)は,複数人の顔の魅力をグループ全体として知覚できることを,2 グループ
の魅力度の弁別課題により明らかにした。しかし,この知覚現象が顔固有であるか,同時に呈
示された複数の物体の魅力を評価する時に共通する現象であるかは明らかではない。本研究で
は,全体としての魅力の判断の研究を顔以外の物体(靴画像)に拡張した。魅力の高い靴と魅力の
低い靴が同じ数含まれる比較グループと,魅力の高い靴が高比率で含まれる高魅力グループを 2
フレームに分けて呈示した。被験者は 2 グループのうち,全体として魅力の高いと思う方を答
えた。加えて,課題に対する被験者の方略を推測するための統制実験を実施した。結果は顔と
異なり,複数の靴の全体としての魅力の判断は難しいことを示した。統制実験から,一対比較
ならば靴どうしの魅力を比較でき,同時に複数呈示した場合もおよそ 1 足ずつしか魅力を評価
していないことが示唆された。
68
1B02
顔の肥痩判断と錯視:顔の布置情報の変化に対する過小評価
○河野 直子
名古屋大学
矢野 円郁
神戸女学院大学
大川 佳純
名古屋大学
田中 聡
名古屋大学
飯高 哲也
名古屋大学
西岡 和郎
名古屋大学
尾崎 紀夫
名古屋大学
顔の知覚では布置情報全体の処理が重要とされる。本研究では顔の部分特徴間の距離が顔全
体の知覚に与える影響を,広狭判断と肥痩判断の課題条件間で比較した。倫理委員会承認に則
り,女性 27 名が参加し,回答に欠損があった 2 名を除く 25 名のデータを解析対象とした。参
加者に,顔幅に対して両眼間の距離が 43%,46%,47%,52%の割合になるよう調整した同性の
新奇顔写真を一対比較させ,広狭および肥痩の判断を求めた。その結果,顔の幅に対する両目
間の距離の比率が高いほど顔の横幅が広く見えると回答された一方,太く見える度合は条件間
に有意な差が認められなかった。即ち部分特徴間の距離が顔の形状知覚に影響する錯視を追認
した一方,肥痩判断の条件では影響がないか過小評価されていることを確認した。同じ顔に対
する観察であっても,感性的印象を問う条件では,顔全体の知覚に与える布置情報の影響は矮
小化されている可能性がある。
69
1B03
デンショバトにおける微細な「速さ」(反応間距離/反応間時間:IRD/IRT)
反応次元の継時弁別訓練効果
○茅野 一穂
明星大学
小美野 喬
明星大学
ハトを被験体とし,半径 120 ㎜の反応領域を持つ実験箱により,連続する2反応間で規定さ
れる反応の速さを設定値とし,3本の平行線分で構成される2種の角度刺激(0°と 90°)間に
よる継時弁別訓練を行った。弁別訓練は,2訓練刺激の一方で速い速さ(㎜/msec:速反応)を,
他方で遅い速さ(遅反応)を強化した。30 セッション以上の弁別訓練を行い,弁別訓練指標で,
速さの間に分化が生じたとき,弁別訓練を終了した。その後,消去手続きにより線分刺激の角
度次元で般化テストを行った。その結果,速さの頂点は遅反応訓練刺激の方向に移動し,遅反
応訓練刺激において最も遅いという速さ次元の般化勾配が得られた。速さ次元を IRD と IRT に
分解して分析したところ,IRD の般化勾配は速さ次元の般化勾配に類似し,IRT の般化勾配は
比較的平坦であった。したがって,微細な速さ反応次元は,IRD により強く規定されることが
示唆された。
1B04
乳児の側頭領域における顔の人種効果の検討
○小林 恵
自然科学研究機構生理学研究所/
日本学術振興会
Lee Kang
University of Toronto
金沢 創
日本女子大学
山口 真美
中央大学
柿木 隆介
自然科学研究機構生理学研究所
成人では自人種顔に比べ他人種顔の認識が困難であるという人種効果(Other-­Race Effect)と
いう現象が報告されており(Feingold, 1914;; Meissner & Brigham, 2001),これは生後 9 ヶ月頃に
生起するといわれている(Maurer & Werker, 2014)。本研究では物体(野菜)画像提示中の活動
をベースラインとし,自人種顔と他人種顔に対する生後 5 ヶ月児と 9 ヶ月児の脳血流反応を,
近赤外分光法(NIRS)を用いて計測した。生後 3 ヶ月頃は自人種顔・他人種顔ともに弁別可能
な一方,生後 9 ヶ月児は他人種の顔の弁別が困難になることから(Kelly et al., 2007, 2009, Heron-­Delaney et al., 2011)
,生後 9 ヶ月児では自人種顔と他人種顔で異なる応答がみられると予
測される。データについては当日報告する。
70
1B05
多数の画像刺激の系列的評価に及ぼす提示順序の効果
○坂上 貴之
慶應義塾大学
増田 真也
慶應義塾大学
森井 真広
慶應義塾大学大学院
大久保 重孝
慶應義塾大学
20 代から 60 代までの男女 1042 人を対象に,コンピュータ画面上に一つずつランダムな順で
提示される,予備調査で選定された風景写真(A),多角形型無意味図形(B),フーリエ記述子
型無意味図形(C)の 3 つのシリーズ各 100 種類のうち 2 つのシリーズの画像刺激について,画
面上に表示される目盛り(回答軸)上でカーソルを左右に移動して,その刺激の好ましさにつ
いての評価反応を求めた(外れ値の処理後,A が 619 人,B が 532 人,C が 563 人)。その結果,
提示順序が後になるほど,1)評価反応は一度増加した後,ゆっくりと減少していく,2)回
答軸の中央を選ぶ評価反応が増加する,3)最終地点での評価との格差が次第に減少する。ま
た,4)提示間の距離が長くなるほど,項目間相関は低下し,5)最大値の直後は高い評価反
応,最小値の直後は低い評価反応が続いた。これらの結果からよりよい質問紙とは何かを考察
していく。
1B06
注意が目覚める間に確立される知覚的構え
○犬飼 朋恵
神戸親和女子大学
下村 智斉
中京大学
河原 純一郎
中京大学
高速逐次提示される非標的に紛れた標的の同定成績は,標的が刺激提示後すぐに出現する場
合に比べてしばらくしてから出現するときの方が高い。この注意の目覚めは,時間的探索課題
での注意の適切な分配がしばらくの時間を要することを示している。本研究では,注意の目覚
めの程度に応じて刺激系列の周辺に出現する妨害刺激に注意が捕捉されるか否かを検討した。
このとき知覚的構えの効果を調べるために,様々な色の非標的のなかに赤色の標的を紛れさせ
ることによって,観察者に特徴探索様式を採用させた。実験の結果,妨害刺激が出現しなかっ
たときの標的の同定成績は,標的が刺激系列の後ろの方に出現するほど高くなり,注意の目覚
めが認められた。一方妨害刺激が出現したときには,標的の刺激系列位置に関係なく注意の捕
捉が認められた。これらは,特徴探索様式に基づいた知覚的構えが注意の目覚めの程度に関係
なく確立されることを示している。
71
1B07
エビングハウス錯視の左右配置が錯視量に及ぼす影響について
○実吉 綾子
帝京大学
エビングハウスの錯視は中心の円を小さな円が囲んだものと大きな円が囲んだものが左右水
平に配置されることが多い。先行研究では小さな円に囲まれたエビングハウス錯視と比較円を
左右水平に配置すると,錯視図形を右に配置した条件の方が,錯視図形を左に配置した条件よ
りも錯視量が多くなることが示された。この錯視量の変化が,左に配置された図形の錯視量が
減少しているためなのか,右に配置された図形の錯視量が増加しているためなのかについて検
討を行った。錯視図形と比較円を上下に配置した条件の中心の円の主観的等価点と,錯視図形
を左もしくは右に配置した条件の主観的等価点をそれぞれ比較した。その結果,錯視図形を左
に配置した条件では錯視量が減少する傾向が認められた。この結果について空間的注意と左右
大脳半球機能差の観点から考察を行った。
1B08
情報端末でマンガコンテンツを読む場合の読み特性
○濱田 宰
筑波大学大学院
三原 鉄也
筑波大学大学院
森田 ひろみ
筑波大学
スマートフォンなどの普及により情報端末でマンガを読む機会が増えつつあることから,今
後小さな画面でマンガを読む場合の読み特性を調べ,マンガの表現や提供形態に反映させる必
要があるだろう。そこで本研究は,画面の大きさによるマンガの読み特性の違いを調べること
を目的とし,実験を行った。実験では同一のタッチパネルディスプレイを用い,スマートフォ
ン,タブレット端末,ノートパソコンの 3 種類の画面サイズでマンガを表示する条件と印刷物
の合計 4 条件でマンガを読んだ時の読み時間,読みやすさを比較した。実験の結果,スマート
フォン条件はその他の条件に比べ,読了時間が長く,読みやすさの評価が低かった。また,ど
の条件でも見開きの文字数と読み時間が線形関係にあり,文字数に対する読み時間の傾きがス
マートフォン条件において最も大きいことがわかった。このことが,読了時間の長さや読みに
くさに関係すると考えられる。
72
1B09
拡大錯視の測定と生起条件の検討
○近藤 あき
東京大学
高尾 沙希
立正大学
有賀 敦紀
立正大学
高橋 康介
東京大学
渡邊 克巳
東京大学
本研究では主観的輪郭の内側にある文字が外側にある文字に比べて大きく見えるという拡大
錯視の生起条件を検討した。実験 1 では画面の左右に呈示された 2 つの刺激(複数の円)の大
きさを比較する課題を行った。一方の刺激に対して主観的輪郭で囲む,実輪郭で囲む,または
円のみで呈示する,という操作を加えた結果,実輪郭条件では円のみ条件に比べて有意に円が
大きく知覚され,主観的輪郭でも弱いが同じ傾向が観察された。刺激内の円を 1 つに減らすと
拡大錯視は生じなかった(実験 2)
。実験 3 では複数の線分からなる刺激の長さを比較する課題
を行い実験 1 と同様の結果を得た。従って拡大錯視は(1)主観的輪郭よりも実輪郭の方が安定し
て生じる,(2)輪郭内に複数の刺激要素(テクスチャ様刺激)が必要である,(3)長さの知覚
についても生じる,ということが示された。
1B10
広視野 3D 運動ドットが注意の瞬きに与える影響
○髙川 慎哉
鹿児島大学
木原 健
鹿児島大学
大塚 作一
鹿児島大学
人間の視覚的注意機能を反映する現象に注意の瞬き(Attentional Blink: AB)がある。これは,
高速逐次視覚呈示される刺激群の中から二つの標的を報告する課題において,第一標的から 200
~500 ミリ秒後に呈示された第二標的の知覚が困難になる現象である。先行研究より,限られた
視野に 2D 呈示される運動ドットによって AB が減少する事が報告されている。しかし,広視野
に運動ドットが 2D 呈示された場合の AB への影響は不明である。そこで本研究では,様々な方
向(拡散・収束・上下・左右・ランダム)に運動するドットを広視野に 2D 呈示し,視野中心に
呈示される AB 課題に与える影響を検討した。その結果,ドットの運動方向に関わらず AB は変
化しなかった。次に,運動ドットの影響を強化するため,ドットを広視野に 3D 呈示して実験を
行った。その結果,特定の運動方向条件で AB が減少した。以上から,立体呈示される背景の運
動により,視野中心の注意課題が影響を受ける事が示唆された。
73
1B11
影を手がかりとした形状知覚の発達
○佐藤 夏月
中央大学大学院/日本学術振興会
金沢 創
日本女子大学
山口 真美
中央大学
乳児は影を手がかりとした形状の知覚(shape-­from-­shadow)ができるかを調べる実験を行った。
実験1では attached shadow からボール,cast shadow からディスクを知覚できる図形を,5-­8 ヶ月
児が弁別できるか検討した。影は背景より明るい時に影として知覚されないことが示されてい
ることから(Cavanagh & Leclerc, 1989 ;;Kennedy & Bai, 2000),実験1の図形を弁別できた 7-­8 ヶ
月児を対象に,実験 2 では図形を白黒反転させたコントロール実験を行った。実験 1 の結果,
7-­8 ヶ月児は attached shadow 図形と cast shadow 図形を弁別できることが示された。白黒反転し
た図形を用いた実験 2 の結果,7-­8 ヶ月児は図形を弁別しないことが示された。更に実験を追加
し,7-­8 ヶ月児は 2 種の影から異なる形状を知覚する可能性が示唆された。
1B12
反応競合文脈の獲得・持続に及ぼす観察者の移動効果
○蔵冨 恵
河原 純一郎
愛知淑徳大学大学院
中京大学大学院
本研究は環境文脈に及ぼす観察者の空間移動の効果を調べた。フランカ干渉効果は不一致試
行が頻発する空間に比べて,低頻度で起こる空間では増大する(頻度効果)。本研究では,学習期
に水平においた画面の左右視野間で不一致試行頻度が異なる事態を経験した後,テスト期にそ
の頻度が左右で同等の事態を設け,干渉効果を測定した。このとき参加者は学習期と同じ場所(同
一条件)もしくは,画面の反対側に移動した(移動条件)。その結果,同一条件では,学習期と同
様の頻度効果が生じた。一方,移動条件ではそのような頻度効果は生起しなかった。これは,
反応競合文脈の獲得は観察者の自己中心座標に基づくことが示唆された。
74
1B13
不確実状況における顔向きの知覚
○大塚 由美子
Mareschal Isabelle
UNSW Australia
Queen Mary University of London, The University of Sydney
Clifford Colin
UNSW Australia
直視視線プライアを報告した先行研究(Mareschal et al., 2013)に基づき,不確実状況下では他
者の顔が自分の方へ向いていると想定される可能性を検討した。実験1では,顔向き分類課題
を用い,様々な強度のノイズを付加した画像からの顔向きの知覚を検討した。実験2では顔向
き再生課題を用い,ノイズ画像とノイズ無画像から知覚される顔向きを検討した。実験3では
顔向き識別課題を用い,ノイズ画像とノイズ無画像それぞれにおける顔向きの識別閾と偏りを
検討すると共に,2 種類の画像条件間で顔向きを比較する際の識別閾と偏りを検討した。実験1
ではノイズ強度の増加に伴い“正面”方向の判断が増加した。実験2ではノイズ画像において顔向
きがより正面方向に偏って知覚されたが,偏りの方向は全刺激の平均の顔向きと一致して変化
した。実験3ではノイズ画像では顔向きがより下方向に偏って知覚されることが示された。
1B14
注意の捕捉効果と視覚的印付け効果の加算性
○大杉 尚之
林
大輔
村上 郁也
東京大学
東京大学
東京大学
視覚探索において,標的が突然新規に出現するとき(後続項目),既に提示された項目(先行
項目)よりも先に探索される。この効果は,後続項目の自動的な注意の捕捉と,先行項目の能
動的な抑制(視覚的印付け)により生起すると考えられてきた。本研究では,注意の捕捉効果
と視覚的印付け効果が加算的に探索に影響するかを検討した。先行項目の1つが標的になる確
率が50%の条件(注意の捕捉条件)と0%の条件(視覚的印付け条件)において,後続項目
として標的が出現した試行の探索時間を比較した。実験の結果,注意の捕捉効果が十分に大き
い事態では,注意の捕捉条件と視覚的印付け条件で探索効率に違いが無かった。一方,注意の
捕捉効果が小さい事態では,視覚的印付け条件が注意の捕捉条件よりも探索効率が良かった。
このことから注意の捕捉効果が小さい事態では,注意の捕捉効果と視覚的印付け効果が加算的
に探索に影響する事が示唆された。
75
1B15
上から見た物体はなぜわかりにくい?
○新美 亮輔
東京大学
江原 玲
東京大学
横澤 一彦
東京大学
日常物体の視覚的認知では,上から見下ろす視点で成績が下がりやすい。つまり,上から見
た物体像は偶然的見え(accidental view)になりやすい。日常物体をさまざまな角度(俯角)で
見下ろした刺激を用いて物体認知課題を行ったところ,俯角が大きいと実際に成績が低下した
(実験 1)。実験 2 では,刺激物体を市松模様のついた台の上に置くことで絵画的奥行き手がか
りを与え,俯角がわかりやすくなるようにした。台は物体像に 1.0 秒先行して提示された。その
結果,俯角による成績低下はほぼ消失した。このことから,上から見た物体の認識が難しいの
は適切な奥行き手がかりの不足のためと考えられる。ただし,大きくて現実には見下ろすこと
が少ないと考えられる物体(家,バスなど)に限ると,俯角による成績低下が残っていた。親
近性の低さも上から見た物体の認識の要因である(見下ろした経験が少ないために認識が難し
い)ことが示唆された。
1B16
非意識性情報の記憶保持特性に関する検討
○中野 俊
石原 正規
首都大学東京
首都大学東京
意識的経験を伴わない非意識性情報に対してもヒトは選択的な応答が可能であることが TMS
や逆向性マスキングを用いた研究によって示されている。これまでに逆向性マスキングの刺激
特性やその成立メカニズムに関する研究は盛んに行われてきたが,非意識性情報の記憶特性に
関しては未だ十分な研究は行われていない。本研究では逆向性マスキングパラダイムを利用し,
視空間刺激呈示から回答までの ISI を操作することで,
非意識性情報の記憶保持特性を検討した。
課題は刺激の見え方を PAS に基づいて答えさせる刺激評価課題と,呈示位置を答えさせる空間
定位課題の2種類を実施した。刺激評価課題より,保持時間を延長しても逆向性マスクの効果
は持続することが示された。また空間定位課題において,保持時間の延長による正答率の著し
い低下は見られなかった。以上の結果から,非意識性情報に対しても,ヒトは一定時間の記憶
保持が可能であることが示唆された。
76
1B17
Implied motion 知覚の初期発達
○白井 述
伊村 知子
新潟大学
新潟国際情報大学
ヒトは少なくとも生後 5 ヵ月以降,静止画中の形態情報による運動印象(implied motion: 以下
IM)を知覚する(Shirai & Imura, 2014)
。本研究では IM 知覚の発現時期を特定するため,生後 4,
5 ヵ月児それぞれ 16 名を対象に実験を実施した。各試行の開始とともに,呈示画面中央に左右
いずれかへ向かって走っている(run 条件),あるいは直立している(stand 条件)成人男性の写
真刺激が 600ms 呈示され,写真刺激の消失と同時に 2 つの円図形が呈示画面の左右に出現した。
乳児がどちらの円を先に注視したかを記録し(run,stand 条件ともに 20 試行ずつ),写真刺激の
定位方向と乳児の初発眼球運動の方向の一致率を条件ごとに算出した。その結果,5 ヵ月児の run
条件でのみ,写真刺激-­眼球運動間の一致率がチャンスレベルを有意に上回った。これらの結果
は IM 知覚が生後 4〜5 ヵ月間で発現する可能性を示す。
1B18
Point-LightWalker の性別を特徴づける肩と腰の動きの周波数分析
○麻野井 千尋
小田 浩一
ネットワークアシストたかおか
東京女子大学
【目的】歩行者の関節の位置を表す光点の動き(Point-­Light Walker:PLW)の性別判断には肩
や腰の動きが注目されているが,複雑な肩と腰の動きの何が性別判断に寄与しているかは明ら
かでない。本研究では肩と腰の動きを高速フーリエ変換(FFT)により分析し,男女の違いを検
討した。
【方法】男性 9 名,女性 10 名の PLW の光点軌跡から,肩と腰の動きの周波数成分を FFT
で抽出した。【結果と考察】肩と腰の動きは男女とも歩行周期と同じ周波数成分(第1成分),
その2倍(第2成分)および3倍(第3成分)の周波数成分から構成されていた。女性の肩と
腰の第1成分のパワーは男性より有意に大きかった。女性の腰の第2成分のパワーは男性より
有意に大きかったが,肩のパワーには差がなかった。女性では歩行周期に一致した肩と腰の動
きは男性より大きいだけでなく,歩行周期の2倍に相当する速くて大きい腰のリズムが特徴的
である。
77
1B19
乳幼児の顔認知における人物処理と表情処理の独立性
○市川 寛子
中央大学・日本学術振興会
金沢 創
日本女子大学
山口 真美
中央大学
顔認知において,人物処理と表情処理が独立か,主に成人を対象として検討されてきた。静
止画を用いた研究では,表情処理は人物処理に干渉され,その逆は生じにくいという非対称的
な干渉が見られる。動画を用いた研究は少ないが,その干渉が小さいことが報告されている
(Stoesz & Jakobson 2013)
。本研究では,生後 7-­8 ヶ月児および 5 歳児を対象とし,人物処理と
表情処理の独立性を,人物と表情が同時に変化するモーフィング動画を用いて検討した。乳児
では,単一の動画に馴化させた後,新奇人物または表情に脱馴化するかを調べた。幼児では,
複数の動画を提示し,動画に含まれた人物または表情を同定させる課題を行わせ,正答率を算
出した。その結果,乳児では人物の学習のみが成立した。これに対し幼児では,人物同定課題
の正答率は表情同定課題のそれよりも低かった。人物処理と表情処理の独立性は,乳児期から
幼児期にかけて変化することが示唆された。
1B20
眉とアイシャドウによる目の大きさ錯視とデルブーフ錯視との関係
○森川 和則
大阪大学
松下 戦具
大阪大学
富田 瑛智
大阪大学
山南 春奈
資生堂
人間の顔において知覚される目の大きさに影響する要因として目と眉の距離およびアイシャ
ドウの効果を上下法を用いて測定した結果,目と眉が近いほうが目が大きく見え,またアイシ
ャドウは目を大きく見せることが判明した。さらに観察距離が 0.6m の場合よりも 5m の場合に
アイシャドウによる目の大きさ錯視量が増大することが示された。目の過大視錯視とデルブー
フ錯視との関係を探るために,デルブーフ錯視にアイシャドウを模したグラデーションを施し,
観察距離 0.6m および 5m で錯視量を測定した結果,目の大きさ錯視と同様の傾向が生じた。こ
のことから,両者が同じメカニズムに基づくことが示唆された。
78
1B21
倒立は質的にも量的にも顔処理を変化させる
○松吉 大輔
東京大学
守田 知代
大阪大学
河内山 隆紀
株式会社国際電気通信基礎技術研究所
田邊 宏樹
名古屋大学
定藤 規弘
自然科学研究機構生理学研究所
柿木 隆介
自然科学研究機構生理学研究所
ヒトの物体認識能力は様々な見え方に対して頑健であるが,顔が逆向きに呈示されると,そ
の認識能力は格段に低下する。この倒立顔の認識が正立顔と比較して著しく低下する現象は,
顔倒立効果(FIE)と呼ばれ,長らく正立顔と倒立顔の処理が「質的に」異なっている(別個の
処理機構が関与する)ために生じるとされてきたが,近年,正立顔と倒立顔処理は「量的に」
異なっているために生じる(同一の処理機構の程度の差)とする報告もあり,議論がある。こ
こで我々は,FIE における質的要因と量的要因を担う皮質経路を乖離させることで,この議論の
解決に寄与する fMRI 実験を報告する。我々は,正立・倒立顔処理が,顔処理領域と非顔処理領
域との間で別個の皮質経路を形成する一方,顔処理領域内では同一の結合パタンを形成し,そ
の微細な結合差が行動成績と相関していることを見出した。従って,倒立は質的にも量的にも
顔処理を変化させると考えられる。
79
1B22
吹き出し内の発話の本心らしさ評価に対する表情の影響
:健聴者と聴覚障害者の比較
○三枝 千尋
東京大学
生田目 美紀
筑波技術大学
渡邊 克巳
東京大学
ヒトは対人コミュニケーションにおいて,言語情報だけでなく顔の表情などの非言語情報か
らも相手の意図を読み取っている。本研究では,吹き出し内の文字情報として呈示された発話
の本心らしさの評価に対する顔表情の影響を検討した。肯定的/否定的な応答を吹き出し内の
文字情報として示し,顔表情のポジティブさを段階的に変えて同時呈示した。その際の応答の
本心らしさを,健聴者と聴覚障害者に 7 段階尺度で評価させた。その結果,ネガティブな表情
と肯定的な応答(「はい/いいよ」)の組合せでは,本心らしさは低く評価された。一方,ポジ
ティブな表情と否定的な応答(「いいえ/いやだ」
)では,応答の本心らしさは比較的維持され,
応答による表情の影響の非対称性が示唆された。さらに,この非対称性は聴覚障害者よりも健
聴者において強く見られ,文字情報に対する表情認知の影響の差も示唆された。
1B23
非言語的図形の検索誘導性忘却
○小林 正法
名古屋大学・日本学術振興会
大北 碧
麻布大学
川口 潤
名古屋大学
ある 記憶 を思 い出 すこ とが ,他 の関 連す る記 憶を 抑制 する 現象 とし て検 索誘 導性 忘却
(Anderson et al., 1994)が知られている。本研究では,新奇な非言語的図形の検索誘導性忘却が
生じるかどうかを吟味し,その一般性を探ることを目的とした。実験では,互いに関連性を持
つ非言語的図形を学習後,その一部を検索し,選択再認を行う検索練習ブロックと,図形を学
習後,妨害課題を挟み,選択再認を行う統制ブロックを設定した。検索練習ブロックで検索練
習をした刺激が Rp+項目,残りの未検索練習の刺激が Rp-­項目,統制ブロックのすべての刺激が
Nrp 項目とされる。実験の結果,正再認率,正再認時間ともに,ベースラインとなる Nrp 項目と
Rp-­項目に有意な差が見られ,検索誘導性忘却が確認された。本研究から,検索誘導性忘却が意
味記憶に依存せず,新奇な刺激にも生じるという高い一般性を持つ現象であることが明らかに
なった。
80
1B24
読書評価における読み材料の検討
○小田 浩一
東京女子大学大学院
乙訓 輝実
東京女子大学大学院
髙橋 あおい
東京女子大学大学院
大西 まどか
東京女子大学大学院
杉山 美智子
東京女子大学大学院
本研究では,軌道をなぞる運動学習における Speed-­Accuracy Trade-­Off を検討した。古くから,
運動における速度と精度のトレードオフは心理学の研究対象であった。しかし,スポーツ等の
分野に限らず私たちの日常場面においては,運動の速度と精度の双方を両立させることが望ま
しく,そのためのトレーニングが日々行われている。本研究では,新規で複雑な軌道のなぞり
学習において,Fitts 課題(なるべく速く正確になぞる)と Schmidt 課題(固定された時間に合わ
せて正確になぞる)の 2 課題を用い,それぞれにおいて速度と精度に関する成績がどのように
向上するかを検討した。その結果,Fitts 課題では速度のみ,Schmidt 課題では精度のみが上昇し
た。この結果は,速度と精度に関する運動計画の改変は独立であり,かつ私たちが速度と精度
の両方を向上させるためには 2 つの異なる段階を踏む必要があることを示唆する。
81
82
研究発表要旨
2 日目
12 月 7 日(日)
83
A
7
101
B
5
1
9:50
10:00
11:00
16:30
15:30
16:30
17:00
Speed-Accuracy Trade-Off
Fitts
Schmidt
2
Fitts
2
84
Schmidt
2A02
ラットにおける炭酸味覚嫌悪学習
○中島 定彦
関西学院大学
家庭用炭酸水生成器で水道水に二酸化炭素を注入して作成した炭酸水を味覚刺激に用いて,
ラットの嫌悪学習実験を試みた。Wistar ラット 9 週齢の雄 16 匹に 2 日間,毎日 15 分間の水道水
摂取訓練を行った次の日,対照味覚処置として半数の個体には甘味水(0.2%サッカリンナトリ
ウム溶液),残り半数には炭酸水を,15 分間自由摂取させた。その翌日,前者には炭酸水を 15
分間自由摂取直後に嫌悪処置(0.15M 塩化リチウム溶液を腹腔内に体重の 2%量投与)
,後者には
甘味水に同じ嫌悪処置を実施した。水道水自由摂取 15 分間の回復日を 1 日挟んで行ったテスト
2 日間では,群間・日間で相殺した順序で 1 日 1 回,炭酸水または甘味水を 15 分間与えた。そ
の結果,味覚嫌悪学習の程度(テストにおける摂取量の少なさ)において,酸味水は甘味水に
匹敵した。なお,炭酸水を通常のノズルで呈示すると噴出するため,ピン付ノズルにするなど
実験実施上の工夫も紹介したい。
2A03
虚偽に伴う特異反応の出やすさに影響するパーソナリティ特性
○佐藤
愛
東北大学大学院情報科学研究科
茨城県警察本部科学捜査研究所
小池 正武
茨城県警察本部科学捜査研究所
岩崎 祥一
東北大学大学院情報科学研究科
正直または虚偽の回答をする実験課題や事件情報に関する認識の有無に関わる弁別反応を記
録する「ポリグラフ検査」等の実務検査において,実験参加者や被検査者の特異反応の出やす
さには個人差が見られる。虚偽検出の精度を向上させるためには,より検出感度の良い生理指
標を模索することも重要だが,実験参加者や被検査者側の要因である「反応の個人差に影響す
る個人特性」を明らかにする必要があると思われる。本研究では要因の一つとして,パーソナ
リティ特性が特異反応の個人差に及ぼす影響について探索的に検討することにした。実験参加
者は選択したカードの数字について嘘をつく課題と質問紙による性格検査を行った。実験課題
で得られた反応と性格検査で得られたパーソナリティの各スコアにおいて相関分析を行った結
果,呼吸反応と神経質に関連が見られた。また,心臓血管系反応と回帰性思考,無愛想,情緒
不安定,社会不適応性に関連が見られた。
85
2A04
階層的認知コントロール: キー押し反応 (タイプ反応) を指標として
○芦高
勇気
神戸大学大学院
嶋田 博行
神戸大学大学院
キー押し反応(マニュアル反応)は認知コントロール研究において行動指標を測定する代表
的な方法である。例えば,左右の手の人差し指と中指を使った 4 選択反応がよく用いられる。8
選択反応に拡張すると,タイプ反応になる。つまり,タイプ反応は 8 本の指を使ったマニュア
ル反応と捉えることができる。タイプ反応は,高次の認知機能である言語活動とも関連してお
り,認知コントロールの研究において有効な方法である (e.g., Logan & Crump, 2011, JEPP)。
我々は,日本で一般的に使用されている日本語ローマ字入力を使うことによって,刺激入力を
ひらがなとローマ字に階層化し,階層的コントロールを詳しく調べた (Ashitaka & Shimada,
2014. APP)。
2A05
音楽制作者によるグルーヴ感の産出―単純なリズムパターンを用いた検討―
○池上
真平
重野 純
青山学院大学
青山学院大学
“グルーヴ感”とは,音楽に合わせて身体を動かしたくなる感覚のことを指す言葉であり,
多くの音楽家がその重要性を指摘している。しかし,そのような重要性とは対照的に,グルー
ヴ感の産出過程は,ほとんど明らかになっていない。本研究ではグル―ヴ感が産出される過程
を検討するため,単純な等時性のリズムパターンを 2 名のプロの音楽制作者に与え,そのリズ
ムパターンを構成する各音の強さとテンポを調整することによりグルーヴ感を産出(表現)し
てもらった。音楽制作者は,2 種類の表現条件のもとでリズムを制作した。グルーヴ感表現条件
では,
“非常に身体を動かしたくなるように”リズムを制作し,非グルーヴ感表現条件では,
“身
体を動かしたいと全く思わないように”リズムを制作した。制作されたリズムの物理的特徴を
分析したところ,グルーヴ感表現条件と非グルーヴ感表現条件との間で強弱の変化の仕方やテ
ンポが異なることが分かった。
86
2A06
ニワトリ(Gallus gallus domesticus)における歩行時頭部運動の視覚性制御
の検討
○幡地
祐哉
京都大学
大瀧
翔
京都大学
藤田
和生
京都大学
鳥類に見られる歩行時の頭部運動は,自己運動による視覚像のぶれを抑える機能を持つと言
われている(Frost, 1978)。本実験ではこの運動が視覚運動刺激により調節されるかニワトリを用
いて検討した。トレッドミルを歩行中のニワトリの両側に,トレッドミルと同方向に運動する,
様々な速度の正弦波刺激を提示した。装置上部からニワトリの歩行を撮影し,その頭部運動を
分析した。運動刺激を提示したときに頭部の後方向への運動が見られ,静止刺激の提示ではそ
のような頭部運動は見られなかった。また,刺激速度を上げると頭部運動の速度も上昇した。
刺激の空間周波数は頭部運動の速度に影響を与えなかった。これらの結果は,ニワトリの頭部
運動が刺激の運動を相殺するよう調節されていること,特定の空間周波数や時間周波数に選択
性を持たないことを示している。
2A07
標的カテゴリと妨害カテゴリの似ているところを見つけるだけで探索の効率
は悪くなる−カテゴリ探索におけるトップダウン的要因による標的-妨害刺激
類似性の変化について−
○大北
小林
碧
麻布大学
正法
名古屋大学大学院
カテゴリ探索において,標的刺激と妨害刺激の物理的な類似性(ボトムアップ的要因)が探
索に影響することが明らかになっている(Alexander & Zelinsky, 2011)。しかし刺激の特性に
注目するといったトップダウン的要因による類似性の変化が,カテゴリ探索に影響を及ぼすの
か明らかになっていない。そこで本研究では探索に先行して,標的刺激と妨害刺激に用いる 2
つのカテゴリの共通点を挙げる群と相違点を挙げる群の探索を比較した。実験 1 では,探索に
用いる刺激を呈示し,それら刺激の共通点(相違点)を挙げてもらった後,カテゴリ探索を行
った。実験 2 では,探索に用いる刺激は呈示せずカテゴリ名のみ呈示し,共通点(相違点)を
挙げてもらった。実験の結果,実験 1 のみ 2 群間で探索時間に差が見られた。本研究より,刺
激特性に注目することによる刺激間の類似性の変化が,カテゴリ探索に影響を及ぼすことが明
らかになった。
87
2A08
いろいろとありがとうございます ―他者の不幸は嬉しいしクリエイティブ
にもしてくれる―
○佐々木
山田
恭志郎
祐樹
九州大学/日本学術振興会特別研究員
九州大学
感情は思考に影響する。例えば,ポジティブな気分のときは創造性が高まることが明らかに
されている。本研究では,他者の不幸に対する喜び (シャーデンフロイデ) が単語連想の特異性
に影響を与えるかについて検討を行った。参加者はシナリオ黙読後に,シャーデンフロイデ喚
起尺度に回答した。その後,
「ふ」から始まる単語を 5 つ想起する課題を行った。シナリオは,
恵まれている人間 (有利条件) あるいは平凡な人間 (平凡条件) が不幸に陥る内容の 2 種類で,
参加者間計画であった。実験の結果,有利条件の方が有意に高いシャーデンフロイデ喚起尺度
得点を示した。さらに想起された単語を Google 検索にかけた結果,有利条件の方が有意に少な
い平均ヒット件数を示し,より創造性の高い単語を想起したことが明らかになった。これらの
結果は,創造的思考の促進には,気分喚起刺激に関わらず実際に喚起された気分の感情価が重
要であることを示唆する。
2A09
ニオイへの反復接触による好ましさ上昇におけるラベルの影響 2
○小川
綾部
緑
筑波大学大学院
早穂
筑波大学
同じニオイ物質でも嗅ぐ度に異なるニオイ質を感じることがあるが,何のニオイか知らされ
ている(ラベル提示)と,特定のニオイ質を安定して捉えやすくなる。我々の先行研究ではラ
ベル提示の有無が参加者間要因の場合にニオイへの反復接触による好ましさの上昇にラベルが
影響する可能性が示唆された。本研究ではラベルの提示の有無を参加者内要因で再検討した。
異なる 3 種のニオイが入ったボトル 3 本を提示し,そのうち 1 つのニオイのラベルを提示し,
そのニオイが入っているボトルを選ばせる弁別課題を 9 回行うことでニオイに接触させた。接
触から 10 分後に好ましさ評価を行ったところ,弁別課題で全正答者でのみ,ラベル有のニオイ
が無のニオイよりも好ましいと評価される傾向がみられた。弁別課題の確信度の高さの影響も
考えられるが,ニオイへの反復接触による好ましさ上昇において,単純なラベル提示だけでな
く正確なニオイ質の知覚の重要性が示唆された。
88
2A10
対連合学習課題時の正解刺激に対する視線の偏りについて
○田根
道又
健吾
上智大学大学院
爾
上智大学
対連合学習課題において,学習を潜在的に行った場合(潜在学習条件)と,顕在的に行った
場合(顕在学習条件)で,参加者の視線の動きを比較した。学習段階では色と抽象図形の組み
合わせを刺激として呈示し,そのうち半数の試行では Continuous Flash Suppression パラダイ
ムを用いて,閾下呈示した。テスト段階では正解対と不正解対を画面上に横並びで呈示し,参
加者が解答するまでの注視位置を 50Hz の頻度でサンプリングした。各試行の開始時から 4 サン
プル(約 80ms)の間に正解刺激を注視していた確率を算出し,学習段階の呈示条件と課題の正
解・不正解で 4 条件に分けて比較したところ,課題の正解・不正解の主効果のみが見られた
(F(1,19) = 4.58, p = .046)。このことから,課題に正解する場合,学習時の潜在性に関わらず,
極めて早い時点で正解刺激を注視している可能性が示唆された。
2A11
視聴覚刺激の同時呈示課題による分散知覚処理過程の検討
○上田
石口
祥代
お茶の水女子大学
彰
お茶の水女子大学
私たちは環境の情報を効率的に知覚し,行動するため,刺激特性の要約統計量を脳内で算出
している。中でも「分散」は,これまで多くの研究により検討されてきた「平均」とは異なり,
様々な刺激次元や異なる感覚モダリティ間である程度共通する統計量であるという点で,ユニ
ークな指標である。本研究では,異なる感覚モダリティ間に共通する分散知覚処理メカニズム
の可能性を調べるため,視覚(円のサイズ)と聴覚(音高)を同時呈示した場合の分散識別能
力について検討した。結果,1)単一モダリティ呈示条件,2)視聴覚同時呈示 Pre Cue 条件
(刺激呈示前に分散識別を行うモダリティを指示する条件),3)視聴覚同時呈示 Post Cue 条
件(刺激呈示後に指示がある条件)で,同水準の分散識別能力が維持されることが示された。
このことは,分散知覚処理過程に関して,感覚モダリティ固有のリソースの存在,あるいは,
並列処理可能な自動化された処理過程を示すものである。
89
2A12
ケーキナッペ技術の時間・動作によるパフォーマンス評価と比較の試み
○松熊
亮
首都大学東京
Vygotsky は労働者には生産の組織・管理者としての役割と機関の一部としての役割の両方が
あるとし,自覚的に行うこととなんらかの技術をもっていることの両方を問題にした。彼の考
え方によれば思考とは,環境に対応すべく生じる運動の一形態であり,職人や専門家としての意
識の発達を捉える上でも,そのパフォーマンスの変化を捉えることは欠くことができない。本
発表ではケーキのナッペ(クリーム塗り)作業を題材に技術側面を評価する方法の一つとしてか
つて産業心理学で用いられた時間・動作研究を援用して,作業を分類・比較することを試みた。
ケーキを扱う職業経験者 5 名と経験のない大学院生 4 名を対象にビデオ観察した個々のパフォ
ーマンスを比較したところ,初学者と経験者との差異に加えて,経験者内でも職業的要請を背
景にしたパフォーマンスの違いが示唆された。それらの差異について考察し,今後の研究に向
けた検討を行う。
2A13
視覚探索の試行間プライミングにおける視覚的アウェアネスの役割
○小川
洋和
関西学院大学
シングルトンに対する視覚探索において,ターゲットとディストラクタの特徴が繰り返され
た時に,両者の特徴がスイッチした時よりも反応時間が短縮される(Maljkovic & Nakayama,
1994)。この試行間プライミング効果における視覚的アウェアネスの役割を,由来眼によるアウ
ェアネスなき注意捕捉(Zhaoping, 2012)を用いて検討した。被験者は様々な角度を持つ複数
の線分から垂直あるいは水平な線分を検出することを求められた。各試行におけるターゲット
は,色シングルトンあるいは由来眼シングルトンのいずれかであった。その結果,色シングル
トンではターゲットの特徴が試行間で繰り返された場合に反応時間が促進されたが,由来眼シ
ングルトンの場合は繰り返しによる促進効果は認められなかった。この結果は試行間プライミ
ングの生起にはポップアウトのアウェアネスが重要な役割を果たしていることを示唆している。
90
2A14
視線が向きやすい方向に注意も向きやすい:視線・頭部方向と視覚的注意
○中島
亮一
理化学研究所
熊田
孝恒
京都大学
視覚処理は頭部正面方向で促進される(中島・塩入,2013)。その理由として,筋肉の構造上,
目が頭部正面に向きやすいため,視覚的注意もそこに向きやすいという可能性がある。本研究
では,注視点の左右に瞬間呈示される刺激の同定課題を用いて,頭部方向と視覚的注意の関係
について検討した。頭部方向(身体方向とそろった状態)を注視点に対して正面・左右と操作
した。頭部が左右に向いた場合,頭部方向に呈示された刺激の同定成績が高かった。また,頭
部が身体に対して左(右)を向くと,目は頭部に対して左(右)に向く傾向がある。それを踏
まえ,身体に対して頭部が正面・左右を向いた条件で,同じ課題を行った。その結果,身体に
対して頭部が左(右)を向くと,左(右)の刺激の同定成績が高くなった。よって,ある一点
を注視していても,視線が向きやすい方向に視覚的注意も向きやすく,それが頭部方向からの
視覚処理への影響の一因だと考えられる。
2A15
他者の視線知覚における空間の異方性
○森
将輝
渡辺
利夫
慶應義塾大学大学院
慶應義塾大学
私たちが他者の注視する対象物の布置を特定するには,対象物を注視する他者の目をよく観
察することが重要である。本研究は,対象物の実際の地点 X を物理布置,対象物を注視する他
者の目から推測される対象物の地点 X’を知覚布置とし,他者の視線方向や距離における物理空
間と知覚空間の異方性を検討した。オープンスペースに布置した対象物を注視する実物大の被
写体の人物の顔の静止画を,被写体の観察地点 O にディスプレイで表示した。実験参加者は,
ディスプレイの正面から 1 m 離れた地点 A から静止画を観察し,被写体から推測される観察地
点 X’にシールを貼ってもらった。その結果,他者の視線の知覚角度∠AOX’はその物理角度
∠AOX よりも大きいのに対し,他者の視線の知覚距離 OX’はその物理距離 OX よりも短かっ
た。また,物理空間と知覚空間の間に写像関数としてアフィン変換を用い分析した結果,他者
の視線の知覚において空間の異方性が存在することを見出した。
91
2A16
表情認知における顔色の影響
○高橋
文代
北海道大学大学院
色は視覚系認知において重要だが,その役割は不明確な点を多く残す。色の効果は,シーン
や物体認知の診断的課題で,典型色を持つ対象において,課題の判断が比較的難しい時に限定
されて報告されている。また,人間の色覚が,肌の血色を捉えるために3色型へ発達したとす
る仮説は,社会的シグナルとして重要な表情に対応する色の重要性を示唆する。これらのこと
から,本研究は,表情判断における色の効果を調査することを目的とする。また,色の影響は,
表情判断が比較的難しい曖昧な表情で助長されることを予測し,表情の強さにバリエーション
を設けた。各表情は,怒り,悲しみ,喜びの典型色と非典型色の5色で着色し,その正答率と
反応時間を比較した。その結果,正答率は,いずれの感情も色の主効果が有意であり,表情に
対応する色で,正答率が高まる傾向が見られた。また,表情が曖昧である時ほど,色による効
果が明確になる傾向が示された。
2A17
フサオマキザルとヒトにおける生体力学的に可能な身体姿勢と不可能な身体
姿勢の視知覚弁別
○松野
藤田
響
法政大学
和生
京都大学
ロコモーションや身体サイズ等の異なる身体制約をもつ種間において,身体姿勢の視知覚処
理過程に質的な違いがあるのか否かを問うため,フサオマキザルとヒトを対象に,身体姿勢の
生体力学的制約に関する視知覚弁別実験をおこなった。実験では,ヒトの身体全体の CG 刺激
を用いた見本合わせ課題を両種を対象としておこない,生体力学的に可能な身体姿勢同士の視
覚弁別成績と,生体力学的に可能な身体と不可能な身体の視覚弁別成績を比較した。結果,ヒ
トでは可能姿勢同士の弁別に比べ,可能姿勢と不可能姿勢の弁別が容易であったのに対し,フ
サオマキザルでは条件間で弁別成績に差が見られなかった。この結果は,身体姿勢の生体力学
的制約についての知覚過程に種固有性があることを示唆している。
92
2A18
ワーキングメモリと選択的注意との関連:ERP による検討
○川島
松本
朋也
神戸大学
絵理子
神戸大学
近年,ワーキングメモリ(WM)が注意に及ぼす影響が検討されている。刺激を保持しながら
視覚探索を行う二重課題において,保持した色と標的刺激の色が一致するとき(一致試行)と
しないときに反応時間の差が見られたことから,WM の内容は注意を捕捉するとされた(Soto et
al., 2008)。さらに一致試行の割合を参加者に教示すると,割合が大きいと注意捕捉効果が大き
くなり,小さいと注意捕捉効果も小さくなることから,WM の内容による注意捕捉はストラテ
ジーにより制御されるとされている(Carlisle & Woodman, 2011)
。そこで本研究では注意に影
響する WM の性質を検討するために,一致試行の割合を参加者に教示し,二重課題を遂行中の
CDA(contralateral delay activity;WM 負荷の指標となる ERP)を分析した。結果,注意捕
捉効果は一致試行の割合で変化し,CDA にも差が見られた。これらの指標を用いて WM と注意
の関連を検討した。
2A19
非注意による見落としは意味の類似性で変化する
○鈴木
大久保
玄
街亜
専修大学大学院
専修大学
ある出来事に注意を向けているとき,予期しない刺激が提示されても気づけないことを非注
意による見落としという。この非注意による見落としにおいて,Koivisto and Revonsuo (2007)
は実験参加者が注意を向けている刺激と予期しない刺激の属するカテゴリーの意味が同じとき,
異なるときよりも予期しない刺激を見落とさないことを示した。2 つの刺激間におけるカテゴリ
ーの意味的な違いは異同ではなく,類似性の高低で表すことができる。そこで本研究では,注
意を向ける刺激と予期しない刺激が属するカテゴリーの意味的な類似性を段階的に操作し,検
討した。操作にはカテゴリー間の意味的な類似性を評定させた値を用いた。この意味的な類似
性の評定値を独立変数,予期しない刺激を同定できた割合を従属変数としてロジスティック回
帰分析を行った。その結果,意味的な類似性が高まるにつれて予期しない刺激を見落とす割合
が減少することが示唆された。
93
2A20
バイオロジカルモーションからの感情判断課題におけるクラウディング
○池田
華子
立教大学
渡邊
克巳
東京大学
周辺視野において近接した複数の対象を見るときに,個々の対象の同定が困難になることが
知られている。この現象はクラウディングと呼ばれ,人間の動作の動的情報から構成されるバ
イオロジカルモーション(BM)刺激の動作方向や動作種別の判断においても生じることが知ら
れている。本研究では BM の感情判断におけるクラウディングを検討した。その結果,BM の
感情判断に対してもクラウディングが生じる可能性が示され,ターゲット BM と妨害 BM の動
作が一致しない場合に感情判断が容易になった。また,クラウディングの生じる強さはターゲ
ット BM の動作種別や感情種別によって異なることも示唆された。この相互作用の原因として
動作種別によって読み取りやすい感情が異なることが考えられる。
2A21
両眼刺激の視差勾配による近接する単眼刺激の視方向の偏位
○草野
勉
東京海洋大学大学院
相田
紗織
東京海洋大学大学院/日本学術振興会
下野
孝一
東京海洋大学大学院
両 眼 刺激 の 視方 向は ,周 囲 の刺 激の 視 差勾 配に よっ て 影響 さ れる こと が示 さ れて いる
(Kusano, Aida, & Shimono, 2013)。本研究では,単眼刺激の視方向も周辺の刺激の視差勾配
にともない系統的に偏位することを報告し,視差勾配が視方向に与える影響の生起機序を考察
する。実験では,両眼刺激であるランダムドット面の中央付近に単眼刺激(垂直線分)を配置
したものを,上下に 2 つ提示した。これら 2 つの面には,垂直軸を中心とした奥行方向の傾斜
をシミュレートするために,網膜像差の水平方向の勾配(水平大きさ視差)が与えられた。傾
斜の方向(左辺が奥,前額平行面,右辺が奥)
,および,上に提示された面の水平視差を独立変
数として操作したときの,その面の中央付近に提示された単眼刺激の水平視方向の変化を,上
下の単眼刺激の水平視方向が等しくなるよう下の単眼刺激の水平位置を調整することで測定し
た。下の面の水平視差は,水平大きさ視差の成分を除けばゼロであった。
94
2A22
ニオイ発生源の定位に風圧手がかりが及ぼす影響
○安藤
史織
筑波大学大学院
綾部
早穂
筑波大学
ニオイ発生源の定位は,視聴覚刺激の定位に比べ困難であるため,空間的注意を誘導する他
の感覚手がかりを用いて検出している可能性が考えられる。我々の先行研究では,頭部を固定
し,顔の正面(左右)から環境中にニオイを提示した状態では,聴覚手がかりはニオイの側方
判断に影響を及ぼさなかった。そこで本研究では,より生態学的妥当性の高い手がかりとして
「風(風圧)」の影響を検討した。実験参加者の正面に左右からニオイを提示した上で,さらに
片側(ニオイ提示と同位置)から無臭の風圧刺激を先行して提示し,ニオイが左右いずれの空
間に提示されているのかを判断させた。その結果,風圧刺激が提示された側からニオイが提示
されたと判断される傾向が有意に認められ,ニオイを鼻腔に届ける役割を持つ「風」が,ニオ
イの発生源定位の際に,妥当な手がかりとして使用されている可能性が示唆された。
2A23
注意の瞬きにおける訓練効果―T2 を着色した課題の短縮版による検討
○橋本
優花里
福山大学
光戸ら(2011)は,高次脳機能障害を有する対象者に RSVP 課題を実施し,注意の瞬き(以
下,AB)の特徴について検討した。その結果,高次脳機能障害者では,同年代の健常者と比し
て , 注 意 の 瞬 き が 長 い こ と を 見 出 し た 。 と こ ろ で , Choi, Chang, Shibata, Sasaki, &
Watanabe(2012)は,健常成人を対象に T2 を赤色に着色した RSVP 課題を 450 試行繰り返すこ
とで,注意の瞬きが減少する訓練効果を見出している。しかしながら,RSVP 課題を 450 試行
実施することは参加者への負担が大きいと考えられる。そこで本研究では,Choi et al. (2012)
の課題を 150 試行に短縮した場合であっても同様に AB が減少するのかについて検討した。そ
の結果,短縮版においても,Choi et al. (2012)と同様に AB が減少するという訓練効果が示され
た。
95
2A24
顔から性格を推測する際に用いられる評価軸:日本人大学生の場合
○池田
功毅
中京大学
齋藤
慈子
東京大学大学院
我々は他者の顔からその人の性格を推定し,またそれに従って意思決定をしがちである。欧
米での先行研究では (e.g. Oosterhof & Todorov, 2008),他者の顔は主に信頼性と支配力の二軸
で評価されると報告され,その背景には暴力への進化的適応があると考えられている。しかし
ながら,他者の,特に信頼性についての判断は,生物学的のみならず文化的な制約も受ける可
能性があり,例えば一般的他者への信頼の程度は,日本よりも欧米で高いことが知られている
(Yamagishi & Yamagishi, 1994)。そこで本研究では,先行研究で示された手続きを日本で再現
することにより,顔に基づく性格推定にもこうした文化差が生じているかどうかを検討した。
予備的検討の結果,日本では信頼性・支配力とは別に,社交性判断の軸が重要な役割を果たし
ていることが示され,顔からの性格判断方略にも文化差が存在する可能性が示唆された。
2A25
デジタル数字のクラウディング効果と視覚処理の階層性の関係
○林
大輔
東京大学大学院
大西
まどか
東京女子大学大学院
山上
精次
専修大学
クラウディング効果とは,周辺に存在する刺激(フランカー)によって,ターゲットとなる
刺激の認識が困難になる現象のことである。先行研究では,様々な種類の刺激において,ター
ゲットと類似性が高いフランカーによって選択的に起こる事から,クラウディング効果が視覚
処理過程の様々な段階で起こっていることが示されてきた。本研究では,1つの種類の刺激を
用いて,視覚処理過程の複数の段階でクラウディング効果が起こるのかを調べた。実験では,
刺激としてデジタル数字を用いた。フランカーがターゲットの左にあると,ターゲットが6の
時の正答率が9の時より高くなるのに対し,フランカーがターゲットの右にあると,逆に9の
時に正答率が高くなることが明らかとなった。このことから,ターゲットとフランカーの局所
的な特徴間(低次の処理過程)と,全体としての刺激間(高次の処理過程)でそれぞれクラウ
ディング効果が起こっていることが示唆された。
96
2A26
経頭蓋直流電気刺激による美的選好の形成
○中村
航洋
慶應義塾大学大学院
川畑
秀明
慶應義塾大学
絵画の美的選好評価においては,眼窩前頭皮質の神経活動が密接に関与していることが指摘
され,主観的に美しいと評価する絵画鑑賞では,内側眼窩前頭皮質の賦活が認められることが
明らかにされてきた。本研究では,経頭蓋直流電気刺激 (tDCS)を用いて,眼窩前頭皮質の興奮
性を一過性に変化させることによって,美的選好の形成における脳の因果的役割について検討
した。眼窩前頭皮質を陽極刺激することで皮質の興奮性を一時的に促進すると絵画に対する美
的選好が増加する一方で,陰極刺激によって皮質の興奮性を一時的に抑制すると,絵画に対す
る美的選好は減少する傾向が認められた。さらに,美的選好の変化は脳電気刺激の効果が失効
した後においても維持される傾向が認められた。本研究の結果は,眼窩前頭皮質の脳神経活動
が美的選好評価の神経生理学的基盤であり,脳電気刺激によって美的選好を形成しうることを
示唆している。
2A27
錯覚により生じる Intentional Binding 現象における先行経験の影響
○吉田
史明
立命館大学大学院
記憶が運動主体感に与える影響を明らかにするために,intentional binding (IB) 現象を用い,
プライム音とターゲット音の関係が先行経験と一致する場合と一致しない場合に関して時間知
覚の比較を行った。自発的条件では,観察条件と比較して,行為を起こしてから結果が生じる
までの時間を短く感じる現象があり IB と呼ばれる。IB は通常,自ら行為を行う場合に生じる
が,行為の後に生じるターゲット音と同様のプライム音が存在する場合には実験者に体を動か
されたと理解している場合にも IB が生じる (Moore et al, 2009)。本研究では,テストブロック
の前に先行経験ブロックを行い,プライム音とターゲット音が一致する割合を操作した。先行
経験ブロックでの一致の割合にかかわらず,テストブロックでプライム音とターゲット音が一
致している場合と不一致の場合に有意差は見られなかった。先行経験は錯覚により生じる IB 現
象に影響を与えないことが示唆された。
97
2A28
イルカの視覚メカニズムを求めて
○山田
祐樹
九州大学
妹尾
武治
九州大学
駒場
昌幸
九十九島水族館「海きらら」
池田
比佐子
九十九島水族館「海きらら」
松谷
綾夏
九十九島水族館「海きらら」
佐藤
瞭一
九十九島水族館「海きらら」
駒場
久美子
九十九島水族館「海きらら」
晶博
九十九島水族館「海きらら」
川久保
北岡
明佳
立命館大学
友永
雅己
京都大学
イルカ類は主として視覚よりも聴覚への依存度が大きいと考えられてきたため,その視覚メ
カニズムについてはよく分かっていない。本研究では,ヒトとイルカがどの程度同じ視覚メカ
ニズムを共有しているのかを明らかにすることを目的とし,2 種の実験を行った。1 つは,光学
的流動を呈示した際の姿勢制御への影響に関するものであった。ヒトではこのとき自己移動感
が生起し,重心が偏ることがある。もう 1 つは,
「蛇の回転」錯視への選好に関するものであっ
た。ヒトは回転が生じる錯視図形と統制図形とを明確に区別することができる。実験には 3 頭
のイルカが参加し,刺激を自由に見た。刺激呈示開始から 10 分間の行動をビデオカメラにより
記録した。結果として,いずれの実験においてもイルカはヒトと同様の反応を十分に示さなか
った。イルカの視覚メカニズムを正しく理解するために,手続き上の問題点に触れながら議論
を行う。
98
2A29
運動知覚における方位情報の役割: 心理物理学的解析
○原田
大輔
工学院大学
本吉
勇
東京大学
蒲池
みゆき
工学院大学
近年,刺激の方位情報が運動の検出に影響することを示す知見が増加している。本研究では,
視覚運動処理における方位情報の役割をより深く理解するため,空間を移動する一つの刺激の
方位がその見かけの移動方向に及ぼす効果を検討した。被験者は,特定の時間間隔を空けて水
平方向に移動するガボールパタンを観察し,その見かけの運動方向が上下どちらに偏って見え
るかを回答した。刺激の方位を水平を中心に様々に変化させたところ,見かけの運動方向は方
位に近づくように系統的にシフトすることがわかった。この方位誘導性の運動シフトは,連続
運動する刺激では認められず。また輝度方位ではなく刺激全体の方位に依存した。さらに,傾
き残効を応用した実験から,シフトは物理的な方位ではなく見かけの方位に依存することがわ
かった。これらの結果は,刺激の方位情報が比較的高次の運動処理において利用されることを
示唆している。
2A30
恋は時を歪ませる? —恋愛対象者の顔刺激提示中の時間認知特性
○新井
志帆子
慶應義塾大学大学院
中村
航洋
慶應義塾大学大学院
川畑
秀明
慶應義塾大学
主観的な情動体験が時間認知に影響を及ぼすことが明らかにされつつある。既にネガティブ
な情動が時間認知に及ぼす影響については数多く検討されてきているが,ポジティブな情動の
影響についてはほとんど検討されてきていない。本研究では,実験参加者にとってポジティブ
な情動(恋愛感情)が時間の感じ方に及ぼす影響を検討した。恋人など実験対象者にのみポジ
ティブな情動を引き起こすと想定される画像の提示時間に対する時間の感じ方について,時間
再生課題を用いて検討した。本発表では,友人や他人の画像と比較して,恋人の画像に対する
主観的時間の感じ方に違いがみられたという実験結果に加え,主観的時間体験の傾向と日本語
版熱愛尺度によって測定された熱愛感情の程度との関係性から明らかになるポジティブ情動と
主観的時間体験についても報告する。
99
2A31
反応抑制刺激嫌悪効果の生起における注意の役割
○井上
和哉
日本学術振興会・関西学院大学
佐藤
暢哉
関西学院大学
反応を抑制した刺激は反応を行った刺激よりも否定的に評価される。本研究では,反応抑制
による否定的評価が生じるために,反応抑制の対象となる刺激に注意を向けることが重要かを
検討した。画像注意群の反応抑制課題では,グミまたはおかきの画像が提示され,一方のカテ
ゴリの画像が提示されたときにのみ反応することが求められた。画像非注意群では,画像の中
央に一桁の数字が提示され,奇数(または偶数)の時にのみ反応することが求められた。反応抑制
課題後に画像中の食物の見た目の美味しさの評定を求めたところ,画像注意群では,反応を行
った刺激よりも抑制した刺激が否定的に評価された。画像非注意群では,反応の抑制時に提示
された刺激と反応実施時に提示された刺激の評定値に違いはなかった。これらの結果から,反
応を抑制すること(回避反応)の否定的な意味が刺激と連合するためには,刺激に注意を向ける必
要があることが示唆された。
2A32
視覚・触覚情報間に存在する量的な規則性に対する知覚
○坂野
逸紀
関西学院大学
佐藤
暢哉
関西学院大学
視触覚を協働させて外界を認識するとき,複数のモダリティからの入力はしばしば量的な規
則性―ランダムでない共変関係―を有する。本研究では,視覚・触覚情報間に存在する量的な
規則性に対するヒトの知覚能力を検討した。事前知識の影響を排除するため,視覚量として輝
度,触覚量として剛性という恣意的な組合せを用いた。実験協力者は,1 つの系列内で各 1,000ms,
計 7 回の視触覚組の刺激入力を受け,その間に潜む規則性の程度を判断することを求められた。
規則性の程度は,輝度・剛性量間の相関係数を調整することで操作された。実験の結果,協力
者は規則性の高い方をそれ自体の知識無しに選べること,その感度には指向性が無く,
「明るい
ほどかたい」場合と「明るいほどやわらかい」場合のどちらでも同程度に規則性を見いだせる
ことが分かった。結果は,我々が共起する個々の視触覚経験を統合し,抽象化された線形規則
を抽出できる可能性を示唆する。
100
2A33
道具の使用方向と身体近傍空間の変容の関連についての検討
○榎本
玲子
専修大学
山上
精次
専修大学
身体を中心として手が届く範囲の近い空間(身体近傍空間)は,それ以上離れた遠い空間(身
体外空間)と異なって表象されている。さらに,線分二等分課題を用いた研究では,身体近傍
空間内で主観的中心点が左に偏るという傾向が,実際には身体外空間であるが長い棒によって
届くようになる距離の空間においても見られたことから,この領域は物理的に届く範囲を拡張
するような道具の使用により可塑的に変化することが示唆されている。これまでの先行研究で
は,主に道具を正面方向に対して使用した際の身体近傍空間の拡張について検討されている。
しかし,このような道具使用による身体近傍空間の変容は,道具を使用する方法や経験にも影
響を受ける可能性がある。本研究では,線分二等分課題における主観的中心点の偏りを身体近
傍空間の拡張の指標とし,道具を使用する方向の違いが身体近傍空間の拡張に異なる影響を与
えるかどうかを検討する。
2A34
児童期における線運動錯視知覚
○和泉
絵里香
新潟大学
伊村
知子
新潟国際情報大学
白井
述
新潟大学
線分刺激の呈示に先立って,その一方の端点に視覚手がかりが短時間呈示されると,視覚手
がかりの呈示位置と反対の端点に向かって線分が伸びていくような運動印象が生じる(線運動
錯視:Hikosaka ら, 1993)。本研究では小学生と成人の線運動錯視の知覚を比較した。被験者は
小学校低学年児 11 名(平均年齢:7.6 歳),小学校高学年児 10 名(平均年齢:10.7 歳),およ
び成人 10 名(平均年齢:22.3 歳)であり,視覚手がかりの呈示位置 2 種類(左/右)×視覚手
がかりの呈示から線分刺激の呈示までの時間間隔
(cue-­lead time:CLT)
6 種類(100ms〜3200ms)
の計 12 種類の視覚刺激について線分の運動方向を回答した。その結果,成人では CLT が長い
ほど運動感覚は減少したが,小学生では CLT の変化によらず運動感覚がほぼ一定であり,小学
生と成人では線運動錯視の知覚特性が異なることが示唆された。
101
2A35
自然画像における人物検出の検討
○立花
行場
良
東北大学大学院文学研究科
次朗
東北大学大学院文学研究科
視覚的注意の研究は,単純な幾何学図形を視覚探索課題などに用いて,注意の様々な特性を
明らかにしてきた。近年では,こうした実験パラダイムには現実場面における注意の再現に限
界があるとされ,複雑な自然情景画像を利用した研究が増えている。画像工学などの研究から
も,画像内の物体や顕著性を明確にする大規模画像データベースの開発が行われ,注意の向け
られやすい物体や位置方向の予測が可能となっている。しかし,どのような背景において人物
や物体の検出が難しくなるかは不明な点が多い。本研究では,異なる背景 (室外・室内) をもつ
自然画像と眼球運動測定を用いて,どのような状況で人物検出が難しくなるのかを検討した。
実験結果から,どの背景においても人物が写っている画像で,反応時間が短くなることが明ら
かになった。これは,人物の検出は背景の影響を受けず,即座に可能であることを示唆する。
2A36
感情特性と感情状態が知覚的統合処理に及ぼす影響
○北村
美穂
NTT コミュニケーション科学基礎研究所
渡邊
克巳
東京大学先端科学技術研究センター
北川
智利
NTT コミュニケーション科学基礎研究所
感情状態によって,認知的な統合処理が影響を受けることが知られている。本研究では,感
情状態(陽性/陰性)と,感情特性(抑うつ傾向)が,知覚的統合処理にどのように影響する
か,交差・反発事象を用いて検討した。参加者は,あらかじめ,自己記入式質問紙によって,
抑うつ傾向の高い群と低い群に分けられた。音楽による気分誘導後に,左右にすれ違う二つの
円盤に,いろいろなタイミングで短い音を付加した交差・反発事象を観察し,交差に見えるか
反発に見えるかを答えた。実験の結果,抑うつ傾向の低い参加者は,陽性気分の場合,音の影
響が強くなる,すなわち視聴覚統合が促進された。一方,抑うつ傾向の高い参加者では,気分
による違いは生じなかった。これらの結果は,陽性感情が知覚レベルでも統合処理を促進し,
その効果は,参加者に内在する感情的な特性によって異なることを示唆する。なお,音の感情
価を操作した実験についても合わせて報告する。
102
2A37
眼球運動による幻効果の検討
○加藤
大久保
雅士
街亜
専修大学大学院
専修大学
3 つの選択肢のうち 1 つが選択不可能となると,その選択肢の属性(例:値段の安さ)がその後
の意思決定に影響を与える。この影響を幻効果と呼ぶ。従来の幻効果の研究では,選択結果の
みを検討対象としてきた。そこで本研究では,選択課題遂行時の眼球運動を解析することで,
意思決定過程の詳細を分析する。本研究では,予め選択不可能であることを教示する既知条件
と,選択後に教示する未知条件の 2 条件を設定した。実験の結果,既知条件では選択肢の属性
に関わらず,選択したものへの注視量が多かった。一方,未知条件では選択肢の属性に関わら
ず,初めに選択したもの,最後に選択したもの,選択しなかったものの順に注視量が多かった。
この結果は,参加者が選択不可能なことに対して反発的な選択をするという心理的リアクタン
ス理論とは一致しない。むしろ,情報探索の段階で選択対象を制限する可能性を示唆するもの
である。
2A38
分裂錯覚の生起に影響を与える視覚刺激の特性
○竹島
康博
東北大学大学院文学研究科/日本学術振興会
行場
次朗
東北大学大学院文学研究科
聴覚刺激によって視知覚が変容する現象として,分裂錯覚と呼ばれる現象がある。この錯覚
では,視覚刺激を短く 1 回提示するのに同期して聴覚刺激を 2 回提示することで,視覚刺激も 2
回提示されたように知覚される。この現象に関しては,心理物理学的および神経生理学的観点
から様々な検討が行われている。一方,この錯覚は非常に短い時間間隔の中で生起することか
ら,感覚処理を担う神経活動の応答速度や処理速度の影響を受けると推測される。そこで,本
研究では視覚刺激の空間周波数と複雑さを操作することによって,分裂錯覚の生起頻度に与え
る影響について検討を行った。実験の結果,空間周波数が高い視覚刺激,および複雑な視覚刺
激では分裂錯覚が生起しにくいことが示された。高空間周波数を処理する視覚ニューロン系は
応答や神経伝導が遅く,また複雑な物体の処理にはより長い処理時間が必要とされる。したが
って,長い視覚処理時間を必要とする刺激特性が分裂錯覚の生起を抑えることが示唆された。
103
2A39
Iowa Gambling Task における曖昧性とリスクとの関連 ―後悔傾向,
numeracy,及び価値割引による検討―
○長谷川
秋山
千洋
学
神戸学院大学
神戸学院大学
Iowa Gambling Task (IGT: Bechara et al.,1994)では,報酬や損失の出現頻度が未知である曖
昧な状況下での決定が求められる。Akiyama & Hasegawa(2014)は IGT 実施前に,選択肢の報
酬や損失の出現頻度を明示し,事前のリスク情報と IGT 遂行過程で獲得した情報の統合が容易
でないことを示唆した。本研究でも同様に,報酬などの出現頻度など課題実施前に教示した場
合(risky IGT 条件),及び標準的な IGT 実施(ambiguous IGT 条件)において,課題遂行成績や,
カード選択時の皮膚電気反応(SCR)を実験参加者の後悔傾向,遅延価値割引,及び numeracy と
の関連からを検討した。risky IGT 条件において IGT 開始直後に後悔傾向が高いと有利なカー
ドが選好される傾向が見いだされたが,課題遂行が進むとこの傾向が消失することが示唆され
た。
2A40
周波数距離が 2 音の同時性知覚に与える影響
○岡崎
聡
千葉大学
一川
誠
千葉大学
聴覚の周波数分解能は,低い周波数領域ほど高くなる。高い周波数分解能は振幅変化に関す
る知覚の時間的精度を低下させる。Moore et al. (1993, J. Acoust. Soc.) は,音ギャップ検出課
題を用いて,音の振幅変化の知覚が低周波数領域で困難になることを示した。Okazaki &
Ichikawa (2014, ICMPC) は,2 音の同時性判断が 2 音の融合処理過程及び 2 音の同期処理過程
に基づくことを示した。ただし,2 音の周波数距離が同時性判断に与える影響は未解明である。
2 音の周波数距離は,それぞれの音の時間軸上の開始点に対する知覚的精度の違いを生み,2 音
の同時性知覚に影響を与える可能性がある。本研究では,2 音の周波数距離を変数として同時性
判断実験を行い,2 音の融合処理過程と同期処理過程がどのように周波数距離の影響を受けるか
検討する。
104
2A41
色覚障害者,色弱模擬フィルタ装着の色覚正常者,色覚正常者の色彩感情の
測定
○野口
三星
由梨亜
神奈川大学大学院
宗雄
神奈川大学
色覚障害者と色覚正常者の色弱模擬フィルタ有無の色彩感情を SD 法で測定した。色覚障害者
は 3 名(1 型 2 色覚者,2 型 3 色覚者,2 型 2 色覚者),色覚正常者 25 名のうち 13 名は色弱模擬
フィルタを装着し,12 名はフィルタ無しであった。色刺激は黒,緑みの青,青,紫,緑みの黄,
灰,赤,黄赤,青みの緑,黄緑,白の 11 色,SD 尺度は 7 段階の 21 尺度を用いた。測定は白色
蛍光灯の下で行った。その結果,色覚障害者の赤と橙に対する「迫力がある-­迫力がない」,「派
手な-­地味な」等の尺度は右側にシフトし,色覚正常者のフィルタ有り条件の結果と類似した。
一方「現代的な-­古ぼけた」等の尺度は色覚正常者のフィルタ無し条件と類似した。また,色覚
障害者の白に対する評価と,紫色の価値性の因子が含まれる尺度の評価はフィルタ有無条件と
は異なった。このように色覚障害者は混同色に消極的なイメージを持つことから,色彩感情が
問題になる事態では配慮が必要である。
2A42
非接触型アイマークカメラを用いた視線情報のフィードバックによる影響
○松田
典子
大阪市立大学大学院
岡田
明
大阪市立大学大学院
山下
久仁子
大阪市立大学
ヒトは自分の視線を見せられた時,どのように感じるのか。非接触型アイマークカメラを用
いて視線を捕らえ,その視線を自らにフィードバックした場合としなかった場合を比較した。
視線を見せたグループと見せなかったグループに分け,人物や風景の写真,また絵画や文字な
ど様々な映像を見せ,アンケートを行った。その結果,視線が見えていても邪魔にはならない
という感想が多く得られた。しかし文字の上では邪魔ではないが人の顔の上にあると邪魔に感
じるという意見もあったことから,対象物の知識の有無などが影響を与えている可能性が示唆
された。また,必ずしも自分が「見ていた」あるいは「見ていると意識していた」ものと「視
線を向けていた先」は合致するとは限らず,指摘すれば思い出して説明できるものと,少数で
はあるが指摘しても説明できないものが存在したことから,自分の視線について完全に把握し
ているわけではないことが示唆された。
105
【5 号館 1 階ホール】
2B01
2 次元刺激の数量順応は 3 次元刺激の数量/密度判断に影響するか?
○相田
紗織
東京海洋大学・日本学術振興会
草野
勉
東京海洋大学
下野
孝一
東京海洋大学
本研究では 2 次元刺激の数量順応効果が 3 次元刺激の数量判断に影響するかを調べた。2 次元
刺激における数量/密度の順応の効果は,Ross & Burr (2010)によって示されている。彼らは構
成要素の多い刺激と少ない刺激に順応したとき,テスト刺激の要素数がそれぞれより少なく,
より多く見積もられることを報告した。われわれは彼らと同様の方法を用いて 2 次元刺激と 3
次元刺激の順応効果を測定した。実験参加者は,左右に置かれた順応刺激(例えば,2 次元刺激
と 3 次元刺激)を観察した後,同じ位置のテスト刺激(例えば,2 次元刺激と 2 次元刺激)の要
素数を比較し,左右いずれの刺激の要素数が多いかを報告した。実験の結果,要素数の多い刺
激でも少ない刺激でも 2 次元刺激の順応効果は 3 次元刺激の数量/密度判断に影響した。この結
果は,2 次元刺激と 3 次元刺激の構成要素数(あるいは密度)を処理するメカニズムが類似のも
のであることを示唆している。
2B02
視覚的運動情報による時間知覚の変化―先行刺激および対象の運動が及ぼす
影響とその相互作用―
○佐藤
駿
専修大学
中沢
仁
専修大学
対象を見ていたと知覚される時間は,その対象の運動の速さによって変化する。また,対象
となる刺激に先行して呈示された運動を見ることによっても,その後の運動対象の知覚される
時間は影響を受けることが知られている。これまでの研究から,先行して速い運動を呈示した
とき,続く運動対象の呈示時間は実際よりも短く知覚され,それが主に先行運動への順応から
生じることが示唆されている。しかし,先行運動と対象運動間の速度差,およびそれらの運動
の向き関係による影響についての明確な示唆はなく,さらに検討していく余地がある。そこで
本研究では,先行運動と対象運動の速度,向き関係を操作し,対象運動の時間知覚がどのよう
に影響を受けるかを検討した。その結果,先行運動と対象運動間の向き関係によらず,速度変
化量の大きさによって対象運動の時間知覚がより強く影響を受けており,これは時間知覚特有
の運動情報処理の可能性を示唆している。
106
2B03
視覚刺激の分散抽出過程における情報処理特性
○時田
みどり
お茶の水女子大学
上田
祥代
お茶の水女子大学
石口
彰
お茶の水女子大学
平均量抽出をはじめとする要約統計量表象の存在が広く提唱される一方,その抽出過程は,
選択的注意の限界容量内の情報利用によって説明されうることも指摘されている。本研究では,
円面積の分散識別課題を用いて,要約統計量抽出における視覚情報処理特性を検討した。一方
を標準刺激,他方を比較刺激とする,面積の異なる2群の円を継次提示し,どちらの円面積の
分散が大きいかの判断を課した。独立変数として,1)同時提示される円の数(2,4,9, 16
の4種のセットサイズ)と,2)比較刺激の円面積の分散を操作した。結果から,セットサイ
ズが大きくなるに従い,僅かな分散識別精度の上昇が示された。行動データと理想的観察者モ
デルのシミュレーション結果の比較から,セットサイズが9及び 16 の際の識別精度は,限界容
量内の情報利用では説明不可能であり,限界容量に依存しない包括的な刺激の処理を媒介とす
る要約統計量表象の存在が示唆された。
107
2B04
往復効果における身体活動の影響
○小澤
良祐
大阪大学大学院
藤井
慶輔
名古屋大学
北澤
茂
大阪大学大学院
神﨑
素樹
京都大学大学院
よく知らない土地で道を往復する際,復路を短く感じることがしばしばある(往復効果)
。本
研究では,往復効果において歩行という身体活動がどのような影響を与えているかを検証した。
被験者はある 2 地点間を異なる経路で歩行移動する映像を 2 本視聴した。2 本目の映像の前に,
「元の位置に戻る」ことを教示する群・しない群に分けた。映像視聴中,被験者はトレッドミ
ル上での歩行を行った。時間の評価は RP3(3 分繰り返し作成法)と VAS を用いた。結果は,
教示有り群でのみ往復効果が見られた。これは,歩行無しで同様の実験を行った先行研究と一
致し,VAS によるポストディクティブな時間判断に身体活動は必ずしも必要ではないことを示
唆した。しかしながら,RP3 の分散が歩行無しの先行研究に比べて小さくなっており,リアル
タイムな時間知覚の変動性と身体活動との関連を示唆した。すなわち,身体活動は時間判断で
はなく時間知覚に影響を与え得ることを示唆した。
2B05
位置関係の知覚における haptic egocentre の検討
○若生
綾部
遼
筑波大学
早穂
筑波大学
多くの先行研究は人型の模型の「どこ」に身体の中心があるか,「私はここにいると感じる」
身体部位の回答などを求め(e.g., Alsmith & Longo, 2014),評価者と対象物との位置関係を符
号化する際の egocentre を直接的に検討していない。本研究では目隠しをした参加者(右利き)
が複数箇所に設置された対象物に手を伸ばし,その対象物と身体の物理的な中心(mid-­sagittal)
を結んだ直線上に左右に移動可能なキャスターを配置する課題により,haptic egocentre の検討
を行った。結果,右肩よりも左に位置する対象物は mid-­sagittal よりも右側に,右肩よりも右
に位置する対象物は mid-­sagittal よりも左側にキャスターが配置されることが示された。これ
は,肩を egocentre として符号化した対象物の位置を,主観的な egocentre(mid-­sagittal)と
の位置関係に変換する際のエラーにより生じていると考えられる。
108
2B06
多感覚特徴の共起による知覚変容の検討
○熊倉
横澤
恵梨香
東京大学大学院
一彦
東京大学大学院
感覚間協応と呼ばれる,異なる感覚特徴同士(例えば,明るい色と高い音)の非恣意的な結
合の形成要因の1つは,特徴間の共起関係を経験的に学習した結果に基づく知覚の変容と考え
られている(Spence, 2011)。すでに2特徴の共起関係の学習や,更に多特徴の共起関係の学習
についても調べられているが,人間が本当に多特徴の共起関係を学習しているのか,それとも
2特徴間の共起関係の学習を従属的に組み合わせているに過ぎないのかは分かっていない。多
特徴間の従属的ではない共起関係の学習を調べるには,特徴間の共起確率を独立して操作する
必要がある。そこで,本研究では3つの感覚特徴の共起関係を操作し,3特徴の中の2特徴間
に共起関係がある条件や,2特徴には無いが3特徴間には共起関係がある条件での学習を比較
した。その結果,3特徴間の共起関係の学習は困難であり,知覚の変容は起こりにくいことが
分かった。
2B07
周辺視での刺激の見えを決定する情報統合の時間窓
○寺尾
将彦
東京大学大学院
村上
郁也
東京大学大学院
周辺視では,刺激の見えは同時呈示された近傍刺激の影響を受け(e.g. Greenwood et al, 2009),
ある空間的な範囲の情報が知覚に寄与することが示唆される。本研究ではこの空間的な情報統
合がどのような時間的な広がりで行われるのかを調べた。課題は注視点から横に 12 度離れた十
字(目標刺激)の交点の位置判断であった。目標刺激の上下近傍に交点の位置が異なる十字(妨害
刺激)が様々な時間差で呈示された。実験の結果,妨害刺激が目標刺激に先行して呈示された時
には見かけの位置は妨害刺激の影響を受けなかったが,同時呈示ないし目標刺激が先に呈示さ
れた時には目標刺激の位置は妨害刺激の位置に近づいて見えた。それが生じる範囲は約 150ms
で,目標刺激が 25ms 先行して呈示された時に最も影響が強かった。本結果から,周辺視で刺激
の見えを決定するための情報統合が生じる時空間的な広がりの形状が明らかになった。
109
2B08
単一セッション内でみる反応復活
○藤巻
坂上
峻
慶應義塾大学大学院
貴之
慶應義塾大学
反応復活(resurgence)は主に以下の 3 フェイズ構成の手続きで研究されてきた。フェイズ 1:
標的反応の形成。フェイズ 2:標的反応の消去と代替反応の形成。フェイズ 3:代替反応を消去
し,標的反応の復活を検証。多くの研究ではフェイズ 1 と 2 を最低 15 セッション以上実施した
上で反応復活を検証してきたが,本研究では全フェイズを単一セッション内で実施し,反応復
活を調べた。実験条件はフェイズ 1 で標的反応を VI15 秒,VI30 秒,VI60 秒のいずれかで形成
する 3 条件であった。フェイズ 2 では標的反応の消去とともに代替反応を VI15 秒で形成し,フ
ェイズ 3 では代替反応を消去した。フェイズ 1 と 2 は最低 20 強化,フェイズ 3 は最低 5 分以上
経過した時点で終了した。各条件を個体ごとにランダムな順で複数回実施し,復活の生じ方を
条件間で比較した結果,復活強度には顕著な差が見られなかったが,VI60 条件で復活した反応
は他の条件よりも長期に亘って生起し続ける傾向が見られた。
2B09
運動定義運動の知覚的同期
○柳
淳二
一川
誠
千葉大学
千葉大学
静止したランダムドット領域の一部を運動させると(スクロール),運動によって定義された
領域が知覚される。この輪郭を運動させると,運動によって定義された領域の運動(運動定義
運動:ドリフト)が知覚される。これまでの研究において,ドリフトの運動方向の知覚にはス
クロールより長い提示時間を要することが明らかとなった。これは,刺激提示直後の時点では
スクロールとドリフトの処理が時間的にずれていることを示す。では,運動定義運動が安定し
て知覚されているとき,スクロールとドリフトの知覚はずれていないのだろうか?本研究では,
運動定義運動刺激の提示中にスクロールとドリフトの運動方向を様々なタイミングで反転させ,
両者の反転が同期して知覚される時間関係,あるいは反転のタイミングの知覚に対する両者の
影響を探る。これらの実験から得られる結果に基づき,運動定義運動の知覚処理の時間的な特
性について検討する。
110
2B10
選好は揺らがないのか
○川口
めぐみ
札幌大谷大学短期大学
ある刺激に対し,反復的に接触することで,その刺激に対して印象や好意度が増す現象を単
純接触効果という。この効果は,人の顔刺激や文字刺激(Zajonc,1968),図形刺激(Bornstein&
D'Agostino,1992)等,さまざまな刺激において見られる現象であることがわかっている。本研究
は,実験室の中で強制的にモニタに注意を向けて得られる効果ではなく,日常生活において単
純接触の操作を行い,視覚刺激に対する選好が揺らぐか否かについて検討した。また,接触す
る刺激が図となった条件と,地となった条件の 2 条件について検討し,色彩選好と単純接触効
果の関連について明らかにする。
2B11
注意の瞬き現象から見た表情の知覚特性:怒り顔は注意を惹かない?
○桐田
隆博
岩手県立大学
視覚探索課題に代表される顔表情の検出課題を用いた研究は,しばしば怒り顔の優位性を支
持しているが,その多くは図式顔を用いている。実際の顔写真を用いた場合は,怒り顔の優位
性は必ずしも見いだされず,時に,幸福顔の優位性が示されることもある。本研究では,高速
継時視覚提示法(RSVP)により,実際の表情の知覚と注意機能の関係の観点から,怒り顔の優位
性について実験的に検討した。その結果,表情を第1標的にした場合は,怒り顔より幸福顔に
おいて注意の停留が示された。これに対して,表情を第2標的にした場合は,表情の歯の露出
の有無が結果に影響を及ぼすことが明らかになった。すなわち,歯の露出がない表情の場合は,
第2標的が怒り顔の場合に最も注意の瞬き現象が大きくなり,歯の露出がある場合は怒り顔と
幸福顔における注意の瞬きには差は見られなかった。総じて,注意の瞬き現象を指標とした場
合,怒り顔の優位性は観察されなかった。
111
2B12
香りと色により産出されるオノマトペ表現
○甲村
美帆
群馬県立女子大学
金子
有貴
群馬県立女子大学
嗅覚情報と同時に提示される色情報は,香りの命名や判断に影響することが知られている
(Stevenson & Oaten, 2008 など)。本研究では,実験参加者に,合成香料の香りのみ,あるいは
香りと色を組み合わせた刺激セットを提示し,香りをオノマトペで自由に表現するよう求めた。
産出されたオノマトペを,関連する感覚次元や音韻的特徴をもとにグループ化し,香りと色の
相互作用を検討した。その結果,オノマトペが内包する感覚次元には,香りと色を組み合わせ
たことによる明確な影響は見られなかったが,香りに色が加わることにより,その組み合わせ
に依存して濁音・半濁音を伴う特徴的な傾向が見られた。一般に濁音を含むオノマトペは,清
音よりも激しさや否定的なニュアンスを含むことがあるため(田守, 2002),色への好悪が,オノ
マトペに快不快といった感情をのせて表現された可能性が示唆された。
2B13
ハトのプラッド運動知覚に及ぼす空間周波数・コントラスト分化の効果
○大瀧
翔
京都大学
Bucher Benoit
京都大学
幡地
祐哉
京都大学
藤田
和生
京都大学
運動方向の異なる 2 つの正弦波グレーティング (コンポーネント)を重ねると,ヒトはこれら
を統合したプラッド運動を知覚する。電気生理学的な研究により,サル MT 野のニューロンの
20%が,プラッド運動方向に応答することが示されている。一方で,脊椎動物の中で最も視覚の
発達した鳥類では,このようなニューロンは発見されていない。本研究では行動実験によって,
(1) ハトがプラッド運動を知覚すること,(2) コンポーネントの空間周波数を分化すると,コン
ポーネントを分離して知覚すること,(3) コントラスト分化に対して,ヒトよりも非常に敏感で
あることを発見した。これらの結果は,ヒトとハトが異なるメカニズムによって,運動統合を
実現していることを示唆する。
112
2B14
視覚的フィードバックの遅延に対する気付きが身体運動-視覚間時間再較正
に及ぼす影響
○辻田
一川
匡葵
千葉大学
誠
千葉大学
能動的な身体運動に対して視覚的フィードバックが遅れて提示されるような状態が持続する
と,身体運動と視覚との間の時間順序知覚がその遅延を補償するような順応的変化が生じる (身
体運動-­視覚間時間再較正)。本研究では,視覚的フィードバックの遅延に対する気付きの有無に
よって身体運動-­視覚間時間再較正の成立に違いが見られるのか検討した。視覚的フィードバッ
クに大きな遅延を導入したために参加者が遅延に気付いた順応条件では明確な再較正が生じた
ものの,視覚的フィードバックの遅延を小刻みに増やしたために参加者が遅延に気付かなかっ
た順応条件では再較正が生じ難かった。これらの結果は,身体運動-­視覚間時間再較正の成立に
は視覚的フィードバックの遅延に対する気付きが必要であること,身体運動-­視覚間時間再較正
の成立が時間順序知覚の判断基準の変化のような認知的な過程に依存していることを示唆して
いる。
2B15
3D プリンタで作成した幾何学的“錯触”刺激の錯触量測定
○宮岡
徹
静岡理工科大学
幾何学的錯視は古くから研究されてきた。これに対し,幾何学的“錯触”と呼べる現象も存
在するが,これらについての研究は少なかった。幾何学的錯視については,古くは紙とペンで,
最近ではコンピュータにより刺激を簡単に作成できた。しかし,幾何学的“錯触”については,
実験に用いる刺激を精度よく簡単に作成するのは難しかった。これが,幾何学的“錯触”研究
が少なかった原因のひとつと考えられる。しかし近年,高精度(刺激作成精度 50μm)でしか
も比較的安価な 3D プリンタが発売された。これにより状況は一変し,多種類の幾何学的“錯触”
刺激を手軽に作成できるようになった。そこで,本研究では,ミュラー・リエル刺激をはじめ
とするいくつかの幾何学的錯触刺激を作成し,心理実験を実施した。ポスターでは,それらの
実験結果について報告する。
113
2B16
感覚モダリティ内群化は音による視覚的時間知覚の伸縮効果を消失させる
○朝岡
行場
陸
東北大学大学院
次朗
東北大学大学院
本研究では時間知覚における感覚モダリティ群化の影響を検討した。参加者は視覚刺激だけ
か,2 個の音に挟まれた視覚刺激が提示され,先行訓練にて学習した基準を基に,視覚刺激の継
続時間を「長い」,「やや長い」,「やや短い」,「短い」のいずれかで評定した。その結果,音と
視覚刺激の間隔(ISI)が 200ms の時は,音なし条件に比べて継続時間が長いと評価され,ISI
が 0ms の時は,音なし条件に比べてそれが短いと評定された。前者の伸長効果は音が視覚刺激
のオンセット・オフセットを引きつける時間的腹話術効果によるものと考えられるが,後者の
短縮効果についてのメカニズムは不明瞭である。さらに,視覚刺激の前後に提示される音が聴
覚内で群化されると,これらの伸縮効果は消失することも見出された。したがって,伸長効果
だけでなく,短縮効果も視聴覚統合によって生起すること,多感覚時間知覚が感覚内・感覚間
群化によっても影響されることが示唆された。
2B17
視覚が及ぼす主観的音量弁別への影響
○康
允範
神奈川大学
和氣
洋美
神奈川大学
斎田
真也
神奈川大学
視覚と聴覚の関係は密接なものであり,それぞれの感覚に影響を与えることで知られている。
マガーク効果や腹話術効果といった空間の定位,時間の定位の問題がよく知られているが,刺激
の強度が与える視聴覚間相互作用への影響に関する検討は,空間や時間の定位の検討に比べ数
少ない。本研究は,刺激の強度が視聴覚間相互作用を引き起こすのかを検討することを目的と
した。視覚刺激は手を叩く映像で,その動作の大きさと速度が変数であり,聴覚刺激は手を叩
く時の衝撃音で,その衝撃音の主観的音量に視覚刺激が及ぼす影響を計測した。また,視覚刺
激においては注視点のみの条件 (映像無条件) も設けた。結果は,影響の有無も含めて個人差が
見られたが,視覚における動作の強度や有無が主観的音量に影響を与える場合があることが示
唆された。
114
2B18
観察者の眼間距離は錯視量の個人差を予測するか
○田谷
岡部
修一郎
大正大学
香菜
大正大学
近年の研究で筆者は,観察者の両眼間距離が小さいほど両眼視差から復元される奥行き量の
ばらつきが大きくなることを示した。この結果は眼間距離の小さな観察者にとって両眼視差は
ノイジーな手がかりであること,そしてそれゆえにそうした観察者はノイジーな両眼視差より
も単眼性手がかりを空間知覚において重視している可能性を示唆する。そうであれば,単眼性
手がかり処理の「誤作動」に起因する一部の幾何学的錯視には(単眼性手がかり重視型の)眼
間距離の小さな被験者ほど効果が大きく現れることが予測できる。この予測を検討するため,
8名の観察者を対象に両眼間距離の大きさとミュラー・リヤー錯視の錯視量を比較した。実験
の結果は予測と一致し,観察者の眼間距離と錯視量の間に負の相関が認められた(r = -­0.35 ~
-­0.57)。眼間距離と手がかりの重み付け,および幾何学的錯視における単眼性手がかりの役割の
関係について議論する。
2B19
複数の刺激セットで探る探索非対称性のメカニズム
○上田
祥行
京都大学
黒須
慎吾
京都大学
齋木
潤
京都大学
探索非対称性とは,探索場面において目標刺激と妨害刺激を入れ替えることで探索効率が変
化する現象である。この現象は,注意のコントロールを必要としない刺激駆動的な処理によっ
て生起することが示唆されている。このことは,同じ特徴次元で定義される刺激セットであれ
ば,探索非対称性の強さは個人内で相関を持つことを予測する。実験では,線分の方位・OQ・
線分の長短・文字(「舌」)の 4 種類の刺激セットを同一の協力者に呈示し,探索的因子分析に
よって探索非対称性の個人内での一貫性を検討した。その結果,目標刺激が線分の傾きで定義
される刺激セット(線分の方位・文字)は個人内相関が高く,共通の処理の影響を受けている
ことが示された。線分の方位の探索は並列探索に近く,文字の探索は親近性など高次の処理が
影響しているにも関わらず個人内相関が高いという結果は,探索非対称性が低次レベルの刺激
駆動的な処理に依存していることを示唆する。
115
2B20
自己運動知覚における皮膚感覚情報の役割:実際の移動を含めた検討
○村田
佳代子
首都大学東京
小松
英海
慶應義塾大学
中野
泰志
慶應義塾大学
市原
茂
(株)メディア・アイ
石原
正規
首都大学東京
増田
直衛
慶應義塾大学
感性評価研究所
自己運動知覚の生起には視覚(Dichgans & Brandt, 1978)や聴覚(Lackner, 1977)また前
庭(Allison et al.,1999)からの情報が重要とされている。Murata et al.(in press)は視聴覚
を遮断し皮膚に風を当てると自己運動知覚が生起することを明らかにした。本研究では皮膚感
覚による自己運動知覚と実際の移動感覚との違いを検討するため,前庭刺激を移動を伴う条件
と伴わない(振動)条件に分け,それぞれに風を与えたときの移動感覚の有無及び速度感の違
いを測定した。その結果,移動・振動条件ともに移動感覚が生じることが示された。またそこ
に皮膚刺激が伴うと両条件とも持続時間が長くなった。移動条件における移動感は一旦知覚さ
れると持続するが,振動のみの条件では持続が短かった。本研究は皮膚刺激が自己運動および
その知覚される「方向」と関連した情報を提供する可能性を示唆した。
116
2B21
触運動による対象同定過程に及ぼす対象の大きさと重さの影響:大学生と幼
児を対象者として
○小松
小原
英海
慶應義塾大学
健一郎
明星大学
大学生を対象者として,視聴覚を用いず,触運動のみで対象同定を行う際の探索過程を検討
してきた。大きさは異なるが重さがほぼ同一の対象のペアを作り,それを用いて探索動作の違
いがその重さによるのか大きさによるのかについて解析した。その結果,大学生の場合,対象
の重さにかかわらず,大きさによって探索過程が規定されていた。提示物全体を空中で扱う把
持時間が大きさによって異なっていた。大きい場合は,机に固定して扱っていたが,手の中に
収まるくらい小さい場合には,空中で操作していた。本研究では,幼児に見えないブースの中
の提示物を触り,それが何かを言い当てるゲームとして幼児について同様の実験を行った。そ
の結果,幼児の場合,大きさだけではなく,重さの影響も受けることが明らかとなった。幼児
の場合,定位にこだわらず,大きさ・重さによらず,とにかくよく全体を動かす特徴が顕著で
あった。
2B22
「おべんとう絵本」の事象知覚に関する実験的研究
○鈴木
清重
慶應義塾大学/立教大学
「おべんとう絵本」は絵本創作講座(長谷川, 1988)の実習課題である。制作者と鑑賞者は,
15 種類の見開き画面に描かれた黒丸の配置とページ間の配列に黒丸同士の「まとまり」と種々
の事象を知覚する。本研究は先行研究(瀬崎, 2013;; 鈴木, 2014)に基づき事象知覚に影響する
黒丸の配置の要因を検討した。実験用の絵本を制作し,先行研究が社会的事象,機械的事象,
自然的事象を惹起すると予想した黒丸の配置の有無を独立変数とした。特定の配置の有無が,a)
1画面の事象知覚に影響するか,b)画面間の事象知覚に影響するか検討した。観察者の知覚し
た事象を自由記述回答で測定し,記述内容を分類した。内容ごとの記述頻度を従属変数とした。
結果は,社会的事象を惹起すると予想した配置が1画面の社会的事象の知覚に影響せず,画面
間に影響した可能性を示唆した。1画面の黒丸の特定の配置が,画面間の群化に影響したと考
えられる。
117
2B23
時間再生課題における脳波基礎律動の検討
○富永
大悟
北海道大学大学院
室橋
春光
北海道大学大学院
時間感覚は,視覚や聴覚のように特定の感覚器官は存在せず知覚・評価されることから,かな
り高次の認知的処理過程を経て心的に構成されると考えられている。そのため事象の変化とな
る刺激の物理特性や副課題の難易度により知覚される時間が変動することが様々な研究で示唆
されている。一方,時間知覚に関与する神経基盤の研究では内的時計を仮定することが多い。
最近の神経心理学的研究では脳内の生理学的要因による内的時計の変動が示唆されている
(Lusting & Meck, 2005)。本研究では,時間再生課題時における脳波基礎律動について報告する。
2B24
口の動的変化による目の微表情変化の抑制
○野口
泰基
神戸大学
ヒトの顔に瞬間的(40-200 ミリ秒)に現れる表情変化は「微表情(microexpression)」と
呼ばれる。Ekman らによれば「顔の主の真の感情は(通常見られる持続的な表情変化ではなく)
微表情にこそ現れる」とされている。今回我々は,顔画像の下半分における動的な変化(無表
情から笑顔に移行する口の変化)が,顔の上半分に生じる微表情(目や眉における一瞬の変化)
の知覚を抑制・妨害することを示す。口変化によるこの抑制効果は,目の感情変化がポジティ
ブ(喜び)なものでもネガティブ(怒り・嫌悪)なものでも同様に見られ,顔の上半分と下半
分の知覚的グルーピングによって発生していた。これらの結果は,「笑ってごまかす」などの日
常表現に実験的な根拠を与えると同時に,通常は目の動きと同調する口の動きが,時として「真
の感情の隠蔽」というもう 1 つの役割を担っている可能性を示唆する。
118
33
119
33
33
Program: The 33rd Annual Meeting of the Japanese Psychonomic Society
2014
26
10
31
33
192-0397
1-1
[email protected]
http://www.comp.tmu.ac.jp/jps2014/
162-0801
358-5
120
Psykinematix Bits# Edition
Bits#
ViSaGe
EyeFrame SceneCamera system
BOLDscreen / BOLDscreen 3D (fMRI
)
400Hz Head Fixed System
JPS 2014
2014 / 12 / 6 -­ 7
Tokyo
Metropolitan
University