ジャーナルクラブ - Clinical Chemistry

Journal Club 2014 March
Journal Club 2014 March
Long-term Prognostic Value for Patients with Chronic Heart Failure of Estimated Glomerular
Filtration Rate Calculated with the New CKD-EPI Equations Containing Cystatin C
Elisabet Zamora1,2, Josep Lupón1,2, Marta de Antonio1,2, Joan Vila3,4, Judith Peñafiel3,4, Amparo Galán5, Agustín
Urrutia1,2, Mar Domingo1 and Antoni Bayes-Genis2,*
1 Unitat d'Insuficiència Cardíaca, Hospital Universitari Germans Trias i Pujol, Badalona, Spain;
2 Departament de Medicina, Universitat Autònoma de Barcelona, Barcelona, Spain;
3 Inflammatory and Cardiovascular Disease Programme, IMIM-Hospital del Mar Research Institute, Barcelona,
Spain;
4 CIBER Epidemiology and Public Health, Spain;
5 Servei de Bioquimica, Hospital Universitari Germans Trias i Pujol, Badalona, Spain.
* Address correspondence to this author at: Cardiology Service, Hospital Universitari Germans Trias i Pujol,
Carretera de Canyet s/n 08916, Badalona, Spain. Fax +34-934978939; [email protected].
ジャーナルクラブ
Cystatin C を含んでいる新しい CKD-EPI 方程式で計算した、eGFR の慢性心不全患者に
対する長期的な予後の重要性
背景
腎機能の正確な評価は、心不全 (HF) の患者の予後を推測する際に重要である。近年、
二つの新しい計算式が、cystain C 単独もしくは、クレアチニンと cystain C の併用を用
いて推定される糸球体濾過率 (eGFR) を計算するために提案されている。私たちは HF
の外来患者にこれらの二つの式を用いて、eGFR の予後値を評価した。
方法
この研究は、平均年齢 70.4 歳の 879 人の患者で行われた。HF の主な病因は虚血性心疾
患 52.7%;で、左室駆出率中央値 34%であった。
結果
新しい計算式によって算出された eGFR の予想値は、以前の計算式による eGFR の予想
値と強く相関し、cystatin C を含む 2 つの平均の間で、最も良い相関が認められた[級内
相関係数 0.95 (95% 信頼区間 0.94–0.95)]。中央値 3.94 年の追跡期間の間、371 人の患者
が亡くなった。慢性腎疾患の疫学共同研究(CKD-EPI) の cystatin C を含む方程式が、死
亡の予測に最も適していることが分かった[ROC カーブ下の領域は CKD-EPI-cystatin C
で 0.685、CKD-EPI-クレアチニン-cystatin C で 0.672 であったのに対し、アイソトープ
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希釈質量分析法に帰することができる簡易化した MDRD 試験では 0.632、CKD-EPI で
は 0.643 であった(全て P < 0.001)]。CKD-EPI-cystatin C 方程式は、死亡予測の integrated
discrimination improvement と net reclassification improvement の両方において、より良好
なキャリブレーションと再分類測定を有意に示した(P < 0.001)。新たな方程式による再
分類は、中間の eGFR [45–74 mL · min−1 · (1.73 m2)−1]のサブグループにおいて、特に良
好であった。
結論
cystatin C を含む 2 つの新しい CKD-EPI 方程式は、HF リスクの階層化に有用であり、
クレアチニンだけに基づいた eGFR 方程式、主に中間値の eGFR を示す患者よりも、よ
り良好な予測実績を示した。これらの方程式は、中等度の腎障害を持つ HF 患者の予後
評価に適切なようである。
腎障害はしばしば、心不全(HF)を併発し、患者の予後を悪くする(1-3)。腎機能の
正しい予測は、HF がある患者の予後評価にとって極めて重要である。測定した糸球体
濾過量や、クレアチニンクリアランスに基づいたいくつかの方程式は改良され、腎機能
障害を決定するために推測糸球体濾過量(eGFR)を計算する際には臨床において使わ
れていた;最も良く知られている方程式は Cockcroft-Gault (C-G)方程式(4)であり、
Modification of Diet in Renal Disease (MDRD-4)方程式や the Chronic Kidney Disease
Epidemiology Collaboration (CKD-EPI)方程式(6)を単純化したものである。我々は以前、
HF がある患者において C-G と MDRD-4、CKD-EPI を比較し、C-G 方程式がいつも使わ
れている他の 2 つの eGFR 方程式よりも、より良く予測する方程式であることが分かっ
た。
ここ数年で、cystatin C は、急性 HF 患者の予後に関連する新しい腎臓バイオマーカーと
なり、血清クレアチニンより、GFR のより正確な値を提供することが報告された (8-12)。
クレアチニンアッセイの標準化は、式の正確性を大幅に修正し、C-G は、将来使われな
くなるだろう。同位元素希釈剤質量分析(IDMS)で追跡可能なクレアチニン測定を説
明するために、MDRD-4 は、MDRD-4-DMS に修正され、クレアチニンと cystatin C を
組み合わせた濃度 (CKD-EPI-creatinine-cystatin C) が報告された (14)。私たちの知識の及
ぶ限り、これらの方程式の利用は、HF 患者で評価されていない。従って、私たちは長
期の追跡調査によって、HF 外来患者の集団に対して、これらの新しい方程式を用いて
計算される eGFR の予後値を評価しようとした。私たちは、また、それらと MDRD-4IDMS と CKD-EPI との一致性を分析し、長期の死亡率のためにこれらの予測能力を比
較した。
方法
研究対象群
2006 年 5 月から 2010 年 7 月まで、多くの専門にわたる HF 単位で治療された外来患者
が、この研究に参加した。患者たちは心臓病学または内科の種類によって限定され、範
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囲をより小さくするために、緊急または他の病院に限定された。主な紹介基準は、病因
に関わりなく欧州心臓病学会のガイドラインによる HF であり、少なくとも 1 回、HF
で入院しおよび/または左心室駆出分画率(LVEF)の減少について記録されていることで
ある。血液サンプルは、外来で訪れた間の 9 時から 12 時の間の静脈穿刺によって得ら
れ、遠心分離した血清サンプルは、-80 度で保存した。Cystatin C およびクレアチニン濃
度は、同じ血液サンプルから分析された。
全ての参加者は、インフォームドコンセントを提供し、 各病院の倫理委員会は、この
試験を認証した。全ての試験の手順は、1975 年に作られ 1983 年に改訂されたヘルシン
キ宣言に基づく倫理基準に従った。
追跡調査及び成果
全ての患者を一定の所定の間隔で追跡し、心臓の代償不全の症例で追加来院が必用な場
合は加えて追跡した。規則的な来院スケジュールは、看護師との最低限年四回の訪問、
医者との年二回の訪問、老年科医や精神科医、リハビリテーション医の選択的訪問を含
む (7,15)。定期的に来院しない患者は、電話で連絡を取った。
全ての原因による死を、主要なアウトカムとした。致死的なイベントは、HF ユニット
や別の病棟、緊急治療室、一般開業医のカルテや患者の親族と連絡を取ることから確認
した。データは、地域および国健康システムのデータベースで確かめられた。
クレアチニンと cyctatin C 分析
血清クレアチニンは、Dimension®RxL 臨床化学システム(シーメンス)のシーメン
ス・クレア方法(FD33A 参照)で測定した。クレアチニン値は、メーカーが推奨した
ように IDMS 参照方法で標準化した (16)。標準化されたクレアチニン値を得るために、
以下の方程式を用いた: 標準クレアチニン値 (mg/dL) x 1.00 x dimension RxL クレアチニ
ン値 (mg/dL) – 0.168[μmol/L)×1.00 の×Dimension RxL クレアチニン値 (mg/dL)-14.9]
Cystatin C は、cystatin とラテックス粒子に付着した抗血清、抗 cystatin C 間の免疫複合
体を評価する比濁分析技術で測定された (Radim ref. NPP42)。分析は、デルタ比濁計
(Radim グループ)で処理された。分析間の変動係数は、2.9%であった。血清 cystatin
C の標準化のための、IFCC Working Group および the Institute for Reference Materials and
Measurements に従って標準 cystatin C 値を得るために、Radim cystatin C method (ref.
NPP42)は、IRP ERM®-DA471/IFCC に対して再校正した。メーカーの推奨に基づき、標
準 cystatin 値 (mg/L, nmol/L) = 1.11×デルタ比濁計 cystatin 値(mg/L、nmol/L)+ 0.00。
標準化された方法のための基準範囲は、0.59–1.05 mg/L(44.37–80.75nmol/L)である。
GFR の評価
eGFR は、(a) 標準クレアチニンの MDRD-4-IDMS 式 (13); (b) CKD-EPI 式 (6); (c) CKDEPI-cystatin C 式 (14); (d) CKD-EPI-クレアチニン-cystatin C 式 (14) を用いて計算された。
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統計解析
クラス内相関係数 (ICCs)は、連続変数のペア間で算出され、コーエンの κ 指数は、分類
変数のために計算された。スコアと 95%許容範囲間の平均差は、Bland–Altman 法によ
り分析された (17)。ペアリング法間の ICCs と κ 値を比較するために、私たちは独自の
方法を用いて、10000 個の複製データを解析した。生存率分析は、次の変数を組み込ん
だコックス回帰分析で行われた: 4 つの式で計算された eGFR [in mL · min−1 · (1.73 m2)−1]
とともに、年齢;性別; ニューヨーク心臓協会(NYHA)の 機能分類; HF の虚血性原因論;
LVEF (%); HF 期間; 真性糖尿病、慢性閉塞性肺疾患と末梢血管病の存在; 血漿ヘモグロ
ビン(g/dL); 血清ナトリウム (mmol/l); ベータ受容体遮断薬治療; ACE 阻害薬またはアン
ギオテンシン II 受容体遮断薬治療。Kaplan-Meier 生存曲線は、4 つの方程式に基づく
eGFR 国立腎財団サブグループ分配のためプロットされ、ブートストラップによる 10
000 個の複製データを用いて P 値を得ることによって、統計学的に比較された。
全ての分析は、ソフトウェア R で(バージョン 2.11.1) 統計パッケージ (Foundation for
Statistical Computing) を用いて行った。私たちは、パフォーマンスの異なる測定法を使
用し、4 つの eGFR 式の死のリスクのための潜在的に付加される予後値をテストした。
識別
ROC カーブ (AUC)下の領域により、診断的識別をまとめた。識別は転帰の 2 つのクラ
ス間を正しく区別するモデルの能力を参照した。我々は順位相関のインデックスである
ソマーズの D 係数を用い、打ち切りデータからの情報を組み込んだ。モデル間の AUC
はブートストラップ法による 10000 個の複製で比較した。
検定
χ2 値を計算するために Hosmer–Lemeshow 検定の D'Agostino–Nam バージョンを用いた。
観測の妥当な群において予測値および観測値が一致する場合、モデルは正しく検定され
ていると見なされている(検定において有意な差がない)。さらに、ベイズ情報量基準
(BIC)、赤池情報量規準(AIC)、ブライアスコアは各モデルで計算した。2 つの推測モデ
ルがある場合、BIC、AIC、ブライアスコアが低いモデルの方が望ましかった。様々な
BIC、AIC、ブライアスコアを比較するための統計的検定はない;しかし、より低い値
はより良いモデルであることを示す。
再分類
我々は Pencina らが記載した方法を用いた(18)。再分類を評価するために、2 つの主
な統計を用いた。integrated discrimination improvement (IDI)は予測した死亡数の予測確率
の変動を連続型変数とみなす。両側検定で<0.05 の P 値は有意であるとみなされた。
net reclassification improvement (NRI)は、意義のあるリスクカテゴリの以前の定義が必用
である(我々は死亡リスクの三分位数を用いた:<18.5%、18.5%–41%、>41%)。NRI
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は、1 つのカテゴリからもう 1 つへの変化を意味する、予測した死亡数の予測確率の変
動を考慮した。
結果
2006 年 5 月から 2010 年 7 月までの 891 人の治療継続患者のうち、MDRD-4 IDMS や
CKD-EPI, CKD-EPI-cystatin C, CKD-EPI-creatinine-cystatin C 方程式から算出された eGFR
は、879 人の患者に有効であり、この解析で用いられている。患者の年齢の中央値は、
70.4 年(四分位数間領域、60.5–77.2 年)だった Table 1 は、全てのサンプルの基本的な
特徴を示す。
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測定値の一致
ふたつの新しい方程式によって算出された eGFR は、MDRD-4-IDMS 方程式から算出さ
れた値(CKD-EPI-cystatin C の ICC = 0.71, 95% CI 0.68–0.74, P < 0.001; CKD-EPI-creatininecystatin C の ICC = 0.86, 95% CI 0.86–0.89, P < 0.001)より、CKD-EPI 方程式から算出され
たもの[CKD-EPI-cystatin C の ICC = 0.80, 95% confidence interval (CI) 0.77–0.82, P < 0.001;
CKD-EPI-creatinine-cystatin C の ICC = 0.94, 95% CI 0.94–0.95, P < 0.001]と良く相関した。
しかしながら、最も良い相関は、cystatin C を含む二つの式の間で見られた (ICC 0.95,
95% CI 0.94–0.95)。Supplemental Fig. 1, A–E (この文献のオンラインに添付されている;
http://www.clinchem.org/content/vol60/issue3) は、scatterplot と Bland–オールトマン分析に
よって新しい方程式および MDRD-4-IDMS と CKD-EPI の間の相関を示す。新しい式で
計算された eGFR は、低い eGFR において他の方程式に最も相関していた。
MDRD-4-IDMS は、CKD-EPI-cystatin C と CKD-EPI-creatinine-cystatin C より高い値を出
す傾向があった。腎不全の有病率[eGFR <60 mL · min−1 · (1.73 m2)−1]は、異なる方程式で
同等であった: s: MDRD-4-IDMS で 64.1%, CKD-EPI で 61.9%, CKD-EPI-cystatin C で
64.0%, CKD-EPI-creatinine-cystatin C で and 62.1%。しかしながら、4 つのグループを考
慮した時、国立腎財団のカテゴリー間の患者の分布は、二つの方程式で異なった
(online Supplemental Table 1)。
再分類
中央値 3.94 年の追跡調査の間に、371 人の患者が死亡した。Fig. 1, A-D は、4 つの方程
式によって算出された eGFR のサブグループに沿った Kaplan–Meier 生存曲線を表す。
全ての式は、eGFR サブグループ間の生存率を区分することが出来た (P<0.001)。しかし
ながら、cystatin C とクレアチニンのみに基づいた方程式を含む二つの式間で、統計的
に有意な違いがあった (すべてのケースで P < 0.001)、一方、cystatin C を含む二つの方
程式の間に、有意な差は見られなかった (P = 0.792)。Fig. 2 は、4 つの方程式のそれぞ
れで算出された eGFR により、すべての死亡例の eGFR [95 mL · min−1 · (1.73 m2)−1] に対
してプロットしたハザード比を示している。 包括的な Cox 多変量回帰分析(年齢、性
別、NYHA 機能別区分、虚血原因、LVEF、HF 継続時間、糖尿病、慢性閉塞性肺疾患、
末梢動脈障害、ヘモグロビン、ナトリウム、βブロッカー、ACE 阻害剤またはアンギ
オテンシンⅡ受容体ブロッカー処置)、腎財団が 4 つの方程式を用いて計算したカテゴ
リにより eGFR カテゴリは、cystatin C を含んでいる 2 つの方程式で計算した eGFR が
30 と 59 の間、または <30 mL · min−1 · (1.73 m2)−1 の eGFR である患者の死亡率だけとの
関連が有意に残っている(Table 2)。
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Fig. 1. 全ての方程式による国立腎財団の eGFR カテゴリ長期 Kaplan–Meier 生存曲線
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(A), MDRD-4-IDMS. (B), CKD-EPI. (C), CKD-EPI-cystatin C. (D), CKD-EPI-クレアチニンcystatin C.
Fig. 2.4 つの方程式によって計算された eGFR による死亡例のハザード比
グラフはハザード比と eGFR の関連性について示しており、ひし形は 95 mL · min−1 ·
(1.73 m2)−1 の eGFR を示している。eGFR が 1mL · min−1 · (1.73 m2)−1 増加するごとの係数
は各 eGFR 間隔で計算し(たとえば、<30, 30 to <60, 60 to <90, 90+)、これらの係数の追加
から得られた係数は全ての eGFR 値で計算した。
Table3 と Table 4 では、4 年間の追跡において、死亡予測のリスクに関し、他の 2 つの
方程式と CKD-EPI-cystatin C、CKD-EPI-クレアチニン-cystatin C を比較した。cystatin C
を含んでいる新しい CKD-EPI 方程式は、IDI と NRI の両方における死亡リスクに関し
て、より良い識別、キャリブレーション、再分類測定値を示した。CKD-EPI-cystatin C
では、net reclassification improvement は MDRD-4-IDMS と CKD-EPI に対して、それぞれ、
23.2 (14.9; 31.6)と 18.6 (10.6; 26.7)であった;CKD-EPI-クレアチニン-cystatin C では、net
reclassification improvement はそれぞれ 15.7 (9.4; 22.0)と 11.0 (5.2; 16.8)であった(全て P <
0.001)。Fig3 は 4 つの方程式の AUC を示している。中間の eGFR [45–74.9 mL · min−1 ·
(1.73 m2)−1]のサブグループにおいて、識別と再分類は非常に良かった(オンラインの補
足資料 Table2 参照)。両方の新しい方程式を比較する際、CKD-EPI-cystatin C は総コホ
ートにおいて、CKD-EPI-creatinine-cystatin C よりも全体的に良かったが、eGFR が 45 と
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74.9 mL · min−1 · (1.73 m2)−1 の間の患者のサブセットにおいては、同じような結果であっ
た(オンラインの補足資料 Table3 参照)。
Fig. 3. 4 つの方程式で計算した eGFR の AUC
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考察
eGFR 方程式は、腎機能を評価するだけでなく、予後を層別化することにも役に立つ。
私たちは近年、C-G 方程式が慢性 HF 患者の一群において、MDRD4 もしくは、CKDEPI 方程式よりも、長期の死亡率をより良く推測することを報告した (7)。しかしなが
らクレアチニン測定の標準化により改良された正確さにより、C-G はおそらく将来使わ
れなくなるだろう (8-12)。Cystatin C は、HF 患者の予後を測定する新しい腎臓バイオマ
ーカーであり、血清クレアチニンより影響因子が少ない。私たちは、以前、Cystatin C
濃度と C-G による eGFR の長期の予後値を比較した。再分類は、IDI と NRI で測定され
るように、cystatin C でより劣っていたにもかかわらず、C-G 方程式と cystatin C によっ
て計算された eGFR は、現実の外来 HF 患者群において、同程度の長期の予後値を持っ
た (15)。意外なことに、cystatin C は、30 と 60 mL · min−1 · (1.73 m2)−1 の間の eGFR の患
者においてリスク階層化を改善した。これは、急性の非代償性 HF 患者を含む以前のレ
ポートと一致している (9)。
特に筋肉量が血清クレアチニンに影響を及ぼす、太りすぎおよび痩せすぎの患者におい
て、血清のクレアチニンに依存するすべての方程式は、クレアチニン値と同様な偏りを
受ける。さらに慢性の病気 (HF のような) は、筋肉量とクレアチニン代謝に影響を及ぼ
すかもしれない。新しい CKD-EPI-cystatin C と、CKD-EPI-クレアチニン-cystatin C は、
この問題に対処するために近年開発され、特に 45 から 75 mL · min−1 · (1.73 m2)−1 間の
eGFR の患者において、GFR を推定する従来の CKD-EPI 式より正確であることが明ら
かとなった (14)。現在の研究において、腎不全の高い有病率を持つ HF 患者の一団にお
いて、私たちは 2 つの新しい CKD-EPI 方程式の予後値を評価し、それらと以前使われ
ていた、MDRD-4-iDMS と CKD-EPI 方程式と比較した。両 CKD-EPI-cystatin C と CKDEPI-cystatin C 方程式は、パフォーマンス(区別、校正と再分類)のより良い測定値を与え
た;これは HF 患者において、これらの新しい方程式で腎機能を評価することは、好ま
れるかもしれないことを示唆する。
しかしながら、通常の検査ラボで cystatin C 測定の高価で限られた有効性を考慮して、
Kaplan-Meier 生存曲線によって評価されるように、他の二つの方程式もまた、独立して
生存を予測するとき、新しい方程式を適用することのコストと利益のバランスを取らな
ければならない。確かに私たちの研究において、45 と 74.9 mL · min−1 · (1.73 m2)−1 の間
の eGFR の患者のための新しい方程式の NRI は、MDRD-4-IDMS に対し 30.1%、CKDEPI-cystatin C のための CKD-EPI に対し 25.2%、MDRD-4-IDMS に対し 31.1%、CKDEPI-クレアチニン-cystatin C のための CKD-EPI に対し、28.2%に増加した。これは、
我々の以前の研究に一致し、cystatin C だけでも 30 と 60 mL · min−1 · (1.73 m2)−1 の間の
eGFR C-G 値の患者の重症度分類を向上し(15)、方程式の源記載に従って、クレアチニ
ンに基づいた eGFR が 45 と 74 mL · min−1 · (1.73 m2)−1 の間の患者の 19.4%が、CKDEPI-creatinine-cystatin C 方程式を用いて<60 と ≥60 mL · min−1 · (1.73 m2)−1 のどちらかに
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正確に再分類された。腎機能の再分類は、予後の良い再分類に繋がるということを予測
することは理にかなっている。
この HF グループにおいて、 CKD-EPI-cystatin C と CKD-EPI-クレアチニン-cystatin C の
方程式が記述されたオリジナルの論文において、CKD-EPI-クレアチニン-cystatin C 方程
式は、(非 HF 患者において) GFR を推定することがより正確だったにもかかわらず、
CKD-EPI-cystatin C 方程式は、死の危険性を予測するために幾分 CKD-EPI-creatininecystatin C より機能した。しかしながら面白いことに、我々のデータは、Shlipack らの最
近の観察に同意する。彼らは cystatin のみの方程式よりも、c クレアチニン-cystatin C 方
程式のための NRI の予後の改善が少ないことも発見した。Shlipack らが、彼らの論文
(19)で議論したように、最も病気に感染しやすい患者、-そしてそれは HF 患者の症例、
でのクレアチニンの非 GFR 交絡決定因子は組合せ測定(クレアチニン-cystatin C)に
基づいた eGFR 間の関連性を特に弱めることができ、または代わりに、もし cystatin C
の非決定因子が死亡リスクとの相互作用を増加させたら、それらはクレアチニン-
cystatin C の組合せ測定に基づいた eGFR よりも、cystatin C に基づいた eGFR に対しよ
り良い効果をもつだろう。
研究の限界
この研究は推測方程式の比較だけし、同位体測定のような GFR のゴールドスタンダー
ドは実施しなかった。我々は患者の微量アルブミン尿に関するデータを持っていなかっ
た。国際標準に検量されている cystatin C 測定法を用いることや、基準分析ラボでの検
量実験の実施など、より正確にするオプションを実施することはできないため、我々は
cystatin C の標準化に製造会社の推奨を用いた。我々の参加者は三次病院において、特
有で多くの専門分野にわたる HF ユニットで治療されていた HF 患者の一般的な集団で
あった;多くの患者が白人で心臓病に起因しており、虚血性の病因の HF や LVEF が減
少している、比較的若い男性であった。そのため我々が得た結果は、必ずしも広範囲の
HF 集団を推定することができない。さらに、ほとんど全ての我々の見知は白人集団を
基に独占的に作られたという一般論に限定される。
結論
新しい CKD-EPI-cystatin C と CKD-EPI-クレアチニン-cystatin C 方程式は、HF リスクの
層別化に有用であり、特に中間の eGFR の患者において、MDRD-4-IDMS と CKD-EPI
方程式よりも死亡予測に適した測定値を算出した。これらの新しい方程式は、中等度の
腎障害がある HF 患者のリスク決定に、熟考されるであろう。
(訳者:間下
11
有子)
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Acknowledgments
We thank Beatriz González, Lucía Cano, and Roser Cabanes, nurses of the HF Unit, for
collection of data and for their invaluable work in the Unit. We also acknowledge the research
network Redes Temáticas de Investigación Cooperativa en Salud (RETICS) Red Cardiovascular
(RD12/0042/0047).
Footnotes
6
Nonstandard abbreviations:
HF,
heart failure;
eGFR,
estimated glomerular filtration rate;
C-G,
Cockcroft-Gault;
MDRD,
Modification of Diet in Renal Disease;
CKD-EPI,
Chronic Kidney Disease Epidemiology Collaboration;
IDMS,
isotope dilution mass spectrometry;
LVEF,
left ventricular ejection fraction;
ICC,
intraclass correlation coefficients;
NYHA,
New York Heart Association;
AUC,
area under the ROC curve;
BIC,
Bayesian information criterion;
AIC,
Akaike information criterion;
IDI,
integrated discrimination improvement;
NRI,
net reclassification improvement;
CI,
confidence interval.
Author Contributions: All authors confirmed they have contributed to the intellectual
content of this paper and have met the following 3 requirements: (a) significant contributions
to the conception and design, acquisition of data, or analysis and interpretation of data; (b)
drafting or revising the article for intellectual content; and (c) final approval of the
published article.
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Authors' Disclosures or Potential Conflicts of Interest: Upon manuscript submission, all
authors completed the author disclosure form. Disclosures and/or potential conflicts of
interest:
Employment or Leadership: None declared.
Consultant or Advisory Role: None declared.
Stock Ownership: None declared.
Honoraria: None declared.
Research Funding: Cystatin assays were provided by Radim Ibérica. M. de Antonio,
competitive research grant from the Catalan Society of Cardiology; A. Bayes-Genis, research
network Redes Temáticas de Investigación Cooperativa en Salud (RETICS) Red
Cardiovascular (RD12/0042/0047).
Expert Testimony: None declared.
Patents: None declared.
Role of Sponsor: The funding organizations played no role in the design of study, choice of
enrolled patients, review and interpretation of data, or preparation or approval of manuscript.
Received for publication July 12, 2013.
Accepted for publication October 22, 2013.
© 2014 The American Association for Clinical Chemistry
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