放射性セシウムおよびストロン チウム吸着材の開発と応用 兵庫県立大学大学院工学研究科 准教授 西岡 洋 1 従来技術とその問題点 既に実用化されている吸着材には、以下のようなものがある。 吸着剤 プルシアン ブルー ゼオライト 結晶性ケイ チタン酸塩 長所 短所 Csに対して高選択性 高温、アルカリで不安定 分解するとシアンを発生 ナノ粒子 安価で多様 選択性、反応性 CsやSrに効果的 天然ゼオライトと比較する と高価 2 トバモライトについて ・軽量気泡コンクリート(ALC)の主成分。 ・層状構造のケイ酸カルシウム系化合物。 ・構造体としての強度や断熱性・遮音性などを目的として 製造されているため、イオン吸着性は低い。 Ca5Si6O16(OH)2 ・ 4H2O イオン吸着性を高めるためにトバモライトの機能化を検討 3 粘土鉱物などにおけるセシウム補足サイト イライトにおけるセシウム捕捉サイト (上)平面図、(下)側面図 18-クラウン-6-エーテルにおける セシウム捕捉サイト (上)平面図、(下)側面図 4 トバモライトで予想される吸着サイト 開発した吸着材における予想セシウム捕捉サイト (左)平面図、(右)側面図 5 各種セシウム吸着材におけるCs-O距離 イライト 12 18-クラウン-6 6 クリノトバモライト 8 トバモライト 8 モンモリロナイト 12 バーミキュライト 12 クリノプチロライト 8 0 1 2 3 4 5 Cs-O平均距離(Å) 距離が短く、酸素数が多いほど有利 6 トバモライトの機能化(Alによる置換) Si Al トバモライトのSiO4四面体に対し、 4価のSiを3価のAlで同形置換する ことにより、負電荷が強くなり、陽 イオンを吸着する能力が高くなる。 電荷補償のため層間にNa+が入り、 吸着サイトとなる。 e- Na+ Na+ NaxCa5Si(6-x)AlxO16(OH)2・ 4H2O 7 トバモライトの機能化①(Alによる置換) Ca SiO4四面体 Na+ Cs+ Al O 吸着前 吸着後 Al置換率を高める 8 トバモライトの機能化②(吸着サイトの増加) a軸方向に結晶成長した場合 b軸方向に結晶成長した場合 媒晶剤による b軸方向への伸長 9 アルミニウム添加効果(海水中での吸着) 100 セシウムイオン除去率 / % セシウム濃度:10 ppm 吸着時間:1 h 80 60 40 20 0 0 6.3 12.5 18.8 25.0 31.3 37.5 43.8 50.0 合成時のアルミニウム添加率 / mol% 10 天然ゼオライトとの比較(海水中での吸着) セシウムイオン除去率 / % 100 セシウム濃度:10 ppm 80 60 40 :本吸着材 (0.15-0.3 mm) :Clinoptilolite (0.1-0.5 mm) 20 :Chabazite (0.3 mm) 0 0 5 10 15 20 25 吸着時間 / h 11 吸着サイトについて(表面か層間か) X-ray intensity(arb. units) 吸着前後のXRDピークのシフト 高角側へピークシフト After adsorption セシウムイオンを 取り込んだ結果、 層間が収縮 Before adsorption 3 6 9 12 2 / deg. (Cu-K) SO3H SO3H 表面水酸基を化学修飾 SO3H 1,3 プロパンスルトン OH OH OH Si Si Si S O O O トルエン還流 層間の8員環で 吸着 O O O Si Si Si 表面を化学修飾して も吸着率に変化なし 12 吸着材のSEM画像と陽イオン交換容量 特定の方向に伸長 した短冊状結晶で 建材用トバモライ トとは異なる。 100 nm 陽イオン交換容量(CEC) トバモライト 本吸着材 市販品 214 103 単位:cmol/kg 天然 ゼオライト 人工 ゼオライト 50~170 180~400 13 吸着材のハンドリング性 ①微粉末として使用 反応性は高いが回収が困難 (凝集&ろ過) ②磁性を付与 磁気回収が可能 ③多孔質成型体化 バインダー使用による 吸着能低下 14 磁性付与吸着材による吸着結果(海水中) セシウムイオン除去率 / % 100 セシウム濃度:10 ppm 吸着時間:1 h 80 60 40 20 0 0 5 10 Fe3O4 mass% 15 20 15 本吸着材によるSrの吸着性 放射性物質 物理学的半減期 実効半減期 137Cs 30.1年 28.8年 約109日 約18年 90Sr ストロンチウムはセシウムほど飛散性はない が、生体内に留まると長期間に渡って内部被 曝の原因となる。 16 純水及び人工海水におけるSr 除去性 100 100 80 除去率 / % 80 60 Sr2+:10 mg/L 40 純水 60 40 人工海水 20 20 0 0 0 0 10 10 20 20 30 30 40 40 50 50 60 60 吸着時間 / 分 17 新技術の特徴・従来技術との比較 • 本吸着材はCsとSrに対する吸着サイトが異な るため、両イオンを吸着することが可能であり、 Cdイオンも吸着可能である。 • Al置換率と結晶成長方向を見直した結果、従 来のトバモライトよりも吸着量が上昇した。 • ALCの端材などを原料とすることで、天然ゼ オライトに近いコストで製造・販売することが 期待される。 18 想定される用途 • ALC製造技術に適用することで多孔質化・低 コスト化のメリットが大きいと考えられる。 • 原子力発電所の建屋やダクトなどに本吸着材 を表面吹付けすることで、事故発生時の飛散 を軽減できると考えられる。 • 吸着の迅速性に着目すると、放射性物質が関 与する火災時の消火剤やヘリコプターからの 空中散布による放射性ミストの拡散抑制剤と しての用途も期待できる。 19 実用化に向けた課題 • セシウム汚染土壌の洗浄剤としての実証試験 を行っている。しかし、土壌からの抽出率が低 い点が未解決である。 • 磁性化した吸着材の耐久性試験も調査予定。 • セメント固化やジオポリマー化の技術も確立 する必要あり。 20 企業への期待 • 本吸着材を安価に製造するための原料として ALCなどの廃棄物に関する情報が知りたい。 • トバモライト製造技術を持つ企業との共同研 究を希望。 • がれきの処理に携わっている企業に、本吸着 材を試して欲しい。 21 本技術に関する知的財産権 発明の名称:吸着材の製造方法および該方法 を用いて製造した吸着材 出願番号 :特願2013-186608 出願人 :兵庫県立大学、フジライト工業 株式会社 発明者 :西岡洋、小舟正文、田路順一郎、 富永充治 22 産学連携の経歴 ・ 2011年 ・ 2011年 ・ 2011年 ・ 2012年 ・ 2012年 フジライト工業株式会社と共同研究実施 JST A-STEP探索タイプに採択 姫路市産学協同研究助成事業に採択 JST A-STEP復興促進タイプに採択 池田泉州銀行コンソーシアム研究開発助 成事業に採択 23 お問い合わせ先 公立大学法人 兵庫県立大学 産学連携・研究推進機構 知的財産本部 知的財産コーディネーター 久保 幸雄 TEL 079-283-4560 FAX 079-283-4561 e-mail [email protected] 24
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