O

金曜1限
生体ナノテクノロジー特論
(高分子合成論)
2014年12月19日
第9回:薬物動態の扱い方とDDSの設計
講義予定(改)
1
2
3
4
5
6
7
8
9
10
日付
当初予定内容
改定後
10月 3日
イントロダクション
イントロダクション
10月10日
ナノスケールを観る手法
ナノスケールを観る手法 :光顕
10月17日
休講
休講
10月24日
ナノスケールにアプローチする材料
ナノスケールを観る手法: 電顕など
10月31日
薬物動態の基本(I)
ナノスケールを観る手法: 生体イメージング
11月 7日
休講
休講
11月14日
薬物動態の基本(II)
ナノスケールにアプローチする材料
11月28日
薬物動態とDDS
DDSの概念と体内動態制御: 循環系の構造
12月 5日
人体の構造とナノ材料(I)
DDSの概念と体内動態制御: 主要臓器の構造
12月12日
人体の構造とナノ材料(II)
薬物の組織分布と薬物動態: 細胞内分布
12月19日
細胞のナノ構造と機能
薬物動態の扱い方とDDSの設計
1月 9日
細胞と材料の関わりあい
DDSの設計と実例
DDSの設計と実例(2); 難治性疾患への取り組
み(1)
難治性疾患への取り組み(2)
11 1月13日(火)
12
1月23日
最新の話題から
(予備日)
12/23-1/4 冬期休業
11/21, 1/16 授業なし(11/21九大祭; 1/16センター試験)
1/13に振替授業
片山研究室HP:http://www.chem.kyushu-u.ac.jp/ katayama/index.html
「リンク」 「講義資料」 「生体ナノテクノロジー特論」の各回の講義資料(pdf)をダウンロード
(毎回、水曜の朝までにアップロードしておきます)
生理学的モデル
体内動態変化を定量的に理解するために、定式化(モデル化)を考える。
(ファーマコキネティクス)
静脈投与
分布する臓器・組織それ
ぞれを独立した コンパー
トメント と捉え、それが
血流を通じて連結されて
いると考える。
各コンパートメントに、
Kp: 組織-血漿間分配比
C: 各組織での薬物濃度
V: 各組織体積
と、
Q: それぞれの流速、
CL: クリアランス
を与えれば、モデル化可
能。
→複雑すぎる…。
3
コンパートメントモデル
生体を数個のコンパートメントのみに単純化したモデル。
1-コンパートメントモデル
静脈投与などで、薬物投与後、すべての臓器及び組織中の薬物濃度と血漿中の
薬物濃度が瞬時に平衡に達すると仮定。
X0
X: 総薬物量!
V1 組織1
C1
組織2 V2
C2
Ci: 各組織での薬物濃度!
Kp, Cp, Vp
Ki: 組織-血漿間分配比 = Ci/Cp!
速い
血漿
C4
組織4 V4
C3
V3 組織3
X
C
Vd
“p”はplasmaのp
Vi: 各組織の実質容積!
(i = 1–4)
X = VpCp + ∑ViCi!
= VpCp + ∑ViKiCp!
= (Vp + ∑ViKi)Cp
血中滞留性が高ければ小さい!
理想的には、iは標的のみにしたい。
Vd (分布容積) ≡ Vp + ∑ViKi = X/Cp
kel
単回静脈投与の場合
消失速度が、コンパートメント内の薬物量に比例すると考えると、
dX/dt = –kelX (kel : 消失速度定数) ⇐定数にならない場合は非線形モデルとなる
物質収支
X = X0·exp(–kelt)
Cp = C0·exp(–kelt)
(X0 : 投与量)
(C0 : 投与直後の血漿中濃度)
対数プロット
C0 = X0/Vd
lnCp = lnC0 – kelt
Cp = C0·exp(–kelt)
半減期(t1/2): 血漿中濃度が
半分になる時間
t1/2 = ln2/kel
AUC(曲線下面積):
時刻0から無限大までの積分
吸収付き1-コンパートメントモデル 薬物を単回経口投与し、消化管における吸収
がある場合など。
Xa: 吸収部位での薬物量!
D (投与量; Dose)
ka: 吸収速度定数!
消化管
F: 薬物の吸収率!
Xa
D: 投与量
F
ka
組織2 V2
C2
V1 組織1
C1
血漿
X
Kp, Cp, Vp
C4
組織4 V4
C3
V3 組織3
Cp
C
kel !
= –勾配
Cmax
Vd
kel
6
tmax
2-コンパートメントモデル
瞬時に血漿と平衡が達成されるコンパートメント(中心コンパートメント; 血流の早い
D
臓器; 薬物消失の起こるコンパートメント)と、平衡に達するまでに時間がかかるコン
パートメント(末梢コンパートメント; 血流の遅い臓器)の2つからなると考える。
中心コンパートメント
末梢コンパートメント
単に分布相ということもある。
dX1/dt = –(kel + k12)X1 + k21X2!
dX2/dt = –k21X2 + k12X1!
ラプラス変換など用いて解くと、!
C1 = X1/V1 = A·exp(–αt) + B·exp(–βt) (α >β)!
A = D(α–k21)/{V1(α–β)}!
B = D(k21–β)/{V1(α–β)}!
V1 = D/(A + B), V2 = k12·V1/k21!
Vss = V1 + V2
→このような複数の指数項を含むことはよくある。
単に消失相ということもある。
2-コンパートメントモデルの例
メトトレキサート:葉酸代謝拮抗阻害の制がん剤、抗リウマチ薬。!
血漿タンパク結合: 50%, 尿中排泄:48% (1 h)
8
Y. Anraku, et al., JACS 2010, 132, 1631.
サイズの制御されたPICsome (Nano-PICsome)の開発
PEG-PAsp (45-75)
O
MeO
O
m
N
H
fPEG ~ 8%
+
O
N
H
H
N
H
N
o O
O–
O
Na+
H
N
H
N
H
N
H
p'
O
O
R=
n
Na+
T
O
R
p
O–
O
o'
NH
H
10 mM PB
with 0 mM NaCl
(pH 7.4)
NH
n
NanoT
PICsome
1 mg/mL
R
Homo-P(Asp-AP) (82)
NH3
Cl–
TEM (透過電顕)
DLS(動的光散乱)
Cryo位相差TEM
100 nm
Size: 100 nm
Thickness: <15 nm
一枚膜構造
100 nm
協力:テラベース(株)
Y. Anraku, et al., Chem Commun, 2011, 47, 6054.
担がんマウスを用いたPICsomeの体内動態解析
Polyanion was labeled with Cy5.
1. 10 eq. CL-Cy5-Nano-PICsome (100-300 nm)
2. Cy5-Nano-PICsome (100 nm, Control)
3. PEG-P(Asp)-Cy5 (45-75) (Control)
BALB c/nude!
Female, 6weeks!
n=3
200 μL
After 1, 3, 6,
24, 48, 120 h
C-26 Tumor-bearing mice!
(i. v. administration)
Conc. : 0.1 mg/mL!
Buffer: 10 mM PB!
(150 mM NaCl; pH 7.4)
Centrifugation 2000g,!
10 min, 4 °C
Blood
Fluorescence measurement!
at Ex/Em = 650/670 nm
Plasma
Biodistribution
In Vivo Imaging System (IVIS)
Lung
Liver Spleen Kidney Tumor
*各臓器の重さを計量
安定性の異なるPICsome (100 nm)の血中滞留性
サンプル: 架橋Cy5-PICsome 100 nm (架橋剤添加量
0.5, 1, 3, 5, 10)
動物:BALB c/nude ♀6週齢 (n = 3)(腫瘍なし)
Auナノ粒子ハイブリッド
条件:ポリマー濃度で10 mg/mLを200 μLをi.v. 投与し、
1, 6, 24 h に測定
架橋剤添加量3–10等量で良好な血中滞留性
Blood Circulation (%)
血中滞留性
1, 0.5
架橋剤量 (等量)
半減期 t
10
5
3
29.5
18.9
12.4
Au PICsome-Cy5.5(ICP)
1.315
Dose(mg/kg)
Cmax(ug/mL)
23.05
AUC∞(ug/mL*h)
53.4
T1/2(β)
6.14
60.6
Vd(mL/kg)
119
Vdss(mL/kg)
マウスの血液量が、70 mL/kgなので、
およそ血中コンパートメントのみに分布して
Time (h)
いると考えられる。
tumour)their
shouldelimination
be compared to
ties
of
most
CDCs
preclude
more evident when
CDCs
are
既存の微粒子性キャリア
before previous degradation. The later phen
erences in the initial circulatakably responsible for
most of the blood
ization, non-PEGylated CDCs
Table 2
specific, unintended distribution
nanoma
Comparative values ofof
organ
weight, bloo
he liver. The induction of cirtotal animal weight
and total
volum
ger toxicities and side-effects,
and
is blood
theref
not affect their clearance.
from reference [25].
The impact of CDC deposition into the var
ed to slow down non-specific
Human (70before
kg, 4 900 mL)
must be thoroughly ascertained
estaR
pecific interacting antibodies
Cycle W
Organ Weight when
Blood flow
ness of a formulation. Similarly,
assess
time (
(mL/
ties of a system, the amount(g)of CDC
found
in
(min)a
min)
tumour) should be compared to that non-s
PICsomeの血中循環
Lungs 1,000 5,600
0.9
1
Kidneys 310
1,240
3.9
2
Fig. 6. Comparison of the pharmacokinetic profiles of different long-circulating
formulations
100
nm-Polymersome
Liver
1,800 1,450
3.4
1
Table 2
PEG-poly(ethylethylene)
in mice. Data were extracted from image analysis.
Values expressed in %ID/g were multiplied
Spleen 180blood
77flow and
63.6cyc0
(40-37)
by total blood weight in mice (i.e., 1.75 g of blood if theComparative
weight of mice isvalues
not statedofinorgan weight,
τ1/2 = 16–28
a blood volume
total
animal
weight
and
total
givento in
The time it takes forare
the organ
re
experimental section). NP: nanoparticles, SWCNT: single-walled carbon nanotubes, PLGA:
from reference [25].
volume. The value is calculated as total v
poly(lactic-co-glycolic acid).
Organ
Human (70 kg, 4 900 mL)
Rat (250 g, 17.5
Weight Blood flow Cycle
time
(g)
(mL/
Weight Blood C
(g)
flow t
a 323.
D. E. Discher et. al. J. Control. Release 2003, 90,
微粒子性キャリアの例
高分子ミセル (東大・片岡ら)
疎水性ブロック
高分子ミセル
(薬剤を集める)
生体適合性
外殻
ブロック
共重合体
水中で
自発的に集合
薬剤
ステルス性の親水ブロック
(水になじみ、異物認識を受けない)
薬剤内包
内核
30 100 nmの
粒径で単分散
使用されるポリマー材料
PEG-­‐b-­‐ポリアスパラギン酸
O
O
N
nH O
H
N
H
N
x
R
O
H
R = –OH or
アドリアマイシン
OH
y
R
NH 2 OH
O
O
O
R = 疎水性基
+
疎水性薬剤!
O
OH
O
O
OMe
HO
HO
O
OH
OH
O
O
OMe
(東大・片岡ら)
HO
HO
O
ex. アドリアマイシン
パクリタキセル
NH
OH
O
←がん治療の臨床治験中
etc...
その他の疎水コアを与えるポリマーの例
ポリグルコール酸
ポリ乳酸
ポリシアノアクリレート (接着剤)
O
O
加水分解
n
この2つのモノマーの共重合体が、PLGA
Poly(ε-­‐caprolactone)
O
O
n
生分解性で
知られる。
静電相互作用で作るポリマー型中空粒子PICsome
PICsome (Polyion Complex Polymersome)
PEG‒ポリアニオン
–
–
–
–
–
–
–
–
–
–
–
–
+
+
+
Self‒
assembly
PIC Layer
+
+
+
PEG Layer
+
PEG Layer
+
+
+
+
+
+
PEG‒ポリカチオン
ü
ü
ü
ü
ü
ü
ü
水系での単純な調製を実現
水溶性ゲストの封入
タンパク質分解酵素からの保護
物質透過性のあるカベ
環境応答性 (pH; 外力)
サイズ・構造などの制御が可能
生体適合性/腫瘍集積性
JACS, 2006, 128, 5988.
ACIE, 2007, 46, 6085.
Soft Matter 2009; JACS 2013
ACIE, 2009; JACS 2009&2010; Soft Matter 2013
ChemComm 2011; JCR 2013.
新規薬物キャリア、ナノリアクター、人工オルガネラ、
人工細胞、 etc…への応用が可能。
自己組織化型中空粒子(ベシクル)の典型例
ü
ü
ü
ü
リポソーム
両親媒性の分子(脂質など)を利用
サイズの制御可能(エクストルーダー法)
種々の物質の封入可能
膜融合可能
ü 調製法が煩雑 (有機溶剤への溶解や加熱・超音波処
脂質二重膜
理、サイズ制御処理が必要)
ü ベシクル壁が高度に疎水的で内外の物質のやりとり
を阻害
ü 機械的強度に不安
ポリマーソーム
典型的には、両親媒性のブロック共重合体を利用
→安定性や強度が上昇。また、分子設計も柔軟。
T
Ex.)
ラメラ構造
16
O
410
O–
親水性
疎水性
(Poly(acrylic acid)-b-polystyrene)
A.Eisenberg et al. Science 1995, 268, 1728
モーメント解析
モデルに依存せずに、薬物動態特性を量と時間で捉える方法。特徴はつかめるが、濃度
推移の予測はできない。
平均滞留時間
その分散
17
Y. Anraku, et al., Chem Commun, 2011, 47, 6054.
血中循環能とサイズ
MRTを台形公式により計算した例。
●: 38 nm (micelles)
●: 102 nm
●: 158 nm
●: 197 nm
●: 256 nm
●: 298 nm
平均滞留時間
Size (nm)
(MRT) (h)
38.0
36.2
102
51.2
158
69.2
197
71
256
298
47.3
45
cf. 架橋Cy5-PICsome 100 nm (架橋剤添加量 0.5, 1, 3, 5, 10)の血中半減期
架橋剤量 (等量)
半減期 t
10
5
3
29.5
18.9
12.4
先の1-コンパートメントモデル
C0 = X0/Vd
lnCp = lnC0 – kelt
Cp = C0·exp(–kelt)
半減期(t1/2): 血漿中濃度が
半分になる時間
t1/2 = ln2/kel
AUC(曲線下面積):
クリアランス:消失速度が血中濃度に比例する、
時刻0から無限大までの積分
と考えた時の比例定数と定義。
全身クリアランス(CLtot)
= (処理された薬物量/時間)/血中濃度
= 薬物消失速度/血中濃度
VddC/dt = –CLtot·C
時刻t = 0から∞で積分して、Vd(C∞ – C0) = –CLtot·AUC!
C∞は0、Vd·C0は投与量X0であることから、
X0 = CLtot·AUC!
AUC = X0/CLtot = C0/kel
→ CLtot = kel·Vd
クリアランスの概念
全身からの薬物消失速度は、各臓器における薬物消失速度の和であると考えられる:
#
CLtot = ∑CLorg,i
各臓器でのより本質的な消失能力を考えるために、以下を考慮する必要がある。#
臓器抽出率:薬物が臓器を1回通過する際にどれだけの割合が非可逆的に消失を受けるか。#
蛋白結合、血球分配:多くの薬物は血漿中のタンパク質に吸着し、血球成分にも分配される。
20
臓器クリアランス
出口
入口
Cout
CB = Cin
Qi
臓器抽出率をEorg,iとすると
Eorg,i = (QiCin – QiCout,i)/QiCin
ここで、臓器iでの消失速度vel,iは、#
クリアランスの定義から、
CLint,i
Eorg,i
vel,i = CLorg,i·CB#
= QiCin – QiCout,i#
= Eorg,iQiCin
CB = Cinより、
CLint,i
vel
CLorg,i
-
-
CLorg,i = Eorg,i·Qi
一方で、# 1 – Eorg,i = Forg,i
で定義されるFを、アベイラビリティという。
臓器抽出率、アベイラビリティともに、臓器クリアランスCLorg,iと血流
速度Qiだけから決まる。#
Eの最大値は1であることから、臓器クリアランスの上限は血流速度で
決まる。(消失が非常に速い血流律速の場合。)
21
臓器抽出率の例
CLorg,i = Eorg,i·Qi
臓器抽出率が高いほど
臓器クリアランスも高くなる。
22
薬物のタンパクへの結合
アルブミン:分子量約67,000のもっとも豊富なタンパク質(30-45 mg/mL)
で、血中半減期が長い(19-22日)。薬物などを捕捉するポケットが複数あ
り、種々の薬物を吸着する(特に酸性薬物)。#
α1酸性糖タンパク質:分子量約44,000で、5本の糖鎖を持つ糖タンパク質。ア
ミノ酸配列が免疫グロブリンなどと類似。血漿中濃度は、0.5–1.0 mg/mLで、
半減期は約5日。主に塩基性の薬物が結合しやすい。急性炎症、火傷、がん、
などが起こると濃度上昇するらしい。
-
血漿タンパク質に結合した薬物は
生体膜を透過しにくい。#
臓器での消失を受けるのは、非結
合型薬物のみ。!
血漿タンパク以外では、肝臓のタ
ンパクや血球成分への分配が同様
の効果を示す。
http://www.abbott.co.jp/medical/product/tdm/topics_1.html
超分子的相互作用#
(静電、水素結合、
ファンデルワール
スなどが複合的に
効いていると思わ
れる。)
インドメタシン
24
イブプロフェン
ジアゼパム
ワルファリン
フェニルブタゾン
ヒト血清アルブミン(HSA)上の結合サイトと結合薬物の例
熊本大学薬学部薬剤学分野HPより
25
薬物の血球成分への分配
Hct: ヘマトクリット
(全血体積に占める血球成分の割合)
1 – Hct
Hct
Cp
CRBC
26
血球成分中薬物濃度
Rb = CB/Cp (研究分配比)#
CB = (1 – Hct)Cp + HctCRBC#
これより、#
薬物キャリアや水溶性の高い薬物では、
血球分配は無視できる。
Rb = CB/Cp = (1 – Hct) + HctCRBC/Cp#
CRBC = 0の時、Rb = 1 – Hct
26
臓器クリアランスと固有クリアランス
Cout
出口
入口
Qi
CB = Cin
fB
CLint,i
Eorg,i
fT
固有クリアランス:
消失能力のみを反映したパラメタ。
CLint,i
vel
CLorg,i
臓器iでの消失速度vel,i= #
CLint,i·(消失酵素近傍の非結合型薬物濃度)
定常状態では、細胞の内と外で非結合型薬物濃度が等しくなるとすると、
fB·CB = fT·CT
(fB, fT: それぞれ血中、組織中の非結合型薬剤の割合)
→毛細血管中の薬物濃度はすべてCout,iに等しくなると仮定すると、臓器iでの消失速度velは、
vel,i =CLint,ifBCout,i = Qi(Cin–Cout) = CLorg,i·Cin
固有クリアランスが低い場合Qi >>fB·CLint,i#
CLorg,i = (Qi·fB·CLint,i)/(Qi + fB·CLint,i)
CLorg,i = fB·CLint,i (固有クリアランス律速)
モデルの非線形性
1. 代謝反応の非線形性:生体の持つ代謝酵素の量や異物取り込み機構は有限で
あり、薬物や薬物キャリア量が過剰の場合、線形性がなくなる。
薬物動態の投与量依
存性や複数薬物投与
の影響が出る原因に
なると考えられる。
2. タンパク結合の非線形性:生体内のタンパクの結合サイト総量に比べて薬物量
が多くなると、線形性がなくなる(解離定数に大して無視できなくなると特に)。
また、同じサイトに結合する薬物が複数投与された場合、お互いが競合して阻害
することになる。
受動ターゲッティングと能動ターゲッティング
DDSにより、どれだけ標的に運ばれたか?
下のようなコンパートメントモデルを考える:#
標的への一方向性の取り込みをPSinf、標的への累積取り込み量をXRとする。
この時、血中薬物濃度のAUCとの間には、
D
循環血流
コンパートメント
CB
PSinf
↓AUC = D/CLtotを使った。
標的部位
コンパートメント
XR
XR = PSinf·AUC = PSinf·D/CLtot
(標的部位への取り込みは、全身クリアランスに影響を与えないとする。)
CLtot
飽和すると、相対的に標的外でのクリ
アランスを受けやすくなることに注意。
能動ターゲッティング(active targeting):#
PSinfの増加によるXRの上昇を期待。#
→多くの場合、細胞表面レセプターを標的。(右図)#
!
受動ターゲッティング(passive targeting):
CLtotの減少によるXRの上昇を期待。#
→種々の消失機構から逃れる薬物キャリアの利用
が有効。
29
受動ターゲッティングの例
Enhanced Permeability and Retention (EPR)効果:がん組織や炎症組織では、毛
細血管の漏出性が上昇しており、物体が漏れ出やすい。また、リンパ系が未発達(あ
るいは、機能不全)で、物質の排出が起こりにくい。
正常組織
がん組織
未発達なリンパ系
リンパ系からの
排出
低い排出機能
リンパ系
透過性が亢進した
: 低分子薬物
: 薬物キャリア
血管壁
ステルス化された(異物認識を受けにくい)微粒子性薬物キャリアが
よく貯留する。サイズ< 150 nmが閾値と言われている。
Y. Anraku, et al., Chem Commun, 2011, 47, 6054.
架橋PIC micelle (38.0 nm) v.s.
架橋Nano-PICsome (102, 158, 197 nm)
血中滞留性
腫瘍集積
●: 38.0 nm
●: 102 nm
●: 158 nm
●: 197 nm
サンプル
PIC micelle
Nano-PICsome
サイズ
●: 38.0 nm
●: 102 nm
●: 158 nm
●: 197 nm
MRT
がんへの
38.0
89.5
102
107
○
○
158
101
△
197
–
×
サイズのチューニングにより機能制御が可能
Y. Anraku, et al., Chem Commun, 2011, 47, 6054.
サイズチューニングの効果
粒径ごとの240時間後のAUCを腫瘍と脾臓で比較
→150 nm前後にしきい値が存在。
腫瘍(C-26)集積
38 nm
脾臓集積
102 nm
298 nm
256 nm
197 nm
158 nm
158 nm
38 nm 102 nm
197 nm 256 nm298 nm
安定な粒子を用いることではっきりしたサイズ効果の確認が可能
32