低電圧領域における DC-DC 変換器の特性

低電圧領域における
低電圧領域における DCDC-DC 変換器の
変換器の特性
(1 Mar. 2013)
立川敏明
前報で 1),DC-DC 変換器(電圧変換器)を応用した 12 V バッテリー充電対応の太陽電
池を用いて 6 V バッテリーの充電を試みた。その結果,この方法による充電システムは,
その機能を十分に果たしたが,充電効率の観点では課題も残った。例えば,用いた太陽電
池の出力性能(最大出力 20W, 17.2V, 1.17A)から推定される最大出力電流は 1.2A 以上で
あるが,測定では 0.6A 以下であった。この原因の一つとして,DC-DC 変換器の設定電圧
とバッテリー充電電圧との不整合が考えられるが,他方,この設定値は過充電防止電圧と
して作動しているので,設定の変更は不都合である。ここで,実際のバッテリー充電が行
われた DC-DC 変換器の出力電圧は,主に 6.0 ~ 6.8V であり,設定電圧値より低いので,
この領域の変換器の特性を検討する必要があると考えられた。そこで,今回は,この低電
圧領域を中心に,DC-DC 変換器の電圧・電流測定を測定したので報告する。
図 1 DCDC-DC 変換器電圧・
変換器電圧・電流特性の
電流特性の測定系
図 1 に,今回用いた電圧・電流測定装置のブロックダイアグラムを示す。測定した DC-DC
変換器は,前報で用いた素子 HRD12003E(出力電圧 5~24 V,最大電流 3 A)を用いた変
換器で,出力電圧を 7.1V に設定している 1)。また,バッテリーの疑似負荷として,抵抗な
し,47Ω,24Ω と 15Ω のセメント抵抗を用いた。入力電圧と入力電流は,定電圧電源に付
属したデジタル電流計・電圧計を用い,出力電圧は別の電圧計を用いて測定した。なお,
測定は,入力電圧の間隔を低電圧側で小刻みに取り,また,出力電圧を 6V 以上とした。
表 1 に,異なった負荷抵抗をパラメータにとり,入力電圧 Vin に対する入力電流 Ii と出
力電圧 Vo の得られた値を示す(設定値電圧 7.1V)
。なお,表中で抵抗が 15Ω の時,低電圧
側で Ii や Vo がある範囲で示しているのは,装置が不安定となり変動したので,そのおおよ
その範囲を示している。ここで,この測定より,以下のようなことが分かった。
(1) 無負荷状態(抵抗なし)では,出力電圧は,入力電圧が設定値(7.1V)以上では 7.1V
であり,それ以下では入力電圧と同一であった。また,DC-DC 変換器使用電流は 10mA 以
下であった。
(2) 負荷状態での出力電圧は,入力電圧が 7.6V 以上で約 6.8V (6.79 ± 0.3V)で,設定値より
約 0.3V 低い電圧であり,設定値以下では入力電圧の低下と共に減少している。また,減少
の程度は,電流の増加(負荷抵抗の減少)と共に増加している。
(3) 負荷状態での入力電流は,入力電圧が 8.5V 以下の場合,ほぼ出力電圧÷抵抗値となって
おり,DC-DC 変換器を素通りして負荷側に流れている。他方,9.5V 以上の場合では,入力
電流は抵抗を流れる電流より少なくなっているので(13V 以上で顕著である)
,部分的なパ
ワー変換が行われていると考えられる。
(4) 負荷抵抗が 24Ω 以上の時,
出力電圧が 6.0 ~ 6.7V 間の入力電流の変化は比較的少ない。
表 1 出力電圧・
出力電圧・入力電流の
入力電流の入力電圧依存性
Vin(V)
18
Ii(A)
R=47Ω
0.08
Vo(V)
Ii(A)
R=47Ω R=24Ω
6.81
0.14
Vo(V)
Ii(A)
R=24Ω R=15Ω
6.79
0.21
Vo(V)
R=15Ω
6.76
17
16
15
0.08
0.08
0.09
6.81
6.81
6.81
0.14
0.15
0.16
6.79
6.79
6.79
0.22
0.24
0.25
6.76
6.76
6.76
14
13
12
11
0.10
0.11
0.12
0.13
6.81
6.81
6.81
6.81
0.18
0.20
0.21
0.23
6.79
6.79
6.79
6.79
0.27
0.31
0.33
0.36
6.76
6.76
6.76
6.76
10
9.5
9.0
8.5
0.13
0.14
0.14
0.15
6.81
6.81
6.81
6.81
0.25
0.26
0.27
0.29
6.79
6.79
6.79
6.79
0.39
0.41
0.43
0.46
6.76
6.76
6.76
6.76
8.0
7.6
7.5
7.4
7.3
7.2
0.15
0.15
0.15
0.15
0.15
0.15
6.81
6.81
6.81
6.80
6.80
6.80
0.29
0.29
0.29
0.29
0.29
0.29
6.79
0.47
6.79
0.47
6.79
0.46
6.79
0.46
6.78
0.45
6.75 0.44-0.45
6.76
6.76
6.61-6.75
6.57-6.63
6.48-6.62
6.36-6.52
7.1
7.0
6.9
0.15
0.14
0.14
6.74
6.65
6.55
0.28
0.28
0.27
6.64 0.43-0.45
6.54 0.42-0.43
6.44
0.42
6.25-6.47
6.15-6.30
6.02-6.15
6.8
6.7
6.6
6.5
6.4
0.14
0.14
0.14
0.13
0.13
6.45
6.35
6.25
6.15
6.05
0.27
0.27
0.26
0.26
0.25
6.35 0.41-0.42
6.26
6.15
6.05
5.96
5.94-6.14
6.3
0.13
5.95
表 2 に,負荷抵抗に 15Ω(電流値が最大)を用いて,DC-DC 変換器の設定値電圧を 6.8V,
7.1V および 7.4V に変化させた時の DC-DC 変換器出力電圧・入力電流の入力電圧依存性の
測定結果を示す。表 2 と同様,入力電流の最大値は入力電圧が 8.0 ~ 8.5 V の時に出現し,
その絶対値は設定電圧と共に微増している。しかしながら,出力電圧および入力電流の安
定性は,設定電圧が低い程,低電圧領域まで大である。これは,低電圧領域でのインピー
ダンス整合が,設定電圧が低い程良好であることに起因していると考えられる。
表 2 出力電圧・
出力電圧・入力電流の
入力電流の設定電圧依存性
Vin(V)
Ii(A) 6.8V Vo(V) 6.8V Ii(A) 7.1V Vo(V) 7.1V Ii(A) 7.4V Vo(V) 7.4V
18
0.20
6.45
0.21
6.76
0.23
7.05
17
16
15
0.21
0.22
0.23
6.45
6.45
6.45
0.22
0.24
0.25
6.76
6.76
6.76
0.24
0.25
0.27
7.05
7.05
7.05
14
13
12
11
0.25
0.28
0.31
0.33
6.45
6.45
6.45
6.45
0.27
0.31
0.33
0.36
6.76
6.76
6.76
6.76
0.3
0.33
0.36
0.39
7.05
7.05
7.05
7.05
10
9.5
9.0
8.5
0.36
0.38
0.40
0.42
6.45
6.45
6.45
6.45
0.39
0.41
0.43
0.46
6.76
6.76
6.76
6.76
0.42
0.44
0.47
0.49
7.05
7.05
7.05
7.05
8.0
7.6
7.5
7.4
7.3
7.2
0.45
6.45
0.47
0.45
6.45
0.47
0.45
6.45
0.46
0.45
6.45
0.46
0.45
6.45
0.45
0.44 6.36-6.45 0.44-0.45
6.76
6.76
6.61-6.75
6.57-6.63
6.48-6.62
6.36-6.52
0.49
0.47
0.46
0.45
0.45
0.44
7.05
6.78
6.68-6.71
6.57-6.61
6.46-6.49
6.34-6.37
7.1
7.0
6.9
0.43 6.26-6.44
0.44 6.16-6.36
0.43
6.29
0.43-0.45
0.42-0.43
0.42
6.25-6.47
6.15-6.30
6.02-6.15
0.43 6.24-6.29
0.43 6.13-6.15
0.42 6.05-6.13
6.8
6.7
6.6
0.43
6.20
0.42 6.08-6.11
0.41 6.00-6.01
0.41-0.42
5.94-6.14
以上,疑似負荷を用いて素子 HRD12003E を使用した DC-DC 変換器の出力電圧・入力
電流の入力電圧依存性を測定し,変換器の基本的特性を得た。その結果,DC-DC 変換器を
電圧変換器として用いる場合,無負荷時に設定した電圧は,負荷時には設定電圧より約 0.3V
少ない出力電圧となった。 また,設定電圧を 3V 以上の超える入力電圧状態の時には電力
変換が期待された。他方,入力電圧が設定値電圧以下の場合でも,単なる直結伝送と等価
であり,伝送ロスも比較的少ない事が分かった。この特性は,早朝時の太陽電池発電時等
の入力電圧が変化する状況に対応していると考えられる。
他方,一般論として,前報の 12V バッテリー対応太陽電池を 6V バッテリーの充電用に
使用する際のように,変換器両端に電圧差がある場合の DC-DC 変換器利用は,電力変換が
行われる状況が多く出現するので,伝送出力の点で有利であると考えられる。
次に,バッテリー充電時におけるバッテリー等価抵抗は,その時のバッテリー電圧に依
している(電圧が低いと等価抵抗は小さい)と思われる。そこで,これに起因する低電圧
領域に対する検討を目的として,設定電圧を変化させて、DC-DC 変換器の出力電圧・入力
電流の入力電圧依存性を測定した。この結果、低電圧領域では,設定電圧を低電圧にした
方が有利であることが分かった。なお,これらに対する具体的な方法・対処については,
今後の検討課題である。
参考文献
1) 立川敏明,岡琢磨,坂手克士 ; DC-DC 変換器による太陽電池・6V バッテリー充電
http://www.megaegg.ne.jp/~tatutosi/newpage4.htm 25) (2013)