FFT アナライザを用いた波形解析システムに関する研究 ∫∞

FFT アナライザを用いた波形解析システムに関する研究
東海大学大学院工学研究科情報通信制御システム工学専攻
○中村 裕聡
東海大学情報理工学部コンピュータ応用工学科
穴吹 雅敏
1. 研究の概要
FFT アナライザのような波形解析システムは品質管
理・保守として土木・建築,発電・化学プラント,鉄道,
自動車,航空機などの多くの分野で使用されている.
そこで本研究では,品質管理・保守を対象とした FFT
アルゴリズムを適応させた波形解析システムを PC ベー
スで構築する.
2. システム構成
システムの構成図を Fig.1 に示す.
OS
RT-Linux
波
形
解
析
処
理
ソ
フ
トウ
ェ
ア
→
入
力
信
号
Fig.1 システム構成図
まず,アナログの入力信号を与え,一定のサンプリン
グ周期で AD 変換された信号が PC の端末に取り込む.
ここで,波形処理用に用いる PC はリアルタイム性を保
証する OS:RT-Linux を使用する.また,本研究では
AD 変換ボードを2ch用いて2信号を同時入力とする.
これにより,コヒーレンス関数を用いた入出力信号の特
性を解析することが可能となる.
3. FFT(高速フーリエ変換)
3.1 FFT とは
FFT(高速フーリエ変換)は信号処理で必要とするフ
ーリエ変換を,コンピュータ上で扱うため離散化し,そ
の周期に着目して高速処理を可能にしたものである.
3.2 DFT(離散フーリエ変換)
まず,FFT を扱う上で重要となるのが DFT である.
DFT は連続時間におけるフーリエ変換を離散化したも
のである. N をデータ数として離散時間系の入力信号
を x(n) とすると次式となる.
N 1
  j 2nk 
(1)
X (n)   x(n) exp

n 0
, (k  0,1, N  1)

N
N

となる.式(2)より,式(1)は次式となる.
X ( n) 
N 1
 x(n)WNnk (k  0,1,, N  1)
amplitude

(3)
n 0
S xy
2
(5)
WxxW yy
また,ここでは,S xy を x(t ) ,y(t ) のクロススペクトル.W xx
とW yy を,それぞれ, x(t ) と y(t ) のパワースペクトルとす
る.

x(t)
y(t) x()g(t )d

g (t )
G()
X()
Y()  X ()G()
Fig.2 入出力信号におけるシステム
5. シミュレーションと実験結果との比較
Fig.2 ようなシステムからコヒーレンス関数を用いて
h(t ) においての入出力信号の線形性を検証する.また,
線形な例として h(t ) の部分に RC 回路を用いる.なお,
ここで使用する RC 回路は R  160k , C  0.1F とし,
関数発生器から f  50Hz の入力信号を与え,実験を行っ
coh
500
ルゴリズムである.式(2)のWN が周期的で,分解で
きるという性質を利用して,
(4)
が得られる.W による乗算部分を,遇関数と奇関数に
nk
N
分解することにより,同じ係数の乗算がいくつもでる.
coh
500
0
0
-500
-500
-1000
3.3 FFT アルゴリズム
DFT の場合,扱う信号のデータ数が多くなると計算回
数が増えてしまう欠点がある.しかし,DFT の式(2)
のW N の周期に着目し高速処理を可能としたのが FFT ア
WNnk  WN2 nk  WN( 2 n1) k
coh( j ) 
た.
式(1)の複素数部分を以下のように置き換えると,
  j 2 
(2)
W  exp

N
また,コヒーレンス関数は次式となる.
amplitude
→
AD変
換
ボ
ー
ド
これらの乗算回数が少なくなるようにまとめて,演算の
順序を変えることにより,全体の演算回数を大幅に減少
させることができる.
Table.1 計算回数比較
データ
DFT(回)
FFT(回)
計算回数比
N(個)
(%)
64
4096
192
4.69
128
16384
448
2.73
256
65536
1024
1.56
512
262144
2304
0.88
4. コヒーレンス関数
コヒーレンス関数は,Fig.2 に示すようなシステムの
入出力信号における線形性を検証するのに用いられる関
数である.入力信号と出力信号に関連性が深ければ
coh( j) は1に近づき,関連性がなければ0に近づく.
-1000
0
100
200
300
freqency[Hz]
400
500
0
100
200
300
400
frequancy [Hz]
Fig.3 シミュレーション
Fig.4 実験データ
6. まとめ
本研究により,実験データから線形であることは検証
できたが,0から1の間に収まらない箇所が出てきてい
る.今後はスペクトルの加算平均の回数を増やし,正確
なコヒーレンス関数を得るようにする.
参考文献
1) 辻井,鎌田:ディジタル信号処理,昭晃堂,(2004)
500