防風柵の内部の風向・風速分布の観測と評価 - 沖縄県

完了試験研究成績(2004年1月作成 )
九州沖縄農業>農業機械・土木>機械>
>9(8)
課題ID:
研究課題:野菜生産費低減に寄与する気象災害に強い低コスト 園芸施設の開発
(2)低コストハウス を利用した栽培体系と評価
イ.防風柵の減風効果実証
a.防風柵内部 の風向・風速分布の観測と評価
担当部署:沖縄県農業試験場・経営機械部・農業機械研究室
担当者名:玉城麿、當眞毅 、上原数見、知念潤 、仲間あゆみ、金城留美子
協力分担:(有)グリーンスタッフ
予算区分:助成
研究期間:完 2002∼2003
1.目 的
台風常襲地帯 の沖縄県では、農作物並びに農業施設への風害を低減するために昔から防風林(柵)
等の防風施設を利用してきた。防風施設をハウスの周囲に設置した時の台風被害の回避率は非常に高
く 、平成15年台風14号( 最大瞬間風速 74.1m/s)の宮古島被害調査結果 からもその効果が確認できる。
しかしながら、本県の防風施設の設置基準は主に季節風を対象としたものであり、風向風速が経時的
に変化し、縦方向にも激しく乱れる台風を対象とした設置基準は作成されていない 。ここでは、台風
襲来時 の風挙動 を観測し、防風施設の減風効果について定量的 に評価し、新たな基準作成のための基
礎資料 を得る。
2.方法
1)台風襲来時の風観測と防風柵 の減風効果実証試験
①観測場所:起伏の無い地形を選定 沖縄県与那城町上原 (宮城島土地改良区内)
柵内の作型:タバコ、柵外:タバコ、甘藷、サトウキビ
②観測機器:超音波風速計 SAT-550(株)カイジョーソニック社製 26台 サンプリングタイム50Hz
③データ収集装置:データ 収録ターミナルMD-8Z80-133 パベック電子開発株式会社製
④防風柵の種類と配置方法:二枚柵防風ネット (高さ4m、2mm目合いネット)、100m四方に設置
⑤風速計の配置方法(図1参照):防風柵内は9カ所、高さ6mと3mの位置に設置
防風柵外は柵を取り囲むように8カ所、高さ6mの位置に設置
2)観測した台風と時間帯
①台風10号:観測時間8月6日PM10:00∼7日AM4:00(ネット有)最大風速40m/s(気象台資料)
②台風15号:観測時間9月19日PM 1:20 ∼ 20日AM9:00(ネット無)最大風速25m/s(気象台資料)
3.結果の概要
1)観測状況:防風柵の内側の風速計は等間隔に配置。外側の風速計は防風柵又は道路沿いの防風林
(平
均高さ5m)から30m以上離れるように 設置。風速計は設置用 ポール が強風による影響(傾斜・振動)
を受けないよう 支線を張った。その結果、台風通過後もポール は直立した状態を維持した。
2)平均風速:台風10号の主風向 が北東であったことから、柵内の①、⑤、⑨地点の10分間平均風速 に
ついて相対評価を行った(図2)。その結果、どの地点においても高さ6mに比べ3mの風速は小さくな
った。また、ネットから遠ざかるにつれて(①→⑤→⑨の順)風速は大きくなった 。一方、防風柵 に
ネット が張っていない台風15号の観測では、平均風速は地点間 で大きな差は見られない一方、高さ3m
の風速は6mよりも小さい値を示した。代表値を図3に示す。
3)仰角( 高所にある対象物を見る観測者の支線と水平面の角度を指す。ここでの対象物 は風ベクトル)
台風10号の観測結果の内、任意に仰角の1分間データを抽出した(図4 )。防風柵に近い測定点 ①
の仰角はネット から遠くなる⑤、⑨に比べて大きく変動しており、風の激しい渦が生じていることが
観測できた 。また、柵より最も離れた⑨における仰角の変動は小さく、殆ど水平方向に風が吹いてい
ることが確認できた。なお、この傾向は測定期間中継続した。
4)最大瞬間風速 (台風10号のデータ)
防風柵内外の10分間内の最大瞬間風速を整理した結果、柵の内外で測定した最大瞬間風速の(高さ
6m)に大きな差が見られないことが確認できた(図5)。暴風域 に近づくにつれて、最大瞬間風速の値
はどの 測定点においても増大する傾向を示したが、柵内外に大きな差は見られなかった 。
15
15
15
15
15
15
15
15
風速計1(6m)
風速計1(3m)
13
13
13
13
13
風速計5(
6m)
風速計9(
6m)
風速計5(
3m)
風速計9(
3m)
13
13
13
風速計設置番号①
⑯
⑰
11
11
11
11
11
11
11
11
9
99
99
⑩
風速計設置番号⑨
防風柵
⑮
⑦
⑧
⑨
④
⑤
⑥
①
②
③
風速計設置番号⑤
⑪
⑭
⑬
77
5
観測局舎
防風林帯
7
55
21:40
⑫
22:30
N
図1 試験区 の概況
(矢印は台風10号の主風向)
23:10 1:00
(min)
図2
18
風速計設置番号
77
55
21:40
22:30
23:10 1:00
21:40
(min)
22:30
23:10 1:00
(min)
平均風速の推移(台風10号)
18
風速計1(
6m)18
風速計1(
3m)
風速計設置番号①
風速計5(
6m)
風速計5(
3m)
風速計設置番号⑤
18
16
16
16
16
14
14
14
14
12
12
12
12
10
10
10
10
8
8
8
8
風速計9(6m)
風速計9(3m)
風速計設置番号⑨
19:00 20:40 22:20 0:00 19:00 20:40 22:20 0:00 19:00 20:40 22:20 0:00
(min)
(min)
(min)
図3
平均風速の推移(台風15号)
防風柵内側
防風柵外側
45
30
25
20
15
10
5
防風柵外
最大瞬間風速(m/s)
35
防風柵内
風速計1
風速計3
風速計4
風速計5
風速計6
風速計7
風速計8
風速計9
風速計10
風速計11
風速計12
風速計13
風速計14
風速計15
風速計16
風速計17
40
0
21:40
図4
仰角の推移(1分間)
(台風10号)
図5
防風柵内外の最大瞬間風速 (10分間内 )
(台風10号)
4.成果の活用面と留意点
・台風対策用防風林(柵)設置のための基礎資料として利用
・防風柵減風効果の実証試験手法の提案
5.残された 問題とその対応
・各地点の風挙動の類似性 を評価するための自己相関、相互相関の整理
・パワースペクトルの整理
・詳細な解析を行うため、データ収集を継続(県単課題で追試)