雨水ポンプ場ネットワーク計画 に関する研究 - GCUS

雨水ポンプ場ネットワーク計画
に関する研究
1.
研究の背景と目的
近年,市街化の進展や集中豪雨の増加等に伴い,
下水道の雨水排除能力を超える雨水流出が頻繁に生
じている。また,都市部への資産集中や地下空間利
用の進展等都市機能の高度化が進むことにより,浸
水に対する都市の被害ポテンシャルは増大している。
これらの都市においては,整備水準の向上等を視野
に入れた浸水に強い街づくりが求められている。
一方,昭和 30~40 年にかけて建設された大都市の
雨水ポンプ場の多くは,建設後 40~50 年が経過し,
更新時期を迎えている。これらのポンプ場では,敷
地に余裕がないところが多いため,排水機能を維持
しながら,老朽化対策や地震対策を含めた再構築を
いかに行うかが課題となっている。
こうした課題への対応策として,雨水ポンプ場の
ネットワークの整備による対応が考えられ,近年多
発する集中豪雨に対し,広範囲な流域の連結による
浸水被害の軽減や,円滑な雨水排水施設の再構築・
改築に効果が期待される。
本研究は,雨水排水施設の整備水準の向上や,雨
水ポンプ場の再構築・改築を効率的かつ効果的に行
う方策であるネットワークを取り上げ,複数の雨水
ポンプ場でのネットワーク対応について様々な観点
からの検討・評価を行い,ネットワーク計画を策定
する際の技術的事項および計画手法を示すことを目
的として実施した。なお,本研究は,別途並行して
進めた「雨水ポンプ場ネットワーク設備に関する研
究」と連携して実施した。
2.
研究体制
本研究は,日本上下水道設計(株),(株)建設技術研
究所,(株)東京設計事務所,(株)日水コン,オリジナ
ル設計(株),中日本建設コンサルタント(株),日本工
営(株),日本水工設計(株),日本理水設計(株),(財)
下水道新技術推進機構の計 10 者が共同で実施した。
3.
研究内容
3.1 雨水ポンプ場ネットワークの概要
図-1 に雨水ポンプ場ネットワークのイメージを
示す。雨水ポンプ場ネットワークは,既存の複数ポ
ンプ場および新設する能力増強または再構築中の代
替ポンプ場(以下,種ポンプ場と称す)をネットワ
ーク管で連結することにより,連結された排水区の
排水機能を補完する手法である。このようなネット
ワークにより,雨水排水施設の整備水準の向上や効
率的な再構築・改築を行うことができる。雨水ポン
プ場ネットワーク計画の対象は,浸水発生頻度,雨
水ポンプ場の老朽化状況,耐震化状況,敷地状況,
および放流先河川の整備状況等を把握した上で,早
急な対応が必要とされる流域とする。
整備水準の向上は,必要量に対して不足する量を
ネットワーク管内へ貯留したり,種ポンプ場で排水
することで対応する。雨水ポンプ場の再構築中は,
当該流域の雨水排水ができないため,ネットワーク
を利用し種ポンプ場等で代替排水を行う。また,地
震時におけるリスク分散や計画超過降雨(局所・偏
在性)による浸水被害の軽減および河川放流規制時
の放流量調整等においても効果が期待できる。表-1
に期待される効果および留意点を示す。
のネットワーク量はネットワーク管に貯留する方式である。
①完全貯留型ネットワーク管
晴天時に貯留雨水を排水
P
P
P
完全貯留型ネットワーク管
②流下型ネットワーク管+種ポンプ場
流下型ネットワーク管
P
種ポンプ場
P
P
図-1
P
雨水ポンプ場ネットワークのイメージ
③流下貯留型ネットワーク管+種ポンプ場
表-1
ネ ッ ト
ワ ー ク
の目的
ネットワークの目的と効果
ネットワークの効果
オリフィスなどによる流入量制御
留意点
●浸水規模および浸水発生頻度の軽減が図
●当該排水区の雨水を他の排
整 備 水
られる
水区のポンプ場で排水する
準 の 向
●ポンプ故障時でも,他のポンプ場で排水機
ことになる(河川協議の必
上
能を補完できる
要性あり)
●当該ポンプ場を再構築している場合でも, ●現状の整備水準を維持する
効 率 的
他のポンプ場で排水機能を補完できる。
ような対応が必要である
な 再 構
●ネットワーク施設は再構築時の代替施設
築・改築
よりも規模が小さくなる
●降雨の局所性・偏在性を考慮し,超過降雨 ●下流側での浸水リスクの増
時でも浸水被害を軽減できる可能性がある
大に対する対応を考慮する
多 様 な ●地震時でも排水機能の相互補完により緊
必要がある
施 設 運
急的な対応が可能である
用
●河川の放流規制がある場合にネットワー
ク施設での貯留により放流量の調整が可
能である
3.2 ネットワークパターンの検討
図-2 にネットワークパターンを示す。ネットワー
クパターンは,図-2 に示す 3 種類のパターンに分類
される。このようなネットワーク管の利用方法と種ポ
ンプ場の有無の組み合わせから対象パターンを検討す
る。主なネットワークパターンの概念を以下に示す。
(1) 完全貯留型ネットワーク管
ネットワーク管は全ネットワーク量を貯留できる
施設とする。ネットワーク量は,整備水準の向上を
図るための計画降雨による雨水流出量に対して,ポ
ンプ場の排水能力を上回る雨水量のことで,ネット
ワーク施設で対応する量である。
(2) 流下型ネットワーク管+種ポンプ場
ネットワーク管はネットワーク量が流下できる断
面を設定し,種ポンプ場はネットワーク量を排水可
能な施設とする。
(3) 流下貯留型ネットワーク管+種ポンプ場種
ポンプ場に流入するネットワーク量を制限し,制限以上
P
P
種ポンプ場 P
P
流下貯留型ネットワーク管
図-2
ネットワークパターン
3.3 研究フロー
本研究における検討フローを図-3 に示す。基本
事項を整理し,雨水ポンプ場ネットワークの可能性
検討,具体計画案の検討,総合評価を経て整備計画
を策定する。
なお,本研究では 3 都市の代表的な流域を対象と
したケーススタディを実施し,具体的な施設計画や
効果の評価も併せて行った。
以上の検討結果を踏まえて,計画策定マニュアル
としてまとめた。
1.基本事項
・課題の整理
・目的の確認
・計画策定の対象
・計画策定の期間
・基本的な考え方
2.SPNの可能性検討
・条件整理
・計画案の作成
3.SPNの検討
・整備水準向上に対する検討
・再構築に対する検討
・段階整備方法の検討
・計画案の効果の検討
・概算費用の算出
4.SPNの総合評価
5.SPNの整備計画
雨水ポンプ場ネットワーク=Stormwater Pumping station Network
雨水ポンプ場ネットワーク計画策定マニュアルの作成
図-3
雨水ポンプ場ネットワーク検討フロー
3.4 計画策定に際しての基本的な考え方
雨水ポンプ場ネットワーク計画は,①ネットワー
クの必要性の検討②最適な施設計画の検討③事業化
に向けての検討等を踏まえて策定する。
(1) ネットワークの必要性
対象区域の管きょ,ポンプ場の位置,建設年度,
浸水状況などをもとに,整備水準の向上,再構築・
改築計画の必要性を判定する。整備水準向上等の必
要性の判定は,浸水被害実績や現況施設のシミュレ
ーションを行い,代表的な降雨強度別に浸水被害の
状況を把握するとともに,既設ポンプ場,既設管き
ょの改造・増強で整備水準の向上に対応可能かどう
かを検討し判定する。
再構築・改築計画の必要性の判定は,施設の建設
年度,運転状況,老朽化の状況などから再構築・改
築の必要な時期を推定し判定する。これら対策をと
る上で,制約条件を明らかにし,ネットワークによ
る対応の可能性を整理する。
(2) 最適な雨水ポンプ場ネットワーク施設計画
以下の項目を検討し,最適な雨水ポンプ場ネット
ワーク施設計画を策定する。
①雨水排水施設の整備水準の向上
雨水排水施設の整備水準の向上策としては,雨水
ポンプ場をネットワーク化し,排水能力増強分の種
ポンプ場を設け排水する方法,雨水ネットワーク管
へ貯留する方法を基本とする。
②効率的な再構築・改築
既設ポンプ場の再構築・改築中の排水機能を完全
に停止させることは出来ないため,少なくとも現状
排水能力相当の機能確保を図りつつ,再構築・改築
が行えることを基本とする。
③ネットワーク施設の段階整備
ネットワーク計画は,整備が完了するまでに長期
間を要するため,段階的な整備により対応を図る必
要がある。雨水ポンプ場の再構築の順序等,早期効
果発現や効率性確保のために,対象地域の状況に応
じて段階整備の状況による施設規模の検討・評価が
行える手法とする。
④ネットワーク施設の運用
雨水ポンプ場ネットワークは複数で広範囲な排水
区域を連結するため,ポンプ場等の相互補完効果が
見込める。このため,超過降雨対応,地震時等のリ
スク対応,河川等への放流規制対応等についてネッ
トワーク運用時の効果検証を行うものとする。
(3) 適用範囲
雨水ポンプ場ネットワーク計画は,浸水常襲地区
など治水安全度の低いポンプ排水区や,老朽化した
施設の再構築・改築が必要なポンプ排水区などにお
いて複数の雨水ポンプ場をネットワーク化する場合
の計画策定に適用する。ここで対象とする雨水ポン
プ場は,原則として下水道雨水ポンプ場(合流式の
ポンプ場も含む)とする。
3.5 雨水ポンプ場ネットワーク計画策定
(1) 雨水ポンプ場ネットワークの策定手順
図-4 に雨水ポンプ場ネットワーク計画のフロー
を示す。図-4 に示すように本計画は,以下の手順
により策定する。
1) ネットワークに関する計画方針の検討
ネットワーク計画により整備水準の向上を図る方
針とし,現況施設のシミュレーション結果および既
設雨水ポンプ場の状況などを勘案して,ネットワー
ク計画による目標整備水準およびその場合の計画降
雨規模を設定する。
また,既存ポンプ場の再構築・改築計画は,将来
的に土木施設まで含めた再構築・改築が行われる場
合でも,ネットワーク施設を利用し排水能力が維持
できる計画とする。
2) 整備水準の向上に関するネットワーク施設の
検討
ネットワークパターンごとに,設定した計画降雨
に対応可能なネットワークシステムおよび概略の施
設計画を検討する。
3) 再構築・改築計画に関するネットワーク施設の
検討
2)で検討したネットワーク施設について,再構
築・改築時の適合性を検討する。適合性の悪いネッ
トワークシステムは再検討する。
4) 段階的整備計画
3)の検討で選定したネットワーク施設について,
整備順位による施設規模の確認を行い,段階的整備
計画の検討を行う。
5) ネットワーク施設のシミュレーション
ネットワーク施設のシミュレーションを行い,選
定したネットワーク施設規模の妥当性の検証を行う。
6) ネットワーク施設の運用検証
ネットワーク施設に対して,超過降雨や地震など
のリスクに対する浸水状況の把握のため,運用効果
の検証を行う。
7) ネットワーク計画の総合評価
ネットワークパターンから最適なネットワーク施
設を決定する。最適なネットワーク施設は,整備水
準の向上,再構築手法,運用効果,費用対効果等の
面から総合的に評価する。
大規模浸水被害発生
原因・
発生状況
施設の老朽化
整備目標レベルアップ
計画方針
老朽化施設の抽出・機能診断 検討
再構築・改築の必要性診断
改築・再構築の必要性診断
対策区域の設定
(系統・面積)
SPN(増強ポンプ・NW 管)
計画
改築更新ポンプ場の選定・ SPN 最適
整備順位設定を踏まえ必要 施設の検
討
に応じて施設計画を再検討
SPN 再構築・改築計画
再構築・改築に関するネットワーク施設の検討を行
う。施設規模は,図-6 の右図に示すように再構築中
のポンプ場については,その流域全量分がネットワ
ーク施設に流入するように見込んで設定する。
時差合成法による流量計算概念図
ケースB
流量
・・・・
ポンプ排 水 量 (増 強 )
時間
SPN 施設のシミュレーション
選定したネット
ワーク施設
時間
流量
(2) 整備水準向上に関するネットワーク施設の検討
図-5 に整備水準向上に関するネットワーク施設
の検討手順を示す。図-5 左図のフローに従って,
整備水準向上に関するネットワーク施設の検討を行
う。施設規模を設定は,図-5 右図の例に示すよう
に,各ポンプ場での整備水準向上に対する流入水量
に対し,各ポンプ場での能力増強で対応できない量
をネットワーク管へ集水し種ポンプ場で排水する。
なお,この図-5 でネットワーク管は流下貯留タ
イプであるが,管内貯留量と種ポンプ規模は相互に
関係する。
(例)ネットワーク管:流下貯留型+種ポンプの規模設定
想定したネットワークパターン
パターンA
パターンB
パターンC
・・・・
時差合成法による流量計算概念図
流量
ポ ン フ ゚ 排 水 量 (増 強 ) 流 域 A ハ イ ド ロ
ネットワーク
パターンごと
ネ ット ワ ー ク 管 へ の 流 入量
A ホ ゚ ンフ ゚ 場
P
流域
整備水準に対する
対策必要量の確認
T1
流 域B ハ イ ト ゙ ロ
B ホ ゚ ンフ ゚ 場
P
流域
時間
C ホ ゚ン フ ゚ 場
P
流域
時間
懸 案 地 点 4に お け る 合 成 ハ イ ド ロ グ ラ フ
流量
ネットワーク化による
必要施設の検討
ネットワークパターンの
絞込み
地点2
T2
流量
流域 C ハ イ ト ゙ ロ
ネットワーク管への貯留規模
ポンプ規模等の設定
ネットワーク管の概略線形,
深さ,必要口径等の設定
地点1
時間
流量
地点3
T3
種P
地点4
合 成 ハ イ ド ロ ク ゙ ラ フ
ネ ッ ト ワ ー ク管
流下貯留量
種 ホ ゚ ン プ 能 力
地点3
ネ ッ ト ワー ク管
流下貯留量
T3
地点4
種P
種 ホ ゚ ン プ 能 力
YES
時間
T3
T2
整備水準の向上および再構築・改築に
対応するネットワーク施設
流 下 時 間 分 到 達が 遅 れ る
T3+T2+T1
再構築・改築に関するネットワーク施設の
検討手順
(4) 段階的整備計画の検討
図-7 に段階的整備計画の検討手順を示す。整備水
準向上の検討で絞り込まれたパターンを対象に,ネ
ットワークに組み込まれる雨水ポンプ場ついて経過
年数や健全度調査がなされていれば,その結果と耐
震診断結果を参照し,再構築・改築ポンプ場の設定
を行う。本検討は,図-7 左図のフローに従って行い,
各段階での整備規模が最終段階で必要となる施設規
模に比較して過大となる場合には,適切な施設規模
の見直しについて検討する必要がある。図-7 右図に
示すように,段階的整備計画の検討では,各段階で
現状の排水水準を維持しつつ,段階的に対象とする
排水区内のポンプ場の再構築を行えるようにするこ
とが重要である。
整備水準の向上及び再構築・改築に対応するネットワーク施設
ケースA
・・・・
ケースB
整備水準の向上のみを
考慮した施設規模
T3
T3+T2
T3+T2+ T1
時間
ケースごと
流 下 時 間 分 到 達が遅 れ る
整備順序の検討
図-5
Cポンプ場
P
流域
懸 案 地 点 4に お け る 合 成 ハ イ ド ロ グ ラ フ
流量
合 成 ハイ ト ゙ ロ ク ゙ ラ フ
適切な施設規模
図-6
地点2
T2
時間
雨水ポンプ場ネットワーク計画策定フロー
Bポンプ場
P
流域
流 域 Cハイドロ
NO
図-4
地点1
T1
改築中
再構築・改築対象を考慮
した施設規模の検討
SPN=Storm water Pumping Station Network:雨水ポンプ場ネットワーク
Aポンプ場
P
流域
流 域 Bハイドロ
絞込みしたケースごと
SPN 計画の総合評価
現行整備 レベルの 流量
⇒ ポンプ排 水 が な い た め 、
ネットワーク管 へ 全 量 流 入
流量
・・・・
再構築・改築対象
ポンプ場の設定
SPN 施設運用検証
ネットワーク管 へ の 流 入 量
流 域 Aハイドロ
絞込みしたネットワークパターン
選定したネット
ワーク施設
段階的整備計画
(例)ネットワーク管:流下貯留型+種ポンプの規模設定
整備水準の向上を図った必要施設
ケースA
整備水準向上に関するネットワーク施設の
検討手順
各段階での整備規模の検討
適切な施設規模
(3) 再構築・改築に関するネットワーク施設の検討
整備水準向上に関する検討で絞り込まれたパター
ンにおいて,ネットワークに組み込まれるポンプ場
を対象として,経過年数や健全度調査がなされてい
れば,その結果と耐震診断結果を参照し,再構築・
改築ポンプ場の設定を行う。
図-6 に再構築・改築に関するネットワーク施設の
検討手順を示す。図-6 の左図に示すフローに従って,
NO
YES
段階的整備計画の策定
図-7
現状の排水水準を維
持しつつ段階的にポン
プ場の再構築を行える
様にすることが重要
施設規模の見
直しが必要
整備順序を考慮した施設規模
●再構築・改築の順序(現状規
模,老朽化状況,浸水被害状
況,耐震化状況)
段階的整備計画の検討手順
図-8 に再構築・改築に関するネットワーク施設の
段階的整備計画の検討例を示す。本検討例は,老朽
化が進んでいるポンプ場 a,b,c の流域に対して,
各ポンプ場の改築により能力増強を行うとともに,
種ポンプ場を新設し各ポンプ場間にネットワーク管
を設置することで,整備水準を現況の降雨強度 50mm
/hr,流出係数 50%から降雨強度 60mm/hr,流出係
数 70%まで引き上げるものである。本検討例は,種ポ
ンプ場を新設し,各ポンプ場間にネットワーク管を
設置した後,ポンプ場 a,c,b の順に改築・能力増強
の順で進めている。ここでは,b ポンプ場改築を検討
する段階で現状排水機能の 48m3/s 確保のため種ポ
ンプ場能力を 11m3/から 13m3/s にする必要があり,
グレードアップ計画での種ポンプ場能力が 2m3/s 不
足していることがわかるため,この段階で種ポンプ
場規模が設定され 13m3/s とする必要が生じる。
しかしながら,最終的な施設規模は,改築する順
序によって変わるため,各段階での整備規模が最終
的に必要となる施設規模よりも大きくなる場合には,
適切な規模となるように施設規模の見直しが必要と
なる。
段階的整備計画検討事例(種ポンプあり,ネットワーク管流下型) a→c→bの順
面 積 計 70 0h a
現況
(現計画)
流域ア
150ha
流域イ
a
350ha
b
流域ウ
200ha
c
敷地
確保
新設
10
25
15
計画流量
48m3/s
3
計50m /s
50mm/hr-50%
新設
新設
11
c
改築
0
新設
25
新設
新設
15
計 51 1 1
種P
改 築15
新設
新設
B
改築
新 設 C 20
新設
11 種 P
60mm/hr-70%
図-8
A
改築
30
/
新設
新設
13
種P
C
/
15
A
25
15
計51
種P
再構築計画
改 築 15
新設 A
改築
中
新設
b
新設
改 築 15
種ポンプ場,ネット
ワーク管の設置
整備水準
グレード
アップ計画
b
新設
改築中
/
新設
A
改築
0
新設
改築
B
30
改築
20
計 48
新設
新設
C
20
13 種 P
計78
●現況排水機能の維持のた
●現況排水機能の維持のため,種ポン
め施設種ポンプ能力を
計 76m 3 / s め,種ポンプ能力を
プ能力を11⇒13m3/sにする必要有り
11⇒13m3/sにする必要有り
段階的整備計画の検討手順
3.6 ネットワーク施設の運用検証
ネットワーク施設の運用時には,計画時とは異な
る条件で運用せざるを得ない場合が想定される。こ
の時,どのような状況が出現するかをシミュレーシ
ョンにより検証する。ネットワーク施設運用時の検
討としては,原則として,計画降雨を上回る超過降
雨への対応,地震等の災害時における排水機能停止
時のリスク分散,河川放流規制時の対応とし,これ
らの運用時において浸水域が下流へ移動するような
リスクの有無についても検討する。なお,必要に応
じて地域の実情に則した運用事象も検討する。
ネットワーク施設運用時の効果検証の一例として,
図-9 にポンプ場の超過降雨時におけるネットワー
ク施設効果の検証例を示す。ネットワーク化してい
ない場合,L 排水区における超過降雨により,A ポン
プ場への流入量が排水能力を超過するため L 排水区
で溢水が発生する。一方,ネットワーク化した場合,
M 排水区・P 排水区の貯留能力も有効活用することが
でき,L 排水区の浸水を低減できることが示された。
Aポンプ場能力超過
のため,L排水区で
溢水が発生
ネットワークなし
溢水状況平面図
溢水状況平面図
実績降雨
107mm/hr
L排水区
Aポンプ場
P
貯留管
P
P排水区
Eポンプ場
O排水区
Dポンプ場
M排水区
Bポンプ場
P
ネットワークあり
溢水状況平面図
溢水状況平面図
P
P
N排水区
Cポンプ場
P
溢水(●)減少
ネットワーク管
ネットワークなし時 ネットワーク実施時
総溢水量 総被害額 総溢水量 総被害額 P排水区
Eポンプ場
3
3
億円
億円
m
m
28,000
22.1
3,000
2.6 O排水区
Dポンプ場
図-9
P
M排水区
Bポンプ場
P
P
P
L排水区
Aポンプ場
ネ ッ ト ワ ーク 化に
よ り , M排 水 区の
能力を有効に活用
L 排 水 区の 溢 水 が
抑制される
N排水区
Cポンプ場
超過降雨時の検証例
3.7 ネットワーク施設計画の総合評価
運用検証等を含め,検討対象ネットワークパター
ンの中から最適なネットワーク施設を決定するため,
次の項目について評価を行い,最適案を設定する。
1) ネットワーク施設性能の評価
2) 経済性の評価
3) 維持管理性の評価
4) ネットワーク計画の評価(費用効果)
5) 関連主体との協議状況
なお,評価に当たっては,対象都市の実情に応じ
て各評価項目の重み付けを考慮し,総合評価を行う。
4.
マニュアルの構成
マニュアルは,本編と資料編から構成される。各
編の内容は以下のとおりである。
第1章 総
則
第1節 マニュアルの目的
第2節 適用範囲
第3節 用語の定義
第2章 雨水ポンプ場ネットワーク計画の概要
第1節 ネットワーク計画策定の検討対象
第2節 検討手順
第3章 基本事項の検討
第1節 雨水整備の現状と課題の整理
第2節 検討対象区域の設定
第3節 検討対象降雨の設定
第4節 現況施設の評価と活用方法の検討
第4章 ネットワーク施設計画の検討
第1節 ネットワーク施設計画の検討手順
第2節 計画方針の検討
第3節 整備水準向上に関する検討
第4節 再構築・改築に関する検討
第5節 段階的整備計画の検討
第6節 ネットワーク施設のシミュレーション
第7節 ネットワーク施設の運用検証
第8節 ネットワーク施設計画の総合評価
第9節 施設計画上の留意点
第5章 雨水ポンプ場ネットワーク整備計画の策定
第1節 ネットワーク整備計画の策定手順
第2節 ネットワーク整備計画条件の設定
第3節 ネットワーク整備計画の策定
第6章 雨水ポンプ場ネットワーク事業計画の策定
第1節 事業期間
第2節 概算事業費の算定
第3節 ネットワーク事業計画の策定
資料編
1.ケーススタディ
2.偏在性降雨に関する資料
3.統計資料の分析
4.雨水ポンプ場ネットワーク計画検討例計算資料
●この研究を行ったのは
5.段階的整備計画検討例の解説
6.積算資料(案)
7.問い合わせ先
5.
まとめ
本研究では,雨水ポンプ場ネットワーク計画にお
いて,複数の雨水ポンプ場でのネットワーク対応に
ついて様々な観点からの検討・評価を行い,ネット
ワーク計画を策定する際の技術的事項および計画手
法について,以下の事項を整理・検討した。
①雨水ポンプ場ネットワーク計画手法の明確化
②計画施設規模の設定方法
③雨水ポンプ場ネットワークによる効果の確認
④雨水ポンプ場ネットワークの運用による効果確認
⑤雨水ポンプ場ネットワークの事業計画の設定の考
え方
以上の結果を,
「雨水ポンプ場ネットワーク計画策
定マニュアル」としてまとめた。今後,本技術マニ
ュアルが雨水ポンプ場ネットワークの計画を行って
いく上での一助となれば幸いである。
●この研究に関するお問い合わせは
研究第二部長
研究第二部副部長
松島
目黒
修
亨
研究第二部長
研究第二部副部長
松島
高瀬
修
行廣
研究第二部主任研究員
水川
泰一
研究第二部研究員
中田
稔
研究第二部研究員
研究第二部研究員
中田
松田
稔
恭明
研究第二部研究員
工藤
和正
問い合わせ先
電話 03-5228-6598