個人識別 特集論文 藤原秀人* 鷲見和彦** 大森 正*** 指紋判別装置 要 旨 入退室管理や情報セキュリティにおいてより高いセキュ の詳細な特徴を表す特徴点データを組み合わせた方式をベ リティを実現するために,人間の身体的特徴を利用した個 ースとしている。指紋の濃度むらに関係なく良質な二値画 人識別技術の研究が盛んに行われている。中でも指紋は, 像が得られる局所しきい値法や,指紋のかすれや癒着を修 万人不同,終生不変の性質を持ち,個人識別を実現する重 正する濃淡画像修正法等の前処理手法を盛り込むことでロ 要な特徴として利用されている。 バストを実現している。そしてこの方式の照合性能を評価 指紋を用いた高精度な個人識別を実現するために,我々 は独自の方式による指紋センサと,低品質な指紋に対して した結果,他人受入れ率,本人拒否率ともに0.1%という 結果を得た。 また,指紋照合装置FPR_1000HGは,30指程度を一つの もロバストな照合を行える照合方式を開発した。 開発した指紋センサはFOP(Fiber Optic Plate) を利用し グループして登録し,照合時にはグループID(Identifica- たもので,得られる画像に台形ひずみがなく,小型化が可 tion)と指紋画像から該当グループ内の人物を特定する検 能という特長を持っている。一方,照合方式としては,指 索照合機能を備えており,高いスループット(単位時間当 紋隆線の大局的な流れの方向を表す方向角データと,指紋 たりの利用可能者数) を実現している。 濃淡画像修正結果 高コントラストで 良質な指紋画像 を得る小型センサ 特徴点抽出結果 FOP指紋センサ かすれや癒着を 修正する処理 照明むらや濃度むら を除去する処理 擬似特徴点を 除去する処理 入力指紋画像 二値化結果 指紋判別装置におけるセンサと処理 指紋を用いた個人識別を実現するための指紋センサと処理アルゴリズムを開発した。高精度かつコンパクトな指紋判別装置を実現するために, 指紋センサの光学系にFOPを採用し,処理アルゴリズムには,指紋のかすれや癒着,照明むらや濃度むらを除去修正する各種前処理方式を開発 し,実装している。 40 (428) * 産業システム研究所 **同研究所(工博) *** 稲沢製作所 三菱電機技報・Vol.72・No.5・1998
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