フライボールをキャッチする野手の運動 龍谷大学 理工学部 数理情報学科 T080005 石原達也 目次 1 はじめに 2 Optic Acceleration Cancellation に基づく野手の運動 3 打球の運動方程式と軌道 4 いくつかの打球に対する野手の運動 5 まとめ 参考文献 はじめに 小学生の時に野球を始め、14年間続けた。 真上に高く打ち上げられたフライをキャッチするこ とがとても苦手であった。 打球を追う野手の軌道はChapman氏の考案したOptic Acceleration Cancellation(以下OAC)という法則に基づ いている。 OACを忠実に行った場合の野手の軌道をシミュレー ションすることで、さまざまな打球に対する野手の 軌道を計算し、比較していく。 Optic Acceleration Cancellation S. Chapman, “Catching a Baseball”, Am. J. Phys.35,868 真正面に飛んでくる打球をキャッチするために野手はど う動けばよいか? ボールが遠方にある場合、ボールは点と してとらえられるため、野手の得る情報 はボールの角度 だけとなる。 θ ボール 野手 yb = h(t ) :1 yb (t ) : x f − xb (t ) θ xb CH=h(t ) = tan θ 1 yb (t ) h(t ) = x f − xb (t ) Optic Acceleration Cancellation S. Chapman, “Catching a Baseball”, Am. J. Phys.35,868 打球の軌道が放物線の場合 xb (t ) = v x t , g 2 t) v yt − t yb (= 2 xf = yb (t ) h(t ) = = x f − xb (t ) . 2vxv= y g v yt − 2vxvy g 2 t 2 − v xt g g v y t 1 − t 2 v g y t = 2vx 2vxvy g v xt 1 − 2vxvy g 正しい位置にいる野手にはボールが一定の速度で上昇する、 すなわちボールの見かけの加速度(optic acceleration)が0、の ように見える。 Optic Acceleration Cancellation S. Chapman, “Catching a Baseball”, Am. J. Phys.35,868 野手が落下地点にいない場合 Chapman は、ボールの軌道が空気 x= (t ) x f (0) + v f t . f 抵抗などにより放物線でない場合 にも、ボールの見かけの加速度が g g (1 tv − t) t(v − t ) 2 v 0に近づくように野手が運動すれ 2 h(t ) = = 定数 × t x (0) +v t −v t v −v ば、ボールの落下地点に到達でき x (0) 1 − t x (0) ると考えてこれをOAC(見かけの vx − v f g = 加速度の相殺)戦略と呼んだ。 2vy x f (0) vy y y f y f x x f f f v= vx − f x f (0)g x f (t f ) = x f (0) + v f 2 g = 2 2vy 野手は落下地点にちょうどたどり着く vv x g y 初速度が0の場合のOAC h(t= ) c0 + c1t 代入して x f (t ) が決まる OACの元々のアイデアでは、野手が 一定の速度で捕球地点まで動くこと yb (t ) yb (t ) = xb (t ) + x f (t ) =を想定しているが、本研究では、静 xb (t ) + h(t ) c0 + c1t 止している野手が、ボールが打たれ た瞬間から反応時間 dyb τ遅れた時刻か (t ) (c0 + c1t ) − yb (t )c1 ら動き出すとして軌道を計算した。 dx f (t ) dxb (t ) = v f (t ) = + dt dt dt (c0 + c1t )2 x f (τ ) = x 0 v f (τ ) = 0 c0 , c1 を決定 ボールの軌道 菊田昌大、「ポップアップフライの軌道計算」 龍谷大学理工学部数理情報学科2012年度卒業論文 野手の運動1 外野フライの場合 打球が落下 ・野手はまず後退し、次に少し前 進し、最終段階で後退しながら打 球をキャッチする。 ・反応時間を変えても影響は少な い D = 2.54 cm 野手の運動2 ポップフライの場合 D = 4.32cm 60 50 ・野手はまず後退し、次に少し前 進し、最終段階で後退しながら打 球をキャッチする。 40 30 20 10 -10 ・反応時間を変えても影響は少な い -5 5 10 15 20 25 30 野手の運動3 キャッチャーフライの場合 ・野手は打球のほぼ真下を追うよ うな軌道になり、少し行き過ぎて、 戻りながら捕球する。 ・反応時間を変えても影響は少な い D = 5.08 cm まとめ 外野フライとポップフライとでは、野手はまず後退 し、次に前進し、最終段階で後退しながら打球を キャッチする。反応時間を変えても野手の運動は初 期段階を除いてあまり変わらず、打球のキャッチに は影響は与えないように見える。 野手の初期位置などもっと多くの例を調べてみる必 要があると思われる。 キャッチャーフライの場合、打球は後ろに飛ぶが、 この場合もOACに従って捕球ができることがわかった。 実際の野手の捕球行動とどれぐらい一致しているか については調べることができなかった。
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