鹿児島県、宮崎県における銀行券の動きについて - 日本銀行

この公表資料は当店ホームページに掲載しています。
ホームページアドレス http://www3.boj.or.jp/kagoshima/
2009年3月5日
日本銀行鹿児島支店
鹿児島県、宮崎県における銀行券の動きについて
1.概況
最近の鹿児島県・宮崎県における銀行券の動きについて、日本銀行鹿児島
支店での銀行券の受払を通じてみると、当店からの管内への銀行券の支払は、
振れを伴いつつ緩やかな減少傾向にある一方、管内から当店への還流(受入)
は、よりはっきりした減少傾向を示している(図表1)。この結果、銀行券受
払の収支は、支払超過幅が拡大傾向にある。
── 2008年中の銀行券は、支払(日本銀行から管内金融機関への支
払)が 9,323 億円、受入(管内金融機関から日本銀行への還流)は、
6,794 億円となり、前年比ではともに▲4.5%の減少となった。
銀行券の受払収支は、前年対比で若干ながら支払超過幅が縮小した
(07年 2,640 億円⇒08年 2,529 億円)。
2.支払(管内への銀行券の供給)
90年代以降の当店から管内への銀行券の支払(管内への銀行券の供給)
をみると、90年代は、一時期を除き概ね年率▲0.9%程度の減少トレンドに
あった。しかし、2000年から02年にかけての景気後退期に大きく減少
した後、03年以降は再び年率▲1.2%程度のトレンドで減少している(図表
2)。
こうした支払の変動には、トレンド要因と、循環要因がともに影響してい
ると思われる。
まず、トレンド要因としては、(1)電子マネー等小口電子決済の普及、(2)
地域経済における人口減少などの構造的な要因が働いていると思われる。
循環的な要因としては、(3)03年以降の景気回復に伴い取引需要が増えた
ことや、(4)景気回復の中で金融環境がゼロ金利状態から徐々に正常化して
いった過程で、現金に対する保蔵需要(たんす預金など)が徐々に減っていっ
たこと、などが影響していると思われる。
1
3.受入<管内からの銀行券の還流>
90年代以降の当店における銀行券の受入(管内からの還流)をみると(図
表3)、90年代は、一時期を除き、概ね年率▲2.1%程度の減少トレンドに
あった。しかし、02年からその減少トレンドがそれまでのほぼ倍のペース
に拡大している(02年~08年、年率▲4.2%)。
こうした受入の減少トレンドの強まりは、上記の同様、(1)趨勢的な銀行
券需要の減少傾向が続いていることに加え、(2)地元小売業の販売が県外企
業などとの厳しい競争の中で売上げが低迷していたこと、さらに(3)県外
流通業を中心に03年以降、現金配送サービス1が広まっていったことなどが
影響している。
4.全国との比較
当地の銀行券の受払を全国と比較すると(図表4)、こうした支払超過幅の
拡大はより明確に見える。まず、支払については、管内では全国に比べ、支
払の減少テンポはかなり緩い。実際に、03年から08年までのトレンドを
推計すると、管内の場合は年率▲1.2%の減少となるが、全国は、同▲2.2%
の減少となる。
一方、受入については、管内は全国に比べ、受入の減少テンポがかなり大
きい。実際に本格的に現金配送サービスが拡大した02年から08年までの
トレンドを推計すると、全国は、年率▲2.4%の低下にとどまるのに対し、管
内の場合は年率▲4.2%の減少となっている。
この結果、銀行券の受払収支は、全国的にはほぼ均衡状態にあるのに対し、
管内については徐々に支払超過幅が拡大している。
5.最近の動き
最近の動きを四半期ごとにやや細かくみると(図表5)、銀行券の受入、支払
は、ともに概ねこれまでのトレンドに沿った減少傾向の中にあり、トレンドか
らの乖離がとくに大きくなっている訳ではない。現時点では、当地における銀
行券需要には、最近の管内景気の悪化に伴う影響が、それほど明確には現れて
いないと思われる。
流通企業などでの現金受払(売上、つり銭などの管理)に関わる事前、事後の現金管理を集
中的に請け負うサービス。たとえば、このサービス提供会社は、予め特定小売店と契約し手数
料をもらう一方で、この小売店での売上現金を自分の現金センターに搬送、集計・計算したう
えで、遠隔地の金融機関で入金する事務を行うというもの。
2
1
6.九州全体の銀行券受払
銀行券の受払について、九州内の日本銀行各支店での受払を合計して九州
全体の銀行券の受払をみると(図表6)、九州全体の受払収支は、03年以降、
ほぼ均衡状態が続いている。しかし地域別にみると、ばらつきは急激に拡大
している。具体的には、鹿児島・宮崎、長崎、大分、熊本の各地は、何れも
支払超過、福岡・佐賀は大幅な受入超過となっており、その超過幅は、年々
拡大してきている。
こうした動きは、基本的には九州各地での現金受払を集中処理する現金配
送サービスが、03年以降、次第に進展してきていることが大きく影響して
いると思われる。
以 上
3
(図表1)
鹿児島・宮崎県における銀行券の受払状況
(1)管内銀行券の支払・受入高(水準)
(10億円)
1,400
受入
支払
1,300
1,200
1,100
1,000
900
800
700
600
93
94
95
96
97
98
99
00
01
02
03
04
05
06
07
08
98
99
00
01
02
03
04
05
06
07
08
98
99
00
01
02
03
04
05
06
07
08
(2)管内銀行券の支払・受入高(前年比)
20.0%
15.0%
10.0%
5.0%
0.0%
-5.0%
-10.0%
-15.0%
-20.0%
支払高前年比
受入高前年比
93
94
95
96
97
(3)管内銀行券の支払・受入収支
(10億円)
400
200
0
-200
93
94
95
96
97
(資料)日本銀行「銀行券及び貨幣受払高」
4
鹿児島・宮崎県に お け る銀行券支払高の 推移
(図表2)
(10億円)
1,400
管内における銀行券支払高の推移
93-01年のトレンド 年率▲0.9%
特殊要因
1,300
銀行券支払高(基調)
トレンド線
1,200
1,100
03-08年のトレンド
年率▲1.2%
1,000
900
800
93
94
95
96
97
98
99
00
01
02
03
04
05
06
07
08
05
06
07
08
管内銀行券発行高(前年比)
6.0%
4.0%
平均減少率(年率%)
2.0%
管内銀行券支払高(調整済ベース、前年比)
0.0%
-2.0%
-4.0%
-6.0%
-8.0%
01-03年の減少率年率▲7.6%
-10.0%
93
94
95
96
97
98
99
(%ポイント)
00
01
02
03
04
管内業況判断D.I(全産業).
30
20
10
0
-10
-20
-30
-40
-50
-60
93
94
95
96
97
98
99
00
01
02
03
04
05
06
07
08
管内企業売上高(全産業、前年度比%)
5.0
4.0
3.0
2.0
1.0
0.0
-1.0
-2.0
-3.0
-4.0
-5.0
93
(年度)
94
95
96
97
98
99
00
01
(資料)日本銀行「銀行券及び貨幣受払高」「短観」
5
02
03
04
05
06
07
08
(見通し)
鹿児島県、宮崎県における銀行券受入高の推移
(図表3)
(1)銀行券受入高の推移(水準、トレンド)
(10億円)
1,400
特殊要因
銀行券受入高(基調)
02-08年のトレンド線
93-01年のトレンド線
93-01年のトレンド 年率▲2.1%
1,200
1,000
02-08年のトレンド 年率
▲4.2%
800
600
400
200
0
93
94
95
96
97
98
99
00
01
02
03
04
05
06
07
08
(2)銀行券受入高(前年比)
5.0%
0.0%
-5.0%
-10.0%
-15.0%
平均減少率(年率%)
銀行券受入高(調整済、前年比)
-20.0%
93
94
95
96
97
98
99
00
01
02
03
04
(3)鹿児島県大型小売店販売額との関係
20%
10%
管内銀行券受入高前年比(左目盛)
大型小売店販売(全店)前年比(右目盛)
10%
5%
0%
0%
-10%
-5%
-20%
-10%
98
99
00
01
02
03
04
05
06
07
08
(資料)日本銀行「銀行券及び貨幣受払高」、経済産業省「大型小売店販売額」
6
05
06
07
08
銀行券の受払における全国との比較
(図表4)
(1)全国と管内の比較
(支払 2003年=100)
(受入 2002年=100)
105.0
105.0
全国
全国
管内
100.0
管内
100.0
95.0
95.0
90.0
85.0
90.0
80.0
85.0
03
04
05
06
07
75.0
08
02
03
04
05
06
07
08
(2)最近のトレンド
(支払:2003年か らの トレンド)
(受入:2002年か らの トレンド)
105.0
105.0
全国
100.0
全国
100.0
管内
管内
95.0
(トレンド 管内▲1.2%)
95.0
(トレンド、全国▲2.4%)
90.0
85.0
90.0
(トレンド 全国▲2.2%)
(トレンド、管内▲4.2%)
80.0
85.0
75.0
03
04
05
06
07
02
08
03
04
05
06
07
08
07
08
(3)受払収支
(全国)
(管内)
(100億円)
(兆円)
150
150
100
100
50
50
0
0
-50
-50
支払
-100
支払
-100
受入
受入
収支
収支
-150
02
03
04
05
06
07
-150
08
02
7
03
04
05
06
最近の鹿児島県・宮崎県における銀行券受払の推移
(図表5)
銀行券の 受入
300
(10億円)
受入
250
トレンド(年率▲4.2%)
200
150
100
05/Ⅳ 06/Ⅰ 06/Ⅱ 06/Ⅲ 06/Ⅳ 07/Ⅰ 07/Ⅱ 07/Ⅲ 07/Ⅳ 08/Ⅰ 08/Ⅱ 08/Ⅲ 08/Ⅳ
トレンドからの乖離(受入)
(10億円)
50
0
-50
05/Ⅳ 06/Ⅰ 06/Ⅱ 06/Ⅲ 06/Ⅳ 07/Ⅰ 07/Ⅱ 07/Ⅲ 07/Ⅳ 08/Ⅰ 08/Ⅱ 08/Ⅲ 08/Ⅳ
銀行券の 支払
(10億円)
400
支払
トレンド(年率▲1.2%)
350
300
250
200
150
100
05/Ⅳ 06/Ⅰ 06/Ⅱ 06/Ⅲ 06/Ⅳ 07/Ⅰ 07/Ⅱ 07/Ⅲ 07/Ⅳ 08/Ⅰ 08/Ⅱ 08/Ⅲ 08/Ⅳ
(10億円)
100
トレンドからの乖離(支払)
50
0
-50
-100
05/Ⅳ 06/Ⅰ 06/Ⅱ 06/Ⅲ 06/Ⅳ 07/Ⅰ 07/Ⅱ 07/Ⅲ 07/Ⅳ 08/Ⅰ 08/Ⅱ 08/Ⅲ 08/Ⅳ
(資料)日本銀行「銀行券及び貨幣受払高」
8
(図表6)
九州全体の銀行券の収支
(10億円)
1,500
1,000
500
0
-500
鹿児島・宮崎県
熊本県
長崎県
大分県
福岡・佐賀県
九州
-1,000
-1,500
93
94
95
96
97
98
99
00
01
(資料)日本銀行「銀行券及び貨幣受払高」
9
02
03
04
05
06
07
08