第6学年B組 外国語活動学習指導案 授 清水 琢 (HRT) Mark F.Jones (ALT) 研究協力者 佐々木雅子 若有 保彦 1 単元名 世界の友だちにインタビュー 業 者 Lesson5「Where do you want to go?」 2 子どもと単元 (1) 子どもについて 本校の英語カリキュラムに則って,4年生までに37時間,5年生では35時間,計72時間の 英語学習を経験してきており,各学年で習得目標としている基本的な表現については,ほと んどの子どもが身に付けてきている。しかし,英語へ慣れ親しんでいる度合いに関して,英 会話教室への通級や海外旅行経験,家庭における個人学習の積み重ねなど,これまでの経験 や取組が個々の英語習得レベルに大きく反映されているため,英語への必要感の感じ方も含 め,著しい個人差が見られる。 5学年で St. Peter and Paul's Primary School(オーストラリア)とスカイプを通じて交流を 行った際は,回を重ねるごとに,友だち同士で知っている単語やフレーズなど互いの知識を 共有したり,伝わらない時のジェスチャー等の工夫を即興的に教え合ったりする様子が見ら れるようになった。また6年生になってから行った同校との交流では,自分の英語を相手に 伝えるために効果的な方法を意欲的に工夫する姿も見られた。これまでの「自分の英語が相 手に通じた」といった喜びと共に積み重ねてきた体験が,「何とかして伝えたい」というコ ミュニケーション方略(Communication Strategy)の獲得に結び付いていることが窺える。 (2) 単元について 本単元のメインフレーズは「Where do you want to go? 」「I want to go to ~.」である。そ してコミュニケーション成立のために付随するフレーズとして「I want to ~.」 「This is ~.」 「It's in ~.」という表現にも慣れ親しませていく必要がある。 外国語活動における言語習得のプロセス(H25年度本校研究紀要 P.161参照)の中で鍵とな るのは,子どもが外言や内言による対話の末に獲得した達成感である。コミュニケーション 成功という喜びがフレーズ習得の原動力となるのである。 そこで本単元は,同校との交流を組み込むことにより,必要感を感じながら上述のフレー ズを自然に習得していくことができるよう展開していく。既知の級友同士ではなく未知であ る他国の相手,さらに互いの言語に関して十分な理解までには至っていないと考えられる学 習者同士によるコミュニケーションが成立するためには,子ども自らが主体となり相手と即 応しながら行う意味交渉が不可欠となるであろう。友だちや他国の小学生との外言によるや りとり,さらに内言で行われる自己内対話,それらを駆使した意味交渉の過程を経て,上述 のフレーズに自然と慣れ親しみ(インテイク)ながら,異文化間コミュニケーション能力も 育んでいくことができる単元であると考える。 (3) 指導について 小学校段階から英語学習を行う利点は,母語とは異なる音声形態に早期から慣れ親しむこ とができることである。第二言語において,インプットからアウトプットに至る言語習得の プロセスを認知的発達段階の初期に体験しておくことは確かに有効(※)であろう。しかし, 子どもが必要感を感じないタスクにより「何となく覚えた」フレーズが相手に「何となく通 じた」という体験だけで終わらせては,コミュニケーション方略の獲得は期待できない。 他国の小学生との交流を本単元に組み込む目的は,子どもが「伝えたい」「分かりたい」 という必要感をもち,しかも双方向に即応し合う対話の中で「よりうまく」 「より効果的に」 という思いを自ら感じていくことができるようにするためである。基本形はチャート式であ るが,事前に準備したフレーズをそのまま話すのではなく,双方向の応答の中で,言語を自 分の伝えたいことを伝えるための手段として活用していく,そのような姿を期待している。 そのために,意味交渉の際に必要となる語彙・文法等を含めたフレーズを子どもが身に付 けることができるようにする。交流,またはそれに向けた準備の中で,子どもが「この言い 方を知りたい」「何で言い方が違うの?」と感じたとき,教師はインプットによる言葉への 気付きのネットワーク構築を適切に焦点化し,インテイク,統合,再構築へとつなげ,より 自然なアウトプットとなるよう練習する場を設定していく。これは,子どもが必要感を感じ 自ら練習する場であり,必要感を感じないまま行われるパターンプラクティスとは自ずから 違うものとなる。 本単元では,上述のように子どもが自分で自分を操作しながら高めていく姿勢に加え,対 話がうまくいかない場合に「より効果的に!」と自ら修正していく意思,そのような学際的 能力も培いながら,「自立した学習者」としての素地を育んできたい。 ※ Genesee,1987,『Learning through two languages』,Newbury House Publishers 大人の学習者は物事を抽象化,分類,一般化する思考力があり,問題解決能力におい て子どもより優れているが,そのような能力の発達と同時に言語習得装置は機能しなく なるとしている。 3 単元の目標 (1) 行きたい所を尋ねるフレーズとその答え方に慣れ親しむ。 (2) 交流を通して,行きたい所等について積極的に尋ねたり答えたりしようとしている。 (3) 相手と分かりやすく伝え合うための効果的な表現や配慮に気付き,実践しようとしている。 4 単元の構想(総時数3時間) 時間 学習活動 1 (1) 行きたい所を尋ねる フレーズとその答え方 を知る。 「Where do you want to go ?」 「I want to go to ~.」 教師の主な支援 (H):HRT,(A):ALT ・ 発音やリズム,フレーズの使わ れ方を理解することができるよう に会話を示範する。その際文字も 提示し,表現を耳だけでなく視覚 的にも確かめられるようにする。 (H)&(A) 評価 ・ 行きたい所を 尋ねるフレーズ とその答え方に 慣れ親しんでい る。 ・ 相手と分かり やすく伝え合う ための効果的な 表現や配慮に気 付き,実践しよ うとしている。 ・ 交流を通して, 行きたい所等に ついて積極的に 尋ねたり答えた りしようとして いる。 単元のゴール 「Where do you want to go?」 ~オーストラリアの友だちにインタビュー~ (2) チャート式紹介文を 考える。(日本・秋田) 2 (3) 級友と紹介文を確か め合う。 3 本時 (4) チャート式紹介文を 通して,オーストラリ アの小学生とスカイプ で交流する。 ・ 「伝えたい」という意欲の高揚 を図るため,紹介する所は自分た ちで選び,その方法も子どもたち の発想を取り入れていく。(H) ・ 意味交渉のためのフレーズ等, 英語表現の確認が必要とされる場 合は,HRT と連携しながらその 表現に慣れ親しませていく。(A) ・ 対話が停滞した際も,同時通話 のメリットを活かして,できるだ け自力修正していくことができる よう,助言方法を確認しておく。 (H)&(A) 5 本時の実際 (1) 本時(3/3) ねらい オーストラリアの友だちとの交流を通して,コミュニケーションストラテジーを活用し ながら行きたい所等について積極的に尋ねたり答えたりしている。 (2) 展 開 時間 3分 ○:「対話」の機能を生かすための手立て 学習活動 ① 教師の支援 (H):HRT,(A):ALT 評価 交流の流れを確認する。 Today's Goal: オーストラリアの友達にインタビューしよう 「Where do you want to go?」 ・ 【コミュニケーションが停滞し たときの解決方法】 (※ Communication Strategy の ための手段) 見通しをもって活動することができるよう に,今日の交流の流れを確認する。また,コ ミュニケーション停滞を打開する手立てを確 認しておく(H)&(A)。 Communication Strategy のために 必要となってくるフレーズの例 「What does ~ mean?」 「Does it mean ~?」 「Is it ~? Right?」 「Speak more slowly.」 「Louder please.」 「How do you say ~ in English?」 「Did you say yes?」 ア 状況に応じて,既出のフ レーズを使う。 イ 日本語で話してみる。 ウ グループの仲間に聞く。 エ クラスの友だち,(HRT, ALT)に相談する。 25 分 ② 10 分 ③ 手話と日本語で交流する。 (主に St. PPPS から発信) 7分 ④ 本時の学習をふり返る。 ・ 今後の交流に活かすことができるように, 【自分との対話】 互いのふり返りを交換し合い,共有する場を ・ ~ということが始めはうまく通 もつ。(H) チャート式紹介文で交流する。 ・ 英語で表現することが子どもの負担過重と 【仲間との対話】 ならないように,テーマごとのグループで紹 (主に附属小から発信) 介を行い,基本的には一人で一フレーズの応 答を担当することとする。(H) 例: 「Do you like summer?」 ○ コミュニケーションが円滑に進まなかった ↓ ↓ り予想外の返答があったりした場合でも,グ 「Yes, I do.」「No, I don't.」→略 ループ内で協力しながら解決に向かうことが ↓ できるように,困っているポイントを明確に 「Which do you like, し,共有させる。また,必要に応じて全体で sea or mountain?」 の確認タイムを設ける。(H) ↓ ・ 他グループが交流している中から見つけた 「I like mountain.」 コミュニケーションのポイントを自分たちに ↓ も活かすことができるように,気付いたこと 「Do you like hot spa?」 をメモするためのシートを準備する。(H) ↓ ・ 意味交渉を経た自然な流れの中でインテイ 「Yes, I do.」 クが行われるように,確認・明確化要求に必 ↓ 要となるフレーズを,子どもの要望に応じて 「You should go to Hachtimantai.」 教えていく。(A) 「Hachimantai is ~.」 わらなかったけれど,~のように したら伝わった。 ・ ○○は,オーストラリアの友だ ちも分かっていたからよく伝わっ た。嬉しい。 ・ 分かりやすく伝え合うためには, ~ということが大切なんだな。 ・ 日本語を母語とする立場としての配慮に気 付くことができるように,相手へのコメント を話す場を設ける。(H)&(A) チャート式紹介文を基本としたオーストラ リアの友だちとの交流の中で,相手と分かり やすく伝え合うための工夫や配慮を実践しな がら,積極的に尋ねたり答えたりしている。 (交流態度の観察,発言,シート)
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