概要集[PDF](4.0MB) - 物理学専攻 - 首都大学東京

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by Y. W.
Special Thanks
K. A.
Everybody
(1-AM)-I-0
高純度金属型極細カーボンナノチューブ試料作製
光物性研究室
小岩井貴瑛
06163020
石井廣義
(指導教員)
金属型極細カーボンナノチューブの電子状態については,これまでに占有状態は光電子
分光実験によって観測されている.一方,高純度の金属型極細カーボンナノチューブ及
び,極細カーボンナノチューブ全般の非占有状態については研究されておらず,逆光電子
分光実験を行うことでこの解明が可能である.本研究では金属型極細カーボンナノチュー
ブ試料の作製と共に,極細カーボンナノチューブの電子の非占有状態の観測に向けた逆
光電子分光測定装置の立ち上げも行った.CoMoCAT 法によって合成された SWCNTs
試料の特徴は,今まで研究されてきた SWCNTs 試料と比較して,∼0.8nm 程度と極め
て小さい直径であること,(6,5),(7,5),(7,6),(6,6),(7,4) 等の限定的なカイラリティを持つ
チューブで構成されていることが挙げられる.今回は,この試料から金属型を選択的に抽
出することで高純度の金属型極細カーボンナノチューブ試料の作製を試みた.金属型の純
度を高める方法として密度勾配超遠心分離法(DGU 法)がある.これは,界面活性剤水
溶液中にカーボンナノチューブを分散させ,超遠心分離を行うことで,比重の違いごとに
分離する方法である.CoMoCAT 試料の場合,上層に黄色い金属型のチューブの層が現
れるため,金属型のみの抽出が可能であると考えられる.作製した試料に対して光吸収ス
ペクトルを測定し,金属型の純度を確認した.図 1,2 は光吸収スペクトルを示す.
図 1 DGU 前の試料
図2
DGU 後の試料
(1-AM)-I-1
光電子分光実験におけるフェルミエッジの
測定シミュレーション
光物性研究室
山田翔太
07163027
石井廣義
(指導教員)
固体に光を照射すると,固体内における光の吸収によって電子が励起状態へ遷移され
る.励起された電子の一部は束縛エネルギーを超えて電子(光電子)が放出される.この
ような現象を光電効果という.この現象を利用したものが光電子分光法であり,その原理
は次式で表される.Ek = hν − EB − φ ここで Ek は発生した光電子の運動エネルギー,
hν は入射した光のエネルギー,EB は束縛エネルギー,φ は仕事関数である(図1参照).
光電子分光法ではこの光電子のエネルギーを観測することで電子の占有状態を知ることが
出来る.光電子分光実験では測定する試料のフェルミ準位と系の分解能を知るために,各
温度における金(Au)のフェルミエッジのフィッティングを行う.ここで用いるフィッ
ティング関数は,各温度のフェルミ分布関数に装置の分解能関数(ガウス関数)を畳み込
んだものである.実際の実験結果にフィッティングさせることでフェルミ準位(EF)と分
解能(Δ E)を求めることが出来る.今回,フェルミ分布関数を分解能関数で畳み込むこ
とで表される関数をシミュレートし,グラフとして表示するプログラムを作成した(図2
参照)
.プログラム作成には Microsoft Visual C++6.0 を使用した.本プログラムでは測
定温度や分解能を変数として,実験条件に沿ったシミュレーションを行うことが出来る.
図1
光電子分光法の原理図
図 2 フェルミ分布関数のシミュ
レーション
(1-AM)-II-2
カゴ状化合物 SmAu3 Al7 の単結晶育成と物性測定
電子物性研究室
増田隼人
09263002
佐藤英行,青木勇二,東中隆二
(指導教員)
希土類元素を含むカゴ状化合物は,4f 電子と伝導電子の混成(c − f 混成)が増強さ
れ,価数揺動や重い電子状態などの多彩な現象を引き起こすことから,現在精力的に研究
が進められている.RAu3 Al(
7 R = 希土類元素)は,図1に示すように菱面体結晶構造を
持ち,希土類イオンが Au や Al で作られた “カゴ” に囲まれた構造をしている.本研究
では,価数揺動など興味深い物性が期待されながら.詳細な物性報告は行われていない
SmAu3 Al7 を対象物質に選んだ.
単結晶は,Al 自己フラックス法を用いて育成し,遠心分離とアルカリ処理を行い残留
した Al を除去した.目的物質の確認に粉末 X 線回折を使用し,結晶構造の確認には背面
ラウエ法を用いた.結果として最大で約 2mm 程度の単結晶の育成に成功した.
帯磁率 χ の温度依存性と Sm3+ と Sm2+ の Van Vleck 常磁性による帯磁率の理論値を
図2に示す.帯磁率では,理論値との比較から,Sm3+ の傾向を示す.さらに,T ∼3K 付
近に異常が見られ,H=7T においてもその異常が観測される.これらの詳細については
現在,磁気異方性や電気抵抗などの測定準備を進めており,それらの結果も踏まえ議論す
る予定である.
それに加えて,PPMS Thermal Transport Option を用いたゼーベック係数の測定に
おいて,従来の測定と比較してより小さいサイズの単結晶での測定を可能にするための冶
具を作製し,YCd6 の単結晶でゼーベック係数を測定した.
c
a
b
図 1 SmAu3 Al7 の結晶構造
図 2 SmAu3 Al7 の帯磁率の温度依存性
(1-AM)-II-3
低温における微小試料の高精度熱電能測定装置の開発
電子物性研究室
小野修平
08163729
青木勇二,佐藤英行,東中隆二
(指導教員)
半導体や金属などの試料の両端に温度勾配 ∆T をつけると電位差 ∆V が生じる.この
とき熱電能は S = ∆V /∆T と表され,この現象を利用した熱と電力の相互変換技術を熱
電変換という.変換効率の良い物質は熱電材料と呼ばれ,普段捨てられている廃熱を回収
して再びエネルギーとして利用するといった,クリーンエネルギーとして活躍しており,
今後の発展が期待されている.
本研究室で研究を行っている充填スクッテルダイト化合物などのカゴ状物質は,その結
晶構造から熱電材料の有力な候補の 1 つであると考えられている.また,そこに現れる重
い電子状態などの強相関電子系では,フェルミ準位近傍に形成される大きな状態密度に起
因し熱電能は大きな値を持つ.つまり熱電能の測定は強相関電子系化合物の電子状態を明
らかにする上で有効な手段である.
重い電子状態は通常数 K 程度の極低温で見られる現象であるため,極低温領域まで測
定する必要がある.また,熱電能の測定には試料に数 % 程度の温度勾配をつける必要が
あるため,通常数 mm 以上の長さの試料が要求されるが,研究対象の多くの化合物の結晶
が 1mm 程度以下であり,測定が不可能であった.
本研究では 300K から 1K での温度領域で,1mm 程度の試料の熱電能の高精度な測定
を可能とする装置の開発を行う.1mm 程度以下のスケールの試料の熱電能測定は,産総
研の李グループ (室温) や大阪市大の吉野グループ (77K 以上) などの報告があるが,1K
までの測定は私の知る限り報告されていない.
本装置には,ヒートスイッチを組み込むことに
より,装置外部の熱浴と試料空間との熱交換を制
御し,効率的な温度コントロールを可能としてい
る.∆V の測定にはナノボルトメータを使用し,
5nV の分解能を持つとすると,最低温度 1K にお
いて ∆T /T = 0.05 として,
S = 5 × 10−9 /0.05 = 10−7 (V /K)
図1
装置全体像と,試料空間の
拡大図
の精度で測定可能である.測定は LabVIEW プログラムを用いて自動化する予定である.
(1-AM)-II-4
カゴ状化合物 TmTr2 Al20 (Tr=Ti,V)
の単結晶育成と物性測定
電子物性研究室
西田容平
08163924
佐藤英行,青木勇二,東中隆二
(指導教員)
希土類元素を含む化合物 RTr2 Al20 (R=希土類元素,Tr=遷移金属) は,希土類元素が
16 個の Al で作られる「カゴ」に囲まれる構造をもつ (図 1).このため,カゴ上の伝導電
子と 4f 電子が混成(cf 混成)して近藤効果,重い電子が関係する超伝導,高い熱電能な
どの興味深い物性を示すことが期待される.実際,同じ構造を持つ YbCo2 Zn20 で重い電
子状態が報告されている.様々な希土類に対して研究がされているが Tm はあまり研究
されていないため本研究では Tm を選んだ.
単結晶を, 母材比 Tm:Tr:Al=1:2:90 (Tr=Ti,V) で Al の自己フラックス法を用いて
常圧で 1050◦ C から 750◦ C に徐冷することにより育成した.効率よくフラックスを取
り除くために遠心分離をした後に NaOH 水溶液で表面を処理した.単結晶の評価を
粉末 X 線回折法で RTr2 Al20 の構造の回折パターンとの比較および格子定数の決定で
行った.過去の報告では TmTi2 Al20 の格子定数は 14.661(1)˚
A で,本研究で得られた
TmTr2 Al20 (Tr=Ti,V) はそれぞれ 14.663(2)˚
A,14.507(1)˚
A となった.
図 2 に磁場 H = 1T における磁化率 χ = M/H の温度依存 ,図 3 に温度 T = 2K にお
ける磁気モーメントの磁場依存の測定結果を示す.図 2 から見積もった有効ボーア磁子数
は,Tr=Ti のとき 6.37µB ,Tr=V のとき 6.96µB となり,どちらも Tm3+ 自由イオン
の有効ボーア磁子数 7.57µB よりも小さくなった.図 3 から飽和磁化も Tm3+ 自由イオ
ンの飽和磁化 gJ J=7µB よりも小さいことが分かる.このことは結晶場がスピン- 軌道相
互作用による 2J+1 重縮退を解いていることを意味している.今後,比熱や磁気抵抗を測
定,解析しその結果と合わせて 4f 電子のこれらの物理量への寄与を議論する予定である.
図 1 RTr2 Al20 の単位胞 (立
方晶)
図2
磁化率の温度依存
図3
磁化の磁場依存
(1-AM)-III-5
WIMP 星の構造
素粒子理論サブグループ
飯島周多郎
08163590
加藤広樹
08163652
南方久和
(指導教員)
WIMP(Weakly Interacting Massive Particle)とは,その存在が予言されながらも,
いまだ発見されていない,ダークマターの候補である素粒子である.特徴としては電磁的
な相互作用をせず,10GeV∼100GeV 程の質量を持つと期待されている.現在これを単体
で見つけるための実験的な探索が盛んに行われている.一方,電磁的な相互作用はなくと
も,質量があるからには,重力の影響は受けるはずであり,中にはそれらが集まってでき
た,WIMP 星も存在するのではないかと思われる.今回は,チャンドラセカールや,オッ
ペンハイマー等によって中性子星を念頭にその理論が作られた COMPACT STAR につ
いて,WIMP によって形作られる場合を考えてみる.
星は重力による引力に対して,それを支える圧力が存在し,それによって,ある程度
の大きさや形が保たれている.星を構成する物質の種類や量によってその様子は異なり,
太陽のように核融合反応によって生じる熱エネルギーで,その圧力を作るのが一般的で
はあるが,中には物質の縮退圧によって形作られている COMPACT STAR が存在する.
WIMP がフェルミ粒子であると仮定して,フェルミ統計に従う物質の縮退圧を計算して,
その構造について議論する.
縮退圧によって支えられる力には上限があり,構成物質の質量にその大きさは依存して
いる.現実に存在が観測されている白色矮星や,中性子星の上下値には,それぞれ電子の
質量と,中性子の質量に依存した,チャンドラセカール限界とオッペンハイマー限界があ
る.また,非常に高密度になった場合には,一般相対論的効果も影響してくるので,その
効果も取り入れて,WIMP によって作られる星の構造と特徴についての理論を作る.
相対論的な時と,非相対論的な時の星を構成する粒子の限界数 N はそれぞれ
N=
N=
c
Gm2
2
3/2
(3π 2 )2/3
Gm3
3
1
R3
と近似的になっている.ここで G は万有引力定数で,m は構成粒子の質量,R は星の
半径である.これは近似式なので,相対論的な状況と,非相対論的な状況の間等も含め
て,その特徴を議論することにする.また,ただ単に釣り合いの位置を求めるだけでは不
十分であり,安定性も議論しなければならない.オッペンハイマーとヴォルコフによって
研究された,中性子星の理論によると,中性子星には安定した釣り合いと,安定しない釣
り合いと,釣り合いが無い星の質量領域がそれぞれ存在する.WIMP によって形作られ
(1-AM)-III-6
た星でも中性子星と同じような結果になる事が予測でき,それらの質量領域を詳しく計算
することによって,宇宙に存在するかもしれない WIMPSTAR の形や大きさ,構造につ
いて予測していき,WIMP の発見に役立てていきたいと思う.
参考文献
1. S.Weinberg, Gravitation and cosmology
2. J.R.Oppenheimer and G.M.Volkoff, Phys.Rev 55,374(1939)
3. C.kittel and H.Kroemer, Thermal physics
4. S.L.Shapiro and S.Teukolsky,Black holes,White dwarfs and neutron stars
(1-AM)-III-7
宇宙のインフレーション
素粒子理論サブグループ
藤本哲朗
08163953
北澤敬章,安田修
(指導教員)
宇宙には今なお様々な疑問があるが,それを説明するための一つの仮説モデルとして,
インフレーション理論というものがある.これは宇宙初期において,宇宙に指数関数的な
膨張 (以後,“インフレーション” はこの事を指す意味で使用する) の時期があったことを
想定するモデルである.今回私は,いくつかの数式を経て導くことが出来るスケールファ
クター a(t) を用いて,インフレーションによる膨張がどの程度のものであったのかを概
算することを試みた.
スケールファクター a(t) とは,ここでは宇宙の膨張の“倍率”を表すパラメータであ
る.例えば,宇宙の初めの半径を l0 とすると,宇宙の半径 (= l0 a(t)) が,時刻 t1 から t2
にかけて二倍に膨らんだとするならば,a(t2 )/a(t1 ) = 2 である.
次に想定するインフレーションについてだが,地平線問題の解決のみを条件として課し
た.この地平線問題であるが,宇宙はインフレーション後,光などに満ちあふれた輻射優
勢期を経て,物質支配期が現在まで続いているものとすると,もしインフレーションが無
ければ,我々が観測出来得る範囲はとっくの昔に一か所から始まった宇宙膨張の範囲を超
えてしまっている.けれども観測から分かっている宇宙背景輻射は,たまたまそこにも似
たような空間が広がっていると言うにはあまりにも一様等方な温度 (2.73K) でどこまで
も続いているので,過去に何らかの形で相互作用があったことを考えなければならないの
ではないかという疑問が発生する,これが地平線問題である.
インフレーション理論を導入すれば,過去に一様等方であった同一起源を持つ領域を,
現代でも観測されないほど遠くまで拡大させることで,その問題を説明することが出来
る.それを数式で表すと ct0 < l0 a(t0 )(c:光速 ,t0 :現在時刻) が,インフレーション理論
が地平線問題を解決するための条件である.我々が観測出来る最大の距離は,光が今まで
進めた距離 ct0 に他ならないので,それよりも膨張した宇宙の大きさ l0 a(t0 ) が勝ってい
れば良い.
現在考え得る物理量の最小単位 (プランクスケール) である,プランク時間だけインフ
レーションが続いたとしてこれを概算した結果,e70 (∼ 1030 ) 倍以上は少なくともインフ
レーション中に膨張する必要があることが分かった.ちなみに,e の肩に乗ったこの数は,
e-fold 数と呼ばれており,一般的には約 60∼70 の間の数字であることが多い.発表時に
は,これに加えてインフレーションの持続時間についても検討する.
(1-AM)-III-8
ヒッグス粒子とは何か
素粒子理論サブグループ
野口晃
08163137
北澤敬章, 安田修
(指導教員)
電磁相互作用から弱い相互作用へ理論を拡張する過程においてヒッグス粒子を説明す
る.理論を拡張する過程は以下のようである.
電磁相互作用(=電磁力)
 • U(1) ゲージ対称性→ SU(2) ゲージ対称性

• ヒッグス機構(粒子に質量を与える理論)の導入
弱い相互作用(=弱い力)
なぜ,このような拡張が必要かというと,電磁相互作用と弱い相互作用には以下のよう
な違いがあり,それを解決するために,U(1) ゲージ対称性→ SU(2) ゲージ対称性への拡
張,ヒッグス機構の導入が必要になってくる.
ゲージ粒子
電磁相互作用
弱い相互作用
光子 γ
ウィークボゾン W
無限遠
10−17 m
変わらない
変わる
(力を媒介する粒子)
力の到達距離
粒子の種類
例)電流 I
例)β 崩壊
n → p + e− + ν¯e
U(1) ゲージ対称性は粒子の種類を変えないが,SU(2) ゲージ対称性は粒子の種類を変
えることを要求する.また,電磁相互作用の場合,光子の質量が 0 なので力の到達距離
は,無限遠となるが,弱い相互作用の場合,ヒッグス機構によりウィークボソンに質量を
与えることで,ウィークボソンが重くなり,力の到達距離が短くなることが理解できる.
これらにより,電磁相互作用から弱い相互作用への拡張は成功した.この過程の中に現
れるヒッグス機構という理論から粒子に質量を与えるヒッグス粒子の存在が予言される.
(1-PM)-IV-9
3 次元 Euclid 空間におけるガラス動力学の
Lyapunov-mode 解析
非線形物理研究室
前田郁実
08163981
首藤啓
(指導教員)
過冷却状態において,様々な分子はガラス状態を示す.ガラス状態とは,粘性率が
異常に増大し,結晶化せずに液体のようにゆっくりと分子が動いている状態(遅い構
造緩和が起きている状態)である.また,ガラス転移においては,自己拡散係数,粘
性率などの動的性質は大きく変化するのに対し,液体構造,圧力,体積などの静的
構造はほとんど変化を見せない.このようにガラス状態の動力学には不明な点があ
り,未だ完全にその動力学は理解されていない.そこで今回,具体的には,平均二乗
変位,Lyapunov スペクトルを数値計算し,ガラス状態の動力学の起源を調べていく.
本研究では粒子に与えるエネルギー,粒子半径の比,粒子
数の比,質量の比,密度などのパラメーターを変えて,平
均二乗変位,Lyapunov スペクトル,Lyapunov ベクトル
の様子を見る.ここで Lyapunov スペクトルとはカオス
の強さを測る指標であり,δx(t) = δx(0)eλt から
λ = lim 1/t × log(δx(t)/δx(0)
t→∞
で定義され,これを高次元に拡張したものは右辺が行列
の形になり,その固有値を Lyapunov スペクトル,固有
ベクトルを Lyapunov ベクトルと呼ぶ.
数値計算の結果,粒子に与えるエネルギーを小さくする
図 1
平均二乗変位のエ
ネ ル ギ ー に よ る 違 い (t-
msd(t))
と,平均二乗変位から,ガラス状態が現れていることがわ
かる.ここで観測されたガラス状態において Lyapunov
スペクトルおよびベクトルを計算するとより高いエネル
ギーではスペクトルは幅広く分布することが分かる.ま
た Lyapunov ベクトルの位置成分を取り出してプロット
すると,それは Lyapunov スペクトルの小さい側に偏っ
て分布することが分かる.このことから,ガラス状態は
短時間領域ではケージ効果による擬似的な振動を示し,長
時間領域ではホッピング過程を介して粒子の変位が起き
図2
lyapunov スペクト
ルに対し lyapunov ベクト
ルの位置成分のみを取り出
したものをプロット
ていることを考慮すると,強いカオスは擬似的な振動モー
ドに寄与し,弱いカオスは遅い構造緩和に寄与しているものと思われる.
(1-PM)-IV-10
2 次元 torus 面の区分線型保測写像における周期軌道の分析
非線形物理サブグループ
青木 和輝
08163309
首藤 啓
(指導教員)
2 次元 torus 面上の保測変換は,古典的な力学系の相空間上での振る舞いの離散化に端
を発する.2 次元 Euclid 平面上の線形変換は自明に解くことができるのに対し,線形変
換を torus 面上で定義すると可解性は失われ,その振る舞いは複雑なものになる.さら
に,同じく torus 面上で定義される標準写像 :
„ «
„
«
x
x − K sin 2πx + y
→
mod 1
y
−K sin 2πx + y
(1)
と呼ばれる力学系については,その準周期軌道から成る可積分領域と chaos 領域とが階
層構造を成しながら混在しており,その解析がさらに困難であることが知られている.
本研究においては,この標準写像へ可能な限りの単純化を施したモデルとして,区分的な
線型性を持つ写像を議論する.具体的には,まず 2 次元 torus 面を,正方形 [− 14 , 34 )×[0, 1)
の上下ならびに左右の辺がそれぞれつながっているものと考え,その上を 2 つの長方形に
分割する.そして,それぞれの上での場合分けにより
8»
–„ « „ «
1−K 1 x
0
>
>
+
mod 1
>
„ «
<
−K
1 y
0
x
→ »
–„ « „
«
y
>
1+K 1 x
−K/2
>
>
+
mod 1
:
K
1 y
−K/2
h 1 1”
where x ∈ − ,
4 4
h1 3”
where x ∈
,
4 4
(2)
と定義したものである.
我々の興味は,parameter K の変化に対応して, 相空間上の規則領域と chaos 領域の
棲み分けの様子がどのように変化するかということである.K がある条件を満たすとき,
torus 面上の一部の領域においては,写像が局所的に線型回転となる,すなわち可積分で
あることが示される.このときの回転角は K に対する連続性を持つ.そして,そのよう
な領域の形は,回転角が無理数であるときに楕円型となり,有理数であるときに多角形と
なる.一方,可積分領域の外側は,いろいろな長さを持つ周期軌道たちによって複雑に埋
め尽くされている.
しかし,座標系の特殊性と写像の区分線形性は,詳らかな分析を容易には許さない.こ
こでは写像の性質を知るために最も重要な,周期軌道に注目する.一般に可解でない写像
系の周期軌道を求めるには数値計算を用いる必要があるが,ここで用いる区分線形写像に
対しては,その algorithm を具体的に書き下すことができる.そこで発見できる軌道は誤
差を含むが,多くの場合,真の軌道と定性的に同一視できるような誤差の許容範囲が存在
する.本発表では,これまでに発見することができた周期軌道の分布や性質を紹介する.
(1-PM)-V-11
Einstein equation and the Shape of Universe
高エネルギー理論研究室
脇本佑紀
08163714
Sergei V. Ketov
(指導教員)
Einstein equation, the ten variants simultaneous non
linear partial differential equations for the elements of
metric tensor, Rµν −1/2Rgµν −Λgµν = 8πG/c4 Tµν , has
some time dependent exact solutions. This means that
our universe may be expanding or contracting and have
the beginning or the end. The theoretical prediction
was found by some physicists, Einstein himself, Willem
de Sitter, Alexander Alexandrovich Friedmann et al
in 1910s to 1920s. And the experiential fact that our
universe is expanding was confirmed by Edwin Powell
Hubble in 1929.
Einstein equation says that matters or energy interact with a spacetime which include them and vice versa.
Therefore producing the correct model matched with
observations is important to understand our universe
and it’s members.
Today, I explain about an elementary cosmology motivated by above topics in this presentation. First, I
am going to mention the theory of curved spacetime
and talk about Friedmann-Lemaˆıtre-Robertson-Walker
metric, 1⊕3 resolved time dependent homogeneous and
isotropic (constant curvature) metric. Next, I will consider each three variations in term of the time dependence and the shape. Finally, I compare the model and
our real universe to use some astronomical data.
図 1 They
are some
two dimensional spaces
of constant curvature,
closed, open, and flat.
(1-PM)-V-12
Einstein 方程式の厳密解と Black hole
高エネルギー理論研究室
村川卓也
08163282
Sergei V. Ketov
(指導教員)
「相対論とは何か?」答えを一言で言うと,
「座標変換した時に,形を変えない様な物理
法則を探す」理論だ.その為に物理量が,Faraday tensor や energy momentum tensor
といったものにまとめられる.最初にできた特殊相対論では,「等速度で運動するどんな
観測者からも,真空中の光速は一定値である」事を仮定する.この時,
• 時間軸や空間軸の間隔が,互いに等速度運動する,観測者の間でずれて見える
• 次式で定義される「4 元距離 ds」が,観測者に依らない (x, y, z は Cartesian 座標)
という,関係が成り立つ.
ds2 = c2 dt2 − dx2 − dy 2 − dz 2
(1)
他方,一般相対論は「加速運動する観測者が,物理量をどの様に観測するのか」と言う
事をまず考える.所が「その観測者に対して,等速度運動する複数の粒子」と,「等速度
運動する観測者に対して,重力を受け自由落下する複数の粒子」には,共通点がある.
「加速度が粒子に依らない様に,観測される」と言う事だ.(後者については古典力学を
考えると,md2 x/dt2 = m g であり,慣性質量と重力質量の比 m /m が粒子に依らな
い,と言う仮定が必要だ.) 又,「非慣性系の観測者の感じる慣性力が,適当な重力で打
ち消せる」,
「慣性力と重力は等価である」とも考えられる.この様な状況では (1) が変更
を受け,ds2 = gµν dxµ dxν となる (µ, ν を 0∼3 で足しあげる.但,Cartesian 座標では
dx0 = cdt, dx1 = dx, dx2 = dy, dx3 = dz である).
所で,gµν の表式を見ただけでは,
「慣性力によって (1) が変化したのか」
「重力によって
(1) が変化したのか」が判断できない.実は,gµν やその導関数の組合せで作られる,「曲
率 tensor」を使えば,判断できる.この tensor は物質や電磁場等の,外的要因があると変
化し,その様子を表すのが,Einstein 方程式 (外的要因を定めた時の,gµν の微分方程式)
である.厳密解として,一様等方宇宙を表す FLRW metric,自転宇宙を表す G¨
odel 解,
F.J.Tipler による,回転する円筒の近傍の時空を表す解等,様々な解が見つかっているが,
今回は Black hole を表す Schwarzschild 解,Reissner-Nordstr¨
om 解,Kerr-Newman 解
を扱う.
(1-PM)-VI-13
パイロクロア磁性体 Tb2+x Ti2−u O7+y の性質の制御
粒子ビーム物性研究室
谷口智洋
08163597
門脇広明
(指導教員)
Tb2 Ti2 O7 は正四面体が頂点を共有したネットワークを形成しているパイロクロア格子
をとり,幾何学的フラストレーションを有する磁性体である.この物質は µSR と中性子
非弾性散乱の実験から 0.1 K でも 90% 以上のスピンが揺らいでいることが報告されてい
て,スピン液体状態といえる基底状態が実現している物質として精力的に研究されている
[Ref.1,2].この基底状態はいったいどのような状態になっているのか,という問題に答え
るべく国内外で多くの研究が行われているが,Tb2 Ti2 O7 の実験結果にはサンプル依存性
が存在するために(e.g.,Fig.4 of [Ref.3]),研究グループ間で基底状態に関する意見がこれ
まで一致していない.この状況を打開するためにはサンプル依存性の原因を解明し,よく
コントロールされた Tb2 Ti2 O7 のサンプルを用いて実験を行う事が重要である.
そこで我々は,Tb と Ti の比率をずらし
た Tb2+x Ti2−x O7+y 多結晶粉末サンプル
%"$
を作製し,X 線散乱実験,低温比熱測定を
%"#
は比率の変化に対して線形な格子定数の変
化が見られた.また興味深い事に低温比熱
測定からは,図1に示すように比率がわず
./0123./0&42
行った.それらの結果,X 線散乱実験から
%"'
%"&
%
かに異なるだけで比熱のふるまいに大きな
!"$
変化が出ることがわかった.これは明らか
!"#
に Tb と Ti の比率の違いがサンプル依存
性に大きな影響を与える事を意味している.
現在は更に Tb と Ti の比率を変えた多結晶
*+,!"!!!!
*+-!"!!(!
!
!"(
%
%"(
1042
&
&"(
)
)"(
図 1 Tb2+x Ti2−x O7+y の低温比熱
サンプルの比熱を測定しており,その結果
をふまえて当日はサンプル依存性の原因について発表する.
[1] J.S. Gardner et al. Phys. Rev. Lett. 82, 1012 (1999), Phys. Rev. B 68, 180401 (2003).
[2] M.J.P. Gingras, Phys. Rev. B 62, 6496 (2000); M. Enjalran and M.J.P. Gingras, Phys.
Rev. B 70, 174426 (2004). [3] H. Takatsu et al. J. Phys.: Condens. Matter 24, 052201
(2012).
(1-PM)-VI-14
カゴメ格子反強磁性体 Mn3 Sn の異常 Hall 効果
粒子ビーム物性研究室
松山研
10263001
門脇広明
(指導教員)
Mn3 Sn(空間群 P63 /mmc) は磁性と導電性を担う Mn が ab 面上に図 1 のようなカ
ゴメ格子を形成する遍歴電子タイプのフラストレート格子磁性体である.この物質は
TN = 420K において 120◦ スピン構造の反強磁性秩序化を起こすが,同時に弱い強磁性を
誘発するユニークな磁性体である.これは,結晶構造に由来する Dzyaloshinsky-Moriya
相互作用と磁気異方性の大小関係に由来するもので,これまでに興味深く研究されてきた
[1]
(図 2).
今回,我々は導電性と磁性が深く関連する異常 Hall 効果や磁気抵抗に注目してこの物
質に焦点を当てた.近年,導電性を持つフラストレート磁性体において,スピンの幾何学
性による新たな異常 Hall 効果が注目されており,Mn3 Sn はその導電性と幾何学的フラス
トレーションから,この新たな異常 Hall 効果を研究する良い舞台であると考えられるた
めである.
本研究では Mn3 Sn の薄い板状 (0.5 × 2.0 × 0.1 mm3 ) の単結晶を用いて磁場を c 軸方
向へ印加しながら磁化測定 ・ Hall 抵抗測定 ・ 磁気抵抗測定を行った.その結果,磁化と
Hall 抵抗の磁場依存性の測定から,室温で磁化 ・ Hall 抵抗それぞれに大きく異なるヒス
テリシスがあることがわかった (図 3).従来型の Hall 効果は ρH = R0 B + RS M で表さ
れるが,今回の測定結果は従来型の式のみでは説明することができないため,新たな異常
Hall 効果が出現する可能性が示唆される.
発表ではヒステリシスの違いに加え,Hall 係数の温度 ・ 磁場依存性や磁化率の測定結
果などについても紹介しつつ,Mn3 Sn の異常な Hall 効果について議論する.
[1] S. Tomiyoshi and Y.Yamaguchi : J. Phys. Soc. Jpn. 51, 2478 (1982).
図 1 Mn3 Sn の結晶構造
図 2 Mn3 Sn のゼロ磁場中
の 120◦ スピン構造 [Ref.1]
図3
室温における
M と ρH のヒステリシス
(1-PM)-VI-15
導電性三角格子磁性体 PdCrO2 の大型単結晶の育成と
非磁性イオンのド―プ効果
粒子ビーム物性研究室
福本しおり
08163997
門脇広明
(指導教員)
幾何学フラストレーションを有する磁性体は,格子の幾何学的条件によりスピン対とし
ての安定配置を結晶全体で取ることが抑制されるため,新奇なスピンの秩序状態が実現
する舞台として精力的に研究されている [1].また,その中でも導電性を持つ物質系では,
フラストレート磁性スピンと伝導電子系が相互作用することで異常ホール効果の発現など
興味深い性質が期待されている [2].
今回,最も単純な幾何学的フラストレート格子である「二次元三角格子」の系で,かつ
導電性を示す非常に珍しい PdCrO2 という物質に着目し,中性子散乱実験等が可能にな
るような巨大単結晶の育成を目指して研究を進めた.また,磁性 Cr サイトに非磁性の Co
イオンをドープした時の変化を調べることを目的にドーピング効果の研究も行った.
単結晶の育成には NaCl をフラックスとしたフラックス法を採用した.フラックス法で
は,ある温度での溶解度よりも過剰な溶質を含む「過飽和状態」を作り出し,過飽和溶液
中で種結晶を巨大単結晶に成長させることが可能であろうと予想される.そこで,以下の
ような実験を試みた.
1. 温度を少しずつ下げながら溶解度の減少を利用し過飽和状態を作り出す.徐冷時間
を制御することにより大型の単結晶を育成する.
2. 温度勾配炉 (図 1) を用いて試料の育成空間に温度差をつけ,溶液の対流により低温
域に過飽和状態を作り出し単結晶を育成する.
また,Cr サイトに Co イオンをドープさせる際,まず
は原料となる LiCrO2 に対してドーピングを試み,1∼
50% まで置換することに成功した.X 線解析実験の結果,
Cr,Co のイオン半径の違いに伴う系統的な変化が観測さ
れた.発表は,これらの結果の詳細について報告する.
[1] C.Lacroix, P.Mendels, and F. Mila Introduction
to Frustrated Magnetism, (Springer-Verlag Berlin Heidelberg, 2011)
[2] H.Takatsu, Y.Maeno, Journal of Crystal Growth.
312, 23 (2010).
図1
温度勾配炉 模式図
(1-PM)-VI-16
BCS 理論を用いた有限系の量子相転移に関する話題
原子核理論研究室
町永大地
08163196
鈴木徹
(指導教員)
BCS 理論は,物性研究において超伝導を理解する上で重要な理論である.この理論は,
電子系でいえば,2 つのフェルミ粒子 (電子) がクーパー対を作って凝縮すると,超伝導
状態が形成されるというものである.この理論は原子核や極低温原子気体などの他のフェ
ルミ多体系にも応用することができる.大きな違いは,前者が実際上無限の系と見なせる
のに対し,後者は有限の大きさをもつことである.したがって前者,つまり通常の超伝導
では,全運動量がゼロでスピンが一重項の対が作られるが,後者では全角運動量がゼロの
フェルミ対が作られる.さらに重要なことに,エネルギー準位が無限系では連続的である
が,有限系では離散的である.このため温度ゼロの場合,前者ではわずかでも引力が働け
ば凝縮相に転移するが,後者では引力が弱ければ相転移は起きない.したがって温度ゼロ
で引力強度を次第に変化させることにより,凝縮相への量子相転移が実現できる.
BCS 基底状態からの励起にはエネルギーギャップが存在する.このエネルギーギャッ
プを調べることで,超伝導相への相転移を調べることができる.実は,極低温原子気体で
は,原子の密度や引力の強さを自由に変えることができるため,これを用いて,様々な条
件下での量子相転移現象を調べることができる.今回は現実の原子気体のような複雑な系
ではなく,モデル化した簡単な系のみ考えて解の特徴を検討する.
解くべきギャップ方程式は,以下のようになっている.(∆ はエネルギーギャップ,G
は引力の強さ,D は状態の縮退度である.)
∆=
1
GD
2
k
∆
Ek
(1)
ただし,右辺は系の離散的な一粒子状態 k についての和であり,Ek は一粒子エネルギー
εk および化学ポテンシャル λ を用いて
Ek =
(εk )2 + ∆2 ,
εk = εk − λ
(2)
とあらわされる.ここで ∆ = 0 の時は,(1) 式の両辺の ∆ を除いた式を解けばよい.こ
れは ∆ と λ の二つの変数が入っているが,全粒子数 2N に対する条件
2N = 粒子数演算子 =
k
(1 −
εk
)
Ek
との非線形連立方程式を解いて,∆, λ の値を求めることができる.
(3)
(1-PM)-VII-17
分子内包可能な単層カーボンナノチューブの
(11,10) 単一カイラリティ精製
ナノ物性 II 研究室
河合将利
07163034
柳和宏
(指導教員)
単層カーボンナノチューブ (SWCNT) はグラフェンシートを直径 1.0nm 程の円筒状に
巻いた物質である.また,その巻き方(カイラリティ)により,金属ナノチューブや半
導体ナノチューブが存在する.しかしながら合成時の SWCNT 試料には様々なカイラリ
ティが混在しており,固有の特性を発現させるためには高純度分離精製が必要不可欠で
ある.
近年,SWCNT の分離精製技術の発展により,高純度の金属型,半導体型の SWCNT を
得ることが可能となっている.また,(6,5)や(8,6)など特定の単一カイラリティ SWCNT
を得る分離精製方法もいくつか報告されている.しかしながら報告されている単一カイラ
リティ SWCNT は直径 1.0nm 程度のものに限られており,直径の大きな SWCNT の単
一カイラリティ試料は精製されていない.1.4nm 以上の直径の SWCNT の場合は様々な
分子を内包可能であるが,単一カイラリティ試料を得られていないことが,その物性の正
確な理解を妨げている.
そこで本研究では直径 1.4nm 以上の単一カイラ
リティ SWCNT を得ることを目的とし,密度勾配
超遠心分離法により SWCNT を分離精製すること
で,直径 1.44nm の(11,10)単一カイラリティの
試料を得ることに成功した.試料の分離精製は二
段階の手順でおこなった.まず密度勾配剤として
Iodixanol を用いて金属型と半導体型に SWCNT
の分離精製をおこない,次に得られた半導体型試
料に密度勾配剤として cesium chloride を用いた分
離精製をおこなう.この二つの手順を経ることに
よって,(11,10)単一カイラリティ SWCNT を得
ることに成功した(図 1)
.
更に,C60 を内包した SWCNT にこれら二つの
図 1
PL map of extracted
(11,10) sample
手順を施すことにより,C60 を内包した(11,10)単
一カイラリティが得られることも確認できおり,SWCNT の単一カイラリティピーポッ
トの試料を得ることが可能であることを明らかにした.
(1-PM)-VII-18
結晶状単層カーボンナノチューブ集合体の作製とその物性
ナノ物性 II 研究室
工藤光
08163300
柳和宏
(指導教員)
単層カーボンナノチューブ(SWCNT)は,グラフェンシートが直径約1 nm の円筒構
造となった物質であり,そのグラフェンシートの螺旋度(カイラリティ)により,半導
体 ・ 金属などの様々な電子特性を示す.近年になり,金属型 ・ 半導体型分離,更に単一
カイラリティ分離が可能となり,電子構造が一様な SWCNT 凝集体に対する研究がなさ
れつつある.しかし,現在のバッキーペーパー等の試料では,SWCNT 分子が無秩序に配
列しているため分子間の境界で電子が散乱され,電気伝導度を下げる要因となっている.
したがって,SWCNT を規則正しく配列させることが出来れば,より良い電気伝導性を示
すと考えられる.
そ こ で 本 研 究 で は SWCNT 分 子 を 規 則 正 し く 配 列 さ せ る こ と ,す な わ ち 結 晶
化 さ せ る こ と を 目 的 と し 実 験 を 行 っ た .実 験 手 段 と し て ,密 度 勾 配 超 遠 心 分 離 法
に よ り 得 ら れ た 高 純 度 の 単 一 カ イ ラ リ テ ィ( 6 ,5 )の SWCNT に ,構 造 解 析
の た め の タ ン パ ク 質 の 結 晶 化 に 用 い ら れ る 手 法 で あ る 蒸 気 拡 散 法 を 応 用 し た .条
件 の 最 適 化 に 試 行 錯 誤 し た 末 ,針 状 の 結 晶 を 得 る こ と に 世 界 で 初 め て 成 功 し た .
顕微ラマン分光で結晶試料の
評価を行った結果,結晶化前
後で Radial breathing mode
(RBM)に変化が見られ,結晶
化することによってカイラリ
ティの純度が向上しているこ
とが明らかとなった.さらに
G-バンドの強度と入射光の偏
光依存性の測定結果から,針
状結晶内で SWCNT 分子が
結晶の長軸方向に配向してい
ることを確認した.透過型電
子顕微鏡(TEM)での観測か
図1
らも SWCNT 分子が結晶の
ンドの様子.(c) 結晶状試料の写真,(d) Gバンドの
長軸に沿って配列しているこ
とが観測されている.
図1:結晶化前後の (a)RBM および (b) Gバ
偏光依存性,(e) 配向模式図
(2-AM)-VIII-19
カーボンナノチューブ(CNT)を用いた
電界効果トランジスタの作製
ナノ物性研究室
松原千広
08163773
真庭豊,中井祐介
(指導教員)
単層カーボンナノチューブ(SWCNT)はチューブ内に様々な分子を内包でき,強い幾
何学的な束縛効果によりバルクでは実現しない特異な物性を発現する.特に,チューブ内
に水分子を内包した水内包 SWCNT は温度を下げると内包した水が秩序化し,アイスナ
ノチューブ(Ice-NT)と呼ばれる氷ができる.Ice-NT は軸方向に電場をかけると内包さ
れた水分子のチェーンの向きが反転し,ステップ状の分極特性を示すと予想されている.
このような振る舞いは極微小の多値強誘電体メモリへの原理を示唆しているものと考えら
れるが,計算シミュレーションによる結果であり,実験的な裏付けは十分ではない.そこ
で本研究では,Ice-NT の分極の情報を得るために,CNT を用いた電界効果トランジスタ
(FET)を作製し,水雰囲気中での誘電特性を測定することを計画した.
本実験では,SiO2 (厚さ 500nm)被覆の Si 基板上に,密度勾配法により分離した半
導体 SWCNT を滴下し,Au 電極を蒸着する方法で CNT-FET を作製した.作製した
CNT-FET はプローブステーションと半導体パラメータ測定装置を用いて動作確認を
行った.その結果,CNT-FET の特性を表すグラフが得られた.ドレイン電流 ID のゲー
ト電圧 VG 依存性の測定結果を図1に,ドレイン電流 ID のドレイン ・ ソース間電圧 VDS
依存性の測定結果を図2に示す.今後はチューブ内に水を内包した CNT-FET の作製方
法を確立し,水雰囲気中の誘電特性を測定する予定である.
図1
VG − ID グラフ
図2
VDS − ID グラフ
(2-AM)-VIII-20
劈開法によるグラフェンの作製と電気特性の研究
ナノ物性 I 研究室
本田和也
08163970
真庭豊,中井祐介
(指導教員)
グラフェンは,炭素原子が蜂の巣格子状に組んだ単一原子層厚さの二次元結晶である.
このグラフェンシートを円筒状に丸めたり,積み重ねたりしたものは,単層カーボンナ
ノチューブやグラファイト(黒鉛)としてよく知られている.2004 年にグラファイトか
らの機械的剥離によりグラフェンを得ることが可能であることが示されて以来,その電
気 ・ 電子的,機械的性質など,その性質に驚異的な特徴があることが明らかになってき
た.2010 年にはグラフェンの研究がノーベル物理学賞を受賞し,現在さまざまな分野で
研究が急速に広がっている.
グラフェンの研究をするうえで,グラフェンの作製は必須である.今日,グラフェンの
作製方法は多種多様であるが,本実験では比較的簡単にグラフェンの作製が可能な劈開法
による作製と,作製したグラフェンの電気特性の研究を目的とした.
本実験で用いた劈開法とは,グラファイト粉末や高配向性熱分解黒鉛(HOPG)など
を,粘着テープで剥離を繰り返し,固体表面に転写してグラフェンを得る方法である.転
写した基板は SiO2 (厚さ 300 nm )被覆の Si 基板を用いた.この基板上に転写したグラ
フェンは,白色光の照射の下では反射光の色がグラフェンの厚さによって異なるので,光
学顕微鏡により層数の違いを確認することができる.しかし,目視だけでは層数評価とし
ては不十分なので,走査型プローブ顕微鏡(SPM)を用いて厚さを評価した.その結果,
転写したグラフェン膜の厚さとして,0.3∼0.4 nm を観測した.この値は,単一原子層厚
さの値であり,グラフェンができていることが確認できた.
次に,劈開法で作製した多層グラフェンに金を蒸着し,SPM の電流モードを用いて試
料にバイアス電圧をかけ,電流像を得た.また,I-V 特性を測定した.実験結果から,多
層グラフェンは金属的であると結論した.
図 1 SPM でのグラフェン像
図2
多層グラフェン上の IV 特性
(2-AM)-VIII-21
単層カーボンナノチューブによる電圧発生の研究
ナノ物性 I 研究室
新田千里
08163510
真庭豊,中井祐介
(指導教員)
単層カーボンナノチューブ (SWCNTs) は,グラフェンシート
を丸めて円筒状にしたナノ炭素材料である.強度や柔軟性が高
く,直径も1 nm 前後で他物質の内包により特異な物性も発見
されている.しかし未解明な物性も多く,SWCNTs における物
性の研究は,将来的に様々なデバイスの応用において役立つと考
えられる.そのひとつとして,2005 年に発表された Carbon Nanotube Flow Sensor[1]
中がある.SWCNTs を流体中におくと電圧が発生するというものでとても興味深い.そ
こで本研究では,文献 [1] の追実験を行い,流体中での電圧発生の起源を追求した.
本研究では,文献 [1] に則り,電極をつないだ SWCNTs を流体の流れの中に入れ電圧
を測定した (図 1).試料には Dips 法と,アーク放電法と呼ばれる方法により作成された
2 種類の SWCNTs を用いた.試料はまず,Thermal Gravimetric Analysis(TGA)によ
る焼成を行った.流体には水,エタノールを用いた.また,SWCNTs に対する熱の影響
を調べるために,Physical Property Measurement System(PPMS)を用いて SWCNTs
の Seebeck 係数の測定を行った.
実験結果として,測定によってばらつきはあるが,平均 0.03mV 程度の電圧が観測され
た.しかし,文献 [1] の報告 (図 1) に見られるような流速や流体の種類に依存した起電力
の発生は見られなかった.また,わずかな電圧発生の原因が不明なため実験方法を試行錯
誤する中で,流体の温度に依存する電圧の振る舞いが見出された.そこから,熱起電力に
よる電圧発生を疑い,Seebeck 係数について測定を行った.結果を図 2 に示す.
以上により本研究では,文献 [1] により
報告された,流体が流れることによって
電圧が発生するという現象は再現できな
かった.また,流体中で発生するわずかな
電圧は,電極の接点に生じる温度差が 1K
以下のときの熱起電力により十分説明で
図1
図2
きる.よって,流体がつくる温度差による
Seebeck 電圧であると結論した.
[1] Shankar Ghosh, et al. Science299,1042(2003)
(2-AM)-IX-22
次期 X 線天文衛星 Astro-H の SXT EM の地上性能評価
宇宙物理実験研究室
富川和紀
08163306
石田學
(指導教員)
X 線望遠鏡の持つ高い角分解能と集光力は X 線天文学に飛躍的な発展をもたらした.
高い角分解能は観測天体の位置 ・ 空間構造の把握に貢献し,集光力は検出器の小型化と
ともに S/N 比の向上を可能にした.
X 線はほとんどの物質に対し屈折率が 1 よりもわずかに小さいため,反射させるために
は非常に小さい角度で反射鏡に入射させる必要がある.そのため,X 線望遠鏡には回転放
物面鏡と回転双曲面鏡を組み合わせた Wolter I 型斜入射光学系が使われている.しかし
X 線が反射鏡に当たる面積は非常に小さいため,集光される X 線は極めて少ない.その
ため,反射鏡を同心円状に多重に積層した「多重薄板型」X 線望遠鏡が考案され,より多
くの X 線を集光できるようになった.
2007 年 7 月に打ち上げられた X 線天文衛星「す
ざく」には,厚さ 180µm の反射鏡を同心円状に
175 枚積層した「多重薄板型」X 線望遠鏡が搭載
されている.すざくの望遠鏡は焦点面において,
HPD(Half Power Diameter) が 1.8 分角の像の広
がりをもつ.
2013 年 度 打 ち 上 げ 予 定 の 次 期 X 線 天 文
衛星「Astro-H」に搭載される SXT(Soft-X-ray-
Telescope) は,すざく衛星と同じ「多重薄板型」X
線望遠鏡が採用されている.Astro-H では反射鏡
の枚数は 203 枚積層され重量は 40kg と重くなっ
たが,1kg あたりの有効面積は従来の SXT よりも
大きくなった.
図 1 Astro-H 完成予想図
我々は 2011 年秋に宇宙科学研究所の 30m ビー
ムラインを用いて SXT EM(Engineering Model) の性能評価を行った.その結果,HPD
は 1.27 分角を達成し,要求である 1.7 分角を大きく上回る結果となった.また,焦点距
離の正確な割り出しや,Quadrant の local な部分の HPD も測定し,そのばらつきを調
べた.
(2-AM)-IX-23
ホール素子を用いた 2 段式断熱消磁冷凍機(dADR)内部に
おける 3 軸の磁場測定
宇宙物理実験研究室
木村哲平
09263001
大橋隆哉
(指導教員)
現在我々の研究グループでは,電荷交換反応(イオンと中性物質の接近により,中性物
質中の電子がある確率でイオンへと移る現象)によって放射される X 線の検出を目指し
て,TES(Transition Edge Sensor)型マイクロカロリメータ,2 段式断熱消磁冷凍機(以
下 dADR)の開発 ・ 改良,及び動作試験等を行っている.
TES(Transition Edge Sensor)型マイクロカロリメータとは,温度計として超伝導体
(2 層薄膜)を使用し,超伝導遷移端という温度に対してとても敏感な抵抗変化を利用する
検出器である.これは極低温(∼100 mK)において高いエネルギー分解能(2009 年 5 月
現在で 2.9eV)を実現するもので,電荷交換反応による X 線放射の検出に対しても高い有
用性を持つ.
dADR とは,多段型磁気冷凍システムの技術実証を目的とした,小型可搬型冷凍システ
ムである.これは 2 段の断熱消磁冷凍を行うことにより 50 mK という極低温状態を実現
するもので,TES 型マイクロカロリメータの開発 ・ 改良には必要不可欠なものとなって
いる.
し か し ,2011 年 12 月 現 在 ま で の 実 験 で は ,
dADR による冷却試験を行っても,TES 型マイ
クロカロリメータが超伝導状態へと転移しないこ
とが分かっている.この理由として第一に考えら
れることが,装置内に存在する磁場の影響である.
2 層薄膜を使用する超伝導体の場合,磁場の存在に
よってその転移温度が下がってしまうためである.
本研究では,断熱消磁冷却時の dADR 内部にど
の程度の磁場が存在するのかを測定し,またそれ
が TES 型マイクロカロリメータの動作に影響を及
ぼし得る値なのかどうかの考察を行っている.
なお,磁場の測定にはホール素子を用いており,
図1
電荷交換反応による X 線
放射の模式図
予め室温(300K)・ 液体窒素温度(77K)・ 液体ヘ
リウム温度(4K)での較正試験を行うことで,その信頼性を検証するところから始めて
いる.
(2-AM)-IX-24
TES 型 X 線マイクロカロリメータ製作
宇宙物理実験研究室
鳥羽玲奈
08163294
大橋隆哉
(指導教員)
我々は,次世代小型 X 線天文衛星 DIOS(Diffuse
Intergalactic Oxygen Surveyor) への搭載を計画
している X 線 TES 型マイクロカロリメータの開
発を行っている. DIOS はダークバリオンの大半
を占めると考えられている WHIM と呼ばれる中
高温銀河間物質の観測を目標としており,約 1◦ の
高視野と ∆E=2eV という高いエネルギー分解能
が求められており,20×20(400pixel) のマイクロ
図1
DIOS
カロリメータの製作を目標としている.
TES 型 X 線マイクロカロリメータの製作にはパッドから素子までの配線と素子から
パッドまでの配線の間に絶縁膜をはさみ上下に重ねた積層配線状のものを使用している.
製作手順は大きく分け,1.Ti, Au 成膜,2.TESpixel 加工,3.Au 吸収体蒸着,4. メンブレ
ン構造形成の 4 つのプロセスがある.我々はその 1 つ 1 つのプロセスの確立,改善を行っ
ている.
中 で も 今 回 は 4. メ ン ブ レ ン 構 造 形 成 に お
け る 誘 導 結 合 プ ラ ズ マ(Inductively Coupled
Plasma:ICP)式 RIE 装置を用いたドライエッチ
ングの条件出しを重点的に行った.従来,メンブ
レン構造は KOH によるウェットエッチングで行
われていたが,KOH は Si だけでなく Al 配線や
TES も腐食させてしまうため,Si のみを彫り進め
ていくドライエッチング技術が求められている.
RIE 装置に組み込まれているレシピを用いて条件
出しを行っていき,その確立に成功した.そして
図 2 TES 加工後
4×4 の 16pixel 基板を用いて製作を行い,マイク
ロカロリメータの製作に成功した.
今後はさらに pixel 数を増やし 20×20 の 400pixel のカロリメータの実現,更なるエネ
ルギー分解能の向上が課題となっている.
(2-AM)-IX-25
MEMS X 線光学系による可視光測定実験
宇宙物理実験研究室
垣内巧也
08163371
大橋隆哉,江副祐一郎
(指導教員)
我々は,将来の X 線天文衛星への搭載に向けて,MEMS(Micro Electro Mechanical
Systems) 技術を用いた X 線望遠鏡の開発を行っている.宇宙からの X 線は地球大気に
よって吸収されてしまうため,人工衛星で観測する必要があり,軽量化が求められてい
る.MEMS 技術を用いることにより,超軽量かつ高角度分解能の X 線望遠鏡の製作が可
能である.
MEMS X 線光学系は,直径 100 mm,厚さ数百 µm のシリコン基板に,シリコンドラ
イエッチングを用いて µm スケールの微細な曲面穴構造を数千個開け,穴の側壁を鏡と
して利用する.しかし,ドライエッチングだけでは,X 線を反射させるために必要な側壁
の滑らかさが得られないため,アニールによってさらなる平滑化を行う.アニールとはガ
ス中で基板を温度に保ち,基板表面を均一化する熱処理プロセスである.
我々が開発している MEMS X 線光学系の完成を目指す上で,2 つの異なる曲率半径で
変形された光学系を組み合わせて,集光 ・ 結像させるアライメントシステムの構築は非
常に重要である.
本研究では Wolter I 型光学系に向けて 2 段目光学系の製作を行い,2 枚の光学系の組
み立て技術の確立を行った.1 段目光学系 ・ 2 段目光学系ともにデザインを新しくして,
我々が昨年度製作したアライメントシステムを用いて曲率半径の異なる 2 枚の光学系を組
み合わせた 2 段型光学系を製作することに成功 (図 1),さらに可視光による集光に成功し
た (図 2).
100 mm
図1
可視光アライメント完了後の光学系.
図2
アライメント完了後の光学系の全面
照射での可視光イメージ.
(2-AM)-IX-26
ASTRO-H 衛星搭載 SXS 波形処理システム PSP の開発
宇宙物理実験研究室
加藤千曲
08163157
石崎欣尚
(指導教員)
現在,2014 年打ち上げを目指し,日米欧の国際協力で X 線天文
衛星「ASTOR-H」の開発が進められている.衛星には 4 種類の
観測システム が搭載され,0.3 ∼ 600 keV という広いエネルギー
"#$%&'()*)+,-.)
SXS (Soft X-ray Spectrometer) が搭載され,0.3 ∼ 12 keV のエ
䠍䠎㼙
帯域を観測可能となる.その一つとして,精密軟 X 線分光装置
ネルギー領域を 7eV 以下という超高精度のエネルギー分解能を実
!"!
現することができる.これにより,銀河団成長や超新星残骸の膨
張速度の直接観測が可能となり,様々な宇宙の物理状態が解明で
きると期待されている.
図 1
ASTRO-
H 衛星
PSP (Pulse Shape Processor) とは,SXS のデジタル波形処理システムのことであり,
私はこの PSP の開発チームに所属している.PSP は主に FPGA を搭載した Mission
I/O (MIO) ボードと,CPU を搭載した SpaceCard ボードと呼ばれる 2 つの共通ボード
で構成されている.
今回私は,性能実証モデル (EM) を用いた性能評価試験を行い,MIO 2台同時接続時に
クロック同期機能が正常に動作しているかを検証した.また,並行して MIO - SpaceCard
間のデータ転送速度を測定を実施した.その結果,転送速度に関しては 7.5 Mbps,空き
時間が 97% と前モデルより大きく改善されていることが判明した.この測定では,計測
結果から,要求される転送速度を満たす最小のボード構成である,PSP 1 系統当たり 1
MIO + 2 SpaceCard ボードの構成で試験を行った.
今後,EM 品の完成しだい,実際に NASA の開発している XBox と実際のカロリメー
タ検出器とを繋いだ end-to-end の試験を実施予定であり,その試験結果に基づいて実際
の衛星に搭載されるフライト品 (FM) の設計を確立させていく予定である.
(2-AM)-X-27
P = ρ = 0(物質がない場合) と P = −ρ(宇宙項の場合) の
RW 計量
宇宙理論研究室
福島圭佑
08163537
政井邦昭
(指導教員)
アインシュタイン方程式は物質があると時空が変化するということを表しており,我々は
その時空という実在の舞台の中に住んでおり,その舞台は変化するが,物体はその時空の
中を測地線をかいて運動するという結論が得られる.今回は,大局的には宇宙全体は一
様 ・ 等方である観測系 (共動座標) が存在するとと仮定し(観測例としては WMAP 衛星
の 3K マイクロ波背景放射がある),一様等方を満たす計量は RW 計量と呼ばれ,これ以
外に一様 ・ 等方を満たす計量はない.今回はその共動座標から見た宇宙を考える.
そうすると,この共動座標から見ると,銀河団などの宇宙の構造を全体として一様等方
な連続体物質分布 (=完全流体エネルギー運動量テンソル) にすることができるこの仮定
のもとで宇宙全体にアインシュタイン方程式を応用し,アインシュタイン方程式を解く
と,2 成分のみが残り,それは 2 つの a(t) の微分方程式で表される.
この 2 つと状態方程式 P (ρ),k の値がわかれば,この方程式を a(t) として解くことが
できる.
今回調べることは,k = 0, 1, −1 と仮定し,それぞれの場合で P = ρ = 0 の場合
と P = −ρ の場合にこの方程式を解き,a(t) の値を求めて,グラフに表わした.また,
k = −1, P = ρ = 0 の等速膨張宇宙 (ミルン宇宙と呼ばれる) の角径距離,光度距離,ホ
ライズン距離,粒子の運動量を調べた.また,k = 0, 1, −1 の計量の関係式を求め,どの
ような時空が可能であるかを論じる.また WMAP ONLY の観測から宇宙パラメータが
正確にわかり,その宇宙パラメータの下で我々が実際住んでいると考えられる宇宙のおお
ざっぱな宇宙年齢も見積もり,上の宇宙と比較した.なお,講演では c = 1 とする.
(2-AM)-X-28
謎?の暗黒惑星 TrES-2b
宇宙理論研究室
菅野皇太
08163620
Kuni. Masai
(指導教員)
今回は,説明がつけられないとされている Hot-jupiter TrES-2b の極端に低い albedo
について検証する.
太陽系外惑星 (Extrasolar planet or Exoplanet ) の観測は,長い間非常に困難であっ
た.しかし近代では宇宙望遠鏡などの観測技術の著しい発達により,多くの Exoplanet
が観測されるようになった.惑星の発見方法は,主にドップラー偏移法とトランジット法
である.これらによって発見される惑星の殆どは,Hot-Jupiter と呼ばれるものである.
Hot-Jupiter と呼ばれる惑星は,木星型惑星 (gas giant) で恒星のすぐ近くを公転して
いる惑星のことを指す.一般的な Hot-Jupiter のモデルでは,Visible での albedo は低い
とされていて,上限値があるとされている.実際に観測される hot-Jupiter の Visible の
geometric albedo Ag も例外はあるものの,大半は低い数値となっている.しかし 2011
年 8 月に発表された論文によると,kepler の観測データ TrES-2b という惑星は,Kepler
のデータの解析から,Ag が極端に低く,1% 未満であることが判明した.これは Visible
を 99% 以上吸収し,カーボンナノチューブ黒体と同等,あるいはそれ以上の吸収率と
なる.過去 5 年間のリサーチによると,この惑星の公転半径恒星以下の公転半径である
Hot-Jupiter の Albedo は 10% が下限値となっている.ここでは,シンプル化したモデル
を用いて,TrES-2b の Albedo がどう奇妙であるのかを検証する.Hot-Jupiter の定義に
明確なものは存在しない.Hot-Jupiter は恒星のすぐそばで形成されたとは考えにくく,
frost line の領域で形成され,何らかの理由で恒星のすぐそばに移動したと考えられてい
る.Hot-Jupiter が一般的に低い albedo となるのは,主にミー散乱を引き起こす雲が形
成できず,さらにナトリウム D ラインなどの一価のアルカリ金属の吸収線が significant
な absorber となるからである.ここでは,Hot-Jupiter は恒星の近くを公転しているた
めに雲が形成できず,さらに炭素は CO の状態で存在している木星型惑星であると定義す
る.木星は内部構造ははっきりしていないがコアの周りに金属水素があり,その周りに液
体水素があり,さらに外側に大気があると考えられる.ここでの研究での結果から,のち
に Albedo を考えるには,大気の部分のみを考えればよいことが判明するであろう.木星
の大気は質量比で約 9 割が水素で約 1 割がヘリウムである.よってここで考える大気モ
デルは水素とヘリウム,そして significant な absorber として微量のナトリウムで構成さ
れているとし,大気による散乱と吸収 ・ 放出の過程を一次元モデルで考える.
(2-AM)-X-29
中性子星における Accretion Disks の構造
宇宙理論研究室
三浦有太
08163305
政井邦昭
(指導教員)
ブラックホールや中性子星,白色矮星のようなコンパクト星は,連星をなしていること
がある.コンパクト星は,非常に大きい質量により,もう一方の星からガスや塵を剥ぎ
取ろうとする.このようにして,コンパクト星が一方の星から剥ぎ取ったガスは,角運
動量を持っているため,真っ直ぐに落下することができず,らせん状に渦を巻きながら
コンパクト星へと落ち込んでいく.このときに,コンパクト星のまわりにできる disk を
Accretion Disk という.ガスの回転運動の遠心力と,コンパクト星による重力とがつり
合うように,disk が形成される.このとき,力のつり合いから
rΩ2 =
GM
,Ω =
r2
GM
r3
ここで Ω は回転の角振動数である.disk 中のガスの回転速度は,r に依存する差動回転と
なっている.このとき,となりのガスどうしと擦れ合い,その粘性によって,より内側の
速く回っているガスから,外側のガスへと角運動量を受け渡し,一つ内側へと落ち込む.
これを繰り返し,コンパクト星へと落下していく.また,このときの摩擦熱により,重力
エネルギーが熱エネルギーへ,そして熱エネルギーが放射へと変換される.
ここでは,コンパクト星を太陽質量を持った中性子星であると考え,そこに落ち込みな
がら形成される Accretion Disk の形を考える.はじめに,ガス圧と重力のつり合いから,
disk の厚さを考える.次に,放射圧と重力のつり合いから,disk の厚さを考える.最後
に,ガス圧と放射圧を両方組み入れたときの disk の形を考える.放射は,黒体放射を仮
定し,その場で冷却を行うものとする.
(2-PM)-XI-30
超高エネルギーニュートリノ検出器のための
電波反射における位相測定
高エネルギー実験研究室
矢野浩之
08163184
千葉雅美
(指導教員)
超高エネルギーニュートリノ(UHEν, E ≥ 1016 eV)のフラックスは大変低い
(1/day · km2 ) ので観測するには巨大検出媒質 (≥ 50 Gt) を必要とする.巨大検出媒質中
での UHEν 反応を検出する為にレーダー法を採用する.UHEν 反応点では媒質の温度が
上昇する.温度上昇に伴い媒質の屈折率が変化して,電波を反射させる.岩塩または氷充
填同軸管の開放端面に 2MeV,1mA から 3mA の電子ビームを 60 秒間照射し,435MHz
の送信波を同軸管へ送り反射電波を測定した.電子ビーム照射時における反射波の位相の
変化を測定した.反射率が 10−6 と微小な為,零位法を採用した.送信波の一部 a を受信
波 b と合成 (a + b = c) し,ビーム照射前に零出力 (c = 0) となるようにする.a を b の
振幅と等しく,a と b の位相差を π とし零出力となるように a を可変移相器と可変減衰器
で自動調整する.照射したときにも c = 0 を保つよう a の振幅と位相を自動調整しそれぞ
れの値を記録した.記録した a の位相から反射波の振幅を計算したところ,別途測定した
振幅の値とほぼ一致し,この手法が正しいことが確かめられた.
図2
図1
岩塩のビーム照射時における温度と位相
同軸管概図
図 1 は実験に用いられた同軸管である.同軸管には岩塩,あるいは氷が充填されている.
上部に電子ビームが入射し,媒質の温度が上昇する.図 2 に同軸管開放端面の温度と a の
位相を図示する.温度上昇と共に位相が減少していることは b の位相が減少していること
を意味する.同軸管開放端面付近の岩塩の温度上昇と共に屈折率が上昇し,同軸管開放端
付近での電波の伝搬速度が減少して位相が減少すると考えられる.
(2-PM)-XI-31
ポジトロニウムの 5 光子消滅反応の測定
高エネルギー実験研究室
松澤光司
08163873
千葉雅美
(指導教員)
UNI 検出器 (図 1) は 32 面体構造をしており,中心を向いた直径 3 インチ,長さ 4 イン
チの 30 個の NaI(Tl)γ 線カウンターで構成されている.
陽電子はリング状永久磁石を利用した収束機構により,22 Na 外部線源から UNI 中心部
へ導かれる.陽電子は UNI 中心部に設置された 0.1 mm 厚のプラスチックシンチレータ
を通過後,シリカエアロジェル標的で停止しポジトロニウムを生成する.プラスチックシ
ンチレータのヒット頻度は 2.1 kHz 程度である.プラスチックシンチレータと任意の 4 本
以上の同時ヒットした NaI(Tl) との 500 ns 以内の同時条件で PC にデータ収集される.
ポジトロニウムの消滅時間はプラスチックシンチレータと NaI(Tl) との時間差である.
各 γ 線のエネルギーは NaI(Tl) の光量により得られる.バックグラウンドを除去する為
に以下の選択を行った. 1) 直線状の 2 ヒットを排除, 2) 平面 3 ヒット以上を排除, 3) 各
γ 線のエネルギー 75keV < Eγ < 340 keV, 4) 2 本の γ 線のエネルギー和
keV, 544 keV <
Eγ , 5)5γ の運動量和
Eγ < 478
Pγ < 90 keV/c, 6)5γ の相互検出器時間のば
らつき ∆t < 5.2 ns, 7) ポジトロニウムの消滅時間 t > 10 ns. 5 ヒット 258 万事象のデー
タ (約 1108 日分) を解析した.図 2 に 5γ 事象の合計エネルギーを横軸にとった予備的な
結果を示す.5γ 事象を指数関数とガウス関数でフィットした.ガウス関数のピークエネ
ルギーはポジトロニウム質量 1022 keV/c と一致した.
図1
検出器 UNI の断面図
図 2 5γ の合計エネルギー分布
(2-PM)-XI-32
ガス増幅型光電子増倍管 (GASPMT) の開発
高エネルギー実験研究室
末吉賢伍
08163643
住吉孝行
(指導教員)
光電子増倍管(PMT)は光電効果により光子を電子に変換し,更に増倍することで
電気信号として読み出せるようにする高感度光検出器である.高エネルギー物理学,天
文学など様々な分野において広い用途で用いられる.一般的には光電効果により光子の
入射に応じて電子を発生させる光電陰極 (Photocathode),ダイノード (Dynode) と呼
ばれる二次電子増倍電極,陽極 (Anode) などで構成されるが,本研究で用いるガス増
幅型光電子増倍管 (GASPMT) では電子増倍にダイノードではなくガスを用いた増倍機
構が採用されている.ガスを用いた増倍を用いる利点は主に磁場中での使用にあり,ダ
イノードを用いた PMT では各ダイノードへ電子を導かねばならないため電子の軌道
が曲げられるような磁場中での動作は基本的に難しいが,GASPMT はガス中での電子
雪崩を用いて増倍するため一つ一つの電子の軌道にそれほど左右されず,雪崩の方向は
磁場よりもむしろ電場によって決まるのでこの弱点を克服することができる.本研究で
は今後の進展が期待され,また特に高エネルギー実験分野等において磁場中での光検出
という重要且つ必要不可欠である GASPMT の実用化に向け,実際に GASPMT を試
作し各種性能調査を行い,その結果を考察することにより GASPMT の改善を目指す.
増 幅 器 は
MICROMEGAS(MICROMEsh
GASeous detector) を 用 い た 二 段 構 造 を 主 に
採用し,光電面は可視光に感度のあるバイアル
カリ光電面か紫外光に感度のある CsI 光電面を
用いた.2枚ある Mesh を同一 Mesh にしたもの
と穴の位置が互い違いになるようにしたもの,2
段目 Mesh の穴の開口を変化させるなど様々な
GASPMT を試作した.それぞれについて各段へ
印加する電圧を変え,各電極の光照射時と遮光時
の電流量の変化を測定した.これにより構造や使
図 1 ガス中の電子雪崩増幅
用光電面等の違いによる Gain や,光電面の劣化
の原因ともなる Ion feedback の変化を導き出し,その要因を考察した.
(2-PM)-XI-33
光センサ用高電圧電源の開発と性能評価
高エネルギー実験研究室
山見仁美
08163875
角野秀一
(指導教員)
我々は Belle II 実験での新型粒子識別装置として,荷電粒子が輻射体のシリカエアロゲ
ルを通過する際に発生するチェレンコフ光を,位置感応型光検出器の Hybrid Avalanche
Photo Detector(HAPD) を用いてリングイメージとして捉え,粒子の識別を行う Aerogel
Ring Imaging Cherenkov Counter 検出器 (A-RICH) の開発を行っている.
HAPD は,光電面から放出された光電子を-7∼-8kV の電圧によって加速し内部の
Avalanche Photo Detector(APD) に衝突させ多数の電子 ・ 正孔対を作り,さらに電子
を APD 内で Avalanche 増幅させる光検出器である.したがって,HAPD に印加する電
圧は加速電圧 (HV 電圧) と Avalanche 増幅のための逆バイアス電圧 (Bias 電圧),さらに
電子線遮蔽用電圧 (Guard 電圧) である.A-RICH に使用する HAPD は,1 モジュール
あたり 144 チャンネルの信号読み出しを持ち,5mm × 5mm の分解能で光子入射位置を
測定できる.
HAPD で使用する電源装置として,HV ・ Bias モジュールを松定プレシジョンと共同
で開発を進めている.HV ・ Bias モジュールは TCP 通信により制御され,16bit の精度
で出力電圧の設定,12bit の精度で出力電圧と出力電流のモニター,0∼99 秒で電圧上昇 ・
下降の時間設定が可能である.
本研究では HV ・ Bias モジュールの性能
評価として,設定精度などの基本性能や長
期安定性,HAPD に接続してのノイズの評
価を行い,これまで HAPD のテスト用に使
用してきた CAEN 社製の電源装置との比
較を行った.また,松定プレシジョン社製
の HV ・ Bias モジュールを用いて HAPD
から実際に光を検出できる事を確認した.
本発表では,HAPD 用 HV・Bias モジュー
ルの性能評価の詳細について報告を行う.
図1
HAPD の概念図
(2-PM)-XI-34
インターフェースを用いた CAMAC データ収集システムの
開発
高エネルギー実験研究室
田島俊英
08163348
汲田哲郎
(指導教員)
CAMAC とは素粒子 ・ 原子核実験において用いられる,データ収集装置の一つの規格
のことである.1970 年前後に採用された規格ではあるが現在でも素粒子 ・ 原子核実験の
測定で用いられている.
CAMAC は電源供給路とデータバスを持つクレートに,電子回路モジュールを挿入す
る構造で,コンピュータとのデータ転送はクレートコントローラというモジュールが受け
持つ,PC とクレートコントローラをつなぐデータ転送路には,通常 PCI バスと呼ばれる
インターフェースが用いられているが,小型デスクトップや,ノート PC 等は PCI を搭
載しておらず,大型デスクトップ PC でも徐々に搭載されなくなってきている.
そこで,この問題を解決する為に CC/USB というアダプターを用いた.CC/USB は
クレートコントローラに接続する装置で,東洋テクニカによって開発され, ドライバーは
KEK オンライングループによって開発された.これを介することによって PC とクレー
トコントローラ間を USB を用いて接続することが可能である.現在 USB は標準的にど
の PC にも搭載されているので,PCI バスを使用する場合とは違い,専用の PC を準備し
なくてもデータ収集が可能になる.
し か し ,CC/USB ド ラ イ
バーは Linux カーネル 2.4.0
用に開発されており,現在では
開発は停止してしまっている.
そのため,最新のカーネルで
使用する為にはドライバーの
改良が必要である.
本 発 表 で は ,カ ー ネ ル
図 1 CC/USB を用いたデータ収集システム
2.6.38 の為の CC/USB ドラ
イバーの改良と,それを可視的に操作するための JAVA による GUI の開発,さらにシス
テム全体の通信速度等のパフォーマンステストについて報告する.
(2-PM)-XII-35
磁性体接合系のスピン波の伝播
凝縮系理論 多々良研究室
佐々木優太
08163120
多々良源
(指導教員)
近年,device への応用を視野にいれたスピン波の研究が実験的にも理論的にも多く行
われている.このためスピン波の物理学的な研究は急務であるといえる.
スピン波とは,磁性体中のスピンの集団的歳差運動で,歳差運動の位相が伝わっていく
(図 1).異なる磁性体の境界面において,強磁性的にスピンが相互作用するとおく.境界
を挟んだスピンの片方が歳差運動をしていれば,もう片方も相互作用によって歳差運動を
し始めるから,異なる磁性体間でスピン波は伝播するはずである.過去に,光学的な近似
(WKB 近似)を用いて,スピン波が異なる強磁性体間でスネルの法則に従って伝播する
ことが示されている [1].
今回は,ハイゼンベルグモデルを用い微視的なアプローチから,異なる磁性体間を伝播
するスピン波が,スネルの法則に従うことを報告する.それとともに,今回の結果ではス
ピン波の軌道は外部磁場によってもコントロールできることがわかった.光学的にスネル
の法則は分光の原理なので,今結果は新しく外部磁場によってスピン波を各モードに分光
できる可能性があることを示している (図 2).
図1
強磁性体中のスピン波 各スピンが歳差運動しているのがわかる
図2
スピン波の prism になっている
[1]Yu.I.Gorobets tech phys vol 43,num 2 (1998)
(2-PM)-XII-36
強磁性体金属における メタマテリアルの研究
凝縮系理論 多々良研究室
西島みゆき
09163013
多々良源
(指導教員)
メ タ マ テ リ ア ル は こ こ 10 年 で 急 速 に 発 展 し て き
た 分 野 で あ る .メ タ マ テ リ ア ル と は そ も そ も「 人 間
の 手 で 作 ら れ た 物 質 」と い う 意 味 で あ る が ,そ の 中
に「 負 の 屈 折 率 を 持 つ 物 質 」と い う も の が あ り ,電
磁 メ タ マ テ リ ア ル と 呼 ば れ た り す る .屈 折 率 は 誘 電
率 と 透 磁 率 の 積 の 平 方 根 で 表 さ れ る た め ,屈 折 率 は
正 ま た は 負 の 実 数 に な る .負 の 実 数 の と き ,こ れ を
負 の 屈 折 率 と 呼 ぶ .こ の と き 入 射 し た 光 は 通 常 の 進
行 方 向 と は 逆 に 進 む (図 1).最 初 に 負 の 屈 折 率 を 提
唱 し た の は 1968 年 [1],ロ シ ア の V.G.Veselago で あ
図1
電磁メタマテリアル
に入射した光は通常と逆に
進む
る.当時は不可能とされ忘れ去られていたが,2000 年
に サ ブ ミ リ 波 の 電 磁 メ タ マ テ リ ア ル が 発 表 さ れ ,一 躍 研 究 対 象 と し て 広 ま っ た .
メタマテリアルはさまざまな分野で応用が期待されてい
る.最近では音波の集音限界を今よりはるかに短波長にで
きるスーパーレンズが発表され,高精度な超音波診断を行っ
たり精度の高い非破壊検査ができると言われている.その
他に,医療・通信・軍事的応用など期待は高い.一方,最初
の登場以来成功してきた電磁メタマテリアルはすべて「入
射波長より小さい微小金属」を規則正しく並べた構造体で
ある (図 2).負の屈折率のためには誘電率と透磁率を両方
同時に負にする必要があるが,透磁率を負にするのが難し
いことが原因である.そのため今日の技術ではマイクロ波
までという波長限界があり,可視光 ・ 紫外線のような短波
長の電磁メタマテリアルは実現できていない.
そこで本研究では負の透磁率の実現をさらに短波長へ広
図 2 電磁メタマテリアル
げる方法を探す [2].
[1]V.G. Veselago Sov. Phys. Usp. 10 509(1968)
[2]V.G. Veselago Sov. Phys. Sld. 8 2290(1967)
(2-PM)-XII-37
一次元放射対流モデルを用いた
大気の鉛直方向の温度分布に関する考察
凝縮系理論研究室
小関麻真
08163028
大塚博巳
(指導教員)
コ ン ピ ュ ー タ の 発 達 に 伴 い ,気 象 の 長 期 予 報 が 活 発 に 行 わ れ る よ う に な っ て い
る.そこでは信頼できる予報を可能とする様々な大気の大循環モデルが考案されて
おり,地球温暖化現象などの重要な結果が
報告されている.大循環モデルはその前提
として,大気の鉛直方向の温度分布を精密
に計算できる必要があるが,この問題に対
して眞鍋らは 1964 年に所謂1次元放射対流
モデルを提案している.同モデルには,大
気中の吸収ガス(水蒸気,二酸化炭素,オゾ
ン)の効果,雲の役割に加え,地球表面から
対流圏に向けての熱の対流効果が含まれて
おり,大気の鉛直方向の温度分布が,微分方
程式の定常解として得られるようモデリン
グされている.図 1 は,同モデルの数値計
算結果として得られた大気の鉛直方向の温
度分布と米国標準大気のデータとを比較し
たものであり,良い一致を見せていることが
わかる.発表会では Manabe and Strickler
(1964) の論文をレビューしながら,特に3
種類の吸収ガスの取り扱いなどに焦点をあ
てて説明を行いたい.
図1
一次元放射対流モデルで求められ
た大気の鉛直方向の温度分布と米国標準
大気データとの比較.縦軸は気圧,横軸
は温度.
参考文献
1. 「一般気象学」小倉義光, 東京大学出版会, 1999.
2. 「大気と放射過程」会田勝, 東京堂出版, 1982.
3. 「気象の数値シミュレーション」時岡達志ら, 東京大学出版会, 1993.
4. Manabe, S. and Strickler, R.F. 1964. Thermal equilibrium of the atmosphere
with a convective adjustment, J. Atomos. Sci.21, 361-385.
5. 「大気放射学の基礎」浅野正二, 朝倉書店, 2010.
(2-PM)-XII-38
二酸化アクチノイドの強束縛近似モデル
凝縮系理論研究室
長谷川裕
08163553
堀田貴嗣
(指導教員)
アクチノイド化合物は,核燃料として研究されてきた一方で,超伝導や磁性などの様々
な現象の舞台となっている.アクチノイドやその化合物の性質を特徴づけているものは,
アクチノイドの持つ 5f 電子であると考えられている.中でも,二酸化ネプツニウムは八
極子の秩序相の存在が指摘されている.先行研究によると,ネプツニウムイオンと酸素イ
オンの間の跳び移り積分のパラメータのうち,(pfπ)が小さいときに,八極子秩序が
現れると考えられている.[1] そこで,電子が原子に強く束縛されているとする強束縛近
似を用いて二酸化アクチノイドのバンド構造を計算し,相対論的バンド計算の結果と比較
することにより,(pfπ)の値を見積もることにした.二酸化アクチノイドは,図 1 の
ような蛍石構造を形成しており,単位胞あたり,1 つのアクチノイドイオンと 2 つの酸素
イオンが含まれる.また,アクチノイドイオンが面心立方格子を形作るように並び,アク
チノイド原子の周りを 8 つの酸素イオンが取り囲むような形となっている.
バンド構造を求める
にあたって,アクチノ
イドの f 電子同士間の
跳び移り積分や結晶場
ポテンシャル,スピン
軌道相互作用,酸素の
p 電子同士間の飛び移
り積分,f 電子と p 電
子間の跳び移り積分を
考えてハミルトニアン
を構成し,それを対角
化することによって強
束縛近似のバンド構造
を決定した.それを相
対論的バンド計算の結
図1
二酸化アクチノイドの結晶構造
果と比較し,跳び移り
積分の値を検討した結果を報告する.
[1] K.Kubo and T.Hotta, Phys. Rev. B 72, 132411 (2005)
(2-PM)-XIII-39
STM による β -(BEDT-TTF)(TCNQ) の
表面電子状態の観測
ESR 物性研究室
石川弦
08163273
溝口憲治
(指導教員)
β -(BEDT-TTF)(TCNQ)(bisethylendithio-tetrathiafulvalene)(tetracyanoquinodimetane)は,BEDT-TTF 分子(以下,ET と略す)をドナー,TCNQ をアクセプター
とした有機電荷移動錯体である.ET,TCNQ ともに非金属元素から成り(図 1),各分
子一枚あたり約 0.5 個の電荷移動度があることが分かっている.この物質は二次元的導電
性を持つ ET のシートと一次元鎖の TCNQ による結晶構造の違いから幾つかのタイプ
が存在する.本実験では,ET,TCNQ 両分子の分子平面が互いに平行な分子構造をして
いる,β”型の測定を試みた.図 2 はその結晶構造である.また,測定した試料の大きさ
は 5 mm × 1 mm 程度で,割れやすいので扱いに注意が必要である.
STM(scanning tunneling microscope : 走査型トンネル顕微鏡)は表面の構造を原子
レベルで画像化(図 3)する装置である.今回の実験は室温,空気中で行った.室温での
測定では,数ナノスケール四方のイメージに装置の熱ドリフトが大きく効くため,画像の
ドリフト補正を要する.
本研究では,再現性のある STM イメージの観測による,室温での試料表面の電荷分布
状態の解析を目的とした.解析は,得られた STM イメージに基づき,観測している結晶
面の帰属をし,次に,得られた表面のイメージを報告されている内部結晶構造と比較して
いく.
図1
分子構造
図2
結晶構造 (a-b 面)
図 3 STM 像(一辺 3.54 nm)
(2-PM)-XIII-40
HOPG 基板上における Zn-DNA の STM による可視化
ESR 物性研究室
光山遼
08163820
溝口憲治
(指導教員)
DNA は生物の遺伝情報を担う物質で二本の鎖による二重螺旋構造を持った高分子であ
る.主に医学や生命科学の分野で研究が行われているが,その特徴的な構造からナノエレ
クトロニクスの新素材にもなり得ると考えられ,物性面の研究としても興味を持たれて
いる. 本グループでは,Natural-DNA 及び Metal-DNA を様々な方法を用いて研究を
行っている.そして SQUID や ESR 等を用いたこれまでの実験結果から,金属イオンを
導入した DNA は二重螺旋構造の中心軸に金属イオンが一次元的に配位していると結論づ
けており,図 1 のようなモデルになると考えている. 本研究では,このモデルのよう
な構造を直接的に観測するために STM,AFM を用いて実験を行っている.これまでに
2 人の先輩がこの研究を進めてきて,Natural-DNA 及び Metal-DNA の二重螺旋がほど
けたはしご構造(図 2)の観測に成功している.ここで得られた画像は DNA や塩基間の
幅を測ることによって確かなものであると支持される.しかし DNA は試料作製の際に絡
まりやすく,1組の DNA をほどけた状態で観測することは非常に困難で,これまでに取
れたデータの数はまだ少ない.私の研究は,これらの成果をより確かなものにするため
に,先輩が行ってきたのと同様の試料作製方法と測定方法で実験を進めることである.導
入する金属についてはこれまでの Mn,Co とは違う Zn を用いた.Zn-DNA は他の2つ
の Metal-DNA とは違う物性を持つという報告がされており大変興味深い.この実験結果
について議論する.
図1
図2
(2-PM)-XIV-41
静電型イオン蓄積リングを用いた C−
10 のレーザー合流実験
原子物理実験研究室
駒倉健一
08163126
田沼肇
(指導教員)
分子の性質を支配する内部エネルギー(= 温度)は古くから活発に研究がされてきた
が,分子の蓄積,冷却技術などの問題から詳細な研究は困難であった.そこで我々のグ
ループでは 10−9 Pa 程度の超高真空に保たれた蓄積リングを用いて,入射したイオンを
数秒間蓄積し,放射冷却による内部エネルギーの変化過程について研究を進めている.
炭素クラスター Cn の構造は n = 2 - 9 では直鎖状のみであるが,n ≥ 10 では直鎖状
だけでなく環状を形成するため,C−
10 の蓄積および波長可変パルスレーザーとの合流実験
を行った.
レーザー脱離イオン化法によりグラファイトから炭素クラスター負イオンを生成し,
15 keV に加速して蓄積リングに入射した.その後,質量による周回周期の違いを利用し,
パルス電場を印加して C−
10 以外の成分を除去した.周回イオンに対して波長可変パルス
レーザーを合流させた.レーザーの光子を吸収しイオンの内部エネルギーが電子親和力を
超えると,電子脱離を起こす.それにより生成した中性粒子の収量を測定した.
図 1 に蓄積時間を変化させてレーザーを
照射したときの中性粒子収量のレーザーパ
ワー依存性を示す.レーザーパワー依存性
から電子脱離に必要な光子数を見積もるこ
とができる.傾きが 1 である点線(吸収光
子数 1 に対応)との比較から,測定を行っ
た 3 つの蓄積時間では 1 光子吸収により
中性粒子が生成していると考えられる.使
用したレーザー波長は 620 nm であり,そ
のエネルギー(2 eV)は C−
10 の電子親和力
(4.5 eV)よりも小さいため,3 つの蓄積時
間ではイオンの内部エネルギーは高いと考
えられる.
図1
C−
10 からの中性粒子収量のレー
ザーパワー依存性.
(2-PM)-XIV-42
太陽風多価イオンの電荷交換反応による軟 X 線測定
原子物理実験研究室
島谷紘史
08163609
田沼肇
(指導教員)
1994 年,X 線天文衛星 ROSAT によって軟 X 線放射に関する全天地図が作成され, そ
の際に背景放射と考えられる領域から短期間で強度変化する軟 X 線が発見された. 今日
では, この現象は太陽風多価イオン (Cq+ , Nq+ , Oq+ など) と地球近傍や太陽系内の中性
粒子 (H, He など) との電荷交換反応によるものであることが判明している. これは, 多価
イオンが中性粒子から電子を捕獲する反応である. すざくなどの X 線天文衛星で観測され
た電荷交換反応による輝線に関してより詳細な解析を行うには, 電荷交換断面積や発光断
面積の値が必要である. 本研究では宇宙空間と同じ条件下で電荷交換反応による軟 X 線発
光を測定し, 発光断面積を求めた.
O8+ イオンを 14.25 GHz 電子サイクロトロン共鳴型イオン源で生成し,10 kV の電位
差で引き出し, 磁場により価数選別をした. その後, 衝突セルに導入した H2 , He, CH4 ガ
スとイオン衝突エネルギー 48-80 keV で衝突させた. 電荷交換反応による軟 X 線はビー
ムに対して 54.736°の方向からシリコンドリフト型半導体検出器で観測した.
図 1 は, 衝突エネルギー 80 keV の O8+
と He との衝突において観測された発光ス
ペクトルである. 一電子捕獲した O7+ から
の発光については各状態からの発光ゴとに
分離することができた. このスペクトルで
は,2p, 3p, 4p, 5p 状態, および衝突の際に
二電子捕獲によって生成した O6+ の 1s2p
状態から基底状態への発光が観測された. 原
子軌道緊密結合法による理論計算の結果で
は主量子数 n = 4 への捕獲が主要である.
しかし, 幾つもの遷移を経て低い状態へ落ち
る, カスケードにより 2p 状態へ遷移する.
そのため, 2p 状態からの発光が最も強く観
測されることが判った.
図1
図 1 : 衝突エネルギー 80 keV に
おける O8+ - He 発光スぺクトル
平成 23 年度卒業研究発表会 プログラム
首都大学東京
都市教養学部都市教養学科理工学系物理学コース
3月1日 10:00∼16:20
3月2日 10:00∼16:40
✓
✒
於 11 号館 204 号室
研究室、コード、時間、座長対応表 (一日目)
光物性
I
10:00∼10:20
M1 鈴木良輔
電子物性
II
10:30∼11:00
M1 國利洸貴
素粒子理論
III
11:10∼11:50
M1 小原怜
非線形物理
IV
14:00∼14:20
M2 原田浩充
高エネルギー理論
V
14:30∼14:50
M2 道明源太
粒子ビーム物性
VI
15:00∼15:30
M1 後藤和基
原子核理論
VII
15:40∼15:50
M2 渡邊康祐
ナノ物性 II
VIII
16:00∼16:20
M1 五十嵐透
コード・発表者・題目一覧
(1-AM)-I-0
小岩井貴瑛
(1-AM)-I-1
山田翔太
光電子分光実験におけるフェルミエッジの測定シミュレーション
(1-AM)-II-2
増田隼人
カゴ状化合物 SmAu3 Al7 の単結晶育成と物性測定
(1-AM)-II-3
小野修平
低温における微小試料の高精度熱電能測定装置の開発
(1-AM)-II-4
西田容平
カゴ状化合物 TmTr2 Al20 (Tr=Ti,V) の単結晶育成と物性測定
✏
✑
高純度金属型極細カーボンナノチューブ試料作製
(1-AM)-III-5
飯島周多郎
WIMP 星の構造
(1-AM)-III-6
加藤広樹
WIMP 星の構造
(1-AM)-III-7
藤本哲朗
宇宙のインフレーション
(1-AM)-III-8
野口晃
ヒッグス粒子とは何か
(1-PM)-IV-9
前田郁実
3 次元 Euclid 空間におけるガラス動力学の Lyapunov-mode 解析
(1-PM)-IV-10
青木 和輝
(1-PM)-V-11
脇本佑紀
Einstein equation and the Shape of Universe
(1-PM)-V-12
村川卓也
Einstein 方程式の厳密解と Black hole
(1-PM)-VI-13
谷口智洋
パイロクロア磁性体 Tb2+x Ti2−u O7+y の性質の制御
(1-PM)-VI-14
松山研
(1-PM)-VI-15
福本しおり
2 次元 torus 面の区分線型保測写像における周期軌道の分析
カゴメ格子反強磁性体 Mn3 Sn の異常 Hall 効果
導電性三角格子磁性体 PdCrO2 の大型単結晶の育成と非磁性イオンのド―プ効果
(1-PM)-VII-16
町永大地
BCS 理論を用いた有限系の量子相転移に関する話題
(1-PM)-VIII-17
河合将利
分子内包可能な単層カーボンナノチューブの (11,10) 単一カイラリティ精製
(1-PM)-VIII-18
工藤光
結晶状単層カーボンナノチューブ集合体の作製とその物性
✓
✒
研究室、コード、時間、座長対応表 (二日目)
ナノ物性 I
IX
10:00∼10:30
M1 山田健介
宇宙実験
X
10:40∼11:30
M1 小川智弘
宇宙理論
XI
11:40∼12:10
M1 山岸豊
高エネルギー実験
XII
14:00∼14:50
M2 下島すみれ
凝縮系理論
XIII
15:00∼15:40
M1 高橋宏明
ESR 物性
XIV
15:50∼16:10
M1 粂田翼
原子物理実験
XV
16:20∼16:40
M1 伊藤源
コード・発表者・題目一覧
✏
✑
(2-AM)-IX-19
松原千広
カーボンナノチューブ(CNT)を用いた電界効果トランジスタの作製
(2-AM)-IX-20
本田和也
劈開法によるグラフェンの作製と電気特性の研究
(2-AM)-IX-21
新田千里
単層カーボンナノチューブによる電圧発生の研究
(2-AM)-X-22
富川 和紀
(2-AM)-X-23
木村哲平
ホール素子を用いた 2 段式断熱消磁冷凍機(dADR)内部における 3 軸の磁場測定
(2-AM)-X-24
鳥羽玲奈
TES 型X線マイクロカロリメータ製作
(2-AM)-X-25
垣内巧也
MEMS X 線光学系による可視光測定実験
(2-AM)-X-26
加藤 千曲
(2-AM)-XI-27
福島圭佑
(2-AM)-XI-28
菅野皇太
謎?の暗黒惑星 TrES-2b
(2-AM)-XI-29
三浦有太
中性子星における Accretion Disks の構造
(2-PM)-XII-30
矢野浩之
超高エネルギーニュートリノ検出器のための電波反射における位相測定
(2-PM)-XII-31
松澤光司
ポジトロニウムの 5 光子消滅反応の測定
(2-PM)-XII-32
末吉賢伍
ガス増幅型光電子増倍管 (GASPMT) の開発
(2-PM)-XII-33
山見仁美
光センサ用高電圧電源の開発と性能評価
(2-PM)-XII-34
田島俊英
インターフェースを用いた CAMAC データ収集システムの開発
次期 X 線天文衛星 Astro-H の SXT EM の地上性能評価
ASTRO-H 衛星搭載 SXS 波形処理システム PSP の開発
P = ρ = 0(物質がない場合) と P = −ρ(宇宙項の場合) の RW 計量
(2-PM)-XIII-35
佐々木優太
磁性体接合系のスピン波の伝播
(2-PM)-XIII-36
西島みゆき
強磁性体金属における メタマテリアルの研究
(2-PM)-XIII-37
小関麻真
一次元放射対流モデルを用いた大気の鉛直方向の温度分布に関する考察
(2-PM)-XIII-38
長谷川裕
二酸化アクチノイドの強束縛近似モデル
(2-PM)-XIV-39
石川弦
STM による β -(BEDT-TTF)(TCNQ) の表面電子状態の観測
光山遼
HOPG 基板上における Zn − DNA の STM による可視化
(2-PM)-XV-41
駒倉 健一
静電型イオン蓄積リングを用いた C−
10 のレーザー合流実験
(2-PM)-XV-42
島谷紘史
(2-PM)-XIV-40
太陽風多価イオンの電荷交換反応による軟 X 線測定