当日配布資料

ホームネットワーク機器の直
感操作を可能とする入力方式
研究者:東京工業大学 理工学研究科
像情報工学研究施設
熊澤 逸夫 教授
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◆従来技術とその問題点
現在使われているリモコンは小さなボタンが多数並んでいる。
キーボードやマウスはリビングでの使用に適さない。
既に実用化されている触覚フィードバック技術としては、
SensAble Technologies社のPHANToMやイマージョン社の
車載入力デバイス等(アルプス電気がハプティック・コマンダとし
て製品化)があるが、
機構が大掛かりとなり、信頼性が低く、高コストで、
消費電力が大きく、携帯困難で、
家庭内の日常的使用には適さない、
等の問題がある。これらの問題点を克服する小型の振動源を
触覚フィードバックとして利用するスイッチやタッチパッドがアル
プス電気やソニーから発売されているが、振動を利用するだけ
では、表現力が不足し、多様な情報を入力できない。
2
◆新技術の特徴・従来技術との比較
• 従来技術の問題点であった、「小型軽量化の困難さ」「信頼
性の低さ」「電力消費量の大きさ」「コストの高さ」「表現力の
欠如」を改良することが可能となる。
• 特に従来はコストと消費電力が高かったため、家電のリモコ
ンへの搭載など想像もつかなかった「触覚フィードバック技
術」が、新技術によれば、身辺のあらゆる入力デバイスに搭
載可能となる。
• 人の運動を効率的に変換して、触覚フィードバックの駆動源
として用いることにより、 「触覚フィードバックデバイス」の
モータやアクチュエータを省き、 画期的な低コスト化、高信頼
化、小型・軽量化を見込むことができる。
• 本技術により、振動だけでなく、凹凸感、反力を用い、指の
ジェスチャーで入力情報を指定することで、表現力を増大で
きる。
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◆期待される用途
• 触覚フィードバックを導入して安全性向上が
見込まれる分野:車載入力デバイス、工場の
制御パネル、医療機器の操作パネル、航空
機の操作パネル。
• 視覚、聴覚障害者への支援:IT社会への適
応支援機器、コミュニケーション用機器。
• 携帯機器の入力デバイス、ホームネットワー
クのユーザインターフェイス。
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◆マッチングが想定される業界
想定されるユーザ
携帯電話、カーナビ、家電機器、FA機器、福祉機器等、各種
製造メーカ、ユーザインターフェイスのソフトウェア開発メーカ
等。
想定される市場規模(2003年米ガートナー社、野村総合研究所、他 )
カテゴリ
携帯電話
PDA
ゲーム機
カーナビゲーション
デジタルカメラ
薄型TV/DVDレコーダー
販売台数
5.2億台
1,500万台
5,800万台
800万台
4,300万台
1,800万台
成長率
5.2%
18%
16%
15%
15%
40%
起業予定年
(2008年)の想定
シェア2%
単価120円
売上20億円
5
◆実用化に向けた課題
• 現在、各種ハードウェアの試作を通じて最適な機構を模索し
ている段階。
• 今後、JSTからの支援を受ける3年間に最低100の試作を
行い、大学にて別途設立を計画している、「ユニバーサルデ
ザイン支援、ユーザビリティー評価のためのセンター」におい
て多数の学生達の協力を得ながら、操作性に関する実験
データを取得し、最適な入力デバイス(ハードウェア)を絞り
込む予定。
• マウスと連携の取れる基本ソフトウェアとしてウィンドウズが
生まれたように、「優れた入力デバイス」は、ソフトウェアに革
新を生み出す。したがって、ハードウェアの試作と並行して、
それと連携の取れる基本ソフトウェアの開発も進める予定で
ある。
• 上記すべてを自前で行うことは難しいので、共同研究を希望
される企業を募集中。
6
◆来るべきホームネットワーク社会、車のIT化、
携帯電話の通信速度向上
デジタルテレビの情報端末化。
誰がどんな風に使うのか?
人と機械、人とネットワークの接点が問題。
現状のリモコンで情報端末化したテレビを操作できるのか?
小さなボタン、限られた操作。
• では、キーボードやマウスをリビングに持ち込んで操作する
のか?
•
•
•
•
7
◆重要性の高まる
ユーザインターフェイス技術
• 人と機械に介在する技術には普遍的な需要がある。
• ユビキタス情報環境でいつでもどこでもアクセスできるネット
ワークができた。でもそれを誰でも簡単に使いこなせるか?
• デジタルデバイドの解消。
• 高齢化社会にあるべき人と機械の関係。
8
◆ユーザインターフェイスの基本
人:
感覚 と 行動
機械:
インタラクション
入力装置・センサー と 出力・情報提示装置
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◆ユーザインターフェイスの基本
人:
機械:
視覚
聴覚
触覚
指・手の運動(タップ、ジェスチャー)
顔の表情・視線
音声
感覚 と 行動
インタラクション
入力装置・センサー と 出力・情報提示装置
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◆ユーザインターフェイスの基本
人:
視覚
聴覚
触覚
指・手の運動(タップ、ジェスチャー)
顔の表情・視線
音声
感覚 と 行動
機械:
インタラクション
入力装置・センサー と 出力・情報提示装置
スイッチ・キーボード
座標入力デバイス
カメラ
マイク
ディスプレイ
スピーカー
触覚・力覚提示デバイス
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◆ユーザインターフェイスの基本
人:
視覚
聴覚
触覚
指・手の運動(タップ、ジェスチャー)
顔の表情・視線
音声
感覚 と 行動
機械:
インタラクション
入力装置・センサー と 出力・情報提示装置
スイッチ・キーボード
座標入力デバイス
カメラ
マイク
ディスプレイ
スピーカー
触覚・力覚提示デバイス
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人内部の感覚・運動の
フィードバックループ
ユーザインターフェイスの基本
人:
視覚
指・手の運動(タップ、ジェスチャー)
聴覚
顔の表情・視線
触覚
音声
感覚 と 行動
機械:
インタラクション
入力装置・センサー と 出力・情報提示装置
スイッチ・キーボード
座標入力デバイス
カメラ
マイク
ディスプレイ
スピーカー
触覚・力覚提示デバイス
機械内部の入力・出力の
フィードバックループ
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◆ユーザインターフェイスの要素技術
•
•
•
•
•
•
パターン認識(文字認識、音声認識)
コンピュータビジョン・画像理解
グラフィックス、GUI
バーチャルリアリティ
各種センサー(撮像素子、モーションキャプチャーデバイス)
ハプティックデバイス(力覚、触覚提示デバイス)
多様な技術の複合
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◆インタラクションを通じて、人と機械がコ
ミュニケーションする
キーボード
人
フィード
バック
機械
視覚・聴覚パターン
キーボードは人からアクションを受けるだけ、
受身の入力デバイス
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◆インタラクションを通じて、人と機械がコ
ミュニケーションする
ハプティック
デバイス
人
フィード
バック
機械
視覚・聴覚・触覚パターン
受身の入力デバイスから
人へ働きかけてくる入力デバイスへ
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◆インタラクションを通じて、人と機械がコ
ミュニケーションする
ハプティック
デバイス
人
フィード
バック
機械
視覚・聴覚・触覚パターン
受身の入力デバイスから
触覚に明瞭な情報を提示
人へ働きかけてくる入力デバイスへ
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◆ユニバーサルデザインの基本
• 行動と感覚のインタラクションの中で、感覚フィード
バックをマルチモーダル化して、増幅、明瞭化するこ
とがユニバーサルデザインの基本になる。
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◆現状は視覚に依存し過ぎている
現在のテレビのリモコン(左)は細かなボタンが多く、注意してよく見
なければ操作できない。
現在のパソコンの画面(右)は細かなメニューを注意して見て、小さ
なカーソルを小さなエリアに合わせてクリックしなければならない。
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◆現状は視覚に依存し過ぎている
現在の入力デバイスとユーザインターフェイス(GUI)は
視覚に依存し過ぎている。
視覚
聴覚
触覚への依存度合:
本プロジェクトの目標
三感(視覚、聴覚、触覚)をバランスよく使用する入力デバイスと
ユーザインターフェイスを開発する。三感に訴えるマルチ
モーダル化がユニバーサルデザインの第1の核となる。
20
◆触覚を増強して明瞭化する仕組で
入力デバイスを使い易くする
•
視覚の虫眼鏡のように、触覚を増幅、明瞭化する簡単なデバイスを用いて、
入力時に触覚をもっと活用できるようにする。
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◆曖昧な触覚応答の明瞭化
視覚への応答を明瞭化するときは虫眼鏡を使う。
聴覚への応答を明瞭にするには補聴器を用いる。
では触覚への応答を明瞭にするには?
視覚情報を虫眼鏡で拡大して見易くするように、触覚
への応答を明瞭化する技術を開発する。
日常生活で利用するには大掛かりで複雑な装置はだ
め。
できるだけ簡単で単純な方法で実現する。
22
◆曖昧な触覚応答の明瞭化
視覚刺激の明瞭化(ボタンと文字を大きくする)、
聴覚刺激の明瞭化(音を大きく、周波数を調整する)、
そして触覚刺激の明瞭化(凹凸感、反力・引力の強調)。
感覚への応答の明瞭化がユニバーサルデザイン
の第2の核となる。
触覚は不明瞭で分かりにくい感覚だが、それを強調・拡
大する技術により誰にでも明瞭に感じ取れるようにする。
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◆マルチモーダル化+感覚応答の明瞭化
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◆多様なアクションの例
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◆触覚刺激を生成する装置:
ハプティックデバイス
• 従来大掛かりで高コストであったハプティックデバイスを小型
軽量実用的コストで実現できる技術を開発する。
• そのためにはアクチュエータを用いずに、人の運動を巧みに
駆動力として利用して触覚刺激を生成する仕組みを開発す
る。
• 触覚で区別できる情報は限られるが、単に「押す」だけでな
い豊富な指のアクションを利用して多様な情報を入力可能と
する。
26
◆触覚刺激を生成する装置:
ハプティックデバイス
アクティブデバイスの開発(上は模式図)(現状では小型軽量化に対応
できるアクチュエータ技術がない。振動や電気刺激などで代用。)
27
◆小型軽量・低コスト・低消費電力・高信
頼のハプティックデバイスを開発
指の運動自体を駆動力として緑の突起
を持ち上げて指を刺激。
28
◆小型軽量・低コスト・低消費電力・高信
頼のハプティックデバイスを開発
+ソフトウェア
指の運動自体を駆動力として緑の突起
を持ち上げて指を刺激。
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◆本技術に関する知的財産権
• 公開済み特許6件(特開平10-143301、
特開平11-353091、特開2001-166871、
特開2002-278694、特開2004-220535、
特開2005-044122)
• 国際特許出願2件。基幹特許は国内・米
国を中心に先行特許調査を実施、新規
性確認済み
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◆本技術に関する問い合わせ先
東京工業大学
像情報工学研究施設
熊澤 逸夫
TEL
045−924 − 5291
FAX
同上
E-mail kumazawa@ isl.titech.ac.jp
HPアドレス http://kuma2.isl.titech.ac.jp/
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◆以下、参考資料
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ユーザインターフェイス、ハプティックデバイス関係
• 触覚刺激の種類:
(1)ワイヤーを用いた力覚提示:SPIDAR(1991 佐藤等)
(2)多関節アームによる力覚提示:PHANToM(1994 Massie等)
(3)ピンディスプレイ(アクチュエータで駆動するピンの2次元配列)による形状表現
(1997 下條等)
(4)振動子の位相差を利用して方向提示(1999 月東等)
(5)グローブ型力覚提示装置(1998 藤田等)
(6)電気による皮膚感覚刺激(2001 梶本等)
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ユーザインターフェイス、ハプティックデバイス関係
• 用途(応用例):
(1)車載機器の非視覚的操作(Gary E. Burnett and J. Mark Porter, Ubiquitous computing within cars: designing controls for nonvisual use," Int. J. Human-Computer Studies, vol. 55, pp. 521-531,2001.)
(2)物体や装置の操作支援(1997 北村等, 2001 Walairacht等)
(3)障害者のGUI操作支援(1997 海老名等)
(4)マルチモーダル・インターフェイス(1998 大脇等)
(5)マイクロマニュプレーション(2001 小西等)
(6)ジェスチャー入力(2001 塚田等)
(7)遠隔操作、手術(1993 Sheridan等)
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ユーザインターフェイス、ハプティックデバイス関係
•
操作性評価:
(1)マウス、ジョイステック、キーボード、カーソルキー等各種入力装置の操作性評価(1978 Card等)
(2)Fitts の法則に基づく操作性評価とデザイン(1954 Fitts, 1988 Kantovitz, 1992 Mackenzie, 2001
Walairacht等)
(3)携帯電話への文字入力効率評価(2000 Dunlop等, 2001 James等, 2000 Silfverberg等)
(4)統計理論・言語モデルに基づく最適化(2000 Ward等)
(5)ペン入力方式の心理的負荷と速度評価(1991 Smith等, 1995 Soukoreff等, 1993 Plamondon等,
1993 Wright)
(6)ハプティックフィードバックによる操作性向上(P. Buttolo and B. Hannaford. Pen based force display for precision manipulation of
virtual environments. In VRAIS-95, pages 217–225, March 1995. C. J. Hasser, A. S. Goldenberg, K. M. Martin, and L. B.Rosenberg. User
performance in a gui pointing task with a low-cost force-feedback computer mouse. In Proceedings of the ASME Dynamic Systems and Control
Division, volume121, pages 151–156. American Society of Mechanical Engineers,1998.
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ユーザインターフェイス、ハプティックデバイス関係
•
•
•
•
バイブレータ付きコントローラ、マウス、スティック
ブレーキ付きマウス、トラックボール
ピンディスプレイ
フォースフィードバック付き多関節アーム
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SPIDAR(佐藤,1991)
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PHANToM(Massie,1994)
38
ピンディスプレイ
(Canon,1992)
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バイブレータ付きマウス
(日立,1992)
40
ブレーキ付きトラックボール
(ATR,1996)
41
ピンディスプレイとGUIの統合
(NEC,1997)
42
バイブレータ付きスティック
(IBM,1998)
43
フォースフィードバック付き多関節アーム
(大日本印刷,1998)
44
ピンディスプレイ付きグローブ
(NHK,1999)
45
フォースフィードバック付きパネル
(CASIO,2000)
46
バイブレータ付きマウス
(ゼロックス,2001)
47