記事 座談会 電力分野から見た中国ビジネスの可能性 特別 座談会 電力分野から見た中国ビジネスの可能性 海外電力調査会・調査部 主席研究員 中山 元 電源開発・国際事業部 中国室長 石渡康夫 九 州 電 力・ 海 外 事 業 部 海 外 事 業 開 発第一グループ グループ長 立川康之 東京電力・国際部 部長代理 松岡豊人 〈司会・コーディネータ 〉 セリングビジョン 社長 岡部秀也 〈出席者〉 順不同、敬称略 ─協力支援からビジネスパートナーの時代へ─ め た り 調 査 業 務 を 展 開 し て お り、 や調査機関で、中国との交流を進 今回、ご参加の各社は電力会社 経済発展著しい中国では、年間に9000万k Wの電源が開発されている。言う な れ ば、 東 京 電 力 一 社 が 毎 年 誕 生 す る 勢 い で 電 力 事 業 が 発 展 し て い る の で あ る。 しかし、省エネ技術や環境技術は立ち後れており、原子力発電所の運営面でも人 材の育成が急がれる。日本は、隣国中国に対して、今後どのような技術交流がで きるのか、あるいはビジネスチャンスがあるのかを、中国での事業展開に詳しい 電力関係者に集まってもらい話してもらった。 (編集部) 事業としての中国との 出会い うな話が飛び出すのか楽しみで 実務経験が豊富ですので、どのよ す。初めからテーマに沿ってお話 つつある電力会社における中国ビ ジネスについて、お話しをしてい し す る よ り も、 「中国」ですから 岡部 本日は、最近、注目を集め ただきたいと思います。 とで、臨機応変にいきたいと思い 大陸的に自由にお話しいただくこ きればと考えています。 ターンについても、浮き彫りにで を途中でいただくかもしれません るいは発言中に皆様からコメント ん話題が逸れたり変わったり、あ 的にも密接不可分で中国進出企業 会さん、中国とは地理的にも歴史 詳細に調査している海外電力調査 中国の経済、エネルギー、電力を ます。したがって、途中でどんど 今回のご出席者は、 五十音順で、 が、よろしくお願いします。 も受け持ちエリアに多く抱える九 京 オ リ ン ピ ッ ク や2010年 の のプロジェクトに国内では最も実 州電力さん、また海外の電源開発 ピッチで進んでおり、世界のエネ 費が急増し、電力設備の建設も急 脳間の協力関係を築いている東京 プ交流協定を締結して、昔から首 ん、そして中国の電力会社とトッ 績のあるJパワー(電源開発)さ 上海万博を控え、経済は %の成 ルギー資源や需給バランスにも大 電力さんです。 交流案件が多くなり、社会主義的 日本に存在し、電力会社としても 竜、ビックドラゴンが一衣帯水の 務所も設立し、日中間のコミュニ 支援をしており、昨年には北京事 ら受託して試験運営したり、教育 ビジネス中国語検定を中国政府か 東 京 電 力 初 の ベ ン チ ャ ー 会 社 で、 ケーションやビジネスマッチング な協力支援の段階から市場経済で きていると思います。そうしたこ を 進 め て い ま す。 今 回 は、 コ ー のビジネス交流のチャンスも出て ども抱えています。さらには、巨 なお、 当社セリングビジョンは、 きな影響をもたらし、環境問題な 長率です。同時に、エネルギー消 10 とから、本座談会でもリスクとリ 8 いま、中国では、今年 月の北 座談会会場の様子 座談会 電力分野から見た中国ビジネスの可能性 特別 記事 デンティ の違いを 感じなが き合いが らのお付 始まりま 国での事業が築かれている面が大 いにあると思います。 青天の霹靂だった中国担 当の辞令 石渡 私も今から 年前の2005 年 月に辞令が出るまでは、国際 したが、いまではそれなりに、何 柱として力を入れていることは意 事業に直接携わった経験が全くあ となく理解も進んだような気がし き、 発 見 ディネータ役を仰せつかりました ここ 、 年、国際事業を第二の ので、 よろしくお願いいたします。 属になり、担当したのが中国だっ でした。 年前に海外事業部に配 は接点が無く、 まったくの「素人」 いまの担当になるまで「中国」と 理 的 に 近 い の で す が、 私 個 人 は、 立川 九州は、確かに中国とは地 橋 渡 し に 頑 張 っ て く れ て い ま す。 バーが在籍していて、ビジネスの 福岡には、中国や韓国からの留学 いでしょうか。当社の本社がある ところは、日本と同じなのではな み交わしながら仲良くなっていく あまり変わらず、とくに、酒を飲 味があったわけでもなく、中国語 九州の大学を卒業した中国人メン また、私自身、中国にとくに興 生が多く、 私の職場グループにも、 を話せるわけでもありません。ま だったわけです。 携わっていただけに、青天の霹靂 の開発計画に本店のリーダとして 手県の胆沢発電所計画など、国内 年間は、横浜の磯子火力建設や岩 見 ま せ ん で し た。 そ れ 以 前 の 国際事業を担当するとは思っても 5 た、酒が飲めないのは社内でも周 中国でも変わらない交流 の基本 4 こうした人材が、基盤となって中 との出会いからお聞かせ下さい。 しかし、人間的な交流の基本は それでは、先ずは皆さんの中国 識していましたが、まさか自分が り ま せ ん で し た。 会 社 と し て は、 し た。 驚 3 もありま 7 ています。 岡部秀也氏 1977年東京電力入社。1993年電気事業 連合会広報部副部長、1997年東京電力 銀座支店(現・東京支店銀座支社)法 人営業部長、エネルギー営業部長を歴 任後、本店情報通信事業部等を経て、 2002年東京電力の社内ベンチャー制度 を利用してセリングビジョン株式会社 を設立、現在に至る。 たことから、 中国人の価値観、 アイ 2 2 体質的にアルコールを分解する酵 した。とくに酒の方は、医者から ではないかと悩んだこともありま 枚くらいになったでしょうか。し 残っている枚数だけでも2000 名刺を頂戴しており、私の手元に は、中国でのビジネスには不向き この間、中国の方から数多くの 知の事実であり、私のような人間 かし、私の場合、商売としてのお 多いころには 年間に 組以上 りました。 受け入れなど活発な交流がはじま き来する定期交流会議、調査団の 経営トップ同士が毎年お互いに行 ていますが、交流協定締結以降は 付き合いよりも国際交流が中心で の中国からの来訪者を迎え入れて ていた電力幹部研修では 組 と言われています。無理をして一 なります。 素がないので、飲まない方が良い ただいています。 いました。年に 〜 回受け入れ からなかなか抜けず、 日間くら 名の研修生の面倒を 週間みます たことで、お酒の方は、宴席に招 放の勢いが増してくるのに対応し ジュールも超過密でした。しかも ので、窓口を務めた私自身のスケ をしています(笑) 。 でも、何とか支障がないよう仕事 て、当社では 年から、当時、電 年代から改革開 1 3 3 かれても一滴も飲みません。それ いはふらふらの状態です。そうし 中 国 で は、 15 すので、楽しく長く続けさせてい 40 寸でも飲むと、アルコールが体内 1 2 が中国の支援に強い思いを寄せて た。 昨年、 他界した平岩外四元会長 た水利電力部と交流を開始しまし 力部門を所管する中央官庁であっ (笑) 。 で、目が回るような毎日でしたね のお客さまも担当していましたの 中国だけでなく、欧米や韓国から よ う に な っ た の は、 結 構 古 く て 松岡 私が中国と係わりをもつ に上海宝山製鉄所に隣接した宝鋼 国への支援事業としては 年代末 流事業を行ってきたわけです。中 化を手助けしようと、積極的に交 しさもありました(笑) 。また、 お を通じて人間関係を深められる楽 が、そうした多忙な中にも、お酒 いて、日本の後押しで中国の近代 先 ほ ど の 話 の 続 き に な り ま す 流事業の窓口担当になって以来で 1995年 に 当 社 の 中 国 と の 交 「 と り あ え ず ビ ー ル!」 で はない中国での酒文化 86 す。一時期、社外に出向して窓口 ループ会社である東電設計が行っ 発電所への技術指導を、当社のグ 知りました。たとえば、 韓国では、 によって大きな違いがあることを 酒の飲み方に対する文化には、国 70 から離れましたが、 年の長さに 80 3 12 座談会 電力分野から見た中国ビジネスの可能性 特別 記事 飲まないよう 立川 また、中国の店では、 「冷え 方が賢明です。 方と同じです。普通の人は避けた から、北欧のバイキング的な飲み にしていま たビール」 と言って注文しないと、 ルも紹興酒も ウ( 白 酒 ) は 常温のビールを出されてがっかり が「歓迎」という意識があります。 飲 み ま す が、 その点、ビールは高価な酒ではな します。たしかに、ビールはやめ コーラやサイダー類は避け、ココ 飲みます。ただし、チェイサーは ておいた方が良いですね(笑) 。 飲み潰れても信用を失うのでな い の で、 「 歓 迎 」 の 場 合 は、 初 め 一緒にチェイ く、かえって親しみが増すという ナツミルクや温かいお茶など体に からパイチューが用意されていま サ ー( 口 直 し 文化があるようです。しかし、中 優しいものを選びます。そのよう 松岡 中国では、酒を飲ませるの 国では違います。中国の人は飲ま の音頭になるわけです。そうした ます」と言えば、 すぐに「乾杯!」 文化を知らずに「とりあえずビー す。 率直に 「パイチューをいただき せん。中国の人には内緒ですがね ル」では、相手が逆に戸惑ってし けるような酔い方にはまずなりま す。 私 も、 楽 し く 乾 杯 を 重 ね て、 石渡 日本的な「とりあえずビー (笑) 。 にして、お酒を楽しめば、腰が抜 意識を失う危険を常に冒していま せ上手ですが、人前で意識を失う す(笑) 。 まいます(笑) 。 中 国 人 と、 楽 し く 最 後 ま で お 付 す る 中 で、 お 酒 の す す め 上 手 な うとその後はビールとバイジョウ 松岡 初めにビールを頼んでしま ね(笑) 。 ん。 中 国 で は 値 段 が 高 く て、 「歓 は、赤ワインが良いかもしれませ 実は私は、中国人とお付き合い き合いする秘訣を会得しました のチャンポンになってしまいます に、形だけ「乾杯」という場合に (笑) 。 私 は 中 国 の 人 と は、 ビ ー あまり飲める状況でないとき ル!」はやめた方が良いわけです ほど飲むと信用も失ってしまいま 用の飲料)を す。 バ イ ジ ョ 松岡豊人氏 1979年東京電力入社。1990年企画部経 済調査室副長、1995年企画部国際交流 推進室課長、1998年新エネルギー・産 業技術総合開発機構企画課長、2000年 国際部課長、2002年国際部国際交流・ 協力GM、2006年国際部部長代理、現 在に至る。 うした「秘策」が有効なのも今の さん出回り始めていますので、そ は、中国産の廉価なワインがたく な い か ら で す( 笑 ) 。ただし最近 で、少しずつしかテーブルに並ば 迎」する方も気前よく出せないの に至っています。 にどっぷり漬かってしまい、今日 から、何となく中国と係わるうち 会(以下、海電調)に派遣されて 経験もありました。海外電力調査 中国の清華大学と共同研究をした 水力発電所の開発、 運営を担当し、 いと感じています。 くてもそれほど気にする必要はな なっているようで、お酒が飲めな ろ、中国人でも飲めない人が多く した (笑) 。中山さんの中国との出 脱線しつつ盛り上がってしまいま めないので、宴席では結構苦労し 国です。私は、お酒がほとんど飲 に中国は酒文化を大事にしている 岡部 さ っ そ く お 酒 の 飲 み 方 で、 お酒の話が出ましたが、たしか して つのタイプがあると思いま 本の企業にはビジネススタンスと としてとても難しい面があり、日 岡部 中国でのビジネスは、経営 中国での事業可能性を どう考えるか うちだけかもしれません。 会いは何だったのですか。 力から海外電力調査会に派遣され 中山 私は、2002年に中部電 の で、私は、 気に飲み干すものとされている 業として確実な結果を期待できる 「君子危うきに近寄らず型」で、 事 り 杯 を 空 け る 意 味 で 、 本 来 は 一 一つ目は、 「石橋を叩いて渡る」 ま す。 と く に、 “乾杯”は文字通 二 つ 目 は、 「 風 見 鶏 型 」 で、 地 元 こ と に し か 踏 み 込 ま な い タ イ プ。 ( 、スィ つ も『 随 意 チャンスに備えて準備をしておく のの、様子を見ながらいざという 問題、技術支援は果たしていくも 経済界などとのお付き合いや環境 す。 ました。それまでは、中部電力で わ ず に、 い 『乾杯』と言 イ ー) 』と しておりま 業型」で、中国市場を潜在的なビ タイプ。三つ目は、「チャレンジ創 i y i u s す。 こ の ご 3 言うことに 立川康之氏 1983年 九 州 電 力 入 社。1996年 苓 北 発 電所建設所技術課副長、1998年火力部 建 設 課 副 長、2001年 新 大 分 発 電 所 保 修 第 三 課 長、2004年 ベ ト ナ ム・ フ ー ミー 3BOTパワーカンパニー保修課長、 2006年海外事業部海外事業開発第一グ ループ長、現在に至る。 座談会 電力分野から見た中国ビジネスの可能性 特別 記事 確 か に 中 国 は、 身近であり、市場 規模、成長性は魅 す。 ロジェクト、コンサル案件を取っ 業として積極的にファイナンスプ ジネスチャンスと捉えて、新規事 業者として着実に、しかし、チャ なスタンスはとれません。電気事 で事業を展開してきた商社のよう 社ですので、アグレッシブに中国 業を行ってきた会 て国内で粛々と事 は、電力会社とし す。もともと当社 にリスクもありま 出するというのではなく、 年を はいえ、徒手空拳でどこにでも進 きな柱の一つに据えています。と 国際事業に進出していくことを大 戦略として、とくに成長性の高い 石渡 当社は、民営化を機に国際 てはいかがですか。 に進出していますが、中国につい 岡部 Jパワーさんは、世界各国 Jパ ワ ー が 今 年 月、 北 京に現地法人を設立 ていくタイプです。 史と実績を通じて、相手国の状況 超えるコンサルティング事業の歴 す。しかし、 敢えて言えば、 チャレ プにも当てはまるような気がしま 立川 九州電力の場合、どのタイ いますが、ビジネスとしての有効 ており、情報収集などに携わって を入れているようですね。 協会との連携を通した活動にも力 岡部 九州電力さんは、日中経済 投資を積極的に行っていく方針で ん で 中 国 を 三 大 市 場 に 位 置 づ け、 に当社社員を駐在員として派遣し そして現在、 タイ、 アメリカと並 立川 日中経済協会の北京事務所 あり、今年 月には現地に法人も てきたと捉えています。 中で、中国も魅力ある市場になっ 立てて展開しています。そうした が十分掌握できる案件等から順序 4 石橋を叩きながらチャレ ンジ精神を発揮 ンジ精神をもって石橋を叩いて渡 打はまだ打てていないのが現状で 40 るということになると思います。 のタイプでしょうか。 皆さん方の会社は、果たしてど レンジ精神は持って前進していこ 力 的 で す が、 逆 4 うというところがあります。 中山 元氏 1978年中部電力入社。1997年中央送変 電建設所地中線土木課長、1999年木建 築部 水力グループ課長、2002年海外 電力調査会出向、現在に至る。 10 われ、社名登録ができませんでし 「電源開発」は一般名詞として扱 発 」 に 統 一 し た か っ た の で す が、 置いた現地法人の名称も「電源開 設立しました。ちなみに、北京に が無いため、いろいろな面で他の えば、中国では、長期の買電契約 討を重ねて決断に至りました。例 人の設立にあたっては、相当に検 も事実です。したがって、現地法 国は、他の国とは様相が異なるの れていますが、中国では法治主義 思います。法律的には一応整備さ とってはかなり高い障壁があると は欧米諸国とは違い、日本企業に 中山 投資の面から見ると、中国 す。 りのお話をお聞きしたいと思いま よりも人治主義がまだ色濃く残っ 国とはアプローチが異なり、それ らがリスクでもあるのです。そう ています。 電力分野で言えば、 中国 怕 瓦 」 と 書 い て“ ジ ェ イ パ ワ ー” と読む名称にしました。 「捷」 には した部分をどう克服するかが大き の電力企業は、国有財産を預かっ た。そこで中国語の発音から「捷 勝利、「瓦」にはkWという意味が な課題です。 なっています。したがって、会社 て会社形態で運営する国有会社に あり、縁起の良い名前も付いたこ とから、さらに一歩踏み込んだ事 業展開を目指したいと思っていま 幹部は国有財産を減らさずに、い かに増やしていくかが最大の任務 であり、そこにまず力を注ぐわけ 中国の企業上層部とのつ きあい方が事業の成否を 左右 岡部 中国は です。 本とは異なる 企業の参入は簡単ではありませ 立発電事業者)扱いですが、外国 され、発電会社は全てIPP(独 み、 事 情 が 日 また、発電と送配電分野が分離 制 度、 枠 組 と言うことで ん。改革開放政策の初期に、広東 省に外資系の電気事業者が参入 情に詳しい海 電調の中山さ し ま し た が、 そ の 際 締 結 さ れ た す が、 そ の 事 ん に、 そ の 辺 11 す。 ただし、国際事業のなかでも中 石渡康夫氏 1981年 電 源 開 発 ㈱ 入 社。1997年 奥 只 見・大鳥増設調査所立地グループリー ダ ー、01年 総 務 部 総 務 グ ル ー プ リ ー ダ ー、04年 営 業 部 設 備 計 画 グ ル ー プ リーダー、05年国際事業部中国グルー プリーダーを経て、現在に至る。 座談会 電力分野から見た中国ビジネスの可能性 特別 記事 PPA(電力の売買契約)により 中山 年に 〜 回程度です。通 壊して、高速道路や高層ビルが建 ち始め、 年くらい前からはかつ ている、大きな要因になっていま 電気料金が全国で一番高くなっ 購入しなくてはならず、広東省の 村では、靴を履かないで道を歩い ている人を見かけます。地方の農 部の農村部では未だに人民服を着 の様子が変わっていきますが、西 北京や上海は、出張するたびに街 ました。それを見て、東京の昭和 中に、無造作にゴミが積まれてい 郊外に行くと、美しい田園風景の 変貌を遂げています。 年のころ ての上海を想像できないくらいの 回 以 上 は 行 き ま し た。 す。地元政府、電力企業は早くこ ている人も珍しくありません。経 算すると のPPAを 何 と か し て な く し た 年代の風景を思い出したもので す。ブルドーザーで田圃が踏み潰 された後に、ゴミの山ができた東 京のあの時代の風景と同じだと感 本が歩んできたこれまでの経験が 年代の いと思っています。また、中国の は安く、沿岸部の経済発展した地 域は高く設定されているのです。 松岡 中国の発展は、先進国より じました。そんな風景を見て、日 て情報を集めていますが、環境や 中国でも必ず役立つことを私は当 ようです。 事業の成否を左右することも多い 企 業 の 上 層 部 と の つ き あ い 方 が、 先ほども触れましたように、中国 機 会 は あ る と 思 い ま す。 た だ し、 出張していますが、香港は別にし 世の感です。私は 年から中国に 始めています。昔を思い出すと隔 れが、いまでは確実に追い抜かれ れる実感はありませんでした。そ 年当時は、中国の発展に追い抜か た、経済面での日本との係わりも で大きな発展を遂げています。ま ちたいと思ったのです。 岡部 中山さんは中国の電力関係 て、最初の変化を感じたのは上海 深まっています。 たとえば、 日本の 95 岡部 たしかに、中国はこの 年 中国でのビジネスチャ ンスの可能性 事情にとても詳しいのですが、現 でした。上海では、古い街を次々 95 地へのご出張も多いのですか。 時強く確信しましたし、お役に立 ピ ー ド で 追 い か け て い ま す。 遅れてスタートしましたが、猛ス 上海で見た昭和 東京 95 や企業がビジネスチャンスを掴む 海電調は、北京に事務所を設け 30 省エネの分野で、日本の電力会社 30 済格差は確かに深刻ですね。 送電会社は高い卸料金で電気を 2 電気料金は、経済的に貧しい地域 5 1 20 10 12 どうお考えですか。 の ビ ジ ネ ス チ ャ ン ス に つ い て は、 野でも、日本の省エネ技術や環境 た関係が深まる中、電気事業の分 客に変身しつつあります。そうし 世界や日本の工場から、市場・顧 三位になっています。また中国は 側から見ても日本への輸出額が第 対中国輸出額は一位であり、中国 れ、送電会社が電力を全量引き取 再生可能エネルギー法が施行さ 性が広がってきました。その辺り 一方、2006年に中国国内で 技術などが中国で活かされる可能 ることになりましたので、それを に評価する必要があるわけです。 いようで、燃料面のリスクも慎重 るものの、十分に運用されていな れを売電価格に反映する制度はあ た、 石炭価格が上昇したときに、 そ スクをどう取るかが問題です。ま 契約が締結できないため、そのリ しています。しかし、長期の売電 その辺いかがですか。 る よ う に な っ た と 思 う の で す が、 米的にビジネスに費用を捻出でき トップ級のお金持ちになって、欧 しかし、中国も外貨準備高が世界 い 交 流 だ っ た の か も し れ ま せ ん。 的にして、いわゆるお金が取れな 岡部 これまでは「貢献」を主目 えています。 柱として進めていけたらとも考 ルなどを、今後の中国ビジネスの まえ、環境負荷低減技術のコンサ 機に、同法を売電契約に代わるも などの技術分野で、中国に貢献で 業として、発電、送電、土木部門 立川 九州電力としては、海外事 さ ん ほ ど の 実 績 は あ り ま せ ん が、 た、コンサル関係でも、東京電力 していきたいと考えています。ま 発電技術を、今後、積極的に提案 技術をはじめ、風力、地熱などの 力発電所の熱効率を %強向上で 術協力の例ですが、同社の石炭火 当社では、先ほどの山東電力の技 と し て 難 し い か も し れ ま せ ん ね。 立川 有償契約については、依然 再生可能エネ法の施行を 踏まえた提案も き、なおかつ収益が上がるよう事 年頃から山東 有償ベースのコンサルの 難しさ 業展開していくことを指向してい 当社火力部門が のと位置づけ、当社のもつ省エネ ます。その中で、大型石炭火力に ている事業分野であり、有望な案 ついては、外資の参入が奨励され 績もあります。そうした実績を踏 発電所の熱効率改善を行った実 電 力 と 技 術 交 流 協 定 を 締 結 し て、 ルを提案しました。しかし、「あら えて、次の有償ベースでのコンサ きた実績があります。それを踏ま 4 件につながるのではないかと期待 13 92 座談会 電力分野から見た中国ビジネスの可能性 特別 記事 でした。 を理解してもらうには至りません タンスで、次回からの対価支払い は自分たちで実施する」というス かたの技術は理解できたので、後 財産の意識もだいぶ高まってきて 諸外国からの要求もあって、知的 WTO(世界貿易機関)に加盟し、 石渡 あるということですか。 もって行けるかどうかの瀬戸際に 水車を採用します。当社では、只 所では、低落差を利用するバルブ ロジェクトの一つである蜀河発電 ということです。漢江一貫水力プ 感じてくれる部分が大いにあった は、中国側が当社の技術に魅力を そ の 通 り で す。 中 国 も 発電所の「熱効率向上」という 千 見発電所で世界最大の kWの設備を建設し、 年以上に 状況を十分見ていかなければなら ているように感じますし、今後の もその枠組みづくりでご苦労され していれば良いのですが、各社と がそうしたビジネスモデルを確立 あると感じています。仮に、他社 提案などは、なおさら難しい面が エネ改善等を積み上げたESCO ながらないのですから、小さな省 かわらず、恒常的なビジネスにつ 魅力を感じてもらえるか、そうし 我々の技術に対する知識や経験に ビジネスの手法としては、如何に 扱いが難しいのです。 したがって、 の技術に対する対価としての取り 交流に寄与するだけですから、そ ユーザとしての知識や経験などで ち合わせていません。 言うなれば、 許、知財は正直なところあまり持 たちで法的保護が受けられる特 界は、メーカーと異なり明確なか められている水力一貫開発計画 *中国 漢江一貫水力開発プロジェ クト=中国陝西省において、進 ながったのです。 コンサルトではなく、「投資」につ という要望があったので、単なる で、その知見をぜひ教えて欲しい 利用した水力開発を進めていく中 す。今後、中国でもバルブ水車を ることを彼らは知っているわけで わたり安定運用の実績を重ねてい 3 ないと思っています。 がプロジェクトを所有・実施し ている。計画では、 喜河(きか) で、陝西漢江投資開発有限公司 その意味で、昨年、漢江一貫水 発電所 万kW ( 万kW× 、 た流れを作っていくことが一つの な、いわゆるユーザ的な立場の業 万 います。しかし、電気事業のよう 5 課題だと思っています。 やすいものだと思います。にもか 技術は、その対価を比較的説明し 6 10 力プロジェクトへ参画できたの 6 件の新規プロジェクト に参画したJパワー 岡部 無償の協力からビジネスに 18 2 14 か)発電所 万kW( ・5kW 運開済み)および、 蜀河(しょく 基)を共同開発す が、中国江西省・南昌市におい 股 フ ェ ン 有 限 公 司 とJパ ワ ー 力事業への投資が優良な貸付先で に、最近、中国国内の銀行は、電 もあります。ただし、幸いなこと 際事業案件とは大きく異なる点で ノウハウが評価されたところで 臨界圧発電技術)に関する実績と ジェクトでは、 当社のUSC (超々 した新昌大型石炭火力発電プロ また、今年になって参画を決定 譲渡契約の締結に至った。 に配慮した設備構成となって 煙脱硝装置の設置により環境 るとともに、排煙脱硫装置・排 ギー政策に合致した案件であ ラントであり、中国の省エネル な石炭焚き超々臨界圧発電プ 国においては最新鋭の高効率 トで建設されるプラントは、中 るプロジェクト。同プロジェク ク は 軽 減 し て い る と も 言 え ま す。 では、ファイナンスに対するリス み込んでくれています。その意味 証を株主に求めないところまで踏 するにあたっても融資に対する保 うようになっており、当社が出資 象に、その信用力のみで融資を行 力をはじめとする電気事業者を対 す。それによって、中国の五大電 あるとする評価が高まっていま kW× す。中国側の立場に立てば、かつ いる。同案件は中国で外資企業 る。Jパワーは、このプロジェ ては外資企業と組むことがはやり クトで、権益の %を取得する の時期もありましたが、今では何 もちろん、金利は中国政府が決定 む場合には、参入負担を重く課さ が初めて参画する超々臨界圧 案件は長期の買電契約がないこと れることはなくなってきました。 が得られるのかという視点で、目 がないとただ「面倒」なだけであ から、いろいろなリスクが発生し 言いつつも、「再生可能エネルギー ます。例えばプロジェクト・ファ また、長期の買電契約が無いと なくとも信用力のある事業者と組 り、外資がIPPとして参入して イナンスが組めないこともリスク 法」の成立で、風力や水力から発 するのでリスクは伴いますが、少 いくことは難しいと思います。 の一つです。各種ファイナンス手 生する電力は、ネットワーク会社 発電プラント案件でもある。 *新昌 大 型 石 炭 火 力 発 電 プ ロ ジェクト=中国電力投資集団 法が利用できないことが、他の国 的々に考えています。彼らにとっ ( て大型高効率石炭火力発電所 4 × 、 年運開予定)を建設す 27 て、はっきりした魅力やメリット 一方、当社としては、中国での 2 09 公司および深セン南山熱電 15 27 66 6 座談会 電力分野から見た中国ビジネスの可能性 特別 記事 に全量引き取り義務が課されてい ます。その点でも、もう一つのリ スクが減少しています。料金は別 てもらえることが明確になり、当 にして、発生電力を全量引き取っ 社としても昨年の「漢江一貫水力 開発プロジェクト」への参加検討 に際してはプラスの要素として働 きました。 る南昌市に建設されます。完成す 型石炭火力は、江蘇省の省都であ を見定めれば、ビジネスチャンス 制度が異なっても、政策の方向性 いては、 政策の動向をさらに見てい 一方、火力発電プロジェクトにつ るところです。中国国内では、昨 れば、省内最大の需要地に最も近 ターンのバランスを十分に分析し 年まで電力不足が続き、現在はや い、高効率発電所になりますので、 年間の電力供給量はかなりのもの はこれからもたくさん期待できる で、省エネ政策とも関連づけなが を期待できると考えています。さ もそうですが、当社では中国側の 江西新昌発電所(完成予想図) 年ほど前から狙っていた案件で も、 中 国 の 政 策 の 方 向 性 を 考 え、 を痛感します。実は風力発電事業 した経験があるだけに、最近それ も重要です。そのタイミングを失 と考えています。 らに、市場原理が入り、優良な設 しかし、その場合、タイミング 備の評価が認識されれば、さらな 気を買い取る方針が打ち出されて います。 「新昌大型石炭火力発電プ る収益性の向上が期待できます。 当量を引き取ってもらえるものと 政 策 を 見 据 え つ つ、 リ ス ク と リ いプラントが建設されますので、 相 ご紹介した中国での二つの案件 期待しています。しかも、新昌大 2 ロジェクト」では、 非常に効率が高 ら、高効率発電所から優先的に電 て参画を判断しています。日本と ピッチでの開発が必要です。そこ や解消しているものの、今後も急 喜河発電所 16 れば、中国政府側からそれなりの 野 ご と に は あ る の で す。 し か し、 また、 年に始まった第 次 る法律は、電力、石炭、石油の分 中山 中国でのエネルギーに関す に読んでいますか。 注目されます。 革がどのように展開していくかが いませんが、今後こうした機構改 いては、今後の戦略構築に頭を悩 申しまして風力プロジェクトにつ 競争市場になっています。正直に 成の方針もあって、非常に厳しい 2009年の全人大(全国人民代 検 討 し て い る 最 中 で、 予 定 で は エネルギー基本法の草案づくりを りません。そこで、中国政府では それらを総合した基本法は現在あ で取り組んでいるような気がしま 面も見られましたが、今回は本気 対策です。以前は、掛け声倒れの を入れているのは、省エネと環境 か年計画で、中国政府がとくに力 した。 年前に参画を決断してい りましたが、昨今では国内産業育 高い料金が獲得できた可能性があ ましているところです。 プに対する人事考課は経済発展だ す。何故なら、かつては省のトッ の分野にも押し寄せると思います いずれ、そうした波は火力発電 更されました。 たとえば、 環境保護 した全人大で、政府組織が若干変 ているからです。 への貢献が査定対象に織り込まれ の見極めが大切だということです も、政策状況、引取量、料金など 象になったプロジェクトであって 岡部 再生可能エネルギー法の対 「能電局」が「国家能電局」 に昇格 省に準ずる組織となります。「国家 国 で は、 局 に「 国 家 」 が 付 く と、 局」に昇格しました。ちなみに中 であった「能電局」が「国家能電 部門では、発展改革委員会の一部 なりました。加えて、エネルギー 日本で言えば「庁」から「省」に 1300万kWで、五か年計画の 1400万kW、今年の目標値は でおり、昨年は一年間ですでに約 ます。その進捗も急ピッチで進ん の設備を淘汰する目標を掲げてい 中の 年間に計5000万kW分 効率石炭火力を廃止し、計画期間 か年計画で ね。今後の中国でのエネルギー政 能電局」の権限は明らかになって 総 局 が 環 境 保 護 部 に 格 上 げ さ れ、 た と え ば、 そ の もって想定し、整理していくこと けでしたが、現在は省エネや環境 表者大会)で、審議されるだろう 5 と言われています。 11 が必要だと思っています。 の で、 そ の 方 向 性 や リ ス ク を 前 それに先立ち、今年 月に終了 3 策について、中山さんはどのよう 5 は、 〜 万kWクラスの古い低 17 06 2 5 5 10 座談会 電力分野から見た中国ビジネスの可能性 特別 記事 6 ・ 環境設備対策で見ても、 年末時 きそうです。また、大型火力への 目標は最終年度までに十分達成で い切れません。逆に言えば、中国 識はまだ十分浸透しているとは言 所もあるそうで、環境に対する意 では、検査のときだけ動かす発電 発電所が造られ、さらに 〜 年 東京電力が有する設備と同規模の 岡部 日本に置き換えると、 毎年、 が運開しています。 を向ける余裕がないという現実で では利益追求に追われ、環境に目 電力会社がそうした開発計画で果 ほどの開発ピッチですが、日本の というスピードなのですね。驚く で日本全体分の発電所が造られる %しか設置されていませんでし もあるということです。そういう 点で、排煙脱硫装置は全体の たが、 昨年末には %、 設備量で言 意味では、日本がかつて辿った道 3 いますと計 ・ 億kWの発電所 2 04 何故、このように急ピッチで排煙 に 設 置 さ れ る ま で に な り ま し た。 厳しくなれば、そうした意識が大 を 中 国 も 歩 ん で い る と 思 い ま す。 うのですがいかがですか。 たす役割もあるのではないかと思 きく変わっていくのではないかと たけれども、組織は共産党の国営 中国で役立った日本の 110万V(UHV)送電 技術 今後、行政などのチェック体制が 煙については課徴金制度が設けら 思います。 毎年 開 中 国 で は、 の目が厳しくなるとともに課徴金 て、社会的な改革は後追いになっ ていたと思います。改革開放はし いうことですね。 代化に関するお手伝いが中心でし 社も、交流事業の多くは、経営近 題が幾つも前面に出ています。当 中山 新設の火力では、一昨年は た。そのため、 年から中国の広 の新たな電源開発も進めていると 松岡 中国は経済成長が先行し 岡部 億kWの 電 源 が 運 000万kWの電源を廃止しなが 企業ですから、うまくいかない問 ていると思います。 ただし、排煙脱硫装置を設置し 5 億kW、昨年は9000万kW 92 ても、実際に運転されているかは 疑わしい面があります。聞いた話 1 最近は環境問題に対する国や国民 脱硫装置を取り付けるほうが有利 の額も引き上げられ、発電会社は ら、 %の経済成長を続けるため 1 10 年間で5 であると判断するようになってき コ ス ト 的 に 有 利 で あ り ま し た が、 れており、課徴金を支払うほうが 脱硫装置の設置が進むのでしょう 7 50 か。これまでは、基準値以上の排 2 2 18 力の総経理、発電所長、供電局長 域電力ネットワーク会社や各省電 はないことですね(笑) 。 はそれがビジネスになるほど甘く く評価してくれていますが、問題 いです。みなさんいまも当社を高 ない長距離大容量送電技術の導入 拡充を急いでおり、送電ロスの少 造られる例も多く、送変電設備の は、需要地から遠く離れた場所に 年間で約 といった電力幹部を日本に招いた 研 修 事 業 を 実 施 し、 が必要になっていたのです。 電源開発ができるので外資の参入 価しており、潤沢な国内の資金で 発電事業を有望な投資先として評 決 定してくれました。この 年 間、 ろ、導 入 効 果を高 く 評 価し採 用を 中国国家電網公司に紹介したとこ あり ます 。 そこで、U H V 技 術を 万 Vの交 流 送 電 技 術( U H V )が 最近は、中国の金融機関が国内の 日 本には、世 界に誇れる1 1 0 研修に来た彼らは、新技術に関 を必要としない状況が続いていま し、 毎年 〜 回は来ていました。 することもさることながら、企業 す。チャンスがあれば、当社も中 回にわ すでに最 初の たってテクニカルサービスを提 供し、 有 償コンサルのかたちで、 現実です。 ですが、条件はとても厳しいのが 回 線 は一昨 年に着 織の近代化を下支えするノウハウ 業として、最近 年間、110万 具体的な中国に対する技術協力事 たすことが期 待されています 。 送 電ロスの減 少に大 きな貢 献 を 果 に向けて供給信頼度向上を急ぐ北 して、当社ではオリンピック開催 送変電技術分野の技術コンサルと が、その後、多くの人が重要なポ 思います。 ストに就いています。中国の発電 先 ほ ど の 話 に あ り ま し た よ う 会社の社長の殆どは、当社に研修 6 建設ラッシュです。発電所の中に と、上海万博を控えて設備の増強 京市内における地中送電技術支援 支援を行ったことを紹介したいと V送電について中国に有償で技術 ちなみに、中国における最近の 3 に、この 年間、中国は発電所の ところで、かつての研修生です たと実感があります。 を務めていた私には、お役に立て 工し、 中 国の電 力 供 給の安 定 化、 1 でも感謝され続けており、世話役 いしてきました。中国側からいま そうした中で当社が行ってきた の研修に力を入れ、無償でお手伝 国でのビジネスを考えたいところ 理念や経理、人事管理、人材育成 とつの研修団が 名で 週間対応 300名 を 受 け 入 れ ま し た。 ひ 先 ほ ど 話 に あ り ま し た よ う に、 10 3 についての研修を強く望んでいま 15 した。そこで、当社としても、組 3 に来た人たちと言っても良いくら 19 3 2 2 座談会 電力分野から見た中国ビジネスの可能性 特別 記事 た。上海市のものは、当社が東京 建設技術支援を有償で実施しまし え甲斐のある生徒であるといえる 術指導を行った当社にとって、教 電技術の研究に大変前向きで、技 松岡 中国では110万V交流送 るというお話しですね。 課 題についてはいかがでしょうか。 流 を 発 展させていく 上での新 たな 留 意 すべき 点、あるいはビジネス交 国 で 事 業 展 開 を す るに あ たって、 岡部 今 後、日 本の電 力 会 社が中 を目指す上海市 万V地下変電所 臨海副都心で建設した 万V変電 あります。また、知的所有権に関 チャンスとしては厳しいところが 金はいただけませんからビジネス でしょう。反面、同じ内容ではお す。たとえば、 万kWの風力発 国人はスピードを重視する点で の質を重要視するのに対して、中 で一番感じるのは、日本人は仕事 立川 中国での事業に携わる中 所に似た設備です。 岡部 中国が市場原理の中で、世 す る 不 安 と い う 問 題 も あ り ま す。 そこに、ビジネスチャンスも窺え 入 し て い く 雰 囲 気 が で き て き た。 りタフな議論になる可能性が 対する対価の問題では、かな 国の常識である、知的財産に りますから、日本や欧米先進 いお金を払うことに抵抗があ があります。知識の習得に高 してはいけない」という思想 てならない、後進の向学心を邪魔 中国には「書物を盗む若者は罰し を高めようと最後まで努力をし て、できるだけプロジェクトの質 辺機器のアレンジなどを確認し 点から、機器の信頼性、性能、周 果的な運用ができるかという観 年間運転した場合に、どれだけ効 一方、日本的な考え方は、今後 り に 運 開 す れ ば 大 成 功 な の で す。 計画した場合、中国では計画どお 電設備を今年中に運開させると 今後の展望の描き方 常にありますね。 5 未だに低い知財に対する 認識 界ナンバーワンの技術を旺盛に導 50 50 中国国家電網公司の劉振亜総経理と東京電 力・勝俣社長。UHV建設計画の技術支援、協 力協定で署名。 ミスマッチを生じる可能性も出 いが中国とのビジネスにおいて 続けます。そうした、考え方の違 20 20 は何故そんな些細なことに拘るの あい始めた当初は、 「日本の技術者 の経験ですが、中国関係者とつき 粘りはかなり必要ですね。私自身 いけると思います。ただし、根気と ナーとして互いの利益を追求して 感じてもらえれば、ビジネスパート と組むことの定性的なメリットを 方の良い部分を認めてもらい、日本 そこで、中国には日本的なやり いけるのかなどを常に見ながら進 協同してプロジェクトに参画して か、あるいは中国の電気事業者と カーに対して我々が発注できるの ク ト に し て も、 中 国 の 製 造 メ ー えば、第三国で展開するプロジェ て取り組む必要があります。たと あたっては、中国の存在を意識し すから、海外でのビジネス展開に 中国の影を感じるくらいです。で などアジア各国のどこに行っても ています。 ベトナム、 インドネシア います。 築いていくことが私も大切だと思 づけて、中国企業と良好な関係を のビジネスパートナーとして位置 だけ見るのでなくむしろ第三国で 意味では、中国をライバルとして イバルになってきています。その はあらゆる分野で日本の手強いラ があり、国際プロジェクトの場で 松岡 中国の企業は、本当に勢い 課題だと受けとめています。 業を展開するかが、今後の大きな てきます。 だ」と怪訝な表情を何度もされま 納得してもらえるのです。中国との 「なるほどそういう理由か」と深く に、中国国内でどう事業展開する 国際競争力を高めている相手だけ 中 国 製 が 一 番 安 い の は 明 白 で す。 て い ま す。 主 要 機 器 の 値 段 な ら、 り、様々な国で入札に参加し始め 押しで各国と戦略協定を結んだ ワーク会社を買収したり、国の後 ので、先ずはコンサルティングの 有償契約を結ぶことは依然難しい ところです。ただし、はじめから 術交流を実現したいと考えている 力としても省エネ、環境関係の技 業の参画がありますので、東京電 電事業および高効率火力発電事 発電事業、Jパワーさんの水力発 案件として、九州電力さんの風力 そうした中で、すでに具体的な めていくべきです。 ビジネスでは、 そうした前提を覚悟 かという視点と合わせて、彼らと 世界から徐々に入り込み、パート 資料を整えて繰り返し説明すれば 中 国 は、 フ ィ リ ピ ン の ネ ッ ト した。しかし、 相手に分かるように 石渡 最近は、国際事業全体の中 どう上手くつきあいながら国際事 存在感が高まる中国との 協調関係の構築 しないといけません。 で、中国の存在感が非常に高まっ 21 座談会 電力分野から見た中国ビジネスの可能性 特別 記事 いう発言が報道されています。開 備容量を6000万kWにすると 係者からは、その割合を %、設 した。しかし、最近では、政府関 としては、約 %を目指す計画で 開発、電源設備全体に占める割合 4000万kWの原子力発電所を 年 ま で は、2020年 ま で に 計 kWの発電所が稼動しており、昨 力 利 用 で は、 現 在、 約900万 中山 中国での電力分野の原子 がですか。 岡部 原子力開発についてはいか きだと思います。 ナーとしての関係を築いていくべ 運営をしていけるのではないか いながら、原子力発電所の安全な 今後も、日中双方が切磋琢磨しあ 施 し て い ま す。 こ れ ら を 通 じ て、 ント研修を毎年、日本や現地で実 所の運営管理に関するマネジメ 子力技術者を対象に、原子力発電 協力を仰ぎ、中国、ロシア等の原 は、日本政府の資金と電力各社の 弱点を認識しています。海電調で らの多くがマネジメント面での 電 力 関 係 者 と 話 し て い る と、 彼 かし、中国の原子力以外の一般の なことは日本と変わりません。し 計はもちろん、安全運用が最重要 ます。それだけに、設備の安全設 乗って日本への影響も考えられ 生しますと、最悪の場合、西風に ま す。 原 子 力 は 万 が 一 事 故 が 発 ろと勉強しているようです。いず ては、料金の在り方も含めいろい 石渡 中国では、揚水発電につい くなっています。 電所の設備比率も日本に比べて低 その現れでもありますが、揚水発 が ま だ 十 分 で は な い と 思 い ま す。 立川 中国では 「系統安定化対策」 可能性があるように思います。 が、中国でのビジネスに活かせる 実現している日本の技術ノウハウ 送配電分野で質の高いサービスを 求められるはずです。 その点では、 けば、質の高い電力は当然の如く 済がさらに発展し豊かになってい いった話をよく聞きます。 今後、 経 造ラインに悪影響が出て困ったと 関係者からは、電圧変動などで製 データと、日本から進出した工場 なり大きいようです。公表される 原子力運営マネジメントの 協力は両国間の課題 発資金も、借り入れに困らない状 と思います。 5 むのではないかと思っています。 す。 周 波 数 変 動 や 電 圧 変 動 が か 問題も重要ではないかと思いま で、引き続き地道に営業活動を続 れる時期が必ず来ると思われるの 値は確実で、それ以上の開発が進 それから、中国では電気の質の 5 さて、そこで肝心なことがあり れ大規模揚水発電の価値も認めら 況ですから、たぶん %以上の数 4 22 けていきたいと考えています。 るようです。将来、ガス供給量が いまのところやや魅力を欠いてい ス資源の調達が難しく、発電事業 その点で、ガスタービン発電へ 増えれば、また話は違ってくるか どが石炭焚きなので、環境面では の関心が高まると思ったのです もしれません。 まで回らず、価格も高騰している が、最近はやや熱が冷めているよ 排煙脱硫装置の設置など、対策を 岡部 最近の石油価格高騰、資源 うです。以前は、環境対策として ことから、発電事業者にとっては 枯渇の問題、地球環境など将来の 急いできました。 展望の中で、中国をどう考えます ガスタービン開発への意気込みも 当社では以前から、中国側にガ 中国にとってやや魅力を欠 くガス火力開発 か。 セリングビジョンが開催した BCT の日本の試験会場 (昨年 12 月に日本初実施) スタービン発電所の運転技術指導 23 あったのです。しかし、最近はガ BCT(ビジネス中国語検定試験)の北京会議でセリングビジョ ンがスピーチ(昨年)。 松岡 中国の場合、火力発電の殆 今年 4 月 5 日、6 日に中国政府から招聘され日本の中国語検 定機関を代表してセリングビジョンが参加した「中国語検定 試験国際会議」の北京集合写真(31 か国、60 名)。 座談会 電力分野から見た中国ビジネスの可能性 特別 記事 運用できているかは未知数であ 設置していても、実際にちゃんと ません。しかし、中国では機器は ンスの可能性は低いのかもしれ から、機器売りでのビジネスチャ カーが安価に供給していること 移転も相当進んでおり、中国メー 立川 脱硫装置は中国への技術 らないと思います。 工場進出しないと商売にはつなが は 中 国 国 内 が 前 提 に な っ て お り、 があります。ただし、装置の製造 本にもビジネスチャンスの可能性 置が義務づけられているので、日 が、 石炭火力には、 中国でも脱硫装 中山 石炭火力に話題を戻します ね。 ントの開発意欲は先細っています などを続けていますが、新規プラ それでは、いくら立派な法律を整 在 の 中 国 は 地 方 の 役 所 任 せ で す。 中山 環境への取り締まりも、現 か注視しています。 のようなビジネスモデルとなるの 動するという特性がある中で、ど 画を検討していますが、発電と連 行わせる指導が出され、当社も参 今般、脱硫装置の運転を別会社に ら れ て い な い 可 能 性 が あ り ま す。 性能や信頼性にはあまり目が向け 設置が目的とされ、装置としての 機 器 代 の 異 常 な 安 さ か ら す る と、 の 設 置 が 義 務 づ け ら れ ま し た が、 があったと思われます。脱硫装置 意識が十分浸透していなかった面 には、利益を優先し環境に対する たが、これまで中国の事業者の中 石渡 先ほど岡部さんが触れまし せん。 会の創出に繋がるのかもしれま ザが保有する知見がビジネス機 ナンスなどの観点で、日本のユー た。 思います。ありがとうございまし の事業を考えていただければと のお話しを踏まえながら、中国で とても有意義でした。今後も本日 係 に つ い て お 話 し を お 伺 い で き、 日は、大きく変化する中国との関 ますが、時間がまいりました。本 岡部 お話しが盛り上がってい ん。 スの期待も出てくるかもしれませ 俟って、日本にもビジネスチャン 正されれば、環境意識の変化と相 つある中、その辺りがきちんと是 国間の大きな協力テーマになりつ しょうか。現在、「環境」は日中両 せにすると逆になるということで すが、中国の場合は地方の役所任 リングを実に厳しく実施していま 発電所からの排ガスに対しモニタ 石渡 日 本 の 地 方 公 共 団 体 で は、 います。 備しても「ザル法」に陥ってしま 中国にも脱硫装置の運用ノ ウハウが必要 り、たとえば機器の運用やメンテ 24
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