食用ナバナの根こぶ病対策(PDF:216KB)

食用ナバナの根こぶ病対策
春を感じさせる野菜として人気の高い
「食用ナバナ」
の根こぶ病対策を紹介します。
1.原因と症状
ア ブ ラナ 科野 菜 で発 生 す る根 こぶ 病 の原 因 は ネコ ブカ ビ ( Plasmodiophora
brassicae)です。根にこぶができると根の吸水が阻害され、晴天時には地上部の萎れ
が見られます。発病した株は根張りが悪く、生育不良となり減収します。激発した圃
場では収穫が皆無になることもあります。
2.安房地域での発生状況
県内最大の食用ナバナ産地である安房地域でも根こぶ病の発生は大きな問題となっ
ています。
平成 20 年度に実施したアンケートでは 2 割以上の生産者の圃場で根こぶ病
が発生しています。また、薬剤を使用し抵抗性品種を栽培しても発病する圃場が確認
されており、このような圃場は連作により土壌中の菌密度が高くなっていると考えら
れます。根こぶ病の克服に向け、生産者、JA、試験研究機関等が連携して総合的防
除の取り組みを推進しています。
3.対策
根こぶ病の防除は薬剤の使用や抵抗性品種の利用だけでなく土壌改良など複数の対
策を組み合わせて総合的に行うことが重要です。以下に各防除技術を紹介します。
(1)土壌pHの矯正
根こぶ病はpH6 以下の酸性土壌で発病が多い一方で、
土壌pH7.2 以上では発病が
著しく抑制されます。酸性土壌の改良は苦土石灰の場合 10a あたり 100kgを目安に
施用します(もとの土壌pHにより施用量は異なります)
。ただし、土壌の酸性度が強
い場合は石灰資材だけでpHを上げることは困難です。またpHの上昇により微量要
素欠乏が発生する場合もあります。
微量要素欠乏を発生させずにpH7.2 以上に上げる方法として転炉スラグ※1の施
用があります。転炉スラグの施用量は 10a あたり 5t前後と多量ですが、土壌改良効
果は 10 年程度持続します
(図 1~3 は平成 22 年度に実施した転炉スラグ施用試験の結
果)
。
※1 転炉スラグとは、製鉄所の製鋼過程で生じる副産物で土壌改良資材として販売さ
れています(商品名「ミネカル」など)
。鉄、マンガン、ホウ素等の微量要素を含有し
ているので土壌pHが上昇しても微量要素の欠乏が生じにくい資材です。
(2)排水対策
根こぶ病は水を介して感染が広がります。排水不良の圃場は明きょを掘る、高畝(20
~30cm)にする等の排水対策をします。
(3)抵抗性品種の利用
各種苗会社から抵抗性品種が販売されています。抵抗性品種の利用は根こぶ病対策
に有効ですが、土壌菌密度が高くなっている圃場では抵抗性が打破される可能性もあ
ります。抵抗性品種の有用性を維持するには、菌密度を高めないように土壌を管理す
る必要があります。
(4)薬剤の使用
食用ナバナで登録のあるネビジン粉剤、フロンサイド粉剤はいずれも根こぶ病の休
眠胞子の発芽を阻害することで発病を抑制します。殺菌作用はないので使用しても土
壌菌密度は減少しない点に注意が必要です。また施用後に土壌としっかり混和するこ
とで安定した効果を発揮します。
(5)作期の変更
根こぶ病は地温が18℃~25℃で発病が多くなります。地温が低くなる10月中
旬以降に播種すると、発病のリスクが抑えられます。また、清潔な培養土で育苗して
から定植するのも有効です。
(6)おとり作物の利用
葉ダイコンやエンバク等を食用ナバナの前作に栽培すると、土壌中の菌密度を減少
させることができます。これらの作物はおとり作物と呼ばれています。おとり作物は
播種後 1 カ月程度栽培し、栽培後は土壌にすき込み 1 カ月程度腐熟させます。
(7)発病株の持ち出し
発病株の地下部を圃場に残しすき込むと、根こぶ病の休眠胞子を土壌中に分散させ
ることになります。発病株は根ごと引き抜き圃場外で処分するのが理想です。
図 1 転炉スラグ区
図 2 対照区(苦土石灰で土壌改良)
試験品種は両試験区とも花かんざし(抵抗性品種)
100
80
花かんざしの発病度
間引き時(11/30)
収穫後(1/27)
68.3
60
42.0
40
20
1.5
0
図 3 花かんざしの発病度
0
転炉スラグ区
対照区
※発病度は最大 100