4 - 神奈川土建 南横浜支部

働くための基礎知識
Ⅰ 働く人に役立つ法律 2
Ⅱ 労働条件
①労働契約・就業規則 4
②労働時間・休憩・休日 6
③年次有給休暇 10
④賃金 12
⑤解雇 16
⑥退職 20
⑦定年退職 22
⑧配置転換・出向 24
⑨懲戒処分・損害賠償 26
⑩労働契約・委託契約・請負契約 28
Ⅲ 各種保険
①労災保険 30
②雇用保険 32
③健康保険 37
④厚生年金保険 40
Ⅳ 男女雇用平等・障害者雇用・外国人労働者
①セクシュアル・ハラスメント 44
②女性労働者・母性保護 46
③育児・介護休業法 48
④男女雇用機会均等法 51
⑤障害者雇用 53
⑥外国人労働者 55
Ⅴ パート・派遣労働者
①パートタイム労働 57
②派遣労働 60
Ⅵ 税金 63
Ⅶ 裁判所の手続き
①裁判所の手続き 66
②労働審判制度 68
相談窓口 労働関係機関一覧 70
①労働センター
②労働基準監督署など
③公共職業安定所(ハローワーク)
④区役所
⑤女性のための総合相談機関
⑥若年者・中高年齢者のための総合相談機関
⑦社会保険事務所など
⑧税務署
⑨職業訓練校など
⑩裁判所
労働条件通知書(雇入通知書) 74
横浜しごと支援センタ− 76
1
1
働くための基礎知識
Ⅰ.働く人に役立つ法律
働く人に役立つ法律
1
●
働き始める前に、働く人(労働者)に役立つ法律の知識を得てお
きましょう。
2 ここで労働者とは、他人(使用者)から指揮監督を受けて事業に
●
使用され、かつ賃金を支払われる者をいいます。
3 平成19年10月1日から労働者の募集及び採用の際には、原則と
●
して年齢を不問にしなければなりません。
労働基準法
●この法律は、労働者の保護を目的とした基本法で、賃金、労働時間等の労働
条件に関する最低基準を定めています。基準を下回る労働契約は、その部分
は無効となり、同法の基準がそのまま契約の内容となります。また、基準以
下で労働者を使用した使用者には、罰則が適用される場合があります。
労働契約法
●この法律は、就業形態の多様化、個別労働紛争の増加等に対応し、個別の労働者
と使用者の労働関係が良好なものになるように労働関係の成立、変更、終了等に
関する基本的なルールを整えることにより、紛争が防止され、労働者の保護が図
られ、個別の労働関係が安定することを目的としています。(参照5ページ)
パートタイム労働法
●この法律は、パートタイム労働者(通常の労働者より1週間の労働時間が短い労働者)に
ついて、適正な労働条件の確保や雇用管理の改善などを図ることにより、パートタイム労働
者の持っている能力を発揮し、福祉を増進することを目的としています。
(参照57ページ)
男女雇用機会均等法
●この法律は、雇用の分野において男女の均等な機会及び待遇の確保を図ると
ともに、女性労働者の就業に関して妊娠中及び出産後の健康の確保を図る等
の措置を推進することを目的としています。
(参照51ページ)
育児・介護休業法
●この法律は、育児及び家族の介護を行う労働者に対する支援措置を講ずるこ
と等により、このような労働者が退職せずに済むようにし、その雇用の継続
2
を図るとともに、育児及び家族の介護のために退職した労働者の再就職の促
進を図ることを目的としています。
(参照48ページ)
労働者派遣法
●この法律は、労働者派遣事業の適正な運営の確保や派遣労働者の就業に関す
る条件の整備を図ることにより、派遣労働者の雇用の安定その他福祉の増進
を目的としています。
(参照61ページ)
最低賃金法
●この法律は、賃金の低い労働者について、職業の種類や地域に応じた賃金の最
低額を保障することにより、労働条件の改善を図ることを目的としています。
なお、最低額に満たない賃金を定めた場合は、その部分は無効となり最低賃
金額と同額の定めをしたものとみなします。
参考 神奈川県最低賃金(平成20年10月25日改定) 時間額 766円
産業別最低賃金(7産業)も規定されています。
詳しくは厚生労働省HP(http://www.mhlw.go.jp/)をご覧ください。
その他
●この法律は、会社倒産等により労働者の未払い賃金の支払等の適正化を図る
ため、保護措置等を講じ、労働者の生活の安定に資することを目的とする賃
金の支払いの確保等に関する法律(参照15ページ)
●労働条件その他労働関係に関する事項ついて、個々の労働者と事業主との紛
争を「あっせん」する制度により適正な解決を図ることを目的とする個別労
働関係紛争解決促進法(参照73ページ)
●労働者と事業主との間の個別労働関係民事紛争に関して、迅速、適正かつ実
効的な解決を図る労働審判制度を規定する労働審判法。
(参照68ページ)
●労働者災害補償保険法(労災保険法)、雇用保険法などの労働保険に関する
法律や健康保険法、厚生年金保険法といった社会保険に関する法律。
●職場における労働者の安全と健康を確保し、快適な職場環境を作ることを目
的とする労働安全衛生法。
●働く人たちが、労働組合を作り、使用者と交渉することを促す労働組合法、
労働関係調整法。
3
Ⅰ
働
く
人
に
役
立
つ
法
律
1
1
●
2
●
3
●
働くための基礎知識
Ⅱ.労働条件
労働契約・就業規則
後々のトラブルを避けるためにも労働契約は文書で結びましょう。
労働契約書・就業規則・労働条件通知書の交付を受けましょう。
退職金や賞与などは、就業規則などで決まりがなければ、支給さ
れるとは限りません。
労働契約
●労働契約とは、一定の対価(賃金)と一定の労働条件のもとに、自己の労働
を提供する契約をいい、労働者と使用者の間で、賃金その他の労働条件につ
いて取り交わされることになります。
●労働契約は、契約期間の定めのないものを除いて、原則として契約期間の最
長は3年です。ただし、高度な専門職や満60歳以上の労働者が締結する労働
契約の上限は5年です。
●使用者は、以下の賃金や労働条件について、労働者に明示しなければなりません。
イ 書面の交付で明示しなければいけないもの
●
①労働契約の期間
②仕事をする場所、仕事の内容
③始業・終業時刻、時間外労働の有無、休憩時間、休日、休暇など
④賃金(諸手当を含む)の決定、計算及び支払の方法、締切日及び支
払日に関すること
⑤退職に関すること(解雇の事由を含む)
ロ 決まりがあれば明示しなければいけないもの
●
①昇給に関する事項
②退職手当(退職金)に関すること
③賞与(ボーナス)などに関すること
④労働者に負担させる食費、作業用品などに関すること
⑤安全・衛生に関すること
⑥職業訓練に関すること
⑦災害補償、業務外の傷病扶助に関すること
⑧表彰、制裁に関すること
⑨休職に関すること
●労働契約で明示された賃金や労働条件が事実と異なるときは、労働者は、即
時にその労働契約を解除できます。
4
就業規則
●就業規則とは、事業場において、労働者が就業上守らなければならない規律
や労働条件に関する具体的な細目について定めた規則などをいいます。
●常時10人以上の労働者(パートタイマーなどを含む)を使用する使用者は、
就業規則を作成し、労働基準監督署に届け出なければなりません。
●就業規則の作成・変更をする場合には、労働者(労働組合または過半数の代
表者)の意見を聴く必要があります。
●使用者は、就業規則を事業場の見えやすい場所へ掲示するなどして、労働者
に周知しなければなりません。
労働契約法の概要
●労働契約法の締結 契約内容を確認することによって誤解が減り、労使が相
互理解の上で労働者が安心・納得して就労できるために、①∼⑤を明記。
①対等の立場の合意原則を明確化
②均衡考慮及び仕事と生活の調和への配慮を規定
③契約内容の理解を促進(情報の提供等)
④契約内容(有期労働契約に関する事項を含む)をできるだけ書面で確認
⑤安全配慮
●労働契約の変更 労働契約の成立・変更の原則や、労働契約と就業規則の関
係を明らかにするために、①∼③を明記。
①合意原則の明確化
②一方的に就業規則の変更により労働者に不利益な変更ができないこと
③労働者の受ける不利益の程度、労働条件の変更の必要性、変更後の就業規
則の内容の相当性、労働組合等との交渉の状況その他の就業規則の変更に
係る事情を考慮して、就業規則の変更が合理的で労働者に周知されている
場合は労働条件が変更されること
解雇等を防止するために、
①∼③を明記。
●労働契約の継続・終了 不当な懲戒、
①出向命令の権利濫用は無効
②解雇の権利濫用は無効(労働基準法から移行)
③懲戒の権利濫用は無効等
●有期労働契約 有期契約労働者が安心して働けるように、①、②を明記。
①契約期間中はやむを得ない事由がある場合でなければ、解雇できないこと
を明確化
②契約期間が必要以上に細切れにならないよう、使用者に配慮を求めること
Ⅱ
労
働
条
件
5
2
働くための基礎知識
Ⅱ.労働条件
労働時間・休憩・休日
1
●
法定労働時間は、1日8時間、1週40時間(休憩時間を除いた実
働時間)が原則です。
2 法定労働時間を超える労働に対しては「三六協定の締結」と「割
●
増賃金の支払い」が義務づけられています。
3 所定労働時間とは、法定労働時間内で、就業規則などで定められ
●
た始業時から終業時までの時間(休憩時間を除く)をいいます。
労働時間
●労働時間とは、「使用者の指揮監督下にある時間」をいい、始業時から終業
時までの拘束時間から休憩時間を除いた時間になります。さらに、実際に業
務に従事していない作業の準備時間、作業後の後始末時間や昼休みの電話番
や来客対応の時間も労働時間になります。
労働時間の原則(法定労働時間)
●法定労働時間は、休憩時間を除き、1日8時間、1週40時間と定められてい
ますので、就業規則や労働契約書などで所定労働時間を定める場合は、この
時間以下にしなければなりません。
なお、特例措置として、商業、保健衛生業(保育所を含む)、接客娯楽業な
どで、労働者が常時10人未満の事業所は、1週44時間と定められています。
法定労働時間の例外
●法定労働時間の例外として次の三種類があります。
イ 変形労働時間制
●
ロ 災害等による臨時の必要がある場合の時間外労働・休日労働
●
ハ 三六協定による時間外労働・休日労働
●
●変形労働時間制とは、毎週又は毎日の所定労働時間を、固定した労働時間と
しないで、一定の期間内の総労働時間の枠内で(もちろん法定の範囲内に限
られます)
、1日や1週、1か月の労働時間に長短の変化を持たせるものです。
事業所運営の都合により実施されることが多い制度ですが、労働時間の短縮
のための採用も多くなっています。
なお、一定の期間内の総労働時間が法定の枠に収まっていれば、割増賃金の
支払は不要です。
6
変形労働時間制
● 1か月単位の変形労働時間制
1か月の期間を平均して1週40時間にする方法
就業規則または労使協定で定め、労働基準監督署へ届け出ます。
● 1年単位の変形労働時間制
1年以内の期間を平均して1週40時間にする方法
労使協定で定め、労働基準監督署へ届け出ます。
● 1週間単位の非定型的変形労働時間制
労働者数が30人未満の小売・飲食店などで、次週の繁忙度により次週
各日の労働時間を決め、1週平均40時間にする方法
労使協定で定め、労働基準監督署へ届け出ます。
その他労働時間制
● フレックスタイム制
1か月以内の一定期間の総労働時間をあらかじめ定めておき、その枠内
で各日の始業・終業の時刻を労働者の決定にゆだねる方法
就業規則および労使協定で定めます。
● 裁量労働制
実際の労働時間数にかかわらず一定の時間数だけ労働したとみなす方法
・専門業務型 労使協定で定め労働基準監督署へ届け出ます。
・企画業務型 労使委員会の決議を労働基準監督署へ届け出ます。
●三六協定による時間外労働・休日労働をするためには、次の要件を満たす必
要があります。
①就業規則などに規定されていて労働条件の内容となっていること。
②労使協定(三六協定)を締結し、労働基準監督署に届け出てあること。
③厚生労働大臣の定める基準の時間内の定め(上限基準時間)に従っている
こと。
④割増賃金が支払われること。
Ⅱ
労
働
条
件
7
時間外労働
●労働者が終業時間をすぎても仕事をしていることを、一般に残業と呼びます
が、法律では、
「時間外労働」と「所定時間外労働」に区別されます。
●時間外労働とは、法定労働時間を超える残業をいい、割増賃金の支払いが必
要です。
●所定時間外労働とは、法定労働時間内の残業をいい、割増賃金の支払いは任
意です。
休 憩
●使用者は、労働時間が6時間を超える場合には少なくとも45分、8時間を超
える場合には少なくとも1時間の休憩時間を、労働時間の途中に与えなけれ
ばならないとされています。
●休憩時間中は、労働者は、その時間を自由に利用することができます。従っ
て、就労のために待機しているような時間は、休憩時間にはあたりません。
●休憩はその効果をあげるために、全労働者に対して一斉に与えなければなり
ません。これを一斉休憩の原則といいます。ただし、労使協定を締結した場
合などには、休憩を一斉に与えないことができます。
休 日
●休日とは、労働提供義務のない日をいいます。
●使用者は、毎週少なくとも1日の休日(法定休日)を与えなければなりませ
ん。なお、労働者ごとに休日が異なっても問題ありません。
●法定休日は、一般にいう日曜日や国民の祝日とは意味が異なります。
●就業規則で4週の起算日を定めれば、4週間で4日の休日とする制度(変形週
休制)を採用することも可能です。なお、労働者のためには、休日は特定さ
れることが望ましいとされています。
8
休日の振替と代休
●休日の振替とは、就業規則などで定めることにより、あらかじめ休日と定め
られた日を別の日に振替え、その代わりに、あらかじめ休日と定められた日
を労働日とすることをいいます。この場合は、あらかじめ休日の振替をして
いるので、割増賃金の支払いは必要ありません。
●代休とは、休日労働をさせたあとで、その休日労働の代わりに、通常の労働
日に労働を免除することをいいます。この場合、労働した日はあくまで休日
ですので、割増賃金の支払いが必要になります。
休暇
●休暇とは、労働契約上の労働日についてその労働提供義務を免除する制度で、
休日とは異なります。
●休暇には、労働基準法などで定められている法定休暇(年次有給休暇、生理
日の休暇、育児休業、介護休業)と、就業規則などで規定する法定外休暇
(夏季休暇、慶弔休暇、病気休暇、リフレッシュ休暇等)があります。
● 法定外休暇中の賃金は、法律の定めがありませんので、就業規則や労使間の
話し合いなどで付与する事由、休暇の日数を含めて決めることになります。
Q
■
三六(さぶろく)協定とは?
A
■
時間外労働や休日労働をさせるには、この協定の締結が必要です。労働
者の過半数が加入する労働組合のある事業所では、使用者と労働組合が、
それ以外は、労働者の過半数の代表者と使用者が締結することになりま
す。なお、労働基準法36条にこの規定があることから、三六協定とよば
れています。
Ⅱ
労
働
条
件
9
3
働くための基礎知識
Ⅱ.労働条件
年次有給休暇
1
●
年次有給休暇(有給休暇)は、何時、どんな理由で、どのように
使用するかは、労働者の自由です。
2 有給休暇は、働き始めてから6か月たてば、8割以上の出勤を条件
●
として誰にでも与えられます。
3 有給休暇は、使用しないと2年間で時効により消滅します。
●
年次有給休暇
●有給休暇とは、休日以外に、労働者に精神的・肉体的な疲労回復の機会を与
えるため、有給で、労働者に、労働日の労働提供義務を免除する制度をいい
ます。もちろん、有給休暇をどのように利用するかは労働者の自由であるこ
とは通常の休日と同じです。
付与条件
●有給休暇は、雇入れの日から6か月継続して勤務し、所定労働日の8割以上
出勤した者に対して最初は10日与えられます。その後は、勤務年数に応じ
て、8割以上の出勤を条件として下表のとおり付与されます。期間の定めの
ある労働契約でも、6か月継続勤務をすれば上記の要件により与えられます。
なお、出勤率の計算に際しては、有給休暇、産前・産後休業、早退・遅刻な
どの日は、出勤したものとみなされます。
年次有給休暇の繰越
●有給休暇の未消化分は繰り越されます。たとえば、前年の未消化の有給休暇
が5日あり、勤続年数6年6か月以上のときは、新たに20日の有給休暇が発
生するため、その年は合計で25日の有給休暇を取ることができます。ただ
し、有給休暇を取る権利は2年で時効により消滅しますから、翌々年に繰り
越すことはできません。
10
時季変更権
●時季変更権とは、会社の事業の正常な運営を妨げる場合に、労働者が申し出
た有給休暇の時季を、使用者が変更できる権利をいいます。
「事業の正常な運営を妨げる場合」とは、事業所を基準として、事業の規模、
担当する作業の内容、代行者配置の難易など諸般の事情を考慮して客観的に
判断すべきであって、単に業務が繁忙である、人員が不足しているなどの理
由だけで有給休暇を与えないことは許されません。
計画的付与
●計画的付与とは、労使協定により、労働者がその年に取得できる有給休暇のうち
「5日を超える日数分」については、使用者が日を指定し、その日に有給休暇を付
与することができます。たとえば、取得できる有給休暇が15日ある労働者につ
いては、5日を除いた残りの10日分が計画付与の対象となります。
年次有給休暇の買上げ・分割付与
●使用者が、労働者に有給休暇を放棄させたり、買上げたりすることは厳しく
禁止されています。
しかし、次の場合には、有給休暇を買上げることが許されています。
イ 法律で定められている以上の有給休暇が与えられ、その超過分を買上げること
●
ロ 時効(2年間)にかかってしまった有給休暇を買上げること
●
ハ 退職する労働者が使っていなかった有給休暇を退職時に買上げること
●
●有給休暇を半日単位で与え、0.5日として計算することは、事業所の判断で
行ってよいとされています。
Q
■
有給休暇を取りたい旨を使用者に話したところ、「それなら皆勤手当は出
さない」と嫌みを言われました。有給休暇は労働者にとって、当然の権
利だと思うのですが……。
A
■
そのとおりです。労働基準法は使用者に対して、労働者が有給休暇を取
ったことを理由として不利益な扱いをすることを禁止しています。もち
ろん、皆勤手当の算定において有給休暇の取得日は出勤として取り扱わ
なければいけません。使用者の言い分は法律上許されません。
Ⅱ
労
働
条
件
11
4
働くための基礎知識
Ⅱ.労働条件
賃 金
1
●
2
●
賃金支払いの5つの原則を理解しましょう。
退職金や賞与などは、就業規則などで決まりがなければ、支給さ
れるとは限りません。
3
● 時間外労働や休日労働に対しては、必ず割増賃金が支払われます。
賃 金
●賃金とは、いわゆる賃金、給料はもとより、各種の手当、賞与、退職金など、
名称のいかんを問わず、労働契約の継続中に、労働の対価として、使用者が
支払うすべてのものをいいます。
賃金支払いの原則
●賃金は、労働者とその家族の生活を支える唯一のものですから、労働者が安
心して働くためには、定められた賃金が支給日に確実に支払われなければな
りません。そのため労働基準法は、賃金の支払いを確実なものとするために、
次の5つの厳格な原則を定めています。
なお、賃金支払いの原則違反に対しては、労働基準法により罰則が設けられ
ています。
退職金・賞与
●退職金や賞与は、法律上強制されていませんので、必ず支給されるものでは
毎月1回以上 毎月1回以上支払わなければ 臨時に支払われる賃金や賞与その他これに準ずるもので命
支払い
ならない
令で定めるものは除かれます
ありません。しかし、就業規則(退職金規程)や労働契約書などで支給が義
一定期日
「給料日」は必ず特定しなけ 賃金の支払日が休日に該当する場合、就業規則等によって
務づけられている場合は、退職金や賞与は賃金であるといえます。
支払い
ればならない
その前後の日いづれかを支払日とすることができます。
12
本人が病気などで受け取れない場合には、配偶者などの「使
者」に支払うことが認められます
●通常の賃金の請求権は2年で消滅時効にかかりますが、退職金は高額になる
ことが一般的なため、労働者保護の立場からその請求権の消滅時効は5年と
なっています。
割増賃金
●使用者は、次の場合、法律上割増賃金の支払いが義務づけられています。
イ 時間外労働:法定労働時間を超える時間外労働には、25%以上の割
●
増賃金
ロ
● 休日労働:法定休日に労働した場合には、35%以上の割増賃金
ハ 深夜労働:午後10時から午前5時までの時間帯に労働した場合には、
●
25%以上の割増賃金
*時間外労働と深夜労働が重複した場合には50%以上の割増率(25%+25%)
*休日労働と深夜労働が重複した場合には60%以上の割増率(35%+25%)
休業手当
●使用者の責めに帰すべき事由で、労働者を休業させた場合には、使用者はそ
の労働者に対して平均賃金の6割以上の休業手当を支払う必要があります。
●使用者の責めに帰すべき事由には、資材不足・事業場の設備の欠陥など経営
上の理由、使用者の故意・過失による場合など広く含みます。ただし、天災
地変などの不可抗力による場合は含みません。
●事業の全部または一部が停止される場合だけでなく、特定の労働者に対して
その意思に反して就業を拒否する場合も含まれます。
●休業手当は「賃金」とみなされ、労働基準法上の賃金支払いの原則などが適
用されます。
13
Ⅱ
労
働
条
件
減給制裁の制限
●減給制裁とは、労働者の企業秩序違反、服務規律違反に対して、使用者によ
って科せられる懲戒処分の1つで、その労働者が受けるべき賃金の中から一
定額を差し引くことをいいます。
●減給額があまりにも多額になると、労働者の生活をおびやかすことになるの
で、法律はその限度を定めています。
イ 懲戒事由が1回の場合には、減給できるのはその労働者の平均賃金の
●
1日分の50%以内まで
ロ
● 賃金の支払い期間中に、いくつかの懲戒事由が重なった場合には、賃
金総額の10%以内まで
平均賃金
●平均賃金は、解雇予告手当・休業手当・有給休暇取得時の賃金・減給制裁の
制限額・労災保険の給付金など、一定の手当や減給処分、補償の算定をする
ときの基準となるものです。
●基本的な算出法
●算定期間および賃金総額から除外されるもの
業務上の傷病による休業期間、産前・産後の休業期間、使用者の責めに帰す
べき事由による休業期間、育児・介護休業期間、試みの使用期間。
●賃金総額から除外されるもの
臨時に支払われた賃金(退職金等)
、3か月を超える期間ごとに支払われる賃
金(賞与等)
、現物支給(法令・労働協約の定めによるものを除く)など。
14
未払賃金の立替払制度
●会社が倒産して一定の期間内に退職した労働者に対して、賃金や退職金の未
払いがあった場合、その一部を労働者健康福祉機構が事業主に代わって立て
替え払いしてくれる制度です。
●事業主の要件
イ その事業が労災保険の適用事業に該当すること
●
ロ 1年以上その事業を行っていたこと
●
ハ 破産宣告を受けるなど一定の倒産事由に該当すること(中小企業事業主
●
ニ については、事実上の倒産であると労働基準監督署長が認定したこと)
●労働者の要件
イ 破産手続開始等の申立日または労働基準監督署への認定申請日の6か
●
月前の日から2年の間に退職していること
ロ
● 退職日から6か月前以降に賃金、退職金に未払いがあること
●立て替え払いの対象となる未払い賃金
は、退職日の6か月前から労働者健康福
祉機構への立て替え払い請求日の前日
までに支払期日が来ている賃金総額の8
割です。ただし、未払い賃金総額には
退職時の労働者の年齢によって、右表
のように限度額が設けられています。
(問い合せ先:事業所の所在地を管轄
する労働基準監督署)
Q
■
年俸制が導入された場合、例えば時間外労働や休日労働、深夜労働をし
ても割増賃金は払ってもらえないのでしょうか?
A
■
たとえ年俸制を導入していても、労働者が時間外・休日・深夜労働をし
た以上、使用者には法律上当然に割増賃金の支払い義務があります。た
だし、労基法41条に定める管理監督者等に対しては、同法の労働時間・
休憩・休日に関する規定は適用されませんので、この場合は深夜労働に
ついてのみ割増賃金の支払い義務が発生することになります。
Ⅱ
労
働
条
件
15
5
働くための基礎知識
Ⅱ.労働条件
解 雇
1
●
解雇とは、使用者から一方的に労働契約を終了させることをいい
ます。
2 解雇は労働者にとって極めて深刻なことですから、法律などで制
●
限がなされています。
3 懲戒解雇の場合でも、原則として、解雇予告が必要です。
●
解 雇
●解雇とは、労働者の意思に関わりなく、使用者の一方的な意思により労働契
約を終了させることです。労働者の意思による退職、契約期間の満了または
定年による退職とは異なります。
使用者が労働者を解雇するためには、解雇予告の手続きを行うことや解雇制
限規定に反しないことはもちろん、「合理的な理由があり、社会通念上相当
である」ことが必要とされています。
解雇の種類
●普通解雇
労働者に労働契約(労働の提供)を継続し難いやむを得ない事由があるとき
に、使用者が労働契約を解消することです。具体的には、①労働能力の問題、
②健康状態の問題、③協調性の著しい欠如、④勤務態度不良、などが考えら
れます。しかし、これらの事実があったとしても、すぐに解雇の理由となる
わけではありません。
●整理解雇
業績の悪化により経営の合理化、整備に伴って生じる余剰人員を整理するた
めに行われる解雇です。なお、判例により、整理解雇の有効要件として、以
下の4つの要件を満たす必要があるとされています。
イ 人員削減が経営上の必要性があること
●
ロ 解雇を回避するための努力を十分に尽くしたこと
●
ハ 解雇対象者の選定が客観的・合理的であること
●
ニ 解雇の必要性や実施方法などについて十分に説明し協議を尽くしたこ
●
と
16
●懲戒解雇
売上金横領など重大な企業秩序違反をした労働者に対して、使用者が罰とし
て労働契約を解消することです。
懲戒解雇の場合には、退職金を支払う必要がなかったり、解雇予告手当を支
払わずに即時に解雇することが可能となります。(労働基準監督署の解雇予
告除外認定が必要)
解雇予告手当
●30日前に解雇の予告をしない使用者は、予告に代えて30日分以上の平均賃
金を解雇予告手当として支払わなければなりません。即ち、30日分以上の
平均賃金を支払えば即時に解雇することができることになります。また、解
雇予告期間は予告に代わる平均賃金の支払いにより、支払った日数分だけ短
縮されます。
解雇予告手当を具体的に説明すると
a
●
b
●
c
●
6月20日に7月20日で解雇する旨の予告(予告期間30日)を行った
場合…………予告手当の支払いは不要です。
6月20日に即時解雇(予告期限無し)の申し渡しを行った場合
………………30日分以上の平均賃金の支払いが必要です。
6月20日に6月30日で解雇する旨の予告(予告期間10日)を行った
場合…………20日分以上の平均賃金の支払いが必要です。
※平均賃金とは、給与の最終締切日から過去3か月の給料の総支給額を、その3か月の総
日数でわった金額が1日の平均賃金となります。
(参照14ページ)
Ⅱ
労
働
条
件
17
解雇の要件
●解雇は、客観的に合理的な理由を欠き、社会通念上相当であると認められな
い場合は、その権利を濫用したものとして、無効とされます。「性格や仕事
ぶりが社風に合わない」
、
「上司との折り合いが悪い」
、
「性格が暗い」
、
「協調
性がない」などは、普通解雇の事由に当てはまらず、社会通念上も認められ
ないものと考えられます。
●解雇をするには、次の事項が必要です。
イ 就業規則や労働契約書などに記載されている解雇事由に該当する解雇
●
であること
ロ 少なくとも30日前の解雇予告または解雇予告手当の支払い
●
解雇制限
●次のような解雇は、法律上禁止されています。
イ 客観的に合理性を欠き、社会通念上相当であると認められない解雇
●
ロ 業務上の傷病による休業期間及びその後30日間以内の解雇
●
ハ 産前産後の休業期間及びその後30日間以内の解雇
●
ニ 国籍、信条、社会的身分を理由とする解雇
●
ホ 労働者が労働基準監督署へ申告したことを理由とする解雇
●
ヘ 労働組合の組合員であること、労働組合の正当な活動をしたことを理
●
由とする解雇
ト 女性であること、あるいは女性が婚姻、妊娠、出産したこと等を理由
●
とする解雇
チ 育児・介護休業の申出をしたこと、又は育児・介護休業を取得したこ
●
とを理由とする解雇
リ 個別労働関係紛争に関し、あっせん申請をしたこと等を理由とする解
●
雇
解雇時の注意点
●退職願は労働者から退職の申し出を行う場合に必要なものですから、使用者
からの解雇に対しては提出する義務はありません。
●解雇予告手当、退職金などを受領すると、解雇を認めたと受け取られる恐れ
があります。
18
解雇に対する対応
●解雇の撤回を求める場合には、次の行為を行い、その上で、行政機関や弁護
士、労働組合など信頼できるところに相談してください。なお、最終的には、
裁判上の手続きで解決がはかられることとなります。
イ 解雇の日付、解雇理由などが明記されている解雇通知書を請求する
●
ロ 就業規則や労働契約書などで解雇理由を確認する
●
ハ 解雇が法律の禁止規定に違反せず、合理的な理由と社会的相当性があり、
●
かつ解雇予告など適正な手続きが取られているかどうかを確認する
ニ
● 解雇は了解できない旨を文書で通知(内容証明郵便など)する
ホ 解雇予告手当が振込まれた場合は、賃金の一部として受領する旨を文
●
書で通知(内容証明郵便など)する
ヘ 仕事を休む場合には有給休暇の届出をする
●
雇止め
●使用者は有期労働契約(あらかじめ契約を更新しない旨を明示されているも
のを除きます)であっても、雇入れの日から1年を超えて継続勤務している
者あるいは契約を3回以上更新している者を更新しない場合には、少なくと
も契約期間の満了する30日前までに、雇止めの予告をしなければなりませ
ん。
Q
■
子供の病気で数日間休んだところ、「ひんぱんに休むパートタイマーはい
らない。辞めてもらう」と言われました。必ず、休むときは連絡し、無
断欠勤はしていません。なお、契約期間の定めはありません。
A 「パートタイマーだから、いつでも辞めさせることができる」というのは
■
誤りです。たとえ解雇するにしても、このケースのような「期間の定め
のない労働契約」の場合は、少なくとも30日以上前に解雇の予告を行う
か、平均賃金の30日分以上の解雇予告手当を支払うか、いずれかの方法
を取らなければなりません。
なお、解雇するには「合理的な理由(たびかさなる無断欠勤など)」が必
要とされています。
Ⅱ
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働
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件
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6
1
●
2
●
3
●
働くための基礎知識
Ⅱ.労働条件
退 職
労働者にはいつでも退職の自由が認められています。
労働契約は、退職、解雇、定年などにより終了します。
退職勧奨の承諾は労働者の意思にまかされています。
退 職
●退職には、労働者の一方的な意思表示によって労働契約を解消することがで
きる「自己退職」と、労働者と使用者が合意して労働契約を解消する「合意
退職」があります。また、その他に、契約期間満了退職、定年退職、死亡退
職などがあります。
退職の種類
●自己退職
一般的には「退職願」の提出により行われます。労働者の一方的な意思表示
で退職の効果が生ずるもので、使用者の同意や承諾は必要ありません。(た
だし、雇用期間が定められている場合を除く)
自己退職の申し出は、
イ 月給制、時給制、日給制の労働者については、14日前に予告をして
●
退職の手続きを取れば、契約は終了します。
ロ 完全月給制(欠勤、遅刻、早退による賃金の減給なし)の労働者につ
●
いては、給料の計算期間の前半で契約解消の意思表示をした場合はそ
の給料計算期間が終わるとき、給料計算期間の後半で意思表示をした
場合はその次の給与計算期間が終わるときに、契約は終了します。
●合意退職
労働者が労働契約の解消を申込み、使用者が承諾することによって退職の効
果が発生します。退職日は話し合いで自由に決めることができます。
●契約期間満了退職
1年間の期間を定めた契約社員や3か月の契約期間のパートタイマーは、そ
の契約期間が終了すると、退職ということになります。ただし、契約期間満
了で契約を終了させる場合でも、契約が更新されて1年以上継続勤務してい
ると、「雇止め」の手続きが必要になる場合や、契約が繰り返し更新され、
期間の定めのない契約と同様にみなされると、正当な解雇理由と解雇手続き
が必要となる可能性があります。
(参照16ページ)
20
●定年退職
労働者が一定の年齢に達したことを理由とする退職です。なお、定年制を採用する場合には、定
年年齢を段階的に60歳から65歳まで引き上げるなどの措置が必要です。(参照22ページ)
●希望退職
雇用調整の手段のために行われるもので、使用者から①募集期間、②募集人
数、③募集対象者、④退職金の上積みの有無などの条件が提示されます。希
望退職は、使用者の募集に対して労働者の自由意思によって応じるものです
から、応じるか否かは労働者自身が自由に判断できます。
●退職勧奨
使用者が労働者に対して退職の働きかけを行い、労働者に退職を勧めること、
あるいは使用者の合意退職の申込みに対する労働者の承認を求めることで
す。退職勧奨も希望退職の募集と同じように労働者に退職を強要するもので
はありませんから、承諾するかどうかは自分の意思で決めることができます。
退職の注意点
イ
●
ロ
●
ハ
●
ニ
●
ホ
●
請求することによって、退職日から7日以内に賃金を支払ってもらえ
ます。
就業規則などに退職金に関する規定があれば、退職金を受け取ること
ができます。
賃金は2年間、退職金は5年間で時効により請求権が消滅します。
請求すれば、使用期間、業務の種類、地位、賃金、退職の事由(解雇
の理由を含む)についての証明書を会社から交付してもらえます。
離職票を会社から受け取ることができます。
Q
■
就業規則などで退職の申し出期間が定められている場合、必ずその期間
を守って退職しなければなりませんか?
A
■
労働者は、自己退職の手続きさえ取れば、原則として、労働契約を解消
することができます。ただし、離職票発行のトラブルなどを避けるため
には、就業規則の規定に合理性がある限り、それに従った手続きを取る
ことが望ましいと思われます。
Ⅱ
労
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件
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1
●
2
●
3
●
働くための基礎知識
Ⅱ.労働条件
定年退職
定年年齢が60歳から引き上げられます。
定年退職後、働きながら年金を受給できる場合があります。
65歳前に受給できる部分年金や特別支給の老齢厚生年金は、失業
給付(基本手当)と一緒に受給することはできません。
定年年齢の引き上げ
●高年齢者雇用安定法が改正されて、65歳までの段階的な定年年齢引き上げ、
継続雇用制度の導入が義務化されました。
●定年年齢(65歳未満のものに限ります)の定めをしている使用者は、雇用
する労働者の65歳までの安定した雇用を確保するために、①定年年齢の引
き上げ ②継続雇用制度の導入 ③定年の定めの廃止 のいずれかの措置を
講じなければなりません。
●定年年齢の引き上げについては、年金(定額部分)の支給開始引き上げスケ
ジュールにあわせて、平成25年4月1日までに段階的に引き上げられます。
平成19年4月1日∼平成22年3月31日まで 63歳
平成22年4月1日∼平成25年3月31日まで 64歳
平成25年4月1日∼ 65歳 ●継続雇用制度とは、雇用している高年齢者が希望するときは、定年後も引き
続き雇用する制度で、
イ 定年年齢が設定されたまま、その定年年齢に到達した者が退職するこ
●
となく引き続き雇用される「勤務延長制度」と、
ロ
● 定年年齢に達した者をいったん退職させた後、再び雇用される「再雇
用制度」
の2つの制度があります。
定年退職後の働き方
●定年退職後(60歳∼64歳)については、その働き方によって、賃金や年金
による収入と健康保険や年金の保険料負担は、下記のケースが考えられます。
22
②パート勤務
①フルタイム勤務
(週20∼30時間未満勤務)
(嘱託、契約社員)
収 入
パートより高い
賃金
フルタイムより低い
在職老齢年金※1
年金
全額受給
高年齢雇用継続給付※2 受給可能
受給可能
負 担
負担あり
雇用保険料
負担あり※3
負担あり
健康保険料
−
負担あり
厚生年金保険料
−
健康保険任意継続または
−
負担あり
国民健康保険料
負担あり
配偶者の国民年金保険料※4 負担あり※5
定年後の働き方
(60歳∼64歳)
完全退職後の年金
増額になる
増えない
③自営業
収入の差が大きい
全額受給
受給不可能
−
−
−
負担あり
負担あり
増えない
※1 年金の基本月額と給料等の合計額によって年金の調整が行われる場合があります。
※2 賃金月額が60歳到達時に比べて75%未満となる労働条件で受給できる給付金です。
※3 労働条件によっては雇用保険の加入が発生せず、
その場合「高年齢雇用継続給付」は受給できません。
※4 60歳未満の配偶者は国民年金の強制加入者となります。
※5 配偶者が第3号被保険者になる場合、負担はありません。
●在職老齢年金
「在職老齢年金」とは、60歳以降在職し厚生年金に加入している人が支給
される老齢厚生年金について、賃金収入があることに着目して年金額の一部
又は全部の支給停止を行う仕組みを言います。60歳∼64歳までは「60歳
代前半の老齢厚生年金(参照41ページ)
」が支給されますが、この仕組みに
より、賃金と年金の合計月額が28万円を上回る場合、年金額の一部又は全
部が支給停止されます。
●高年齢雇用継続給付
高年齢雇用継続給付とは、定年退職後に再雇用されて、賃金が一定以上引き
下げられた場合に、賃金の低下をある程度補填するために雇用保険から支給
される給付金です。
受給要件は、
イ 60歳以上65歳未満の一般被保険者(短時間労働被保険者を含む)で
●
あること
ロ 被保険者であった期間が5年以上あること
●
ハ 60歳時点にくらべて75%未満の賃金であること
●
ニ 各月の賃金額が「337,343円(20年8月以降)
」未満であること
●
です。
23
Ⅱ
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8
1
●
2
●
3
●
働くための基礎知識
Ⅱ.労働条件
配置転換・出向
転勤命令でも拒否できる場合があります。
在籍出向と転籍では大きな違いがあります。
転籍は原則として労働者の個別的な同意が必要です。
配置転換(配転)
●配転とは、同一企業内において労働者の職務内容や勤務地を長期にわたって
変更するもので、このうち勤務地の変更が転勤です。
就業規則などに「業務上の必要性がある場合には、配転を命ずることができ
る」旨の一般条項が定められていれば、使用者に配転を命ずる権限(配転命
令権)があるものとされています。
したがって、労働契約で職務内容や勤務地などを限定していない限り、労働
者は使用者の配転命令に従わなければなりません。
ただし、業務上の必要性と労働者の職業上、生活上の不利益等を比較考慮し
て権利の濫用として無効とされる場合があります。
出 向
●出向とは、自社の労働者を子会社や関連会社などにおいて就業させる制度で
す。同一企業内での職務内容または勤務地が変わる配転とは違って、出向は
勤務する会社が変わります。出向には在籍出向と転籍があり、元の使用者と
の労働契約がそのまま継続されるのか否かという点で大きな違いがありま
す。
24
●在籍出向
在籍出向とは、採用された会社(出向元)との雇用関係はそのままにして、
出向先の会社の労働条件に従って労働を提供することです。将来、出向元
の会社へ戻ることが前提となっており、戻った場合には、退職金の算定と
なる勤務年数などの取り扱いなどの点で、労働者に不利にならないように
配慮が払われるのが通常です。出向に伴って変更される労働条件などにつ
いては、あらかじめ明示することが求められますので、就業規則に、①出
向の理由、②出向先、③出向期間、④出向中と復帰後の労働条件について
定めが必要とされています。
●転 籍
転籍とは、会社(出向元)との雇用関係を終了(退職)させ、新たに出向
先の会社と労働契約を締結するものです。したがって、出向元への復帰は
一切保証されていません。
転籍は、退職という極めて重大な結果をもたらすものですから、労働者の
同意が必要であり、就業規則に規定があるということだけでは転籍命令を
有効とすることはできません。
出向命令に対する対応
イ
●
ロ
●
ハ
●
在籍出向か、あるいは転籍かの確認をする
就業規則などによる出向命令権の根拠を確認する
出向先の労働条件を確認する
ニ
会社を辞めるとき、受け取るもの、返すもの
会社を辞める際には、様々なものを会社から受け取り、また返さなくてはなり
ません。主なものは、次のとおりです。
●会社から受け取るもの
・雇用保険の離職票 ・雇用保険の被保険者証
・年金手帳 ・源泉徴収票
・退職時の証明書(労働者の請求により)
●会社へ返すもの
・健康保険者証 ・社章、身分証明書、名刺など
Ⅱ
労
働
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件
25
9
働くための基礎知識
Ⅱ.労働条件
懲戒処分・損害賠償
1
●
懲戒事由及び懲戒の種類・内容は、就業規則に規定する必要があ
ります。
2 懲戒処分としての自宅待機以外は、休業手当の対象となります。
●
3 会社に損害を与えた場合、損害賠償を請求される可能性があります。
●
●懲戒処分
懲戒処分とは、使用者が会社内の秩序を乱した労働者に対して、一定の不利
益処分を課すことによって、会社秩序を維持することを目的とするものです。
懲戒処分を行うときは、次の要件が必要です。
イ 懲戒事由、懲戒の種類・内容が就業規則に規定されていること
●
ロ 懲戒規定の内容が合理的であること
●
ハ 懲戒処分にあたり平等性が保たれていること
●
ニ 懲戒処分が規律違反の種類・程度等に照らして相当であること
●
●懲戒事由は
イ 勤務不良 ・2週間以上正当な理由なく無断欠勤し、出勤の督促に応じないとき
・勤務不良(遅刻、早退)で数回にわたり注意しても改まらないとき
ロ 職務怠慢 不注意のため事故を起こし、職務に重大な支障を起こさせたとき
ハ 業務命令違反 正当な理由なく、重大な命令及び重要な規則に従わないとき
ニ 不正行為 職務を利用して不正行為を行い、不当な利益を得た、または第三者に得させたとき
ホ 経歴詐称 採用の重要な要素となる経歴を詐称したとき
ヘ 名誉毀損 会社の社会的信用や名誉を毀損する行為があったとき
ト 秘密漏洩 業務上の重要な秘密を漏洩し、または漏洩しようとしたとき
チ 有罪判決 盗み、横領、傷害等刑法犯に該当する行為があったとき
などの他に、二重就職や競業避止義務違反なども考えられます。
●懲戒処分の種類・内容は
イ 戒 告 将来を戒める旨の申渡しをすること
ロ 譴 責 始末書を提出させて将来を戒めること
(けんせき)
※昇給・昇進・昇格や賞与において不利な査定を受けることが多い
ハ 減 給 労働者が受け取ることができる賃金から一定額を差し引くこと
※1回の減給額は平均賃金の1日分の1/2以下。減給総額は一支払期の賃金の1/10以下(労働基準
法第91条)
ニ 出勤停止・停職 労働契約をそのままとして就労を禁止すること
※出勤停止期間中は、賃金を受けられない(減給規定は適用されない)
ホ 昇級停止 次期の昇級を停止、減額すること
ヘ 降 格 役職、資格を下げること
26
ト 諭旨解雇 退職願や辞表の提出を勧告し、即時退職を求めこと
チ 懲戒解雇 即時解雇すること
※労働基準監督署の認定があると解雇予告手当の支給がない
●自宅待機
自宅待機とは、労働者の出勤を禁止する措置であり、使用者が労働者の労務
提供の受領を拒否することをいいます。懲戒処分としての自宅待機ではなく、
会社運営上、業務上の必要から命じられた自宅待機期間中については、休業
手当の支払いが必要となります。
(参照13ページ)
●損害賠償の請求
使用者は、労働者が業務上のミスによって具体的に会社に損害を与えた場合、就業規則に
規定されている懲戒処分の他に、下記の事項を理由に損害賠償を請求することがあります。
イ 労働者が労働契約どおりの履行をしないとき、または労働者の責任で履行不能となったとき
●
は、使用者は労働者に対して、損害賠償を請求することができます。(民法第415条)
ロ 労働者は故意・過失によって会社の権利や利益を犯し、損害を与えた場合、
●
その損害を賠償しなければなりません。(民法第709条)
ハ 使用者は、労働者が業務上、他人(第三者)に損害を与えた場合、他人(第
●
三者)に対して賠償しなければなりません。使用者はその賠償について、労
働者に対して請求(求償)することができます。(民法第715条)
ただし、実際の損害発生の有無や損害額にかかわらず、一定の違約金を定めたり、損
害額を予め定めておくことは労働基準法(第16条)で禁止されています。また、労
働者の同意に基づかず、一方的に損害額と賃金を相殺することは、労働基準法(第
24条)の「賃金全額払い」の原則に反するためできません。
●損害賠償の範囲
労働者は、使用者のために、使用者の指揮命令によって業務を遂行し、その
過程で生じた損害のすべてを労働者の責任にすることは不均衡であるため、
使用者の労働者に対する損害賠償請求権及び求償権について、全責任ではな
く一部責任に制限するという考え方が定着しています。
ただし、労働者が故意や重大な過失で会社に損害を与えた場合は、使用者は
全ての損害について請求することができます。
27
Ⅱ
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10
働くための基礎知識
Ⅱ.労働条件
労働契約・委託契約・請負契約
1
●
労務を提供するときの契約には、
「労働契約」
「委託契約」
「請負契
約」などいくつかの種類があります。
2 仕事をするときは、契約の種類を良く確認してから契約を結ぶよ
●
うにしましょう。
3 労働者かどうかは、実質的に判断しますので、請負・委任契約等
●
の形式をとっていても労働者にあたる場合があります。
4 労働契約に付随する契約には、
「身元保証契約」や「競業避止契約」
●
などがあります。
労働契約と委託契約・請負契約の違い
●一般的に会社に就職するときには、労働契約に基づいて働くことになります。
しかし、労務を提供するときの契約には、委託契約、請負契約などもありま
す。これらの契約は、契約の目的や労務の提供方法に違いがあります。
契約の目的
当事者
両者の関係
労務提供の特徴
適用法規
賃金
労災保険
雇用保険
社会保険
労働契約
労務に服すること
使用者と労働者
支配・従属関係
使用者の指揮監督関係に入
り、
「労働者」として労務を提
供する
労働基準法などの労働法規
全般
労働の対償
仕事が原因のケガや病気に
対して労災保険が適用される
失業したときの所得保障とな
る雇用保険の被保険者となる
健康保険・厚生年金保険の
被保険者となる
請負契約
委託契約
仕事の完成
特定の業務の処理
注文者と請負人
委託者と受託者
対等関係
対等関係
指揮監督関係には入らず「事 指揮監督関係には入らず
業主」として独立して仕事を 「事業主」として独立して仕
事を完成させる
処理する
民法
民法
報酬
原則として、労災保険は適用
されない
雇用保険の被保険者になら
ない
健康保険・厚生年金保険の
被保険者にならない
報酬
原則として、労災保険は適用
されない
雇用保険の被保険者になら
ない
健康保険・厚生年金保険の
被保険者にならない
●労働契約か委託契約、請負契約であるかは、上記が判断の基準となりますが、
このほかに、労働契約の判断基準として
イ 仕事の依頼、業務従事に対する諾否の自由がないこと
●
ロ 勤務時間・勤務場所の指定があること
●
ハ 業務用器具の負担がないこと
●
ニ 報酬が労働自体の対償であること などがあります。
●
28
労働契約に付随する契約
●身元保証契約
「身元保証契約」とは、労働者が労働契約に基づく仕事をしなかったり、売
上金の着服など労働者の故意、過失により使用者に損害を与えた場合に、身
元保証人が使用者の被った損害を賠償するための保証契約です。また、労働
者の身元を確認する目的もあります。
●「身元保証契約」は、労働契約に付随して行われるものですが、必ず締結し
なくてはならないというものではありません。使用者と身元保証人の間で任
意に決める契約です。
●身元保証人の保証範囲は、身元保証法により制限されています。
●身元保証契約の特徴は、
イ 身元保証の期間は、5年が限度です
●
ロ 身元保証の期間を定めない場合は、保証期間は3年です
●
ハ 契約は合意による更新は可能ですが、自動更新は認められていません
●
ニ 労働者に不適任・不誠実な事柄があるときや、
労働者の任務、任務地に変
●
更があった場合などは、保証人に遅滞なく通知されなければなりません
ホ 身元保証は相続されません
●
●競業避止契約
「競業避止契約」とは、営業上の秘密や技術上の重要なノウハウを知ってい
る労働者が退職後に同業他社に就職したり、独立して同業を開始した場合、
使用者は損失を受ける恐れがあります。そこで、使用者が競業避止義務とし
て、労働者の退職後の同業他社への就職や独立開業を制限させる契約です。
●労働者は在職中には、競業避止義務を負うものとされていますが、退職後に
もこのような義務が当然あるわけではなく、特定な契約があるときに限り義
務を負うものとされています。
●競業避止契約の合理性の基準は、次のような点から総合的に判断されます。
イ 保護される使用者の利益(企業秘密の保護)が存在すること
●
ロ 労働者が営業上の秘密を知ることができる立場にあること
●
ハ 競業避止の期間、地域、職種の範囲
●
ニ 労働者の不利益(転職、再就職の不自由)
●
ホ 代償措置の有無(退職金その他)
●
29
Ⅱ
労
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件
1
働くための基礎知識
Ⅲ.各種保険
労災保険
1
●
労災保険は、労働者を1人でも雇用していれば、すべての事業所
に適用されます。
2 加入対象者は、雇用形態や名称にかかわりなく、すべての労働者
●
です。また、労働者でなくても加入できる場合もあります。
3 保険料は、全額、事業主が負担します。
●
4 労災保険のお問い合せ先は、事業所の所在地を管轄する労働基準
●
監督署です。
労災保険
●労災保険とは、労働者が「業務上」または「通勤途上」で災害などにあって
ケガをしたり病気にかかった場合に、労働者自身や遺族の生活を保護するた
めに必要な給付を行う制度です。
●「業務上」の災害といえるためには
イ 労働者が、事業主の指揮命令下に置かれている状態でケガをしたり、
●
病気にかかったりしたこと(業務遂行性)
ロ
● 労働者が従事している業務とケガなどとの間に客観的な関係があるこ
と(業務起因性)
の2つの要件を満たさなければなりません。
●「通勤途上」の災害にあたるかどうかは、労働者が合理的な方法および経路
によって通勤していたかどうかなどを、総合的に判断して認定します。
適用事業所
●原則として、労働者を一人でも雇用していると、業種や規模に関係なく労災
保険の適用事業所となり、事業主は保険加入手続をしなければなりません。
なお、事業主が加入手続をしていなくても、保険給付が受けられる場合があ
ります。
適用労働者
●雇用関係がある労働者であれば、全員が対象となります。また、中小企業事
業主とその家族従業者、海外派遣者などは、特別加入できる場合があります。
(参照43ページ)
30
保険料
●事業主が全額を負担し、労働者の負担はありません。
給付の種類
●労災保険には、次のような7種類の保険給付があります。
●本来の給付のほか、労働福祉事業の一環として、保険給付金に加算される特
別支給金の制度もあります。
イ 療養(補償)給付:治療や診察を受けられます。
●
ロ 休業(補償)給付:賃金が受けられない場合に、休業の4日目から「給
●
付基礎日額」
(平均賃金)の6割が支給されます。
なお、特別支給金として2割が上乗せ支給されます。
ハ 傷病(補償)年金:ケガや病気による療養を開始してから、1年6か
●
月を経過しても治らない場合に、年金が支給されます。
ニ 障害(補償)給付:障害が残っている場合に、障害の程度に応じて年
●
金または一時金が支給されます。
ホ
● 介護(補償)給付:傷病(補償)年金や障害(補償)給付を受給し、
現に介護を受けている場合に、その介護に要した費用が支給されます。
ヘ
● 遺族(補償)給付:死亡した場合に、遺族に対して年金や一時金が支
給されます。
ト
● 葬祭料(葬祭給付):葬祭を行った者に対して支給されます。
●「給付基礎日額」とは、原則として、給付日額を算定すべき事由の発生した
日(例えば、ケガをした日)以前3か月間に、その労働者に対して支払われ
た賃金の総額を、その期間の総日数で割った金額をいいます。
請求の手続き
●労災保険の給付を受けるには、労働者またはその遺族が、所定の保険給付請
求書に必要事項を記載して、事業所の所在地を管轄する労働基準監督署に提
出しなければなりません。
●事業主には、労働者の請求手続きに協力する義務があります。
●保険給付の請求権は、2年(障害給付と遺族給付については5年)で時効に
より消滅します。時効の起算日は、給付の種類ごとに定められています。な
お、傷病(補償)年金は政府が職権で支給決定するので時効の問題は生じま
せん。
31
Ⅲ
各
種
保
険
2
働くための基礎知識
Ⅲ.各種保険
雇用保険
1
●
雇用保険は、労災保険同様、労働者を1人でも雇用していれば、
すべての事業所に適用されます。
2 パートタイマーも一定の要件を満たせば加入することができます。
●
(参照58ページ)
3 保険料は、労働者・使用者が負担割合に応じて負担します。
●
4 雇用保険を受給する手続きは、自分の住所地を管轄する公共職業
●
安定所です。
雇用保険
●雇用保険とは、労働者が失業した場合などに、労働者の生活の安定を図ると
ともに、再就職を促進するために必要な給付などを行う制度です。
●雇用保険には、失業者の生活安定のために支給する失業等給付のほか、事業
主に対する雇用保険二事業が含まれます。
適用事業所
●原則として、労働者を一人でも雇用していると、業種や規模に関係なく雇用
保険の適用事業所となり、事業主は保険加入手続をしなければなりません。
なお、事業主が加入手続をしていなくても、過去2年間をさかのぼって加入
し、保険の給付を受けられる場合があります。
適用労働者
●雇用関係がある労働者であれば、全員が対象となります。ただし、①パート
タイマー(短時間労働被保険者)は一定の要件が必要となり、②65歳以降
に新たに雇用された人などは適用除外となります。
●なお、適用労働者は、雇用形態と年齢によって一般被保険者、高年齢継続被
保険者、短期雇用特例被保険者、日雇労働被保険者の4種類に区分されます。
保険料
●賃金総額に雇用保険料率を乗じた額を事業主と労働者がそれぞれ負担割合に
応じて負担します。たとえば、一般の事業所の場合、事業主の負担は賃金総
額の1000分の9で、労働者の負担は1000分の6となります。
32
失業等給付の種類
●失業等給付には、次のような4種類の給付があります。
イ 求職者給付:被保険者が失業した場合に生活の安定を図り求職活動を
●
容易にするために支給されます。雇用形態により給付内容は異なりま
す。
ロ 就職促進給付:再就職を促進するために支給されます。
●
ハ 教育訓練給付:主体的な能力開発を支援するために支給されます。
●
ニ 雇用継続給付:高年齢者や育児・介護休業取得者の職業生活の円滑な
●
継続を援助、促進するために支給されます。
基本手当
●求職者給付の大半を占めるのは「基本手当」です。基本手当とは、被保険者
が失業したとき支給される給付です。一般被保険者が受給する場合には、原
則として離職の日以前2年間に、被保険者期間が満12か月以上必要です。
●基本手当は、原則として離職した日の翌日から1年間に限って支給されます。
したがって、たとえ所定の給付日数が残っていても、1年間の受給期間を経
過してしまえば受給資格を失います。
●基本手当の受給資格者となるには、次の3つの要件を満たす必要があります。
イ 離職によって、被保険者資格の喪失が確認されていること
●
ロ 労働の意思・能力があるにもかかわらず、職業に就くことができない
●
状態にあること
ハ 離職の日以前2年間に、賃金支払の基礎となった日数が11日以上ある
●
雇用保険に加入していた月が通算して12か月以上(倒産・解雇等に
より離職された場合は離職の日以前1年間に6か月以上)あること
33
Ⅲ
各
種
保
険
●基本手当を請求するには、自分の住所地を管轄する公共職業安定所に、次の
書類を提出し、求職の申し込みをしなければなりません。
イ 雇用保険被保険者離職票
●
ロ 雇用保険被保険者証
●
ハ 印鑑
●
ニ 本人の住所及び年齢を確認できる官公署が発行した写真つきのもの
●
(運転免許証、住民基本台帳カード(写真付き)など)
ホ 写真2枚(縦3cm×横2.5cm程度の正面上半身のもの)
●
ヘ 本人名義の普通預金通帳(郵便局を除く)
●
●基本手当は、受給資格者が公共職業安定所に来所し、求職の申し込みを行っ
た日(受給資格決定日)から失業状態の日があっても、通算して7日間は支
給されません。この期間を「待期」といいます。
●基本手当の支給を受けるには、受給資格決定日から4週間に1回ずつ設定さ
れた「失業認定日」に求職の申し込みを行った公共職業安定所に出頭し、直
前28日間の各日について「失業の認定」を受けなければなりません。
●基本手当は、原則として4週間に1回、失業の認定を受けた日数分が支給さ
れます。
●基本手当の日額は、受給資格者の賃金日額(離職前の6か月の賃金の合計額
を180で割った額)のおよそ50∼80%(60歳以上65歳未満の方は45∼
80%)に相当する額です。また、賃金日額には、離職時の年齢に応じて上
限額が定められており、下限額も一律に定められています。
なお、基本手当の日額は、毎年8月に見直しされ、変更される場合がありま
す。
34
●基本手当の所定給付日数は、受給資格者の離職時の年齢、被保険者期間、離
職理由などに応じて、次の表のように定められています。
Ⅲ
各
種
保
険
35
教育訓練給付制度
●教育訓練給付制度は、一定の要件を満たす一般被保険者(在職者)または一
般被保険者であった者(離職者)が、厚生労働大臣の指定する教育訓練を受
けて、修了した場合に費用の一部が被保険者期間3年以上20%(上限10万
円)
(初回に限り、被保険者期間1年以上で受給可能)支給されるものです。
●給付金を請求するには、教育訓練の受講終了日の翌日から起算して1か月以
内に、必要書類を添付して住所地を管轄する公共職業安定所に申請します。
36
Q
■
会社を辞めた理由によっては、手当がもらえる時期が遅くなると聞いた
のですが…
A
■
失業給付の手続きに必要な離職票の離職理由によっては、給付制限を受
けて受給が遅れることがあります。
離職理由が、解雇、倒産による退職、契約期間満了、事業主勧奨による
退職、定年であれば、給付制限を受けません。手続きをしてから7日間の
待期期間を経て、8日目からが支給の対象となり、求職の申し込みの日か
ら約1か月後に最初の手当が支給されます。
ところが、「自己都合」の退職や懲戒解雇の場合は、待期期間に加え給付
制限(3か月)を過ぎないと手当が支給されません。つまり、4か月たっ
てやっと手当が支給されることになります。(なお、「自己都合」の退職
の場合でも、やむをえない事情によるものと職業安定所が判断した場合
は、給付制限にかからない場合があります。
)
離職票を受け取るときには、賃金額や離職理由などの内容に間違いがな
いかどうかを必ず確認してください。
3
働くための基礎知識
Ⅲ.各種保険
健康保険
1
●
健康保険は、事業主や労働者に加入の自由があるのではなく、加
入要件さえ満たしていればすべて加入しなければなりません。
2 保険料は事業主・労働者が折半して負担します。
●
3 パートタイマーも一定の要件を満たせば、被保険者になります。
●
(参照58ページ)
4
● 健康保険のお問い合せ先は、協会けんぽの場合は事業所の所在地
を管轄する全国健康保険協会、組合健保の場合はその組合です。
健康保険
●健康保険とは、事業所で働く労働者とその家族が加入する公的医療保険をい
います。健康保険には、全国健康保険協会(協会けんぽ)が保険者である健
康保険と健康保険組合が保険者である健康保険(組合健保)の2種類があり
ます。
イ すべての法人事業所および労働者5人以上の個人事業所は、強制的に
●
保険に加入をしなければなりません(強制適用事業所)
。
健康保険では、働いている労働者(被保険者)だけではなく、その人
ロ
●
の家族なども「被扶養者」として保険給付を受けることができます。
「被扶養者」となれる人は以下の条件を組み合わせて判断されます。
①被保険者との一定の親族関係があること
②被保険者の収入によって「生計が維持」されていること
③被保険者と一緒に生活(同居)していること
★①と②が条件 配偶者、被保険者の父母、祖父母、子供、孫など
★①と②と③が条件 被保険者の兄姉、配偶者の父母・祖父母など
「生計が維持」とは、被扶養者となる人の年収が130万円(60歳以
上の人または障害者は180万円)未満で被保険者の年収の2分の1
未満であることをいいます。
保険料
●保険料は、事業主と労働者(被保険者)が半分ずつ負担します。
●保険料の納付は事業主が行い、労働者(被保険者)が負担する保険料は、翌
月に支払われる給料から差し引かれます。
37
Ⅲ
各
種
保
険
●保険料は、労働者(被保険者)の「標準報酬月額」と「標準賞与額」に「保
険料率」を掛けて算出します。
イ 「標準報酬月額」は、毎月の給料などの報酬の月額を区切りのよい幅(第1
●
級から第47等級まで)で区分されたもので、基本給、残業手当、通勤手当、
家族手当など労務の対償として支払われるすべてのものが含まれます。
ロ 「標準賞与額」は、3か月を超える期間に支払われる賞与、期末手当な
●
どで、年間賞与の累計額540万円が上限額とされています。
ハ 「保険料率」は次のとおりです。
●
★政管健保の場合、1000分の82(被保険者負担分は、1000分の41)
(なお、介護保険に該当する被保険者は1000分の93.3)
★組合健保の場合、1000分の30∼95の範囲
主な給付の種類
●健康保険では、業務外の事由により病気になったりケガをしたときに、必要
な医療の給付や手当金の支給が受けられます。
●健康保険には、次のような種類の保険給付があります。
イ 療養の給付
●
労働者(被保険者)が健康保険を扱っている病院・診療所に「被保険
者証」を提示すると、診察、治療、薬の支給、入院などの必要な医療
を治るまで受けられます。通院・入院とも医療費の7割が療養の給付
として支給され、残りの3割が自己負担となります。
ロ
● 家族療養費
被扶養者ついても、通院・入院とも医療費の7割が家族療養費として
支給され、残りの3割が自己負担となります。なお、3歳未満の被扶
養者の自己負担は2割です。
ハ 高額療養費
●
労働者(被保険者)・被扶養者が同一月に支払った医療費の自己負担
額が、1つの病院・診療所ごとに計算して一定額を超えたときは、本
人の申請により高額療養費として超えた金額が後から払い戻されます。
ニ 傷病手当金
●
労働者(被保険者)が病気やケガのために仕事につけない日が4日以
上続き、その間給料が支給されないときに、4日目から1年6か月の範
囲内で、休んだ日1日につき、原則として標準報酬日額(標準報酬月
額を30で割った額)の3分の2が傷病手当金として支給されます。
38
ホ
●
ヘ
●
出産育児一時金・出産手当金
労働者(被保険者)あるいは被扶養者である妻が出産をしたとき、一
児につき35万円が出産一時金として支給されます。
労働者(被保険者)が、出産で仕事を休み、その間給料が支給されな
いときは、分娩日以前42日(多胎妊娠の場合は98日)から実際の分
娩日後56日までの期間、1日につき標準報酬日額の3分の2が出産手
当金として支給されます。
埋葬料・家族埋葬料
労働者(被保険者)が死亡したときは、埋葬を行った家族に5万円が
埋葬料として支給されます。
被扶養者が死亡したときは、被保険者に家族埋葬料として5万円が支
給されます。
任意継続
●事業所を退職すると健康保険の被保険者の資格を失うことになります。しか
し、被保険者期間が継続して2か月以上あって、20日以内に被保険者となる
ための届出をした場合には、退職後も引き続き2年間を限度として、個人で
被保険者となることができます。これを「任意継続被保険者」といい、その
家族も在職中と同じ給付(傷病手当金、出産手当金の支給は除く)が受けら
れます。ただし、保険料は、任意継続の場合は全額自己負担となります。
Q
■
8月15日に中途退社しました。保険料は日割りで計算されるのでしょう
か。
A
■
保険料は月単位で計算され、日割りで計算することはありません。また、
保険料の計算の対象となるのは、入社した月から退職した月の前月分ま
でです。このため、8月に退職した場合は、それが何日であろうと、保険
料の計算は7月分で打ち切られます。ただし、8月31日退職の場合のみ、
8月分も一緒に徴収されます。逆に、入社した日がたとえ月末の日であっ
ても、その月は1か月分の保険料として計算されます。
Ⅲ
各
種
保
険
39
4
働くための基礎知識
Ⅲ.各種保険
厚生年金保険
1
●
厚生年金保険は、健康保険同様、事業主や労働者に加入の自由が
あるのではなく、加入要件さえ満たしていればすべて加入しなけ
ればなりません。
2
● 厚生年金保険は、基礎年金(国民年金)の上乗せ給付をする年金
制度です。
3
● パートタイマーも一定の要件を満たしていれば、被保険者になり
ます。
(参照58ページ)
4
● 厚生年金保険のお問い合せ先は、事業所の所在地を管轄する社会
保険事務所です。
厚生年金保険
●厚生年金保険とは、事業所で働く人のための年金制度で、老齢になったり、
障害者となって働けなくなったり、死亡したときのために労働者や家族の生
活資金を準備する制度です。
イ 事業所で働く労働者の年金は、2階建ての建物をイメージするとわか
●
りやすく、1階部分に当たるのが、年金制度の基礎になる基礎年金
(国民年金)。2階部分が独自の厚生年金保険です。したがって、老齢
になって年金を受け取るときは、国民年金から老齢基礎年金が、厚生
年金保険からは老齢厚生年金が支給されることになります。
ロ
● すべての法人事業所および労働者5人以上の個人事業所は、強制的に
保険に加入しなければなりません(強制適用事業所)
。
<第3号被保険者(第2号被保険者の被扶養配偶者)>
<第1号被保険者>
40
<第2号被保険者>
<第2号被保険者>
保険料
●保険料は、健康保険と同じように、事業主と労働者(被保険者)が半分ずつ
負担します。
●保険料の納付は事業主が行い、労働者(被保険者)が負担する保険料は、翌
月に支払われる給料から差し引かれます。
●保険料は、労働者(被保険者)の「標準報酬月額」と「標準賞与額」に「保
険料率」を掛けて算出します。
イ 「標準報酬月額」は、毎月の給料などの報酬の月額を区切りのよい幅(第1
●
級から第30級まで)で区分されたもので、基本給、残業手当、通勤手当、
家族手当など労務の対償として支払われるすべてのものが含まれます。
ロ
● 「標準賞与額」は、3か月を超える期間に支払われる賞与、期末手当な
どで、150万円が上限額とされています。
ハ
● 保険料率は、1000分の153.50(平成21年9月分から157.04)で
すから、被保険者の負担は、半分の1000分の76.75(平成21年9
月分から78.52)となります。
主な給付の種類
●老齢厚生年金
イ 65歳から国民年金の老齢基礎年金に上乗せする形で、老齢厚生年金
●
が支給されます。
ロ 老齢厚生年金の受給要件は、次のとおりです
●
①老齢基礎年金を受ける資格期間(公的年金の保険料納付済期間、保
険料免除期間及び合算対象期間を合算した期間が25年以上)を満
たしていること。
②厚生年金保険に加入した期間が1か月以上あること。
③65歳に達していること。
ハ
● 60歳代前半の老齢厚生年金
現在、経過措置として厚生年金保険の被保険者期間が1年以上あり、
老齢基礎年金の受給資格期間を満たしていれば、60歳から「部分年
金(報酬比例部分相当の老齢厚生年金)」が支給されます。また、生
年月日に応じて61歳∼64歳の間で「特別支給の老齢厚生年金」の支
給が開始されます。
なお、支給開始年齢は段階的に引き上げられ、支給は平成41(2029)
年度(男性は平成36(2024)年度)までとなっています。
41
Ⅲ
各
種
保
険
ニ
●
65歳以上70歳未満の人(平成14年4月1日以降65歳になる人)が老齢厚生
年金を受給しながら厚生年金保険の被保険者となるような働き方をすると、
老齢基礎年金は全額支給されますが、老齢厚生年金は賃金の額に応じて全部
又は一部が支給停止される場合があります。ただし、厚生年金保険に加入せ
ずに働く場合(パートタイマーなど)は、老齢厚生年金も全額支給されます。
●障害厚生年金
イ 労働者(被保険者)が、在職中の病気やケガにより一定の障害(障害
●
等級1級から3級)が残った場合、障害厚生年金が支給されます。
ロ
● 障害等級1級・2級に認定された場合は、障害基礎年金に上乗せする
形で障害厚生年金が支給されます。さらに程度の軽い障害等級3級の
場合は、障害厚生年金だけが支給されます。
ハ 障害等級3級に認定されないような軽い障害であっても、一時金とし
●
て「障害手当金」が支給されることがあります。
●遺族厚生年金
イ ①労働者(被保険者)が死亡した場合、②被保険者であった期間に初
●
診日のある傷病によって初診日から5年以内に死亡した場合、③1級
または2級の障害厚生年金の受給権者が死亡した場合、④老齢厚生年
金の受給者または老齢厚生年金の受給資格期間を満たしている人が死
亡した場合に、遺族に遺族厚生年金が支給されます。
ロ
● 遺族厚生年金が受けられる遺族は、死亡した人に生計を維持されていた配偶者、子、父
母、孫、祖父母です。この場合、妻以外の遺族は一定の要件を満たす必要があります。
ハ
● 子のある妻や子は、遺族厚生年金の他に遺族基礎年金もあわせて支給
されます。この場合、子は一定の要件を満たす必要があります。
国民年金の第3号被保険者
●事業所で働く人や公務員(ともに「第2号被保険者」といいます)に扶養さ
れている20歳以上60歳未満の配偶者(年収が130万円未満の人)は国民年
金の第3号被保険者となります。保険料は、配偶者が加入している厚生年金
や共済組合が一括して負担しますので、個別に納める必要はありません。
●「扶養されている配偶者」は、夫と妻のどちらであってもよく、生計を1つ
にしていれば別居していてもさしつかえありません。実際には健康保険の被
扶養者であれば、第3号被保険者と認定されます。
●第3号被保険者の届出は、配偶者の勤務する事業所を通じて、事業所を管轄
する社会保険事務所に提出されます。
42
離婚時の厚生年金の分割制度(平成19年4月1日施行)
●平成19年4月1日以降に成立した離婚を対象として、離婚する当事者の合意
または裁判手続により定められた「按分割合(婚姻期間中の厚生年金の保険
料納付記録の夫婦の合計のうち、分割を受ける側の分割後の持ち分となる割
合をいいます。
)
」により、婚姻期間中の厚生年金の保険料納付記録(夫婦の
合計)を当事者間で分割することが認められます。
●按分割合の上限は50%とし、下限は分割を受ける側の分割前の持ち分にあ
たる割合とします。
●離婚当事者は、定められた「按分割合」について、社会保険事務所に厚生年
金の分割請求(公正証書等の按分割合を定めた添付書類が必要)をしないと、
厚生年金の分割は行われません。なお、分割の効果は、厚生年金の報酬比例
部分に限られ、基礎年金等の給付は影響を受けません。
●分割の請求は、原則、離婚をしたときから2年を経過するまでの間にしなけ
ればなりません。
●分割を受けた当事者は、自身の受給資格要件に応じて、増えた保険料納付記
録に応じた厚生年金を受給することができます。
●また、平成20年4月1日以降の第3号被保険者期間については、離婚した場
合に、当事者一方からの請求により、第2号被保険者の厚生年金の保険料納
付記録を自動的に2分の1に分割することができます。
(問い合せ先 社会保険事務所 参照72ページ)
Q
■
脱サラをして、商売を始めよう思っています。労働者でなくなってしま
うので、労災保険の適用は受けられなくなってしまうのでしょうか?
A 「労災保険特別加入制度」という制度がありますので、労働者でなくても、労
■
災保険に入ることができます。ただし、この制度は任意のものですから、労働
基準監督署に特別加入申請書を提出して、承認を得なければなりません。
なお、労災保険に特別加入できる者は、
①中小企業事業主とその家族従事者
②自動車の運転手や大工さんなどの一人親方とその家族従事者
③転勤により海外に派遣されている人
などです。
※①、②は労働保険事務組合または認定団体を通して手続をすることもできます。
Ⅲ
各
種
保
険
43
1
働くための基礎知識
Ⅳ.男女雇用平等・障害者雇用・外国人労働者
セクシュアル・ハラスメント
1
●
2
●
セクシュアル・ハラスメントは、労働上の権利侵害の問題です。
セクシュアル・ハラスメントは、個人だけの問題ではなく、職場
の問題としてとらえることが大切です。
3
● 事業主には、労働者(男性も対象 参照51ページ)がセクシュア
ル・ハラスメントにより不利益を受けたり、就業環境を害される
ことがないよう、雇用管理上必要な措置を講ずることが義務づけ
られています。
セクシュアル・ハラスメント
●セクシュアル・ハラスメントとは、相手方の意に反した性的な言動を行い、
それに対する対応によって仕事をする上で一定の不利益を与えたり(①対価
型・地位利用型)、それを繰り返すことによって、就業環境を著しく悪化さ
せること(②環境型)をいいます。
①対価型・地位利用型
権限を持つ上司からの性的な要求を拒否したため、解雇や昇進差別などの
職業上の不利益が生じた場合
②環境型
明確な経済的不利益は生じないまでも性的な言動の繰り返しにより、就業
環境を著しく不快なものとし、個人の職業能力の発揮に深刻な悪影響を及
ぼす場合
原 因
セクシュアル・ハラスメントの被害は、男女ともに起こり得ますが、女性に
被害が圧倒的多数を占めているのが現状です。
●固定的な性別役割分担意識
セクシュアル・ハラスメントの原因の一つには、企業の雇用管理が、男性
を中心として組み立てられ、女性労働者を企業を支える重要な労働力とし
て位置づけていないことが挙げられます。例えば、女性を補助的・定型的
な業務に割り当て、「女性としての役割」を求めることなどがこれに当た
ります。また、日常生活の中で女性を「性的な関心の対象」としてみると
いう意識を、職場に持ち込んでしまうことも、セクシュアル・ハラスメン
トの一因としてあげられます。
44
●性に対する認識のずれ
セクシュアル・ハラスメントかどうかの判断基準は、行為を受けた側が、
「不快に感じたかどうか」にあります。
性に関する言動の受け止め方は、男女で、また、人によっても異なります。
このことが十分に認識されていないこともセクシュアル・ハラスメントの大
きな原因のひとつと考えられています。
対処方法
●はっきりと意思を伝える
黙っていては、あなたの意思が相手に伝わりません。相手は、あなたが嫌が
っていることを理解していない場合もあります。そうした行為が非常に苦痛
であること、不愉快であることをその場ではっきり伝えましょう。
●身近な人に相談する
まず、信頼のできる同僚や上司に相談しましょう。また、相談・苦情窓口や
人事・総務等管理部門の責任者に相談するという方法もあります。また、事
実を正確に伝えることが大切ですので、被害の状況を詳しく記録し、証拠と
なるものがあれば保管しておきましょう。
●相談窓口・行政機関等に相談する
神奈川労働局雇用均等室で相談を受け付けています。
また、かながわ女性センターの「セクシュアル・ハラスメント相談」や、
(財)横浜市男女共同参画推進協会の性別による不利益な取扱などの「性別
による差別等の相談」でも受け付けています。男女共同参画センター横浜で
は、
「心とからだと生き方の総合相談」も行っています。
(参照71ページ)
セクシュアル・ハラスメントに関する防止策や対応策等がある事業所の取組内容
相談・苦情等
苦情等に対処
対処するための相談窓口
相談窓口(担当)
を設けている
就業規則などに職場
就業規則
職場におけるセクシュアル・ハラ
スメント禁止
禁止を明文化
明文化している
社内報・パンフレット等に記事
記事を掲載
掲載し、意識
意識を高
めている
セクシャル・ハラスメント防止
防止のための研修
研修、講習
等を実施
実施している
72.4%
65.1%
40.8%
38.9%
12.7%
社内で実態把握
実態把握のための調査
調査を行った
2.0%
その他
0
10
20
30
40
50
60
70
80
(資料名:横浜市市民局「就業の場における男女共同参画に関する調査」平成15年度)
45
Ⅳ
男
女
雇
用
平
等
・
障
害
者
雇
用
・
外
国
人
労
働
者
2
働くための基礎知識
Ⅳ.男女雇用平等・障害者雇用・外国人労働者
女性労働者・母性保護
1
●
妊産婦については母性保護の見地から、危険有害業務の就業禁止、産
前産後の休業、時間外・休日・深夜の労働制限の規定があります。
2 産前産後の休業期間が無給の場合は、産前6週間、産後8週間を限
●
度に標準報酬日額の2/3が出産手当金として健康保険から支給さ
れます。
3
● 出産育児一時金として健康保険から35万円が支給されます。
産前産後休業
●女性労働者には、母性保護や国家的見地から、出産の前後に保護規定を設け
ています。
イ
●
ロ
●
ハ
●
平均賃金を計算する際の算定期間には、この休業期間は入りません。
年次有給休暇の出勤率の計算には、休業期間は出勤したものとみなし
ます。
休業期間中及びその後の30日間は、解雇は禁止されます。
妊産婦の就業制限
●使用者は、妊産婦(妊娠中及び出産後1年を経過しない女性をいいます)か
ら請求があれば、時間外労働、休日労働、深夜労働をさせてはいけません。
●変形労働時間制(フレックスタイム制を除く)職場の場合でも、妊産婦から
請求があれば1日、1週間の法定労働時間を超えて労働させることはできま
せん。
46
育児時間
●満1年に達しない子供を育てる女性は、1日2回、1回あたり最低30分、育
児時間を請求することができます。
生理休暇
●生理日の就労が、著しく困難な場合、請求すれば、生理休暇を取得できます。
なお、休暇日が有給か無給かは、労働協約、就業規則などにより決まります。
母性健康管理の措置
●使用者は、妊娠中及び出産後の女性労働者が保健指導または健康診査を受け
るための時間を確保できるようにしなければなりません。また、その結果に
基づいて、通勤緩和、勤務時間の短縮、勤務の軽減、休業などの措置も講じ
なければなりません。
●健康診査は次の回数受けることができます。
イ 妊娠中 妊娠23週まで……………………………4週間に1回
●
妊娠24週から35週まで ………………2週間に1回
妊娠36週以後出産まで…………………1週間に1回
(ただし、主治医等からこれと異なる指示を受けた時は、その指示に従って受け
ることができます。
)
ロ
●
産 後 1年以内……………………………………主治医等の指示通り
Q
■
妊娠したので、「残業はできません」といいましたが、上司に「皆に迷惑
がかかるから残業をしてほしい」といわれました。本当に、残業はしな
ければならないのでしょうか?
A
■
妊婦でも、本人が希望すれば、会社は残業させることができます。しか
し、流産や出産異常につながる不安が少しでもあるのなら、「残業はでき
ません」とはっきり言いましょう。
妊産婦から「残業はできない」との申し出があったにかかわらず、無理
に残業をさせれば、労働基準法違反となります。
Ⅳ
男
女
雇
用
平
等
・
障
害
者
雇
用
・
外
国
人
労
働
者
47
3
働くための基礎知識
Ⅳ.男女雇用平等・障害者雇用・外国人労働者
育児・介護休業法
1
●
2
●
育児・介護休業は、男女を問わず取得できます。
育児・介護休業は、要件を満たせばパートタイマーや派遣労働者
でも取得できます。
3
● 育児・介護休業中の賃金は、法律に定めがありませんので、就業
規則や労使間の話し合いなどで決めることになります。
育児休業制度
●育児休業制度とは、1歳未満の子をもつ労働者の申し出により、養育のため、
一定期間休業することができる制度です。
イ 1歳未満の子を養育する男女労働者が対象です。雇用された期間が1
●
年以上で、子が満1歳に達する日(誕生日の前日)を超えて雇用が見
込まれることを要件に、パートタイマーや派遣労働者など期間を定め
て雇用される者でも取得できます。1歳未満の子とのあいだには、実
子や養子のように法律上の親子関係が必要です。
ロ 休業期間は、子が満1歳に達するまで(誕生日の前日まで)の範囲内
●
で、労働者が希望する期間です。ただし、保育所に入所できないなど
特別な事情がある場合は6カ月間延長できます。
ハ
● 休業回数は、1人の子について、原則として1回限りです。
ニ 育児休業を取るには、育児休業開始予定日の1か月前(出産予定日前
●
に子が出生するなど特別な事情がある場合は1週間前)までに、育児
休業申出書により使用者へ申し出なければなりません。
ホ
● 休業中の賃金は、法律に定めがありませんので、就業規則や労使間の
話し合いなどで決めることになります。
ヘ 使用者は育児休業の申し出を拒むことはできません。労働者が、休業
●
の申し出をしたことや、実際に取得したことを理由とする解雇、その
他不利益な取り扱い(退職の強要、降格、減給など)は禁止されてい
ます。また、労働者の転勤については、育児の状況に配慮しなければ
なりません。
ト
● 使用者は、1歳未満の子を養育する労働者に対して、短時間勤務やフレ
ックスタイムなどの勤務時間を短縮する措置を導入しなければなりませ
ん。また、1歳以上3歳未満の子を養育する労働者に対しても、育児休
業に準じる制度や勤務時間を短縮する措置が義務づけられています。
48
チ
●
使用者は、小学校入学までの子を養育する労働者が請求したときは、事
業の正常な運営を妨げる場合を除いて、深夜労働、制限時間(1か月
24時間、1年150時間)を超えた時間外労働をさせてはなりません。
リ 育児休業を取得した雇用保険の被保険者には「育児休業基本給付金」
、
●
「育児休業者職場復帰給付金」が支給されます。
(問い合せ先 公共職業安定所 参照70ページ)
介護休業制度
●介護休業制度とは、介護を要する家族をもつ労働者の申し出により、介護の
ため、一定期間休業することができる制度です。
イ 介護を要する家族をもつ男女労働者が対象です。雇用された期間が1
●
年以上で、介護休業開始予定日から起算して93日を経過する日を超
えて雇用が見込まれることを要件に、パートタイマーや派遣労働者な
ど期間を定めて雇用される者でも取得できます。
介護を要する家族の範囲は、配偶者(事実婚を含む)、父母、子、配
偶者の父母および同居かつ扶養している祖父母、兄弟姉妹、孫です。
ロ 休業期間は、介護が必要な状態になるごとに1回ずつ、通算して93日
●
までの範囲内で労働者が希望する期間です。
ハ 介護休業を取るには、介護休業開始予定日の2週間前までに、介護休
●
業申出書により使用者へ申し出なければなりません。
ホ●
ヘ
ニ 休業中の賃金及び使用者の義務は、育児休業制度 と同じです。
●
●
ホ
● 使用者は、介護を要する家族を介護する労働者に対して、短時間勤務
やフレックスタイムなどの勤務時間を短縮する措置を導入しなければ
なりません。また、労働者の転勤については、介護の状況に配慮しな
ければなりません。
ヘ 使用者は介護を要する家族を介護する労働者が請求したときは、事業
●
の正常な運営を妨げる場合を除いて、深夜労働、制限時間(1か月24
時間、1年150時間)を超えた時間外労働をさせてはなりません。
ト
● 介護休業を取得した雇用保険の被保険者には「介護休業給付金」が支
給されます。
(問い合せ先 公共職業安定所 参照70ページ)
子の看護休暇
●小学校就学前の子を養育する労働者は申し出ることにより、1年に5日まで、
病気・けがをした子の看護のために、看護休暇を取得できます。
49
Ⅳ
男
女
雇
用
平
等
・
障
害
者
雇
用
・
外
国
人
労
働
者
Q
■
休業中の社会保険、労働保険の取扱いはどうなりますか?
A
■
社会保険、労働保険ともに、育児・介護休業中も継続します。
なお、休業期間中の保険料の取扱いは次の通りです。
介護保険
平成12年4月より、介護保険制度がスタートしました。この制度は、急速に
進む高齢化を背景に、老後の最大の不安といわれる高齢者の介護を社会全体で
支えていく仕組みをつくっていくために設けられたものです。
この制度を利用するには、まず本人または家族がお住まいの(住民登録のあ
る)区役所に「要介護認定」の申請をします。その後、専門職等の訪問調査、
医師の意見書をもとに専門家による認定審査会による審査等を経て、要介護度
が決められます。この要介護度によって在宅サービスの場合はサービス利用の
限度額が異なり、施設サービスの場合は、給付額が異なってきます。
運営する財源の約半分は税金により、残りを40歳以上の被保険者の保険料で
まかなわれることになります。65歳以上の方(第1号被保険者)は所得に応じ
て、40歳から64歳までの方(第2号被保険者)は加入している医療保険の算出
方法で保険料が決められます。また、各種サービスを利用した場合、利用者は
サービス費用の1割を自己負担することになります。
問い合せ先 健康福祉局 介護保険課 TEL 671―4252
50
4
働くための基礎知識
Ⅳ.男女雇用平等・障害者雇用・外国人労働者
男女雇用機会均等法
1
●
性別による差別禁止の範囲が拡大され、男性に対する差別も禁止
されています。
2 禁止される差別が追加、明確化され、また、間接差別も禁止され
●
ています。
性別による差別の禁止
●男性に対する差別も禁止され、男性も均等法に基づく調停など個別紛争の解
決援助が利用できるようになりました。
●募集・採用、配置・昇進・教育訓練、福利厚生、定年・解雇に加えて降格、
職種変更、パートへの変更などの雇用形態の変更、退職勧奨、雇止めについ
ても、性別を理由とした差別は禁止されています。
●外見上は性中立的な要件でも、募集・採用に当たり、労働者の身長、体重又
は体力を要件とするなど業務遂行上必要であると認められる合理的な理由が
ない場合は間接差別として禁止されています。
★間接差別とは…
1.性別以外の事由を要件とする措置であって、
2.他の性の構成員と比較して、一方の性の構成員に相当程度の不利益を与
えるものを、
3.合理的な理由がないときに講ずることをいいます。
妊娠・出産・産前産後休業等を理由とする不利益取扱いの禁止
●妊娠・出産・産前産後休業等を理由とする解雇に加え、妊娠又は出産に起因
する能率低下又は労働不能が生じたこと等を理由とする解雇や雇止め、退職
の強要、降格等の不利益取扱いも禁止されています。
●妊娠中や産後1年以内の解雇は、
「妊娠・出産・産前産後休業等による解雇で
ないこと」を事業主が証明しない限り無効となります。
ポジティブ・アクションの推進
●ポジティブ・アクション(男女間の格差解消のための積極的取組)に取り組
む事業主が実施状況を公開するに当たり、国の援助を受けることができます。
51
Ⅳ
男
女
雇
用
平
等
・
障
害
者
雇
用
・
外
国
人
労
働
者
「よこはまグッドバランス賞∼働きやすく子育てしやすい企業∼」
1 趣旨
少子高齢化、労働人口減少の時代を迎え、企業・組織にとって、優秀な人材の確保・活用が課題と
なっています。そのために、多様な人材の意欲と能力が発揮できる仕組みを整える必要があります。
市では、男女がともに働きやすい職場環境づくりを積極的に進める企業を「よこはまグッドバランス賞」
と認定し、
そのうち特に優良な実績を上げている事業所については、表彰する制度を行っています。
2 取組事例
(1)仕事と家庭等の両立支援(ワーク・ライフ・バランス)への取組
(2)性別にとらわれない従業員の能力活用や職域拡大への取組
(3)男女がともに働きやすい職場づくりに向けた取組
(4)
その他、地域への子育て貢献や男女共同参画に向けた取組など
3 対象
市内に事業所を置く総従業員300人以下の事業所(営利・非営利不問)
4 メリット
(1)市長による表彰・記念品の贈呈を行います。
(2)当該事業所の取組について、広報誌やホームページ等、様々な市の広報媒体や催しを通じ、広くP
Rを行います。
(3)横浜市中小企業融資制度(地域貢献企業支援資金)の低利による融資の対象となります。
5 20年度表彰事業所(4事業所)
主な表彰理由
・事業所内託児施設の設置(月9日間は24時間オープン)など
の両立支援
・地域への貢献(病院祭り、院内コンサート)
・女性施設長への積極的な両立支援(ロールモデルづくり)
保育所及び
相鉄アメニティ
学童保育の経営 ・本社と各施設での役割分担及び連携による、効率的な勤務体制
ライフ
(株)
(株)
マーケティング コンサルティング ・CCS(=チャイルド・ケア・スキーム)小学校卒業まで限定の就
サービス・小売
インフォメーション
業制度。残業禁止(違反時は上司に罰則規定)
で、時短選択
コミュニティ
性。保育費用は半額補助。
・女性の能力活用(パートのチームリーダーへの抜擢、バイトの正規雇用)
医療サービス
(株)
メディネット
・希望により実績主義から自動昇格昇給、転勤・異動なしの勤
務形態を選べる制度
・シフト勤務者が、希望により6年間まで週30時間勤務が選択できる制度
事業所名
医療法人社団
恵生会
事業内容
病院及び介護
老人保健施設
6 20年度認定企業(表彰4事業所を含む18事業所)
①(株)アローズ・システムズ ②(医)伊純会 ③(株)イワサワ ④(株)グラフティ ⑤(社福)白百合会
⑥(株)ダッドウェイ ⑦NPO法人でっかいそら ⑧日総ブレイン(株) ⑨(株)VMビタミンママ
⑩(株)萬珍樓 ⑪(株)みつば ⑫(学)八ツ橋学園 ⑬(株)
リクルーティング・ギミック
⑭(社福)黎明会 (50音順)
7 21年度のスケジュール(予定)
7∼8月 募集 8∼11月 審査 11∼12月 表彰式
※ 詳細は、男女共同参画推進課のホームページをご覧ください。 よこはまグッドバランス賞
52
検索
5
働くための基礎知識
Ⅳ.男女雇用平等・障害者雇用・外国人労働者
障害者雇用
1
●
企業は、一定の雇用率に達する人数の障害者を雇用すべき義務が
課されています。
2 労働法規については、障害の有無に関わらず、適用があります。
●
3 障害者を障害を理由に最低賃金より低額で雇用することはできま
●
せん。
障害者の雇用
●障害者の採用に関しては、「障害者雇用促進法」により、事業主に一定の雇
用率に達する人数の身体障害者、知的障害者または精神障害者を雇用すべき
義務を課しています。
法定雇用率は、
一般の企業…………………………………1.8%
○民間企業 (常用労働者数56人以上規模の企業)
特殊法人等…………………………………2.1%
(常用労働者数48人以上規模の特殊法人及び独立行政法人)
○国、地方公共団体(職員数48人以上の機関)…………2.1%
○都道府県等の教育委員会(職員数50人以上の機関)…2.0%
障害者の労働条件
●障害者の労働条件は、一般の労働者と特に変わることはありません。労働基
準法、最低賃金法、労災保険法、雇用保険法などの労働法規については、障
害の有無に関わらず、全ての労働者に適用されます。
イ 賃金支払いの原則
●
障害者に対する賃金の支払いも、一般の労働者と変わりありません。
したがって、賃金の支払いに関する5原則(参照12ページ)は守らな
ければなりません。知的障害者の場合、親など保護者が本人に代わっ
て受取りに来ることがあっても、本人に支払わなければなりません。
ロ
● 最低賃金の適用除外
賃金の支払いに関して、一般の労働者と労働の能力が異なる者につい
ては、使用者が都道府県労働局長に申請し、許可を受ることにより個
別に最低賃金の適用を除外することが認められます。
53
Ⅳ
男
女
雇
用
平
等
・
障
害
者
雇
用
・
外
国
人
労
働
者
ハ
●
解雇
解雇に関しては、一般の労働者と同様に、業務上の傷病による休業期
間及びその後30日間の解雇制限などを除き、特に使用者に解雇制限
が課されていません。ただし、障害者である労働者を使用者の都合で
解雇する場合には、その旨を公共職業安定所に届け出なければなりま
せん。なお、傷病や治ゆ後の障害のための労働力の損失については、
解雇の合理的な理由になるとされています。
障害者の所得保障(障害年金)
●障害になった時期により、受けられる年金は次のとおりです。また、障害認
定日(初診日から1年6か月経った日)の障害の程度により障害等級が決ま
り、年金の等級も決まります。
イ 満20歳以前から障害者であったとき…「障害基礎年金」
●
ただし、障害者本人の所得制限があります。
ロ 満20歳以上で国民年金加入中に障害者になったとき…
「障害基礎年金」
●
ハ
厚生年金加入中に障害者になったとき…
「障害基礎年金」
+
「障害厚生年金」
●
※厚生年金の障害3級に該当したときは、
「障害厚生年金」3級のみの支
給となります。
障害者の雇用相談・就労相談窓口
機関・電話番号
住 所
各公共職業安定所(ハローワーク) (参照70ページ)
横浜東部就労支援センター
TEL.045-312-5123
横浜南部就労支援センター
TEL.045-775-1566
横浜北部就労支援センター
TEL.045-937-3384
横浜西部就労支援センター
TEL.045-390-3119
横浜戸塚就労支援センター
TEL.045-869-2323
横浜市精神障害者就労支援センター
TEL.045-475-0142
神奈川障害者職業センター
TEL.042-745-3131
神奈川県障害者就労相談センター
TEL.045-633-6110
神奈川障害者職業能力開発校
TEL.042-744-1243
神奈川能力開発センター
TEL.0463-96-4555
54
業務内容
職業紹介
神奈川区西神奈川1-4-10
クレ第2ビル 1階
磯子区新杉田町8-7
電機神奈川福祉センター内
緑区中山町306-1
ミヨシズ・シードビル405 一般就労が困難な知的障害者等に対す
る就労相談・援助等
旭区二俣川1-4-3
二俣川郵便局ビル201
戸塚区戸塚町4111
吉原ビル2階
港北区鳥山町1735
横浜市総合保健医療センター1階
就職を希望する障害者や、障害者を雇用
相模原市桜台13-1
しようとする事業主に対する就労支援等
中区寿町1-4
就労を希望する障害者に対し、職業相
かながわ労働プラザ5階
談 職業能力の評価等
相模原市桜台13-1
職業訓練
伊勢原市日向496
6
働くための基礎知識
Ⅳ.男女雇用平等・障害者雇用・外国人労働者
外国人労働者
1
●
2
●
3
●
外国人が日本で働くためには、就労可能な在留資格が必要です。
日本で働く全ての外国人労働者に、労働基準法などの労働法規が適用されます。
外国人研修生は労働者ではありませんから、就労することは認め
られていません。
4 平成19年10月1日からすべての事業主は外国人労働者の雇用(離職)の際に、
●
ハローワークへの届出が義務付けされました。
(外国人雇用状況報告制度)
就労できる在留資格
●外国人は、
「入国管理及び難民認定法」
(入管法)で定められた在留資格の範
囲内で日本での活動が認められていて、その在留期間が決まっています。
就労できる外国人は、
イ 在留資格が、外交、医療、技術などの専門職または特別な技術をもった者
●
ロ 永住者、定住者、日本人・永住者の配偶者など
●
*就労活動に制限がなく、職種を問わず就労することができます。
ハ
●
在留資格が、留学、就学などで、入国管理局で資格外活動許可を得た者
*資格外活動の許可を得た「留学生」は原則として1週28時間以内で、「就学
生」は原則として1日4時間まで就労できます。
ニ
●
特定活動(外国弁護士の代理業務など)を行う者
Ⅳ
在留期間
●在留期間は、在留資格に応じて日本に在住できる期間のことです。在留期間を更新するこ
となしに、期間を超えて日本に在住することは、不法滞在として認められていません。
不法就労
●不法就労とは次のことをいいます。
イ 不法に日本に入国して就労すること
●
ロ 在留資格ごとに認められている活動の範囲を超えて就労すること
●
ハ
●
在留期間を超えて就労すること
不法就労者は、
原則として本国に強制退去させられ、
さらに裁判で有罪が確定
したときは懲役や罰金が課せられます。また、
これらの外国人を雇用して不法
に働かせた使用者は、
不法就労援助罪として処罰されます。
*パスポート、外国人登録証明書等で在留資格、在留期間を確認することができます。
55
男
女
雇
用
平
等
・
障
害
者
雇
用
・
外
国
人
労
働
者
外国人労働者の労働条件
●国籍を問わず日本で働く全ての外国人労働者に、労働基準法、最低賃金法、
労災保険法などの労働法規は不法就労かどうか、パート、アルバイトといっ
た雇用形態、契約期間の有無などに関わらず適用されます。
イ 労災保険(参照30ページ)
●
不法就労かどうかに関係なく、加入しているかどうかにも関係なく、
全ての外国人労働者に適用されます。
ロ 雇用保険(参照32ページ)
●
就労できる在留資格があり、被保険者となる要件を備えている外国人
労働者は、全て加入することになります。
ハ
● 健康保険・厚生年金保険(参照37、40ページ)
適用事業所で常時雇用される外国人労働者は必ず加入することになり
ます。なお、6か月以上厚生年金保険の保険料を納めた外国人労働者
は、帰国の時に脱退一時金を受給できます。
在留資格別の就労の可否と在留期間
在留資格 就労の可否
在留期間
在留資格 就労の可否
在留期間
外交
⃝
任務のある間
企業内転勤
⃝
3年、1年
公用
⃝
任務のある間
興行
⃝
1年、6月、3月
教授
⃝
3年、1年
技能
⃝
3年、1年
芸術
⃝
3年、1年
文化活動
×
1年、6月
宗教
⃝
3年、1年
短期滞在
×
90日、30日、15日
報道
⃝
3年、1年
留学
×
2年、1年
投資・経営 ⃝
3年、1年 就学
×
1年、6月
法律・会計業務
⃝
3年、1年
研修
×
1年、6月
医療
⃝
3年、1年
家族滞在
×
3年、2年、1年、6月、3月
研究
⃝
3年、1年 教育
⃝
3年、1年
日本人の配偶者 ◎ 技術
⃝
3年、1年
永住者の配偶者
◎
3年、1年
人文知識・国際業務
⃝
3年、1年
定住者
◎
3年、1年、指定された期間
永住者
◎
無期限
3年、1年、6月、指定された期間
特定活動 △ 3年、1年 ○:就労が認められる在留資格 ◎:活動に制限のない在留資格 △:就労の可否は個々の許可内容によるもの ×:就労が認められない在留資格
在留資格、在留期間、資格外活動の許可等については、
●東京都入国管理局横浜支局(661-5110)
●外国人在留総合インフォメーションセンター【横浜】
(651-2851∼2)に問い合わせ
ください。
56
1
働くための基礎知識
Ⅴ.パート・派遣労働者
パートタイム労働
1
●
パートタイマー(パートタイマー労働者)とは、名称にかかわら
ず、同じ事業所で働く通常の労働者と比べ、1週間の所定労働時
間が短い人をいいます。
2
● パートタイマーにも当然労働基準法など労働者保護に関する労働
法規が適用されます。
3
● パートタイマーは、各種保険について、それぞれ加入するための
要件が異なります。
パートタイム労働法
●この法律とその指針では、使用者に対して次のことを定めています。
イ 雇入れ時に、労働条件に関する文書(労働条件通知書)を交付すること
●
ロ 期間の定めのある労働契約に締結する際には、更新の有無などの明示
●
や、雇止めの予告が必要となること(参照19ページ)
ハ
● パートタイマーに適用される就業規則を作成すること(10人以上の事業所の場合)
ニ 要件を満たすパートタイマーに対しては、健康診断を実施すること
●
ホ 最低賃金を守り、法定労働時間を超えた場合割増賃金を支払うこと
●
パートタイム労働法の改正(平成20年4月1日施行)
●一定の労働条件について明示が義務化(改正法第6条)
●待遇の決定に当たって考慮した事項についての説明が義務化
(改正法第13条)
●「通常の労働者と同視すべきパートタイム労働者」の待遇を差別的に取り扱
うことが禁止(改正法8条)
●上記以外のパートタイム労働者の賃金(改正法第9条)、教育訓練(同第10
条)
、福利厚生(同第11条)の取り扱い
●通常の労働者への転換を推進するために、規定したいずれかの措置を講ずる
ことが義務化(改正法第12条)
●パートタイム労働者から苦情の申し出を受けたときは、事業所内で自主的な
解決を図ることが努力義務化(改正法第19条)
●紛争解決援助の仕組みとして、都道府県労働局長による助言、指導、勧告、
均衡待遇調定会議による調定の設置(改正法第21、22条)
詳しくは神奈川労働局 電話 211−7380
57
Ⅴ
パ
ー
ト
・
派
遣
労
働
者
年次有給休暇
●パートタイマーには、所定労働日数に応じて、次の表の日数の有給休暇が与
えられます。なお、週所定労働時間が30時間以上又は、所定労働日数が週5
日(又は年217日)以上の場合は、一般の労働者と同じ日数になります。
(参照10ページ)
育児・介護休業
●同一の事業主に引き続き雇用された期間が1年以上ある等の一定の要件を満たすパー
トタイマーは、申出により育児休業及び介護休暇が取得できます。
(参照48ページ)
各種保険
●労災保険
労災保険は、すべてのパートタイマーに適用されます。
●雇用保険
イ パートタイマーの加入要件は、次のとおりです。
●
①1週間の所定労働時間が20時間以上であること
(所定労働時間が30時間以上あれば一般被保険者に該当します)
②1年以上引き続き雇用されることが見込まれること
(雇用契約期間が1年未満であっても、契約更新して1年以上にわた
ることが見込まれる場合も同様です)
ロ 受給要件など
●
基本手当を受給するためには、離職の日以前2年間の間に、被保険者
期間(11日以上出勤した月)が満12か月以上あることが必要です。
基本手当の日額は、離職前の6か月の賃金の合計額を180で割った額
のおよそ5割∼8割に相当する額です。
所定給付日数については、35ページ参照。
58
●健康保険、厚生年金保険など
パートタイマーの社会保険の適用は、原則として次のようになります。
税 金
●収入が一定の金額を超えると、パートタイマー本人に税金(所得税及び住民
税)が課せられるほか、配偶者控除及び配偶者特別控除の額が変わるのは、
一般の労働者と同じです。
(参照63ページ)
Q
■
午後6時∼11時(休憩時間なし)、時給800円の約束で、パートを始め
ました。1日あたり4,000円の給料をもらえばよいのでしょうか。
A
■
労働基準法では、深夜(午後10時から午前5時)に労働させた場合には、
深夜労働に対する割増賃金(25%以上)を支払うよう使用者に義務づけ
ています。そこで、午後10時以降の賃金については、時給800円の
25%割増以上の額で支払いを受けることになります。仮にちょうど
25%割増だとすると、4時間×800円+1時間×1,000円で1日当たり
4,200円となります。
Ⅴ
パ
ー
ト
・
派
遣
労
働
者
59
2
働くための基礎知識
Ⅴ.パート・派遣労働者
派遣労働
1
●
派遣労働には、登録型(派遣元に登録しておき、仕事があるとき
だけ派遣元と雇用契約を結ぶ)と、常用型(常に派遣元に雇用さ
れている)の2種類があります。あなたがどちらに当たるのか確
認しましょう。
2 派遣労働者にも労働基準法は当然適用されるとともに、労働者派
●
遣法による保護や規制があります。
3 同一の就業場所・業務に派遣される期間は、原則として最長で3
●
年間です。
4 派遣期間終了時に派遣先に職業紹介することを予定して労働者派
●
遣を行う(紹介予定派遣)制度もあります。
派遣労働のしくみ
●派遣労働とは、労働者の派遣元(人材派遣会社など)との雇用契約の締結、
および派遣先と派遣元との労働者派遣契約の締結という2つの契約の効果に
より、労働者が派遣先の指揮命令に従って働くことです。
この関係を図にすると次のようになります。
●労働基準法、労働安全衛生法、男女雇用機会均等法などの法律は、原則とし
て派遣元が雇用主としての責任を負いますが、一定の規定(労働時間管理、
職場の安全衛生管理、労災防止など)は派遣先が責任を負います。また、セ
クハラ防止は派遣元・派遣先双方が責任を負います。
60
労働者派遣法
●労働者派遣法は、派遣事業が適正に行われ、労働者の適切な就業条件が確保
されるように、次のことを定めています。
イ
●
派遣労働は、港湾運送、建設、警備業務、医療関係の業務(社会福祉
施設等で行われる医療関連業務及び紹介予定派遣の場合については対
象外)など、法律で禁止している業務を除いてすべての業務で行うこ
とができます。
ロ
●
派遣事業を行うには、都道府県労働局への許可(登録型派遣の場合)
や届出(常用型派遣の場合)が必要です。
ハ
●
同一の就業場所及び業務について、就業できる期間(派遣期間)は原
則として最長3年です。ただし、
①ソフトウエア開発、OA機器操作、秘書などの専門的な26の業務
については、派遣期間の制限はありません。
②産前産後休業、育児休業等の代替要員として派遣される場合につい
ては、派遣期間の制限はありません。
③製造業務への派遣については、原則として最長3年ですが、製造業
務で、かつ、①の業務に該当する場合は、①が適用されます。
ニ
● 派遣先での就業条件は、派遣元が派遣労働者に書面で明示することに
なっています。
ホ
● 派遣労働者の個人情報の適正な管理と秘密漏えいの禁止、派遣契約の
中途解除についての保護措置(新たな就業先の確保など)が定められ
ています。
(ただし、紹介予定派遣は事前面接を行うことができます。
)
ヘ
●
派遣受入期間の制限がない業務については、同じ業務で3年を超えて
同一の派遣労働者を受け入れている会社が同じ業務で労働者を雇用す
る場合は、その派遣労働者に対して雇用契約を申し込むことが義務づ
けられています。
ト
● 派遣受入期間の制限がある業務については、派遣期間を超えて就業さ
せようとする場合は、派遣先は、派遣労働者対して直接雇用契約申込
の義務があります。
61
Ⅴ
パ
ー
ト
・
派
遣
労
働
者
派遣労働者の保護
●派遣元・先の次のような行為は禁止されています。
×派遣労働者を20歳代女性に限る
派遣先が派遣労働者の性別や年齢等を限定して派遣元に依頼することは、
「派遣労働者を特定する行為」にあたり禁止されています。
×派遣先の正社員との相性が悪いので、派遣契約を途中で解除する
「相性が悪い」などは契約解除の正当な理由にあたりませんので、派遣先
は、労働者派遣契約を解除することはできません。
年次有給休暇
●有給休暇は、常用型の派遣労働者は一般の労働者と同様に付与されます。
なお、登録型で短期雇用契約(1か月、3か月)であっても、6か月以上引き
続き雇用していると判断されれば付与されます。
育児・介護休業
●事業主に引き続き雇用された期間が一年以上あるなどの一定の要件を満たす派遣労働者
は、事業主への申出により育児休業及び介護休業が取得できます。(参照48ページ)
各種保険
●労災保険は、すべての派遣労働者が加入します。また、雇用保険、健康保険、
厚生年金保険の加入要件を満たす場合には、これら保険に加入することにな
っています。各種保険の加入に当たっては、派遣元が責任を負います。
●常用型の派遣労働者は、一般の労働者と同様に加入します。
●登録型の派遣労働者は、働く実態により次のように加入要件が異なります。
62
1
働くための基礎知識
Ⅵ.税金
税 金
1
●
給与所得に対して課税される税金には、所得税と住民税があり、
所得税はその年(1月∼12月)の所得に、住民税(市民税及び県
民税)は前年の所得に課税されます。
2
● 税金は個人単位で課税され、税額は、収入の額と控除の額によっ
て決まります。
3
● 所得が一定金額以下の人は、配偶者や親などの扶養に入ることが
できます。
(注)ここでの説明は、 所得が、 事業所から支払われる給与のみである人を対
象としています。所得控除額などは平成20年1月現在のものです。
課税のしくみ
(給与収入−給与所得控除−所得控除)×税率−税額控除=税額
イ
●
ロ
●
ハ
●
ニ
●
給与収入:1月から12月に支払われた給料、賞与、諸手当の総額です。
ただし、月額10万円までの通勤手当は含めません。
(月10万円以内の通勤手当は非課税)
給与所得控除:サラリーマンの必要経費に当たります。
所得控除:基礎控除のほか、納税者の家族状態や生活能力を配慮して、
各種控除が設けられています。
税額控除:住宅借入金等特別控除等があります。
Ⅵ
税
金
63
●給与所得控除(目安の額)
●所得控除(主なもの)
●配偶者特別控除(所得税の場合)
配偶者特別控除は、配偶者のパート等の収入が103万円∼141万円未満の
場合は、控除額が少しずつ減少します。配偶者特別控除を受けられるのは、
所得が1,000万円(給与収入約1,231万円)以下の人に限られます。
なお、パート収入が100万円又は103万円を超えても、配偶者に課税され
る税金が急に高くなることはありません。
64
税率
●課税所得金額=給与所得金額−所得金額
●給与所得金額=給与収入−給与所得控除
●税額=課税所得金額×税率−税額控除
所
得
税
課税所得金額
税率
速算控除額※
1,000円から1,949,000円まで
5%
0円
1,950,000円から3,299,000円まで
10%
97,500円
3,300,000円から6,949,000円まで
20%
427,500円
6,950,000円から8,999,000円まで
23%
636,000円
9,000,000円から17,999,000円まで
33%
1,536,000円
18,000,000円以上
40%
2,796,000円
※速算控除額とは、課税所得額に税率をかけた後で差し引く額をいいます。
住
民
税
税率
一律10%(市民税6%、県民税4%)
(注)住民税は、
この他「均等割」として市民税年額3,
000円、県民税年額1,
000円が課税されます。
また、
神奈川県では、
水源環境保全・再生のため、
県民税の超過課税として、
所得割分 税率0.025%、
均等割分 年額300円 が県民税に上乗せされます。
●「横浜みどり税」の新設
平成21年度分から平成25年度分までの5年間、市民税の均等割に年間900
円を上乗せして課税されます。
Ⅵ
詳しくは、最寄りの区役所市民税担当(参照71ページ)にお問い合わせ下さい。
税
金
65
1
働くための基礎知識
Ⅶ.裁判所の手続き
裁判所の手続き
1
●
雇用関係のトラブルが双方の意見の対立で解決しないとき、最終
的に紛争を解決する場が裁判所です。
2 賃金不払い額が140万円を超える請求や解雇・配転の効力を争う
●
場合などは、地方裁判所が管轄します。
調 停
●簡易裁判所での、話し合いによる解決を目指す非公開の手続きです。
●裁判所の調停委員や裁判官が、双方の言い分を聞いて、合意点が得られるよ
うに調整の努力をしてくれます。
●合意が得られれば、「調停調書」が作成され、それは確定判決と同じ強制力
を持ちます。
訴 訟
●管轄は、請求額が140万円以下の場合は簡易裁判所、140万円を超える請
求や、解雇・配転の効力を争う場合などは地方裁判所です。
●法廷で労使双方が自分の言い分や証拠を十分に出し合い、裁判所が、どちら
の言い分が正しいかを判決などで判断する手続きです。
●一審判決に対しては、控訴、更には上告というかたちで、裁判が続くことも
あり、また、訴訟手続きの途中で双方の合意ができれば、和解によって終了
することもあります。
少額訴訟
●簡易裁判所でおこなわれる60万円以下の金銭の支払いを求める訴訟で、原
則として、審理を1回の期日で終わらせ、直ちに判決をする手続きです。
●何回も裁判所に足を運ばず、誰にでもできるという利用しやすさを配慮した
訴訟で、訴状の書式も裁判所に用意されています。
66
支払督促
●金銭の支払いを求める場合に利用でき、相手方が争ってこないと思われるよ
うな時に使うことの多い、簡易裁判所による手続きです。
●「支払督促申立書」に必要事項を記入し提出すれば、裁判所は、申立人の言
い分だけで、支払い督促を出してくれます。この督促に対し、相手方が異議
を申し立てなければ、その支払督促は、確定判決と同じ強制力を持ちます。
ただし、相手方から異議が申し立てられれば、訴訟手続きに移行します。
仮処分
●管轄は、原則として、訴訟の場合と同じです。
●判決が出るまでの仮の措置で、相手方の言い分も聞いた上で、仮の処分を求
めるための手続きです。
Q
■
雇用関係のトラブルに悩んでいます。裁判所に訴訟などの申立てをした
いのですが、どのような書類が必要でしょうか?
A
■
申立てにあたっては、・申立書(訴状)・申立手数料(収入印紙)・郵
便切手・相手方が法人の場合は、商業登記簿謄本などが必要です。また、
その雇用関係の詳細が明らかになるような、たとえば、雇用契約書、就
業規則の写し、給与支払明細書、解雇通知書など、入手可能なものを用
意してください。
なお、詳しくは法律相談窓口などをご利用ください。
Q
■
内容証明書とはどんなものですか?
A
■
内容証明郵便(配達証明付)は、差出人がどのような内容の手紙をいつ
発送したかを郵便局が証明してくれるものです。
したがって、不当に解雇されたり、賃金が支払ってもらえない場合、労
働基準監督署に申告する際に、解雇無効の通知や未払い賃金の請求の証
拠として内容証明郵便が役立ちます。また、賃金の請求権の時効は2年、
退職金は5年ですが、内容証明郵便での請求により6か月時効が中断され
ます。
Ⅶ
裁
判
所
の
手
続
き
67
2
働くための基礎知識
Ⅶ.裁判所の手続き
労働審判制度
1
●
2
●
従来の民事訴訟に比べて費用も時間もかかりません。
都道府県労働局の総合労働相談コーナーで実施している「あっせ
ん」より強制力があります。
3
● 労働委員会と異なり、集団的労使紛争は扱えません。
●労働審判制度
労働審判制度とは、解雇などの労働関係に関する事項について、個々の労働
者と使用者との間に生じた民事に関する紛争(個別労働関係民事紛争)を対
象として、地方裁判所において、労働審判官と労働審判員で組織される労働
審判委員会が、迅速な審理により、話合いによる解決である調停を試み、解
決に至らない場合には一定の法的拘束力のある結論(労働審判)を出すこと
ができる手続きです。
●労働審判制度の特色は
イ 迅速な審理
●
労働審判手続きは、特別な事情がある場合を除き、3回以内の期日で
審理を終結するものとされています。
ロ
● 専門性
労働審判手続きは、裁判官である労働審判官1名、労働関係に関する
専門的な知識経験を有する労働審判員2名の合計3名で組織される労
働審判委員会で行います。
労働審判員は、労働者側及び使用者側の双方から1名ずつ選出され、
中立かつ公正な対場で審理し、評議に参加します。
ハ 手続きの適正性
●
労働審判制度では、原則として3回の期日しかないため、短期間で事
実関係や法律論について、適切に主張、立証する必要があります。そ
のためには、双方に、法律の専門家である弁護士が付くのが望ましく、
代理人を立てる場合、弁護士でなければならないとされています。
ニ
● 効力
労働審判に不服がある場合、2週間以内に異議の申し立てをすること
ができ、その場合には労働審判は効力を失います。異議の申し立てが
ないときには、労働審判は裁判上の和解と同一の効力を有します。
68
ホ
●
訴訟との連携
労働審判に対して異議が申し立てられた場合や労働審判を行うことな
く労働審判手続きを終了させた場合には、労働審判の申し立ての時に、
労働審判がなされた地方裁判所に訴えの提起があったものとみなされ
ます。
●利用可能な紛争
労働審判制度は、個々の労働者と使用者との間の労働に関する民事紛争を対
象とするため、労働組合と使用者との間の紛争は含まれません。例えば、労
働者が解雇の効力を争う事件や、労働者が賃金、退職金の支払いを請求する
事件など、その争点について、3回程度で主張・立証していくことが可能と
思われる紛争が対象となります。
●労働審判制度の概要
Ⅶ
裁
判
所
の
手
続
き
<出典:首相官邸ホームページ>
http://www.kantei.go.jp/jp/singi/sihou/hourei/roudousinpan_s-1.pdf
69
相談窓口
70
労働関係機関一覧
総合相談機関
名 称
男女共同参画センター
電 話
横浜
045-871-8080
横浜南
横浜北
045-711-1154
045-910-5777
045-862-5063
(財)横浜市男女共同参画推進協会
かながわ女性センター
神奈川労働局雇用均等室
(財)21世紀職業財団神奈川事務所
045-862-5141
0466-27-6008
0466-28-2367
045-211-7380
045-224-8040
相談内容
心とからだと生き方の総合相談
女性に対する暴力の相談(火曜のみ)
子育て期の相談
心とからだと生き方の相談
性別による差別等の相談
毎月1回、就業・キャリアに関
する来所相談(要予約)を実施
詳しくは、お電話で。
悩み一般相談 セクシュアル・ハラスメント相談
雇用均等、両立支援、短時間
労働等の相談
71
窓
口
相
談
労
働
関
係
機
関
一
覧
若年者・中高年齢者のための総合相談機関
名 称
よこはま若者サポート
ステーション
かながわ若者就職支援
センター
電 話
290-7234
410-3357
所 在 地
業務内容
西区北幸2-1-22
ナガオカビル4F
西区北幸1-11-15
横浜STビル5F
就労相談・支援
(15歳∼35歳未満の方及び保護者の方)
就職支援
(35歳未満の方)
よこはま・ヤング・
ワーク・プラザ
322-8609
西区北幸1-11-15
横浜STビル16F
(学生を除く概ね35歳未満の方)
シニア・ジョブスタイル・
かながわ
412-4123
西区北幸1-11-15
横浜STビル10F
(概ね45歳以上の方)
横浜西社会保険事務所
戸塚区川上町87-1ウエルストン1ビル2F
全国健康保険協会
神奈川支部
保土ヶ谷区神戸町134
横浜ビジネスパークイーストタワー
ねんきんダイヤル
72
マンツーマンによる個別相談
就職等の情報提供等
全区
電話相談のみ
東部総合職業技術校
∼職場でのトラブルの解決を労働局がお手伝いします∼
企業組織の再編や人事労務管理の個別化などに伴い、労働関係に関し個々の労働者と事業主との間
の紛争が増加しています。
このため、労働問題への専門性が高く、無料で個別の労働関係紛争の解決・援助サービスを提供す
ることを目的として「個別労働関係紛争の解決の促進に関する法律」が成立しました。
この法律の主な内容は次のとおりです。
1 総合労働相談コーナー
●
労働局及び各労働基準監督署に設置されており、労働問題に関するあらゆる分野について、専門
の総合労働相談員が、相談・情報の提供を行っています。
2 労働局長による「助言・指導」
●
労働条件その他労働関係に関する事項について、実際に紛争状態にある個々の労働者と事業主に
対し、個別労働関係紛争の問題点と解決の方向を示すために行います。
3 紛争調整委員会による「あっせん」
●
個々の労働者と事業主の間に第三者(学識者で構成する委員)が入り、双方の主張の要点を確か
め、双方に働きかけ、場合によっては両者が採るべき具体的なあっせん案を提示するなどして、
紛争当事者の話し合いを進め、その自主的な解決を促進します。
(問い合せ先 神奈川労働局企画室 TEL 211−7358)
窓
口
相
談
労
働
関
係
機
関
一
覧
73
労働条件通知書(雇入通知書)
(次頁に続く)
74
労
働
条
件
通
知
書
︵
雇
入
通
知
書
︶
75
横浜市技能文化会館
横浜しごと支援センター
横浜しごと支援センターでは、次のような事業を行っています。お気軽にご利用
ください。
①就業に関する相談
就職にあたっての相談から、就職後の職場適応や定着に関する相談など、
様々な「しごと」に関する悩みに対してトータルで相談を受けられます。具体
的には、ハローワーク(公共職業安定所)や公共職業訓練を始めとした各機関
の紹介や就職情報の提供を行い、就職後のトラブルについては②の労働相談と
一体となったワンストップでの相談を行っています。
また、必要に応じ、③のキャリアカウンセリングや④の就職支援セミナーに
つなげていきます。
②労働相談
解雇・退職、賃金などの労働条件や社会保険などの相談を受け付けています。
*土曜日は弁護士相談(13:00∼17:00)も実施しています。
(要予約)
③キャリアカウンセリング
求職者に対し、専門のキャリアカウンセラーが、職業能力、職業適性など
個々のキャリアを検証し、就職に向けた具体的な助言を行い、就職活動の方向
性を導きます。
(木曜日・要予約)
④就職支援セミナー
履歴書の書き方、面接の技法など、就職活動において必要な知識、技術の習
得など就職活動における実践的なサポートを行います。
(若年者向け、中高年者
向け等)
⑤情報提供事業
従来からの労働情報の提供に加え、新たに就職情報の提供を行ってます。
・就職情報提供用に、就職関係図書や、インターネットでの検索、適職診断ソ
フトの利用に供するためのパソコンを設置しています。
⑥労働実務セミナー
労働法や社会保険など労働実務のトピックな問題についてセミナーを実施し
ます。
●開館時間:月∼土曜日 9:00∼17:00(月・木曜日は20:00まで)
●休 館 日:日曜日、祝日、年末年始
横浜しごと支援センター
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〒231-8575 横浜市中区万代町2-4-7 横浜市技能文化会館3階
TEL 045-681-6512(関内駅徒歩5分・伊勢佐木長者町駅徒歩3分)
76