3-3 梁とトラスの関連性 2.1節でも述べたように,トラスと梁には非常に密接な類似性がある。図3.3.1 (a)のようなトラスを考えてみよう。斜め材の軸力を描くと,図 3.3.1(b)のよう に,左側 3 コマで√ 2 の引張,中央 4 コマでゼロ,右側 3 コマで√ 2 の圧縮とな る。このトラスを単純梁と見て,せん断力を計算すると,図 3.3.1(c)のようにな り,きわめて類似している。同様に,上弦材と下弦材の軸力を描くと,図 3.3.1 1 10 1 A B C G H D E F I J 10 (a) トラス全体 1 1 引張 0 2 − 2 圧縮 (b) 斜め材の軸力 1 −1 (c) 梁として見たせん断力 −1 圧縮 −2 −1 0 2 1 −2 −3 (d) 上弦材の軸力 3 0 1 2 引張 (e) 下弦材の軸力 30 N.mm (f) 梁として見た曲げモーメント 図 3.3.1 単純梁に似たトラス 154 (d)(e)のようになる。このトラスを単純梁と見て,曲げモーメントを計算すると, 図3.3.1(f)のようになり,やはり類似性がある *1。 「二次元トラス解析」ソフトで, 解析した結果を図 3.3.2 に示す。変形状態も単純梁(図 3.3.3)と似ていること がわかると思う。 図 3.3.2 トラスの解析結果 図 3.3.3 単純梁の結果(荷重は 10 とした) *1 まじめな読者には図3.3.1(d)(e)で上・下弦材の軸力が左右対称でないことが気にな るかもしれない。これは,斜め材がすべて右下がりのため,トラス自体が左右非対称だ からである。トラスの左半分の斜め材を右上がりにすれば,軸力は左右対称になる。さ らに,下図(a)のように×型の斜め材を入れると上・下弦材の軸力は同じ大きさで符号だ けが逆になる。実はこのトラスが単純梁を最も精密に近似している。下図(a)の破線は対 応する単純梁を表す。 1 1 15 10 (a) より単純梁に近いトラス −0.5 圧縮 −1.5 −2.5 (b) 上弦材の軸力 155 −1.5 −3 −2.5 −0.5 たとえば,図 3.3.1(a)の GH 間の破線位置で切断すると,図 3.3.4(a)のように なる。上弦材と下弦材は± 3 N の圧縮・引張力を負担しており,その距離は 10 mm であるから,図 3.3.1(f)の曲げモーメント 30 N.mm と対応することがわか る。また,斜め材の軸力がゼロであることは,全体を梁として見たときのせん断 力がゼロであることに対応している。 図 3.3.1(a)の AB 間,左端から x の位置で切断すると図 3.3.4(b)のようになる。 斜め材の引張軸力√ 2 鉛直成分 1 N は,水平成分と鉛直成分に分解して示している。この N は,梁として見たときのせん断力に対応している。また,上弦材 と斜め材との距離は x mm であるから,図 3.3.1(f)の曲げモーメント x N.mm と 対応している。 図 3.3.1(a)の BC 間で切断すると図 3.3.4(c)のようになる。上弦材と斜め材と の距離は x−10 mm であるから,上弦材まわりのモーメントを計算すると, M = 1 × ( x − 10) + 1 × 10 = x となり,やはり図 3.3.1(f)の曲げモーメントと対応している。下弦材まわりで モーメントを計算しても答えは同じである。 以上,種々検討したが, 「どこで切断しても,x, y 方向の力の釣合いとモーメ ントの釣合いが成り立つ」という大原則は,梁でもトラスでも成り立つから,す べて当たり前とも言える。 変形に関する類似性もある。図 3.3.1(a)の GHIJ 間では,図 3.3.5(a)のように 上弦材が縮み,下弦材が伸びるという,一種の曲げ変形が生じる。図 2.5.2(曲 率の定義)との類似性に注目されたい。トラス材のヤング係数を E, 断面積を A とすると,上・下弦材のひずみ度はε =N/(EA) = ± 3/( EA)である。伸縮量は,e x −3 G x −1 A 1 10 −2 B x 1 1 1 3 I (a) GH 間で切断 A D D (b) AB 間で切断 E 1 (c) BC 間で切断 図 3.3.4 トラスを縦に切断した状態 156 x−10 = ε l =±30/( EA), したがって曲げ変形 dθは,伸縮量を上下弦材の距離10 mm で割って, dθ = 1 30 6 ×2× = 10 EA EA となる。よって,曲率φは,d θを幅 dx = 10 で割って, φ= dθ 6 = dx 10 EA である。ABDE 間でも同様であり,上・下弦材の伸縮による曲率は dθ = 1 10 1 × = よって 10 EA EA φ= dθ 1 = dx 10 EA となる。これは GHIJ 間の 1/6 であり,ABDE 間の平均曲げモーメントが GHIJ 間の 1/6 であることと対応する。ただし,ABDE 間では,図 3.3.5(c)のように, 斜め材 AE が伸びるという変形も生じる。これはせん断力による変形と言える。 BCEF 間でも同様である。実は,現実の梁でも同様の変形が生じ,これをせん断 dθ dθ G −3 H −3 A −1 B −1 5 10 5 3 I 10 J 3 E D 10 (a) GHIJ の曲げ変形 (b) ABDE の曲げ変形 2 B A D E 2 (c) ABDE のせん断変形 図 3.3.5 トラスの変形 157 変形という。ただし,図 3.3.1 および図 3.3.3 のような細長いトラスや梁ではせ ん断変形が全体変形に与える影響は小さい。 演習:学籍番号下 2 桁を ij とする。下のようなトラスに関して,図 3.3.1 と同様 の図を描きなさい。数値は,小数点以下 1 桁まで書くこと。また,概略の変形図 も描きなさい。 10 10+i (N) 10 10+j (N) 158
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