高クロム鋼製高温機器の設備診断技術の開発

2 主要な研究成果
重点
(プロジェクト)
課題 - 設備運用・保全技術の高度化
高クロム鋼製高温機器の設備診断技術の開発
高 効 率かつ 大 規 模 電 源である超 々 臨 界
背景・目的
圧( U S C )火 力 発 電 所において、高クロム鋼
製高温機器に対する信頼性の高い設備診断
技術の確立が求められている。
( 9 C r 鋼 、1 2 C r 鋼 )製 大 径 管 の 各 種 の 溶 接
本 課 題 では 、高クロム鋼 製 大 径 管 の 懸 念
部でクリープ損傷に起因する不具合が発生
事項である周溶接部や管台溶接部のクリー
した事例がある。大径管 の 不具合はUSC火
プ損傷に対する設備診断技術を開発し、現場
力発電所の安定運用に支障をきたすことか
の保守・管理への反映を目指す。
ら、これを未然に防止するために高クロム鋼
主な成果
1
内圧曲げクリープ条件下における12Cr鋼周溶接部 の 破壊形態 の 解明
周溶接部の破壊形態の解明を目的として
面き裂が確認された(図1)。試験体を切断し
実 施した1 2 C r 鋼 大 径 管 周 溶 接 試 験 体 の 内
溶接部断面を詳細に観察した結果、クリープ
圧曲げクリープ試験において急激な変形を
き裂 の 起 点は配 管 内 部であり、母 材 の 溶 接
捉えて試験を停止したところ、曲げによる軸
熱影響部(HAZ)細粒域に沿ってき裂が進展
方向引張応力が作用する側の周溶接部で表
することが明らかとなった。
2
12C r鋼 周 溶 接 部 のクリープき裂 / 寿 命に対する検 査と評 価
周溶接部に対する設備診断技術の確立に
には相 関 が あり、非 破 壊 検 査 法 の 有 効 性 が
向けて、切断調査の前に12Cr鋼大径管周溶
実 証された( 図 2 )。また、これまでに当 所で
接試験体に対して超音波非破壊検査法を適
開発してきた解析技術に基づき本試験体の
用したところ、肉厚内部の広い範囲でクリー
寿命評価を実施したところ、ひずみを基準に
プき裂 の 存 在 が 示 唆された。この 検 査 結 果
評価することで概ね妥当な精度で寿命を評
を断 面 観 察 結 果と比 較したところ両 者 の 間
価することができた。
3
9C r鋼 溶 接 部 のクリープ 寿 命 へ の 影 響 因 子 の 検 討
溶 接 部に対 する信 頼 性 の 高 い 設 備 診 断
リー プ 寿 命 は 低 下 することが 明らかとなっ
技 術を開 発 するために、9 C r 鋼 溶 接 部 のク
た(図3)。本試験結果より、溶接部を評価す
リープ寿命に対する各種影響因子について
る際には開 先 角 度も考 慮すべきであること
実 験 により調 査したところ 、溶 融 線と応 力
が示唆された。
方向のなす角度(開先角度)が小さいほどク
4
9C r鋼 再 溶 接 部 のクリープ 寿 命 の 評 価
9Cr鋼溶接部の劣化損傷材に対して初期
と再溶接の交差箇所)にき裂が生じた。溶接
溶接部と交差するような再溶接を施した後、
部の各位置での材料特性を詳細にモデル化
クリー プ 試 験 を 実 施したところ、再 溶 接 の
しクリープ解析を実施したところ、溶接金属
無 い 場 合と比 べ て 顕 著 な 寿 命 の 低 下 が 認
内HAZにおいてひずみの集中が認められた
められた。9Cr鋼溶接材の場合、一般的には
( 図 4 )。この 結 果より、複 雑な開 先 形 状を有
母材のHAZ細粒域でき裂が生じるのに対し
する再溶接部に対して解析的評価が有効で
て、本 試 験 片は溶 接 金 属 内 H A Z( 初 期 溶 接
ある可能性が示唆された。
42
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図1 内 圧 曲 げ クリー プ 試 験 後 の 1 2 C r 鋼 周
溶接試験体の断面
図2 超 音 波 非 破 壊 検 査 法 の 有 効 性 の 実 証
温度650℃で約8,000時間試験後に、曲げによる
音波法により検出することができた。
12Cr鋼周継手試験体に生じていた内部き裂を、超
引 張 力 が 作 用する周 溶 接 部 の H A Zに沿って巨 視
き裂が発生・進展していた。
重点︵プロジェクト︶課題
□
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設
- 備運用 保
・ 全技術の高度化
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図3 9Cr鋼溶接部のクリープ寿命への影響因子
10mm
図4 9Cr鋼再溶接材のクリープ解析
溶 融 線と応 力 方 向 の な す 角 度 が 小 さ い ほど 、ク
材料特性を詳細にモデル化した9Cr鋼再溶接材の
リープ寿命が低下した。
クリープ解析において、実験でき裂が確認された溶
*RHC委員会:国が設置した「高効率火力発電設備
接金属内HAZ(初期溶接と再溶接の交差箇所)
でク
健全性調査委員会」
リープひずみの集中が見られた。
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