浄水汚泥の園芸用土化のためのナタ爪撹拌式造粒システム

[成果情報名]浄水汚泥の園芸用土化のためのナタ爪撹拌式造粒システム
[ 要 約 ] 高 水 分 の 浄 水 汚 泥 を 天 日乾 燥 ハウ ス 内 に お い て、 ナタ 爪 を 装 着 した 自走 式 撹 拌装 置 を
反復撹拌させる造粒システムは、園芸用土に適する粒径2~10mmの乾燥した粒状物に90%程度
の歩留りで加工できる。
[キーワード] 浄水汚泥、ナタ爪、園芸用土、造粒システム、自走式撹拌装置
[担当]三重農研・園芸研究課
[代表連絡先]電話0598-42-6358
[区分]関東東海北陸農業・花き、作業技術
[分類]技術・参考
-------------------------------------------------------------------------------[背景・ねらい]
工業 用 水 の浄 水 場 か ら発 生 する 浄 水汚 泥 は 、 そ の性 質 が 上 流域 の 土 壌を 反映 し 、理 化学
的性質が安定している。そのため、プレス脱水機で硬化後、粉砕し得られる粒状物は、鉢物用
の園芸用土の基材として利用されている。
しかし、プレス脱水機 の造粒 法は、機械設 備及びラ ンニングコストが高く、また、沈殿槽で
天 日乾 燥 後 、粉 砕 、 選別 さ れ る処 理 法 では 粉 体 が多 い た め 、水 道事 業体か らは歩 留りが
高くかつ販売価格に見合った安価な造粒法の開発が求められている。
そこで、畜産分野において糞尿の乾燥処理に用いられている天日乾燥ハウス施設を応用し
た浄水汚泥の造粒システムを開発する。
[成果の内容・特徴]
1. 開発した造粒 システムは、天日乾 燥ハウスと汚 泥投入レーン(深さ30cm程度)、及びレーン
上を自走するナタ爪を装着した撹拌ロータ付きの攪拌機で構成される。レーン入り口に投入さ
れた汚泥は連続的に撹拌され、レーン出口に向かって移動する過程で、混練→造粒→乾燥
硬化の工程を経ながら粒状物に加工される(図1)。なお、本システムでは、汚泥乾燥用の熱
源は不要であり、その分ランニングコストが安くなる。
2.同様の機械施設を用いた畜産糞尿の連続乾燥処理においては、2種類の撹拌爪がある。
浄水汚泥を造粒する場合、フラットバーでは汚泥水分に関わらず造粒が始まるが、ナタ爪では
汚泥水分が30%程度まで乾燥した時点で造粒が始まる(表1)。
3 . 造 粒 物 の 粒 径 は 、フ ラッ ト バ ーで は 投 入時 の 汚 泥の 水 分 によ り 製 品 粒 径が 左 右 され 、 高水
分条件で大粒、低水分条件では、小粒の割合がそれぞれ増加する。一方、ナタ爪は低水分条
件 のみ で 造粒 され 、 製 品粒 径 組 成は 原料 汚 泥 の水 分 に 係わ らず 一 定 にで き 、園芸用 土の適
性 範 囲 で あ る 粒 径 2~ 10mmの 歩 留 り は 90% 程 度と な る ( 図 2 ) 。 この た め 、投 入 水 分が 一 定 で
ない汚泥の園芸用土化にはナタ爪が適する。
4.粒状化した汚泥を用いた用土で栽培した鉢花用ストックでは、地上部および地下部ともに慣
行用土(赤玉土用土)と同等の生育が得られる(図3)。
[成果の活用面・留意点]
1.本システムで造粒された園芸用土は、鉢用土として灌水に対する十分な耐崩壊性を有する
が 、 原 料 汚 泥 の 性 質 、 用 途 に よ っ て は 汚 泥 投 入 時に 糊 剤 を 混 合さ せ る こと で 適 正 な強 度 、耐
崩壊性を有する粒状物を得ることができる。
2.本システムは水道事業所及び砂利採取事業所の汚水処理工程で発生する汚泥の園芸用
土 化 に 適 応 で き る 。 し か し 、 処 理 工 程 で 混 入 さ れ る 沈 降 剤 は 、 リ ン 酸 を 吸 着 す る ア ルミ
ニウムを含んでいるため、栽培に当たってはリン酸の施用量に留意する必要がある。
3.本システムを利用する汚泥は、産廃基準を満たしていることを確認する必要がある。
[具体的データ]
天日乾燥ハウス
天日乾燥ハウス
撹拌機
汚泥投入口
撹拌機
汚泥出口
レーン
深さ0.3m
練混
造粒
40~50%程度
10%程度
水分変化
図1
表1
乾燥・硬化
投入レーン幅6m
レーン高さ30cm
汚泥の造粒システムフロー図と機械装置
爪形状と造粒水分及び造粒物の形状との関係
投 入 時 の汚 泥水 分
フラッ トバー
~ 40%
投
入
後
の
汚
泥
水
分
変
化
~ 40%
40~30%
30~ 25%
ナタ 爪
25%~
粒 形 成可
[大 粒径 ]
~ 40%
40~ 30%
30~ 25%
粒 形 成不 可
[練り 状 態]
造粒 開始
40~
30%
粒 径 維持
[大 粒径 ]
粒 形 成可
[最 適 粒
径]
30~
25%
粒 径 維持
[大粒 径 ]
粒 径 維持
[最 適 粒
径]
粒形成可
[細 粒径 ]
25%~
粒 径 維持
[大 粒径 ]
粒 径 維持
[最 適 粒
径]
粒径維持
[細 粒径 ]
粒形成
不可
[粉状 ]
25%~
造粒 開始
水 分 28%
粒 形 成不 可
[練り 状 態]
粒 形 成不
可
[練り 状
態]
粒形 成 可
[最適 粒 径]
粒 形 成可
[最適 粒
径]
粒 形成 可
[最 適 粒
径]
粒径 維 持
[最適 粒 径]
粒 径 維持
[最適 粒
径]
粒 径維 持
[最 適 粒
径]
ナタ爪
粒形 成
不可
[粉 状 ]
フラットバー
[]は、造粒物の主要な径状を示す。概ね、最適粒径:2~10mm、
大粒径:粒径10mm以上、細粒径:2mm以下
は最適粒径が主要となる範囲を示す
90%
40
30
20
40
30
20
10
10
0
0
2~5mm 5~10mm
粒径
10mm~
根発達程度
5.0
25.0
50
画分重量割合(%)
画分重量割合(%)
50
図2
低水分28%
60
70%
~2mm
30.0
地上部生重量(g)
60
地上部生重
ナタ爪
70
高水分42%
低水分28%
4.0
20.0
3.0
15.0
2.0
10.0
1.0
5.0
0.0
0.0
慣行
~2mm
根発根程度
フラットバー
70
汚泥
2~5mm 5~10mm 10mm~
粒径
撹拌爪規格の違いと造粒組成との関係
図3
汚泥用土における鉢花
用ストックの生育
発根程度
0:枯死、1:鉢まで根が達していない、2:鉢ま
で根が達している、3:鉢底まで根が達している、
4:鉢全体に根がまわっている
慣行-赤玉土1:ピートモス1、汚泥-汚泥1:ピート
モス1(V/V)、無加温ハウスで管理
品種:ムーンホイップ、は種:2008、8、4号鉢上:2
008.10、施肥:緩効性化成1.5g/ポット
[その他]
研究課題名:産業廃棄物抑制産官共同研究
予算区分:県単
研究期間:2007~2008年
研究担当者:原 正之、鎌田正行
発表論文等:原ら「造粒システム及び造粒法」特願2009-20809