1.協会世話人 Vereinsbetreuer ハム高等裁判所 2000 年 5 月 23 日決定 関連条文;民法第 1897 条1[個人世話人の選任]、1908 条b第 4 項2[世話人の解任] 〈要旨〉 協会世話人には、世話協会と雇用関係にある者のみがなりうる。この要件は、雇用関 係にない職員については充たされていない。 〈理由〉 Ⅰ. 1996 年 11 月 29 日の決定により、区裁判所は、関係者 3)の職員である K 氏を関係者 1)の世話人に選任した。1999 年 1 月 28 日付の文書で関係者 3)が申し立てたのは、世 話人である職員 K を解任し、K に代えて協会の『女性職員』である関係者 2)を選任す ることであった。関係者 1)からの聴取の後に、区裁判所の司法補助官は、1999 年 2 月 11 日の決定にしたがって、世話人 K を解任し、 『AWO R.の協会世話人である』関係者 2)を関係者 1)の世話人に選任した。 1999 年 3 月中旬に関係者 2)が平行手続きにおいて区裁判所に電話で伝えたところに よると、関係者 2)は関係者 3)に雇用されておらず、期限の定めなくかつ暫定的な報酬 契約にもとづき関係者 3)のために働いているとのことであった。 このような報酬契約によって、関係者 2)と 3)は、1999 年 2 月 11 日以後契約関係に 入った。その契約関係は各月末まで 14 日の予告期間をもって解約告知しうる。関係者 2)は、世話活動 1 時間につき税込みで 40DM を受け取り、税金と社会保険料について ① 後見裁判所は、裁判上定められる職務の範囲において被世話人の事務を処理し、これ について被世話人を必要な範囲で個人的に世話することに適している自然人を世話人に選 任する。 ② 第 1908 条 f によって認可された世話協会の職員で、もっぱらまたは部分的に世話人と して活動している者(協会世話人)は、その協会が同意する場合にのみ選任を許される。 [以 下略] 2 ④ 協会世話人は、協会が申し立てを行う場合にも、解任されるものとする。解任が被世 話人の福祉のために必要でない場合に、後見裁判所は、これに代えて、世話人の同意を得 て、この者が以後私人として世話を継続することを言い渡すことができる。[以下略] 1 -2- は自分で支払わねばならなかった。 関係者 2)と 3)からの聴取の後、区裁判所―すなわち司法補助官―は、1999 年 6 月 17 日の決定により 1999 年 2 月 11 日までの決定を修正して、関係者 2)について報酬の点 からみて民法(民法典)第 1897 条 2 項の要件を充たしていないので協会世話人として 選任されていない、とした。 これに対して関係者 3)は、1999 年 6 月 29 日付の書面で以下を理由にして抗告を行 った。すなわち、報酬の点からみたとしても民法第 1897 条 2 項の要件を充たしている ことを理由としていた。2000 年 1 月 31 日の決定により、地方裁判所はこの抗告を棄却 した。この決定に対して、2000 年 2 月 18 日付の弁護士の書面により、関係者 3)はさ らに抗告を行った。 Ⅱ. 再抗告を行うことが、非訟事件手続法第 27 条・29 条によって正式に許されている。 関係者 3)が関与している世話協会の抗告権能は、世話協会が行った最初の抗告が成功し なかったことから生じる。 けれども法律上の手段は、地方裁判所の決定が法律に違反していないので、非訟事件 手続法 27 条 1 項所定の根拠がない。 訴訟手続き法の観点において、地方裁判所は、関係者 3)が最初の抗告を許されている ことを前提としており、適切である(詳しく述べられている)。 地方裁判所は、手続きにおいて問題となった『報酬契約』を法的瑕疵のないものと評 価した。さらに、問題なのは、関係者 3)の独立した職業活動を対象としている雇用契約 である、とした。関係者 3)は、サービス提供の方法を自主的に決定している。関係者 3)の活動は、売上税―社会保障分担金とまったく同様に報酬総額の中から支払われる― を義務づけられている。それゆえ、関係者 3)は、関係者 2)との雇用関係にない。契約 当事者が何か違うことを同意のうえで取り決めていたことは、拠り所とならない。すな わち、契約関係を社会保障法上評価することは、ここでは求められていない。 協会世話人が必ず世話協会と契約関係になくてはならないかどうか、や協会世話人が 世話協会の無償の職員であっても良いかどうか、という問題について、現在上級裁判所 の公刊されている判例はない。そういった問題に、学説においてさまざまな答えが与え られている。 Jaschinski ( NJW1996 年号 1521 頁以下) および彼の後継者である Diederishen(Palandt 社『民法(第 59 版)』第 1897 条欄外番号 10)は、協会世話人が 協会の無償の職員であっても良いという意見である。その一方で Bienwald(Staudinger 社『民法(改訂 13 版) 』第 1897 条欄外番号 34)や Schwab(MK/民法第 3 版第 1897 条 FamRZ1992 年号 493 頁以下 欄外番号 9・10、 (498 頁) )さらには Dickescheid(民法/RGRK -3- 第 12 版(1999 年)第 1897 条欄外番号 4)が主張しているのは、雇用関係にある職員だ けが協会世話人と考えられるという見解である(同じく第 1 審であるミュンヘン地方裁 判所の判決(BtPrax1999 年号 117 頁)は、こういった理由から協会世話人として名誉 職的援助者を任命することを不可能であるとした) 。 《以上、黒田》 高裁後見部は、これらの被用者に関する制限を適切なものと考える。 当事者のための正式な責務の達成を担保するために、協会世話人の活動を統一的に監督 することの必要性は、さらに、以下の点において明らかになる。すなわち、世話協会はそ の職員を監督し、発展させ、そして、その活動から生じた損害を適切に補償しなければな らない(民法 1908 条f1 項 1 号)、という点において明らかになる。その際重要となるの は使用者の典型的な義務であって、自由業的な労働関係の範囲においては、その義務の同 価値の達成は保証されない。その義務の最も重要な点は、世話協会に義務付けられた持続 的で一般的な、それぞれの協会世話人に対する監督である。その監督は確かに後見裁判所 の監督(民法 1837 条)を補うものではないが、それにもかかわらず、以下のことに役立つ。 すなわち、職務の執行がなされない場合に、初期の段階で世話協会の内部で処置をするこ とによって、職務の不履行を妨げることができるのである。立法者がこの協会内部の監督 にどのような特別な信頼を置いていたのかということは、民法 1908 条i2 項 2 文の規定に おいて明らかである。その規定は、後見裁判所の特段の命令を留保した上で、計算提示義 務の免除を協会世話人にも及ぼしている。協会世話人に際しては、後見裁判所による現在 の財産管理に関する監督は正式には不必要であると、立法者はみなしていた(連邦議会報告 4528 161 頁)のだが、立法者は、世話協会の内部で有効な監督が行われる、というこ 書 11/ とを前提としていた。自由業的に活動しているサービス提供者に対しては、そのような持 続的な監督は実務上保証されず、特に、協会はそのような場合に、通常、被世話人に関す る書類に対して時期を問わずに干渉することをしないであろう。ここに提出された雇用契 約の 1 条の規定「契約の相手方は、専門的な水準を遵守する義務を負い、その限りでは、 AWO の専門的な監督下にある」は、そのような持続的な監督を保証しない。それと同時に、 世話協会の自由業的なサービス提供者に対する計算提示義務の免除を内部で正当化するこ とは、認められない。 民法 1908 条f1 項 1 号は、その文言によると、直接的には、官庁による世話協会の承認 のための要件に関係するだけである。それと同時に協会の世話人の活動のために法律上の 規定を定めるその模範は、世話人を選択する際にも、実際に行われた活動がこの模範に適 合しているかどうかを考慮することを正当化すると思われる。 この模範は、世話法のこれ以外の規定によって裏付けられる。つまり、世話協会のその 職員についての対人高権を配慮する規定によって裏付けられるのである。 世話人の任命は、世話人が活動している協会の承諾に依存する(民法 1897 条 2 項) 。さ -4- らに、協会世話人が解任されることになるのは、協会が解任を申請する場合である(民法 1908 条b4 項 1 文) 。両規定は、世話協会に対して、自由にその職員の労働力を使うことを 可能にする。 裁判所は、協会世話人の任命に際しては、私人の任命とは異なって、世話が有償で行わ れるということを確認することはない(民法 1836 条 1 項 2・3 文とは異なって、民法 1908 条e1 項 2 文)。特に、協会世話人は、自ら、民法 1835 条から 1836 条bまでの規定による 費用の償還と報酬を請求する権利を主張することができない(民法 1908 条e2 項)。このこ とは以下のことを示す。すなわち、世話人は独立してはいないがその活動を職業的に行う ということにその法律は由来する、ということを示している。 注:ここでは、ミュンヘン地方裁判所Ⅰ BtPrax 1999,177 も参照。 《以上、大場》 -5- 2.介護者と職業世話人の関係について Zum Verhältnis von Pflegenden und Berufsbetreuern シュテファン・ベッカー(ソーシャルワーカー学士・社会老年学士) Stefan Becker 最新の調査によると、全ての介護ホームの入所者[Pflegeheimbewohner]のうち、約 40% が法定世話人の選任を受けている。この数は、自宅に居住している同年齢の人々と比較す ると非常に多い(Hoffmann/Tamayo-Korte 2000,1 参照)。 支援を必要とする人々に対する配慮が機能するためには、職業世話人と介護者との共同 作業が必要不可欠である。世話人は、自分の任務を認識しうるために、介護職員の情報提 供を必要としている。介護者には、次のような相談相手がいる。すなわち、しばしば入所 者の経緯についてより多くのことを知っていて、被世話人と接触してはじめて解決されう る具体的な任務を委託されている相談相手である。それゆえ介護者と世話人は、介護を必 要とする人の福祉を配慮する上で、パートナーなのである。 調査作業の範囲で、私は、ホームにおける職業世話人と介護者の関係に取り組んできた。 その際、介護者と職業世話人それぞれ5人と、導入面となる対談を行った。主として重要 なのは、次の観点であった。 − ホームの入所者の状況と、介護者と職業世話人によるその状況の解釈 − 世話人の任務と活動 − 介護者と世話人の協力 − 介護者と世話人の衝突 インタビューはその都度約1時間行われた。そのインタビューはテープに録音され、そ の後文章化された。このようにして得られた資料は、多くの機会で改訂された。この場合 に重要なのは、さしあたり個々のインタビューに対してのみ妥当する鍵となる情報を与え ることであった。この鍵となる情報は、さらに評価をしていく流れの中で統一化され、そ の結果、ある種の比較可能性が生じ、インタビュー相手の最も重要な発言は表に要約され ることになった。 さしあたり重要なのは、それぞれの職業において比較をすることであった。その後、そ れぞれの成果が対置された。 6 1.介護者 1.1 関係事例の概観 名前 Pl ög er プレッガー Pi l s ピルス Pa u l パウル Pe t er ペーター Pe l z er ペルツァー 名前 プレッガー ピルス パウル ペーター ペルツァー 1.2 性別 女 女 女 女 男 年齢 47歳 施設 特定宗派のホーム 13 0床 私立のホーム 51歳 15 4床 特定宗派のホーム 75床 特定宗派のホーム 32歳 44床 群立のホーム 42歳 居住者 11 5人 任務 滞在生活指導 滞在生活指導 滞在生活指導 滞在生活指導 滞在生活指導 保護室 介護室 29歳 専門 老人介護者 看護婦 看護婦 老人介護者 介護士 滞在場所 居室 共同居室 介護室 キャリア 7年 22年 10年 10年 10年 入所者の状況 プレッガー 入所者の状況 ・ 痴呆で精神的能力が低下している入所者は、常に閉鎖病棟に措置入所させられている。 ・ 入所者は自分の状況に苦しんでおらず、その状況を楽しんでいる。 ・ 入所者との接触は、病気および言語障害のため困難である。死期が迫っている。 状況および活動の自身による評価 ・ 有意義な仕事である。最近まできちんとしていた人を人らしく扱うのはすばらしいこ とだ。年相応に扱われたいと思っていて、自分もそのように入所者に接している。 ピルス 入所者の状況 ・ 身体的および知的障害がある。ホームでの状況としては孤立しやすい。ホームの規則と いうものに特徴づけられる状況。 状況および活動の自身による評価 ・ ホームでの状況に否定的である。ホームの在り方を拒否。ホームの規則が入所者の個 7 性と相容れない。 パウル 入所者の状況 ・ 入所者はいまでも精神的に活気に満ちているが、もはや調子は良くない。ホームでの介 護を必要とする状況は、少々変わっていて重度である。不安が表れている。 状況および活動の自身による評価 ・ 入所者は、状況に不安を感じている。介護の需要が既に一つの問題点である。年相応に 扱われたいと思っていて、自分もそのように入所者に接している。 ペーター 入所者の状況 ・ より高齢の人たちを尊敬している。入所者が中心に据えられている。調子が悪い場合に はきつく感じる。介護の需要が不安のもとになっている。 状況および活動の自身による評価 ・ 介護の労働に積極的である。年相応に扱われたいと思っていて、自分もそのように入所 者に接している。 ペルツァー 入所者の状況 ・ ホームへの入所が大きなきっかけとなる。必ずしも何年か以上死んだような状態である わけではなく、わずかに光明が見える。頭が混乱している入所者は、自分の状態を部分 的に別様にとらえている。医的集中治療が一つの問題である。入所者は無防備であり、 親族から財産的迫害を受けている。 状況および活動の自身による評価 ・ ホームでの介護が在宅の場合よりも良い。 入所者の状況を述べる際には、あらゆる障害にふれなくてはならない。しかしこのよう な障害への評価は、さまざまである。2 人(プレッガーさんとペルツァーさん)の場合には、 入所者は部分的に『大変朗らか』であるか、または『事態を別様にとらえている』一方で、 インタビューを受けた他の人たちによると、介護を必要とする人の状況は否定的に述べら れている。何人かの場合には、自身の介護必要性の将来的見通しに不安が結びついている。 同時に、インタビューを受けたうちの 3 人は、自分の活動をとても高く評価し、自身の介 護が必要な場合にはまず、その時点で自分が信頼している人間が自分の面倒を見てくれる ように処理されるべきであるという希望を表明した。 介護者は、仕事の中で人間の生存の限界状況と常に直面させられている。こういった近 接性ゆえに、ひょっとしたら、ことのほか強い仕事上の線引きをしたがる傾向、あるいは 状況を例えば世話人が行うのとは異なって評価する必然性があるのかもしれない。 8 自身の活動について述べられた肯定的評価も、私見によると、同じことである。このよ うな肯定的評価を通じて、高齢者を介護する者にとっては、介護を必要とする人の状況に ついて自ら線引きをし、自己の活動を肯定的に捉えることが可能になる。すなわち、入所 者の状況についての分析は、限定的にのみ行われている。さらに、このような姿勢が、介 護者に、その活動を行うことを可能にしている。 設定された質問に関して、介護者はおそらく入所者の状況を限定的にのみ評価しうると いうことも重要である。このことが、世話人と必要な措置を話し合い、それから実施する という可能性を損なうことがある。 1.3 世話人の任務および活動 プレッガー 被世話人には遂行しえない全範囲を、裁判所の明白な指示で、任務とする。 世話人との肯定的および否定的経験がある。徹底的に面倒を見る世話人、および被世話人 や職員との個人的な接触をしようとしない世話人がいる。世話人は手一杯で余裕がない。 ピルス 個人的な接触。医的配慮、金銭管理、居所決定、郵便の管理。任務についての細かい説 明はない。 世話人は時折被世話人を訪問して問い合わせている。財産権に関する事務の規制。自由 剥奪措置は世話人の任務に属しない。 パウル 財産上の事務の規制。被世話人との個人的な接触も。 世話人は、財産上の事務の規律だけしか行わない。訪問はとても短い(10 分) 。任務範囲 の中で活動を縮小している。 ペーター 入所者が処理しえない活動、財産上の事務、健康管理、自由剥奪措置。あらゆる活動を 常に被世話人の福祉のために処理すべき。 訪問はめったにない(月ごと) 。職員に対し、事態を処理しうるかどうかの疑問を持って いる。 ペルツァー 個人的な接触を持っている。被世話人を法的に代理する。被世話人を援助する。侵害か ら保護する。被世話人に関するあらゆる事柄を任務とするが、投薬の変更は含まれない。 世話人は、非常にきつい日程である。入所の際にだけ姿が見られた。それゆえただ管理 9 するだけである。世話人は、急には『呼ばれてこちらへ来る』ことができない。 以下の点では、介護スタッフの間で十分に意見が一致している。すなわち、世話人は、 被世話人がもはや自ら処理しえない事務に関して権限を有するということである。一部で は財産に関する事務の処理のみが世話人の任務として挙げられた。世話人が裁判所の明白 な指示を受けることにも言及された。その活動は常に、個人的接触と結びつけられる。 こういった言い方からはっきりするのは、介護者の側には、世話人の任務に関して縮小 された像のみが存在するということである。介護者は、世話人について自分の仕事の中で 身をもって知った限度で知っているに過ぎない。このことは、世話人との意思疎通にとっ て妨げとなっている。 《以上、黒田》 自由剥奪措置の実施に際して助力すべき任務は、例外として協調される。 世話法による自由剥奪措置の実施に関する法定の要件の強調は、介護ホームに特に大き な注意を促し、そして、世話がしばしば場合によっては自由剥奪措置が必要であるか否か を審査すべき委任権限を含むことになるのである。これに関して疾病金庫の医療サービス 団やホームの監査のような監督官庁への警戒感もまた一定の役割を果たす。 世話人のこのような活動は、ホームにとって負担の軽減である。というのは、世話人は 自由剥奪措置に関する許可をもらう権限があるからである。 世話人の活動に対する不満として介護メンバーによって挙げられるのは、被世話人のた めの時間の不足である。入所者は部分的に管理されるだけであって、世話人はその任務を 受託された任務範囲に限定している。このことは、冷淡であるとも評価される。 介護者はその活動を通じて、少なくとも身上的な点で入所者にとって身近な存在である。 たとえ、このことが介護保険の制限によってますます目立たなくなっていてもそうである。 このことを理由として、介護者は当然、職業世話人が入所者に関わりあうことを希望する。 しかしこれは、全く職業世話人の任務ではない。被世話人を法的に代理することが重要で ある。その限りで、後見裁判所によって確定された任務範囲に活動を方向付けることは、 職業的な性格に合致する。 被世話人のために多くの時間を費やした後に介護者によって述べられる願望は、社会構 造上の不利な要因の影響を直接受けている介護ホーム入所者の困難な生活状況をも反映し ている。しかもその生活状況は、時間が無いために入所者の需要を満たすことができない という介護スタッフの「 [後ろめたさを伴う]悪い意識」を代弁しているかもしれない。 《以上、大場》 10 1.4 世話人との協力 世話人との協力・[それぞれ]固有の寄与について プレッガー 病院への入院を伴う深刻な病状に際しての情報提供;病院への入院が必要な場合には、 その他の情報提供、例えば自由剥奪措置に際しての情報提供; 世話人は病院職員の見解に基づいて指示を受ける《見解を必要としている》。 ピルス 署名による保護[の確保] ;病院での滞在に関する《入院の際の》世話人に対する情報提 供;自由を剥奪する措置に際しての情報提供はない;関心を持って世話人の後を追う;世 話人によって利用されていると感じる。 パウル 決定に際しての世話人に対する情報提供;薬剤の変更;世話人に対する情報提供は病院 職員の任務である。 ペーター 証言無し。 ペルツァー 事務は世話人と相談して処理される;日常からの逸脱が生じる場合には、特に、署名、 病院の措置入所指示およびベッド等への固定に際しては、世話人に対する情報提供。 世話人との協力・職業世話人の寄与について プレッガー 多くの世話人との協力は良い;自由剥奪措置に際しての協力も良い。 ピルス 世話人が《自分が》問い合わせると、世話人には負担になる;財政上の問題を気に掛けな い;ある女性世話人との良い経験がある。 パウル 世話人[の権限]は財産上の事務を処理することに制限される;職員との協力について は不明。 ペーター 事務を処理すべきかどうかについて、世話人は病院職員に問い合わせる。 11 ペルツァー 世話人は問い合わせに返答するが、その他のことに関しては主導権を持たない。 《以上、大場》 介護者と職業世話人の協力については、介護者から世話人への情報提供に際して、一つ の観点において統一的な像が示された。すなわち、世話人は被世話人の入所に際して情報 を提供されている。しかしながら、さらに世話人への情報提供が継続しているかは、さま ざまである。たいていの介護者は自由剥奪措置を行うにあたっても情報提供しているが、 一人の介護スタッフは世話人を無視し、後見裁判所に関係なくこの事務を処理している。 法的な保護を尊重しようとする傾向が、二人の介護スタッフについては明らかに感じ取 れる。 若干の回答者については、彼らがそのほかの事務について世話人に情報提供し、意見交 換および議論を求めるという希望が結合されていることもはっきりした。 職業世話人について、いかなる状況であるかを決まって職員に問い合わせているという ことが報告されている例が 2 件ある。このことは、一人の介護スタッフによって面倒なこ とであると評価されている。それ以外の言及は、世話人の任務範囲が財産事務の処理に限 定されていることから、世話人が問い合わせないと反応しないということにまで及んでい る。 要するに、介護者は高齢者に対して全責任を負っていると感じており、他の方法ではど うにもならない場合にのみ世話人に情報提供する。入所者との介護者の時間的に集中した 接触も、介護者の意識における世話人の『不在』も、このような見解を支持する。介護者 は、日々入所者の好不調(Höhen und Tiefen)に直面させられている。介護者は、日常の業務 において困難な状況に対する解決策を見つけなくてはならない。世話人は現場におらず、 また世話人は時間がないので、介護者の側からしても世話人と協力することは難しい。こ のような条件は、介護者が世話人抜きで生じた事態に対処せざるを得ない状況をつくり出 す。 同時に、介護者は、硬直した構造によって特徴づけられる施設としての介護ホームの要 素である。提案および援助の提供を受け入れることは、介護ホームシステムの論理と矛盾 するのである。 1.5 世話人との衝突 プレッガー 今まで世話人との衝突はない。解決はまず話し合いで。話し合いが上手くいかなかった 12 場合には、裁判所または世話当局への異議申立て。 ピルス 表面化した衝突はない。世話人の気分を害したことがある。 パウル 比較的大きな衝突はない。話し合いによる解決の道を探る。異議申立ての可能性を探る。 ペーター 衝突はない。問題が生じた場合には、地域連合体への異議申立て。 ペルツァー 衝突はない。 ここでは、ほとんど一様な像が示された。すなわち、全員について、まったく衝突がな い、または比較的大きな衝突がない。そうは言っても、職業世話人の働きに対して若干の 憤りを感じていると話した。 介護者にとって、衝突があった場合に自分がどの上位機関に異議申し立てしうるのかが、 あまり明らかでない。 このことから、世話人が介護者にとって『身近に感じられない』存在であることがはっ きりした。不確かな側面が、世話人の活動についてだけでなく、世話人の職務権限にも存 在する。それどころか世話人は、ほとんど信頼されていないので、憤りは衝突では収まら ず、実際には解決されない。 世話人は介護者にとって『とらえどころがない』ので、このような言い方は意外ではな く、むしろいかに両者の職業が疎遠で対立するものであるかをいっそうはっきり示してい る。このような疎遠は入所者の処遇に関して必要なことについての意思疎通を、不可能で はないにしろ、困難にする。 《以上、黒田》 2.世話人 2.1 各事案の概要 名前( 女) 年齢 雇用形式 ブラウアー 26 行政庁 養成 行政官 その他の任務 被世話人数 総括的責任および後見 3 5 裁判所への援助 13 ベンテ 41 名誉職 ソーシャルワーカー 3 4 ブルーメ 37 名誉職 1 1 ブリヒャ 47 協会 ソーシャルワーカー/ 心理劇 指導者 社会教育学士 総括的責任 ブラウゼ 36 協会 ソーシャルワーカー 2 8 総括的責任 1 4 2.2 入所者の状況/評価および希望 ブラウアー ・入所者の状況 ホームの移転が問題である。なぜかとういうと、多くの対象物からの切り離しが必要と なるからである。被世話人はいずれにせよほとんど意思疎通できない。したがって個人的 な接触は意味がない。しかし、ホームでの被世話人は自分の洗濯物の区別程度であればで きる。 ・評価および希望 ホームの状況はひどいもので、 『ポケットの中のカプセル』をまず思わせる。 ベンテ ・入所者の状況 肯定的な例と否定的な例。介護保険[の適用]により状況が悪化。給付が足りない。高 齢者が多い。一部に生活上の配慮が十分でない者がいる。 ・評価および希望 施設の状況はひどいものである。入所者は全ての人に握手をしつこく求める。被世話人 の入所は『良いホーム』に限定すべき。 ブルーメ ・入所者の状況 入所者は著しく援助のない状態におかれている。肯定的、および否定的経験。 ・評価および希望 ホームを拒絶したい。自分について、介護が必要になった場合には、むしろ自殺を選ぶ。 ブリヒャ ・入所者の状況 入所者は一部分もはや意思疎通できない。入所者は、ホームについて快適だが冷ややか な雰囲気だと感じている。 ・評価および希望 現実に介護を必要とする状況は、みられない。 ブラウゼ 14 ・入所者の状況 ホームでの被世話人は一部分状態が悪く、もはや意思疎通できない。 ・評価および希望 一部分ぎょっとするような状況である。職員はあまりに少なく、きちんとした面談がで きてない。 《以上、大場》 被世話人たちの状況は、もっぱら否定的に叙述されている。入所者は状態が悪い、意思 疎通できない、というように。ホームの移転は、明らかな喪失の経験であって、ホームに おいて一部では給付が不足している。これらはなかんずく介護保険の結果と考えられる。 評価に際して、ホームの将来見通しについては全員が一致して否定的判断をしているこ とが認識されるべきである。これは、相当数の人が、自分自身がホームを必要とする場合 には自殺するとの希望に通じている。 介護者との違いとして、世話人は入所者および入所者の状況から、より遠いところにい る。世話人は、日々介護が必要な人と一緒にいない。より遠い距離により、世話人は、入 所者の明白な拒絶に対しても、老齢および介護の客観的必要性をはっきりさせることがで きる。 世話人の言葉は、2 通りに認識されうる。ホームでの被世話人は、様々な観点において他 人の援助を頼りにしているので、高い援助の必要性がある。このような状況は、世話人に よって確実に避けられる。 介護ホームの入所者は、援助の必要が高いので、世話人による支援を必要としているこ とが推論されうる。どのように世話人が、こういった彼らによってきわめて明瞭に拒絶さ れている状況を扱うかは、問題である。入所者の状況を判断し、ふさわしい援助を与える ことが、いったいぜんたい世話人に可能だろうか。 介護者との関係に関して、介護者が入所者の状態に集中的に取り組むことが可能な状況 を作ることにより、世話人が介護者に特別な注意を払うことが重要である。 2.3 世話人の任務と活動 世話人の任務と活動について ブラウアー 得ることのない人々の世話をすることは、大きな仕事上の負担である。被世話人を法的 に代理することは重要である。時折、ホームに依存する。ホームに滞在する。ホームの訪 問は例外であり、たいていは電話で照会するだけである。 15 ベンテ 一回の訪問は 30 分から 45 分である。いつも何かを得られる。いつでも訪問する。介護 中も訪問する。それによって介護者の活動をコントロールする。支援可能性について職員 と共に思慮することも重要である。 ブルーメ 被世話人にとって最高の状態を引き出す。サービスは 100%果たされねばならない。介護 活動の判断は制限される。なぜなら、介護者の活動を評価することは、自分が介護職員で はないので、控えるべきである。仕事は自分にとって楽しみであり、そこから学ぶことは 計り知れないほど多い。 ブリヒャ 世話人は自らの任務を進んで引き受けなければならない。口出しをすることは重要であ る。個人的な接触は、痴呆症の場合もしくはそれに関与している職員においても、重要で ある。 ブラウゼ 被世話人を法的に代理すること。被世話人にとって最高の幸福を引き出すこと。部分的 には、猛烈に行動することが必要である。ホームへの訪問は全て、二ヶ月から三ヶ月ごと である。 世話人によって述べられた任務と活動は、それぞれ異なっている。ブラウアーさんは、 自分は得ることのない人々の世話を行っているという見解を示したが、ベンテさんは、仕 事においていつも何かを得られると考えている。 全ての世話人によって、法定代理の必要性が述べられている。しかし、この法定代理へ の個別的な引き継ぎは非常に異なった形で行われている。ある世話人が全く施設への訪問 を実行しない間は、通常、他の者によって訪問が行われる。しかしながら、訪問の頻度と 期間は異なっていると思われる。そこで行われる活動も異なっている。コントロール機能 が特にベンテさんによって強調されるのに対して、例えばブルーメさんは、確かに最高の 状態を引き出すことが自分の任務であるが、同時に、介護者の活動をコントロールするこ とができるとは思わないと述べている。 この証言は、世話人と介護者の相互作用という人的可能性を反映している。自らの立場 に対する評価も、非常に異なっている。その立場は、介護者とそれと結び付けられた仕事 のコントロールにも関する「権限」という極と、特定の地位にある職員の負担を軽減する 可能性とも結び付けられる「同権」という極の間を移動する。 介護者と世話人の関係にとって同権は肯定的に評価されるべきである、ということは確 16 かである。そしてこのことは、高齢者の面倒を見る意味で、有意義な協力に対しても寄与 するものである。 それに対して、「権限」とコントロールで特徴づけられる立場は協力にとって問題を孕ん でいる、ということは確かである。そのような条件の下で、そもそも話し合いと合意の可 能性が存在するのかどうかということは疑わしい。 2.4 介護者との協力 ブラウアー ・自分の負担 話し合いを行う。入所時のみ訪問を行う。電話による連絡を行う。再確認を行う。 ・介護者の負担 職員を通じての情報がない。事務処理が滞っている。 ベンテ ・自分の負担 意思疎通できる状態が重要である。予防措置について、介護者とともに熟慮するこ とが重要である。批判は慎重になされなければならない。というのは、批判するこ とで、高齢者に不利益がもたらされるかもしれないからである。 ・介護者の負担 部分的にうまくいっている協力関係もある。状態の良くない施設での、情報不足。 しかしそこでも協力関係は機能している。自由剥奪的措置の際の協力関係は良い。 世話人による介護職員のための負担の軽減。 ブルーメ ・自分の負担 良い協力関係のための努力をする。施設と、定期的に電話による会話を行う。訪問 による見守り調査を行う。施設への、肯定的・否定的な報告が重要である。 ・介護者の負担 介護スタッフは、事態が切迫してはじめて、情報提供する。職員はしばしば知らせ を受けない。部分的には職員も非常に努力している。世話人の意義が、様々な理由 から、職員には正しく理解されていない。 ブリヒャ ・自分の負担 職員との話し合いが重要。医師の往診などによる職員の負担の軽減が重要。連絡可 能な状況にあること。 ・介護者の負担 職員は、決済が必要な場合には、[世話人に]問い合わせる。入院の際の情報提供を 17 行う。 ブラウゼ ・自分の負担 解決策の策定のために、介護者との対話が重要である。各自の権限と可能性の明確 化が重要である。対立も、時には有意義である。時には、ホームの限界も尊重すべ きである。施設での定期的な見守り調査を行う。 ・介護者の負担 良い、あるいは悪い経験。職員は多くの場合、法律的な問題に関しては確信がもて ない。世話人の権限と可能性があいまいである。権限が、ときには職員に任される。 情報提供は、入院の際だけの場合と、全くされない場合がある。 協力関係を描写することにより、大きな相違が明らかになる。ブラウアーさんの場合は、 他の世話人と異なり、はじめにのみ訪問が実施され、その他の接触は電話で行われる。全 員が、話し合いが重要で、有意義であることを強調している。ブラウゼさんの見解によれ ば、解決策の策定のために、対話が必要である。 しかしながら、批判は慎重になされなくてはならない。というのは、これが高齢者に不 利益を与えかねないからである。協力関係は部分的には、職員の、具体的な時間的負担の 軽減にまで及んでいる。ブリヒャさんの場合、困難な状況が生じているときは、医師の往 診が職員のために実施されているように。 世話人は、介護職員について、彼らは情報を次へと伝達せず、あるいはしばしば情報提 供を行わない、と述べている。 全員、協力関係を希望しているが、それはもちろんそれぞれ明らかに異なっている。介 護者と協力した経験に関連して、改善の希望がある。そこでは、あまりに情報提供が少な いことをはっきり証明した、世話人の不満が示されている。 これとは異なり、自由剥奪的措置に関しては、世話人はきちんと情報提供を受けている。 その点で、施設の法的保護の必要性が明らかになる。 2.5 介護者との摩擦 介護者との摩擦について ブラウアー 盗難が、繰り返し摩擦となっている。 ベンテ 18 床ずれの予防に関する摩擦と、生きるために必要なことを拒絶する際の摩擦がある。そ れから、入所者が退所することを回避できない。すると、ホームは侮辱されたと感じる。 このことは非常に好ましくない。 ブルーメ 最初の摩擦の際には、怒りを抑えた。次の摩擦の際には、初めは権限のある介護スタッ フと話し合い、それから場合によって、介護サービスまたは医師の意見を求めた。 ブリヒャ 摩擦は無い。 ブラウゼ 職員が世話人を無視する時に、摩擦が生じる。かなりの人々を世話人は激怒させる。一 定の人々は、世話人によっていつも非難されていると感じている。 これらの摩擦は、仕事に関する異なった見解を明確にする。ベンテさんは摩擦に関する 具体的な理由を引き合いに出しているが、ブラウゼさんの場合には、特に、後見裁判所に よって権限を付与された世話人としての自らの立場が、重要であると思われる。 しかし、ベンテさんも現存する可能性について承知しており、一定の要求が実行に移さ れない場合にはホームから退所するとして迫っている。 この態度は、世話人の観点からは筋が通っているが、有意義な共同作業にとっては問題 である。なぜなら、共同作業の可能性に関する機能とそれに伴って既存の権限が存在して いるからである。 《以上、大場》 3.介護者と職業世話人の関係について 3.1 介護者の立場 介護者については、まず初めに、自分自身の活動を肯定的に評価していることが明らか となった。そこでインタビューを受けたうちの何人かは、自分が入所者に接しているのと 同じように、自分も年相応に扱われたいと思っている。 ホームにおいて生活し、介護を必要とする状況も、職業世話人によって評価がなされる 場合ほどには、はっきりと否定的に評価されてはいない。介護者は、高齢者の日常的需要 に対する責任を自覚している。 すなわち介護者は、高齢者に関して、自らを肯定的な役割を果たすものと捉えている。 19 というのは、介護者は高齢者の面倒見を確保し、このような仕事を重大な責任を担って行 っているからである。 それに対して世話人は、めったに来ることがなく、時間がなく、なかなか連絡を取れな い人として述べられている。そしてこのことは、世話人が、ホーム入所者の福祉を保障す べき任務を負っているにもかかわらず、である。インタビューを受けたうちの何人かが、 それについて以下のようにいっている。 「世話は語の意味において理解されている。 」 このような表現によると、世話人が介護者の意見ではあまり気を配っておらず、その機 能を真面目に果たしていないことが明らかになる。その限りでは、世話の機能は、介護者 から見ると、世話というものは本来なら語の意味にしたがっているべきではないのに、純 粋に法的な世話にまでレベルダウンしている。必要な措置についての話しあい、意見交換、 議論は行われていない。世話人は、介護者から情報提供を受ける。これが一部で不快に思 われている。介護者が、しかるべき態度をとり、世話人に情報を提供するのは、それが絶 対に必要な場合だけである。介護者には、世話人への明らかな憤りを口にしながら世話人 との衝突に決着がつかないことへの不満がある。 このような調査結果は、介護者からみると高齢者の状況についての意思疎通がなされて いないことを明らかにしている。さらに、協力して仕事が行われうるよう意思疎通される こともない。これは、世話人の自分の職務についての真剣さが足りないことが原因である。 それ以外の理由として述べられたのは、世話人が自分の被世話人にあまり気を配っていな いことである。世話人としては自分の役割を肯定的にとらえているが、介護者の観点から すると、そこには正反対のものが存在している。その限りでは、話し合いおよび意思疎通 がなされていないことは不思議ではない。というのは、介護者は世話人とはまったく異な る見方をしており、このような理由から意思疎通の基礎を欠いているのである。 3.2 職業世話人の立場 職業世話人は、自分の活動および世話の利用を高く評価している。職業世話人は、自分 自身に重要な機能を認め、自分たちの仕事が存在しないとすれば高齢者の状況はもっと悪 くなるだろうことを前提としている。 介護者の叙述との違いとして、介護ホームへの自らの入所見通しに対する明白な拒絶が 明らかにされている。職業世話人は、介護を必要とすべき状況に対して明確に否定的な評 価を与えている。彼らは、世話の効用を、首をつっこんで(余計な口出しをして)、施設に 対して被世話人を代理するものと捉えている。 介護者は、介護活動を行うことについて特に重視されている。世話人は、自分が介護者 の仕事をしなくて済むことに満足している。 20 実際の介護だけではなく、ホームの〈組織〉構造や職員の不足も、介護活動に際して問 題の発生原因となっている。 入所者の身上配慮は、より良いものになるべきである。しかしながら、世話人の意見に よるとこれは、とにかく職員が少なすぎるので、改善され得ない。 協力に関して世話人が述べたのは、彼らがまったく情報を提供されていないということ である。複数の衝突があり、一部は実際に解決されている。しかしながらまた、一部で世 話人は自分の権限を、自分の立場を押し通すために使用している。たとえば世話人がある 入所者を他の施設へ引っ越しさせる。またある世話人は、介護者の負担を軽減させようと し、職員の活動を代わって行った。 世話人の側には、より多く意見交換し、介護チームの中に入所者の身の回りの事柄につ いて情報を提供してくれる決まった人物を得たいという希望がある。 いかにして協力を得られるかの見通しがなくても、協力を求める希望ははっきりと存在し ている。 高齢者にとって必要な措置についての意見交換と意思疎通は、職業世話人の観点からも なされていない。介護者とは何も話し合われない。なぜなら、介護者は時間がない、権限 がない、またはドイツ語の知識がわずかしかないかのいずれかだからである。 3.3 介護者と職業世話人の関係 評価の対立はあたかも鏡のようである。職業世話人は介護者に不満があり、介護者は職 業世話人に不満がある。しかしながら、満たされていない相互の希望がある。 介護者は職業世話人と同様に、形式的には入所者に対し共同の責任を有するが、それは、 実際には実行に移されえないとの印象を受ける。それは協力というよりは棲み分けである。 介護者は職業世話人と同様に、仕事に関して自分の考えを押し通すために、自分の可能 性を利用している。介護者は、世話人に情報を提供しないか、または世話人への情報提供 が絶対に必要になってからはじめて行うという方法で自分の考えを押し通そうとする。し かしながらこれと同時に、加重負担に起因して、または世話人の権限についての認識不足 に起因して情報提供がないことも問題である。 世話人は、ある施設での身上配慮が世話人の希望にしたがわずになされている場合には、 入所者を別の施設に引っ越しさせるという方法で、仕事についての自分の考えを押し通そ うとする。 21 介護者と世話人の取り決めまたは必要な措置についての議論も、なされない。したがっ て協力など話題に上りえず、むしろ棲み分けがなされ、それどころか一部では権限争いが 行われている。 《以上、黒田》 4.状況改善のための手がかり 4.1 介護施設における世話の有意義性 調査の結果と資料の解明が、不十分な光景をはっきりと浮かび上がらせている。介護者 と職業的世話人との間の協力関係は、十分には生じていない。両方の職業が、調整するこ となしに並行して作用しているのである。そのうえ、その都度他の者に何ら介入の可能性 を与えないように権限を行使するか、相手方を無視する。 施設にとっての世話の有益性が重視されて、世話人は純粋な法律上の代理に限定される か、または自らその範囲に自制している。 ホームの法的防護の確保、もしくは支障のない進行の確保といった目的で設定される世 話は、拒否されるべきものである。このとき、世話法の一つの基本原理―すなわち、他の 措置では補うことができない、高齢者の法律上の代理の必要性原則―が侵害されるのであ る。この点では、施設側の利益は重要な役割を果たしていないが、どのような理由で世話 が設定されたのか、そしてどの点に世話の目的はあるのか、ということに留意することが 重要である。この点では、とりわけホームのために設定される、世話についての裁判所の 職権発動を促す行為は、厳密に吟味されなければならない。他の措置を講じることができ ないのかどうか、そもそも世話が必要なのかどうか、慎重に検討しなければならない。ホ ームのために、世話を手段として利用することは、否定すべきである。 それにもかかわらず、介護施設における被世話人の多さ(介護施設入居者の約40%) が、需要が高いことをはっきりと示している。この結果の背景を考えると、世話を転換す る構想が追求されるべきである。世話の目的である被世話人の「福祉」の保障は、この諸 制度によって実現されうるべきである。 4.2 後見裁判所による世話法の転換 まず初めに、世話の発動に際しては、いかなる目的を世話は果たすべきなのかというこ とが、とても厳密に調査されるべきである。民法 1896 条に従ってその他の要件が存在する 際には、その他の措置によって保障されえない、本人の法定代理の必要性が重要である場 合にのみ、世話が設定されるべきである。 その限りで、ここでは、後見裁判所に、主に不必要な世話を回避するのに寄与しうる特 22 別な機能が与えられる。 世話の職権発動事由と世話人によって実行されるべき任務は、特に、誰が世話人の職務 を引き受けるべきなのかという決定をするための基礎である。ホームに対して被世話人の 利益を代理することが重要な場合には、私見によると、多くの場合に、職業世話人による 世話は名誉職的世話人による世話よりも有意義である。職業世話人は、専門的にホーム入 所者の法定代理のためにあらゆる資源を利用しうる。これまでの懸案の処理に際しても、 私見によれば、職業世話人が任命されるべきであった。なぜなら、しばしば、専門的に解 決されるべき困難な決定が、そのことに関連しているからである。 任務範囲の確定も、裁判実務において重要である。任務範囲が不明確または一般的に定 式化されていると、繰り返し、制度が世話人による入所者の法定代理を承諾せずに、後見 裁判所の助力を用いて明確にするという結果を導かねばならないということに至る。場合 によって、既に設定された任務範囲が具体化されなければならない。 この理由から、ホーム入所者の要求に応じて、任務範囲を可能な限り明確かつ限定的に 設定することが有意義である。 世話人を監督することも、後見裁判所の義務である。この理由から、世話人が自らの報 告書に、いかにして自分に委ねられた任務を実行し、いかなる目的を被世話人のために達 成しようと努力したのかを詳述することは、必要不可欠である。 望ましいのは、後見裁判所がこの場合に具体的な立案を世話人に要求することである。 それによって、世話が本人の意思においても実現されることが保障される。 《以上、藤巻》 4.3 介護者および職業世話人による世話の形成 状況改善のための条件は、職業世話人と介護者とが連動し、どのような協力の機会があ るかを認識することである。 4.3.1 介護者の可能性 まず介護者は、世話人に話しあいを求め、任命証書を提示させ、そこで定められた世話 人の任務について説明するよう求めるべきである。 そういった話しあいでは、本人の状況も討論されるべきであり、可能かつ重要な場合に は、誰によっていかなる任務が引き受けられうるのかが予め取り決められるべきである。 さらに介護者は、世話人が自分の任務を守らない、または十分には守っていないという 23 印象を受けた場合には、世話人に対する要求をためらうべきではない。もとより、管轄の 後見裁判所へ抗告を行う可能性もある。 結局介護者は、明白な援助システムを用意しておくべきであり、誰が介護チームの中の 相談相手であり、どのようにして話しあいを求めれば良いかが、世話人に対して及び介護 者に対してもはっきりとしていなくてはならない。 4.3.2 世話人の可能性 世話人は、自分の活動のはじめに、世話人によって処理されるべき任務についてホーム に説明をすべきである。話し合いにおいて納得され、理解されるべきは、世話人の任務が 何であり、いかなる活動が世話人によって引き受けられるか、である。 入所者の状況がとりあげられ、討議されるべきである。その際、入所者および担当の介 護スタッフと一緒に、何が目下の目標であり、いかにしてこれが達成されうるかが熟考さ れるべきである。 世話人は、施設内における特定の相談相手を決めるよう求めるべきである。それによっ て、世話人が誰に相談しうるかがはっきりする。 同時に、訪問の頻度と次回の日程も取り決められるべきである。 このような方法で合意がみられない場合には、世話人は施設に要求し、より強力に監督 の姿勢をとることが必要であると思われる。これは、例えば訪問を介護時に行い、場合に よっては介護を評価するために外部の専門家に助言を求めることを意味しうる。 その際、世話人は、施設の代表者やホームの監査人にも申し入れを行う必要があるよう に思われる。 このような措置全ては、世話人が施設において存在を示すことを意味し、それによって 世話人が被世話人の法定代理人であることも明確になる。 《以上、黒田》 24 3.被世話人が休み中の世話人の代理の問題について Zur Frage der Vertretung des Betreuers bei Urlaub des Betreuten ヴェアナーー・ビーンヴァルド(元ハノーファー専門大学学長) Prof. Dr. Werner Bienwald 1.問題 精神的な障害がある人を世話する大きな施設は、その都度何人かの入所者を連れて休暇 旅行に出かける。全ての場合に、とりわけ急に発生した、行為能力を有すべき特別な状況 において世話人が後からでは間に合わない場合に、教育担当の職員としては、世話人から 事前にふさわしい代理権を得ておくことが重要である。 世話人は、どの範囲およびどの期間においてふさわしい代理権を授与することを許し、 授与すべきであろうか? まず、医的措置および医的侵襲について、教育に関する権限を 有している世話人がそれに関する任意代理権を授与したいかが考慮される。 2.被世話人による同意の必要性について 1896 条以下にもとづいて選任された世話人が本人のために〈に代わって〉締結したホー ム契約により、被世話人が施設にいる場合には(本人がホーム滞在をまず自ら決定し、少 なくとも自分でホーム契約を締結したかまたは締結しえた場合については、法的な基礎事 情はその限りで異なっている) 、当該ホーム契約は、本人のために、本人に対して、本人に 提供され、提供されるべきホームの給付(例えば食事、必要とされる医師の支援の確保) についての記述を含む。したがって権利侵害を伴っている限りで、ホーム契約の締結につ いて世話人は、以下の場合に、このような「侵害」への同意を付与することが許される。 −当該事務が世話人の任務範囲にある場合。 −本人が同意無能力であるために、具体的場合に自ら決定しない場合。 −世話人の決定が裁判所の許可留保のもとにない(たとえば 1904 条、1906 条 4 項)場合。 ただし、ほぼあり得ないが、裁判所が事前に許可を付与した場合はこの限りでない。 緊急時の医的処置については、世話人の同意は必要とされない。 例えば炊事当番の際に本人が怪我をしたか、または複数の「被世話人」が作業の際に相 互に傷害を負わせた場合には、事情によっては権限ある世話人が同意を与えることなく、 25 即座に必要な措置(一般的な傷の手当、傷の縫合、鎮痛用錠剤の投与)がとられる。同じ ようなことはスポーツ行事およびその際に起こった即座の手当が必要な事態の際にも見ら れる。 後で必要になってきた医的措置は、「緊急性」(初期手当!)によってはもはや裏付けられ ず、世話人によって「同意を与え」られなくてはならない。というのは、ホームの給付カ タログ〈サービス一覧〉の枠内で本人の日常的な身上配慮を超えたこのような給付は、ホ ーム契約締結の際に世話人の「包括的な」授権をうけていない。なぜなら、問題の状況の 直前にその時の人を指して決め、予測することはとにかくできないからである。それにも かかわらず個々のホーム契約は、どの範囲での給付が合意されていて、その結果としてど のような措置を同意されているとみなすことができ、またどのようなものはみなすことが できないのかが、審査されるべきである。 休みおよび休暇の措置が、きわめて一般的に想定され、個別の具体的な構想を含んでい ない(例外:毎年 7 月に一定の休暇地域〈保養地〉へ旅行させる、など)ことがあるホー ム契約の給付カタログに含まれていない場合には、それについて世話人の許可/同意が、 このような事務が世話人の任務範囲内にあるならば(事情によってはこれが問題だろう!)、 必要である。世話人が同意を与えた場合には、制限付きの包括的許可の意味で、それに個々 に同意が必要とされるあらゆる事務が含まれる。しかしながら、それらがホーム契約の給 付カタログには含まれていなかった場合には、そのような許可が、それに関して双方の理 解にしたがって行事を実施するために必要なことは明らかである。関係するものとして例 えば、 「島の道」での当然の走行、すなわち義務的な消音走行、映画鑑賞、スポーツ観戦、 演劇鑑賞、入浴や、水浴がある。 《以上、黒田》 3.事前の代理権授与の問題について このような休み又は休暇措置の際に、処理するためには世話人がその承諾を与える必要 があるような深刻な事態が生じた場合、このために前もって代理権を与えることはできな い。 詳しく言うと、以下の理由からである。すなわち、代理権限が議論の余地のある問題 であることは別として、制限付きの代理権限の代弁人も、代理権の受任者の決定範囲に不 十分な制限をなすに過ぎない(裁判所の許可の事例は予め規制できない)ような一般的代 理権を許されないものと考える(べき)であろう。 個々の場合における異なる解釈を別として、世話人の職務と責任が世話人の自由に委ねら れるものではないことは、以前から議論の余地はない。仮に個別的業務について、その(限 定的かつ自主的な)処理が他の人に委ねられることができるとしても、最終的責任、つま り決定権限は常に、裁判所によって選任された世話人に残るべきであろう。これは、代理 権により、例えばホームの職員が「必要とされるあらゆる医的措置、医的侵襲の受け入れ あるいは拒否に同意する」代理権を与えられることになるような場合である。職務範囲の 26 大部分は、世話人によって、裁判所ではなく世話人によって「選ばれた」人の責任にされ てしまうであろう。現行世話法はこのことに法的根拠を与えていない。もし代理権が、予 め定まっていないさまざまな個別的計画のために、相当の期間を超えて配慮されている場 合、さらに疑念が生じるであろう。 それ以上の必要がない場合には、代理権の必要があるならば、後見裁判所が、その職務 範囲が「主たる世話人」に課された分担範囲に限られうる、そしてむしろ限られるべきで ある、世話人の代理人を選任することができるかもしれない。しかしこのような場合には、 世話人の代理人の選任に十分に定まった理由がなく、その結果この措置は問題外である。 すなわち、代理権が、世話人に連絡が取れないという万一の場合のために想定されていて、 そのために代理権が主張されなければならないかどうかということは予測できずあまりに も不確定であるため、世話人の代理人の権限が十分に決定・限定されないであろう。世話 実務において、すでに協会の世話人の選任によってその協会が世話人の代理人として選任 されている場合、このことは世話法上の必要性の原則と、さらに世話人の代理の内容、範 囲、期間が特定される必要性と矛盾する。この実務に対してその立場を明確に表した判決 は、私が知っている限りではこれまでない。 これまで述べた代理権授与の方法の必要性は、他の理由からも存在しない。このような 代理権が、教育に関する権限を有する世話人のために必要であると認識することはできな い。子供と青少年の休暇措置と比較した場合、知っている限りでは保護権者はこのように 広い代理権を与えておらず、 「ただ」よくある入浴許可だけである。学校法も、必要な場合 に両親に連絡が取れない場合に、その子供について決断を行うためにこのような代理権を 要求していない。緊急の場合には、ある行為が事務管理の原則に従って一般的に認められ る。事務が、すぐに決められることではないが全く猶予が与えられていない場合(さしあ たって、2,3 日後に医的侵襲が問題とされる病院への移送)に、実際もし当該時刻に世話 人に連絡が取れなかったのならば(その事務執行者は確定している範囲において、出発の 前に世話人に確認させ、電話番号・FAX 番号を残させることができる)地域の管轄の後見 裁判所に申し出て、そして民法 1846 条、1908 条ⅰ1 項 1 文(世話人と必要な判断に支障 がある場合)に基づく判決を行うよう求める可能性、場合によっては必要性がある。 もう一つの問題は、既に検討した問題との関連で生ずるもので、立法機関が引き受けう るものであろう。それは、多くの疑問のある問題についてこれを防止し、またはこれに対 処するために、 (成人についての)ホーム契約における給付項目の補完と解釈に民法 1688 条(他の何も取決められていない場合の介護人の決定権限)に相当する規定を適用するべ きか、または適用できるかが精査されることであろう。 《以上、藤巻》 27 4.地方自治体の社会ネットワークにおける 世話協会の必要性について Ü ber die Notwendigkeit von Betreuungsver einen im sozialen Netz der Kommunen アレックス・ベルンハルト(社会教育学士(専門大学)) Alex Bernhard 世話協会の創設を機縁とした 2001 年7月5日の研究報告書からの抜粋 法改正における原則の転換だけでもすでに、ラントでのふさわしい制度の創設を必要と した。つまりそれは、実務において基本権の厳格な方向付けを実現していく制度である。 それぞれの特別市と郡において、連邦法の基盤に基づいて、地方自治体の専門官庁、つま り、世話官庁または世話官署が設立されなければならなかった。 何のために我々は世話協会を必要とするのか? 世話制度の機能の具体化は、地方自治体の自治の管轄にある。バーデン・ヴュルテンベ ルクの郡規定に従って、世話制度は地方自治体の非指図事務に属する。それは通常、郡で ある。 ‥‥世話ケースの絶対数(1999 年 12 月 31 日において、バーデン・ヴュルテンベルクで は 69,075 例)とその恒常的な増加は、適格な世話人の必要性、まさに名誉職的な範囲にお ける世話人の必要性をも示唆する。各ケースの背後には、親族で世話をする人(しばしば 家族) 、または、被世話人の問題に取り組んでいる古典的で自発的な被用者がいる。それで も約 20%から 25%(∼14,000)のケースにおいて、職業的に活動している世話人が任命さ れている。私の評価によれば、約8%から 10%(∼6,000)のケースにおいて自発的に参加 している世話人の関与がある。したがって、約 70%(∼48,500)のケースでは、家族の責 任の下にある。注目されなければならないのは、前年の事例数と比較して平均7%の事例 数の継続的な増加である(目下、∼4,800) 。 一方で、これらの数字は既に活動している世話人を支援する必要性を述べており、他方 で、自発的な世話人を追加的に獲得すべき必要性をも示している。その限りでの、世話協 会の必要性についての統計上の背景である。 私にとってより重要なことは、内容に関する観点である。 28 地方自治体の世話制度の機能の成否は、[研修によって]情報を与えられた適格で名誉職 世話人の存在で決まる。この名誉職的世話人は、資格のある支援構造によって支えられる 場合にのみ、被世話人のために(個々のケースにおいて関係している官庁と制度のために も)良いサービスを提供することができる。この支援構造は、一方で親密な援助ネットワ ークの安定をもたらし、他方で自発的な助力者を動員することによって、不足している親 密な援助を部分的に補うことができる。私はあなた方に、最近4週間の私の相談実務から、 二つの例を述べる。 事例1 79 歳の女性が自宅に住んでおり、状況や時によって混乱を示しており、ゴミを集めて家 にため込み、他人が彼女の領域をかき乱すと攻撃的になる。隣家に住んでいる娘が本人の 食事と衣服の面倒を見ている。義理の息子が法定世話人として任命されている。状況は感 情的にとても緊張しており、娘は精神的に疲れ果てている。義理の息子が世話協会に助言 を求める。 事例2 双方とも 69 歳の夫婦が介護ホームに入所している。2年前に母が卒中の発作に見舞われ た後、夫婦は娘(4人の子供のうちの一人)にその家庭で面倒を見られていた。両親は以 前父の実家で、とても劣悪な状況で暮らしていた。父も身体的に衰弱した後、娘(娘自身、 3人の未成年の子供がいる)にとって、両親の介護は荷が重過ぎる。娘はそもそも法的な 事務を全く扱っていなかった。夫婦のその他の子供は、父の性格を理由として寄り付かな かった。今や介護ホームは、金銭管理をしようとし、世話の措置の職権発動をする。世話 協会が、名誉職的に世話をする人の仲介を依頼される。世話の委任の後すぐに父が亡くな り、4週間後には息子が亡くなった。母は全く指示を与えることができない。介護ホーム のための金銭管理と、父と息子の遺産整理が滞っている。息子の住居は、完全にゴミで一 杯になっている。世話人は、卒中の症状のある母を金銭的に立ち直らせることができるで あろう、大量の保険書類を発見する。唯一、娘だけが協力する意思を有している。 名誉職的世話人は驚いたが、難関を切り抜けようとして、支援を要求する。 両方の事例とも、明確に以下のことを示す。すなわち、親族が名誉職的世話人と同様に、 自分たちの職務を行うために、信頼できて専門的に適格な支援を必要としているというこ とを示している。 《以上、大場》 世話活動が今日必要としているのは以下のことである。すなわち、 ・本人に対する規則的で積極的な配慮; 29 ・しばしば追体験するのが困難か、「非常識」に思われるか、または現実になじみのない被 世話人の願望的な考えに感情移入する能力; ・介護の必要性、衰弱、そして人が最も目を逸らしたくなるようなことといった、人生の 出来事に習熟する(なじむ)こと; ・ 「あなた方世話人は以下のことに責任を負い、配慮するべきである‥‥」という雛型によ る、なじみのない役割の定義に耐え抜くこと; ・社会制度と行政制度の構造状況についての知識と理解、そしてそれに応じた行動; ・ 「書類のやり取り」を行う心構え; ・例えば、財産管理、金銭管理、社会保障法、病状、その病状に結びつくあらゆる種類の 医学的な治療、賃貸借法、相続法の領域における事実認識である。そしてもちろん、計 算義務と後見裁判所や公証人事務所に対する承諾義務を伴った、世話法的な側面も含ま れる。 さて私は、単にこのように列挙することで思いとどまらせようとしているのではなく、 名誉職世話人にとって専門的な援助がいかなる意味を持ちうるかに注目したい。以前はこ うしたことは当然のこととして仮定され、後見人もしくは保護人によって簡単に処理され ていた。 世話人にとって必要な援助を、まさに理想的な方法で世話協会は、ふさわしい訓練を受 けた職員によって提供することができる。世話法の法的原則を心得、たとえば住居手当の 申請のような何らかの方式に則った事務を処理しうるだけでは十分ではない。重要なのは、 任意的な社会参加に対しての変化した態度に対応し、社会参加の育成を一様に促進するこ とである。このことは、名誉職世話人のきわめて要求の多い仕事にとって、特に任意的参 加者に問題の分析および支援体制整備のための時間を何らかの権限と関係なく与える個別 的な助言による専門的情報と並んで、役に立つ。 民法 1908 条f1にもとづく上述した性格に合致する世話協会は、未来を指向した援助文 1 1908 条 f〔世話協会の認可〕 (1) 権利能力を有する社団は、以下の要件を満たす場合には、世話協会として認可される。 1. 適性ある十分な数の職員を擁し、かつこれらの職員を監督し、研修を受けさせ、これ らの職員がその職務の範囲内で他人に加えることがある損害のために適切な保険に加 入すること。 2. 名誉職世話人の獲得のために計画的に努力し、名誉職世話人を任務に就かせ、研修を 30 化に対して保証を供与する。専門家の世界では、これらは『統括的職務』の概念を用いて 表現され、任意的社会参加の獲得、奨励、支援に資する全ての活動を意味する。 具体的にはここには以下のものが属する。 ・ 目的に合わせたさまざまな広報活動 ・ 教育行事や情報提供行事の準備、実施、アフターケアー ・ 事案の仲裁 ・ 話しあいに基づき助言をおこなうこと ・ 電話をすること ・ 文書資料の配付をおこなうこと ・ 引受けの実際的な所作の類型化 専門的なノウハウは、成人教育および社会的協議の要素と組み合わさって、任意的な援 助者の信頼できる提供のための基礎をなす。そういった知識、人生経験、親切による社会 参加は、直接的には本人の、さらに間接的には社会福祉官庁などの関係諸官庁の利益とな る。職業的に遂行される世話とは異なり、名誉職的な世話は、本質的に個人的な特徴を有 している。それこそがまさに、我々の社会の社会的な気質の積極的な成長に寄与するので ある。 計画が明らかになってきた。繰り返し人々に同朋への奉仕であると印象づける。我々は、 ネッカー=オーデンヴァルト郡で 1995 年に一人目の任意的協力者を得た。現在では約 80 人の名誉職世話人がいる。さらに、恒常的に多くのそれ以外の世話人(およびひょっとす るとなるかもしれない人)を、我々の協会の支援に利用している。我々は、ここ数年平均 して 300 件の相談を受けた。そういった世話人は、相談相手が自分たちの意のままになる と信じているかもしれない。というのは、その相談相手が、 a) 専門知識を有し、 b) よく話を聞いてくれ、 c) 実際に援助を続けてくれる、からである。 ネッカー=オーデンヴァルト郡世話協会の名誉職世話人による援助についての計画は、以下 のようなものである。 関心ある市民および新たに選任された世話人は、メディアを通しておよび個人宛の添え 状により、認可済みのネッカー=オーデンヴァルト郡世話協会の名を知る。添え状は、世話 受けさせ、助言を与えること。 2a. 事前配慮代理権および世話処分について計画的に情報を提供すること。* 3. 職員の間で経験の交流を可能にすること。 (2) 認可は、当該州において効力を有するが、州の一部に効力を限定することもできる。 認可は撤回することができ、賦課事項を課して付与されることもある。 (3) 詳細については、州法が規定する。州法は、認可に関して付加的な要件も定めること ができる。 31 法の基本を理解するための入門的セミナーへの参加を誘うもので、そこでは職務遂行の第 一歩について教えられる。補足的な教育を行うことで、必要な知識が増加し、補われ、深 められる。経験交流の機会は、要求との関係でより確信を与える。不可欠なのは、簡潔な 専門情報や集中的に助言する仲間をも含めうる個別的な助言を提供することである。助言 の提供は無料で行われ、相談の秘密に服する。 世話の件のための/での『名誉職的な人』の獲得および配属は、特別な注意を要求される。 潜在的な世話人の動機、バックグラウンド、人生経験、職業経験、並びに希望が、本人の 必要および希望と同じく、考慮される。まるで『パートナーの斡旋』が行われているかの ようである。任意的な人が世話を引き受けることを決定しないうちは、裁判所への文書に よる世話人の提案を行わない。このような注意が、組織化された個別的世話の本質をなす、 本人の利益を志向した負担可能な世話関係を保証する。 社会的な協会がこのことを果たしうるには、いわゆる統括的職務に関する確実な財政基 盤がもちろん必要である。この際、地方自治団体および州が助成する。バーデン=ヴュル テンベルグ州世話協会の利益共同体は、統括的活動の質について知らせ、世話の事務に関 する州の共同作業グループとともに、州の助成の給付に関する向上を統括的活動の質に方 向付け、適当なモデルを社会省に提案する。地方自治体は同じ方法で、より多くの名誉職 奨励のためにふさわしい手段を用立てる協会を助成する。私は、世話の本質における名誉 職的活動の奨励に関する連邦モデルの学術顧問であるドクター・クリスチャン・フォン・ ファーバー教授の言葉を以下に引用する。「要援助者の個別的な必要に合わせた世話を望む 者は、社会的または法的職務をこのような活動の課題とせずに、社会参加の覚悟および社 会参加奨励の可能性について意識的かつ具体的に根本から取り組まなくてはならない。」 《以上、黒田》 32 5.世話人による強制的薬物医療行為 Zwangsmedikation durch Betreuer 連邦最高裁判所民事第 12 部 2000 年 10 月 11 日決定 関連条文; 民法 1906 条 〈要旨〉 被世話人の意思に反して周期的に(本件では 2週間ごとに)実施される神経に作用する薬 物の継続的処方、およびこのような(その都度は短期の)処置のため被世話人を強制的に 連行することは、自由を剥奪することになる措置入院(所)措置や措置入院(所)類似の 措置には該当せず、しかも第 1 90 6条 1項 2号と関係する第 2項、および同条 4項による許 可の対象となることもない。 〈理由〉 Ⅰ. 1.1964 年 3 月 10 日生まれの被世話人は、1986 年に精神分裂の範疇に入る精神病である と診断された。数回の(部分的には自発的な)精神病院での入院処置の後、1989 年に区裁 判所は、 『居所の指定』および『財産事務の処理』につき、本人のため、監護(旧制度)を 命じた。1990 年に監護は、 『精神医薬の処方への同意』に拡張され、後に同内容をもつ世話 に移行された〔訳注 世話法は、1992 年に施行された〕 。 〔本件における〕本人を精神病院に入院させる処置のために閉鎖病棟へ措置入院(所) させための許可は、1989 年以来少なくとも 24 回、時には数週間から数ヶ月の期限付きで 与えられている。本人は何度も、精神病者法1にもとづいて措置入院(所)させられた。本 人は、専門医によって必要であると判断された神経に作用する薬物の継続的処方を拒否し た。本人が病院からの退院後、薬を摂取しなかったので、精神病の病状の急激な悪化が定 期的に一定間隔で起こるようになった。このような状況が、その都度新たに閉鎖病棟へ措 置入院(所)することを必要とさせた。1999 年の初めに、1999 年 12 月 31 日までの期限 付きで、以下のような内容の後見裁判所の許可が与えられた。すなわち、2 週間ごとにデポ ー製剤2の注射を行うため本人を短期間閉鎖病棟に措置入院(所)させること、および協力 官庁が病院へ連行しようとする際に有形力を行使しうることに関する許可である。1999 年 12 月 13 日に、世話人は、 『民法第 1906 条にもとづき、薬物処方のため、さらに場合によ Gesetz ü ber Hilfen und Shutzmaßnahmen bei psychischen Krankheit 長時間体内に留まる薬剤 1 2 33 っては閉鎖病棟での強制的薬物処方の範囲内で一時的に措置入院(所)させるため』に本 人を『強制的に勾引する』ことにつき許可を(新たに)申し立てた。このような申立てに 対して、区裁判所は 2000 年 1 月 12 日付の決定で、2000 年 12 月 31 日までの期限付きで、 2 週間ごとに医者の命令によって薬剤を注射するために絶対的に必要な期間につき本人を 閉鎖病棟へ措置入院(所)させるための後見裁判所〔区裁判所内の後見部〕の許可を更新 した。さらに、所轄官庁は、措置入院(所)のため連行する際に有形力を行使することを 許された。地方裁判所はこのような決定に対する本人の即時抗告を却下した。それに対し て手続補佐人(Verfahrenspfleger)は、神経に作用する薬物の副作用によって本人が重大な影 響を受けているとして、本人の名で再度即時抗告を行った。 2.原審高等裁判所は、本件を非訟事件手続法第 28 条 2 項にもとづき連邦最高裁判所の決 定に委ねた(この決定は「世話法実務雑誌 BtPrax」2000 年号 173 頁に公刊されている) 。 原審高等裁判所は、1999 年 11 月 16 日(世話法実務雑誌 2000 年号 88 頁)付のツヴァイブ リュッケン高等裁判所の決定とは、意見を異にしている。高等裁判所は、医師の側からは 措置入院(所)を回避するために必要であると判断される通常の外来での薬物処方、つま り民法 1906 条 1 項 2 号3や 1906 条 4 項4に基づかずに神経に作用するデポー製剤を本人に 投与するために、後見裁判所の許可が可能であると判断している。(略) Ⅱ. 憲法上の判断のための決定委託は、 非訟事件手続法 28 条 2 項5にもとづいて許容される。 1.申立てが許容されるためには、上告した裁判所の法的見解によれば決定の対象となっ ている法的問題が決定的に重要である。上告に対する決定から引き出されなくてはならな い結論は、上告した裁判所が異なる見解をとるならば別のある事案の決定にも影響を与え 3 4 5 民法第 1906 条[措置入院(所)及び措置入院(所)類似の措置] ① 世話人による被世話人の措置入院(所)は、それが自由を剥奪することになる場合には、 被世話人の福祉のために必要である限りにおいて、次の理由によってのみ許される。 2 健康状態の検査、治療行為または医的侵襲が必要であるが、被世話人の措置入院(所) なしにはこれを実施することができず、かつ、被世話人が精神病または知的障害もしく は精神障害のために措置入院(所)の必要性を認識することができず、またはその認識 に従うことができないこと。 民法第 1906 条[措置入院(所)及び措置入院(所)類似の措置] ④ 営造物、ホームその他の施設に滞在する被世話人が、措置入院(所)はされないが、 機械的装置、薬物その他の方法で、相当長期間にわたり、または規則的に自由を剥奪さ れる場合には、第一項から第三項までを準用する。 非訟事件手続法第 28 条[抗告裁判所・申立て義務] ② 高等裁判所が帝国法の規定を解釈する際に、第 1 条で指示された事件に関して、再抗告 に他の高等裁判所が下した決定について、もしその法的問題についてすでに連邦最高裁判 所が下した決定が存在するにもかかわず、そのような決定と意見を異にしようとする場合 には、当該高等裁判所は、自らの法解釈を理由付けたうえで、連邦最高裁判所に再抗告を 申立てなくてはならない。当該申立てについての決定は、抗告人に告知されなくてはなら ない。 34 るだろうということである(部決定 BGHZ 第 82 巻 34 頁6・36 頁以下、133 巻 384 頁7・386 頁) 。原審高等裁判所が明示したのは、その法的見解に基づいてその事案のさらなる解明と、 1906 条の要件の新たな吟味のために区裁判所に差し戻されなくてはならないということで ある。それに対して、ツヴァイブリュッケン高等裁判所の裁判官の判断に従うのであれば、 原審高等裁判所は民法第 1906 条 1 項 2 号にもとづいて区裁判所が与えた許可を、確定的に 取り消さなくてはならないことになる。 原審高等裁判所が、民法第 1904 条8に基づいて必要ならば与えられるべき許可に関して 終局的に取り消すと同時に、さらに区裁判所に差し戻すことを考えるかどうか不確かであ るとしても、 〔最高裁への〕申立ては許容される。なぜなら、差し戻された場合にも、前審 は、抗告裁判所の価値判断に拘束されているからである(BGHZ 第 15 巻 122 頁・124 頁、 Keidel/Kahl『Freiwillige Gerichtsbarkeit(第 14 版、1999 年) 』§27 欄外番号 69) 。した がって、さまざまな法的解釈は、結果として、さまざまな射程範囲の裁判をもたらすので あり、そのことは、意見の相違を受け入れるということになるのである(部決定 BGHZ82 巻上述の箇所 37 頁) 。 2.ツヴァイブリュッケン高等裁判所の決定は、原審高等裁判所が意見を異にしようとし ている法的解釈に基づいている。確かに、その決定から、一般病院または精神病院におけ る閉鎖的部署での治療がなされるかどうかについて確認していないことが推知されうる。 しかしながら決定の理由付けから明らかになるのは、ツヴァイブリュッケン高等裁判所が、 治療の場所に関係なく外来の措置を、措置入院(所)や措置入院(所)類似の措置または 措置入院(所)に比べて『比較的軽い侵害』とみなしたのではなく、そのためには入院的 滞在を必要とすると考えている(上述の文献 1114 頁)ということなのである。もっとも、 上述のような解釈においては、処置の場所については詳細な確認を必要としなかった。 《以上、黒田》 Ⅲ. 適法な再(即時)抗告には、理由が必要である。緊急の場合には強制力を用いて本人を 連行することもある通常の外来診療の際に、神経に作用するデポー製剤を投与し、かつそ れに伴って一時的に精神病院に滞在させることは、許されない。 1.世話人によって意図された措置は、民法第 1906 条 1 項の意味での自由剥奪と結びつい た入院(所)ではない。 6 7 8 民事第Ⅳb 部 民事第 XII 部 民法第 1904 条[医的侵襲に対する世話人による同意] 被世話人に対して実施されようとしている健康状態の検査、治療行為または医的侵襲に、 これにより被世話人が死亡し、または重大かつ長期にわたる健康上の損害を被るという根拠 ある危険がある場合、世話人が当該処置について同意をするには、後見裁判所の許可を必要 とする。延期することが危険である場合に限り、許可を得ないで当該処置を実施することが できる。 35 a)同条の規定は、狭い入院(所)概念を前提としている(世話法法案、連邦議会印刷物 11/4528,S.145 f.,Bienwald,Betreuungsrecht,3.Auf.1999§1906 民法 Rdn.43, Marschnar in Saage/ Göppinger, Freiheitentziehung und Unterbringung,3.Aufl.1994,§1906 民法 Rdn.1) 。 自由を剥奪する措置入院(所)は、以下のような意味において理解されている。すなわ ち、自分の意思に反しまたは自分の意思を有しないで状態で、本人が閉鎖病棟やその他の 閉鎖施設の限られた空間において、またはこのような施設の孤立した部分において勾留さ れ、かつその滞在が常に監視され、その範囲外の人と接触することが制限されることであ る (Damrau in Damrau/Zimmermann, Betreuungsrecht,2.Aufl. 1995 §19 06 Rd n. 1 : Marschner in Jurgens/Kröger/Marschner/Winterstein,Betreuungsrecht, Staudinger/ Bienwald, Bearb. 1999 § 1906 Rdn. 18, Mü nch Komm/Schwab 3..aufl.1992 § 1906 Rdn.5 f.: LG Hamburg FamRZ, 1994, 1619, 1620, OLG Dü sseldorf NJW 1963, 397, 398: BGHZ 82, 261, 266 ff. )。この措置が自由剥奪とみなされるためには一定期間継続されなけ Rdn.1 :Holzhauer in Holzhauer/Reincke, れ ば な ら な い (Damrau a.a.O. § 1906 Betreuungsrecht, 1993, §1 )。民法 1906 条 1 項における自由を剥奪する 9 0 6民法 R dn . 17 措置入院(所)に関する明白な制限は、民法に従って自由の制限なしになされうる他の措 置入院(所)との区分にとって有益である。 〔他の措置入院(所)とは〕例えば、立法手続 の開始時点においてなお効力を有していた民法 1838 条に基づく他の家庭における措置入院 (所)の場合である(連邦下院印刷物 11/4528 S.145: 民法 183 条は 1990 年 6 月 26 日の「児 童・青年者援助法により廃止された。[ SGB VIII ] 民法 l.I 3546 )。それゆえ民法上の自由 を剥奪する措置入院(所)についての決定的な基準は、公法においても同様であるが、一 定の生活圏への個人的移動の単なる短期でない制限ということである(OLG Dü sseldorf 398 )。 b) 両方の基準とも前述した事案においては満たされていない。被世話人が拒絶はしたが、 身体的な抵抗はせず、病院の公開の治療室で我慢しながらなされたデポー製剤の注射は、 約 10 分間継続するだけである。その限りで、同じ町内における強制的な運送ということを 考慮しても、措置が著しく長期間となることはありえない。このことはいかなる基準に従 って自由を剥奪する措置の最短期間が個別的に決められるかということとは関係がない。 さらに、本件の本人は、その全生活において、治療においても、病院への入院においても、 一定の場所に制限されてはいないのである。 《以上、大場》 2.同様に、民法 1906 条4項9に基づく許可をするための要件は充足されていない。 民法 1906 条 4 項は、1906 条 1 項と同様に、身体的な活動の自由および居住の自由とい う意味での移動に関する決定の自由を保護するものである(ツヴァイブリュッケン高等裁 民法 1906 条 4 項:福祉施設、療養施設、その他の施設に滞在している被世話人が、措 置入院(所)されずに、機械装置、薬物、その他の方法で、長期間もしくは定期的に自由 を剥奪される場合には、1 項から 3 項までが準用される。 9 36 rgens など前 判所前掲 1114 頁;Bienwald 前掲民法 1906 条欄外番号 63;Marschner in Jü 掲欄外番号 518 参照) 。確かに立法手続の過程において、「被世話人がその居所を去ること を阻止されるべき場合」という政府草案に含まれていた措置の目的(連邦議会報告書 11/4528,16 頁)は、法文から削除された。しかしながら可決された法律案においては、措 置入院(所)に匹敵する影響をもつ措置だけが含まれるべきであるということを明確にす るために、自由を剥奪するという効果に焦点が絞られている(連邦議会報告書 11/6949,76 頁) 。これは、本件のような、当事者がその意思に反して短期間その日常の滞在地から連れ 去られるという事例とは異なる。それゆえ、確かに身体的な活動の自由に対する侵害がな されているが、結果として措置入院(所)を伴うように、生活圏と永続的な滞在地を選択 する個人的な自由が全般的に制限されているというわけではない。本件では、治療自体は 身体的強制なしに行われているのである。 その他の点として、さらに民法 1906 条 4 項のその限りで明確な文言によると、当該規定 の人的な適用範囲は、福祉施設、療養施設、もしくはその他の施設に滞在している被世話 人に限定されるということが、要件として付け加えられる。しかしながら[本事案の]当事者 は、それに該当するような施設では生活していない。 3. 意図された外来診療が、許可可能な自由を剥奪する措置入院(所)と比べて「より 緩やかな手段」であるかもしれない、ということとの関連において、民法 1906 条 1 項 2 号 10の適用(直接もしくは場合によっては準用)が問題になる。その限りで当部は、ツヴァイ ブリュッケン高等裁判所の解釈(前掲 11156 頁)に賛成である。 a) 既に法の歴史と民法 1906 条の体系を基にして説明されたように、当法律は民法 1906 条 1 項において、狭い措置入院(所)概念を前提としている。この概念を定義する際の不 鮮明さを避けるために、民法 1906 条 1 項に基づいて許可されるべき長期間の閉鎖的な施設 もしくはそのような施設の閉鎖的な部分での滞在が問題にはならないような、その他の自 由を剥奪もしくは制限する措置は、民法 1906 条 4 項に含まれている概括的な指示に含めて 理解される。民法 1906 条 1 項は自由を剥奪する全ての措置を含むものとする(連邦議会報 告書 11/4528,209,210 頁,連邦政府の反対意見:228 頁)のに対して、民法 1906 条 4 項を自由制限措置にだけ適用するという、立法手続中に提出された連邦参議院の発議は、 法律化されなかった。むしろ、立法者は、民法 1906 条 4 項を明文をもって再び自由を剥奪 する措置に拡張した連邦議会の法務委員会の決議の意向に従った。その際に明らかにされ たことは、措置入院(所)の影響に匹敵するような影響をもつ措置だけが含まれるという ことである(連邦議会報告書 11/6949,76 頁) 。この制限が明確にしていることは、民法 1906 民法 1906 条 1 項:世話人による被世話人の自由の剥奪を伴う措置入院(所)は、被 世話人の福祉のために必要である限りにおいて、以下の理由がある場合にのみ許される。 1.被世話人の精神病、知的・精神的障害に基づく、被世話人自身の死亡、または、著し い健康上の損害を伴う危険が存在する場合。 2.健康状態の検査、治療行為または医療的侵襲が必要であって、被世話人の措置入院(所) なしにはこれを実施することができず、かつ、被世話人が精神病または知的・精神的障害 のために措置入院(所)の必要性を認識することができず、または、その認識に従うこと ができない場合。 10 37 条の規定について、特に、憲法 104 条 2 項11の裁判官の留保が考慮されるべきであるという ことである。それゆえ立法者は、被世話人の措置入院(所)に関して、後見人がその居所 指定権の行使に際して成年の(旧)禁治産者を閉鎖的な福祉施設に措置入院(所)する場 合にも、憲法 104 条 2 項 1・2 文に基づく裁判官の決定が必要であると考えた連邦憲法裁判 所の判例(連邦憲法裁判所判例集 10,302,327,328)を変更した。それゆえ、民法 1906 条の適用範囲を吟味するに際しては、憲法 104 条も顧慮されるべきである。憲法 104 条は、 ある一定の非常に短期間のあらゆる点においての活動の自由の消滅としての自由の剥奪 (例えば、逮捕、監禁、拘禁など)の確固たる概念の本質を含んでいる(連邦通常裁判所 民事判例集 82,261,263 以下;Jarass in Jarass/Pieroth,ドイツ連邦共和国憲法,第 5 版 2000 104 条 欄外番号 10 参照) 。本件事例において世話人によって申請された措置は、憲 法 104 条に該当しない。それ故、その措置は、その文言に照らしても、その意味と目的に 適合する憲法上望ましい民法 1906 条の解釈に照らしても、この規定によってはカバーされ ない。 《以上、黒田》 b) さらに、定期的な短期間の病院での滞在が民法 1906 条 1 項に従った措置入院(所) に比べて「より緩やかな手段」として許可可能であるとする点において、控訴審たる高等 裁判所の見解には賛成し得ない。 デポー製剤を注射するために 1 年に約 25 回行われる勾引が、全体的にも、例えば控訴審 たる高等裁判所がしたように単なる自由を制限する措置として扱われるべきか、または、 自由を剥奪するものとして扱われるべきかにかかわらず(境界事例として、連邦通常裁判 所民事判例集 82,261,266,267 参照) 、当部は、そのために申請された許可を、憲法上 の根拠に基づいて認めない。憲法 2 条 2 項 2・3 文12に従って、不可侵である人身の自由は、 法律に基づいてのみ侵害されうる。この基本(的人)権は憲法 104 条の正式な保障によって強 rig in Maunz/Dürig,憲法,104 条欄外番号1注1a)。この規定は公権力の担 化される(Dü 1959 年 6 月 16 日判決−1StR191/59−NJW1959, い手に向けられている (連邦通常裁判所, 1595) 。ただし、国がここでの監護のような公務を引き受けるために私人を使用する場合に も、その保護の問題が生じる(基本的なものとして、連邦憲法裁判所判例集 10 前掲 327 頁 参照) 。憲法 104 条 1 項13の正式な法律の留保を正当に評価するために、侵害要件の基本的 憲法 104 条 2 項:自由剥奪の許容及びその継続については、裁判官のみがこれを決定 するものとする。裁判官の命令に基づかない全ての自由剥奪の場合には、遅滞なく、裁判 官の決定がなされるものとする。警察が、逮捕した日の翌日の終了後も、自己の独断で自 己の留置所に留置することは、何人に対しても、許されない。詳細は、法律でこれを規律 するものとする。 12 憲法 2 条 2 項:各人は、生命への権利及び身体を害されない権利を有する。人身の自 由は、不可侵である。これらの権利は、法律の根拠に基づいてのみ、これを侵害すること が許される。 13 憲法 104 条 1 項:人身の自由は、正式の(=正規の立法手続を踏んだ)法律の根拠に 基づいてのみ、かつ、その法律に規定されている方法を遵守してのみ、これを侵害するこ とができる。抑留(または拘禁)されている者は、精神的にも肉体的にも虐待されてはな らない。 11 38 特質は正式な法律で規律されなければならない(Jarass 前掲 104 条欄外番号3m.N)。それ によって立法者は、自由の剥奪を予測可能・測定可能・制御可能な方法で規律すべきこと を強制されるべきである(連邦憲法裁判所判例集 29,183,196;Jarass 前掲 104 条欄外 番号4) 。原審高等裁判所によってなされた解釈はこの諸原則に反する。 《以上、大場》 高等裁判所が、憲法第 104 条 1 項14の法律の留保から、民法第 1906 条 1 項を、拡大的に 類推してまで適用することを考えないと結論づけたことは、もちろん正当である(憲法第 104 条 1 項の保護範囲における類推の禁止については以下を参照のこと。BverfGE 第 29 巻 183 頁/195・196 頁、第 83 巻 24 頁/31 頁以下、NStZ1995 年号 399 頁、Rü ping『Kommentar zum Bonner Grundgesetz』104 条欄外番号 30)。さらに、自由を制限することが本人の利 益になりうる可能性があることを評価して、強さの点では異なるが方法の点では異ならな い措置であって、比例原則と調和しているものを許し、後見裁判所による許可を出すこと は、当該措置の要件[1906 条 1 項]もまた充足されているのであれば、是認されるべきであ る。しかしながら、本件はそのような事案ではない。なぜなら、14 日を予定した薬物処方 の目的で意図された強制連行は、その期間だけの措置入院(所)に比べて制限された、本 人の自由権への侵害を意味しないどころか、別の種類の措置なのである。 すでに目的の観点から、問題となっているのは、措置入院(所)することではなく、本 人をその意思に反して外来での医的処置に連行することである。 さらに、本人にとって連行の負担は、一度の(それ自体かなり長く継続する)措置入院 (所)による負担とは別の結果を引き起こすのであり、連行の負担と比べられるものでは ない。本人は、精神病院での処置を抵抗せずに我慢するとしても、強制力によってのみ、 すなわち警察の介入によるとかそれに相当する程度の強迫によってのみ、精神病院に連行 さられるのである。この種の勾引は、外へ向かっては差別的効果をもたらす。 それに加えて、薬の副作用のことで本人が苦情を言い、しかも、もし薬物処方に従わな いことによって自己の危殆化を伴う病状の悪化が起こる場合には、かなり長い間閉鎖病棟 に収用されることになっても、薬による侵襲を我慢して受け入れるよりも本人にとって望 ましいとも言われている。国は、社会福祉の枠内で、病気により自分に治療が必要である ことをきちんと理解できない患者にも、医的援助を拒みえない(BT-Drucks.11/4528(72 頁 /141・142 頁)、BverfG NJW 1998 年号 1774 頁/1775 頁)。その点については、本人が有す るもともとの弁識力と制御力が問題となる(BT-Drucks.11/4528(71 頁)、BGHZ29 巻 33・ 34 頁、Steinle 著 BtPrax1996 年号 139 頁/142 頁)。ここで、今までに確認されているとこ ろによると、自分に治療が必要であることについて本人には同意能力がないので、それ以 外の前提条件により、本人が拒絶したことにより、世話人の同意している処置が妨げられ ることはない。もちろん、弁識能力なき本人の意思に反して措置入院(所)が命じられう るかどうかを判断する際に考慮すべきこととして、人格の自由に関する権利は、一定の限 憲法第 104 条[自由剥奪の際の権利保護] ① 人身の自由は、ただ正規の法律の根拠に基づいてのみ、かつ当該法律の定める方法に 従ってのみ、制限することができる。拘禁された者は、精神的又は肉体的に虐待を受け ることがない。 14 39 度内で精神病者にも『病気に対する自由(Freiheit zur Krankheit)』を認めているというこ とがある(BverfGE 第 58 巻 208 頁/224 頁以下) 。このような自由は、同意能力を有しない 本人についても、措置入院(所)するでもなく、強制的に処置するでもなく、いかなる場 合にも事情に応じて問題となる。本人にとって、1 年間定期的に処置に連行されることが確 実であることは、主観的にはおそらく、現状に即して命じられた措置入院(所)が仮に同 じような処置と結びつけられているとしても、そのような措置入院(所)よりも大きな、 もう一つの負担となる。したがって比例原則の実現は、定期的なデポー製剤投与処置に民 法第 1906 条を適用することを導き出しえないのである。 4.民法第 1906 条によると、本件のような申立てにつき許可を与えることは法的根拠に基 づいて許容されず、世話人が意図した、外来での処置のために本人を連行することについ て、およびそのための許可を申立てることについての法的根拠は、別の規定からも引き出 されえない。 a) 直接強制を用いることを正当化するために非訟事件手続法第 70g 条 5 項15を適用するこ とも、認められない。非訟事件手続法第 70g 条 5 項は、措置入院(所)措置について、措 置の実施にあたり世話官庁が、必要ならば実施につき警察機関の支援を得て、連行を安全 に行わなくてはならないことを前提としている。しかも非訟事件手続法第 70g 条 5 項は、 世話人のためでもなく、官庁のためでもなく、医的処置の目的で連行するための独立の法 的根拠となっているのである。 b) 非訟事件手続法第 33 条 2 項も、医者のところに本人を強制的に連行するための独立の 法的根拠としては、適用されえない。一般的見解によると、非訟事件手続法第 33 条は裁判 所による処分が存在することを前提として、当該処分の実施についてのみ規定している (Keidel/Zimmermann 上述の文献§33 欄外番号 8f、同欄外番号 32、Jansen『非訟事件手 続法(第 2 版・1969) 』§33 欄外番号 48 を参照) 。しかしながら、裁判所の処分に応じた 発令は、 (説明したように)法律上の根拠がなくてはならないのである。 c) 同意能力を有しない被世話人に代わって医師による精神医薬の処方に同意するための 世話人の権能からは、被世話人の身体的抵抗を世話人が有形力を行使して排除するための 権能を導き出すことはできない。その点に関して、世話法は―住居(憲法第 13 条 1 項16・7 項)という被世話人の基本 ( 的人 ) 権として重要な領域と同様に―規定を有していない (BT-Drucks.11/4528(141 頁)) 。 aa)それにもかかわらず、学説と判例の一部は、大抵の場合に合目的的な理由で、世話人は ――場合によっては後見裁判所の許可で――自らの任務範囲において被世話人の健康の達 成のために、必要とあれば強制力さえも行使することが許されると考えている(移転性の強 非訟事件手続法第 70g条[宣告、効力発生、勾引・連行] ⑤ 所轄官庁は、第 70 条 1 項 2 文 1 号にもとづく措置入院(所)の目的で連行する際に、 世話人・両親・後見人・保護人の求めに応じて、これを支援しなくてはならない。所轄 官庁は、裁判所による特段の決定がある場合にのみ、有形力を行使できる。所轄官庁は、 必要ならば実施につき警察機関の支援を求める権能を有する。 16 憲法第 13 条 ① 住居は、侵されることがない。 15 40 制処遇に関しては、AG Bremen Rup 1997,S.72f; Knitte1,Betreuungsrecht §1904 Anm.6 f. 第 1906 条 Anm.22d; Schweitzer, FamRZ 1996, 1317, 1324; Zimmermann, Betreuungsrecht 4.Aufl.1999)S.169;被世話人の意思に反して家に措置入院(所)すること については、 LG Bremen BtPrax 94,102,103;LG Beremn FamRZ 1996,821; とりわけ Jurgens/Kröeger 上述の箇所,Rdn.243)。その際に、強制力を使用することは、被世話人の 健康の実現及び現に行われている侵襲の回避に関する場合において合理的理由づけがなさ れる。ただし、移転による処遇の場合に直接的な強制力の使用は、一回限りの、あるいは 繰り返すことがめったにない措置に限られるので、それは精神病の処遇に対してほとんど 重 要 で は な い (Knitte1,a.a.O., § 1904 Rdn.6 ff., § 1906 Rdn.22d; Schweitzer, a.a.O.,S.1324;とりわけ Jurgens/Kröger, a.a.O., Rdn.241 参照)。 bb)これに対して、その他の学者と裁判所は、措置入院(所)法とそこで規定されている民 法第 1906 条および非訟事件手続法 70 条 g5 項における法的根拠以外には、世話人による強 制力の使用を認めない(Amold/Kloß FUR 1996, 263, 265 f なお、Damrau in Damrau/ Zimmermann §1901 民法, Rdn. 3b; Doge 憲法 e, BtPrax 1996, 173; Pardey, Betreuung Volljähriger Hilf oder Eingriff,1989, S.140 f.; diferenzierend Bienwald, §1904 民法 Rdn. 24; 被世話人を強制的に老人福祉施設へ連れて行くことに関しては、LG Offenburg FamRZ 1997, 899, 900; Bay ObLG BtPrax 1995, 182, 183 参照)。 《以上、黒田》 cc) 当部は最後に述べた見解に従う。世話人は民法 1902 条17によると、被世話人の法定代 理人である。世話人はその職務を、被世話人の福祉に合致するように遂行しなければなら ない(民法 1901 条 2 項 1 文18) 。世話人の法的権限は、法定代理人の地位によって対外的 に理由付けられる。同時に、世話人は被世話人に対して、任命された任務の範囲内でその 行為をする権限を有する。但し、今日の理解によると、法的権限の授与は、なされた決定 rgens/Krö ger など、前掲欄外番号 を実行する権限と強制的に結びつくわけではない(Jü 240;Helle FamRZ 1984,639,643) 。まさに基本(的人)権に関する範囲においては、法定代 理人の法的権限は制限される。未成年者に関しては、−必要であれば官庁の助けを借りて −指示を実行する両親の権利は、養育権と特に民法 1631 条3項19から導き出される。しか しながら、世話法は、民法 1908 条i1 項20において、この規定を参照するように指示して 17 民法 1902 条:世話人はその任務の範囲において被世話人を、裁判上・裁判外で代理す る。 民法 1901 条 2 項:被世話人の福祉に反せず、かつ、世話人に対して要求される限り において、世話人は、被世話人の希望に添わなければならない。被世話人がその希望に固 執していることが認識可能でない場合を除いて、このことは、被世話人が世話人の任命以 前に述べていた希望にも妥当する。被世話人の福祉に反しない限りにおいて、世話人が重 要な職務を処理する前に、世話人は職務について被世話人と相談するものとする。 19 民法 1631 条3項:後見裁判所は、申請に基づき、適切な場合には、親権の行使に際し て両親を支援しなければならない。 20 民法 1908 条i1 項:その他に、世話については、民法 1632 条 1 項から 3 項、1784 条、1787 条 1 項、1791 条a3 項 1 文後段・2 文、1792 条、1795 条から 1797 条 1 項2文、 1798 条、1799 条、1802 条1項1文・2項・3項、1803 条、1805 条から 1821 条、1822 条1号から4号・6号から 13 号、1823 条から 1825 条、1828 条から 1831 条、1833 条か 18 41 いない。なぜなら、身上監護に関する世話人の機能は、監護権と養育権を有する両親の機 能とは比較できないからである。それに応じて連邦憲法裁判所は以下のことを指摘した。 すなわち、後見人は監護の範囲内で公的な機能を引き受けているのであって、それゆえ、 被後見人は後見人の行為に対しても自らの基本(的人)権を引き合いに出すことができる、と いうことを指摘した(連邦憲法裁判所判例集 10 前掲 327 頁以下)。その限りで、世話人と 被世話人との関係に適用される特別規定は何もない。このことを前提とすると、憲法 2 条 2 項21・104 条 1 項22における法律の留保の問題が生じ、被世話人の抵抗に対して強制的な措 置を取るためには、正式な法律による請求の根拠を必要とする。民法 1896 条23、1901 条24、 1902 条25といった一般規定に基づく強制権限と同様に、強制措置について民法 1906 条 1 項26またはその他の規定を類推適用することは、認められない(Pardey 前掲 140 頁)。さも なければ、法律の留保によって保障されている基本(的人)権への侵害の予測可能性と制御可 能性が、確保できないであろうからである。 《以上、大場》 本件事例が明確に示すように、法律によって定められた措置入院(所)と世話人による その他の強制措置との明白な区別が必要不可欠である。高等裁判所によってなされた区分、 すなわち、外来による強制医療が、民法 1906 条27の意味での措置入院(所)をも行うこと ができる施設で行われるのか、もしくは、診療室で行われるのかによる区分は、憲法上の 異議を論破するのに適当ではない。自由を剥奪する措置もしくは自由を制限する措置とし て位置付けるために、措置の目的または措置の期間を考慮するかどうかにかかわらず、こ ら 1836 条a、1837 条1項から3項、1839 条から 1841 条、1843 条、1845 条、1846 条、 1857 条a、1888 条、1890 条、1892 条から 1894 条を準用する。修業・労働契約の締結の 際と同様に財産法上の観点での後見裁判所の監督に関する規定は管轄官庁に対しては適用 外とするということを、州法によって定めることができる。 21 憲法 2 条 2 項:各人は、生命への権利及び身体を害されない権利を有する。人身の自 由は、不可侵である。これらの権利は、法律の根拠に基づいてのみ、これを侵害すること が許される。 22 憲法 104 条 1 項:人身の自由は、正式の(=正規の立法手続を踏んだ)法律の根拠に 基づいてのみ、かつ、その法律に規定されている方法を遵守してのみ、これを侵害するこ とができる。抑留(または拘禁)されている者は、精神的にも肉体的にも虐待されてはな らない。 23 民法 1896 条[世話の要件;郵便及び電話による監督] 24 民法 1901 条[世話の実施] 25 民法 1902 条[法定代理] 26 民法 1906 条 1 項:世話人による被世話人の自由の剥奪を伴う措置入院(所)は、被世 話人の福祉のために必要である限りにおいて、以下の理由がある場合にのみ許される。 1.被世話人の精神病、知的・精神的障害に基づく、被世話人自身の死亡、または、著し い健康上の損害を伴う危険が存在する場合。 2.健康状態の検査、治療行為または医療的侵襲が必要であって、被世話人の措置入院(所) なしにはこれを実施することができず、かつ、被世話人が精神的または知的・精神的障害 のために措置入院(所)の必要性を認識することができず、または、その認識に従うこと ができない場合。 27 民法 1906 条[自由の剥奪] 42 のことは妥当する(これについては、連邦通常裁判所民事判例集 82 前掲 266・267 頁参照)。 強制的に当事者を医者に連れて行く目的は、治療が行われる施設の種類には依存せず、常 に同じである。当事者の基本(的人)権に対する侵害は、デポー製剤の注射が閉鎖病棟を有す る精神病院でなされるのか、一般病院でなされるのか、診療室でなされるのかに関係なく 生じ得るものである。 非訟事件手続法 70 条以下28の手続保障をも顧慮すると、原審高等裁判所の見解には納得 できない。その見解は、民法 1906 条 1 項に基づく措置入院(所)措置と民法 1906 条 4 項 29に基づく措置入院(所)類似の措置との区別を、不可能にしている。しかしながらこの区 別は手続にとって重要である。なぜなら、民法 1906 条 4 項に基づく措置における手続保障 は、民法 1906 条 1 項に基づく措置入院(所)ほどには、強くないからである。同条 1 項の 場合には鑑定を求めなければならないのに対して、同条 4 項の場合には、単に、診断書を 求めることが必要なだけである(非訟事件手続法 70 条e1 項30) 。 結局、措置入院(所)のための連行の際に裁判所が権力を用いることを明示的な命令が ある場合にのみ許可する旨定めている非訟事件手続法 7 0条 g 5項 2文31から、その他の場合 には、世話人は被世話人の身体的な抵抗を抑えるために強制力を用いることは許されない、 ということが推論される。権力の行使を正当化するためには、措置入院(所)の合法性を 確認する裁判所による措置入院(所)処分の権限という裁判所の許可だけでは不十分だと いうのであれば、裁判所による許可の対象にならない、世話人のその他の措置を実行する ために、直接的な強制力を用いることは、なおさら許容されないのである。 当部は、強制権限の欠如が次のことに行き着くことがありうる、ということを誤認して いるわけではない。すなわち、当事者の病状が新たに悪化し、そして場合によっては長期 間措置入院(所)されなければならなくなる、ということを誤認しているわけではない。 それゆえ、世話人が当事者の意思に反してでも治療に同意することを押し通すということ は、個々の場合には意味があると思われ、かつ、当事者の利益になることもある。しかし ながら、措置入院(所)する権利に強制権限が欠けていることの問題性は、既に世話法の 立法手続の時点で知られていたのである(He ll e ,F am RZ 19 84 ,64 3頁;Pa r de y前掲 1 40 ・1 4 1 頁参照)。それにもかかわらず立法者が規律することを断念したという事実(連邦議会報告 非訟事件手続法 70 条以下[措置入院(所)手続] 民法 1906 条 4 項:福祉施設、療養施設、その他の施設に滞在している被世話人が、措 置入院(所)されずに、機械装置、薬物、その他の方法で、長期間もしくは定期的に自由 を剥奪される場合には、1 項から 3 項までが準用される。 30 非訟事件手続法 70 条e1 項:70 条 1 項 2 文 1 号・3 号に基づく措置入院(所)措置の 前に、裁判所は、当事者を個人的に調査するかまたは質問しなければならない専門家の鑑 定を求める必要がある。専門家は通例、精神科医であるものとする;個々の事例において、 専門家は、精神医学の領域で経験を有する医師でなければならない。70 条 1 項 2 文 2 号に 基づく措置入院(所)措置に関しては、診断書で足りる。 28 29 非訟事件手続法 70 条 g5 項:管轄官庁は希望に基づいて、70 条 1 項 2 文 1 号に基づ く措置入院(所)のための連行の際に、世話人、両親、後見人、補佐人を支援しなければ ならない。 管轄官庁は、裁判による特段の決定に基づいてのみ、権力を行使することが許される。管 轄官庁は、必要な場合には、警察機関の支援を求める権限を有する。 31 43 書 1 1 / 4 528 7 2 , 9 2頁以下参照) は、裁判所によっても尊重されなければならない。精神病の 人々と身体的・知的・精神的に障害のある人々の法的地位とを、後見と保護に関する法を 根本的に改正することによって改善するという、世話法の関心事を真剣に考える( 連邦議会 報告書 11/ 4 5 2 8 1頁) のであれば、彼らの憲法上保障された権利は、合目的的な理由に基づ いて無視されてはならず、また、当事者の十分に理解された利益に基づいてでも無視され てはならない。さらに、世話人、特に名誉職的に活動している世話人に対して、信頼のお ける基準なしに、ある一定の状況下での直接的な強制力の行使が合法かどうかを判断する ことを要求することはできない。結局、法律上の根拠に基づく場合にのみ、官庁に対して、 強制力を行使する際の支援を求める世話人の権利請求権が存在するのである。 《以上、黒田》 44 6.被世話人、その親族、相続人に世話の費用を分担させること Die Herantziehung des Betreuten, seiner Familienangehörigen und Erben zu den Betreuungskosten ホルスト・ダイネルト(ソーシャル・ワーカー/行政管理士) Horst Deinert ndG)によって、民法 1836 条aから 1836 条eまでが 世話法の改正に関する法律(BtÄ 新たに挿入された。これらの規定は初めて、被世話人が無資力状態にある場合の世話人の 報酬について明示的に規定し、また、無資力をも定義している。この関連で明らかにされ るべきは、以下の点である。すなわち、被世話人の所得と財産は世話の費用を填補するた めにどの程度用いられるべきなのか、そして、被世話人の親族と相続人に対しても請求す ることができるか否か、という点である。 Ⅰ.総論 法的な世話(民法 1896 条以下)を受けている人々は、その世話人の報酬と費用の償還を 負担しなければならない(民法 1835 条以下、民法 1908 条e1、1908 条i2) 。しかしなが ら、被世話人が無資力状態にある場合には、このことは妥当しない。これらの場合には、 世話人に対して補償するのは、国庫である。 1999 年1月1日に施行された 1998 年 6 月 25 日付の世話法の改正に関する法律によって 初めて、被世話人による世話の費用の分担と無資力の確定に関する詳細な規定が採用され た。それ以前においては、民法 1835 条 4 項3に基づく無資力の基準を作り出すことは、判 民法 1908 条e:①協会世話人が任命される場合には、1835 条1・4 項に基づく費用の 補償と、1836 条 1 項2・3 文と 1836 条 2 項に基づく報酬を請求することができる。 (以下略) 2 民法 1908 条i:①その他に、世話については、民法 1632 条 1 項から 3 項、1784 条、 1787 条 1 項、1791 条a3 項 1 文後段・2 文、1792 条、1795 条 1797 条 1 項 2 文、1798 条、1799 条、1802 条 1 項 1 文・2 項・3 項、1803 条、1805 条から 1821 条、1822 条 1 号 から 4 号・6 号から 13 号、1823 条から 1825 条、1828 条から 1831 条、1833 条から 1836 条a、1837 条 1 項から 3 項、1839 条から 1841 条、1843 条、1845 条、1846 条、1857 条 a、1888 条、1890 条、1892 条から 1894 条を準用する。修業・労働契約の締結の際と同 様に財産法上の観点での後見裁判所の監督に関する規定は監督官庁に対しては適用外とす るということを、州法によって定めることができる。 (以下略) 3 民法 1835 条 4 項:被後見人が無資力状態にある場合には、後見人は前払い金と補償を 国庫に請求することができる。1 項 3・4 文が準用される。 1 45 例に委ねられていた。世話を受けている人が報酬と費用償還を自らの所得または財産から 支払わなければならないのか、それとも、国庫がその費用を負担するのか、という問題に 際して、今までほとんどの裁判所は、訴訟費用の援助の範囲に由来する基準を用いていた。 過去における裁判実務においては、ほとんど財産上の価値の要求だけが問題となっていた。 被世話人の現在の所得が用いられることはほとんどなかった。ただし、判例で用いられる ことに関しては議論がある。 改正法(民法 1836 条c4、1836 条d5)においては、無資力が定義された。被世話人の所 得が特別生活状態における社会扶助の非課税限度(連邦社会扶助法 81 条1項6)を超えてい る場合に限り、その被世話人はこの超えている所得を、報酬と費用の償還のために充てな ければならない。現金の財産が、ほとんどの世話の事例において、4,500 マルクと定められ ている社会扶助法の最低保障額以上に存在するのなら、すぐに、その現金の財産が充てら れることとなる。視覚障害者と最重度の世話が必要な人の場合にのみ、保障限度は 8,000 マルクである。 具体的な個々のケースにおいて無資力を確定することは、これまでは、後見裁判所の義 務であった。しかしながら申請人は、調査の際には最大限協力しなければならない。申請 人が財産監護を任務の範囲・効力範囲として担当している場合にはいつも、この法解釈が 問題となる。このことは成年者の世話の際にも、また、保護の際にも問題となりうる。そ の場合には、被世話人も、その親族も、その他の第三者(使用者、金融機関、社会福祉事 業者)も、世話人(補佐人)に対して情報を与える義務を負わない。 被世話人の所得と財産の算定は、二つの効力を有する。一方で、被世話人が、世話人に よって提出された代金(民法 1836 条2項7に基づく報酬請求権、場合によって民法 1835 条 8に基づく費用償還が付け加えられる。その都度最大で最近 15 ヶ月分である)を全額支払う 民法 1836 条c:被後見人は、 1.その所得が、別居しているのではないその配偶者の所得と合わせて、連邦社会扶助法 76 条、79 条1・3 項、81 条 1 項、82 条によって基準となる特別な生活状態における扶助 に関する所得限度を超えている場合に限り、連邦扶助法 84 条に基づいて自らの所得を充て なければならない。(以下略) 5 民法 1836 条d:被後見人は以下の場合には貧困状態にあるとみなされる。すなわち、 被後見人が費用の償還または報酬をその充てられるべき所得もしくは財産から、 1.一部または分割部分だけではなく、 2.裁判上での扶養請求権の主張という方法によってのみ調達できる場合である。 6 連邦社会扶助法 81 条1項:[特別な所得限度] 7 民法 1836 条 2 項:1 項2文の要件が存在する場合には、後見裁判所は後見人または後 見監督人に対して報酬を認めなければならない。報酬額は、後見の遂行にとって有益な後 見人の専門知識、および、後見行為の範囲と困難性によって定められる。後見人は期限前 の支払いを請求することができる。報酬請求権がその発生後 15 ヶ月以内に後見裁判所にお いて主張されない場合には、報酬請求権は消滅する。後見裁判所は、証人・鑑定人補償法 15 条 3 項 1 文から 5 文までを準用することによって、異なる期間を定めることができる。 8 民法 1835 条:①後見人が後見の遂行の目的のために費用の償還をする場合には、後見 4 46 ことができるかどうか、ということが調査されることとなる。この場合にのみ、被世話人 は無資力状態にあるとはみなされない。その他の場合には、国庫が介入する義務を負う(民 法 1836 条d) 。他方で、国庫の事前介入の後に、被世話人(および、その親族と相続人) に対して求償を請求することができるのかどうか、そしてどの程度求償しうるのか、とい う問題にとって、その算定は重要である。 《以上、黒田》 Ⅱ 財産の投入 最初に調査しなくてはならないのは(社会扶助法の場合のように)、世話人活動の資金調 達のために被世話人の財産が足りるかどうかということである。すでに旧法において定着 していた学説と判例に基づいてなされていたのと同様に、被世話人の財産に対する請求は 民法 1836 条 c2 号の新規定によって生じる。それにもかかわらず、連邦社会扶助法 88 条お よび連邦社会扶助法 88 条Ⅱ8 号の執行のための命令において規定されているさまざまな控 除額のいずれが世話人報酬のために用いられるか、ということが明確ではない。その上、 連邦社会扶助法 88 条Ⅲに従って財産の投入が要求されえない限り、財産の投入は本人ある いは扶養を受ける権利のあるその近親者にとって苛酷な問題を意味するであろう。適切な 生活あるいは適切な高齢者の安全を維持することが本人にとって著しく面倒となる場合に は、その苛酷な問題がとくに明白となる。 《以上、顧》 1. 少額の現金財産 少額の現金財産(いわゆる生活最低保障財産 Schonvermögen)は、連邦社会扶助法施行 令 1 条 1 項9に規定されている。 人は委任に適用のある 669 条・670 条の規定に従って、被後見人に対して前払い金または 補償を請求することができる。交通費の補償に対しては、証人・鑑定人補償法 9 条中の鑑 定人に関する規定が準用される。同一の権利が後見監督人に存在する。補償請求権がその 発生後 15 ヶ月以内に裁判上で主張されない場合には、補償請求権は消滅する。その際、後 見裁判所における請求権の主張も、被後見人に対する主張とみなされる。後見裁判所は証 人・鑑定人補償法 15 条 3 項 1 文から 5 文までを準用することによって、異なる期間を定め ることができる。 (以下略) 9 連邦社会扶助法 88 条 2 項 8 号施行令第 1 条 (1) 連邦社会扶助法第 88 条[組み入れられる財産・例外]第 2 項 8 号の意味での比較的 少額の現金残高や現金以外の金銭的価値を有するものとは、以下のようなものである。 1. 社会扶助が、扶助を求めている者の財産次第である場合には、 a) 生計の扶助に際しては 2,500DM。 b) 特別の生活状態における扶助に際しては 4,500DM。しかし、連邦社会扶助法 第 67 条[視覚障害者への扶助]・第 69 条[家事介護・在宅介護支給金]第 4 項 2 文の場合には 8,000DM。また、満 60 歳以上の者が扶助を求めている際、 47 少額の現金財産は、生計の(社会)扶助に際して 2,500DM、特別の生活状態における(社 会)扶助に際して 4,500DM、視覚障害者や最重度要保護者への扶助に際して 8,000DM で あり、それぞれの場合に配偶者については 1,200DM が、それ以外のもっぱら扶養されてい る者についてはそれぞれ 500DM ずつが加算される。最後にあげた者は、たいてい未成年の 子である。 確かに、民法第 1836 条 c10第 2 号(1 号とは異なる)は、一般に連邦社会扶助法第 88 条 を準用している。しかしながら第 1 号では、所得に対する要求 Inanspruchnahme に際し て、特別の生活状態における扶助の際の非課税額が用いられている。したがって財産の利 用に際しても、上述した特別の生活状態における扶助の非課税額に拠るのが正しいように 思われる。このことは、無資力の確認に際して、分割払い義務がない場合の訴訟費用扶助 に関する非課税財産限度を判断基準として通常用いている 1999 年 1 月 1 日以前の判例にも 合致する。ここで、訴訟費用の扶助は、民事訴訟法において特別の生活状態における社会 扶助の一形態として考慮されている。 被世話人が連邦戦争犠牲者援護法(BVG)の意味での有資格者である場合に、被世話人には BVG 第 25 条 f にもとづく非課税額がそのまま当てはめられるべきである。この規定の恩恵 を受ける者は、特に、戦傷者、戦死者の遺族、兵役・良心的兵役拒否活動により障害を負 った者や強制接種の被害者、さらには暴力行為の犠牲者である。BVG 第 25 条 f にもとづく 非課税額は現時点では 9,286DM である。そのほかに加算されるべきは、引き下げられた社 会的地位を回復するための加算額として現時点では 2,800DM、及び配偶者に対する加算額 としての 1,857DM やそれ以外のもっぱら扶養されている者各々に対する加算額としての 929DM である。 被世話人が障害者の社会編入援助を受け、障害者のための一般に認知された職場で職を 得ている場合には、連邦社会扶助法第 88 条 3 項 3 文、連邦社会扶助法施行令第 1 条 1 項 1 文 1 号 b にもとづいて被世話人には 45,000DM 相当の非課税財産額が認められる。この額 は、無資力の確認に際しても民法第 1836 条 c にもとづいて適用されている。 この規定にも関わらず、裁判所は個々の事案においてより高い財産額を非課税額に算入 および法律上の年金保険の意味での生業能力なき者の際やこのような人的範 囲と比較しうる廃疾年金受給者の際には 4,500DM。 さらに、扶助を求めている者によって主に扶養されている者 1 名につき 500DM をそ れぞれ加算する。 2. 社会扶助が、扶助を求めている者およびその者の別居していない配偶者の財産次第 である場合には、 第 1 号 a もしくは b によって基準となる額は、配偶者につき 1,200DM が、扶助を 求めている者もしくはその配偶者によって主に扶養されている者 1 名につきそれぞ れ 500DM が加算される。 3. 社会扶助が、扶助を求めている未婚の未成年者もしくはその両親の財産次第である 場合には、 第 1 号 a もしくは b によって基準となる額は、 親 1 名につきそれぞれ 1,200DM が、 扶助を求めている本人につき 500DM が、その両親もしくは扶助を求めている本人に よって主に扶養されている者 1 名につきそれぞれ 500DM が加算される。 10 民法第 1836 条 c[組み入れられるべき所得及び財産] 48 しうるものとしている。もしそうしない場合には、適切な生活遂行や適切な高齢者保護の 維持がきわめて困難になることによって、過酷な事態が生じてしまう。 2.社会扶助受給者による、保障最低額をこえた場合の財産の投入 その都度毎の世話の事案で基準となる財産の保障最低額を超えている場合に、超過した 財産は世話人活動の財政を援助するために投入されるべきである。しかしながら実際には この規定は、しばしば困難をもたらしている。社会扶助を受ける人が非課税限度を超える 財産については、好きなように使えるように思える。ここでは、実際に世話人の報酬とし て投入されるべき財産が有るかどうかが問題となる。 それに関して、以下のような状況が考えられる。 a) 被世話人所有の財産価値を世話人が後に発見した状況 b) 目的のない財産を後に取得した状況(例:相続や贈与による財産獲得) c) 目的の定まった財産を後に取得した状況(例:慰謝料の支払い) d) 法律上保護された所得が預貯金上増大した状況(例:連邦社会扶助法にもとづく個 人的な現金額。いわゆる小遣い銭や、たとえば BVG にもとづく基本年金などの社会 扶助法上所得とみなされないもの。 ) 一般に妥当すること:世話人は、被世話人の法定代理人として(民法第 1902 条)、社会 福祉法上の協力義務もまた有している。それゆえ世話人は、上に述べた状況の一つが生じ た場合に、遅滞なくそのことを福祉事務所に通知しなくてはならない。a)で述べた事例にお いて前提とされているのは、社会扶助当局が、連邦社会扶助法第 92 条 a にもとづいて見出 された財産の額で給付済みの社会扶助の返還を求めることである。世話人の報酬を支払う ために手元に資金を残しておく権利を、世話人は有していない。 事例 b)において被世話人は、財産取得の時点から連邦社会扶助法第 88 条の非課税限度を 超過しているため、もはや社会扶助を必要としておらず、現行の社会扶助の支払いは中止 される。しかしながら返還請求は、財産取得から社会扶助の支払いを中止するまでの期間 でのみ可能である。このような場合に、世話人の報酬に関する裁判所の決定は、被世話人 が取得した財産をまだ生計のために消費しておらず、したがって最低保障財産をまだ超過 している期間で可能である。これに関して、世話人の報酬が被世話人の財産から支払われ るべきことは、たとえ被世話人がすぐにまた社会扶助を必要とすることになるとしても、 許容される。しかしながらこのことは、将来社会扶助を必要とすることがはっきりしてい る際でも許され、財産の処分は不可能ではない。 事例 c)は、原則として事例 b)と同じように取り扱われるべきである。というのは、財産 の活用可能性に際してその由来が重要とされるべきではないからである。 『障害児に対する 援助組織』基金から由来する財産は例外である。というのは、このような場合には、これ に関する財団法人法 21 条 2 項がその原則と矛盾するからである。 しかしながら、慰謝料支払い(民法第 847 条11)の場合にも判例によって、慰謝料を社会 11 民法第 847 条[慰謝料] 49 扶助にかわりに、また世話人の報酬にまわすことも不当であることが判決されている。こ のことは別の目的と結びついた財産取得の際、たとえば介護保険が後から支払われる際に も同じように見られ得るだろう。 事例 d)は、原則として事例 b)と同じように、すなわち最低保障額を超える財産は福祉事 務所に届け出られるべき−その月毎に被世話人が超過した所得額においては、社会扶助法 の意味での扶助を必要としていないということについて届け出られるべき−であり、査定 されるべきである。施設入所者に関する連邦社会扶助法第 21 条 3 項にもとづく現金額を超 過する額が、たとえば BVG にもとづく基本年金によって、入る場合に、世話人は金の流入 した月において適当な金の使用を確保するよう真剣に努力しなくてはならない。したがっ て、それについてたとえば、福祉事務所によってもしくは介護保険によって与えられる量 を超える補足的介護や社会的世話をそれによって手配する、ということが考えられる。 《以上、黒田》 3.葬儀用の貯金通帳/葬儀の予約 その後の葬儀のために支出された金額(通常、この目的のために支払いを停止された貯 金通帳、または、葬儀の予約によって定められた金額)が、最低保障財産に算入されるの かどうか、という問題がしばしば提示される。 この問題は肯定されるべきである。なぜなら、その他の目的(例えば、葬儀、墓の手入 れ)に拘束されるものと定められた金銭は、連邦社会扶助法 88 条12の意味で、処分可能で はないからである。処分可能な財産だけが連邦社会扶助法 88 条の適用を受ける。封鎖預金 口座上の預金は、処分可能な財産とはみなされない。 そのような行為が、社会扶助の給付または向上のための要件を充足するつもりで行われ た場合にのみ、社会扶助の範囲でその行為は有効になる。このことは、本人の生活環境と 比較して相当な葬儀の予約の場合には、行われない。自分自身の葬儀について決定をする 権利は、基本法2条13に基づく一般的人格権として認識される。それゆえ、葬儀に対する支 払いを配慮する可能性も存在するに違いない。連邦社会扶助法 14 条14に基づく社会扶助法 上の被世話人の葬儀の準備も、正当に評価されるべき危険に対する準備であり、この理由 から、民法 1836 条c2号15に基づいて財産を負担とする際にも顧慮されるべきではない。 (1) 身体もしくは健康を害したる場合並びに自由を奪いたる場合においては、被害者は財 産以外の損害についてもまた公平なる賠償を金銭でもって請求することを得。 12 連邦社会扶助法 88 条[用いられるべき財産、その例外] 13 基本法2条:① 各人は、他人の権利を侵害せず、かつ憲法的秩序または道徳律に違 反しない限り、その人格の自由な発展をはかる権利を有する。 ② 各人は、生命および身体を害されない権利を有する。個人の自由は、不可侵である。 これらの権利は、法律の根拠に基づいてのみ、これを侵害することができる。 14 連邦社会扶助法 14 条:生活の維持を扶助するものとして、相当な高齢者の安全または 相当な葬祭料を求める請求権の要件を満たすために必要な費用を払うことができる。 15 民法 1836 条c2号:被後見人は、連邦社会扶助法 88 条に基づいて自らの財産を用い 50 4.土地家屋 同様に、相当な土地家屋は投入されるべき財産に算入されない(連邦社会扶助法 88 条2 項7号16)。そのための要件は以下の通りである。 a) 被世話人自身と(もしくは)その配偶者または未成年の子がその家屋に住んでい ること(もしくは、被世話人自身が未成年である場合には、その両親が住んでいること)。 b) 家屋と土地の大きさが相当であること。相当性は、居住者の人数と、場合によっ ては、障害または保護の必要性(Pflegebedurftigkeit)を理由として追加的に必要となる住 居上の需要に応じて決定される。 相当な家屋の大きさとみなされるのは、自宅の場合には居住面積が 130 ㎡、本人所有の マンションの場合には 120 ㎡である。1世帯に4人以上が住んでいる場合には、居住面積 は一人あたりさらに 20 ㎡ずつ広くなる。その住居に住んでいる人の一人に対して在宅介護 が必要な場合には、相当な居住面積は 20%広くなり、自宅の場合には 156 ㎡、本人所有の マンションの場合には 144 ㎡である。介護者による継続的な世話が必要な場合には、さら に 20 ㎡の増大が適切である。土地の大きさは、公的に促進された住宅建設の慣例に合致し なければならない。相当であるとみなされるのは、通常、列状住宅の場合には 250 ㎡、列 状住宅の端の家屋/二戸建住宅の半分の家屋の場合には 350 ㎡、 一戸建住宅の場合には 500 ㎡である。 家屋がこの意味で相当な場合には、社会扶助当局は自らの請求権を担保するために保全 抵当権を登記させることはできない。相当性の限度を超えている場合であっても、換価が 本人にとって過酷であるのであれば、換価を行ってはならない。まさにそのような場合で あるかどうかは、個々のケースの状況に依存する。しかしながら、扶養を請求できる親族 がいない場合の、被世話人の土地家屋の換価は、被世話人がその後もその家屋に住み続け られるということが確保されている場合(例えば、継続的居住権によって)には、過酷で はない。外国(裁判例として、ポーランド)にある土地も、財産に算入される。 規模に関する最低保障限度を超えている土地家屋が実際に換価されるべきかどうかは、 売却代金を縮減するかまたは完全に無いものとする担保が土地登記簿に登記されているか どうか(抵当権、土地債務)に依存する。 なければならない。 16 連邦社会扶助法 88 条2項7号:扶助を求める人が一人でその土地家屋の全体または一 部に住んでいるか、もしくは、扶助を求める人の死亡後もさらにその土地家屋を住居とし て用いる親族と共にその土地家屋の全体または一部に住んでいる場合、社会扶助は、小さ い土地家屋、特に、家族用家屋の利用または換価に依存しない。 51 5.その他の最低保障財産 その他の保護される資産は、連邦社会扶助法 88 条 2 項に基づく、相当な家財道具、職業 を営むのに必要な物、売却することが本人にとって過酷な家宝および相続財産、精神的、 特に、学問的または文化的な欲求を満足させるための物である。 《以上、大場》 Ⅲ 所得の投入 被世話人の財産からは世話人が求めている金額(報酬と費用償還、それぞれの場合に最 高額は最近15カ月間である)の支払いが不可能な場合には、処分行為に対して対価所得 があるかどうか、ということが調査されなければならない。その際、社会扶助法のように、 三段階の手続が予定されている。まず、所得の算定である。次に、社会扶助法上の控除額 の調査である。第三に、差額に関しての裁量決定である。 1.所得の算定 原則的に金銭上の価値ある種類のすべて収入は所得に入る。連邦社会扶助法第 76 条の意 味での所得は、金銭あるいは金銭上の価値における事実上の流入のみである。それに対し て、直ちに実現され得ない請求権は、所得ではない。しかし所得の特定の形態はもとより そのようにみなされていない。そこでは、通常、社会契約上特に保護されている所得の種 類が問題とされている。なぜなら、その所得種類は特別な生活上のリスクと負担の補償に 用いられるべきからである。このような所得形態が社会扶助法上の所得とみなされない限 りでは、民法第 1836 条 c で準用されている社会扶助法に基づき、これらの所得形態は世話 人報酬および費用償還の範囲において所得調査されなければならない。 《以上、顧》 a) 社会扶助法上の所得とならないものの例: −連邦戦争犠牲者援護法および連邦補償法にもとづく基本年金(戦傷者年金、戦争遺族年 金や同様に扱われる支払金) −『障害児のための援助活動』基金の基本年金 −『母と子』連邦基金ならびに同様に扱われる州基金からの給付 −幼児教育給付法にもとづく幼児教育給付金 −連邦教育手当法にもとづく教育手当(および若干の州による補充的な州の教育手当法) −ドイツ社会主義統一党犠牲者に対する生活扶助費 −捕虜に対する補償法、被拘留者援護法、帰国者基金法、HIV ウィルス感染者支援法およ び連邦国境警備隊法 59 条にもとづく賠償金 52 −使用者による財産形成のための給付(労働者の負担ではない) −毎月 200DM までのヨーロッパ社会基金によるモティベーション支援金 −生計の扶助もしくは特別生活状態における扶助であるかに関係なく、社会扶助給付金そ のもの 連邦社会扶助法第 77 条17により、以下の収入についても、それらは生計にではなく目的 の定まった給付として使われるよう規定されているので、考慮に入れられていない。その 例としては、盲導犬給付、視聴覚障害者給付金、HIV ウィルス感染者のための人道的緊急 援助、任意保険受給生活者のための疾病保険補助金、療養補助金、在宅介護給付金、リハ ビリ給付金、出獄者に対する補助金、慰謝料などが挙げられる。これらは、世話法におい て本人の負担額を計算する際にも控除することが許される。 b) 所得の精算 被世話人の所得は、連邦社会扶助法第 76 条に挙げられている額については精算されなく てはならない。これに関してまず、法律による公課、税金、保険が重要である。法律によ る社会保険料やそれらと同価値を有する年金保険・疾病保険・介護保険・災害保険のため の任意支払金と並んで、危険に備えるために適切な追加額(Risikovorsoge)、たとえば州法 によって定められている場合の私的責任保険や家財道具保険、さらには建物の火災保険、 もまた算入されうる。死亡保険金(死亡に関する生命保険金)の算入は認められるが、(生 存の場合における)養老保険の算入は認められない。自動車責任保険は、乗用車が被世話人 の職業活動に必要である場合には、算入されうる。営業収入については、必要経費は、控 除できる(広告費−職業上の経費)。これについて詳しくは連邦社会扶助法第 76 条182 項 a 連邦社会扶助法§77[目的および内容が特定された給付] 公法上の規定にもとづいて目的を明記して与えられる給付は、社会扶助が個々の場合 同一の目的をもって行われる限りでのみ、所得として考慮されうる。 (2) 民法第 847 条にもとづき財産上の損害に該らない損害のためになされる賠償は、収入 として考慮されてはならない。 18 連邦社会扶助法§76[所得の概念] (1) この法律で意味するところの所得とは、本法に基づく給付と連邦戦争犠牲者援護法にも とづく基本年金、および連邦補償法にもとづいて生命・身体・健康への損害に対して与 えられる年金や補助金で連邦戦争犠牲者援護法に基づく基本年金に相当する額まで、を 除く全ての金銭収入または金銭的価値を有する収入をいう。 (2) 以下のものは、所得から控除されるものとする。 1. 所得に課された諸税 2. 失業保険を含めた社会保険のための義務的分担金 3. 公的または私的な保険、もしくは類似の制度のための分担金。ただし、 これらの分担金が法律上規定されているか、または根拠や額が適切な場合に限られ る。 4. 所得を得るために必要であった経費 (2a) 以下の者については、その都度その都度に適切な程度の追加額が、所得から控除され るものとする。 1. 就業者 17 (1) 53 第 3 号 b の施行規則 3 条を見よ。 《以上、黒田》 c)被世話人の所得としての扶養費 扶養請求権は、扶養に際して金銭での支払いが問題になる場合に限り、まさにその他の 収入と同様に、被世話人の所得に算入される。被世話人の、任意の支払いによって実現さ れえない扶養請求権は、世話人によって訴求されることはないだろう。しかしながらその 請求権は、民法 1836 条e19に基づくその他の請求権と同様に、社会扶助当局と同様に自ら に移転した扶養請求権を訴求することができる国庫に移転する。 自らを扶養することができない人には、民法 1602 条20に基づいて扶養の必要性があり、 民法 1603 条21に基づく扶養義務があるのは、所得とその他の義務に応じて扶養することが できるその直系の親族である。扶養請求権は一身専属的な権利であって、自らの生活費を 填補することには用いられるが、第三者の請求権のための資金調達を目的としては用いら れない。このことが意味するのは以下のことである。すなわち、被世話人が世話人の活動 が無くても有しうる扶養請求権を、任意の支払いが行われない場合、州の国庫が訴訟で主 張することができる、ということである。それゆえ、世話人活動(および、その支払いの 必要性)の結果である、被世話人の追加の資金需要は、扶養法の意味における扶養の需要 ではない。 さらに通常の事例において、扶養請求権が算入される見込みは無い。なぜなら、被世話 2. 作業能力を制限されているにもかかわらず就労している者 3. 就業者であって、 a) 全盲であるか、視力が良い方の眼で 1/30 以上でない者、あるいは視力の低下 度合いがこれと同等に評価される者。ただし、視力の減退が一時的な者は除か れる。または、 b) 障害が重度であって、障害者として連邦戦争犠牲者援護法第 35 条 1 項 2 文に よると介護度ⅢないしⅣの介護手当を受給する者 (3) 連邦政府は、連邦参議院の同意を得て、法規命令によって、所得、とりわけ農業・林業 収入、営業収入および自営業収入の算定、ならびに第 2 項 a に掲げた者の場合の金額と 人的範囲の境界についての詳細を定めることができる。 民法 1836 条e:① 国庫が後見人または後見監督人に対して弁済する場合に限り、後 見人または後見監督人の被後見人に対する請求権は国庫に移転する。移転した請求権は、 国庫が費用または報酬を支払った年の満了時から 10 年で消滅する。被後見人の死亡後、そ の相続人は相続開始の時点で存在する相続財産の価値においてのみ責任を負う。連邦社会 扶助法 92 条c3・4項が準用され、1836 条cは相続人に適用されない。 (以下略) 20 民法 1602 条:① 自らを扶養することができない人のみが、扶養権利者である。 (以下略) 21 民法 1603 条:① 自らのその他の義務を考慮して、相当な扶養の危険性無く扶養をす ることができない人は、扶養義務者ではない。 (以下略) 19 54 人の生計がその他の収入によって確保される場合には、被世話人は民法 1602 条に従って扶 養請求権を有しないからである。生計が他の給付によって確保されない場合には、通常、 被世話人は社会扶助請求権を有する。しかし、社会扶助が支給される場合には、被世話人 の扶養請求権は連邦社会扶助法 91 条22に従っていずれにしても社会扶助担当者に移転し、 その結果、世話人(もしくは州の国庫)による権利主張はもはや許容されない。請求権の 移転によって債権者の交替が生じ、その結果、社会扶助受給者の自らの請求権はもはや問 題とならない。その場合おそらく、扶養請求権が社会扶助額を超えている分の一部の額が さらに問題となる。しかし、このことは実務においては例外であろう。 その上、扶養義務者に民法 1603 条の意味での支払能力があるかどうか、ということが確 認されなければならない。扶養義務者の所得の控除額(いわゆる自己留保額)は、「デュッ セルドルフの表」によると、未成年者または 21 歳以下で学校教育を受けている子供に対す る扶養義務(いわゆる高められた扶養義務)の場合には、少なくとも毎月 1500 マルクであ る。その際、必要経費(職業上の費用)、並びに、場合によって債務は、前もって控除され ることとなる。挙げられた自己留保額の場合には、650 マルクの暖房費込みの家賃は、料金 に含まれる。賃料がより高い場合には、場合によって自己留保額も高くなる。 その他の成年の子供に対しては、相当な自己留保額は少なくとも 1800 マルク(さらに同 じ条件の場合)になる。自らの両親に対しては、自己留保額は 2250 マルク(800 マルクの 暖房費込みの家賃を含めて)になる。扶養義務者と同居している配偶者の相当な扶養は、 通常、950 マルクから 1100 マルクの間になる。自らの両親に対して扶養の負担をする場合 には、配偶者の需要は少なくとも 1750 マルク(600 マルクの暖房費込みの家賃を含めて) になる。この額から、以下のことを認識することは困難ではない。すなわち、司法金庫が 移転した扶養請求権にもとづいて親族に求償することは実際にはめったにない、というこ とを認識することは困難ではない。通常、扶養を主張するのに必要な費用は、そのような 場合、入金の可能性とは関係がない。 しかしながら個々のケースにおいて、扶養義務者の側からの任意の支払いによって履行 されない扶養請求権が存在する場合、民法 1836 条eに基づく求償名義はこれらの人々に対 しても実行可能である。求償名義は、民事訴訟法 828 条2項23の代わりとしての司法執行令 1条1項4号bに基づく執行可能な名義である。民事訴訟法 850 条b24に基づく差押に対す 連邦社会扶助法 91 条:① 社会扶助の運営者は、90 条に基づく請求権の移転を、民 法に基づく扶養義務者に対して、扶助受給者が 84 条 2 項と 86 条を除いた第 4 章の規定に 従ってその所得と財産を用いなければならない範囲においてのみ、生じさせることができ る。 (以下略) 23 民事訴訟法 828 条:② 債務者が内国において普通裁判籍を有する地の区裁判所、普 通裁判籍がないときは第 23 条に従って債務者に対して訴えを提起することのできる区裁判 所が、執行裁判所として管轄する。 24 民事訴訟法 850 条b:① 次の権利も差し押さえることができない。 1.身体または健康の侵害につき支払を受くべき定期金 22 55 る執行保護は、国庫に対しては有効ではない。 《以上、大場》 2.特別な生活状態での扶助の場合の控除 所得控除は、1999 年 6 月 30 日まで毎月 1552DM で認められており、場合によって宿舎 の費用(賃料)が加算されている。これらの控除は、被世話人が連邦社会扶助法第 81 条Ⅰ の個々の要件を満たすかどうかに関係なく認められている。しかしながら、その要件が満 たされる場合でも、被世話人は連邦社会扶助法第 81 条Ⅱに基づいて二倍に達する控除を要 求することができない。なぜなら、民法第 1836 条 c において連邦社会扶助法第 81 条Ⅱか らの準用がないからである。賃料と営業費と並んで、暖房費も宿舎の費用に算入するかど うかということは、社会扶助法上の学説では議論の行われているところである。家庭の電 気代は通説によれば宿舎の費用に算入されない。 被世話人のための控除(連邦社会扶助法第 81 条Ⅰ):1573DM 配偶者のための控除(連邦社会扶助法第 79 条Ⅰ3 号):438DM (生計のために 547DM の援助という社会扶助基本額の 80%が基礎として使用されている。 ノルトライン=ヴェストファ−レンからの援助が、1999 年 7 月 1 日から 2000 年 6 月 30 日までという状況で、使用されていた。 ) 合計:2711DM 前述の事例において、それは以下のようなことを意味する。すなわち、被世話人が自ら 世話人の履行に支払わなければならないかどうか、という問題においては、2711DM の境 界を超える金額だけが考慮される。被世話人の配偶者の所得(前掲の所得範囲において) が算入されるとはいえ、世話人報酬や費用償還のための支払いは、被世話人自らの所得か らなされなくてはならない。 被世話人もまた一方において配偶者に(民法 1360ff.,1569ff.)、他方において直系の親族、 とりわけ自分の子供(民法 1601ff.)に対して、扶養上の義務を負うことがありうる。家族 手当として被世話人の控除に加算される限り、配偶者(及び子供)に対する扶養義務が連 邦社会扶助法第 79 条Ⅰが準用される連邦社会扶助法第 81 条Ⅰにおいて考慮される。これ らの控除(現在 N R Wにおいて配偶者のため毎月 43 2 D M )はそれでも扶養法上に承認される金 額を著しく下回っている。それゆえ、 「デュッセルドルフの表」B欄に基づき、配偶者に少 なくとも現時点で 9 5 0 D Mの最低扶養料が認められなければならないかが調査されるべきだ ろう。それによって、最低扶養料が適度に制限されなければならない。同じことは、通常 2.法律上の規定に基づく扶養定期金並びにその種の債権を喪失させたために支払われる べき定期金 3.債務者が財団から又はその他第三者の扶助と慈恵に基づいて又は隠居分若しくは隠居 契約に基づいて受ける継続的収入 4.専ら又は重要な部分において扶助の目的のためにあたえられる寡婦金庫、孤児金庫、 救助金庫または疾病金庫からの給与、更に保険金額が 1500 ドイツマルクを超えない場 合において保険契約者の死亡のみについて締結された生命保険に基づく請求権 (以下略) 56 の事例における連邦社会扶助法第 79 条Ⅰにおける受給が引き受けされるような、社会扶助 の基本額より高い位置にある子供扶養にも認められる。 離婚によって、あるいは配偶者の別居において、家庭裁判所または公証証書を通して、 事実上に支払われている確定した扶養料が被世話人の所得から控除されなければならない。 社会扶助法においても、このような法律上の執行力のある扶養義務が考慮されなければな らない。世話人報酬の場合に、被世話人の扶養請求権を所得に加算するが、扶養義務を所 得に控除しない、といったようなことは不当に思われる。 3.連邦社会扶助法第 8 4条に基づく裁量判断 所得の負担とすることに際して考慮されなくてはならないのが、所得の投入は、連邦社 会扶助法第 84 条 1 項25に基づいてのみなされるということである。この規定に基づいて、 所得のうち所得限度を超えた部分は、社会扶助法上重要な需要がある資金の調達につき『相 当程度負担を要求されるべき』である。その結果、所得限度を超えた状態の所得全部が引 き当てとされるわけではなく、社会扶助担当者の裁量判断によって定められた部分(場合 によっては全額ということもありうる)だけが引き当てとされるのである。このことは、 今や民法第 1836 条 c に基づく無資力の判定に際しても適用される。したがって、さらにこ の点に関して、 (後見裁判所によって)どの程度被世話人に所得をもってあてるよう要求す べきかについての裁量決定がなされる。 これに関して、世話と同時に生計の縮小を受け入れるよう被世話人に要求されえないと いう既にこれまでに言及した見解が斟酌されうる。その規定の意味および目標も裁量の枠 内で考慮されなくてはならない。社会扶助法との重要な相違の一つは、以下の点にある。 すなわち、社会扶助は原則的に貧困を回避するために役立ち、同時に特別扶助(die Hilfe in besonderen Lebebslagen)を行う場合に扶助を求める者には原則として生活遂行を節減す るようギリギリまで要求されうるのに対して、世話の場合にはこれとは異なっているであ ろう。 その他の支払い義務に関する考慮、とりわけ民法上の債務の償却は、社会扶助法におい て原則的に定められていない。その理由は、社会扶助法の原則的理解によると、貧しくな い第三者自身を保護することは社会扶助法の任務ではないからである。唯一の例外として は、連邦社会扶助法第 15 条 a26に基づく使用賃貸借債務の償却がある。その理由は、仮に 連邦社会扶助法§84[所得限度を超える所得の投入] 考慮されるべき所得が基準となる所得限度を超える限りで、資金の調達が相当程度要 求されるものとする。どの程度が相当であるかを調査する際に、とりわけ、需要の性質、 必要とする費用の期間と額、および扶助を求めるものとその扶養請求権者たる親族の特 別な負担が考慮されるものとする。 26 連邦社会扶助法§15a[特別な事案の生活扶助] (1) 前条までに掲げた規定に基づくと扶助が付与されえない事案で、居住(Unterkunft) を確保し、または相当な窮状を除去するために正当である場合には、生活扶助が与えら 25 (1) 57 このような支払い義務を引き受けることによって直接に第三者(使用賃貸人)が利益を得、 扶助受給者が間接にしか利益を得ないのだとしても、住居の維持が保護に値する目標とさ れているからである。 世話法もやはりまた、原則的に第三者の利益のために働くものではないので、このこと が直ちに世話人の報酬の場合にも転用されるとも考えられる。しかしながらこのような考 えが追求され続ける場合に、世話人の任務との矛盾が明らかとなる。世話人に任務範囲と して財産配慮が委任されている場合にはまさしく、被世話人の債務を解消することは優先 的な任務である。したがって世話人によって手配された債務の償却が、正式の償却計画書 の枠内で世話人の報酬に関してまったく考慮していない場合に、世話人は事情によっては 自分の任務をもはや計画通りに処理できないのではないだろうか。というのは、世話人の 任務が、分割債務償却と合わせて裁判所により定められた分割払い金を差し引くと、被世 話人の生計をもはや保障しえないからである。 実際的な解決策としては、たとえば債権者と取り決められ、実際に給付されている(も ちろん民事訴訟法第 850 条 c に基づいて差し押さえうる額内である)限りで分割払いでの 償却を、少なくとも部分的に考慮すべきである。この点に関して民法第 1836 条 c によって 定められている連邦社会扶助法第 84 条の適用は、所得限度を超えている額を部分的にしか 利用しないことを可能にする可能性を示している。 被世話人は、使用賃貸借の賃料や場合によっては扶養義務、債務の償却、分割払い金を 差し引いて民法第 1836 条 c によって少なくとも民事訴訟法第 850 条 c に基づいて差し押さ えしえない額、すなわち現時点では月額 1,220DM を手元に留めておくべきである。このこ とは、過去にいくつかの裁判所によって提案された算定額にも当てはまる。学説ではさら に、差押え控除額に加えて月額約 100DM の追加額を承認することも実際上考慮されている。 《以上、黒田》 4.基準時 どの時点が無資力にとって重要であるかという問題に関しては、以下のように識別され るべきである。 民法第 1836 条による報酬の許可に際して、無資力の調査という問題について基準となる のは、事実審が当該報酬の問題に関して決定をした時点であるので、その間に生じた財産 れる。妥当かつ必要であり、行わなければ住まいを失うおそれがある場合には、生活扶 助がなされなくてはならない。扶助を求める者に扶助費を交付したのでは目的に合致し た利用が確保されない場合に、第一文による扶助費は賃貸人またはその他の受給資格を 有する者に支払われるものとする。そのような場合には、扶助を求める者に対して文書 でその旨を通知しなくてはならない。これに関して金銭給付は補助金または貸付として 付与されうる。 58 の減少が、本来まだ十分に財産があったときであっても無資力へと至ることもある。 対立する見解によると無資力の判定について報酬申立ての時点が問題となるが、この見 解は受け入れえない。裁判所が世話人の申立てに関して決定するまでに何ヶ月も経つこと もある。申立人はこれについて最小限の影響のみ与える。この時点で被世話人の所得およ び財産の状態は著しく変わっていることもある。しかしながら申立てから裁判所の決定ま での間に、後で(裁判所の決定後)引き出すために財産がある場合にその財産をとってお く可能性を世話人は有してない。というのは、世話人はそれどころかその財産を必要とあ らば被世話人の生計にあて、または社会局(Sozialamt)に支払わなくてはならないのであ る。それによって報酬申立ての時点で【資産の】状態を実際に顧慮するとした場合に、裁 判所がもはやまったくない財産から報酬を与えるよう認めることもありうる。それゆえ世 話人は固有の利益において目下の報酬申立てに際して、財産保障額が下回ったらすぐに、 後見裁判所に報告すべきである。 被世話人が既に死亡している場合にも、死亡時の財産状態を考慮するにしても、やはり また事実を決定した時点が基準となる。遺産不十分の抗弁が、考慮されなくてはならない。 《以上、大場》 5.国庫の求償とその存続期間 国庫が費用償還または世話人に報酬を支払った場合に、民法第 1836 条 e にもとづき国家 は、無資力の限度を超える(しかし世話人の請求権を完全に弁済するには額が足りない) 収入または財産を有している被世話人に、これらの額の返還を求めうる。立法者はこの考 えを、被世話人による消費貸借および弁済を有効とみなした数少ない判例から明確に受け 継いでいた。 求償請求権は、被世話人が後になって財産を取得した場合にも発生する。被世話人の死 亡後には国庫は遺産を拠りどころにしうる。本人の財産および所得を拠りどころにする国 庫の請求権は、10 年間存続する。その期間は、世話人への支払いの時点をもって開始する。 以上のことが意味しているのは、当初は資力がなかったものの後に(世話が終了した後で も)たとえば相続によって財産を取得した被世話人が、このような取得した財産を、財産 保障限度を超える限りのみで国庫への支払いにあてなくてはならないということである。 裁判所は非訟事件手続法第 56 条 g 第 3 項にもとづき国庫から支払われるべき報酬および費 用償還についての決定を行うと同時に、本人がどの程度の金額を国庫へ返済しなくてはな らないかも決定しうる。 この枠内で裁判所がなしうるのは、 − 本人に一回きりの支払いを要請すること、たとえば貯金残高のうちで『最低保障額』 を超える部分を支払うよう要請すること、または − 本人に、月払いや定率払いのような定期的な支払いを要請すること、たとえば本人が 59 控除額を超える所得を有する場合の支払い要請、である。 裁判所は、本人によって支払われるべき額を、後のある時点でも決定しうる。このこと がとりわけ考慮されることとなるのは、当初は本人に資産がないことを前提としていたも のの、後になってこのことが誤りであると判明したか、または本人が後に支払いを可能に させる収入を自由に処分できるようになったか、もしくは本人が後に財産を取得した場合 である。 この規定は社会復帰に敵対するものである。発病の時点で世話人を必要とする心的な障 害ある人間は、処置やリハビリが効果を上げた際には 10 年後になってもまだ世話人の報酬 を返済しなくてはならないのである。 それについて世話法改正法(BtÄ ndG)の草案では以下のように書かれていた。すなわち、 『被後見人に対する求償の可能性を全ての場合に利用すべき義務を草案は負わせていない。 むしろ、草案は非訟事件手続法-E 第 56 条gにおいて裁判所に、一定の場合に返済について の決定を断念しうる権限を与えている。草案が確定しているのは、国庫の手に移った請求 権の行使について、獲得できる収入と釣り合いがとれない支出は押し進められないという ことである。さらにこの規定の背後に問題なく現れ出るのは、無資力を確認するのが、国 庫による費用の引き受けが決定されるべき時点だということである。』 裁判所は、立法者の解釈にもとづいて求償することで、できる限り狭い範囲で返済義務 を負わせるべきである。さらにこのことは、国庫の利益を代表することが裁判所の職務で はないので、有意義である。さらに被世話人の財産に求償することの処理について政府草 案は 16 頁で以下のように述べている。すなわち、 『被後見人や被世話人に対する国庫の加 入義務並びに求償請求権の処理は、草案によって、本人のために無資力を採用するか、あ るいは要件がこれに関する裁判所の自由な心証にもとづいてみたされる場合に目下の所得 への求償を度外視する裁判所の可能性により、容易にされている。したがって草案は、疑 わしくても調査に伴う支出が実現できる収益と適切につり合わないような詳細な調査を行 うより国庫にとって小さな損害については甘受することが本質的に経済的であると強調し ている実務を頼みとしている。 』 裁判所がこのことを肝に銘じ、自らに(および他の手続き参加者に)不必要な業務を行 わせないことが望まれる。本人の財産についての調査を行うべきかどうかが問題となった 際に、償還請求権の行使に関して管轄権を有する司法補助官は、自分と自分の下で働く職 員がどれほどの労働時間を要するかを念頭に置くべきである。調査手続きは通常、被世話 人が比較的多くの財産を取得しそうな際に一般には被世話人に属しているものとされない のだからなおのこと、問題とならないであろう。同じことは、満 18 歳になってはじめて職 業訓練に入ることが許されるそれまでの被後見人にも適用される。 《以上、黒田》 60 Ⅳ.相続人による分担 当事者が死亡した場合、遺産からの支払がいつどの程度なされるべきかということを、 裁判所は非訟事件手続法 56 条g3項27に従って決定する。通常、遺産に対する国庫の請求 権については、一回限りの金額だけが問題になるであろう。しかし、第三者による反復的 な給付、 例えば、賃料収入または利息が遺産に属する場合には、国庫に対する定期的な償還 も考えられる。 求償請求権の裁判所による確定は、当然、裁判所が当事者の財産の額、場合によっては 遺産の額を知っていることを前提とする。相続人は、裁判所に対してその要請に基づいて 遺産目録を提出する義務を負う。 死亡した被世話人の相続人は、−従来の判例とは異なり−相続した被世話人の財産額の 範囲においてのみ責任を負う。その上、相続人は、従来社会局に対してのみ妥当していた 社会扶助法上においても控除(民法 1836 条e28、連邦社会扶助法 92 条c)をする権利が 認められている。この控除は主として、相続人がさしあたり葬儀の費用をその控除額より 負担することができる、という目的を有する。その控除額は今のところ(1999 年7月1日 現在)3,146 マルクとなっている。ただし、死者と同居しかつ単に一時的にではなく死者の 看護をしていた親族に対しては、その控除額は 30,000 マルクとなる。相続人による分担の 際にも、これらの人々の特別で個人的な過酷な事情を考慮に入れることは可能である。 《以上、大場》 Ⅴ.訴訟手続上の補佐人の報酬 訴訟手続上の補佐人における報酬と費用償還は、1999 年1月1日から、常に国庫から支 払われる。それゆえ、当事者の経済的な関係にもかかわらず、BVormVG1条1項における 猶予額が常に基準となる。弁護士による訴訟手続上の補佐人としての活動は、連邦弁護士 報酬規制法1条29の新しい定式によると、連邦弁護士報酬規制法に基づく弁護士活動以上に 非訟事件手続法 56 条g3項:被後見人の死亡後、裁判所は、被後見人の相続人が民法 1836 条eに従って国庫に弁済しなければならない支払の額と時期について決定する。相続 人は、裁判所に対して、遺産の状態についての情報を与える義務を負う。相続人は、裁判 所に対して、その要求に応じて、遺産に属する物の目録を提出し、かつ、自らが誠心誠意 可能な限り完全に状態を申告することを保証しなければならない。 28 民法 1836 条e:①国庫が後見人または後見監督人に対して弁済する場合に限り、後見 人または後見監督人の被後見人に対する請求権は国庫に移転する。移転した請求権は、国庫 が費用または報酬を支払った年の満了時から 10 年で消滅する。被後見人の死亡後、 その相 続人は相続開始の時点で存在する相続財産の価値においてのみ責任を負う。連邦社会扶助 1836 条cは相続人に適用されない。 法 92 条c3・4項が準用され、 (以下略) 29 連邦弁護士報酬規制法1条:①弁護士の職業に対する弁護士の報酬(手数料および費 用)は、 この法律に従って査定される。弁護士団体はこの法律の意味における弁護士と同様 27 61 算定されてはならない。ただし新費用法によると、当事者は今後、訴訟手続上の補佐人の 活動の費用を裁判費用の一部として考慮することができるようになる。後見裁判所自体の 活動に対する後見裁判所の手数料に妥当するように、この場合には、費用法 92 条30に基づ く控除ではなく民法 1836 条c31に基づく上記の控除が考慮されることになる。しかしなが らここでは、当事者への求償期間はその他の世話人の報酬におけるよりも短い。つまり、 費 32 用法 17 条 に従って4年である。この規定は、自由の剥奪における裁判手続についての法 律に従って、訴訟手続上の補佐人に対しても適用される。 《以上、黒田》 である。 (以下略) 30 費用法 92 条:①未成年者に対する、個々の法的な行為に制限されない後見、 世話、 並び 50000 に保護の際には、債務の控除後の要保護者の財産が マルク以上である場合にのみ、 費用は徴収される。連邦社会扶助法 88 条2項7号において挙げられている財産上の価値は 算入されない。活動が行われた暦年それぞれに対して、純財産が1文に挙げられている財 産上の価値を上回っている分において、活動が行われた 10000 マルクそれぞれにつき 10 マ ルクの手数料が徴収される。保護措置が開始された年とその翌年に対しては、年手数料だ けが徴収される。手数料の弁済期が到来するのは、最初は保護措置の命令がなされた時、 そ の後はそのつど暦年の開始時である。 (以下略) 31 民法 1836 条c:被後見人は、 1.その所得が、別居しているのではないその配偶者の所得と合わせて、連邦社会扶助法 76 79 条1・3項、 81 条1項、 82 条によって基準となる特別な生活状態における扶助に 条、 関する所得限度を超えている場合に限り、連邦社会扶助法 84 条に基づいて自らの所得 を充てなければならない。 (以下略) 32 費用法 17 条:①費用の支払を求める請求権は、請求権の弁済期が到来した暦年の満了 後、 4年で時効になる。 (以下略) 62 7.国庫の求償 Regress der Staatskasse コブレンツ地方裁判所 2 T 187/00 2000 年 6 月 21 日付決定 関連条文: 民法第 1836c 条、1836e 条 〈要旨〉 国庫の求償請求権は、被世話人の給付能力を前提としている。これに関して、介護保険の 給付は、所得として考慮されるべきではないが、通常の費用は、負担として考慮されるべ きである(編集者の要約) 。 〈理由〉 被世話人の給付能力が欠けていることにより、求償請求権は発生しない。 裁判所は、被世話人が民法第 1836c 条1、1836e 条2を準用している 1908i 条31 項により 国庫へ給付しなくてはならない支払金の額と時機を定める(非訟事件手続法第 56 条 1 項 2 文と関係する 69e 条) 。しかしながら、求償は、民法第 1836c 条にもとづいて定められるべ き被世話人の給付能力を前提としている() 。被世話人の所得が連邦社会扶助法第 76 条4・ 79 条51 項・同条 3 項・81 条61 項・82 条7にもとづいて個別の生活状況に応じた支援の基準 1 2 3 4 5 6 7 民法第 1836c 条[計算に入れられるべき収入及び財産] 民法第 1836e 条[法律による請求権移転] 民法第 1908i 条[未成年者後見の規定の準用] 連邦社会扶助法第 76 条[所得の概念] ① 本法の意味での所得に属するのは、金銭収入及び金銭的価値を有する収入のすべてで ある。ただし、本法にもとづく給付および連邦戦争犠牲者援護法にもとづく基本年金は 除かれる。 ② 以下のものは、所得から除外される。 1. 当該所得に関して納付された諸税。 2. 失業保険を含めた社会保険の義務分担金。 3. 公的な保険や民間の保険、類似の制度の分担金。ただし、これらの分担金が、法 律によって定められているか、または根拠と金額が相当である限りで除外される。 4. 所得を得るために必要であった経費 ③ 連邦政府は、連邦参議院の賛成を得た条例によって、所得の―特に、農業経営収入や 林業経営収入、企業経営収入、および自営業収入の―算定に関する委細を定めうる。 連邦社会扶助法第 79 条[一般的な所得限度] 連邦社会扶助法第 81 条[特別な所得限度] 連邦社会扶助法第 82 条(廃止) 63 となる所得限度を超えるのであれば、民法第 1836c 条 1 号にもとづき、被世話人は連邦社 会扶助法第 84 条8によって自分の所得を世話の費用に充当しなくてはならない。 被世話人が国庫に支払わなくてはならない支払金を決定するために、裁判所は以下のこ とを確定しなくてはならない(この点については Deinhalt, FamRZ 1999,1187 頁以下も参 照) 。 :すなわち、 1.被世話人にどの程度の所得があるか、 2.被世話人の所得が連邦社会扶助法第 81 条91 項・82 条10にしたがって基準となる所得限 度を超えているかどうか、 および、場合によっては、 3.被世話人の所得のうちで所得限度を超える部分について世話の費用に充当することを、 どの程度まで被世話人に要求しうるか、 ということを確定しなくてはならないのである。 ここで、連邦社会扶助法第 76 条11の意味での所得は、以下の給付を除いた金銭収入及び 金銭的価値を有する収入のすべてを含む。ここで除かれるのは、連邦社会扶助法にもとづ く給付、連邦戦争犠牲者援護法にもとづく基本年金、連邦補償法にもとづいて生命・身体・ 健康に損害を受けた場合に連邦戦争犠牲者援護法の基本年金に相応する額まで与えられる 年金や手当、である。1976 年 11 月 23 日付の変更令(民法 l.Ⅰ3234 頁)の文言における 1962 年 11 月 28 日付の連邦社会扶助法第 76 条の施行令 1 条(民法 l.Ⅰ692 頁)によると、 すべての収入は、その出所や法的性質に関係なく、さらに所得税法で言うところの所得た る性質を有するものであるかどうか、や納税義務を負うものであるかどうかについても関 係なく、連邦社会扶助法第 76 条に該当するのである(Deinhalt,上述の箇所;連邦行政裁判 所 NJW 1999,3210 頁) 。 (中略) 《以上、黒田》 連邦社会扶助法第 84 条[所得が所得限度を超えた場合の負担金] 連邦社会扶助法第 81 条[特別な所得限度] 10 連邦社会扶助法第 82 条(廃止) 11 連邦社会扶助法第 76 条[所得の概念] ① 本法の意味での所得に属するのは、金銭収入及び金銭的価値を有する収入のすべてで ある。ただし、本法にもとづく給付および連邦戦争犠牲者援護法にもとづく基本年金は 除かれる。 ② 以下のものは、所得から除外される。 1. 当該所得に関して納付された諸税。 2. 失業保険を含めた社会保険の義務分担金。 3. 公的な保険や民間の保険、類似の制度の分担金。ただし、これらの分担金が、法 律によって定められているか、または根拠と金額が相当である限りで除外される。 4. 所得を得るために必要であった経費 ③ 連邦政府は、連邦参議院の賛成を得た条例によって、所得の―特に、農業経営収入や 林業経営収入、企業経営収入、および自営業収入の―算定に関する委細を定めうる。 8 9 64 介護保険の給付金について連邦社会扶助法第 76 条の意味での所得とみなされることを前 提として、介護保険の支払金が、介護保険の給付義務に基づいて直接に被保険者の役に立 つ収入であると仮定するならば、実際には、264.84DM 相当の、連邦社会扶助法第 84 条12に よって世話の費用に充当される残高が発生する。その点について、関係者 2)(管区検査役) の 2000 年 2 月 25 日付抗告文書における適切な計算を参照するよう指示する。 当部の解釈によると、介護保険の給付を連邦社会扶助法第 76 条の意味での所得として位 置付けることは、正しくない。 社会法典第 11 編第 37 条13にもとづく在宅介護給付金を除いて、被世話人への介護保険か らの支払いがまったくないことがまず考慮されるべきである。 社会法典 第 11 編第 36 条14に よる在宅介護も、一時入所介護(社会法典第 11 編第 41 条15)や短期入所介護(社会法典第 11 編第 42 条16) 、さらにはとりわけ本件で目下の社会法典第 11 編第 43 条17による完全入 所介護も、いわゆる現物給付としてもたらされる。このことはとりわけ、巡回の介護サー ビス従事者による介護や短期入所・一時入所での所轄の介護金庫と相当な供給契約を締結 した養護施設職員による介護が直接にもたらされるということを意味している。それで、 支払いは、介護金庫から当該介護施設へしかなされず、やはり介護を必要としている本人 へはなされないのである。しかしながらそれと並んでとりわけ、社会法典第 11 編第 13 条185 項 1 文において言われていることを注意すべきである。すなわち、 『介護保険の給付は、他 の収入次第で付与される社会保障の給付に際して、所得として考慮されないままである』。 さらに、―介護を必要とする者へ支払われる在宅介護支給金を含めて―給付のすべては、 連邦社会扶助法においても所得とみなされない。介護保険の支払金が連邦社会扶助法第 76 条の意味での所得であるとしたバイエルン高等裁判所の解釈は、当部の解釈によると正し くない。 《以上、大場》 けれども、在宅介護支給金の位置づけに関する上述の争いは、本事案においては重要でな い。というのは、仮に介護保険の給付が所得として考慮されるものであるとすると、連邦 社会扶助法第 84 条 1 項192 文の規定が遵守されるべきだからである。この規定にしたがっ 連邦社会扶助法第 84 条[所得が所得限度を超えた場合の負担金] 社会法典第 11 編第 37 条[自らなす介護補助に対する在宅介護支給金] 14 社会法典第 11 編第 36 条[現物的介護給付] 15 社会法典第 11 編第 41 条[昼間入所介護および夜間入所介護] 16 社会法典第 11 編第 42 条[短期入所介護] 17 社会法典第 11 編第 43 条[給付の内容] 18 社会法典第 11 編第 13 条[介護保険の給付と他の社会保障給付との関係] 19 連邦社会扶助法第 84 条[所得が所得限度を超えた場合の負担金] ① 考慮されるべき所得が基準となる所得限度を超えるのであれば、資金の調達が相当な 範囲で要求されなくてはならない。どの程度が相当であるのかを審査するにあたっては、 特に、必要性や必要な出費の期間と金額、並びに援助を求めている者およびその者が扶 養を受ける権利を有している親族の特別な負担が考慮されなくてはならない。 12 13 65 て、個々の事案の状況に応じてどの程度までの残高を利用しうるものであるかが審査され るべきである。それに関して、本人の生活遂行を過度に制限する必要がないように、どの 費用を本人がなお支払わなくてはならないか、およびどの程度までの残高がいわば純粋な 小遣い銭として顧慮されうるか、を特に考慮しなくてはならない(これに関しても BayObLG BtPrax 2000,83 頁/85 頁を参照) 。 この点に関して、世話人は、本人が平均して月に次のような追加の出費をしていることを 示さなくてはならない。 :すなわち、 −月に 2 回の理髪代が約 100.00DM −月に 1 回のペディキュアとマニキュア代が約 50.00DM −月に 2 回の花束代が約 50.00DM −電話の基本料金が約 10.00DM −個別的な身体の衛生用品、衣類、嗜好品の購入代 当部がぜいたくするための出費とみなしていない前記のこのような出費を考慮するにあた って、関係者 2)によって算出された残額は、月々264.84DM 相当につき純粋な小遣い銭と して評価され、したがって所得算定の際に考えに入れられてはならない。 したがって、関係者 2)の即時抗告は、既に棄却された。 本件の根本的な重要性を根拠に、介護保険給付を連邦社会扶助法第 76 条の意味での所得と して評価することの問題に関連して、再抗告が許容される。 《以上、黒田》 66 8.刑事手続への世話人の参加 Die Teilnahme von Betreutern an Strafverfahren オリヴァー・エルツァー(ベルリン区裁判所裁判官・法学博士) Dr. Oliver Elzer 民法第 1902 条1の規定によれば、世話人は自らの任務範囲において、裁判上および裁判 外で被世話人を代理する。この規定が被世話人の裁判上の代理に関係する限り、民事訴訟 法への展望をともなってこのことは生じる。被世話人が民事訴訟法 51 条 1 項2の意味で訴 訟無能力、つまり行為無能力である場合、民事裁判所における世話人による被世話人の代 理は明白である。訴え、または訴えられるためには、法律上、訴訟無能力者は代理される 必要がある。行為能力のある被世話人がたしかに自ら訴訟手続を行うことができる。しか し実体法において、世話人の代理権と被世話人の行為能力が競合する間に、民事訴訟法第 53 条3により、世話人が被世話人のために訴訟を行い、あるいはその代わりに訴訟手続を開 始する場合には、裁判所と訴訟の相手方のために、行為能力のある被世話人も訴訟無能力 となる。この明白な条文とは対照的に、刑事手続においてどのような地位が世話人に与え られるべきかということに関しては、はっきりしない。この問題が次の考察の対象である。 その際、世話人は刑事手続において、少なくともいまだに法律による際立った機能を持っ ていない、ということは確かである。しかし世話人の地位についての問題は、これまでに 唯一前面に出ていた問題である世話人の参加に基づく報酬を超えるものである。 Ⅰ. 正式な参加 被世話人に対して提起された刑事訴訟手続への世話人の正式な参加は、一方において、 世話人が被世話人の法定代理人として手続に参加する場合、他方において、裁判所が世話 人の意見を証人として聞く場合に、考えられる。 1) 法定代理人 1 2 3 民法第 1902 条[世話人の代理権] 世話人は、その職務範囲内において、裁判上及び裁判外で、被世話人を代理する。 民事訴訟法第 51 条[訴訟能力、法定代理、訴訟追行] ① 裁判所において行為をなす当事者の能力、他の者による訴訟能力なき当事者の代 理(法定代理人)及び訴訟追行のための特別授権の必要性は、以下数条に別段の定めが ない限り民法の規定により定まる。 民事訴訟法第 53 条[世話及び監護に付せられた場合の訴訟無能力] 訴訟において訴訟能力者が世話人(Betreuer)又は監護人(Pfleger)によって代理される とき、当該無能力者は、その訴訟につき訴訟能力なき者と同一の地位を有する。 67 世話人が裁判所によって刑事訴訟法 149 条 41項 1文に基づいて被世話人の補佐人 (Beistand)として認められた場合、世話人は、正式に固有の権利を与えられた上で、そ の被世話人に対して提起された刑事訴訟手続に参加する。その許可は、二つの要件と結び つくものである。まず、被世話人ではなくて世話人が、管轄権を有する刑事裁判所に申し 立てをすることを要する。かつ、申し立てをする世話人が被世話人の法定代理人とみなさ れうることを要する。誰が刑事訴訟法 149 条の意味で被世話人の法定代理人とみなされる かについては、刑事訴訟法からは明らかではない。それゆえ代理人は、民法の規定に従っ て定められる。民法によれば、成年者の法定代理人は、その世話人である。しかし世話人 は、民法 1896 条 1 項 1 文5と 1902 条によると、その任務の範囲内においてのみ被世話人を 代理するので、さらに、いったいいつの時点で任務の範囲に刑事裁判所での代理も含まれ るに至ったのか、ということが明らかにされるべきである。その際、あらゆる任務を対象 として任命されているか、もしくは、明示的に刑事訴訟手続における代理を任務の対象と して任命されている世話人と、その任務の範囲がそのような刑事訴訟手続における代理を 明示的に含んでいない世話人とは、区別されるべきである。 a) 世話人の任務の範囲としての刑事訴訟手続における代理 世話人が、あらゆる業務を対象として任命されているか、もしくは、特別に明示的に刑 事訴訟手続における代理を任務の範囲として任命されている場合、その世話人は、刑事訴 訟法 149 条 1 項、2 項の意味で、被世話人の法定代理人とみなされる。刑事訴訟手続にお けるその法定代理権も、この場合、直接、民法 1902 条から導かれる。このことは、訴訟代 理の特別な指定(Zuweisung)を必要としない。 b) その他の世話人 その任務の範囲が、明示的に被世話人の刑事訴訟手続に関する代理に及んでいない世話 人に関しては、いったい何がその世話人の主たる範囲とみなされるのか、という問題に答 えることがより難しい。一部の世話につき権限を有する世話人を任命することが、刑事訴 訟手続に関する代理を含むのかどうかということは、しばしば不確かであろう。世話法上 の代理権の範囲は、考えられる多数の事例ゆえに、抽象的ではなく、具体的な刑事訴訟手 刑事訴訟法第 149 条[補佐人の許可] ① 被告人の配偶者は、公判手続において補佐人となることを許し、その求めにより、 陳述を聞かなければならない。公判手続の日時及び場所は、適時に、補佐人に通知さ れなければならない。 ① 被告人の法定代理人についても、同じである。 ② 事前手続においては、このような補佐人の許可は、裁判官の裁量による。 5 民法第 1896 条[世話の要件、必要性及び補充性の原則、世話人の職務の範囲] ① 成年者が、精神病又は身体、知能若しくは精神障害のために、自己の事務の全部又 は一部を処理することができないときは、後見裁判所は、本人の申立て又は職権によ り、そのもののために世話人を選任する。 (以下略) 4 68 続に関連してのみ、有効に調査されうる。この難しさにもかかわらず、それでも、刑事訴 訟手続における世話人の法定代理権を承認する根拠を求めるのならば、特に、世話を受け ている犯罪者の、犯罪と病気もしくは障害に注目すべきである。 一方で、犯罪は世話ととても密接な関係を有するので、刑事訴訟手続への世話人の参加 は、世話人の義務に属し、かつ、民法 1896、1902 条に基づいて認められた世話人の代理権 によって裏付けられる。このような犯罪の例として、以下のものが挙げられる。つまり、 アルコールで荒れている被世話人による傷害罪とその他の酩酊中の犯罪行為(健康に関す る任務の範囲) 、麻薬に依存している被世話人による所有権に対する罪(財産に関する任務 の範囲) 、もしくは、妄想症で精神分裂症の被世話人による器物損壊罪(健康もしくは財産 に関する任務の範囲)である。ひどく酔っている被世話人が、理由なく見知らぬ通行人を 殴ったり、精神病の被世話人が、電話ボックスにまるで見られているような気がしてその 電話ボックスを壊したりしたのならば、被世話人の行為とその病気もしくは障害は、まさ に分離されえないものである。 他方で、世話を受けている行為者の病気もしくは障害によって、犯罪と世話の結びつき が生じることもある。例えば、被世話人が精神病で、それゆえに取引上の出来事に関して 無力で無知である場合に、この性質が後に行為に反映するときには、世話との関係が認識 されるべきである。被世話人が犯罪の共犯者として雇われていて、その危険と意義を被世 話人が理解していないか、もしくは、被世話人が犯罪の危険を一人で負担しているのに、 それに反して他人がその犯罪から利益を引き出している場合には、世話との関係が承認さ れるべきである。さらに、未熟で影響を受けやすい被世話人の保護に関しての根拠は、そ の行為無能力もしくは同意の無能力でありうる。同様に、後見裁判所によって同意権留保 という決定が下され、かつ、被世話人が財産罪を理由として訴追される場合には、無能力 は情況証拠である。しかし、痴呆の障害(例えばアルツハイマー)を理由とした世話の際 には、行為者個人に行為の原因が推測されるのは、しばしば当然である。 世話人に委任された任務の範囲内でのその世話人の参加が上述の基準に従って必要不可 欠であって、それゆえに、世話人が刑事訴訟手続における被世話人の法定代理人とみなさ れるかどうかという問題は、まず、世話人自身によって答えられるべきである。必要な場 合には刑事訴訟手続に自分が参加してもよいのかどうかということを、世話人は吟味しな ければならない。刑事裁判所もしくは世話人のもとで疑いが生じた場合にはじめて、後見 裁判所は事実関係を明らかにする必要がある。そのために後見裁判所は、民法 1908d 条 3 項 1 文に従って、その世話を刑事訴訟手続における代理にまで拡大することができる。た だしこの拡張は、民法 1902 条という明示的な規定のために、本質的に、事態をはっきりさ せる機能を有するであろう。それゆえすでに、民法 1902 条は、後見裁判所が世話人を刑事 訴訟法 149 条の意味での法定代理人とみなすということを、十分に示唆するものでありう る。 c) 効果 69 世話人が刑事訴訟手続きにおいても被世話人の法定代理人とみなされる場合には、世話 人は被世話人の利益のため手続きについての補佐人となることを許可される。さらに世話 人は、被世話人の利益のために上訴しうる。 刑事訴訟法 149 条による補佐人として、世話人は訴訟について特別な法律上根拠ある職 務を有しており、その職務は性質と範囲に応じて民法第 1896 条によって任命された世話人 の職務を超えるものである。連邦通常裁判所は、補佐人が刑事訴訟手続きにおける被告人 の『信頼された当然の代弁者』であると解している。公判において補佐人は、確かに弁護 人としての地位や職務を有しているわけではない。しかしながら補佐人は、その求めに応 じて必然的に陳述を聞かれなくてはならないし、事態について自分の見解をもとに法的・ 事実的観点から事件に対する態度を決定することが許されている。通説によると、補佐人 はそれどころか固有の質問権までも有している。それ以外に、補佐人にはすでに事前手続 きにおいて裁判官による審理に加わることが許されている。以上まとめると、補佐人の任 務は、被世話人を全刑事訴訟手続きにおいて支援することにあるのである。 被告人の法定代理人は、補佐人として認められない場合でさえも、有罪判決を受けた者 から独立して、その者の利益のために上訴するという固有の権利を有している。このこと が重要となりうるのは、被世話人が自分の病気または障害により自己責任で上訴の可能性 を評価する術を心得ない場合である。 《以上、黒田》 d) 中間総括 世話人は、刑事訴訟手続きがとられることについて知った際には速やかに、法定代理人 として訴訟に関して被世話人を支援し得るかどうかを考慮しなくてはならない。この問題 は、被世話人がすでに弁護士によって擁護されている場合であっても生じうる。確かに見 誤られてはならないのは、刑事訴訟手続きにおいて被世話人がやはり主として弁護人によ って代弁されるということである。刑事訴訟法は、世話を受けている犯罪者の利益を主張 することについても弁護人に委ねている。しかしながら被世話人の利益が、信頼された世 話人によって(場合によっては付加的に)代理されるところに見出されることは、きわめ てはっきりしている。すなわち、被世話人は、しばしば自分の病気または障害により訴訟 上の権利を単独では主張しえないかもしくは完全には主張しえないのである。そのうえ、 世話人が被世話人と特別に親密であることにより被世話人の状態を理解することが可能と なり、そのような理解は、あまり親密でない平均的な弁護人の認識可能性の範囲内では多 くの場合になされないままであるに違いないのである。結局のところ世話人の参加は、刑 事訴訟手続きにおいても、世話法が目指すところである被世話人と世話人の間の信頼関係 を強めるのである。第三者との争いにおいての調停もこのことに含まれているのである。 70 2) 証人 裁判所が世話人を証人として召喚する場合には、世話人は刑事訴訟手続きに必ず参加し なくてはならない。この種の召喚は十分に考えられることである。この点につき見落とさ れてはならないのは、刑事訴訟手続きが被世話人の病気や障害と緊密な関連を有しうると いうことである。世話の事案において裁判所はそれゆえ、世話を受けている犯罪者の行為 や責任にとって本質的な事実を調査するために常に、世話人を証人として召喚することも 考えに入れておかなくてはならない。単に事情について被世話人に尋ねるだけでは、多く の場合に不十分になってしまう。というのは、被世話人はほとんどの場合に自己もしくは 自己のおかれた状況について事実を話す状態になく、むしろ沈黙するか不十分な申告を行 うからである。さらに、世話書類は、被世話人の日常を隅々までカバーするように決めら れていないので、必然的に明確にふれられていない部分がある。世話人だけが、個々の事 案において確実に、かつ、情報提供を受けて、被世話人の実際の生活状況を知らせ、被世 話人の病気や障害について報告することができる。それでもってたとえば被世話人の責任 能力について鑑定書を作成することが不必要になるか、また、刑法典第 56 条による自由刑 を保護観察のために停止するかどうかについての刑事裁判所の予測的判断に影響を与えた りしうるのである。コーブレンツ地方裁判所はこれに関して連邦通常裁判所の決定に従っ て以下のように示した。すなわち、刑事裁判所は刑事訴訟法第 244 条 2 項に従い職権によ る証拠調べを、真実を探求するため、判決にとって重要なあらゆる事実と証拠資料に拡げ なくてはならない、とした。この解明義務は、当然に被告人個人について判定するのに意 味がある事情にも及び、探知を世話人の尋問により世話の基礎となっている事情や被世話 人の現在の状況にまで及ばせることが必要不可欠となる。 《以上、大場》 3) 保安手続き 常に世話と特に近い刑事訴訟法第 413 条以下による保安手続きは、特段の定めなく適用さ れる。刑事訴訟手続きに関する法はそこでもまた世話を受けている犯罪者の利益擁護を− 必然的なのだが−弁護人の手に委ねている。それゆえ世話人による特段の関与やそれ以外 に世話人から聴取することは、予定されていない。とはいうものの、とりわけこの種の手 続きにおいて、刑事訴訟上の収容についての決定の前に世話の原因や事情並びに刑法典第 67 条 b 第 1 項 1 文による執行選択の規定についての問題を理由に証人として世話人から意 見を聴取することがまず考えられる。任務範囲に『健康への配慮』が含まれている世話人 はここで、それ以外に原則として詳細な審査なく刑事訴訟法第 149 条の意味での法定代理 人とみなされうる。 Ⅱ. 刑事訴訟手続きへの世話人の正式でない参加 正式な参加のほかに、世話人が刑事訴訟手続きに正式でなく参加することも考えられる。 71 というのは、裁判所構成法 169 条 1 文によると刑事裁判所での審理は、判決や決定の言い 渡しを含めて公開とされているからである。それゆえ被世話人が自分の世話人に付き添わ れうる場合として、その世話人が法定代理人でなかったり証人としてふさわしいとされな かったりする場合もある。世話人が自分の被世話人にこのような支援を与えるべきである かどうかは確かに判断しづらい。世話人は、その限りであるジレンマに陥っている。すな わち、一方で、たいていの刑事訴訟手続きは世話とある一定の緊密な関係にある。それゆ え刑事訴訟手続きにおいて被世話人が世話人に付き添われることは、世話の強い信頼関係 と性質からみて望ましいのではないだろうか。しかしながら他方で、被世話人を例外なく あらゆる生活領域にわたって援助することは、被世話人の任務ではありえない。私の見解 では、当該事案について世話を考慮することが世話人と被世話人との信頼関係の促進・強 化のきっかけとなる場合には、世話人は、常に刑事訴訟手続きにおいて被世話人に付き添 うべきである。その際には、大まかな基準が適用されるべきである。 Ⅲ. 犯罪の犠牲者としての被世話人 上記の論述は、世話を受けている犯罪者をその対象としている。したがって上記の論述 は、被世話人が犯罪の加害者でなく被害者である場合には妥当しない。このような場合に ももちろん、世話人が刑事訴訟手続きへ参加することの必要性が見落とされてはならない。 単なる刑事司法の『逮捕・拘留・勾引する力』や助力機関として世話人を任命することは、 世話法をも支配する必要性の原則にしたがうと、まったくもって許容しえない。犯罪によ って侵害された被世話人を代理することは、たとえば被世話人の民法上の請求権を付随手 続きにおいて主張する目的で命じられうる。同様のことが生じる事案として、世話人が交 通事故に起因する過料手続きにおいて、後の民事の訴訟や和解の基礎資料を準備したいと 考える場合がある。さらに、刑事訴訟法第 149 条の意味での法定代理は、侵害された被世 話人を支え、支援するために必要不可欠でありうる。このことが考えられるのはたとえば、 被世話人が大きな負担を負う暴行の犠牲者となった場合である。結局のところ、世話人が 行為能力なき被世話人を代理することは、以下のような手続きにおいても考慮される。す なわち特別な告訴を開始しなくてはならない手続きや、被世話人を侵害した行為を対象と する手続きである。 《以上、黒田》 Ⅳ. 報酬 これまで判例において、刑事訴訟手続への世話人の参加に対して報酬が支払われるべき かどうかが、議論されている。そのことを肯定する意見と並んで、現在、報酬を支払う義 務を否定するか、もしくは、厳しく制限するという意見が優勢である。まず第一に世話人 が指示された世話の範囲内で世話をし、かつ第二にその行為が方法と範囲の点で適当であ る場合にのみ、世話人に対して報酬が与えられうるという点においてだけ一致している。 これに関しては、上述において得られた区分が役立てられる。つまり報酬の問題に関して 72 は、世話人が犯罪者の法定代理人として行動したのか、もしくは証人として行動したのか、 また、非公式に行動したのか、それとも犯罪によって侵害された被世話人のために行動し たのかといった点に応じて、区別されるべきである。 1) 法定代理人 被世話人の法定代理人としての刑事訴訟手続への世話人の参加は、その任務の範囲の一 部であり、常に法定代理人として報酬が支払われるべきものである。世話人がその任務の 範囲内で官庁に行くか、もしくは、訴訟手続の際に被世話人に付き添う場合に、このこと が世話人の職業活動に属するということは、一般に是認されている。その際、世話人が明 示的に訴訟手続のための補佐人として認められたかどうかということは、重要ではない。 なぜなら刑事訴訟法 298 条6の規定が示すように、このことは明示的な許可を必要としない からである。しかし、世話人が被世話人の法定代理人とみなされ、それとともに、訴訟手 続へのその参加が職業に関するものとして評価されなければならないということは、必要 不可欠であって、かつ、それで十分である。 2) 証人 これに反して、証人としての刑事訴訟手続への世話人の参加に対しては、報酬が支払わ れるべきではない。なぜなら世話人はこの事例において、その他の証人と同様に、証人・ 鑑定人補償法(ZSEG)に従って、単独かつ適当に補償されるからである。その限りで、証 人・鑑定人補償法の規定は究極のものとみなされねばならない。ただし、まず世話人が犯 罪者の法定代理人とみなされ、かつ、法定代理人として刑事訴訟手続に参加した場合、世 話人の参加は報酬適格を持ち続ける。そのためには、証人の証言についての単に証明する だけでは不十分である。 3) 非公式の参加 刑事訴訟手続への世話人の非公式の参加に対しては、報酬が支払われるべきではない。 この場合における世話人は、方法と範囲の点でその任務の範囲内で活動していないので、 報酬は適当ではないであろう。 刑事訴訟法第 298 条[法定代理人] ① 被告人の法定代理人は、被告人について進行する期間内に、独立して、許されている 上訴をすることができる。 ② この上訴及び手続については、被告人の上訴に適用される規定を準用する。 6 73 4) 犠牲者(Opfer) 最後に、世話人が世話を受けている犠牲者(Opfer)の代理人として刑事訴訟手続に登場す る場合、その報酬の問題に関しては、区別されるべきである。世話人が刑事訴訟手続にお いて法定代理人として任務を引き受けた場合に限り、その参加は報酬を受けるべきである。 その理由として、例えば、世話人が明示的に後見裁判所によって任命されたこと、または、 世話人がその任務の範囲内で世話をしたことなどがあげられる。これに反して、世話人が 非公式に刑事訴訟手続に参加した場合、報酬は認められない。 5) 補注:刑事裁判所による召喚についてはどうか? その他の点では、刑事訴訟手続への参加に対して世話人に報酬が支払われるべきかどう かという問題は、世話人が刑事裁判所によって公判に召喚されたかどうかに依存しない。 なぜなら後見裁判所だけが、民法 1896 条 2 項 1 文に従って、世話にとって必要なことはい かなる任務の範囲なのかを決定しなければならないからである。後見裁判所が、個々の事 例ごともしくは一般的に、刑事訴訟手続への参加を任務の範囲として世話人を任命したか、 もしくは、その他の理由からこの任務が世話人の任務の範囲に属する場合には、刑事裁判 所が世話人を召喚するか無視するかで、これに関しては何も変わらない。それゆえ世話人 が刑事訴訟手続において正式に考慮されない場合でも、このことによって、刑事訴訟手続 への世話人の参加に対する報酬が認められないわけではない。 《以上、大場》 Ⅴ. 総括 確かに世話人は、刑事訴訟手続において、これまでに法律によって強調された機能を持 つわけではないが、世話人はそれぞれの場合において、非公式な形で刑事訴訟手続に参加 することができる。これに対して正式の参加は、被世話人の法定代理人か、または、証人 としてのみ考えられる。その限りで、刑事訴訟手続きにおける代理という任務の範囲を伴 った世話人は、民法上も、刑事訴訟法の意味においても、世話を受けている犯罪者の法定 代理人とみなされる。その他のあらゆる世話人に関しては、個々の事例ごとに、その世話 人の代理権がどの程度にまで及ぶのかということが調査されるべきである。その際、刑事 訴訟法 413 条以下[第2章 第 413 条(請求の要件)、第 414 条(手続)、第 415 条(被疑者不 出頭での公判)、第 416 条(刑事訴訟手続への移行)、第 417 条から第 429 条eまでは削除さ れている]による保安手続に関しては、特別な定めはない。その他の点では、被世話人が 犯罪の犠牲者(Opfer)である場合にも、刑事訴訟手続における被世話人の法定代理が考えら れる。刑事裁判所が被世話人についての世話人の知識を取り入れたいと考える場合に、刑 事裁判所は、証人として世話人の意見を聴取する必要がある。 刑事裁判所における被世話人の法定代理人としての世話人の参加に対しては、それぞれ 74 の事例において、報酬が与えられるべきである。これに反して、世話人が刑事訴訟手続に 証人としてのみ参加する場合、その参加は報酬を受けるべきではない。刑事訴訟手続への 世話人の非公式の参加に際しても、報酬は認められない。世話人が刑事訴訟手続に犠牲者 (Opfer)の代理人として登場する場合、世話人が法定代理人として活動したのか、非公式に 活動したのかどうかが、調査されるべきである。前者の場合にのみ、報酬が認められる。 《以上、黒田》 75 9.『世話の質、当該世話の範囲における任務配分、 および手続き費用に関する法的な実態の調査』 というテーマの調査研究計画の公示 Ausschreibung eines Forschungsvorbehabens zum Thema Rechtstatsächliche Untersuchung zur Qualität von Betreuungen, zur Aufgabenverteilung im Bereich der Betreuung und zum Verfahrensaufwand 連邦司法省(連邦官報第 12044 頁) 2001 年 6 月 8 日 連邦司法省は、 『世話の質、当該世話の範囲における任務配分、および手続き費用に関す る法的な実態の調査』というテーマの調査研究計画の委託を意図している。 その調査を通じて、世話法の実行可能な改革についての議論のための基礎としての経験 的に確実な認識を得るべきものである。調査の目的は、現今の世話の質を把握し、法的な 世話の費用を明らかにすることにある。 世話法の実行可能な改革のための提案は、1998 年 4 月 1 日のドイツ社会民主党連邦議 会議員団の決議申立ておよび『世話法の構造改革の大枠についての構想』においてなされ ている。しかし、今まで十分なデータがなく、発議された改革措置が追求すべき改革の目 的にも及びうること、および改革の提案が実際に実務の必要と、場合によっては過去に出 てきた欠陥にどの程度合致しているかということは裏付けられていない。 したがって調査によって認識されるべきは以下のことである。すなわち、 − 世話制度に欠陥があるかどうか、どこに、およびどの程度欠陥が存在するのか、これ が実務にどのような影響を及ぼしているのか、並びに場合によっては明らかになった質の 欠陥がどの付帯費用 Folgekosten やどの支出の原因となっているのか、 − 改正により、任務配分に関して、手続きに伴う(具体的な質の欠陥に関わらない)支 出の縮小に関して、費用を軽減し、 (再広義の)手続きをより効果的なものとすることが できるかどうか、 − 現在の報酬システムを考えに入れて、世話の給付について実務ではどのような影響が 認識されうるのか。とりわけ最初の経験が、1999 年 1 月 1 日の改正世話法によって導 入された報酬システムが世話給付に関して実務にどのような影響を及ぼしているかまで 分析して評価されるべきである。その際、民法 1836 条 b 第 1 項 1 号にもとづく手続き に伴う支出が予め備えた処分の諸雑費込みの合計額を縮小するかどうか、およびこれが 世話の質にどのように影響するのか、が重要である。 ほかに相当な事実認識が、評価のために必要である。すなわち、 76 − どういった質の改善と費用の節減が、考えられる任務の変更によって達成されうるか どうか、およびどのような場合に達成されうるか、 − 後見裁判所から世話官庁および事情によっては世話協会へ(1998 年 4 月 1 日のドイ ツ社会民主党 SPD 議員団の決議申立て B.I.,B.IV.,B.VI.)と、 − 世話人から世話官庁または世話協会へ(1998 年 4 月 1 日のドイツ社会民主党 SPD 議 員団の決議申立て B.II.1.) 、 − 後見裁判所が援助を必要とする者の個別の意思表示を、世話人を任命せずに補充しう るとしたら、どういった費用節減が達成されうるかどうか、およびどのような場合に達 成されうるか (1998 年 4 月 1 日のドイツ社会民主党 SPD 議員団の決議申立て B.II.1.)、 − どのような、およびどの範囲の親族や他の名誉職的に働く者が、世話活動に今までよ りも良く取り込まれうるか、それによってどういった費用がほぼ確実に節減され(有償 の世話の回避)、および、それによってどういった追加の費用(たとえば必要な『広告』、 相談、 『養成』などによるもの)がほぼ確実に発生させられるか(1998 年 4 月 1 日のド イツ社会民主党 SPD 議員団の決議申立て B.III.1.,2.) 、 − 報酬については可能な限り今までより単純−より多い手続きの出費なしに−かつ紛争 の可能性が少なく定められ得るように、世話の給付に関する報酬システムが形づくられ うるかどうか、およびどのように形づくられうるか(1998 年 4 月 1 日のドイツ社会民 主党 SPD 議員団の決議申立て A.I.,B.V.) 。 このような背景から、調査は、特に以下に挙げる問題設定に答えるものとする。 《以上、黒田》 Ⅰ.世話の必要性 1.現在、世話人の数の指示の下でどれだけ多くの世話が行われているのか? 2.誰が世話につき職権を発動し(本人、親族、社会環境、病院、療養施設、介護サービ ス、保健所、その他[名称を付して]) 、その際に、配慮代理権と世話処分は役割を演じ たのか? 3.誰が世話人を提案したのか? 4.世話の準備をする(世話の必要性、世話人の提案)際に、世話官庁による支援をどの 程度の範囲にわたって要求したのか? 5.これらの世話はすでにどのくらいの期間にわたって行われているのか? 6.現在行われている世話のうちで、以下の理由に基づいて世話人が任命された事例はど れだけあるのか? −身体的な障害 −痴呆 77 −中毒 −一般的な精神病(allgemeine psychische Krankheit) −精神的な障害(geistige Behinderung) 1996 年から 2000 年までの間に、 7. どれだけの世話人が以下のような世話人だったのか? −名誉職世話人 a)社会的な周辺地域からの世話人 b)以下のようなその他の名誉職世話人 −親族 −弁護士 −雇用関係を結ぶことなく活動しているその他の世話人 −協会世話人 −官庁世話人 −世話協会 −世話官庁 8.通常、最初に任命する際には、調査は5年後にはじめて行われるのか、それとも、よ り短い期間で行われるのか。そして、調査をするに際して、世話官庁による支援をど の程度の範囲にわたって要求したのか? 9.世話を提案するきっかけとなった生活状態(療養施設への入所、介護の必要性、発病、 中毒症の発症、事故、負債、精神的な障害を負っている場合に成年に達したこと)に ついて認識していたのか? 10.名誉職世話人に対して、どれだけの職業的な世話が給付されるのか?[訳注;一人の 職業世話人に対する名誉職世話人の数について] 11.その他の名誉職世話人もしくは職業世話人に対して、どのようなきっかけで、親族に よって行われている世話がどれだけ承継されるのか? 12.1996 年から 2000 年までの間で、どれだけの事例で、職権による世話人の任命に対す る抗告がなされ、そして、どのような種類の世話人(例えば、名誉職世話人、雇用関 係にない世話人、弁護士‥)が問題になったのか? 13.どれだけの範囲にわたって、かつ、いかなる事例において、裁判所による事実関係の 解明が世話官庁に対して要求されたのか? 14.新たな事例、世話の再審査、抗告の中で、世話官庁が関与しなかったのはどれだけあ ったのか? 15.世話官庁による事実関係の解明を通じて、世話を行うケースが回避された事例はどれ 78 だけあり、そして、それはいかなる事例だったのか? 16.現在の被世話人の年齢構成はどのようになっているのか? 17.1996 年から 2000 年までの間に、以下の理由に基づいて、その都度、世話が終了した 事例はどれだけあったのか? a)職権 b)被世話人の申請 c)世話人の申請 d)被世話人の死亡 18.17a)の事例の中で、以下の[者または機関の]指示に基づいて、世話の必要性の問題 が場合によって新たに調査されたのは、どれだけあるのか? −世話官庁 −世話協会 −親族 −その他の第三者 19.17a)から 17c)までの事例の中で、その都度、世話が終了したのは、いかなる理由に基 づくものだったのか? 20.本人の事務に関して法定代理人が任命されていないが、その事務が世話人によって処 理されるのと同じ程度に、任意代理人またはその他の支援者によって十分に処理され うることを理由として、初めから世話が必要ではなかったということが事後に判明し た事例が、1996 年から 2000 年までの間に存在した場合: これらの事例の中で、世話が必要ではないということが事後にようやく認識されたの は、いかなる理由に基づくものだったのか? 21.本人が第三者に事後に代理権を付与したか、または、事後にその他の支援可能性が生 じたことを理由として、世話人が再び解任されうるような事例が、1996 年から 2000 年までの間に存在した場合: 事前配慮代理権が事後にようやく付与された理由、もしくは、その他の支援可能性が 事後にようやく判明した理由は、いかなるものだったのか? 22.20 と 21 に挙げられた種類の事例の中で、将来、世話人の任命を回避するために、実 務上の観点からどのような措置がなされうるのか? 《以上、大場》 Ⅲ.世話人による任務の遂行および世話人の監督 79 23. 1996 年から 2000 年の間に、世話の事例にいて、どのような任務範囲が世話人に付 与されたか? 24. どれだけの事例において、世話人に財産事務の処理と健康関連事務の処理が任された か? 25. どれだけの事例において、財産事務と健康関連事務の任務範囲が維持されているか? 26. どれだけの事例において、世話人が、どのような種類(たとえば年金の申立て、ホー ム契約の締結)の給付を行ったのか? 27. 1996 年から 2000 年の間に、どのくらいの被世話人が −自宅 −世話人の同居する住宅 −ホーム において生活していたか? 28.1996 年から 2000 年の間に、どのくらいの被世話人が、 −付き添いなしの外来診療 −付き添われての外来診療 −社会扶助サービスをうけての外来診療 −一時入院 −入院 をしていたか? 《以上、顧》 30. 誰が世話プランを作成し、その際いかなる基準が考慮されたか? 31. 一人の世話人が、自分に託された任務を遂行したのか? 32. 二人目の世話人が選任された事案がどの位あるのか? 33. 世話人はいかなる職業および資格を有しているか? 34. 実際の世話活動に関して世話人に何らかの資格が必要か? 35. 世話のどの段階で、いかなる活動が行われたか? 36. 世話人が、自分に託された任務を遂行しなかった、または(どの部分について実施し なかったのかも含めて)部分的にしか遂行しなかった事案がどの位あるのか? 80 37. 世話人は、いかなる理由にもとづいて、自分に託された任務を遂行しなかった、また は部分的にしか遂行しなかったのか? − 世話人が、自分の義務について十分に情報を与えられていなかった事例は、どの 位あるのか? − 世話人が、自分の義務を遂行する心構えがなかった事例は、どの位あるのか? − 世話人が、自分の義務を遂行しうる状況になかった事例は、どの位あるのか? − 世話人は、いかなる理由にもとづいて、自分の義務を遂行しうる状況になかった のか? − 世話人が、必要なときに自由に処理できなかった事例は、いかなる理由にもと づいていて、どの位あるのか? − 世話人が、必要な認識および能力を自由に処理できなかったの事例は、どの位 あるのか? 38. 被世話人が、自分の世話人の態度または給付に苦情を申し立てた場合がどの位あるの か、および誰(後見裁判所、世話協会、世話官庁、その他)に対して申し立てたか? 39. 被世話人が、いかなる理由にもとづいて、自分の世話人の態度または給付について、 誰(後見裁判所、世話協会、世話官庁、その他)に対して苦情を申し立てたのか? 40. 世話官庁、世話協会、親族またはその他の第三者が、世話人の態度または給付に対し て苦情を申立てたのは、いかなる理由にもとづいていたか? 41. 被世話人または第三者の苦情申立てが、後見裁判所によって再審査された事案は、ど の位あるのか? 42. 被世話人または第三者の苦情申立てが、後見裁判所によって正当なものと評価された 事案は、どの位あるのか? 43. 法定義務にしたがって遂行しないことを理由に、世話人に対して民法 1908 条 i1、第 1 項、1837 条22 項または 3 項にもとづく措置がとられた場合はどの位あるのか? 44. 世話人が、法定義務にしたがって遂行しないことを理由に解任された事案はどの位あ るのか? 45. 後見裁判所(裁判官、司法補助官)は、世話人が自分の義務を法定義務にしたがって 遂行しているか、とりわけ被世話人の希望にしたがって行為しているかを、 (いかな 1 2 民法§1908i[未成年者後見の規定の準用] 民法§1837[後見裁判所の監視] 81 る手段、すなわち聴聞、助言、監督により)効果的に再審査しうる状況にあったか? 46. 後見裁判所は、いかなる理由にもとづいて、世話人への効果的な監督を行使しうる状 況になかったのか? − 後見裁判所は、もし義務違反があったのであればその場合、適切な時機に知りえ なかったのか? − 法律で予定された監督措置はその場合に、十分でなかったのか? − 後見裁判所は、物的または人的な必要手段を自由に用いることができなかったの か? 47. 世話協会の側で、協会世話人への監視および監督機能の行使に不備があったのか? 48. 世話人の監督は、たとえば世話官庁の施設などの実務の観点からみて、いかに改良さ れたか? 49. 別の官庁の強化された監督権限は、実務の観点からみて、不足している監督を改良し えたか? 50. 1996 年から 2000 年までの世話手続きで選任された世話人は、いかなる事前研修を 受けたか? 《以上、黒田》 Ⅳ.総体としての職務 51. どれだけ多くの名誉職世話人(被世話人の社会環境からの世話人、および、外国人で はない者)を、 −世話官庁 −世話協会は、 1996 年から 2000 年までの間にその都度、獲得し、 全部で、 かつ、 その任務に採用し、養 成し、助言したか? 52. マニュアルにしたがった行為、 および、人員上・財政上の資源に関して、 欠陥は見られ るか? 53. どれだけ多くの名誉職世話人が、 −世話官庁 −世話協会において、 1996 年から 2000 年までの間にその都度、 登録されたか? どれだけ多くの親族ではない名誉職世話人と世話人としての親族が、世話協会の申出 を利用していないか? 82 54. どれだけ多くの名誉職世話人が、 −世話官庁 −世話協会において、 その名誉職的な活動を放棄し、あるいは、専業の世話人活動に変更したか? 55. いかなる理由から、 名誉職世話人は、もはやその職務を果たす意思が無くなったか? 56. どのように、 かつ、 何のために、世話協会は、州/地方自治体の支援を受けたか? 支 援に関して、いかなる取り決めが行われたか? いかなる支援の方式が存在したか? 57. 名誉職世話人の支援に関して、いかなる助言の申出を、 −世話官庁 −世話協会 −後見裁判所は提供したか? かつ、その助言の申出は、 どのように調整されるか? 58. 問題が発生した場合、 どの機関が任意代理人を支援するか? 59. どれだけ多くの名誉職世話人が、世話の終了後、新たに名誉職的な世話を引き受けた か? 60. 現在、世話官庁と世話協会において、どれだけの時間(全時間のうち、何%)を、 −〔本来の報酬〕獲得 −付き添い のために、名誉職世話人は費やしているか? 61. 総体としての職務は、 現在、 どのように賄われているか? 62. どれだけ多くの地方自治体において、 地域的作業検討会が設置されているか? Ⅴ.手続 63. 1996 年から 2000 年までの間にその都度、世話人の任命が必要ではないという結果に 関して、どれだけ多くの世話手続が行われたか? これらの事例において、 その後、さ らに世話人の任命へと至ったか? 64. 1996 年から 2000 年までの間に世話手続(民法 1904 条から 1906 条に基づく非訟を 含む)において任命された中で、年ごと、非訟事件ごとに、どれだけ多くの手続補佐 人が、 83 −名誉職世話人(親族ではない) −親族 −弁護士 −雇用関係を結ぶことなく活動しているその他の世話人 −協会世話人 −官庁世話人 −世話協会 −世話官庁だったか? 65. 手続補佐人は本人と連絡をとったのか、もしとったのであれば、それはどのような連 絡だったか? 66. いかなる理由に基づいて、 手続補佐人は任命されたのか? なぜ、 通常の〔非訟〕事件 における手続補佐人が任命されなかったのか? 67. どれだけ多くの裁判上の聴取が、どれだけの時間を消費(15 分、30 分、60 分、120 分、 120 分以上)して、1996 年から 2000 年までの間にその都度、 41・ 43・ 44・ 63 に関する 非訟事件において行われたか? 68. 民法 1908 条i1項1文・1846 条に従って、事前に世話人を任命することなく、本 人の必要な治療措置に対して同意を与えるか、もしくは、被世話人を一時的に収容する ように指示するという可能性を、後見裁判所はどれだけ多くの事例で用いたか? 69. 1996 年から 2000 年までの間に、どれだけ多くの非訟事件において、 次の識別特徴に 基づいて、後見裁判所は世話官庁の支援を要求したか? −新たな非訟事件 −事実関係の調査 −世話人の提案 −現在の非訟事件 −世話の必要性の調査 −任務範囲の拡張または制限 −世話人の適性 −世話人の交替 70. 新たな非訟事件において、世話官庁が裁判所に対して、世話人を任命しないことを勧 めたのはどれだけあり、それはどのような理由に基づくものだったか? そのうちど れだけ多くの事例で、 裁判所は世話官庁の勧めに従ったか? 71. 世話官庁と鑑定人による、世話の必要性に関する異なる勧めは、どれだけ多くの事例 で存在したか? 裁判所は、 いかなる勧めに従ったか? 84 《以上、大場》 Ⅵ. 費用、人員、報酬システム 72. 現在の世話ケースのうち、弁護士によって行われているのはどのくらいか? 72a いかなる活動が生産されたか? 73. 1996 年から 2000 年の間に、報酬や費用償還または費用補償に関する手続きが、後 見裁判所においてどのくらいの時間を費やして行われたか? 74. 1996 年から 2000 年の間に、世話事件に対する区裁判所の費用(世話人の費用や報 酬を除く)が、合計でどれくらいの額になったか? 75. 1996 年から 2000 年までの間に、世話事件において取り寄せられた鑑定書に対して、 区裁判所が支払った料金は、どれくらいの額になったか? 76. かかりつけ医の鑑定(診断書)に関して、75.に関連する費用は、どれくらいの額で あったか? 77. どれだけの鑑定書が、100DM、500DM、または 1,000DM 以下の額を要したか? 78. いかなる範囲において、これらの出費が、費用法1条および 137 条にしたがって弁 済され、求償請求権が明らかに存在したケースはどのくらいあったか? 79. 1996 年から 2000 年の間に、どれだけの区裁判所の裁判官およびフルタイムの司法 補助官相当の者が、世話事件の解決のために従事しなくてはならなかったか? 80. 1996 年から 2000 年の間に、どれだけのフルタイムの司法補助官相当の者が、被世 話人の所得や財産に求償するために働いたか? 81. 求償が成功したといえるのは、とのくらいの額の場合か? 82. どのくらいの人件費が、裁判官職および司法補助官職に配分されたか? 83. 1996 年から 2000 年の間に、どれくらいの区裁判官職および司法補助官職が、どの くらいの人件費で、世話人の一般的監督という 41、42、44、63 および 73 に関する手 続きに従事したか。並びに 1904 条から 1906 条の費用のほかに後見裁判所裁判官の許 可に従事したか? 84. 1996 年から 2000 年の間に、世話事件は、世話官庁において、合計でどれくらいの 85 (人員、物件)費用がかかったか? 85. 世話官庁の人的配置は、量的および質的にどのようなものなのか? −職か、養成教育か? 《以上、顧》 86. 1 時間当たりいくらの費用およびいくらの報酬手当が、世話官庁で 1996 年から 2000 年までに、以下のような活動に割り当てられたか? −任された世話の枠内の活動 −名誉職世話人の助言および支援のための活動(世話官庁法 4 条) −職業世話人の導入教育および研修教育のための活動(世話官庁法 5 条) −名誉職世話人の導入教育および研修教育のための活動(世話官庁法 5 条) −配慮代理権および世話処分についての啓発および助言のための活動(世話官庁法 6 条) −後見裁判所の支援のための活動 87. いくらの経費を、世話事件は 1996 年から 2000 年までにそれぞれ世話協会に生ぜし めたか? 88. 世話協会の人事配置は、職員の地位および養成に関連して量的および質的にはどの ようであるか? 89. 1 時間当たりいくらの費用およびいくらの報酬手当が、世話協会で 1996 年から 2000 年までに、以下のような活動に配分されたか? −任された世話の枠内の活動 −民法 1908 条 f 第 1 項 2 号3にもとづく活動 −民法 1908 条 f 第 1 項 2 号 a4にもとづく活動 90. 1 週当たりどの位の時間数で何人の一般職員を、世話協会は、民法 1908 条 f 第 1 項 1 号5にもとづく任務のために従事させたか? 91. 3 4 5 1996 年から 2000 年までに(年毎に) 、平均して 1 週当たり何時間が、世話協会によ 1908 条 f[世話協会の認可] 権利能力を有する社団は、以下の要件を満たす場合には、世話協会として認可される。 2. 名誉職世話人の獲得のために計画的に努力し、名誉職世話人を任務に就かせ、養成 し、助言すること。 2a. 老齢配慮代理権および世話処分について計画的に情報を提供すること。 1. 適性ある十分な数の職員を有し、並びにこれらの職員を監督し、研修・教育を受け させ、これらの職員がその職務の範囲内で他人に加えることがある損害のために適切 な保険に加入すること。 86 って世話の遂行に関心ある人たちへの啓発的助言のために費やされ、また情報提供の ための夕べが何回催されたか? 92. 配慮事務への助言に対しては、世話官庁および世話協会によって報酬が支払われた か? 93. 世話協会は、社会保険義務を負い、賃金を支払っている協会世話人の活動を報酬収 益から還元しうるか?あるいは、活動全体に関する州および地方自治体の助成は、協 会世話人の地位の経営的計算に、どの範囲まで一緒に含められるか? 94. 国庫は、1996 年から 2000 年の間にそれぞれいくらを、 −報酬(職業後見人報酬法の条文にもとづいて格付けされる)、 −費用償還(民法 1835 条) 、 −費用補償(民法 1835 条 a) 、 として、どの世話グループ(名誉職世話人、弁護士、その他の雇用関係になく活動す る世話人、協会世話人、親族)および手続補佐人に支払ったか? 95. 以下の 2 類型に分類される世話人が、自分に帰属する報酬を主張しなかったケース がどの位あるのか? −家族および社会環境による名誉職世話人 −それ以外の名誉職世話人 96. 質問 94.に関して、報酬を受け取った各世話グループで報酬の平均時給はいくらだっ たか? 97. 1999 年 1 月 1 日以降に施行されている報酬システムは、実務の観点からして有効で あるか? 98. いかなる理由から、新しい報酬システムが役に立たない場合があったのか? 99. 実務の観点からして、特に世話人の決算の透明性を高めるために、新しい報酬シス テムにいかなる変更が必要であるか? 100. 実務の観点からして、民法 1836 条 b において定められている報酬システムは、 適切であるか? これらの質問は、すべての関係者たち(後見裁判所、世話官庁、世話協会、被世話人、 世話人、および親族ら)の支援があってのみ、十分に解答されうる。したがって広範囲に わたる質問調査が、これらの関係者たちの中で、後見裁判所のもとにある書類の評価も含 87 めて不可欠である。学術文献および判例の評価が付随的になされるべきである。 議員団の作業グループ『世話法の構造改革』および連邦諸州が、これらの専門家たちに 自分の経験および改革のイメージを示すのに十分な機会を与えるために、計画に含まれる べきである。これに関して研究計画を擁護する助言者団が設置される。 調査は、2001 年 8 月ないし 9 月に開始し、2002 年 10 月に締め切られる。回答者の側 から、 これらの範囲への調査に関して必要と思われる新たな質問設定がなされた場合には、 契約的合意によって実施期間の延長が取り決められうる。その場合には、提案された実施 期間が守られうるか、または回答者の側から親切にも提案された具体的な選択肢がいかな るものかについての具体的な陳述が期待される。 それゆえ研究の構想は、特に調査範囲、調査方法についての説明、プライバシー保護に ついての考え並びに時間と費用の計画(人件費−月の労働能力−、第三者の費用給付、物 件費用、旅費、その他の費用とは区別される事項)についての説明を含むべきである。 研究計画の遂行に関心がある者は、53175 ボンのハイネマン通り 6 の連邦司法省−法的 事実調査課−に、遅くとも 2001 年 7 月 31 日までに、各自封をした封筒に書類整理記号 3475/4-4-12 129/2001 を記載して申し出をするように求められる。 研究の構想も含めて申し出の処理について、補償は提供されない。 2001 年 6 月 8 日ボン 連邦司法省 Weinbörner の委任により 《以上、黒田》 88 10.親族のための法定代理権 Gesetzliches Vertretungsrecht fü r Angehörige トーマス・クリー(フライブルク専門大学教授) Dr. Prof. Thomas Klie 1. 出発点 2002 年には 100 万件の世話が 2030 年には 150 万件になる。人口統計上の伸びだけでな く、社会において「受け入れられる」適格性の問題と現代的潮流もまた、その後発的な啓 発作用に伴い、これまで長い間十分であると考えられてきた、 「親しい第三者」に対するあ るいは患者・医師の関係における決定の適格性の基準が、もはや唯一支持できるものとみ なされないというところまでに至った。大部分の医師は、開業医あるいは病院の医師とし て、患者がもはや自分で決定することができない場合の近親者の「同意」を評価している が、自己防衛策を講じることを意図して、適格性の欠如を見極める医師がますます増えて いて、PEG ゾンデの敷設の際、あるいは医的侵襲の際にそうであるとのことだ。ホームの 経営者は次第に、ホーム契約はその有効性のためには法的適格者の署名が必要であること が分かってきた。従って「ただ」ホームヘの入所のために世話手続が開始される。さて最 後に、立法者の関心が向けられ、実務に幅が出てくるといえるかもしれない。しかし他方 で、他の法体系においてそうであるように親族に法律上代理権を付与することができると したら、このような状況の下で、費用のかかる裁判上の手続において親族(世話の 50%以 上において指名されている)を法定世話人として選任することは不適当と考えられないか? 世話の補充性 膨大な世話の件数、世話事件に対するラントの司法財政における予期しなかった経費の 増大、圧倒的な数の、以前から懐疑的な裁判官をまさに鑑みるならば―世話法において裁 判官に割り当てられた任務と役割に対立することだが―この考えは魅力的である。世話法 はその中核である民法典 1896 条の「開始規定」において、他の援助(Hilfe)と特に任意 代理権付与に対する法定世話の補充性を前提要件としている。世話人の選任もまた権利の 侵害とされ、厳格な必要性の原則の下にある。世話法の小改正において、身上に関する事 柄についてもまた代理権付与の選択可能性が強調され、法解釈学的問題の解決なしに宣言 的に世話の代替手段として承認された。いまや、親族の法定代理権はもたらされるかもし れない。民法典 1896 条における他の援助は、適格性の観点からは真空空間に浮かんでいる ようなものである。現行法によると、連帯して面倒を見ている親族は、法的拘束力ある決 定が問題となるや否や他の援助として機能することはできず、これは医師でも、積極的な 援助をするソーシャル・ワーカーあるいは社会上または健康上の配慮の分野における介護 人もそうである。補充性が空転するのである。事前配慮代理権は多様な解釈にもかかわら 89 ず現実社会ではいまだそれほど普及していない。その市民がこの選択肢を選ばない場合に、 親族は適格者と認められるのだろうか?この点において、人的・社会的に市民に近接した領 域も属する、市民の私的領域の尊重もまた明確に現れるのであろう。 2.議論 世話法に対する改正の圧力は大きい。しかしとくにペーター・ヴィンターシュタイン (Peter Winterstein)とクニッテル(Knittel)とプロープスト(Probst)によってなされ た議論はほとんど、幅の広い開かれた討論に至らなかった。しかるべき議論がいまだなさ れていない。メクレンブルク・フォアポンメルン州の検討依頼に対して、連邦政府は 1997 年よりも前から懐疑的な反応をしていた。人を裁判所の監督の下にない親族の決定権限の 下に置くことは不可能だというのである。代理の開始の基準はただ厳格に実務的に審査さ れるべきであるとのことである。おそらく、社会(福祉)法において法定代理権は興味深 い方向を示しているとする。クニッテルとプロープストは ZRP のなかで異なる議論を書き、 最初の提案で立法論をさらに進めた。彼らは代理事件の審査を問題としておらず、世話権 能を民法典 1896 条の要件と結び付けてはならないという。異議申立の権利と待機期間、表 示された個人の意思の優先等々といったものが濫用防止措置に位置づけられる。クニッテ ルとプロープストは裁判所の個別の監督なしには親族の法定代理権をも設けないつもりで ある。裁判所は親族に対する一種限定的な監督機能を通じて、その活動において状況に応 じた問題解決に機能的に限定され、そして〔裁判所は〕ほとんど儀式化した手続上の負担 を負わされないであろう。 後見裁判所会議の功績は、議論を地域的にも連邦レベルでもさらに進めてきたこと、も しくは重要な論点を明確にしてきたことである。 それらには以下が属する。 ・われわれは今日、私的領域の下で個人対家族をどう解しているのか? ・親族の法定代理権の提唱の背後には、いかなる内容の補充性原則があるのか? ・市民からその代理の決定が取り上げられた場合、一個人的な、または社会的な、停滞し た事前配慮代理権の普及の努力は弱まらず、事前配慮代理権は一般的にその重要性を失 わないのであろうか? ・実務の変更、場合によっては社会法における法改正により、役所主義的に誘発された世 話の削減を目指すことができるか? ・深い論究に値する重要な問題すべて [以上、藤巻] 3.法規制の提案 その間に、親族のための法定代理を認容することに関する2つの規定の提案が、暫定的 であることを明示的に示された文言において、議論のために提示された。一方で、クニッ 90 テルとプロープストの提案が重要である。両著者は、後見裁判所大会でその議論を彼らの 観点から取り上げ、診療の案件における法定代理も財産管理の問題における法定代理にも 関係する規定の提案にまで、議論をある程度導いている。2人はまず初めに、配偶者・両 親・子供によっても診断措置と治療措置についての事前同意に関する意思表示をすること ができるように、民法典 1904 条に3項を補充することを提案する。その際、プロープスト とクニッテルによる簡潔な解説も、多くの問題、例えば何人かの「近親者」の意思表示の 並存という問題などを未決定のままにしている。プロープストとクニッテルの考えによれ ば、現在利用されていない民法典 1358 条は、財産管理の問題とそこでの親族の的確な決定 のために利用されるべきであるとされる。代弁人についてのスイスでの理解では、ある程 度、親族は決定権限をもっている。ただし、その権限はいくつもの方法によって保障され ている。つまり、該当する意思表示の遅れて発生する効力や、法定世話人においても監督 がなされる情勢における後見裁判所の監督機能による保障である。特に重大な法律行為、 例えばホーム契約の締結は、後見裁判所の許可留保のもとで明示的になされる。以下に掲 載された法規制の提案を参照。 民法典 1358 条案 (1) 配偶者が同居している限り、その他の規定に関わりなく、それぞれの配偶者は、 他方配偶者のためにその名において有効に、財産管理・住居の無償譲渡・健康状態の調査 や治療行為または医的侵襲の実施に関する法律関係に基づく請求権の発生と行使に向けら れた案件を、法的に世話することができる。 (2) 他方配偶者にとって単に法的に有利な法律行為は、その他方配偶者がその法律行 為に対してその法律行為がなされた後一週間以内に書面で異議を述べない場合に初めて、 相手方当事者に対して有効となる。被後見人を代理する後見人が 1795 条に従って排除され る限り、その法律行為は無効である。 (3) 以下の場合には後見裁判所の許可を要する。 1. 1821 条と 1822 条に従って後見人が許可を必要とする法律行為; 2. 全ての物または家計に属する物としての財産に関する法律行為; 3. たとえその法律行為が自由の剥奪と結び付いていなくても、住居の無償譲渡やホー ム契約の締結または収容に向けられた法律行為; 4. 他方配偶者がその措置を原因として死亡するかまたは重大で長時間持続する損害を 被るような根拠のある危険が存在する限り、健康状態の調査や治療行為または医的侵襲の 実施についての同意; 91 (4) 他方配偶者が2項に挙げられた期間内に異議を述べなかった場合にのみ、許可が 与えられうる。危険に猶予がある場合には、この限りではない。その他に、1365 条2項と 1369 条2項、1829 条と 1830 条が準用される。民法典 1904 条から 1907 条までは影響を 受けない。 (5) 1項の意味における法的な案件の世話をする他方配偶者の権限は、その他方配偶 者に対する公正証書による表明によっていつでも排除されうる。1412 条が準用される。 民法典 1904 条3項案 (3) 1項の意味における同意は、1358 条の範囲の配偶者や両親または子供によっても 表明されうる。 民法典 1906 条6項案 (6) 1358 条の範囲の配偶者や両親または子供によって収容が行われるか、または、こ れらの人々によって措置についての同意が4項に従って表明される限り、1項から4項ま でが準用される。両親または子供が意思表示をする場合には、1358 条2項と4項が準用さ れる。 民法典 1907 条4項案 (4) 1項または3項の意味において後見裁判所の許可に基づく意思表示は、1358 条の 範囲の配偶者や両親または子供によってもなされうる。両親または子供によってなされる 場合には、1358 条2項と4項が準用される。その意思表示は、ホーム契約の締結にも及び うる。 ペーター・ヴィンターシュタインも、その間に財産管理にも身上監護の問題にも関係し、 かつ、当事者が自ら事務を処理することができないということを要件とする提案をした。 同居している配偶者だけではなく直系親族にも代理権限があるものとされる。明らかに、 ペーター・ヴィンターシュタインの提案は社会法上の手続きにおける代理権限の問題にも 関係するものである。 民法典 1358 条案 配偶者が事故や病気または障害のために意見を表明できないか、または、104 条に従って 無能力の要件が与えられていることを理由として、身上監護の案件における配偶者の判断 が得られない場合、本人が異議を述べないか、または、本人が異議を述べることができず、 この代理を望んでいないということが本人の行為から推し量られない限り、一方配偶者は 他方配偶者を代理する権限がある。1357 条2項と3項が準用される。 92 民法典 1589 条 a 案 直系親族に 1358 条は準用される。 民法典 1904 条3項案 (3) 1項は、1358 条と 1589 条 a に従って代理して決定する配偶者と親族にも適用さ れる。 民法典 1906 条6項案 (6) 1項から5項までは、配偶者または親族が 1358 条と 1589 条 a に従って代理して 指示する収容に対して準用される。 民法典 1907 条4項案 (4) 1項から3項までは、1358 条と 1589 条 a に従って代理して決定する配偶者と親 族にも適用される。 社会法典(SGB)1編 36 条3項案 (3) 配偶者が病気または障害のために申立てをすることができない場合、その状況か ら病気または障害のある配偶者の矛盾する意思を推し量ることができない限り、他方配偶 者は申立てをして手続きを進める権限がある者と見なされる。直系親族と一定期間継続し ている生活共同体のパートナーに準用される。 4. 社会学的見地 規定についての諸提案は、ここで直ちに個別的に評価され、議論されるべきものではな い。この点については、むしろまず社会学的観点に立ち、親族のための法定代理権の妥当 性についての問題に関するいくつかの重要な見地を明らかにしなくてはならない。 近親者に法定代理権を認めるという提案は、今日の家族の形態及び家族の変遷について の問題を提起している。逆説的にも、親族のための法定代理権は、まさに家族の共同生活 の形態およびパートナー関係のあり方がきわめて多様化している時代において、議論され、 求められている。一部で家族及び夫婦が価値の共有や連帯感、扶養グループとして束ねら れていたか、いる場合には、夫婦やその他のパートナー関係の公平対等な形態についての 議論は、契約のモデルに従っている。確かに今でも多くのパートナー関係や家族は、『当然 93 に』互いを擁護し、相互に相手を代理するという伝統的な考え方で足り、かつそれに基づ いているだろう。法定代理権の提案に対する批判となりうる今日の考え方は、同時に標準 モデルとは異なる適切な契約を結ぶ可能性を提示している。しかしながら現在、夫婦の協 力関係や家族の実際に目を向けるならば、これらが力のアンバランスによってもおおいに 特徴づけられうること、これまで明確な準備が夫婦や家族の日常において常に討議の上で 決着するよう確実に努力することに法的拘束力ある契約形成までも認めることになること を示している。親族の法定代理権は、不適切な方法で、市民に自分たちのパートナー関係 の基礎を、その暗黙の考え方に相当する一つの方法で定めることから目を逸らさせること になりかねない。親族のための法律上認められた代理権が家族の形態の変遷を妨げること はあってはならず、またそれはあたかもかつての前時代的な家族概念が家族及び夫婦につ いての社会的変遷に対する回答として注目されるかのように思われる。 世話と保健制度 親族のための法定代理権についての議論は、とりわけ保健制度において、一般に用いら れ、確立されている適格性の基準の著しい崩落をも反映している。価値合理的な適格性と 以前の伝統的な権威とがブレンドされることにより、医師の決定権限は、社会的に広く受 け入れられ、自ら定義した地域医療の医師の適格性にとってもふさわしいものであった。 それゆえ、医師が今日その適格性に関してわずかながら不安を感じるのは、たとえば意思 無能力の患者を治療し、手術し、またはひょっとしたら危険と隣り合わせの診断処置を行 う場合である。その範疇にないにしても、後見裁判所にはっきりと分かる方法で、処置す る医師が法定の世話人の関与を求め、場合によっては自ら後見裁判所に電話する。責任に ついての懸念および新たに認められた患者と消費者の保護は、その際医学分野の団体主義 構造をある程度浸食することとなるかもしれない。専門知識、固有の解釈学及び同業者の 倫理は、確かに過小評価されるべきでない適格性の根拠となるが、法的に受け入れられな いばかりでなく、もはやどう考えても受け入れられない。同じことは、日常生活や典礼、 秩序や決定において適格性を独自に確立することばかりについて苦労している病院にもあ てはまる。それでもなお全体的な病院制度の特徴として、施設は患者に、治療についての 議論と共に、患者の役割を受諾し、病院制度に対してしかるべき信頼をするよう要求する。 今や病院が明らかに合理化を必要とする場合には、病院は患者にもはやあらゆる点で、か つては保障していた保護を約束し得ない。遅くとも退院の時点、危険が多いかまたは費用 がかかる治療措置に関する決定の際でも、さらにはこの範疇になくても、多くの個別的な 場合に、他の適格なる者が病院における決定者として必要とされ、求められる。まさに保 健制度における切迫した分配の危険 Rationierungsgefahren に直面して、保健制度は、明 白かつ法的・倫理的に認められた給付を与えないことが問題となる限りで、将来も重要で あると思われる。 態度の変化 立法者は、1992 年に、患者や障害者並びに彼らの判断力や決定能力に対する態度の社会 94 的な変遷を社会全体に導き入れるというはっきりした関心をもって世話法を施行した。立 法者は、ある程度の時間的遅れをともなう啓発的な風潮を歓迎していただろう。世話法は、 1992 年にはかなりの医師たちに『医師の行為能力剥奪宣告』として激しく非難されたが、 今日少なくとも若干の人にとっては、重要な負担軽減および適格性をもたらす規定として 見られているように思われる。 標準的な方法では、親族のための法定代理権を創設するという提案は、法規範と、代理権 が近親者にふさわしいとする社会規範の食い違いについての一般的に受け入れられた分析 によって支えられている。おおむね住民の中に受け入れられているのは、たとえば治療行 為が問題となった場合に、配偶者が『当然に』法律上の代理権を有するということである。 そうではないというよりも、どちらかといえば少数派が意識しているとおり、法規範と社 会規範との食い違いは、日常においてますます困惑を引き起こしている。それゆえ、親族 のための法定代理権を創設することは、まさに社会規範と法規範の食い違いを、なくする ことはできないにしても、縮小できるだろう。しかし、パートナー関係のいろいろな生活 や姿の形態について、並びに否定されえない利害の衝突について、パートナー関係にも、 負担能力及び社会規範の妥当性の問題が、法規範の模範として設定される。法律は常に、 危険にさらされた市民に保護を提供する役目を有しており、そのことは社会的な親しい関 係においても同様である。法は、 『当然』のことながら、しばしば住民の物の見方にあった 適格性の考え方を受け入れず、その限りでは進歩的に作用し、社会における変遷を促進し ている。このような議論は、これに関する討論において出てきた親族の相互代理権の問題 の構造的な総体の中に正当化の根拠を有している。法定代理権は、力のアンバランスの固 定化やパターナリスティックな伝統に寄与してはならない。 [以上、黒田] 世話人が付されていない者についての隠れた数字 最近の社会学的観点 われわれは、犯罪行為のうちのわずかな部分のみが法的に訴追されるという刑事犯罪学 の議論から、隠れた問題を認識する。刑事訴追が予定されていないことが完全に明らかに されない場合には、犯罪行為の存続への法規範の効力は、かなりしばしば処罰の潜在的威 嚇に基づいている。民法においては、法秩序の受容は国の主務官庁の威嚇的制裁にそれほ ど依存しているわけではなく、制裁は例えば治療行為において同意が与えられていない場 合などに、刑事法上の性質、そしてそれとともに制裁的内容を取得するのである。民事法 は市民間の日常関係の形成と展開における法律上の取引の中にその存在を示さなくてはな らない。今では、社会規範において定着した近親者に対する決定の適格性との交替におい て、現行の世話法がどの程度までその実務による試練を乗り切るのか、ということが問題 となる。世話法もまた少なからず、世話法上問題であるすべての状況が世話法の手続きに おいて処理されているわけではないこと、つまりすでに用意されている制度の不使用を前 提としている。民法典 1896 条における補充性の原則を今日実際に真剣にとりあげ、事前配 慮代理権を宣伝する等々の司法省の努力は、司法の機能の力を背景としても生じている。 95 民事法的な法的状況は、もし彼らの意図をそのまま受け取ると、司法体系と、法体系の他 の制度の崩壊へ向かうであろうし、制定法の信頼喪失へと導きかねないであろう。 [以上、藤巻] 遵守されない基準 世話法の基準と多数の後見裁判所との付き合いが既に存在する。つまり、意見の聴取の 放棄や、例えば後見裁判所と病院が協力した上での、法の「標準」と同時の手続上の当事 者との合意を放棄することは、次のことに全く寄与しない。すなわち、法の拘束力を社会 に向けて代弁するために必要とするかもしれない社会の日常において尊い価値のあること と信用に足ることを、法制度に仲介することに寄与するとは限らない。裁判官に対して世 話法が割り当てた役割が多くの裁判官によってその受け入れを拒絶されたということも、 世話法における履行の不足を示しているだけではなく、より一般的に、有効な権利主張の 部分的な放棄をも示している。この法社会学的な観点に基づいて、親族の法定代理権に関 して若干のことを述べることになるだろう。その際、その若干のことは、多様な啓発の努 力と改革の努力から、事後的に、正当性の根拠を取り除くことになるかもしれない。 この社会学的な観点は、計画された改革の二次的な効果を無視しようとしない場合、議 論は純粋に実定法上の考察のレベルにとどまっては決してならず、かつ、あまり実務的に 取り組まれてもならないということを明確にするだろう。 5.可能な改革のための要点 同意能力の無い人のための代理権との関連で改革の考察を吟味するための基準を、以下 に述べることとする。その基準は、規範的な観点並びに「経験的」な実務上の観点を含ん でいる。 a) 私的自治 親族のための法定代理権の採用は、前近代的な家族による他人決定の復活に役立つもの であってはならない。すなわち、人口統計学上の変化ならびに変化した世帯規模および家 族構成に直面しつつ、古い手本に則して新たな危険について考えることがその復活とみな される。基本法2条1項は規範的な模範としての機能を保持しなければならないが、その 模範としての機能には若干の要件が前提とされる。つまり、決定能力はいつも想定されう るとは限らない。それは部分的に回復されなければならず、そして、自ら決定したかまた は人格において方向付けられた決定を通じた支援によって可能とされなければならない。 b) 文化的および社会的に定着した連帯感ならびに個人の尊厳に奉仕する代理 96 現在の法状況のジレンマは、特に以下の点にある。すなわち、当事者の中で同意能力の 無い人のための決断を発見するための司法形式上の事前手続きが、従来はほとんど受け入 れられず、そして、法的に提供された代理という道具がこれまで文化的かつ社会の個人そ れぞれにおいてほとんど定着していないという点に、ジレンマがある。同時に、社会規範 の中に以前から定着している親族のための親族の代理権は、必ずしも個人の尊厳に奉仕す るというわけではない。特に、決定的な状況において、親族に荷が重いことはしばしばあ る。さらに、このことは任命された法定世話人に対しても妥当する。ただし、法定世話人 は、例えば後見裁判所などの援助を受けることができる。親族のための法定代理権の採用 と全体的に世話法をさらに発展させるための法規制は、このジレンマを共に肝に銘じ、感 じ取られた連帯感を、そのつど個人の希望に沿いかつその個人の利益を考慮した決断の発 見と結び付けることのできる、合意を志向した決断の発見の新たな方式を考慮しなければ ならないだろう。まさに医療上の治療行為の問題との関連で、ここでは例えば、医師団 [Konsil]のモデルやケースマネージメントの方法も、きわめてふさわしいと思われる。 [以上、大場] c) 諸制度(Institutionen)の給付能力 国家機関への要求を私的側面においてより確実にするというますますの社会的な変遷を前 提として、改革についての考察は、候補として適当と思われる諸制度、例えば司法を含め た世話制度が、それらに委ねられた任務をさまざまな点からしても引き受けるべき状況に あるかどうかも、吟味しなくてはならない。それに関して、前もって熟慮されるべきは、 あらゆる点において統一されているわけではない社会保障システムと社会保障法、および それに基づく実務が、世話制度の行き過ぎた集中的利用を誘発していることである。きわ めて機能的な社会保障法およびそれに基づく実務の制約のもとで、世話制度は、ふさわし いインフラストラクチャー(社会的経済基盤) 、および何よりもまず自分に割り当てられた 監督機能と負担軽減機能を引き受けるための関係者の心構えを必要とする。その役割は、 関係者によって受諾され、資格を付与されたうえで引き受けられなくてはならない。マン パワーを考慮すると、その任務はできるだけ軽いものでなくてはならない。それに関して、 将来において確実に熟慮されるべきは、質の観点並びに責任ある司法財政取り扱いの観点 のもとで、司法体系と並んで、他の制度、他の規則体系が、どの範囲まで参入しなくては ならず、また参入することができるかということである。 d) ヨーロッパの連結可能性 社会的な変遷および『保護者制度』に関する法領域の法改革の必要性は、単にドイツ連邦 共和国のテーマであるのみならず、他の諸国でも検討されている。またスイスでは、何年 もの間、後見法の小改正作業が進められていて、ドイツの世話法との明確な関連を有して いる。オランダとベルギーでは、処置の中止についておよび自殺の幇助についての規制が、 議論されていた/いる。フランスやその他の諸国でも、該当する法分野の部分的改正が検討 97 されている。同様の問題は、ヨーロッパのみならず、例えば日本やカナダの諸州でも、ド イツと同様に、議事日程に載せられている。社会の中で増大する可動性、さらにはEUの 私法システムとの命じられた調和に直面して、法改正は、『ヨーロッパの連結可能性』につ いての 2 つの観点に基づいて吟味される。すなわちまず、EU加盟国が関心ある規定およ び経験を駆使し、次にドイツの法状況が外国においても『受容されること』に行き着かな くてはならない。 6.提案および協議事項 次に、さらなる議論のために、 『親族のための法定代理権限を認容すること』というテー マに関して、さまざまなレベルに位置する若干の提案を言葉にしておく。それらは、財産 問題についての代理では[親族のための]法定代理権を認めない一方で、主として健康関 連事務についての代理に関係している。これに関して、我々の考えでは、十分に社会に受 け入れられる方法がある。それは、代理の場合に備えて、配慮をしておき、緊急時におい ても事務管理を行いうるようにしておくという方法である。 a) 親族のための緊急代理権/治療行為についての問題 法解釈学的な問題とは別に解明されなくてはならないのは、立法者が治療行為の問題に ついて任意代理を、民法典第 1896 条 3 項で宣言的に可能だと言明していることである。同 様のことは、少なくとも今までは民法典第 677 条以下に基づく事務管理に当てはまる。配 偶者が緊急の状況において自分のパートナーのために決定することができない/許されな いとすることは、実務においてほとんど受け入れることができない状況に至る。問題を持 ち込まれた後見裁判所は、民法典第 1846 条に基づき医師と親族を決定のために協力させる こと以外には何もすることができない。後見裁判所はまた、親族―たとえば民法典第 1904 条の事案においては後見裁判所による許可の必要性のもとに置くことができ、置かれるべ きである―に判断、あるいは決定をするよう求めることを、引き続き行うべきである。同 様のことは、民法典第 1837 条に基づき後見裁判所に助言を受ける権利を指示しているパー トナー関係にも適用される。 こういった権利は、処置を行う医師にも認められるべきである。これに関して、たとえ ば患者の最近親者は決定を見出すにあたって共に義務的に関与させられるといえるのでは ないだろうか。その際クニッテルとプロープストは、忠実さの度合いと近親さの度合いの 関係を前提としている。『緊急秩序』の意味での事務管理の状況を超える法定代理権には、 さらなる分析と議論なしでは、明らかに賛成されない。権限を有する者による緊急代理権 の委任も、子どもによる緊急代理と同様に認められない。 [以上、黒田] 98 b) 代理権の発起 社会的議論においては、婚姻の指導モデルは契約モデルであるとされている。これは、 両性の関係の新たな決定、公平の見地から望ましい解決に鑑み、パートナー関係における よりいっそう拡大した、規範的にみて問題性のある不均衡に目を向けるとき、相当である と思われる。しかし、契約モデルに従って法律上の関係形成の問題に取り組むための訓練 と準備は、比較的わずかである。さらにこれは、財産事務、治療行為事務における相互代 理と同様に、遺言による処分、夫婦財産契約にも当てはまる。代理権の形成にも多くの疑 わしい問題がある。この点において立法者も場合によっては、非財産事務における相互代 理権について、一定の要点を定式化することを求められるかもしれない。このことが、実 務に役立つ方向付けと明確化をもたらすであろう。少なくとも、保健的制度における誰に でも必要な手続きにおいての代理権の設定の発起は、有意義な明確化と同じくらい重要で ある。そして、例えば法定の健康保険や私的な疾病保険において、その都度被保険者を通 じて、治療行為について代理権の付与があるか、あるとすると誰に対して付与されたかに ついての言及がなされるかもしれない。 処分の蓄積 疾病保険団体のカードにこの情報が蓄積され、その都度診療する医師と病院に次へと送 られるであろう。この方法により、同意能力が欠如している場合の治療行為の問題につい ての分析と省察を促し、添付された相当な啓発と情報を通じてこれまでよりも広く代理権 の設定を人々の間に定着させる試みがなされるかもしれない。加えて、当事者が文書等に よって意思を表明する際に役立つ相当な助言制度が必要である。医療業務法や他の診療業 務法において、治療行為の問題における代理権の可能性と拘束力がこれまでよりも強く指 示され、職業的診療の相当な助言義務が前提とされるであろう。事前配慮代理権の問題に おける啓発が地域水準にまで促進されうるに伴って、人々の反応に関していえば、いたる ところで概して非常に楽観的な経験が現れている。患者処分証書の方式において、思慮を 欠いた意思表示を行うことへの警告がなされる。すなわち、患者処分証書は診療の中断な どの問題を話し合うきっかけとして役立つ。しかし、必ずしも予測可能でない状況のため に、自分が負担能力のある決断の根拠を提供することを彼らが証書等で表すことは、非常 に困難である。 c)司法の監督と負担軽減の提供 司法には、重要な監督義務と同時に、ジレンマのある治療行為の決断との関連で負担軽 減義務がある。利益の抵触と結び付けられ、現実の社会において広く定着した依存関係は、 監督されるべきである。負担軽減の提供は権利者に過大な要求をするが、代理権を付与さ れることも無理な要求であり、ひょっとすると倫理上自己の良心との調和が困難な決断を 求めるかもしれない。この点裁判所は、制度に対しても人に対しても重要である現代的な 99 抑制機能、仲介機能、同時に負担軽減機能を担うことができる。加えて司法は、治療の中 断の問題、危険な診療と自由剥奪的措置などの問題の際には存在しなくてはならない。こ れは実務ではどの場合でもそうだということではない。 [以上、藤巻] d) 非司法形式的な支援および合意手続き 国内外において、ジレンマのある状況において決断を発見するための合意志向手続きの 効果に関する経験が存在する。信頼のおける人々と親族の関与の下で学際的に確保されて いる審査会において、合意を志向した方法で、決定権限を有する人が決断をするための準 備が行われる。その準備は、当事者全員によって支えられた、可能な限り適格な決断を可 能にする。制度上、医療業務法上およびその他の診療業務法上において、場合によっては 司法の関与の下で、質を確保する手続きを構築し、または、司法の監督機能に適合する手 続きを構築することは、有意義であろう。そういった手続きは、決断の質を明確に聞き入 れうるだろうし、〔社会連帯〕の課題の発見の文化的変遷にも寄与しうる。ケースマネージ メントの方法も、ここでは、例えば退院ならびに居住状況および生活状況の明確化などの あまり目立たない問題において、重要な意義を有する。 その際に必要と思われるのは、個人および関与していて決定権限を有している親族また は法定代理人の継続的な付き添いをある程度可能にするために、ケースマネージメントを 分野と制度を超えて形成することである。 e) 分析 前述の提案、それは、既存の法制度を活用し、かつ、実務上の改善を目指そうとするも のである。将来の親族のための法定代理権について熟考する前に、異なったレベルでの分 析が必要である。例えば、社会法および行政法における領域に特有で、有意義で、状況に 特有な親族のための代理の選択権が存在するのか、そして、行政の簡易化によって、例え ば申請要件の廃止は、どこで社会権をより有効に仕上げるのに寄与しうるのか? 社会法 典1編 36 条1項をめぐる議論は、正しい方法で必要な分析の方向を示している。 ただし、現実社会における家族による決断の承諾および質も、分析されるのにふさわし い。我々は、責任があるとみなされうる方法で社会の現実というこの観点について今決断 するには、その現実をあまりにも知らなさすぎる。 外国の法状況も分析に値する。臨終の決断と関連する法的な問題のためにタウピッツ[マ ンハイム大学法学部教授 Taupitz]がしたように、比較法的な分析というここに投げかけら れた懸案の問題も、分析対象としてふさわしい。このことは、ドイツの法規定の連結能力 100 を、前述した二重の観点において確保するだろう。 7.結語 親族のための法定代理権の採用をめぐる議論は、州司法行政の財政的困難の下でもなさ れている。しかし同時に、問題となっている人がもはや(単独で)決断することができな い場合、この議論は毎日の決断、特に治療の扱いの問題における決断の正当性の問題を重 要な方法で示している。改革の提案は全て多種多様であり、議論に値する一連の問題を内 在的に投げかけている。しかし同時に、「親族のための法定代理権」というテーマは、まさ に家族とパートナー関係を包括する社会の変遷の時代において、代理権限の文化的な定着 という基礎的な問題を示している。 同時に、司法と他の世話制度上の制度の信頼性と機能能力をテーマにする問題が投げか けられている。世話制度の司法形式化は、任意形式の代理による補充、および、決断の質 に方向付けられた、合意を志向している手続きをも要求する。絶対に早く取り上げられる べき改革の選択によって、他のヨーロッパ諸国において集められた経験を取り入れること も含んだ、詳細な分析を必要とするということが明らかになっている。 [以上、黒田] 101
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