道床バラストの沈下に与えるまくらぎ下面性状の影響 - 土木学会

4-057
土木学会第59回年次学術講演会(平成16年9月)
道床バラストの沈下に与えるまくらぎ下面性状の影響
(財)鉄道総合技術研究所
正会員
河野 昭子
正会員
堀池 高広
1.はじめに
有道床軌道の破壊現象の主因の一つは、列車走行に伴うまくら
鉛直荷重載荷
ぎ下部の道床バラストの側方流動であると考えられている。そこ
水 平 荷 重 載 荷 Loadcell ScrewJack
模型まくらぎ
20cm×20cm
200×200mm
で本研究では、まくらぎ下面の性状を変えることにより、まくら
Rod
5cm
道 床 部 ( 粒 調 砕 石 )50mm
ぎと道床バラスト間の摩擦抵抗力を高め、道床バラストの側方流
路盤部
動を抑制することに着目し、下面の材質・形状が異なる模型まく
らぎを作成し、模型試験を実施した。
図1
横引き試験
2.試験概要
2.1 試験装置:本研究で行った横引き試験および
繰返し移動載荷試験で用いた模型試験機は、縮尺
:ロードセル
120mm
まくらぎ No
1
2
3
4
比 1/5 で、土槽内部に厚さ 50cm の模型道床(単粒
:変位計
車輪
5
6
7
8
9
1
11 12 13 14 15
道床厚:50mm
度砕石)を構築した。2次元平面歪条件とするた
路盤(鋼製)
め、土槽側面内側にはグリースを塗布しメンブレ
2000mm
図2
ンを挟み、模型バラストの摩擦を低減させた。
繰返し移動載荷試験
2.2 まくらぎ条件:模型まくらぎの底面条件は、骨材露出型、レール下突起
型、鋼製枠型の3通りとした(図3参照)。骨材露出型では、模型まくらぎ
の下面に模型道床を埋め込み、全体に凹凸を付けた。一方レール下突起型は、
骨材露出型
レール直下の部分にモルタルで 5mm の突起を設けたものである。鋼製枠型は
鋼製のまくらぎ底面の周囲を 4mm の鋼製の枠で囲ったものである。
横引き試験では、上記の3種類のまくらぎ下面と同条件の正方形の板(200mm
レール下突起型
×200mm)を用いる事とした。
2.3 試験方法:横引き試験では、上述の正方形の板を模型道床上に設置し、
鉛直方向に載荷しながらスクリュージャッキで水平方向に引く(図1)。鉛直
荷重は 1、2、3、4kNの4通りで、各ケース複数回行った。測定は、水平方向
荷重と水平変位について、水平移動距離が 10mm に達するまで行った。
図3
移動繰返し載荷試験では、模型バラスト上に 15 本のまくらぎと左右
レールを設置し、車輪に鉛直荷重を載荷しながら往復走行させた。
変位計によって、荷重と変位について行った。
3.試験結果
3.1 横引き試験:図4に横引き試験結果より、水平変位と水平荷重の
例を示す。また図5に各鉛直載荷時の最大水平荷重の平均値を
示
す。この結果の直線近似式より、傾きの値を各模型まくらぎの摩擦
係数として算出した値を表1に示す。これより、摩擦係数は、骨材
露出型が最も大きい値を示している。
キーワード
水平荷重(N)
鉛直荷重は予備載荷により徐々に増加させ、4kN になった後に 100 往
復(200 回走行)させた。測定は、各まくらぎに設置したロードセルと
鋼製枠型
模型まくらぎ
180
鉛直荷重 4kN
160
140
120
鉛直荷重 3kN
100
80
60
鉛直荷重 2kN
40
鉛直荷重 1kN
20
0
5
10
-20 0
水平変位(mm)
図4 横引き試験結果
水平変位−水平荷重
有道床軌道、模型試験、繰返し載荷、道床沈下、摩擦係数
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土木学会第59回年次学術講演会(平成16年9月)
3.2 繰返し移動載荷試験:図6に繰返し移動載荷試験の結果より、
250
まくらぎ No8の荷重-変位曲線を示す。各ケース、4kN で 200 回の
200
最大水平荷重(N)
鋼製枠型
載荷を終了した時点での沈下量(図中グレー矢印)を最終残留沈下量
とすると、骨材露出型は 2.4mm 程度で、3ケース中、最も小さい値
を示している。一方、レール下突起型の場合、予備載荷の過程で各
骨材露出
レール下突起型
150
100
50
載荷段階の載荷前と載荷後(除荷時)の沈下進み(図中黒矢印)が大き
0
く、最終残留沈下量は 5.3mm と3ケース中、最も大きな値を示して
0
1000
いる。また鋼製枠型の最終残留沈下量は 3.4mm 程度となっている。
2000
3000
4000
5000
鉛直載荷重(N)
次に図7に、繰返し回数とまくらぎ沈下量(負荷時および除荷時)
図5
の関係を示す。これより、各ケースとも急激な初期沈下は、載荷 80
横引き試験結果
表1
回目程度で収束すると考えらる。これ以降のデータを直線近似した場合の一次式
(図中)より、傾きβを沈下進み係数として算出する。
この値と表1に示す各模型まくらぎの摩擦係数との関係を図8に示す。まず各ケ
ースのβ値を比較すると、レール下突起型が最も大きく、鋼製枠型、骨材露出型と
摩擦係数
まくらぎ底部条件 摩擦係数
骨材露出型
0.60
レール下突起型
0.55
鋼製枠型
0.45
続く。また摩擦係数との関係では、摩擦係数が大きいほどβの値は小さくなること
が明らかである。
4.まとめ
まくらぎ下面部の摩擦係数が大きいほど、道床の沈下進み係数βが小さくなる傾向が明らかとなった。
2.0
まくらぎ8
1.5
鉛直荷重(kN)
1.0
0.5
1.0
4kN
2回目
予備載荷
1∼4kN
4kN
20回目
2.0
4kN
4kN
100回目 200回目
予備載荷
1.5 1∼4kN
0.5
0.0
0.0
4kN2回目 4kN
4kN
まくらぎ8
20回目
100回目
4kN
200回目
1.0
0.5
0.0
0.0 0.5 1.0 1.5 2.0 2.5 3.0 3.5 4.0 4.5 5.0 5.5 6.0
0.0 0.5 1.0 1.5 2.0 2.5 3.0 3.5 4.0 4.5 5.0 5.5 6.0
沈下量(mm)
沈下量(mm)
0.0 0.5 1.0 1.5 2.0 2.5 3.0 3.5 4.0 4.5 5.0 5.5 6.0
沈下量(mm)
(b) レール下突 起型
(a) 骨材露出型
図6
(c) 鋼製枠型
荷重-変位曲線
6.0
レール下突起型
(負荷)
u=βN+α
レール下突起型
(除荷)
4.0
鋼製枠型 (負荷)
鋼製枠型 (除荷)
3.0
2.0
骨材露出型 (負荷)
1.0
骨材露出型 (除荷)
0.0
沈下進み係数β(10-2mm/回)
0.6
5.0
沈下量
u (mm)
沈下量(mm)
鉛直荷重(kN)
4kN
まくらぎ8
2回目 4kN20回目
予備載荷
4kN100回目
1.5
1∼4kN
4kN200回目
鉛直荷重(kN)
2.0
鋼製枠型 (負荷)
0.5
骨材露出型 (負荷)
レール下突起型
(負荷)
0.4
0.3
鋼製枠型 (除荷)
骨材露出型 (除荷)
0.2
0.1
レール下突起型
(除荷)
0.0
0
50
100
150
200
0.0
0.4
0.6
摩擦係数
載荷回数(回)
図7
0.2
載荷回数N(回)
載荷回数と沈下量の関係
図8
-114-
摩擦係数と沈下進み係数βの関係
0.8