「製材業」、『税理-業種別税務ハンドブック』、ぎょうせい、2010年3月。

第 2章
製
造
業
材
皿
売価還元法による棚卸資産の期末評価は製造原価と販管費の区分に注意。
(1)法 人 税
① 棚卸資産
これまで,製 材業 の製造工程 は比較的 シン
プルで あ ったため ,中 小裂材業 にお いて も製
品や仕掛品等 の棚卸資産 の期末評価 につい て
は,原 価計算 シス テムの利用 も可能 で あ った。
しか し,近 年 ,中 小製材業 では,顧 客 のユー
ズ に対応 した多 品種 ・小 ロ ッ ト生産化が進 み,
煩雑化す る原価計算事務 の手間 を避 け,棚 卸
資産 の評価 については,売 価還元法 に基づ く
原価法 を採用す る ことが多 くなった。
そのため,会 計 上 も税務 上 も注意すべ き点
は,製 造原価 と販売費及 び一般管理費 との区
分 であ る。会計基準 に基 づ く会計処理 の精度
が低 くな りがちな中小製材業 の中 には,プ レ
カ ツ ト設備 の減価償却費や支払 リース料 が管
理 費 に算入 されてい た り,逆 に顧客 に製品 を
配送す る車両 の減価償却費が製造原価 に算入
されてい た りす るケースが あ る。裂材業 にお
け る決算作業 では,こ れ らの区分 について改
めて精査す る必要がある。
また,コ ス ト削減等 を目的 として素材生産
者 (林業者)や 木材流通業者 (問屋)が M&
Aの 手法 によ り製材会社 を支配下 に置 き,別
会社 で経営す るケ ース も見受 け られ,関 係会
社間の棚卸資産 の売買取引 に係 る価格設定 が
問題視 されるケース もある。そ う したケース
では市場価格 や第三者 との取引価格 を参照 し,
日頃か ら資料 を整備す ることも必要である。
② 製材設備
平成2 0 年度税制改正 によ り, 製 材業用設備
の耐用年数 は 「
4 木 材又 は木製品 ( 家具 を除
く。) 製 造業用設備」 に区分 され, そ れ まで
製材用 自動送材装置 8 年 , そ の他 の設備 1 2 年
が ともに 8 年 とされた。
耐用年数 の変更 以外 に製材設備 について注
意すべ き点 は, 中 小企業者等 が機械等 を取得
した場合 の特別償却制度又 は法人税額 の特別
控除制度 ( 措法4 2 の 6 ) の 適用 の失念 で あ る。
経営成績 が悪化 し, プ レカ ッ ト設備等 の適用
対象設備 の事業供用年度 において特別償却 や
税額控除 の不足額 が生 じて も,当 該不足額 に
ついては翌事業年度へ の 1年 間の繰越控除が
可能 で あ るため,事 業供用年度 にお け る法人
税 申告 に当 たつては明細書 の添付漏 れのない
よ うに したい。
③ 貸 倒 れ
一般 に
,製 材業者 の顧客 は木材市場,木 材
流通業者 (問屋 ),住 宅建築業者が 中心 で あ
るが ,こ れ らの中で,零 細 な規模 で経営 して
い る住宅建築業者 に対す る売上債権 が滞 るケ
ースが見受け られる。
日頃か ら遅 滞債権 の管理台帳や 関連資料 を
整備す ることで,個 別貸倒引当金や貸倒 れの
計 上時期 の適正性 を客観的 に立証 で きるよう
に したい。
(2)消 費 税
近年 ,地 方 の港湾 の活性化 が叫 ばれてい る
ことか ら,地 方 の木材 関連業者 が最寄 りの地
方 の港湾 を利用 し,商 社 を経 由せず,外 材 を
直輸 入す るケース も考 えられる。裂材業者 に
おいて も,課 税貨物 を直輸入す る場合 は,輸
入消費税 の課税関係 が生 じ,管 轄す る税関 の
調査 を受 け る場合 が あ る。当該調査 によ り,
輸入消費税 について過去数年間 にわた り修正
申告 を行 った場合,税 務署 に申告 してい た消
費税 につい て当該修 正 申告期間 に係 る控除税
額 が増加す ることで,結 果的 に納付消費税 が
過大 とな り得 る。
しか し,通 常 ,更 正 の請求 は国税通則法23
条 によ り 1年 以内に限 られるため,前 課税期
間 よ り前 の課税期間 に係 る消費税 につい ては
同条 に基づ く更正の請求 は不可能 である。 こ
う したケース を手当 てす るため,消 費税法56
条 2項 による更正 の請求 の特例 が規定 されて
い る。すなわ ち,当 該課税期 間 に係 る輸入消
費税 の修正 申告書 の提出 日の翌 日か ら2月 以
内 は消費税 の更正の請求が認 め られてい る点
に注意が必要である。
(長谷部光哉)
2010。
3臨 159
税理●