コンクリートの再振動締固めに関する研究 A Study on Concrete Compaction by Re-Vibration 水 田 実※1 加 藤 淳 司※2 Makoto Mizuta Junji Kato ※1 寺 澤 正 人 佐 藤 友 厚※3 Masato Terazawa 【キーワード】 2 3 ②2.に示した室内基礎試験での知見を基にして,再振 動は,壁状コンクリート打設直後の締固め(10 秒間)の 後に, N 式貫入試験の突き棒貫入量が 100~120mm 程 度になった時点で,1箇所あたり 40 秒の加振時間にて, 図-3に示す位置で連続的に 3 回実施した.その際,バ イブレータはコンクリートに 360mm 挿入した.なお, 締固め,再振動ともに直径 40mm 長さ 400mm の高周波 バイブレータ(200V 振動周波数 200Hz)を使用した. ③コンクリートに発生する振動加速度は,図-3に示す 位置に,加速度センサを頭部に配置したアルミ製平棒を 挿入して,サンプリング間隔 0.0001 秒にて測定した. なお,測定する加速度の方向は壁軸直角方向とした. ④再振動の効果評価は,図-3に示す位置にて採取した コア供試体(φ100×200mm)による圧縮強度(材齢 28 日)と,別途,再振動をしないで作製した円柱供試体で の平均圧縮強度(参照強度)との比較で実施した. ⑤再振動の鉄筋付着性状への影響度把握は,D25(SD345) の鉄筋を用いて,再振動を実施して作製および実施しな 1) 2.室内基礎試験 の概要 2) 室内基礎試験では,コンクリートの調合,再振動実施 時期および加振時間を試験水準とし,また,円柱供試体 を用いた圧縮強度試験の結果を効果の評価指標として, 再振動に関する基礎的知見の取得を行った.図-1~2 に試験結果の一例を示す.ここでは以下の知見を得た. ①加振時間を 40 秒として再振動を実施すると,圧縮強度 の増加率が高くなる. ②N式貫入試験 の突き棒貫入量が100mm 程度の時点で 再振動を実施すると,圧縮強度の増加率が高くなる. 31 3) ) m m / N( 練上り時実測スランプ23.0cm 25 秒 20 再振動締固め時の加振時間 秒 40 図-1 再振動時の加振時間と圧縮強度の関係図 300 32.0 N式貫入量 圧縮強度 250 )m m (量200 入貫150 棒き100 突 式N 50 31.0 30.0 増加 29.0 8.0% 28.0 再振動なし 27.0 練上り時実測スランプ16.5cm 0 0 試験方法の要点を以下に示す. ①目標スランプ 18±2.5cm,空気量 4.5±1.5%,呼び強度 建築事業本部 建築部 増加 11.3% 26 試験方法 2. 29 度 28 強 縮 圧 27 4) 技術研究所 第三研究室 再振動なし 120分 再振動締固め実施時期 150分 練混ぜ加水からの経過時間 180分 30 2 模擬体実証試験では,厚さ 300mm の基礎コンクリー ト上に打設した高さ 1000mm,長さ 1495mm,幅 210mm の壁状コンクリートに対して実施位置間隔を変化させて 再振動を実施した.再振動の効果の評価方法は,壁状コ ンクリートから採取したコア供試体に対する材齢 28 日 圧縮強度によるものとした.また,再振動時にコンクリ ートに発生する振動加速度を計測し,これと圧縮強度の 関係を整理することで,最適な再振動実施位置間隔の決 定手法を検討した.さらに,鉄筋との付着性状に及ぼす 再振動の影響を把握するために,本試験に供したコンク リートを用いて鉄筋の付着試験を実施した. 1. Tomohiro Satou 30N/mm のコンクリートを試験に供し,その調合は,水 セメント比 49.1%,単位水量 184 kg/m とした. 再振動締固め(以後「再振動」と呼ぶ)は,コンクリ ート打設および締固め実施後のある時点において,再度 バイブレータで振動を与えることにより,内部の気泡・ 空隙を減少させて強度増進をさせるなど,品質向上に寄 与する施工法として紹介されている .しかし,その効 果や具体的な施工法に関する研究事例は少ない. そこで筆者らは,再振動の効果の評価と最適な施工方 法の確立を目的として,基礎的知見を得るための室内基 礎試験と実構造を模擬した壁状試験体を用いた実証試験 を実施した.本報告では,模擬体実証試験の試験方法お よび結果を中心に,本研究で得られた知見を示す. 3.1 Tamio Sakurai コンクリート 再振動締固め コンクリート施工法 品質向上 1.はじめに 3.模擬体実証試験 櫻 井 臣 央※2 50 100 150 200 加水からの経過時間 (分) 250 ) 2 m m / N( 度 強 縮 圧 26.0 300 図-2 N式貫入試験突き棒貫入量と圧縮強度の関係図 3. 土木事業本部 土木技術部 設計グループ コンクリートの再振動締固めに関する研究 127 [単位:mm] 1495 加速度計設置位置 162.5 7 0 加速度計 220 175 167.5 130 230 190 220 0 4 1 0 0 1 3 0 2 6 0 0 6 3 1 3 0 1 0 0 0 バ イ ブ レー タ 挿 入 深 さ コンクリートコア アルミ平棒 6 4 0 225 175 650 150 150 225 コンクリートコア採取位置 225 300 450 再振動1回目 再振動2回目 再振動実施位置 3 0 0 再振動3回目 基礎コンクリート 図-3 再振動実施位置, 加速度計測位置, コア採取位置図 いで作製した供試体を用いて,JSTM C 2101(1999)に準拠 して実施した. 3.2 約5000gal では3000gal に比較して約10%程度の圧縮強度 の増加が見込むことができる. ③本試験結果と実施工性を考慮すると,再振動実施位置 間隔は,概ね 450mm 程度が妥当と思われる.再振動時 にコンクリートに発生する振動の最大加速度振幅分布 (分布の一般形は, 図-5に示すような再振動実施位置を 頂点とする山形と推定される)に関するデータをさらに 蓄積することで,上記②に示す最大加速度振幅累計値を 指標として,より最適な再振動実施位置間隔を決定でき るものと考えられる. ④再振動が鉄筋との付着性に影響を及ぼすことはない (図-7). 46 ) m44 /m (N 2 試験結果と考察 に壁体コンクリートのコア圧縮強度の分布,図 に再振動時にコンクリートに発生した最大加速度振 幅の分布,図-6に深さ 230mm,360mm のコア供試体 採取位置における最大加速度振幅の累計値と圧縮強度の 関係,図-7に再振動の実施有無による平均付着強度の 比較を示す.これらより,以下の知見・考察が得られる. ①再振動を実施した場合,深さ方向ではバイブレータの 中央から先端位置(深さ 230~360mm)で圧縮強度の増 加が顕著であり,再振動を実施しない場合と比べて 10~ 20%程度の圧縮強度を増加させる(図-4).また,水平 方向については,再振動の実施位置において強度増加が 大きい(図-4). ②再振動による最大加速度振幅累計値の増大とともに圧 縮強度が増加する傾向が認められ(図-6),最大加速度 振幅累計値は,約 3000gal 時点から強度増加が始まり, 図-4 -5 48 m m / N ( 度 強 縮 圧 ア コ 1回目 再振動 深さ100mm位置 深さ230mm位置 深さ360mm位置 46 2) 44 42 2回目 再振動 3回目 再振動 40 38 36 34 参照強度 再振動の影響が 強い領域 再振動の影響が 弱い領域 32 30 0 150 300 450 600 750 900 1050 1200 1350 1500 コア供試体採取位置 (mm) 図-4 壁体コンクリート圧縮強度分布図 3500 回目 再振動 回目再振動 回目再振動 回目再振動 1 2 3 )al 3000 g (幅2500 振度2000 速 加1500 大 最1000 回目 再振動 1 2 回目 再振動 3 500 0 0 150 300 450 600 750 900 1050 1200 1350 1500 加速度計測位置(mm) 図-5 コンクリートに発生した最大加速度振幅分布図 128 とびしま技報 No.59(2010) 2回目 再振動位置 度42 強 縮 圧 ア40 コ 38 深さ360mm位置 深さ230mm位置 平均値 平均回帰 3回目 再振動位置 1回目 再振動位置 y = 8E-11x3 - 4E-07x2 + 0.0006x + 39.52 R² = 0.6299 0 0 0 1 0 0 5 1 0 0 0 2 0 0 5 2 0 0 0 3 0 0 5 3 0 0 0 4 0 0 5 4 0 0 0 5 最大コンクリート振動加速度振幅累計 0 0 5 5 0 0 0 6 (gal) 図-6 最大加速度振幅累計値と圧縮強度の関係図 再振動あり 再振動なし 0 1 2 3 4 5 6 7 平均付着強度(N/mm 鉄筋すべり量=0,002D時付着応力度) 2 図-7 再振動実施の有無による平均付着強度比較図 4.まとめ 本研究で得られた知見をまとめると以下のようになる. 再振動の実施は,強度増加に寄与する効果があり, 本報の範囲では圧縮強度が10~20%程度強度が増加する. 2) 再振動によって経験する最大加速度振幅累計値の増 加とともに圧縮強度が増加する傾向が認められた.従っ て,最適な再振動実施位置間隔は,最大加速度振幅累計 値を指標として決定できる可能性があると考えられる. 今後は実施工を推進し,さらに知見収集や技術改良に 努めたいと考えている. 1) 【参考文献】 土木学会:2007 年制定コンクリート標準示方書 [施工編] , pp.121-122 , 2007. 2) 加藤淳司,水田実:コンクリートの再振動締固めの実 施工適用性に関する研究(その 1)適用範囲,施工法,実施 時期判断基準,得られる効果についての室内実験結果, 日本建築学会学術講演梗概集(北陸) , 2010. 3) 土木学会:コンクリートライブラリー103 コンクリー ト構造物のコールドジョイント問題と対策, 2000 . 4) 水田実,加藤淳司:コンクリートの再振動締固めの実 施工適用性に関する研究(その 2)壁状模擬試験体によ る再振動締固め効果等の確認実験結果,日本建築学会 学術講演梗概集(北陸) , 2010. 1)
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