骨 の 欠 損 部 再 生 を 補 助

北海道の日本海沖に、焼尻島
日航機御巣鷹山墜落
ぶやく。
﹁山も深く傷ついていた。こ
テレビで確認した主人公が、こうつ
の山が引き受けたのだ。他のどの山
一九八五年。
死者五百二十人、
生存
立ち入らない山だった御巣鷹山。元
御巣鷹山が引き受けたのだ﹂︵志︶
でもなく、世界最大の事故を、あの
者四人。
もともと登山道もなく、
人が
イマーズ・ハイ﹂では、墜落現場を
複数の疾患があって、どうし
す。
上毛新聞社記者が書いた小説﹁クラ
患者と話せる時間が武器
います。しかし、すでに解決さ
ても多くならざるを得ない人も
という島があります。島の半分
イの原生林に覆われた緑豊かな
痛いと言って診療所にやって来
イヒョ イ と 越 え て い き ま す か
ける、ということなのかもしれ
の元へ 引 き 取 ら れ て い き ま し
人かの人が島を去り、陸の親族
島の医療設備はお世辞にも十
薬の多さに驚き
と、実際に患者さんの口に入る
カルテ に 処 方 を 記 載 す る こ と
てみると、段ボール一杯分の薬
る。頭では分かっているつもり
ことには天と地ほどの開きがあ
られました。そのことがあって
でしたが、あらためて考えさせ
ありました。それは時間です。
一日の平均患者数は十人あま
の意義について、患者さんと話
から、処方されたお薬一つ一つ
ます。
し合う時間が増えたように思い
ですが、皆早起きで、せっかち
来ているのです︶、十一時すぎ
療を志向していたため、この島
もともとへき地医療・家庭医
午後は患者さんが来ないこと
深いものでした。現在は対岸の
での一年は非常に楽しく、印象
が、時折訪ねてくる患者さんの
道立羽幌病院に勤務しています
う時は、患者さんの家に行って
んでいるか確認をしたりしてい
かしく思い出されます。
顔を見る度に、島での日々が懐
当たり七千 一万円と、
る使用法も可能。価格は一
かい顆粒
︵かりゅう︶
で埋め
病気などでできた空洞を細
し、はめ込むことができる。
︵次回予定は神奈川県︶
たのが、一人当たりに処方され
上腕骨骨嚢腫を発症した 歳の男児のエックス線写
真。治療前︵左︶は上腕の上半分に空洞ができてい
るが、ネオボーンで埋めると3カ月後︵右︶には骨
がきれいに修復された︵吉川秀樹・大阪大教授提供︶
ている 薬 の 多 さ だ っ た か ら で
ました。この島に赴任して驚い
話を聞いたり、薬をきちんと飲
もしばしばありました。そうい
には終わってしまいます。
なため、その時間には玄関先に
ても︵本当は午前九時開院なの
り。午前八時半から診察を始め
が、大きな病院にはない武器が
が余っていたりするわけです。
分であるとは言い難いものです
そうした患者さんの家に行っ
受けられました。
と継続されている場合も多く見
れた症状に対しての処方が漫然
は羊の放牧地、残り半分はイチ
島の診療所に赴任したのは、昨
ませんが。
小島です。静かでのどかなこの
に負けない人だけが生活してい
ら。もっとも、厳しい島の環境
っている特殊な構造がポイ
%
た。
拾いになると険しい岩場をヒョ
る人が、いざ、ウニ採り、海草
一年間の在任期間の中で、何
年五月のことでした。
元気なお年寄り
人口三百五十人。その内百八
齢化地域です。島に赴任する前
十人が七十五歳以上という超高
あまり縁のなかった在宅医療・
にそのことを伝え聞き、今まで
勉強して乗り込みました。しか
ケアに関して︵一夜漬けながら︶
役に立ちませんでした。
し、実際にはあまりその知識は
というのも、島のお年寄りは
皆元気なのです。普段、足腰が
にもあるが、これは軽石の
ように、内部が直径百五十
の微小な空洞で満たさ
の穴でつなが
れ、しかもすべての空洞が
平均四十
ントだ。﹁移植すると、穴
を通って周辺から正常な骨
成分であるハイドロキシア 最終的には骨が形成され、
HAを使った人工骨はほか 吉川教授はきめの細かい角
パタイト︵HA︶が材料。 患者の骨と一体化する﹂。
手にこう話す。
砂糖のようなネオボーンを
骨の欠損部を埋める場
合、一九九○年代までは患
する方法が主流だった。し
者自身の骨盤を削って移植
【私の勤務地】焼尻島は、北海道の日本海側に浮
かぶ周囲約1
2 の離島。対岸の羽幌町まではフェリ
ーで1時間を要する。島で唯一の医療機関が、道立
焼尻診療所。医師、看護師、事務員各1人、合計3
人が勤務している。
が使われてきたが、生体組
ほかの人工骨並み。保険適
用の対象にもなっている。
トラブルなし
移植したネオボーンの吸
体内に残るが、骨と同じ成
収は遅く、五年から十年は
授は﹁骨粗しょう症などの
分のため害はない。吉川教
い自分の骨で置き換わらな
患者さんにとっては、もろ
ある﹂と話している。
い方が、むしろ治療効果が
ネオボーンを販売する医
療器具製造販売会社﹁エム
・ エ ム ・ テ ィ ー ﹂︵ 大 阪 市
吉川教授はより大きな骨
ネオボーンは特殊な構造 効 果 が 得 ら れ て い る と い の欠損部に適用するため、
消。中に入り込んだ細胞が は患者さんの健康な骨盤を の骨髄から採取してネオボ
する臨床研究を、同病院未
骨を形成するため、ウサギ 削り取る手術はほとんどな ーンに注入、培養して移植
ネオボーンは加工が容易 来医療センターで○四年に
なため、オーダーメードで 開始。骨の形成が早まるか
吉川教授はこれまでに二 欠損部の形に合わせて加工 どうかを検証している。
いHAや天然のサンゴなど 認されている。
部につながった穴を持たな 強度が三倍になることが確
人工骨にはこれまで、内 の実験では移植後九週間で くなった﹂と吉川教授。
強度が3倍に
の開発が求められてきた。 を採用することで欠点を解 う。何より﹁大阪大病院で 骨に成長する幹細胞を患者
が多く、安全で強い人工骨
ため移植用に使えないこと がしばしばあったという。 再生するなど、良好な治療
は、骨盤の骨自体がもろい 移植部分で再骨折すること し、三カ月から半年で骨が 報告も一切ない﹂と話す。
らに骨粗しょう症の患者で で骨が再生しないために、 症の患者二百人以上に使用 術後のトラブルや感染例の
危険性が三割ほどある。さ HAによる人工骨は内部ま 骨粗しょう症、変形性関節 げは毎年、倍増している。
などの合併症を引き起こす 難があった。
例えば、
従来の や骨腫瘍、関節リウマチ、 月の販売開始以来、売り上
かしこの場合、痛みや血腫 織との親和性や強度の点で 歳から八十八歳までの骨折 中央区︶は﹁二○○三年九
大阪大の
教授開発
!
北海道立焼尻診療所
最終的に骨と一体化
&
診療所の正面。隣に公宅がある
#
$
ネオボーンは骨や歯の主 や血管の細胞が入り込む。
骨の欠損部
再生を補助
骨折や良性腫瘍︵しゅよう︶の切除などでできた
骨の欠損部を補うために、さまざまな人工骨が開発
されている。大阪大病院整形外科の吉川秀樹教授ら
が開発した﹁ネオボーン﹂は、骨の再生を補助する
効果がある医療用具として国が唯一承認した人工骨
で、医療現場で急速に普及しつつある。
最新人工骨治療が普及
"
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$
2
5期生2
0
0
2年卒
日下勝博
骨の再生を補助する人工骨﹁ネオボーン﹂。立方体、
円すい形、顆粒などさまざまな形があるほか、オ
ーダーメードで欠損部に合わせた加工が可能︵エ
ム・エム・ティー提供︶
骨盤の切削転用不要に
北海道
18
#!!$年(平成18年)%月"#日(土曜日)
第3種郵便物認可