再び関心が高まるノルウェー・英国の探鉱開発 -大規模発見が続くノルウェー、M&Aが活発な英国- 2013年2月14日 石油調査部 大貫 憲二 1 本日の流れ(目次) 1.関心を惹きつけるノルウェー・英国上流事業 2.ノルウェー・英国上流事業を取り巻く状況 (1)大規模発見が続くノルウェー (2)大規模開発の推進 (3)活発なM&A (4)盛況な探鉱ライセンスラウンド (5)新設鉱区公開への期待(ノルウェー) 3.インプリケーション 2 関心を惹きつけるノルウェー・英国上流 -減少する生産量⇔高まる関心- (出所:英国DECC※2) (出所:ノルウェーNPD※1) ※2013-17は予測値 図 石油・天然ガス生産量(ノルウェー) 図 石油・天然ガス生産量(英国) ○減少する国内生産量 ノルウェー:2004年をピークに減少(2012年:▲15%) 英国:1999年をピークに減少(2011年:▲62%) ※1:Norwegian Petroleum Directorate ※2:Department of Energy and Climate Change 3 ①大規模発見が続くノルウェー -過去3年間の大規模発見- 表 ノルウェーにおける大規模油ガス田の発見(2010年-2012年) 油ガス田名 地域 Johan 北海 Sverdrup Skrugard バレンツ海 Havis バレンツ海 オペレーター Statoil Lundin Statoil Statoil 発見 可採埋蔵量 ・1.7-3.3 Billion boe 2010/11 2011 2012 King Lear 北海 Statoil 2012 Skarfjell 北海 Wintershall 2012 ・200-300 MMboe ・200-300 MMboe ・隣接するSkurgardと共に開発予定 ⇒計:400-600 MMboe ・70-200 MMboe ・主に天然ガス ・60-160 MMboe ・主に石油 4 ①大規模発見が続くノルウェー -事例:Johan Sverdrup油田- <Johan Sverdrup油ガス田> ○2010年-11年に発見 ○Avaldsnes(Lundin)と Aldous(Statoil)が統合 ○可採埋蔵量:1.7-3.3 Billion boe ○ノルウェー領北海(Utsira High) 成熟エリアでの大規模発見で注目 (出所:ノルウェーNPD) 図 Johan Sverdrup鉱区 <成熟地域・未発見地域での新たな発見:要因> ①新たな概念(新たに対象とする地層や構造)の導入 ②探査技術・解析技術の進歩 ③掘削技術の進歩 5 ②大規模開発の推進 -事例:Aasta Hansteen(ノルウェー)/Mariner(英)- <Aasta Hansteen油ガス田> <Polarledパイプライン>(ノルウェー) ○開発申請中(12年12月提出) ○油ガス田開発+パイプライン開発 ⇒周辺油ガス田の開発も可能に ○$10.2 billionの開発計画 (油ガス田5.7+パイプライン4.5) (出所:Statoil HP) ○可採埋蔵量: 図 Aasta Hansteen/Polarled 配置 ガス:1.7Tcf+コンデンセート:5MMbbl <Mariner油田>(英国) ○最終投資決定済み(12年12月) ○$7 billionの開発計画 ○可採埋蔵量:250MMboe以上 (出所:Statoil HP) 図 Mariner油田(英領北海) 6 ③活発なM&A ○2012年のM&A件数 ノルウェー:16件、英国:39件(主な実績:参考資料参照) ○M&Aに見られる特徴 ①英領・ノルウェー領北海の非コア資産売却 ・投資の見直しと適正配分(BP、Total、Eni、Talisman他) ②コア地域へのフォーカス ・メジャー・上流大手企業: 大規模な発見、資産取得のため、フロンティア地域へ (バレンツ海、ノルウェー海、Shetland諸島西側等) ・中小独立系:既存インフラが使用可能な英領北海がメイン ③企業間の大型資産スワップ ・Wintershall⇔Gazprom間のスワップでは、中下流資産 (トレーディング企業、天然ガス地下貯蔵設備運営)も対象に ※その他、Total⇔ExxonMobil,Wintershall⇔Statoil間で実施 7 ④盛況な探鉱ライセンスラウンド -ノルウェー- <ノルウェー:2つのライセンスラウンド> ①探鉱ライセンスラウンド ・2年に1回開催、新規鉱区を公開 ・第22回ラウンド:2012年12月締切、2013年夏付与予定 ②APA(Awards in Predefined Areas)ライセンスラウンド ・2003年新設、 毎年開催 ・返還された鉱区 を公開 ・APA2012: 13年1月付与 (出所:ノルウェーNPD) 図 APA2012で入札された鉱区 8 ④盛況な探鉱ライセンスラウンド -ノルウェー:APA2012- <APA2012ライセンスラウンド:傾向> 1)メジャー ・Shell、ExxonMobil、Totalの関心が高い ・Shellはノルウェー海に関心、ExxonMobilとTotalは全て北海 2)上流大手 ・Eni⇒バレンツ海への関心が高い(ほぼ全て) 3)ノルウェー国営企業(Statoil、Det Norske、Petoro) ・取得鉱区数が圧倒的に多い(95鉱区中21鉱区でオペレーター) 4)欧州ユーティリティー ・Centrica,E.ON,RWE,OMVがオペレーター権益を獲得 5)欧州上流企業(Wintershall、Maersk):オペレーター志向 6)独立系中小企業 ・北海が主な権益取得エリア ・Lundin Petroleumのみフロンティア志向(バレンツ海、ノルウェー海) 7)日本企業:出光スノーレ、1鉱区獲得(北海、20%) 9 ④盛況な探鉱ライセンスラウンド -英国:第27回洋上探鉱ライセンスラウンド- <英国:洋上探鉱ライセンスラウンド概要> ・1964年の第一回ラウンド以降、概ね2年に1回開催 ・第27回ラウンド(2012年5月締切、2012年10月付与) 申請鉱区数:418で過去最多、鉱区付与数も最多となる見込み Round 1 Year 1964 2 3 4 5 6 1965 1970 1971-72 1976-77 1978-79 7 8 9 10 11 12 1980-81 1982-83 1984-85 1986-87 1988-89 1990-91 13 14 15 16 17 18 1990-91 1992-93 1994 1994-95 1996-97 1998 19 20 21 22 23 2000-01 2002 2003 2004 2005 24 25 26 27 2007 2009 2010 2012 図 英国:洋上探鉱ライセンスラウンド実績推移 (出所:英国DECC) 10 ④盛況な探鉱ライセンスラウンド -英国:第27回洋上探鉱ライセンスラウンド- <第27回洋上探鉱ライセンスラウンド:傾向> 1)メジャー ・Total(オペレーター:24件)、Shell(オペレーター:5件)の高い関心 2)上流大手 ・Statoil(20件)、BG Group(8件)の高い関心 3)欧州上流企業:DONG、Maersk、Wintershallの高い関心 ・オペレーター志向(DONG:28、Maersk:4、Wintershall:6) ・DONG:28件全てがShetland諸島西側鉱区⇒フロンティア志向 4)欧州ユーティリティー(Centrica,GDF Suez,E.ON,RWE,OMV) ・Shetland諸島西側の割合が高い⇒フロンティア志向 5)独立系中小企業:英領北海が主な権益取得エリア 6)日本企業の躍進 ・JX Nippon,Inpex、Idemitsu、Summitが鉱区権益を獲得 ・JX NipponはShetland諸島西側にオペレーション権益(全5鉱区) 11 ⑤新設鉱区ライセンスラウンドへの期待 -ノルウェー:バレンツ海南東部- ○ロシア-ノルウェー間の海洋境界紛争が解決(2010年) ○政府が探査を実施(2011年-2012年) ○2013年春の議会に、同地域の開発に関する法案提出の予定 ⇒バレンツ海南東部が新たに鉱区公開される可能性が高まる (出所:ノルウェーNPD) 図 新規鉱区公開が想定されるバレンツ海南東エリア 12 まとめ (1)ノルウェー・英国での上流事業の関心の高まり ①大規模発見が続くノルウェー ・成熟地域や未発見地域での大規模油ガス田の発見 ⇒新たな概念の導入/探査・解析技術の進歩/掘削技術の進歩 ・同事象が英領北海等で起こった場合、新たなポテンシャルに ②盛況なライセンスラウンド/活発なM&A ・同地域への関心の高さの現れ ・企業カテゴリーや個別企業毎に重点地域が異なる⇒示唆 ③新規鉱区公開に向けた動き(ノルウェー) ・バレンツ海を含めたフロンティア地域への新たな参入の可能性 (2)インプリケーション ・北極海航路の開発との相乗効果⇒石油・LNGの活発な流れ ・ノルウェー:総合的なポテンシャルの高さ 13 (参考資料) ①ノルウェーにおけるM&A(2012年) 表 ノルウェーにおける2012年の主なM&A 買主 Centrica Lundin RWE Dea OMV 売主 ConocoPhillips Talisman Wintershall ExxonMobil 内容 ・Statfjord15.17%他を$223 millionで購入(1月) ・ノルウェー領北海:Brynhild油田(旧Nemo)20%を売却(12月完了) ・PL418(Skarfjell)10%をRWE Deaに売却(3月) ・ノルウェー領北海:Aasta Hansteen油ガス田の15%を購入、ノルウェー領 北海ガスインフラ(NGSI)プロジェクト権益を増加することで合意(7月) Faroe Talisman ・バレンツ海:Darwin鉱区ライセンスPL531の12.5%を獲得(8月) Shell BP ・ノルウェー海:Draugen油田18.36%の$240 millionでの購入に合意(9月) Total⇔ExxonMobil ノルウェー領北海の資産スワップ協定に合意(10月) <Total⇒ExxonMobil>Snorre油ガス田6.2%他 <ExxonMobil⇒Total>Oseberg:4.7%、Oseberg輸送システム:4.3%他 Statoil⇔Wintershall ノルウェー領北海の資産スワップ協定に合意(10月) <Statoil⇒Wintershall>Brage:32.7%+Ope、Gja:15%、Vega:30% <Wintershall⇒Statoil>Edvard Grieg(旧Luno):15%+$1.45 billion OMV RWE Dea Edvard Grieg油ガス田(元Luno)20%を少なくとも$323.5 million)で獲得する ことに合意(10月) Tullow Spring Energy ノルウェーのマイナー企業Spring Energyの$672.3 millionでの購入に合意(12月) ※Spring Energy:ノルウェーの有望鉱区に28の洋上ライセンスを保有 14 (参考資料) ②英国におけるM&A(2012年) 表 英国における2012年の主なM&A(その1) 買主 EnQuest EnQuest Centrica Dana Petroleum Perenco TAQA EnQuest 三井物産 売主 Canamens Nautical Petroleum Total Hess BP Sterling Resources First Oil BP OMV 未発表 Bridge Energy OMV OMV⇔Statoil Sinopec BP Talisman Total 丸紅 Faroe Petroleum Hess Hess Shell Shell 内容 ・子会社買収を通じ、Kraken重質油田20%権益を取得(1月) ・北海:Kraken25%権益購入。可採埋蔵量に応じ$150-240 million(1月) ・北海中央部:Totalのノンオペレーション資産を£246 millionで購入(2月) ・北海中央部:Bittern権益の28.3%を購入、合計33%に(2月) ・北海南部:ガス資産を$400 millionで購入(BPメキシコ湾事故対応)(3月) ・Cladhan油田の13.5%権益を$47 millionで購入(4月) ・北海のKrakenを含む2権益を15%獲得。Krakenの総権益60%に(4月) ・英領北海:Alba13.3%、Britannia8.97%の権益を$280 millionで売却 ・三井物産初の英国領北海域における生産鉱区権益取得(6月) ・北海:Berylの5%権益を$118 millionで売却することに合意(6月) ・P.090AとP631 Licence13.62%を$18 millionで売却することに合意(6月) 英国洋上での資産交換(6月) <OMV⇒Statoil>北海北部:Mariner East:30%権益 <Statoil⇒OMV>Shetland諸島西側:Tobermory、Bunnehaven 17.5% ・英領北海:資産の49%をSinopecへ$1.5billionで売却することに合意(7月) ・英領北海中央部:ETAPのTotal分、Mungo12.43%とETAP中央処理施設 (CPF)3.4%を購入($160 million)(8月) ・East Foinaven10%、Shetland Pipeline System0.5%を$32 millionで 購入することに合意(9月) ・Schiehallion油田(オペレーター:BP)Hess分15.67%の獲得完了(9月) ・BerylコンプレックスのHess権益分の$525 million での購入に合意(10月) 15 (参考資料) ②英国におけるM&A(2012年) 表 英国における2012年の主なM&A(その2) 買主 売主 Gazprom⇔Wintershall (資産スワップ) 内容 ・英・蘭領北海資産、欧州中流資産とロシア油ガス田権益の資産スワップ 合意(11月) <Gazprom⇒Wintershall> 1)西シベリアUrengoy油ガス田Achimov層のBlock4及び5:25%+1株 <Wintershall⇒Gazprom> 1)Wintershall Noordzee(英領・蘭領北海に探鉱・生産資産を所有):50% 2)Gazprom/WintershallのガストレーディングJV(共同事業) Wingas、WIEH、WIEEのWintershall分(50%)を譲渡 3)ガス貯蔵施設(Rehden、Jemgum(ドイツ)、Haidach(オーストリア))譲渡 4)ガス貯蔵施設オペレーターAstoraを譲渡 Trapoil ⇔ Gaithness Petroleum ・英領北海:Inner Moray Firthの鉱区権益スワップに合意(11月) TAQA BP ・$1.058 billionの英国資産売却に合意(11月) 1)Maclure:37.03%、Harding:70%、Devenick:88.7%(BPオペ資産) 2)Brae complex:27.7%、Braemar油ガス田:52%(BPノンオペ資産) 3)Braeエリアの関連輸送インフラの権益増加 ※BPの非コア資産 $38 million売却目標にほぼ到達 (2010年以降$37 billionの資産売却) SSE BP ・英領北海南部:Seanガス田50%の$228 millionでの売却に合意(12月) JX Nippon Eni ・17の生産油ガス田、7の未開発・開発中の油ガス田の売却に合意(12月) Oil & Gas Claymore油田:20%、Mariner油田:28.89%他 Exploration ※Eniの非コア資産を売却する計画の一環 16 (参考資料) ③ノルウェー:APA2012 結果 表 ノルウェー:APA2012ライセンスラウンド結果 企業 ライセンス(鉱区数) 区分 企業名 メジャー Royal Dutch Shell ConocoPhillips BP Chevron ExxonMobil Total Marathon(US) BG(UK) Eni(Italy) Statoil(Norway) Det Norske(Norway) Petoro(Norway) DONG Energy(Denmark) Maersk(Denmark) Wintershall E&P(Germany) Repsol(Spain) Centrica(UK) GDF Suez(France) E.ON(Germany) RWE Dea(Germany) Bayerngas(Germany) OMV(Austria) Edison(Italy) VNG(Germany) Idemitsu 米国上流企業 上流大手企業 ノルウェー国営企業 欧州上流企業 欧州ユーティリティティー 欧州上流&トレーディング企業 日本上流企業 オペレーター数 ノンオペレーター 11 0 0 0 0 8 1 4 1 16 5 0 2 4 7 3 5 0 9 3 1 2 0 3 0 合計 0 1 0 1 11 9 3 2 8 17 12 45 11 1 0 0 10 8 4 1 12 0 5 3 1 11 1 0 1 11 17 4 6 9 33 17 45 13 5 7 3 15 8 13 4 13 2 5 6 1 ノルウェー海 バレンツ海(フロンティア地域) ノルウェー海鉱区 ノルウェー海割合,% バレンツ海鉱区数 バレンツ海割合,% (オペレーター案件) (オペレーター案件) (オペレーター案件) (オペレーター案件) 10 91 0 0 0 0 0 0 0 0 0 0 0 0 0 0 0 0 0 0 0 0 0 0 0 0 1 100 1 6 7 44 0 0 0 0 0 0 1 50 0 0 0 0 0 0 0 0 0 0 3 100 0 0 1 20 0 0 0 0 2 22 0 0 3 100 0 0 0 0 0 0 2 100 0 0 0 0 0 0 0 0 0 0 - ※独立系中小E&P企業結果を除く (出所:NPD資料を元に作成) 17 (参考資料) ④英国:第27回ライセンスラウンド 結果 表 英国:第27回ライセンスラウンド結果 ※独立系中小E&P企業結果を除く (出所:DECC資料を元に作成) 18
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