ベニバナイチヤクソウの糖の獲得に関わる 菌糸ネットワークの解明

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ベニバナイチヤクソウの糖の獲得に関わる菌糸ネット
ワークの解明
福川, 悟
平成18年度帯広畜産大学後援会報告(35): 28-31
2007-03-31
http://ir.obihiro.ac.jp/dspace/handle/10322/1010
Rights
帯広畜産大学学術情報リポジトリOAK:Obihiro university Archives of Knowledge
助成番号:620
ベニバナイチヤクソウの糖の獲得に関わる
菌糸ネットワークの解明
福 川 悟
畜産学研究科畜産環境科学専攻生態系保護学講座(修士課程1年)
1.目
的
十勝地方の孤立した森林内の地表には,多様な草本植物が生い茂っている。その一つであるベニ
バナイチヤクソウは,暗い林の中で1年中緑の葉をつけ,初夏には花を咲かせる草本である。とこ
ろで,森林内の樹木の根には,一般に共生菌(菌根菌)が存在することが知られている。近年,こ
の菌根菌が植物の個体間や異種間の根を菌糸でつなぐ菌根菌ネットワークが存在し,その菌糸を通
じて光合成産物である糖が植物間で移動する可能性があると示唆されている。今まで一般的に生態
系の成り立ちは,植物間の光や養分を巡る種間や種内での競争関係だけで考えられてきた。しかし,
この菌根菌ネットワークの存在は,まだ仮説ではあるが,植物間の競争以外の生態系維持メカニズ
ムの存在をうかがわせるものである。ベニバナイチヤクソウもこの菌根菌ネットワークを利用し,
樹木の糖を獲得している可能性が高いことが,申請者の卒業研究から明らかとなった。そこで本研
究は,そのベニバナイチヤクソウを対象とし,菌根菌との共生関係を示し,菌根菌菌糸のネットワ
ークの存在解明を行う。
2.方
法
十勝地域のカラマツ林,シラカンバ林,アカエゾマツ林内に存在するベニバナイチヤクソウの群
落から,ベニバナイチヤクソウの根の共生菌(菌根菌)と,周囲の樹木の根の共生菌を採取した。
その菌根菌の rDNA を対象に PCR-RFLP 法を用い,種レベルでタイプ分けを行った。この作業は
400サンプルを対象に行った。分類されたタイプのうち,主要な19タイプは rDNA の ITS 領域を対
象としたシークエンスにより,菌種を特定した。また,同属の他のイチヤクソウ属植物種のコバノ
イチヤクソウ,コイチヤクソウの根の菌根菌も採取し,おのおのコバノイチヤクソウを37サンプル,
コイチヤクソウを30サンプルを対象に PCR-RFLP 法を用い,種レベルでタイプ分けを行った。
3.結
果
カラマツ林の3カ所のベニバナイチヤクソウ群落からは,27種の菌根菌が出現した。優占してい
る種はイボタケ科(Thelephoraceae sp.)
,Amphinema 属,アセタケ属(Inocybe sp.)
,ロウタケ科
(Sebacina sp.)の菌であった。これらを採取した同じ場所のカラマツ根系の菌根からは,35種の
菌が出現し,ベニバナイチヤクソウと同様の種の菌が約65%を占め優占していた(Fig. 1)。シラカ
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ンバ林の4カ所のベニバナイチヤクソウ群落からは,22種の菌根菌が出現し,イボタケ科の菌が優
占していた。同じ場所のシラカンバの根系からは26種出現し,同様にイボタケ科の同種の菌が優占
していた(Fig. 2)。アカエゾマツ林の2カ所のベニバナイチヤクソウ群落からは,5種の菌根菌が
出現し,Amphinema 属の菌が優占していた。同じ場所のアカエゾマツ根系からは8種出現し,未
同定のタイプ HB,GB が優占していた(Fig. 3)
。
また,ベニバナイチヤクソウと同じカラマツ林で採取した同属のコバノイチヤクソウの2カ所の
群落では,ベニバナイチヤクソウでも優占していたイボタケ科,アセタケ属の菌が優占していた。
その一方で,同じく同属のコイチヤクソウでは,ベニバナイチヤクソウでは出現しなかった種が優
占していた(Fig. 1)。
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Fig.1 カラマツ林で採取した各種植物の根系から出現した菌根菌の RFLP タイプ名および種名と,その
出現数 a: ベニバナイチヤクソウ b: ベニバナイチヤクソウと同じ場所で採取したカラマツの
根系 c: 同属のコバノイチヤクソウ d: 同属のコイチヤクソウ
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Fig.2 シラカンバ林で採取した各種植物の根系から出現した菌根菌
の RFLP タイプ名および種名と,その出現数 e: ベニバナイ
チヤクソウ f: 同所で採取したカラマツの根系
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Fig.3 アカエゾマツ林で採取した
各種植物の根系から出現し
た菌根菌の RFLP タイプ名
および種名と,その出現数
g: ベニバナイチヤクソウ
h: 同 所 で 採 取 し た ア カ エ
ゾマツの根系
察
ベニバナイチヤクソウに優占して出現する菌根菌種は,その林の優占樹木からも優占して出現す
る傾向が全ての調査地で見られた(Fig 1, 2, 3)。つまり,ベニバナイチヤクソウと周辺の樹木では,
同種の菌根菌の菌糸によって根系がつながっている可能性が高いことが示唆された。このことは,
暗い林床で生育するベニバナイチヤクソウは,周辺樹木の光合成産物を部分的にでも得て生活して
いる可能性を示すものである。
ベニバナイチヤクソウの根には,イボタケ科や Amphinema 属,ロウタケ科のような大きな子実
体を形成しない背着性の菌が,場所の異なる3つの林で優占していた(Fig 1, 2, 3)。本植物はこの
ような特性を持つ菌根菌と選択的に共生している可能性が示唆された。また,いくつかの科,属に
またがる複数の菌根菌種が定着していたことから,ベニバナイチヤクソウに定着する菌根菌には,
本植物の近縁の無葉緑植物で知られるのとは異なり,科,属,種レベルの厳密な特異性はないこと
が明らかになった。
ベニバナイチヤクソウに定着する菌根菌種の多様性は,生育場所の違いで異なることが明らかに
なった。カラマツ林,シラカンバ林のベニバナイチヤクソウからは20種以上出現したのに対し,ア
カエゾマツ林のものからは5種しか出現しなかったことは興味深い(Fig 1, 2, 3)。この菌根菌種の
出現数は,その林の優占樹木からの出現種数よりもやや少ない数である傾向が全調査地で見られた。
このことから,ベニバナイチヤクソウに定着する菌根菌種の多様性は,生育する林内の菌根菌種の
多様性に影響を受けていると考えられる。
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一方,ベニバナイチヤクソウで優占していた菌根菌種が,同属のコバノイチヤクソウでも優占し
ていたのに対し,コイチヤクソウではベニバナイチヤクソウで出現しなかった種が優占していた(Fig.
1)
。このことは周辺の樹木のカラマツの菌根菌とは種の共通性が低いことを示し,同属の植物で
も種によって周辺樹木との結びつきの程度に違いがあることが考えられた。
4.謝
辞
本研究の実施にあたりご援助いただいた財団法人帯広畜産大学後援会に感謝いたします。
キーワード:菌寄生植物,菌根,イチヤクソウ,多様性
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