式 辞 院長 寺園喜基 - 西南学院大学

2007 年 4 月 2 日大学入学式
式
辞
院長
寺園喜基
新入学生の皆さん、ご入学おめでとうございます。ご家族、関係者の方々もおめでとう
ございます。西南学院は幼稚園、保育所から中・高、大学・大学院まで、園児・生徒・学
生およそ1万数百名と教職員およそ5百名から成っています。学院を代表して心からお祝
いを申し上げます。西南学院全体が皆さんの入学を喜び、歓迎いたしております。
この喜ばしい入学式に当たり、私は 2 つのことをお話したいと思います。第 1 は西南学
院の建学の精神についてであり、第 2 は心の教育についてです。
第 1 は建学の精神についてです。西南学院は今から 91 年前、米国南部バプテスト派宣教
師達と日本人賛同者達によって、C.K.ドージャー先生のリーダーシップのもとに創設され
ました。設立の前年に、一人の宣教師が本国に手紙を書きました。その中には、
「日本にお
ける私たちの事業にとって、最も緊急に必要なことの一つは、一つの男子中学校をもつこ
とであります。私たちは、それを第一級の中学校にしたいと願っています」とあります。
学院は時代と共に変化・発展しつつ、この宣教師の願いを実現するために、邁進している
ところであります。
創立者はドージャー先生です。建学の精神はキリスト教であり、特にドージャー先生の
「西南よ、キリストに忠実なれ」という言葉がスクールモットーです。キリスト教は平和
の宗教であります。十字軍や宗教戦争の時代もありましたし、宗教原理主義を唱えるグル
ープもありましたが、それは間違ったあり方でした。キリスト教は何よりも平和、愛、自
由、人権等の普遍的価値を重視します。特に平和を大切な価値とし、
「平和をつくり出す」
ことに努めています。旧約聖書は、「(国々は)剣を打ち直して鋤とし、槍を打ち直して鎌
とする。国は国に向かって剣を上げず、もはや戦うことを学ばない」
(イザヤ 2:4)と勧め、
キリストは「剣を取る者は皆、剣で滅びる」
(マタイ 26:52)と言い、
「平和をつくり出す人
たちは、幸いである」と言います。さらに「敵を愛し、自分を迫害する者のために祈りな
さい」
(マタイ 6:44)とさえ言われます。仮令これが理想に過ぎなくても、目指すべき理想
としての平和を知っているのと、争い・戦いの現実しか知らないのとでは、雲泥の差があ
ります。西南学院の教育・研究の基本線は、平和をつくり出すことです。その一例として
国際交流があります。国際交流は、独善的な民族主義から抜け出して世界平和を実感でき
る場面であります。このために入学したら語学や情報処理をしっかり身につけて頂きたい
ものです。またキリスト教が平和の宗教であるからには、キリスト教を学ぶことは大変有
意義なことです。学問・研究の対象として、また人生の知恵・道標として、取り組んで頂
きたいと思います。
第 2 は心の教育についてです。昨今では国を挙げて心の教育の必要性が語られます。そ
の背景には、青少年犯罪や家庭内殺人、青少年を狙うオウム真理教やカルト集団の犯罪等
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があります。あるいは、90 年代以後の世界の状況変化やグローバル化等に対応する、内向
きのナショナリズム的傾向もあるでしょう。しかしながら国が推進する精神教育には、限
界があります。何故なら、それは時の権力者や政府の政策によって左右されてしまいがち
だからです。それは心の自由、精神のセンシビリティーには届かないのです。もしもそれ
が強制されるなら、独裁政治になることになります。
西南学院は精神教育を重んじ、キリスト教を基盤として心の教育を行います。その際の
教育の主体は皆さん、一人ひとりの学生自身です。大学はキリスト教を紹介し、情報を提
供します。選び取るのは皆さんであり、宗教の自由は保障されます。西南学院はキリスト
教のもつ普遍的価値観を勧めるのみであります。しかしながらこの勧めをどうでもよいこ
とと思わず、真剣に取り組んで欲しいと希望します。
最後に、或る先輩のエピソードを紹介しましょう。彼は数年前に福岡市内の有名デパー
トを人事部長まで勤め上げて、定年退職した方ですが、こんなことを話されました。彼が
そのデパートに受験した時、筆記試験と面接に合格して、最後に社長との 1 対 1 の面接が
あったそうです。緊張して席に着くと社長は、
「君は西南学院大学で何を学びましたか」と
質問しました。商学部卒だったので、簿記や経営学と答えるべきところでしたが、それは
社長には通用しないだろうと思い、とっさに「キリスト教を勉強しました」と言ったそう
です。キリスト教徒でもないし、ただチャペルだけは欠かさず出席していただけなのに、
とっさにそう答えたというのです。しかし社長は、面白い若者だと言い、キリスト教のこ
と、人生観や世界観等について話が弾み、ついに合格したというのであります。これが今
日、何時でも何処でも、通用するとは思われません。しかし皆さんがこの大学でキリスト
教を学ぶことによって、人生における大事な価値を学び、揺るぎない自信のようなものが
生まれるでしょう。こうして皆さんの心は大きく育てられるのであります。
以上、建学の精神について、心の教育について、という 2 つをお話しました。今日から
始まる皆さんの学生生活が、大いに祝福されますようにとお祈りして、式辞といたします。
本日の入学、おめでとうございます。
2
2007 年 4 月 2 日大学入学式
告
辞
学長 G.W.バークレー
新入生の皆さん、ご入学、おめでとうございます。西南学院大学へよくいらっしゃいま
した。大学の教員、職員を代表いたしまして、皆さんにお祝いを申し上げます。本日、ご
列席のご家族の皆様にも心からのお祝いを申し上げます。
本日、晴れて入学式を迎えられました学生の皆さんは、今、ご自分の人生の新しいステ
ージの始まりに立っておられます。それぞれが異なった感情を抱いて、かつ、出発への希
望と不安も抱いて、この日を迎えられたことと思います。願わくば、これからの4年間、
あるいは数年間が、皆さんの中でかけがえのない節目となって下さることを心より願って
います。
さて、皆さんは「何故、高等教育を目指されたのでしょうか。」・・・いろいろな選択肢
があったでしょう。すぐに就職したり、専門学校で学んだりすることもあり得たのです。
しかし、皆さんは大学教育、即ち高いレベルの教育を受けることを選ばれました。何故で
しょうか・・・。様々あると思います。ある方々は「勉強が好きだから」と答えてくれる
でしょう。又、大学を卒業することに伴う、有利性を語られるかも知れません。あるいは、
4年の間に留学したい、国外へ行きたい、部活動やボランティア活動に参加したいという
夢も持って、来られたかもしれません。大学にはそのような期待に応じるために、色々な
道やチャンスが用意されています。是非、自ら進んで積極的に関わられることをお勧めし
ます。加えて、主体的に、課外活動やサークル活動にも加わって、自分の居場所も見つけ
て下さい。そうすることで更なる人との出会いが起こり、友情が生まれ、大学生活が一層、
充実すると思います。
さて、その様な皆さんの思いと夢に、私の喜びの心を馳せながら、一言お話をさせてい
ただきます。先ず、大学の4年間は短く、あっという間に終わります・・・。ですから、
是非、毎日精一杯学び、学生生活を送ってください。そのために私共も出来うる最善を尽
くして参りたいと思います。
学生の本分は、自らの目指す学問分野をさらに深めることにあります。真理の探究と言
い換えてもよいでしょう。それによって、自分の視野が広がり、深められます。今までの
先入観や偏見が顕わになります。例えば、「今まで教えられたことには間違いがある」、「当
たり前と思ってきたことは当たり前ではない」、あるいは、「文化における常識には、非常
識も混ぜてある」などです。これらに、気づくと、自分の考え方だけではなく、価値観も
変えられます。真の自己の確立への道行きです。ある場合には、全く未知のエリア、人類
未踏の部分に目が開かれるかもしれません・・・。心からご健闘を祈ります。
さて、紹介にもありましたように、西南学院大学はキリスト教を建学の精神として創立
されましたが、その教典である「聖書」には、よく知られたイエス・キリストのことば、
「求
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めなさい。そうすれば、与えられる。探しなさい。そうすれば、見つかる。門をたたきな
さい。そうすれば、開かれる。」とあります。自然界をはじめ、それぞれの文化、そして各
学問には、真理が秘められています。ですから、これからは、日毎にその真理を見出すチ
ャンス、機会があります。それを十分に用いて下さい・・・。
真理を知るために、「求めること、探すこと、門をたたくこと」、どうかこれを自分の姿
勢としてください。入学式に際して、餞のことばとして、このことばを贈ります。それは、
私たちが、真理を知ることで、自由、真の自由を手にするからです。
真の自由ということで語れば、この大学はキリスト教の一派、バプテスト派の理念に基
づいて建学されました。そして、その理念の中の最も重要な事柄の一つは、信仰の自由で
す。何を信じ、何を信じないかは、個人の自由に委ねられていると信じます。ですから、
皆さんの価値観は重んじられ、宗教観は尊ばれます。大学の中には、全学に開かれたキリ
スト教に関係するプログラムがありますが、是非、それらにも足を運ばれ、生涯の支えと
なる何かを吸収されることをお奨めします。具体的には、チャペル・プログラムがその一
例です。週3回、行われています。チャペルでは、学部間の壁を越えて、学際的視点から、
学内外の方々をお招きし、テーマに添って話していただきます。催しものもあります。チ
ャペルの建物は今年、再建され、来年度からは、新装された美しい建物がお目見えします。
皆さんは、そのチャペルを使用される最初の新入生となられます。それまでは仮会場で行
われますが、心を静め、人生の真理を尋ねるためにもご出席をお奨めします。
最後に、この日から始まる皆さんの学業生活が、そして日々の一こま、一こまが、意義
深く、実り多いものであることを心から望みます。ご入学、おめでとうございます。
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