30E14-pm01S α1-酸性糖タンパク質によるCD163発現誘導を介した生体防御機構の解明 ◯小森 久和 1 ,渡邊 博志 1,2 ,首藤 剛 1 ,甲斐 広文 1 ,小田切 優樹 1,3,4 ,丸山 徹 1,2 ( 1 熊本大院薬,2 熊本大薬育薬フロンティアセ,3 崇城大薬,4 崇城大DDS研) 【目的】溶血により循環血中に遊離したヘモグロビン(Hb)は酸化ストレスを惹起す ることで,様々な組織において炎症を引き起こす.その際,単球及びマクロファ ージにのみ発現する Hb scavenger receptor (CD163) は遊離 Hb を取り込み,分解す ることで,酸化ストレスから生体を保護している.これまで,CD163 を誘導する 内因性リガンドには IL-6 及び IL-10 が知られていたが,そのさらに上流でそれら を調節する内因性分子の存在は不明であった.そこで我々は溶血等の炎症時に著 しく発現が上昇する Į1-酸性糖タンパク質 (AGP) に着目し,CD163 の発現に及ぼ す影響を検討した. 【方法】CD163,IL-6 及び IL-10 の mRNA 及びタンパク質の発 現量は定量的 RT-PCR,Western blotting,及び ELISA により評価した.遊離 Hb の 細胞内取り込みは FITC 標識 Hb を用いて flow cytometry で評価した.溶血モデル マウスは phenylhydrazine を投与して作製し,血漿中の酸化ストレス度は TBARS アッセイ及び dROMs テストで評価した. 【結果・考察】PMA でマクロファージ様 に分化させた THP-1 (dTHP-1)及びヒト末梢血単核球において AGP は CD163 を誘 導した.また,中和抗体を用いた検討により,AGP は IL-6 及び IL-10 の産生を誘 導することで CD163 を誘導することが示された.AGP 処理した dTHP-1 では FITC-Hb の取り込みが増大し,さらに Hb の取り込みによって誘導される HO-1 の 発現が増加した.溶血モデルマウスでの検討において,AGP 投与群では肝臓中の CD163 が増加し,HO-1 の発現もまた増大した.そして,血漿中の酸化ストレス度 は AGP 投与群で抑制された.以上より、AGP は溶血時において CD163 を誘導す ることで生体防御に寄与していることが明らかになり,AGP 製剤あるいはそれを 誘導する薬剤が溶血関連疾患の治療に有用である可能性が示された.
© Copyright 2024 ExpyDoc