Rhodococcus aurantiacus 感染マウスにおける IL-10 と IL

Rhodococcus aurantiacus 感染マウスにおける IL-10 と IL-6 の相互抑制
北海道大学大学院医学研究科先端医学講座
助教 伊
敏
[研究の背景および目的]
細菌感染症においてグラム陰性菌、特に LPS の宿主への作用機序に関する研究が中心となった現在、
グラム陽性菌と宿主の相互作用の研究はまだ数少ない。しかし、グラム陽性菌による敗血症など重篤な
病態は臨床上度々見られる。そこで、我々は肉芽腫性炎症を誘導する細胞内寄生グラム陽性菌
Rhodococcus aurantiacus(R. aurantiacus)を用いてマウスの感染モデルを作製し、感染防御反応における代
表的なサイトカイン TNF-a、IL-6 と IL-10 の役割を解析してきた。以前、TNF-a と IL-6 のバランス
(TNF-a/IL-6 バランス)が免疫反応の方向を規定することを報告したが、本研究は TNF-a/IL-6 バランス
の制御機構を検討することを目的とした。
[研究結果]
1.
in vivo では、R. aurantiacus を感染した IL-6 遺伝子欠損(KO)マウスでは、感染初期に IL-10 産生が
有意に増加した。抗 IL-10 抗体の前投与により IL-6KO マウスは感染後3日までに死亡したとともに高
TNF-a が検出された。また、rIL-6 を IL-6 KO マウスに補充したところ、IL-10 産生は TNF-a とともに
低下した。
2.
in vitro では、R.
aurantiacus 死菌で刺激した IL-6 KO マウス由来の腹腔マクロファージから IL-10
および TNF-a の上昇が確認された。これらの細胞を抗 IL-10 抗体で処理することにより TNF-α産生が
さらに増加した。また、IL-6 KO マウス腹腔マクロファージは rIL-6 での前処理により IL-6KO マウス
のマクロファージから産生された IL-10 が IL-6 濃度依存的に有意に低下した。
3.
野生型マウスの腹腔マクロファージを用いた解析では、抗 IL-10 抗体または抗 IL-6 抗体で前処理
したマクロファージから IL-6 または IL-10 の産生がそれぞれ上昇したとともに TNF-αの上昇も確認さ
れた。さらに、IL-6 抗体と IL-10 抗体の両方で処理したマクロファージでは高 TNF-a が検出された。
[考察]
R. aurantiacus 感染においては、IL-10 と IL-6 は同じ抗炎症作用を有し、TNF-産生を抑制しながら
相互に制御し合うこと判明した。IL-10 は制御因子として TNF-a/IL-6 バランスを規定することが示唆
された。抗 IL-10 抗体を前投与した IL-6KO マウスの高死亡率は、IL-6 と IL-10 の欠損により TNF-の
過剰産生によるものだと考えられ、IL-10/TNF-αのバランスが生体のホメオスタシスの維持に重要であ
ることが示された。