船橋市生活排水対策推進計画(改訂版) 第1章 計画(改訂版)のあらまし 第1節 計画改訂の背景 本市の公共用水域は、新京成電鉄の軌道をおおまかな分水嶺として、单西 側には海老川、長津川、真間川などから東京湾へ、北東側には神崎川、二重 川、鈴身川、桑納川などから印旛沼につながっています。市内の河川は、都 市化の急激な進行により流域人口が増加し、生活排水が河川に流入したため 水質汚濁を引き起こし、悪臭の原因や魚が住めないものとなっていました。 このような状況の中で、平成 2 年に水質汚濁防止法の改正が行われ、従来 の工場・事業場の排水規制と合わせて生活排水対策を推進するための制度が 組み込まれ、生活排水対策重点地域における生活排水対策の実施の推進に関 する基本方針等の事項を盛り込んだ生活排水対策推進計画を定めることが規 定されました。 本市は、平成 4 年 3 月に水質汚濁防止法に基づく生活排水対策重点地域(名 称:船橋市生活排水対策重点地域)に指定され、平成 5 年 3 月に「船橋市生 活排水対策推進計画」(以下「一次計画」という。)を策定し、快適な水環境 づくりを目指し、その実現に向けた生活排水処理施設の整備促進、地域や家 庭でできる発生源対策や啓発事業を市民・事業者・行政が一体となって推進・ 実践してきました。 しかし、一次計画の目標年次が平成 22 年度で終了となることから計画の成 果を踏まえ、一次計画の内容を見直し、更なる水質の改善を求めた生活排水 対策の取り組みを推進するため計画を改訂するものです。 計画の改訂にあたっては、千葉県や本市の生活排水関連計画との整合を図 るものとしました。また、平成 22 年度市政モニターアンケートの結果からも、 市民から見た河川の汚れに対する評価を向上させるため、市民と市がそれぞ れの役割を認識しながらお互いの協力のもと、生活排水対策を推進していく ことが求められています。 1 第2節 一次計画の進捗状況 一次計画における生活排水処理施設の整備、啓発活動の推進及びその他の 施策の推進の取り組み状況を示します。 1 生活排水処理施設の整備 (1)生活排水処理人口 一次計画における生活排水処理形態別の整備状況を表 1-2-1 及び図 1-2-1 に示しました。平成 2 年度末の現況(一次計画の基準年度)に比べ平成 21 年度末(一次計画における実績)では、公共下水道での処理人口が 264,329 人増加し、合併処理浄化槽での処理人口は 9,040 人が減尐し、生活排水処 理人口の割合とする生活排水処理率は、46%から 83%に増えました。 一次計画では、公共下水道での処理人口 442,630 人、合併処理浄化槽で の処理人口 87,893 人の計 530,523 人(一次計画の上での総人口 648,371 人 の 82%)を生活排水処理人口の計画値としていました。人口としては計画 値には至らなかったものの、生活排水処理率は達成しました。 表 1-2-1 生活排水処理形態別整備状況 単位:人 一次計画 項 目 現況 計画値 (平成 2 年度) (平成 22 年度) 実績値 (平成 21 年度) 比較 (B)-(A) (B) (A) 524,921 648,371 598,213 73,292 公共下水道人口 100,607 442,630 364,936 264,329 合併処理浄化槽人口 139,574 87,893 130,534 △9,040 240,181 530,523 495,470 255,289 205,071 103,257 93,479 △111,592 79,669 14,591 9,264 △70,405 284,740 117,848 102,743 △181,997 46 82 83 総 人 口 生活排水処理人口 単独処理浄化槽人口 汲み取り人口 生活雑排水未処理人口 生活排水処理率(%) ※ 生活排水処理率=(公共下水道人口+合併処理浄化槽人口)÷総人口 2 ― 図 1-2-1 生活排水処理形態別整備状況 汲み取り 汲み取り 15% 1% 単独処理 浄化槽 16% 公共下水道 19% 現況 単独処理 浄化槽 39% 実績 公共下水道 61% 合併処理 (平成21年度) 浄化槽 22% (平成2年度) 合併処理 浄化槽 27% (2)汚濁負荷量 一次計画における生活排水処理施設整備などの施策によるBOD汚濁負 荷量の状況を表 1-2-2 及び図 1-2-2 に示しました。 BODの汚濁負荷量の合計では、平成 2 年度末の約 13,542kg/日から平成 21 年度末の約 5,221kg/日と 61%減尐しており、生活系からの排水による汚 濁負荷量は、平成 2 年度末に比べ平成 21 年度末で、約 11,116kg/日から約 4,240 kg/日へと約 38%にまで減尐しました。 一次計画では、生活系の排水によるBODの汚濁負荷量を 55%削減する 計画でした。汚濁負荷量の合計及び生活系からの汚濁負荷量は計画値を達 成しました。 表 1-2-2 BOD汚濁負荷量の削減状況 単位:kg/日 一次計画 現況 (平成 2 年度) 計画値 (平成 22 年度) 実績値 (平成 21 年度) 生活系による汚濁負荷量 11,116.1 4,997.7 4,240.2 産業系による汚濁負荷量 2,037.9 447.6 507.5 畜産系による汚濁負荷量 275.0 23.4 360.3 自然系による汚濁負荷量 113.3 113.3 113.3 13,542.3 5,582.0 5,221.3 59 61 合 計 削減率(%) ― ※自然系による汚濁負荷量の実績値は、一次計画の数値を使用しました。 3 図 1-2-2 BOD 汚濁負荷量の推移 (kg/日) 14,000 自然系 12,000 畜産系 10,000 B O D 汚 濁 負 荷 量 8,000 産業系 6,000 生活系 4,000 2,000 0 現況 2 計画 実績 啓発活動の推進 次の啓発活動に取り組みました。 ・ 広報ふなばし・船橋の環境・環境新聞「エコふなばし」を活用し生活排 水対策の必要性や具体的な対策について情報の提供と啓発を行いました。 ・ ホームページでの環境イベント、水質調査用キットの貸し出しの情報提 供を行いました。 ・ 家庭でできる浄化対策の実践について市民の理解と協力を得るため、環 境フェア・海老川親水市民まつりなどの機会を捉えて啓発を行いました。 ・ 小中学校からの要望による出前講座への講師の派遣、小中学生などによ る環境問題についての市役所への訪問学習の支援を行いました。 ・ 市民への出前講座・水質調査用キットの貸し出しを行いました。 3 その他の施策の推進 市内河川の水質改善や水環境保全のために取り組みました。 ・ 透水性舗装による車道・歩道整備及び市街地における雨水浸透枡設備の 整備により雨水の直接流出の抑制を図り、イベントの機会やホームペー ジを利用し浸透施設整備の啓発を行いました。 ・ 河川に堆積したヘドロの浚渫作業を実施し、水環境の保全を図りました。 ・ 河川及び用地の清掃・草刈を実施し、清潔で快適な空間づくりを図りま した。 ・ 公共用水域の監視を継続的に実施し、調査結果の情報提供を行いました。 ・ 産業系から排出される汚濁負荷を削減するため、特定事業場及び小規模 事業場に対して立入検査を実施し、指導を行いました。 4 第3節 関連計画等 本計画は上位計画である「船橋市環境基本計画」に位置づけられており、「船 橋市都市計画マスタープラン」、「船橋市一般廃棄物処理計画」及び千葉県の 海老川流域・真間川流域・印旛沼流域に係る計画とも整合を図ります。 図 1-3-1 計画の関連図 船橋市総合計画 (基本構想・基本計画・実施計画) 関連法等 ・水質汚濁防止法 ・船橋市環境保全条例 ・千葉県生活排水対策推進計画策定指針 船橋市環境基本計画 関連計画 千葉県 ・海老川流域水循環系再生行動計画 ・真間川流域水循環系再生行動計画 ・印旛沼流域水循環健全化計画 ・東京湾総量削減計画 ・印旛沼に係る湖沼水質保全計画 船橋市 ・船橋市都市計画マスタープラン ・船橋市一般廃棄物処理基本計画 ・一次計画の見直し ・課題と基本方針の策定 ・生活排水関連計画との整合 船橋市生活排水対策推進計画(改訂版) 5 1 船橋市における生活排水対策に関連する計画 (1)船橋市総合計画 平成 12 年 3 月に、市のまちづくりの目標として「生き生きとしたふれあ いの都市・ふなばし」を掲げ、その実現のための基本的な方向と体系的な 施策内容を明らかにすることを目的に「基本構想」、「基本計画」、「実施計 画」から構成される船橋市総合計画を策定しました。このうち基本計画は、 平成 23 年度をもって計画期間が終了することから、平成 24 年度から平成 32 年度を計画期間とする後期基本計画を策定中です。 (2)船橋市環境基本計画 平成 9 年 3 月に船橋市環境基本計画を策定し各種の環境保全の取り組み を総合的かつ計画的に推進してきましたが、計画期間が平成 22 年度で終了 することから、同計画を引き継ぎながら今日の環境問題の課題を明らかに し、市民、事業者、行政が協力して取り組むべき新たな「船橋市環境基本計 画」を平成 22 年度に策定をしています。この計画では、 「公共下水道整備事 業の推進」、「下水処理場における高度処理施設の計画的な整備」、「公共下 水道整備区域内の下水道への接続の推進」、「高度処理型合併処理浄化槽の 普及の促進」、「家庭でできる浄化対策の実践など水環境の保全意識の高揚 に向けて情報提供等の推進」が示されています。 (3)船橋市都市計画マスタープラン 平成 13 年 2 月に、おおむね 20 年後の船橋全体のまちづくりに関する目 標を定める「全体構想」と身近な地域毎のまちづくりの目標を示す「地域 別構想」で構成する「船橋市都市計画マスタープラン」を策定し、土地利 用・市街地整備・交通体系・水とみどり・景観・防災・福祉といった各項 目別のまちづくり方針を定めました。各事業の進捗や社会情勢の変化等に 伴い、平成 21 年度から平成 23 年度にかけて見直し中です。 (4)船橋市一般廃棄物処理基本計画 平成 19 年度を初年度として、循環型社会の形成への理念に基づいて、廃 棄物処理の総合的な推進を図ることを基本として、 「ごみ処理基本計画」及 び「生活排水処理基本計画」を策定しました。このうち、生活排水処理基 本計画の策定にあたっては、 「循環型社会の構築」を基本理念として、その 実現のため基本方針及び施策を定めましたが、平成 22 年度から平成 23 年 度にかけて計画の見直しを行い新たな計画を策定中です。 6 2 千葉県における生活排水対策に関連する計画 (1)海老川流域水循環系再生行動計画 海老川流域水循環系再生行動計画では、 「浸水被害の尐ない安全なまちづ くり」、 「清らかで豊かな流れの創出」、 「渇水時や震災時に強い水利用」、 「自 然との共生」の基本方針のもと、平成27年頃を目標年として海老川流域 の健全な水循環系の再生を目指し、行政・市民・企業等のそれぞれが担う 役割と施策を体系化し、それぞれが協働・連携して実施するため5カ年ご との行動計画として策定し推進しています。 (2)真間川流域水循環系再生行動計画 真間川流域水循環系再生行動計画では、平成32年度を目標年度とし真 間川流域で「自然環境の保全」、 「きれいでうるおいのある流れの創出」、 「水 資源の有効利用」、「浸水被害の軽減」が適切なバランスをとって共に確保 されている状態を達成するために、市民・行政がそれぞれ取り組むべき施 策をとりまとめ5カ年ごとの行動計画として策定し推進しています。 (3)印旛沼流域水循環健全化計画 印旛沼流域水循環健全化計画では、「恵みの沼を再び」という基本理念 のもと、平成42年度を目標年次とし「良質な飲み水の源 印旛沼・流域」、 「人が集い、人と共生する印旛沼・流域」などの5つの目標を定め、印旛 沼に関わる地域住民、市民団体、企業、学校、水利用者、行政等が協働し て、治水,利水,水質,生態系,親水等が適切なバランスで確保される健 全な水循環系の再生のための取り組みを策定し推進しています。 (4)東京湾総量削減計画 東京湾においては、未だ環境基準が達成されていないため、水質汚濁防 止法に基づき、COD、窒素含有量、りん含有量に係る総量削減計画を5 カ年ごとに策定し、汚濁負荷量を統一的かつ効果的に削減するための対策 を推進しています。 (5)印旛沼に係る湖沼水質保全計画 印旛沼においては、依然として汚濁が著しく環境基準の達成及び飲料水 の確保のため、湖沼水質保全特別措置法に基づき水質目標や水質保全対策 を定めた計画を5カ年ごとに策定し、印旛沼の総合的な水質浄化対策を推 進しています。 7 第4節 市民の意識 市民の河川の水や生活排水対策に関する意識を把握するため、市政モニタ ーアンケート調査を実施し、その結果をまとめました。 1 市政モニターアンケート調査の概要 (1) 調査方法 ・調査区域:市内全域 ・調査対象者:市政モニター ・調 査 数:289 人 ・調査方法 :郵送配布/郵送回収 ・調査期間:平成 22 年 6 月 1 日~6 月 15 日 (2) 回収結果 ・モニター数:289 人 ・有効回収数:263 人(有効回答率(91.0%) (3) 回答者のプロフィール ・性別: 男性 128 人(48.7%) 、女性 135 人(51.3%) ・年代: 2 20 代 53 人(20.2%) 、30 代 45 人(17.1%) 、40 代 (17.1%) 50 代 55 人(20.9%) 、60 代以上 65 人(24.7%) 集計結果 (1) 河川の水について 問:あなたの身近にある河川の水は、以前とくらべてきれいになったと 思いますか。 29.7% 分からない 6.8% 汚くなった 37.6% 変わらない 25.9% きれいになった 0% 10% 20% 30% 40% 前回のアンケート結果では、 「大変きたない」、 「きたない」の回答が合わ せて 76.6%であった。今回の調査結果では、以前に比べて「変わらない」、 「汚くなった」が合わせて 44.4%と、河川の水質はまだ改善されていない と思う人が大半でした。 8 (2) 汚している原因について 問: 「変わらない」 「汚くなった」と答えた方で、河川を汚している原因 は何だと思いますか。 0.9% 未回答 1.7% その他 15.4% 分からない 27.4% ごみの不法投棄 4.3% 工場・事業所排水 50.4% 生活雑排水 0% 10% 20% 30% 40% 50% 60% 前回の調査結果と同じく、河川の汚れの原因は生活雑排水によると認識 している人が約半数でした。 (3) 生活排水対策について 問:生活排水対策を進める上で、効果があると思われるものは何ですか。 未回答 1.1% その他 1.9% 生活排水対策のPR 13.7% 生活排水対策についての学習機会 14.1% 工業等の排水規制の強化 9.1% 浄化槽の補助制度 9.1% 下水道の整備促進 51.0% 0% 10% 20% 30% 40% 50% 60% 前回の調査結果と同じく、生活排水対策として効果があるのは下水道の 整備と認識している人が約半数でした。 9 (4) 生活排水対策の実施について 問:あなたはご家庭でどのような生活排水対策を行っていますか。 (複数回答) その他 1.2% 0.2% 特に何もしていない 風呂の残り湯は洗濯等に使う 14.9% 洗濯洗剤は適量を使う 18.8% 食べ残しを台所の排水口に流さない 22.2% 食用油を台所の排水口に流さない 23.6% 水切り袋を使う 19.1% 0% 10% 20% 30% 40% 50% 家庭での生活排水対策については、「食用油を台所の排水口から流さな い」、「食べ残しを台所の排水口から流さない」、「水切り袋を使う」など家 庭での取り組が実施されていますが、まだ実施の割合が低く普及の必要性 があると考えられます。 (5) 環境イベントについて 問:あなたは市内で行われている環境イベントに行ったことがあります か。 (複数回答) 未回答 0.4% 行ったことがない 73.4% その他 1.1% 海老川親水市民まつり 13.1% 環境パネル展 5.3% 環境フェア 6.7% 0% 10% 20% 30% 40% 50% 60% 70% 80% 環境に関するイベントへ行ったことがない人が多く、参加しやすく効果 のある啓発活動を推進する必要があると考えます。 10 (6) 河川のイメージについて 問:あなたが望む河川の姿について、どのようなイメージを思い浮かべ ますか。 (複数回答) 未回答 0.4% その他 0.6% 水とふれあえる 11.7% 蛍がすむ 8.8% 魚釣りができる 6.1% 自然景観がよい 11.3% 19.2% ゴミがない 水がきれい 31.5% 10.4% 氾濫がない 0% 5% 10% 15% 20% 25% 30% 35% 前回の調査結果と同じく、 「水がきれい」が 31.5%と最も多く、ほかに「ゴ ミがない」19.2%をはじめ、いずれも 10%前後で分散していました。 以上の集計結果から、市民は河川の汚れは尐し改善されたと見ているも のの、汚れの主原因は生活雑排水であり下水道の整備が対策として効果が あると考えています。しかし、家庭での生活排水対策の実施や環境イベン トでの啓発の推進も重要であると思われます。 また、市民が望む河川は浄化が進み自然に満ちた親しめる河川を望んで いると考えられます。 11 12
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