ニュースレター - 小石川植物園後援会

小石川植物園後援会
Friend Society of Koishikawa Botanical Gardens
ニュースレター
第45号
(2013 年 6 月)
目次
ご挨拶 小石川植物園後援会会員へのご挨拶
長田 敏行 ......... 1
ご挨拶 植物園の現況について
邑 田 仁 ......... 2
トピック スゲ属植物の系統進化・分類学的研究
矢野 興一 ......... 2
ご 挨 拶
がっていることを実感いたしました。ところで、植物
小石川植物園後援会会員へのご挨拶
園にはこの図説は二冊あり、一方は加藤竹斎が彩色し
長田 敏行 ておりますが、もう一方は無記名で両者の間には色調
小石川植物園後援会会
の違いがあることは興味深いことです。
員の皆様には、日頃当会
一方では、今年度第一回の理事会で報告され、ニュー
活動に御助力いただいて
スレターの本号でも示されているところでは、昨年度
おりますこと感謝申し上
の後援会の収支状況は一層悪くなっております。印刷
げ ま す。 私 は 第 74 回 理
物の頒布が相当減っているようですが、この点につい
事会において推挙され、
ては是非とも会員の皆様にもご理解いただいて、パン
第 18 期後援会の代表者
フレット類をご購入頂けたらと思います。私も欧文版
として務めさせて頂くこ
の植物園案内は初対面の方々には差上げるように努め
とになりました。理学系
ておりますが、特に外国のお客様には喜ばれること申
研究科生物科学専攻の教授として、例外的に 8 年間も
し上げます。第 18 期後援会理事会としてはなんとか
植物園長を務めさせていただいたものとしては、植物
その傾向に歯止めをかけ、財政状況を好転させるよう
園の業務はかなりよく承知しているつもりですが、退
にと努めるつもりですが、現時点ではこの件について
任してから日も経っているので、情勢の変化もあろう
はやっと考え始めたばかりであるという実情申し上げ
ことは想像しております。東京大学にあって、小石川
るのみです。
植物園は 1884 年以来一般公開され、市民に開かれて
ところで、個人的な思いとしては、この 2 年間く
きたことは大変重要であると思います。そして、後援
らいの間に 1878 年制作の加藤竹斎図版を見出すこと
会が創立された時点では様々な問題を抱えており、そ
が出来たことは幸いでした。しかし、これはさらに展
れを裏から支える組織として発足したと伺っている後
開があり、その画の一部はシーボルトの「日本植物誌」
援会は、その精神を再確認してあくまでも植物園を裏
(Flora Japonica) にもたどることができました。良く
から支える有効な手段を探るという姿勢を尊重したい
知られているように「日本植物誌」、「日本動物誌」の
と思います。
原画は「シーボルトの眼」とも称される川原慶賀の図
さて、小石川植物園は昨年画期的な出来事がありま
を元としておりますが、これはセント・ペテルスブル
した。2012 年 9 月 19 日には前寺島園長、邑田教授
クのコモロフ研究所に蔵されていることが比較的最近
の熱意とそれを支えて下さった理学系研究科の皆様の
見出されました。それらの図集は、Florilegium とし
ご尽力により、
国の名勝及び史跡に認定されましたが、
て本会の以前の会長であった木村陽二郎先生によって
これは東京大学の中では唯一のものであるとのことで
丸善から刊行されておりますが、そこにもたどり着く
す。一般公開されてきた植物園に一層の重みを加えて
ことができ、日本における植物画の系譜をたどること
くれるものと思います。但し、国の史跡となると原型
が出来たという思いをしております。しかしながら、
保持というような要請が強く出てまいり、様々な企画
植物園にはその他にも人の目に触れないで眠っている
に制限があることは致し方ないことかと思います。こ
貴重な資料が相当あることは推察できておりますが、
れを記念して 4 月 8 日には看板が新たに門柱に掲げ
未だその全容は未知数です。もしも、それらのいくつ
られ、そのお披露目の会もありましたが、その文字は
かでも明るみに出すことができれば幸いであると思っ
植物園が最初に世界へその存在意義を主張した「小石
ていることを申し上げて、第 18 期理事会出発のご挨
川植物園草木図説」の表題から取っており、本号の表
拶とさせていただきます。
紙に見られるとおりです。この記念碑的な文字がこの
(ながた としゆき
ような形で示されたことは大変喜ばしいことです。昨
・法政大学 教授、東京大学 名誉教授)
夏アメリカへ出張した折に、この図説を先方の図書館
で見ることがありましたが、この本が実際に世界に広
-1-
ご 挨 拶
塀の改修については、今年度に御殿坂に沿った区道
植物園の現況について
の整備が行われます。コンテストによってデザインが
邑田 仁 決定した南西側の塀については、工事範囲に重要な植
二年間にわたり寺島一郎教授に舵取りをお願いして
物がないことを確認したうえで、来年度から実施され
いましたが、この4月から園長に復帰し、諸事を引き
る予定になっています。そのために秋、春、夏に調査
継ぐことになりました。懸案事項山積の現状ですが、
委員会による植物調査を行うこととしており、秋と春
最善の道を選ぶことでなんとか役目を果たしていきた
についてはそれぞれ 2012 年 9 月と 2013 年 4 月に実
いと考えています。
どうぞよろしくお願いいたします。
施ずみです。いまのところ重要なものは発見されてい
最近の植物園について以下のようにご報告します。リ
ませんが、夏の調査結果を踏まえて最終的な判断を下
ニューアルした植物園のホームページもあわせてご覧
します。
下さい。
小石川植物園、日光植物園を通じて、強風等の災害
小石川植物園(御薬園跡及び養生所跡)は 2012
や立ち枯れなどにより、倒木・枝折れの被害が頻発し
年 9 月 19 日に国指定の名勝及び史跡となりました。
ています。これには最近の異常気象のほか、環境の悪
そこで、門柱にこれを表示したプレートを設置し、
化、樹木の成長による相互被陰などが複雑に影響して
2013 年 4 月 8 日に学内外の来賓を招いて除幕式を行
いるものと思われますが、いずれにしても多発してい
いました。現在は文化財を適切に保存し活用するため
ることは事実であり、その処理に多額の費用と手間を
に義務づけられている保存管理計画を作成中であり、
要しています。
植物園としての可能性を十分発揮できるよう、とりま
植物園の事業を多面的に発展させることを目指す
とめを急いでいます。文化財指定を受けたことにより、
「Life in Green」 プ ロ ジ ェ ク ト(http://green.todai-
その他の重要案件も少なからず影響を受けています。
kikin.jp/)は東京大学基金の支援プロジェクトの一つ
公開温室改築については、建物の基本的な設計図が
に認定され、温室の改築資金を第一の目標としてこれ
完成し、本年度に実施に移すことを希望しておりまし
までに1億3千万円余のご寄付をいただきました。後
たが、公開温室の基礎部分が明治時代の構造を引き継
援会会員の皆様には、終身会員として、植物園紹介の
いでいると考えられることや、左右対称の建物の前に
パンフレット作成や植物名ラベル設置、市民セミナー
二つの池が配置された景観が名勝として価値のあるも
の実施など様々な御支援をいただいておりますが、
「Life in Green」につきましても特段のご支援をいた
のであるとの指摘があり、これらの価値の保存を考慮
して進めるため、計画に若干の遅れが生じています。
だきたく、どうぞよろしくお願いいたします。
しかし、来春には着工できるよう努力しています。
(むらた じん・東京大学 教授)
トピック
カヤツリグサ科はすぐに見分けがつく。例えば、茎の
スゲ属植物の系統進化・分類学的研究
横断面では、カヤツリグサ科は 3 角形で中実であるが、
矢野 興一 イネ科は節以外は中空である。葉のつき方については、
スゲ属(Carex )植物は、外部形態が単純な構造を
カヤツリグサ科は一つの節に3列互生するが、イネ科
しているために、同定が難しい分類群のひとつであ
は 2 列互生である。
る。細長い葉身、茎の先端部に花穂をつける特徴を持
カヤツリグサ科植物は、世界に約 100 属 5,000 種
つことから、しばしばイネ科と思っている人も少なく
あり、単子葉植物ではラン科・イネ科に次いで種数が
ないだろう。スゲ属はカヤツリグサ科である。花の構
多いグループである。知名度の高い種は、パピルス
造をじっくりと観察すると、イネ科とカヤツリグサ科
(カミガヤツリ:Cyperus papyrus )であろう。パピル
は全く異なるグループであることがわかる。花以外で
スは小石川植物園の温室にも植栽されている(図 1)。
も、茎の横断面や葉のつき方などをみても、イネ科と
カヤツリグサ科全種数のなかで、1/3 以上を占めて
-2-
図 1(左): 小石川植物園温室(現在は温室は閉室中)のパピルス。 図 2(右): 様々な環境に生育するスゲ属植物。(A)コウボウ
ムギ(Carex kobomugi )、(B)オオクグ(C. rugulosa )
、
(C)アオスゲ(C. leucochlora )
、
(D)ヒメカンスゲ(C. conica )、(E)ハ
リガネスゲ(C. capillacea )、(F)C. rufulistolon 。
いるのがスゲ属植物であり、世界に約 2,000 種あるこ
類群が続々と発表されており、2011 年には栃木県
とが知られている。スゲ属は、高山帯から海岸、乾燥
か ら シ モ ツ ケ ハ リ ス ゲ(C. noguchii ) が、2009 年
地から湿地まで色々な環境に生育し、南極と北極以外
に は 屋 久 島 か ら コ ケ ハ リ ガ ネ ス ゲ(C. koyaensis
の総ての大陸に広く分布しており、多様に分化してい
var. yakushimensis ) と ア キ ザ キ バ ケ イ ス ゲ(C.
る分類群のひとつである。
mochomuensis )、2008 年 に は 小 笠 原 諸 島 か ら チ
例 え ば、 海 岸 砂 浜 に は コ ウ ボ ウ ム ギ(Carex
チ ジ マ ナ キ リ ス ゲ(C. chichijimensis ) と ム ニ ン
kobomugi )が生育しており、海岸岩場にはヒゲスゲ
ヒ ョ ウ タ ン ス ゲ(C. yasuii )、 滋 賀 県 か ら サ ト ヤ マ
(C. boottiana )
、河口付近の塩性湿地にはオオクグ(C.
ハ リ ス ゲ(C. ruralis )、 和 歌 山 県 か ら コ ウ ヤ ハ リ ス
rugulosa )、日当りの良い草地などにはアオスゲ(C.
ゲ(C. koyaensis )、鹿児島県からカゴシマスゲ(C.
leucochlora )、丘陵地から山地の樹林内や岩場にはヒ
kagoshimensis )が報告されている。その他にもマダ
メカンスゲ(C. conica )
、山地の湿地にはハリガネス
ラシマスゲやウスイロヒメカンスゲなどまだ正式に発
、標高 4,000m 付近のヒマラヤ高山
ゲ(C. capillacea )
表されていない分類群も知られている。また、小石川
帯の礫地には C. rufulistolon などがある(図 2)。
植物園内から記載された品種もある。1955 年に小山
日本にはスゲ属植物は 250 種以上あるといわれて
鐵夫博士(高知県立牧野植物園園長)が発表した C.
おり、その約半数は日本に固有な分類群である。特
conica f. albomarginata (植物研究雑誌 30 巻 132 項)
に、北日本の湿地性のスゲ属植物よりも、西南日本の
である。これはヒメカンスゲ(図 2d)の一品種で、
森林性のスゲ属に固有種が多く、種特有な生育環境や
葉の縁が白いものである。
地理的分布が見られる。また、伊豆諸島のオオシマカ
私が大学院博士課程で研究材料にしたのもこのヒメ
、小笠原諸島のセキモンスゲ
ンスゲ(C. oshimensis )
カンスゲである。ヒメカンスゲは北海道から九州およ
(C. toyoshimae )やトカラ列島のトカラカンスゲ(C.
び韓国に広く分布する森林性の多年生草本である。ヒ
atroviridis var. scabrocaudata )など、日本の島嶼部に
メカンスゲが島嶼部で分化したとされる種には、先に
分化した種も多く報告されている。
あげた伊豆諸島のオオシマカンスゲ、トカラ列島のト
近年でも日本各地から日本固有と思われる新分
カラカンスゲがある。また、地域によっては特有な形
-3-
態変異が見られ、瀬戸内海沿岸にはウスイロヒメカン
スゲ(仮称)と呼ばれるものもある。北海道から九州、
63
45N
東日本
I-I
100
韓国(済州島)の各地を訪れて、計 163 地点から 258
I-II
I-III
92
個体のヒメカンスゲ種群(ヒメカンスゲ・オオシマカ
89
ンスゲ・トカラカンスゲ・ウスイロヒメカンスゲ)を
99
100
採集し、DNA による系統関係と染色体数(2n )を解
95
西日本
80
63
63
析をした(Yano et al. 2010)。その結果、遺伝的に大
100
きく異なる 2 系統があることが分かった。系統(I):
II-I
II-II
ヒ
メ
カ
ン
ス
ゲ
種
群
40N
II-III
II-IV
C. formosensis
C. formosensis
C. dimorpholepis
C. kiotensis
I-I
2n = 34
II-IV
2n = 38
東日本集団と大隅諸島集団と、系統(II)
:西日本集団
I-II
2n = 36
(北関東集団を含む)と伊豆諸島集団である(図 3)。
さらに詳しく見ると、系統(I)の東日本集団は、
35N
II-I
2n = 32
大きく次の 3 つの系統に分けられた。系統(I-I):北
海道から近畿地方 ・ 紀伊半島まで広く分布、染色体数
2n = 34。系統(I-II):兵庫 ・ 鳥取県県境の日本海側周
II-II
2n = 36
:大隅諸島に分布、
辺のみに分布、2n = 36。系統(I-III)
II-III
2n = 38
30N
2n = 38。このうち、系統(I-III)はトカラカンスゲで
East China Sea
あり、他の東日本系統と地理的には隔離分布し、遺伝
I-III
2n = 38
的には東日本集団に含まれることがわかった。
140E
130E
135E
図 3: ヒメカンスゲ種群の葉緑体 DNA 多型の分布図。左上の
系統樹はヒメカンスゲ種群の葉緑体 DNA 情報に基づく系統
関係。系統樹上の数値は統計学的な信頼度を示す。
一方、系統(II)の西日本集団は、大きく次の 4 つ
の系統に分けられた。系統(II-I)
:九州太平洋側と瀬
戸内沿岸のみに分布、2n = 32。系統(II-II):紀伊半
なグループはタガネソウの仲間ではないだろうかとい
島から兵庫県以西の本州、四国、九州、済州島の山地
うことである。
に広く分布、2n = 36。系統(II-III):北関東地方のみ
タ ガ ネ ソ ウ 節 は 東 ア ジ ア に 固 有 な 約 12 種 か
に分布、2n = 38。系統(II-IV)伊豆諸島に分布、2n
ら な る 小 さ な 種 群 で あ る。 日 本 に は タ ガ ネ ソ
= 38。このうち、系統(II-I)はウスイロヒメカンス
ウ(C. siderosticta : 図 4 A&B)、 ケ タ ガ ネ ソ ウ(C.
ゲに相当するものである。また、系統(II-IV)はオオ
ciliatomarginata )、 サ サ ノ ハ ス ゲ(C. pachygyna )、
シマカンスゲであり、系統(II-III)の北関東集団と最
イワヤスゲ(C. tumidula )の 4 種類があり、中国に
も近縁であった。
はタガネソウ、ケタガネソウを含めて約 10 種、韓国
このように、ヒメカンスゲ種内には多様な遺伝的な
にはタガネソウ、ケタガネソウ、チイサンタガネソウ
変異があり、それらはそれぞれ特異的な地理的分布を
(C. okamotoi )の 3 種、極東ロシアにはタガネソウが
していることがわかった。また、島嶼部の固有種の系
分布している。主に林床に生育する種群である。タガ
統関係も明らかになった。
ネソウは日光植物園内でも見ることができる。タガネ
さて、ヒメカンスゲも含めて、非常に多様性に富ん
ソウ節は、スゲ属の中で葉の幅が特に広く、大型で少
でいるスゲ属植物であるが、最近では DNA 情報から
ない染色体数(2n = 12 または 2n = 24)を持つこと
新たなことがわかってきている。スゲ属は花序の形態
で特徴づけられている。
から伝統的に 4 つの亜属に分類されている。しかし、
ところが、タガネソウ節以外にも葉の幅が広いスゲ
世界の五大陸約 400 種を用いた DNA による系統関係
属植物は知られている。それは、中国大陸を中心に分
からこの 4 亜属はまとまらないことがわかってきた。
布する Hemiscaposae 節と Surculosae 節の仲間であ
そして、何よりも一番、スゲ属の系統樹の根元にタガ
る。これらの節はそれぞれ 7 種と 3 種からなる小さ
ネソウ節(Section Siderostictae)のグループが位置
な種群であり、スゲの中では珍しく白色の目立つ花序
することがわかってきている。つまり、スゲの祖先的
を持つ種が含まれるグループである(図 4 C&D)。し
-4-
かし、タガネソウ節とは葉の幅の広いこと、主に林床
に生育することしか類似点がない。
では葉の幅が広いスゲ属も加えて、解析するとどの
ような系統関係が明らかになるのか?タガネソウ節と
Hemiscaposae 節、Surculosae 節にみられる幅広の葉
の進化はどのようなものなか?という疑問が生じた。
そこで、日本・中国・韓国から採集したタガネソウ節
9 種 と Hemiscaposae 節 お よ び Surculosae 節 に 属 す
る 5 種を加えて、DNA 系統解析をおこなった。
そ の 結 果、 す べ て ひ と つ の グ ル ー プ に ま と ま
り、スゲ属の系統樹の根元に位置することがわかっ
た(図 5)。さらに、染色体においてもタガネソウ
節、Hemiscaposae 節 と Surculosae 節 は、 大 型 で 少
ない数の染色体(2n = 12 または 2n = 24)を持って
いることがわかった(Yano et al. 論文投稿中)。つま
り、DNA 解析から同一グループとなったタガネソウ
節、Hemiscaposae 節 と Surculosae 節 の 共 通 す る と
ころは葉が広いということ、染色体の数が少なく大型
図 4(上): 葉の幅が広いスゲ属植物。(A)タガネソウ(Carex
siderosticta )の葉、(B)タガネソウの花序、(C)Carex lingii
の全体像、(D)Carex lingii の花序。
であるということである。さらに分布を見ると東アジ
アに固有である。このことから、スゲの祖先的なグ
図 5(下): スゲ属タガネソウ節の葉緑体 DNA 情報に基づく
系統関係。系統樹上の数値は統計学的な信頼度を示す。種名
の後ろの()内の数値は染色体数(2n )を示す。節(section)
名と認識されたクレードを学名の右に示す。右図は Carex
lingii と染色体像(2n = 12)である。
ループはタガネソウの仲間、Hemiscaposae 節および
Surculosae 節であり、アジアがスゲ属の起源ではな
いだろうかということが推定された。
日本も含めて東アジアで
の種の多様性が高いスゲ属
は、あまり目立たない植物
でもあるが、環境の指標に
もなる種も多い。しかし、
その一方で生育環境が失わ
れて絶滅の危機にさらされ
ている種も少なくない。今
後は系統進化・分類学的研
究のみならず、多方面から
更なるスゲ属研究が発展す
ることによって、保護・保
全にもつながるだろう。
参 考 文 献: Yano et al. (2010)
Am. J. Bot. 97 (8): 1365-1376.
(やの おきひと
・岡山理科大学 助教)
-5-
小石川植物園後援会ニュースレター
第45号
発行日
2013 年 6 月 15 日
発行者
長田 敏行
編集責任者 杉山 宗隆
編集担当
東馬 哲雄
発行所
小石川植物園後援会事務局
〒 112-0001 東京都文京区白山 3-7-1 国立大学法人東京大学大学院 理学系研究科附属植物園内 電 話:080-5033-0845, 03-3814-0294
F A X:03-3814-0139
E-mail:[email protected]
URL:http://www.koishikawa.gr.jp
-6-
©2013 小石川植物園後援会