L-93インターシードの方法 - 東洋グリーン

NEWSLETTER ON TURF SEED
May 2002 No.12
今回のニュースレターは、今までにニュースレターで紹介したインターシードの方法についてもう一
度最近の情報を整理しながらまとめてみました。
1 今までのインターシード実施コースからの情報
* 播種量
播種量は、春・秋の年 2 回実施なら 1 回あたり 5g~8g/㎡ 程度、秋のみ年 1 回実施なら 10g/
㎡ 程度というところが平均的な播種量です。いずれの場合も継続して実施するのがポイントです。最
低 3 年程度の計画はほしいのですが、使用しているグリーンでは芝の消耗もあるので新しい個体に常に
更新する意味合いで定期的に追い播きを継続した方がよいと思います。
* 播種時期
播種時期は春播種よりも秋播種の方が個体の定着が良いようです
(千葉県A 場・B 場、
栃木県A 場など)
。
この理由として考えられることは、春播種の場合既存グリーンの品種であるペンクロスの生育が旺盛な
時期と重なり L-93 の発芽初期生育への影響が大きくが、秋播種の場合 L-93 よりも夏の落ち込みが大き
いペンクロスは回復に時間を要するので、インターシードした L-93 の生育への影響が小さく定着率が高
くなるのではないかと考えられます。
* 播種前の作業
播種前の作業はバーチカルよりもコアリングの方が個体の定着が高いということです。
千葉県 B ゴルフ場ではさらにインターシード前の穴あけは、ムクバより通常タインを使用した方が種子
の発芽が良いということが判ったので通常タインでコアリングを実施しているそうです。キーパーさん
の説明によると、通常タインでは穴の途中で種子が止まる確率が高く種子が深いところにまで落ちない
ので発芽しやすくなるというのが理由です。
これは奥の深い話で作業をよく観察し、検証した結果得られたとても貴重な情報です。
* 施肥管理
施肥管理は年間の N 施用量で 11-12g/㎡・年程度で K はやや多めに施用しています。K の施用量は実績
で春・夏・秋では N の 2~3 倍程度になっています。L-93 の施肥後の生育反応はペンクロスより緩やかです
が過剰に施肥すると芝生がマット化して管理が難しくなります。また 1 回当りの施肥量は少なめにして
回数を多く分けて施用するとターフクオリティーは安定します(千葉県 A 場)
。
* 水管理
ペンクロスとの違いは水管理で、L-93 はペンクロスよりも乾燥に強いので散水頻度はやや少なく乾燥
する夏でも 2-3 日に 1 回程度の散水に抑えています。ペンクロスと同じ散水量では過剰散水になる傾向
があり過湿による障害が起こりやすくなります(千葉県 A 場)
。散水間隔をおき乾燥しはじめて葉が萎れ
る寸前で十分な散水を実施するパターンを繰り返すのがよいようです。
* 夏越しの違い
夏越しに関しては従来使用していたペンクロスより落ち込みが少なく管理がしやすくなったというコ
メントを多くいただいています。この理由は主に L-93 がペンクロスよりも耐暑性と耐乾性に優れるから
だと考えられます(静岡県 A 場・茨城県 A 場など)
。
* 品種変換率とインターシードの効果
正確な品種変換率を知ることは非常に難しいのが現実です。残念ながら遺伝子解析などによる定量方
法もまだ確立しておらず、近い将来を考えても安価に手早く変換率を知る方法が確立される見込みはな
いのが現時点での見方です。L-93 のインターシードが比較的うまくいっているゴルフ場で聞かれるコメ
ントは、
「とにかくペンクロス単独のグリーンと比較したときにパッティングクオリティーは格段に向上
したのがわかる」ということです。具体的には、ペンクロスと同じ管理でも「グリーンスピードが速い」
・
「アップライトである」
・
「ボールの転がりがまっすぐで左右の細かいブレが少ない」
・
「夏越しがしやす
く夏の落ち込みが小さい」ということです。
速いグリーンが求められる場合、ペンクロスでは頻繁な目砂・転圧などで仕上げていたが L-93 ではペ
ンクロスグリーンほどの転圧がいらなくなり芝へのストレスも少なくなります。L-93 は低刈りにも適す
るのでペンクロスよりパッティングクオリティーを上げやすいようです。
もちろん L-93 をインターシードしてからもこまめに更新作業(コアリング・バーチカルカット・グル
ーミング・目砂など)を実施した方が芝生のマット化を防ぐことができ、グリーンの硬さを維持しやす
いでしょう。またサッチの堆積を防ぐためにサッチ分解材(分解くん)を施用するのも良い方法です。
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編集
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東洋グリーン(株) ロジスティック本部 松井
勝田技術センター 研究開発部 今田
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