エッセイ 素敵・発見!マーケティング 36 6 女子サッカー「なでしこJ JAPAN」国民栄誉賞 記念品に広島県熊野町 町(有)竹田ブラシの 化粧ブラシが選ばれる! 株式会社クリエイテ ティブ・ワイズ 代表取締役 三宅曜子 今年の大きなうれしい出来事に、女子サッカーワー ールドカップで日本代表が優勝したことがある。特 に決勝戦では大きな体格のアメリカ代表に戦いを挑 挑み、不屈の精神と負けん気の強さ、たたかれても たたかれても這い上がり、チャンスを的確につかみゴ ゴールを決めたなでしこJAPANの活躍がある。 8月1日に決定した国民栄誉賞は、8月18日に総理 理官邸で授与式が行われたが、今回は初めてなで しこJAPANの、総勢35名という大人数の団体に贈られる。 私はこの栄えある国民栄誉賞の記念品の 選定を仰せつかり、広島県熊野町の化粧筆の 老舗 老舗メーカーである(有)竹田ブラシの化粧ブラシ カ である(有)竹田ブラシの化粧ブラシ セットを推奨し、選ばれた。 今回はこの国民栄誉賞の記念品に選ばれた 竹田ブラシの取り組みについてご紹介する。 ■ナデシコ副賞商品 【日本で初めて本格的な化粧筆をつくったメーカ カーとの出会い】 (有)竹田ブラシ製作所の創業は昭和22年、60年以 以上にわたり、化粧ブラシの専門メーカーとして商 品を作り続けているメーカーだ。広島県の熊野町は国の伝統工芸に指定されている毛筆の産地である が、そのなかで竹田ブラシは伝統工芸に指定されて ていない化粧ブラシを最初に作り出したパイオニア 企業だ。 化粧刷毛類からスタートし、欧米のシャネルなどの 昔は輸出用化粧ブラシや歌舞伎・演劇等の日本化 ブラシをOEMで生産していた。今は「熊野の化粧筆 筆」と言われているが、当時は化粧用のブラシは筆 ではないとされていたため、竹田さんは今でも自社商 商品を「化粧ブラシ」といっている。現在は欧米のメ イクアップブラシ類まで、 800アイテム以上製造して ている。熊野町で最初から化粧筆をつくっているのは 竹田ブラシだけで、そのノウハウのもと何十年も後に に他のメーカーが作り始めたのだ。 旬レポ中国地域 2011年9月号 1 私と竹田ブラシとの出会いは今から11年前、当時中 中小企業大学校の指導室長の塩田さん(現中小機 構中部支部長)に製造現場に連れて行かれたことから始まる。私は油絵や水彩画を描き、メイクアップ ザインや指導を行っていたことから、広島の熊野町 アーティストとして化粧品メーカーのメイクアップデザ に素晴らしい化粧ブラシをつくるメーカーがあることは は知っていたが現場に行ったことはなく、初めて 行った竹田ブラシの工房でカルチャーショックを受け けた。私が世界中のブラシのなかで最も美しいライ ンが描け、面部分も滑らかに描けて使いやすく、これ れ以上のものはないと確信していたあるメーカーの リップブラシが竹田ブラシでつくられていたことが判明 明したのだ。 1階が事務所であったが、狭い事務所の中には何百 百もの種類の化粧筆であふれかえっていた。竹田 社長に取材をするということで 緒に話を伺ったところ、その考え方に感銘を受け、どんどん入り込ん 社長に取材をするということで一緒に話を伺ったとこ でいった。 つくっている。「こま」と呼ばれる木型(金属のものも 2階が作業場で、数名の女性たちが黙々と穂先をつ ある)に毛の束を入れ、トントンとたたきながら整え、根元を束ねて持ち櫛で何度も丁寧に梳きながら遊 密な作業だ。 び毛や逆毛を取り除いていく。気の遠くなるような緻密 1個の穂先をつくるのに何工程もステ プを踏む 職 1個の穂先をつくるのに何工程もステップを踏む。職 職人さんたちの目と手のカンを研ぎ澄まし すべて 職人さんたちの目と手のカンを研ぎ澄まし、すべて 手作りで丁寧に作り上げていくのだ。穂先が針の先ほ ほどの極細のライン用ブラシは、管と呼ばれる穂 先と軸の間の金属部分の中には紅筆よりも多い毛が が入っていて、穂先を少しずつずらしながら整毛す ることも知った。 な作業で完成することも初めて知った。 何気なく使っていた化粧ブラシが根気のいる繊細な 【今では世界中にある、世界初の商品を数々開発!】 現竹田ブラシの社長、竹田史郎さんは2代目である るが、もともと地質学の学者であり、世界の地質調 査なども行っていたが、家業を継ぐため化粧ブラシの の世界に入られた。職人気質だけでなく、研究者と しても数々の功績を残されている。 も数 功績を残され る。 今では世界中でみられるフェイスブラシや チークブラシのスライドスタイルの商品は、もと は竹田さんが発明されたもの。 当時世界特許を取得するという考えを持た れていなかったため、あっという間に真似され 各国で発売されてしまった。世界で最も細い 収納型リップブラシも竹田さんの開発品。シャ ■スライドチークブラシ(国際特許商品) 旬レポ中国地域 2011年9月号 ネルで爆発的に売れた商品だ。 2 時代の先駆者である竹田さんは欲がなく人がいい い。 そんな人柄に惹かれ、私はマーケティングのサポー ート を買ってでた。 場 積極的にブランド商品づくりを行いながら海外市場 開拓を目指し、海外への提案も 緒に行き、各国の 開拓を目指し、海外への提案も一緒に行き、各国の のメ イクアップアーティストやバイヤーなどへの提案を行 行っ た。メイクアップアーティストから各国の女優やセレブ ブ な女性たちに大絶賛される商品となっていき、日本の の 大女優やあのカトリーヌ・ドヌーヴなども竹田ブラシの の フ ンの 人にな てい た ファンの一人になっていった。 ■最新商品蓋付チークブラシ 【数より質を追求する考え方】 ブランドマーケティングの考え方は大きく2つある。 目につきやすい環境をつくり、誰もが知っている商 知名度を上げるため、量産してさまざまな場所で目 品にするという考え方。一方徹底したこだわりでモノ ノづくりをし、量産より質を重視し、数は少ないが本 物を知る人に魅力あるものにするという考え方。 ミオーダー感覚で限定、1個が数百万もするバッグ たとえばエルメスのバーキン(バッグ)のように、セミ などは、価値を認識する人だけに使ってもらいたいと というメーカーコンセプトだ。竹田ブラシの商品は徹 底して品質にこだわり、追求し続けるスタイルだ。だ だから1本に対する製造コストや時間をかけ、本物を 知る人に最大の喜びを与える。 業の意思を尊重し、最大限の可能性を見つけたいと 私は11年前から竹田ブラシに惚れ込み、この企業 思い、カタログ作りから商品開発、展示会サポートな などマーケティング支援を行っている。 なでしこJAPANの国民栄誉賞の記念品には日本 本 の美をつくるメ カ の日本 の化粧ブラシで、 本一の美をつくるメーカーの日本一の化粧ブラシで さらに美しくなっていただきたい、そんな思いを込めて て竹田ブラシの化粧ブラシを推奨させていただいた。 ■ ■弊社作成の海外向けカタログ 旬レポ中国地域 2011年9月号 3 三宅曜子プロフィール マーケティングコンサルタントとして、中小企業支援及び び指導、 商業活性化事業、まちづくり事業等、顧客のニーズを的確 確に捉え た市場開発とアプローチ手法等、幅広い分野におけるマ マーケティ ング全般のアドバイスを全国各地で手掛ける。また、平成 成19年度 より地域資源活用事業の政策審議委員、国会での参考人 人をはじ め 全国で地域資源を活用した事業推進 農商工連携事 め、全国で地域資源を活用した事業推進、農商工連携事 事業 JA 事業、JA PANブランドプロデューサーなど幅広く活躍中。 ○経済産業省地域中小企業サポーター ○同、伝統的産業工芸品産地プロデューサー ○中小企業基盤整備機構経営支援アドバイザー ○同、地域ブランドアドバイザー ○内閣官房 地域活性化伝道師 ○広島県総合計画審議会委員 他 経済産業省 中国経済産業局 広報誌 旬レポ中国地域 2011年9月号 Copyright 20011 Chugoku Bureau of Economy , Trade and Industry. 4
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