資料 5 − 5 − 2 超音波探傷検査の精度等に関する知見の整理 平成15年2月18日 原 子 力 安 全・ 保 安 院 Ⅰ.測定対象と超音波探傷法の選定 ○ 超音波探傷法は、欠陥の存在の有無を調べるための方法と、欠陥の 寸法(長さ、深さ)を測定するための方法に大別される。 *欠陥の有無を調べる方法には、斜角法、二次クリーピング法など がある。 *欠陥寸法を測定する方法には、端部エコー法、フェーズドアレイ 法などがある。 これらの方法には長所、短所がある。そこで、対象とする材料や部 位の形状などに応じて、これらのうちから適当な方法が選択される。 ○ 再 循 環 系 配 管 の 溶 接 部 近 傍 の 探 傷( 傷 の 有 無 の 検 査 )に は「 斜 角 法 」 と「二次クリーピング法」を併用し、管外面から超音波を入射して、 管 内 面 の 欠 陥 を 調 査 し て い る ( 管 肉 厚 は 2 ∼4 c m ) 。 ま た 、 欠 陥 深 さ の 測 定 に は「 端 部 エ コ ー 法 」 を 採 用 し 、 管 外 面 か ら超音波を入射して、管内面の欠陥の深さを測定している。 ○炉心シュラウドの欠陥深さの測定には、 「フェーズドアレイ法」を 採用している。 Ⅱ.測定対象の材質と探傷精度 ○再循環系配管のような大口径で厚肉の配管でもSUS304系のス テンレス鋼製配管の内面傷については、実際のプラントにおける経 験や(財)発電設備技術検査協会及び現(財)原子力発電技術機構 において実施された実証試験の結果から、 「端部エコー法」によっ て ± 約 4 ㎜( 2 σ : 標 準 偏 差 の 2 倍 の 値 ) の 精 度 で そ の 深 さ を 測 定 で きることが確認されている。 1 ○SUS316Lで製造された炉心シュラウドのひび割れの深さにつ いては、ひび割れが枝分かれしている溶接線H4近傍のひび割れを 除けば、 「フェーズドアレイ法」による測定結果は、実際にサンプ ルを採取して得た実測結果と比較することにより、保守的なものに なってることが確認されている。 ○SUS316LCで製造された再循環系配管の内面傷については、 「斜角法」等によりその存否は十分に検知可能である。 一方、その深さについては、東北電力㈱女川原子力発電所1号機 における測定結果に、 従来のSUS304系のステンレス鋼製配管 で確認されている範囲を超える誤差があることが判明した。 その要因として現在考えられるものは以下のとおり。 ①超音波探傷法そのものに起因するもの ②内面研削による測定に起因するもの ③割れの性状・形状に起因するもの ④検査員に起因するもの Ⅲ.超音波探傷検査の精度改善の方向性 ○東北電力㈱女川原子力発電所1号機の再循環系配管の溶接部近傍の 内面傷の深さに関する超音波探傷検査の測定結果の誤差が大きいこ とについて、現時点で考えられる要因に対応した精度改善方策は以 下のとおり。 ①超音波探傷法そのものに起因するもの 「端部エコー法」において配管外表面の凹凸等に起因する超音波 入射角度のずれ等について再度分析評価する。 ②内面研削による測定に起因するもの 配 管 の 内 面 の 研 削 前 後 に 超 音 波 で 肉 厚 測 定 を 行 っ て い る が 、配 管 の 肉厚測定を行っている位置とひび割れの存在していた位置にはズ レ が 存 在 し て い て 、ひ び 割 れ の 深 さ を 大 き め に 評 価 し て い た 可 能 性 が あ る の で 、内 面 研 削 に よ る 配 管 内 表 面 の 形 状 を 考 慮 し て 内 面 研 削 法による傷の測定値を再度分析評価する。 ③ 割 れ の 性 状・ 形 状 に 起 因 す る も の SUS316LC材に発生する応力腐食割れは、ひび割れが溶接 金属内に進展している場合には信号が得にくいこと等の割れの性 状・形状を考慮して 2 ・ き 裂 先 端 部 か ら の 反 射( 回 折 ) 信 号 の 強 度 が 大 き く な る よ う 測 定 に 用 い る 超 音 波 の 種 別( 横 波 → 縦 波 ) を 変 更 す る 。 ・「 フ ェ ー ズ ド ア レ イ 法 」 な ど 測 定 方 法 の 異 な る 超 音 波 探 傷 法 を 併用する。 などの方策を検討する。 ④検査員に起因するもの SUS316LC材に発生する応力腐食割れは、その進行方向や 溶接金属内への進行の可能性などSUS304系に発生する応力 腐食割れと異なる性質を持つことを超音波探傷を実施する検査員 に 十 分 周 知 す る と と も に 、作 業 要 領 等 に そ の 旨 を 明 記 す る な ど の 方 策を検討する。 3 <参考> 超音波探傷試験の各手法の原理 ○斜角法による探傷 斜角法の概念図を図1に示す。探触子から入射されたパルス状の超音波は、欠陥 があればそこから反射波として戻ってくるので、欠陥を検出することができ、入射 してから戻ってくるまでの時間を測定すれば、探触子から反射源までの距離を知る ことができる(距離=音速×時間)。 この場合、探傷器の CRT(ブラウン管)には図2のように表示される。CRT の 横軸は探触子から反射源までの距離を示し、縦軸は反射して戻った超音波の強さを 表している(エコー高さという)。 図1 超音波探傷の概念図 図2 探傷器の CRT 図 ○2次クリーピング法による探傷 クリーピング探触子は、探触子から鋼に音波が入射するとき、クリーピング波(70 ∼80°縦波)と同時に横波(30∼35°)が発生する。次に、この横波が底面で反射 するとき、底面表層部を伝搬する2次クリーピング波が発生する。 この2次クリーピング波は、配管内表面に沿って伝搬するため、裏波エコー等の 形状エコーがほとんど発生せず、配管内表面に開口した欠陥の検出に有効である。 クリーピング法の概要図を図3に示す。 4 クリーピング探触子 配管外面側 クリーピング法 (縦波70∼80°) 横波30∼50° 横波30∼50° 2次クリーピンク波 (縦波70∼80°) 配管内面側 図3 クリーピング法の概要図 ○端部エコー法による探傷 欠陥開口部からの反射エコー高さが最大になるエコーを検出し、そのビーム路程 (W1)を読み取る。次に探触子を前進していくと欠陥開口エコーの手前位置に欠陥端 部からの反射エコーが検出され、その欠陥端部からの反射エコーのビーム路程(W2) を読み取る。このとき、このエコーを欠陥からの端部エコーという。端部エコー法 の探触子は、集束型探触子により音波を集中させて、検出感度を挙げている。 端部エコー法の概要図を図4に示す。 欠陥高さ(d)=(W1-W2)COSθ 図4 端部エコー法 5 ○フェーズドアレイによる探傷 多チャンネル振動素子に供給する高周波電圧の位相を変化させることにより、探 触子を移動させることなく広範囲の試験が実施できるもの。 フェーズドアレイの概要図を図5に示す。 約50mm 軸方向: 電子走査 周方向: 機械走査 反射源 アクセス装置 約100mm 入射波及び反射波 60° アレイ探触子 1セクタ16chを 1chピッチ (約0.8mm) で走査 約270mm H6a溶接部 探傷部位と超音波探傷試験装置 軸方向の電子走査のイメージ 図5 フェーズドアレイの概要図 6
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