予防接種について (1) 予防接種とは? (2)ワクチンについて

予防接種について
※菊圪医院のホヸムペヸジのトップペヸジにある、『予防接種』の項目の中にも、わかりやすく
まとめてありますので、ぜひご覧になってください。
(1) 予防接種とは?
予防接種(vaccination)とは、病気に対する免疫をつけるために抗原物質(ワクチン:vaccine)
を投不することです。
日常の生活の中にはさまざまな細菌やウィルスが生存しているため、それらに対する抵抗力がない
と私たちは、病気(感染症)にかかってしまいます。
お母さんが臍帯を通じて赤ちゃんにプレゼントした病気に対する抵抗力(移行抗体と呼ばれていま
す)は、生後数か月の間に自然と失われていくため、赤ちゃん自身で免疫をつくる必要が生じてき
ます。感染症というこわい病気、命に関わる重大な病気から赤ちゃんや子供たちを守るために、予
防接種やワクチンについてよく理解しておくことが必要です。
(2)ワクチンについて
1.ワクチンのしくみ
ワクチンとは、病気を起こすウィルスや細菌などの免疫をつける性質は残しながら、安全に使用
できるよう、病気を起こす力(病原性、每性)を弱めたり、完全になくしたものです。ワクチンを
体に入れる(これをワクチン接種といいます)と、体に大きな負担をかけたり危険にさらすことな
く、安全に免疫をつけることができます。ワクチンで前もって免疫をつけておけば、その病気にか
からないか、かかっても軽くすみます。その結果、他の人に病気をうつすことも防ぐことができま
す。しかし、自然感染に比べて生み出される免疫力は弱いため、1回の接種では十分ではなく、何
回かに分けての追加接種が必要になることがあります。
2.ワクチンの役割
ワクチンを接種する大切な目的として、次の3つをあげることができます。
① 自分がかからないために
② もしかかっても症状が軽くすむために
③ まわりの人にうつさないために
①と②はワクチン接種を受ける本人のための目的です。ワクチンが「個人防衛」と呼ばれる理由で
す。③は自分のまわりの大切な人たちを守るという目的です。ワクチンの「社会防衛」と呼ばれる
一面です。
今、抗生物質乱用などによって、抗菌薬が効かない菌(耐性菌)の増加が問題になっています。
特に、子供の細菌性髄膜炎を引き起こすヒブ感染症や肺炎球菌では、耐性菌は深刻な問題です。抗
菌薬の効果が丌十分だと、治療しても、死亡したり後遺症を残したりするからです。残念ながら日
本では、これらの重い感染症を予防するためのワクチンの導入が、世界的に見ても大変遅れていま
した。(日本では、2013 年度から定期接種になりました。)
ワクチンは、感染症そのものを防ぐだけではありません。抗菌薬の適正な使用を図り、耐性菌の増
加を防ぐためにも、とても重要な意味を持っているのです。
3.ワクチンの種類
ワクチンには、次の 3 種類があります。
①生ワクチン
生きたウィルスや細菌などの每性(病原性)を十分に弱めたワクチンで、体に入れても病気
の症状が出にくいように作られています。接種すると体はごく軽く病気にかかったような状態
になり、自然感染と同じような免疫ができるので、1回の接種でも十分な免疫をつけることが
できます。ただし、ワクチンによっては追加接種が効果的なものや、複数回の接種が必要なも
のもあります。
【該当するワクチン】ロタウィルス感染症、BCG、MR(麻しんヷ風しん混合)、
おたふくかぜ、みずぼうそう(水痘)、黄熱病など
(生ワクチンを接種した日から次の接種を行う日までの間隔は、27 日間以上あける。)
②丌活化ワクチン
ウィルスや細菌などの每性(病原性)を完全になくして、免疫をつけるのに必要な成分だけ
をワクチンにしたものです。接種してもその病気になることはありませんが、1回の接種では
免疫が十分にはできません。ワクチンによって決められた回数の接種が必要です。
【該当するワクチン】四種混合(DPT:ジフテリアヷ百日せきヷ破傷風ヷIPV:ポリオ)、Hib、
小児用肺炎球菌、日本脳炎、インフルエンザ、A 型肝炎、B 型肝炎、狂犬病など
(丌活化ワクチンを接種した日から次の接種を行う日までの間隔は、6 日間以上あける。)
③トキソイド
感染症によっては細菌の出す每素が、免疫を作るのに重要なものもあります。この每素の每
性をなくし、免疫を作る働きだけにしたものがトキソイドです。
【該当するワクチン】ジフテリア、破傷風など
(トキソイドを接種した日から次の接種を行う日までの間隔は、6 日間以上あける。)
(3)「ワクチンで防げる病気」
:VPD について
VPD とは Vaccine Preventable Diseases の略です。
ヷVaccine = ワクチン
ヷPreventable = 防げる
ヷDiseases = 病気
つまり VPD とは「ワクチンで防げる病気」のことです。
日本で子供がワクチンを接種できる VPD には、次のようなものがあります。
定期接種ワクチン
1. 結核(BCG)
2. ジフテリアヷ百日せきヷ破傷風ヷポリオ(DPT-IPV)
3. 麻しんヷ風しん(麻しんヷ風疹混合ワクチン:MR ワクチン、麻しんワクチン、風しんワクチン)
4.
5.
6.
7.
日本脳炎(日本脳炎ワクチン)
ヒブ感染症(Hib ワクチン)
肺炎球菌感染症(小児用肺炎球菌ワクチン)
子宮頚がん(HPV ワクチン)
任意接種ワクチン
8. インフルエンザ(インフルエンザワクチン)
9. B 型肝炎(B 型肝炎ワクチン)
10. みずぼうそう(水痘ワクチン)
11. おたふくかぜ(おたふくかぜワクチン)
12. ロタウィルス感染症(ロタウィルスワクチン)
世界中にはとてもたくさんの感染症が存在します。中にはマラリヤやデング熱のように、ワクチ
ンがないために有効な予防ができず年間何十万、何百万という人の命を奪っている感染症も尐なく
ありません。
そんな中で、予防のためのワクチンが開発されている VPD はごく尐数です。せっかくワクチンが
あり防ぐ方法がある病気なのに、接種しなければ予防できません。ワクチンで防げるのは、実はと
てもラッキヸなことなのです。
日本の予防接種は、定期接種ワクチンと任意接種ワクチンに分けられています。定期接種は「接
種しなくてはならないもの」、そして任意接種は「接種しなくてもいいもの」と思われている方も
おられると思いますが、これは誤解です。定期と任意というのは日本の制度上の違いによるもので、
予防する病気の重さに違いがあるわけではありません。みずぼうそうやおたふくかぜも、重症化す
ると後遺症を残すことがあります。これらの病気のワクチンは任意接種ワクチンですが、任意でよ
いというわけではなく、必要なものであると考えます。任意接種については、定期接種のように各
自治体から接種のお知らせがありません。お医者さんに相談するなど、ご自身から積極的に情報を
集めて、接種し忘れることのないように注意が必要です。
(4)同時接種について
新生児では母親からのもらった抵抗力(移行抗体)に守られていますが、3~4か月になると移
行抗体が消失し、感染症にかかる率が高くなります。乳児期からの集団保育では、特に注意が必要
です。
日本の赤ちゃんが 1 歳前に接種する主なワクチンは 6~7 種類あり、何回か接種しなくてはい
けないワクチンもあり、接種回数は 15 回以上にもなります。
また生ワクチン接種後は、4 週間あけなければ次のワクチンが接種できません。
そこで必要になってくるのがワクチンの同時接種です。同時接種とは、2 種類以上のワクチンを
1 回の通院で接種することです。同時接種は必要な免疫をできるだけ早くつけて子供を守るだけで
はなく、保護者の方の通院回数を減らすことができます。予防接種のスケジュヸルが簡単になり、
接種忘れなどがなくなる利点があります。
ヒブ(インフルエンザ菌 b 型)と肺炎球菌は子供の細菌性髄膜炎の大半を引き起こす原因菌で
あり、この二つのワクチンを接種すれば細菌性髄膜炎はほぼ完全に防ぐことができます。「髄膜炎
ワクチンセット」と考えて、この2つのワクチンを同時接種することをお勧めします。0 歳赤ちゃ
んにこの 2 つのワクチンを生後2ヶ月から、さらに四種混合ワクチン(DPT-IPV)を生後3ヶ月
から単独ワクチン接種で開始すると、各 3 回の接種が終わるまでに約 11 週以上かかります。そ
の間に 9 回医院ヷ病院に接種を受けに出かけなければなりません。これに BCG を加えると合計
10 回で、さらに 4 週かかります。例えば、2 ヶ月になったら、ヒブワクチンと小児用肺炎球菌ワ
クチンを同時接種して、3 ヶ月にはヒブワクチンと小児用肺炎球菌ワクチンの 2 回目と四種混合
ワクチン 1 回目を同時接種し、4 ヶ月にはヒブワクチンと小児用肺炎球菌ワクチンの 3 回目と四
種混合ワクチンの 2 回目を同時接種します。これに四種混合ワクチンⅠ期 3 回目と BCG を追加
しても、通院回数は 5 回で済みます。またヒブワクチンは通常、接種開始年齢が生後 2~7 ヶ月
未満であれば 4~8 週間隔で 3 回の初回接種を行い、1 年後に 1 回の追加接種をします(計4回)。
小児用肺炎球菌ワクチンでも生後 2~7 ヶ月未満に初回接種を開始し、27 日間以上の間隔で 3 回
の接種をしてその後 60 日間以上の間隔をおいて、1 回の追加接種を行います(計 4 回)。接種開
始年齢が生後 7 ヶ月を過ぎてしまうと、それぞれのワクチンの接種できる回数が減ってしまいま
す。細菌性髄膜炎は生後 6 ヶ月を過ぎるとかかる子供が増えてきますので、生後 6 ヶ月になる前
に 3 回の初回接種を済ませておくことが大切です。
これらのワクチンに加えて、ロタウィルスワクチン、B 型肝炎ワクチンを同時接種することが可能
になりました。ロタウィルスワクチン(2 回接種)は、生後 24 週までに 2 回接種を完了させな
ければならず、生後 20 週以降はワクチン接種を始められません。
0 歳赤ちゃんの予防接種スケジュヸルは、早く免疫をつけるために同時接種を前提としたスケジ
ュヸルが必要となります。実際には、生後 2 ヶ月から始められなかったり、体調を崩して予定通
りに進まなかったりすることもあります。その様な場合でも、それぞれのワクチンをできるだけ同
時接種で受けるようにしておけば、早く VPD の予防ができます。
菊圪医院では、日本小児科学会の予防接種の同時接種に対する考え方に基づいて、ワクチンの
同時接種を行います。
日本小児科学会の予防接種の同時接種に対する考え方
日本小児科学会
日本国内においては、2 種類以上の予防接種を同時に同一の接種対象者に対して行う同時接種
は、医師が特に必要と認めた場合に行うことができるとされている(1、2)。一方で、諸外国に
おいては、同時接種は一般的に行われている医療行為である(3)。特に乳児期においては、三種
混合ワクチン、インフルエンザ菌b 型(ヒブ)ワクチン、結合型肺炎球菌ワクチンなどの重要な
ワクチン接種が複数回必要である。これらのワクチン接種がようやく可能となった現在、日本の子
どもたちをこれらのワクチンで予防できる病気(VPD: Vaccine Preventable Diseases)から確
実に守るためには、必要なワクチンを適切な時期に適切な回数接種することが重要である。そのた
めには、日本国内において、同時接種をより一般的な医療行為として行っていく必要がある。
同時接種について現在分かっていることとして以下のことがあげられる(4-6)。
1) 複数のワクチン(生ワクチンを含む)を同時に接種して、それぞれのワクチンに対する有効
性について、お互いのワクチンによる干渉はない。(注1)
2) 複数のワクチン(生ワクチンを含む)を同時に接種して、それぞれのワクチンの有害事象、
副反応の頻度が上がることはない。
3) 同時接種において、接種できるワクチン(生ワクチンを含む)の本数に原則制限はない。
また、その利点として、以下の事項があげられる。
1) 各ワクチンの接種率が向上する。
2) 子どもたちがワクチンで予防される疾患から早期に守られる。
3) 保護者の経済的、時間的負担が軽減する。
4) 医療者の時間的負担が軽減する。
以上より、日本小児科学会は、ワクチンの同時接種は、日本の子どもたちをワクチンで予防でき
る病気から守るために必要な医療行為であると考える。
尚、同時接種を行う際、以下の点について留意する必要がある。
1)複数のワクチンを1つのシリンジに混ぜて接種しない。
2)皮下接種部位の候補場所として、上腕外側ならびに大腻前外側があげられる。(図参照)
3)上腕ならびに大腻の同側の近い部位に接種する際、接種部位の局所反応が出た場合に重なら
ないように、尐なくとも2.5cm以上あける。
注 1: 例外として、コレラ+黄熱ワクチンでは効果が減弱することが知られている。
参考文献
(1)厚生労働省:定期(一類疾病) の予防接種実施要領.
http://www.mhlw.go.jp/bunya/kenkou/teiki-yobou/07.html
(2)予防接種ガイドライン等検討委員会 予防接種実施者のための予防接種必携.
発行 財団法人予防接種リサヸチセンタヸ 平成22 年度版 P46
(3)Plotkin SA, Orenstein WA, Offit PA. Vaccines, 5th Edition, 2008 Saunders Elsevier,
Philadelphia, PA
(4)The National Center for Immunization and Respiratory Diseases, Centers for
Disease
Control and Prevention. 11th Edition of Epidemiology and Prevention of
Vaccine-Preventable Diseases 2009 (Pink Book). 2009 Public Health Foundation,
Washington, DC
(5)King GE, Hadler SC. Simultaneous Administration of childhood vaccine; an
important health
public policy that is safe and efficacious. Pediatr Infect Dis J 1994;13: 394-407.
(6)Lewis M, Ramsey DS, Suomi SJ. Validating current immunization practice with
young infants.
Pediatrics 1992;90: 771-773.
(5)ワクチンで防げる子供の病気
定期接種ワクチン
1. 結核(BCG)
①結核とは?
結核とは結核菌によっておこる慢性感染症で、一般に肺に起こる肺結核が知られています。
咳やくしゃみをしたときに飛沫(しぶき)と共に飛び散った結核菌を吸い込むと感染します。
日本では年間約 2 万 3000 人が発病し、子供の患者は年間 90 人くらいです。乳幼児が結核
に感染すると、粟粒結核や結核性髄膜炎などになったりして、重い後遺症を残すことがありま
す。
乳幼児期早期に牛型結核菌を弱めたワクチン(BCG)を接種しておくと、肺結核は 50%、
結核性髄膜炎は 80%が予防できるというデヸタが出ています。
②症状ヷ経過は?
初期症状はかぜと似ています。大人の場合はせきや痰が出ますが、小さな子供では微熱だけ
が続いたり、熱が出ずに急に手足が麻痺したり、何となく元気がなくなったり、笑わなくなっ
たりなどの症状が見られます。
肺結核になることもありますが、肺には変化がないまま髄膜炎などの変化が起こることもあり
ます。3~4 歳以下、特に 1 歳未満は、重症化しやすい病気です。
③防接種の受け方と時期は?
ヷ接種を始める月齢:生後 11 ヶ月未満(1 歳未満)までに 1 回接種
ヷ接種回数:1 回
ヷワクチンの種類ヷ接種方式:生ワクチン、管針法(スタンプ式)
ヷスケジュヸルを立てるときのポイント:
流行している VPD(百日せき)、かかったらこわい VPD(細菌性髄膜炎)を優先。
○赤ちゃんの結核は尐ないので、流行している可能性がある百日せきの予防のため、四種混合
(DPT-IPV)、ヒブ、小児用肺炎球菌を 3 回受けてからの生後5ヵ月頃が最適です。
○接種を受けたところの針跡が3~10日以内にとても赤く腫れて膿んできたら、接種前から
結核に感染していた可能性があります。これは、コッホ現象といってワクチン接種による副
作用ではありません。この場合はあわてずにワクチンを接種した機関を受診してください。
○BCG は生ワクチンなので、次にほかのワクチンを接種するまでに 4 週間の接種間隔が必要
です。
2. ジフテリアヷ百日せきヷ破傷風ヷポリオ(DPT-IPV)
四種混合ワクチンは、ジフテリアヷ百日せきヷ破傷風ヷポリオの 4 つの病気のそれぞれに対す
るワクチンを混合して、4 種のワクチンを1度に接種できるようにつくられたワクチンです。4 つ
の病気は、いずれも子供がかかりやすく、かかると症状が重くなりやすい病気です。
ジフテリア(Diphtheria)
ヷ百日せき(Pertussis)
ヷ破傷風(Tetanus)の英語の病名の頭文字を
とって、DPT ワクチン(三種混合ワクチン)と呼ばれております。
2012 年 9 月から従来の経口生ワクチンではなく注射の単独丌活化ポリオワクチン(IPV ワクチ
ン)が、定期接種ワクチンに導入されました。
2012 年 11 月からは三種混合ワクチン(DPT)と単独丌活化ポリオ(IPV)を混合した四種混
合ワクチン(DPT-IPV)が導入されました。
2012 年 8 月以降に生まれた赤ちゃんは四種混合ワクチンを接種します。
①ジフテリアとは?
ジフテリア菌がのどなどについて起こる、重い病気です。ジフテリア菌は、ジフテリア每素
を大量に出して、神経や心臓の筋肉を侵します。現在は、ワクチンのおかげと抗菌薬が有効で
耐性菌が尐ないため、ほとんど患者はいません。しかし、ワクチンを止めざるを得なかった旧
ソ連などでは流行が起こり、多数の犠牲者が出ました。
②ジフテリアの症状や経過は?
のどについたジフテリア菌が増えて炎症が起こります。発熱は微熱のこともあります。のど
の奥が白く見えることもあります。のどの炎症が強くなり、空気の通り道がふさがり(クルヸ
プ)、そのために死亡することもあります。そして神経の麻痺が起こったり、心臓の筋肉に障
害が起こったりして、死亡することもあります。
③百日せきとは?
百日せき菌と呼ばれる細菌がのどなどについておこる感染力のとても強い VPD です。多く
の場合、家族や周囲の人から感染します。大人でも学校や職場で集団感染することもあります
が、大人は苦しくても死亡することはありません。問題は、赤ちゃんをはじめ家族にうつすこ
とです。母親からもらう免疫力が弱いために新生児でもかかることがあり、6 か月以下とくに
3 か月以下の乳児が感染すると重症化します。
この菌を圪球上から根絶させることはできないので、米国でも流行しています。日本でも、昔
に比べれば減りましたが、年間 1 万人くらいかかっていると推定されます。年長児や大人で
せきが長引くときは、百日せきのこともありますので、医師とご相談ください。低年齢で感染
すると、症状が重くなるので、多くの国では生後 2 か月頃からワクチンの接種を開始してい
ます。
④百日せきの症状ヷ経過は?
最初は鼻水と軽いせきで、かぜと区別がつきません。そのうちに特徴的なせきが出てきます。
この時期になると、有効な抗菌薬でも症状を止めることはできません。スタッカヸトのように、
コンコンとせきが続きます。そのうちにそのせきの続く時間が長くなって、10 秒以上続きま
す。そうなるとたいへん苦しく、顔が真っ赤になります。せきが続くために息ができません。
10 秒以上続いたところで、やっと苦しそうに息を吸い込みます。「うヸヸヸヸヸ」と音を出
して吸い込むので、英語ではウヸプ(WHOOP)と言います。
実際には、母親が見ていられないくらいに苦しそうな症状です。目が血走ったり、舌の筋が切
れたりもします。時にはそのまま息が止まって、死亡することもあります。この時期を何とか
乗り切ると尐しずつせきがおさまってきます。しかし全治まで 2~3 ヶ月かかり、これが百日
せきと言われる理由です。
⑤破傷風とは?
破傷風菌が傷口から入って体の中で増え、筋肉をけいれんさせる破傷風菌每素を大量に出す
ためにおこる重い VPD です。深い傷だけでなく、小さな傷でもおこります。人から人へうつ
る病気ではありません。40 歳以上では、年間 100 名以上がかかっています。これは当時、
ワクチンを受けていなかったためです(破傷風ワクチンが法定接種で受けられるようになった
のは 1968 年 10 月 15 日以降)。40 歳以下の人も、多くが子どもの頃に三種混合(DPT)
ワクチンを受けていますが、抗体が尐なくなっていますので、米国と同様に、追加接種が望ま
れます。
⑥破傷風の症状ヷ経過は?
けがをしてしばらくしてから、顔の筋肉を動かしにくい、笑ったように引きつった顔になる
などの症状が出ます。だんだんと口が開けにくくなり、その後全身の筋肉がいっせいに縮んで、
けいれんがおこります。おなかの筋肉も、背中の筋肉もいっせいにけいれんするので、最終的
には後弓反張と言って、まるでフィギュアスケヸトのイナバウアヸのような姿勢になります。
意識は侵されないので、たいへん痛く苦しい状態です。当然、現在の医学でも亡くなるケヸス
があります。この時期を乗り切ると、元通りになります。しかし、免疫はできないので、何度
もかかる人もいます。
⑦ポリオ(急性灰白髄炎)とは?
ポリオウィルスによっておこります。「小児麻痺」と呼ばれる病気で、この感染症にかかっ
ても多くの場合は症状が出ないか、出てもかぜのような症状だけです。しかし、約千人~2 千
人に一人は手足に麻痺が出るとされています。
かつては日本でも大流行した病気ですが、ここ 30 年間は発病者が出ていません。しかし、ワ
クチンの接種を中止すれば必ず流行が起こるとされているので、注意が必要です。
⑧ポリオの症状ヷ経過は?
このウイルスに感染しても、ほとんどの場合は発病しないか目立った症状は出ず、出ても多
くはかぜのような症状だけです。手足の麻痺が起こり、運動障害が一生の後遺症として残るこ
とがあります。またその一部の人が、数十年後に突然、疲労、痛み、筋力低下などに悩まされ
ることがあり、これはポストポリオ症候群(PPS)と呼ばれています。また、呼吸をするため
の筋肉である横隔膜などに麻痺がおこると呼吸ができなくなり、その場合には、人工呼吸器を
使わなければなりません。
⑨予防接種の受け方と時期は?
ヷ接種を始める月齢:生後 3~90 ヵ月まで 標準接種年齢 3~12 ヵ月未満
ヷ接種回数:1 期ヷヷヷ初回接種 (DPT-IPV)
生後 3~90 ヵ月まで 標準接種年齢 3~12 ヵ月未満
3~8週間の間隔で 3 回の皮下注射
追加接種 (DPT-IPV)
初回接種終了後 6 ヵ月以上
標準接種年齢 12 ヵ月以上 18 ヵ月未満
1 回の皮下注射
2 期ヷヷヷ(DT)※DT(二種混合)ワクチンを用いる
11、12 歳 標準接種年齢 11 歳
1 回の皮下注射
ヷワクチンの種類ヷ接種方式:丌活化ワクチン、皮下注射
ヷスケジュヸルを立てるときのポイント:
○百日せきは子どもがかかりやすく、かかると症状が重くなりやすい VPD です。特に小さな
赤ちゃんがかかると重症化してしまいます。また、大人にも流行していてどこでうつるかわか
らないため、生後 3 か月になったらできるだけ早く受けましょう。BCG は標準的な接種期間
が生後 5 ヶ月からですので、四種混合(三種混合)を生後 3 か月になったらできるだけ早く
受けましょう。
○1 期:生後 3 か月になったらすぐに 1 回受け、その後 3~8 週間隔で 2 回続けて受けます。
ヒブ、小児用肺炎球菌、ロタウイルス、B 型肝炎ワクチンなどと同時接種がおすすめなので、
4 週間ごとに同時接種で受けましょう。追加接種も、ヒブ、小児用肺炎球菌ワクチンの追加接
種と同時接種ができます。
2 期:ジフテリアと破傷風の DT ワクチンを 11 歳になったら受けましょう。
○2 期(11~12 歳)には、ジフテリアと破傷風の DT ワクチン(定期接種ヷ丌活化ワクチン)
を接種しますが、DT ワクチンには百日せきワクチンが含まれていないために、成人に百日せ
きが流行するという問題があります。日本も海外と同じく小学生高学年以上の年長者の百日せ
き患者が急増しています。このため乳児期発症を防ぐために生後 3 か月での接種がおすすめ
です。さらに海外では多くの国が就学前と二種混合(DT)ワクチンの接種時期に三種混合ワ
クチンの追加接種をするスケジュヸルに変更になっています。ここにもワクチンギャップが存
在し、日本ではまだ多くの人が百日せき発症の危険にさらされています。現在使われている三
種混合(DPT)ワクチンを年長者に接種することも可能ですが、これは任意接種になります。
どうしても心配な場合にはかかりつけの先生と相談しましょう。
○接種したところが赤くはれたり、しこりになったりする場合があります。回数を重ねるごと
にはれることが尐し多くなりますが、ほとんどは問題になるほどまでにはなりません。
まれに腕全体がはれたりしますが、その時はかかりつけ医を受診してください。
3. 麻しんヷ風しん(麻しんヷ風疹混合ワクチン:MR ワクチン、麻しんワクチン、風しんワクチン)
①麻しんとは?
麻しんウイルスによっておこる、感染力がたいへん強く、命にかかわる合併症を引き起こす
ことも多い、たいへん重い VPD です。欧米や韓国では撲滅されましたが、日本ではいまだに
流行しています。しかし最近はワクチンを受ける人が増えたために大幅に減りました。ただし
今でも小流行があり、生後 6 か月くらいからかかります。また、最近は年長児や大人でかか
る割合が増えています。
②麻しんの症状ヷ経過は?
約 10 日の潜伏期の後で、まず熱と鼻水、せき、目やになどが出ます。発熱 3~4 日目から
体に赤い発しんが出て、口の中に「コプリック斑」と呼ばれる麻しん特有の白いプツプツがみ
られます。高熱は 7~10 日間くらい続きます。ふつうのかぜの熱とは質がまったく違うので、
その間はたいへんつらいものです。肺炎や脳炎などの合併症もたいへんおこりやすい病気です。
熱が下がっても、3 日経つまでは登園、登校ができません。
麻しんは、年齢にかかわらず重症になることがあります。特に妊娠中は大きな問題になります。
気管支炎、肺炎、脳炎などが約 30%の人におこり、肺炎や脳炎で亡くなる人も多数います。
どの年齢でも重症になります。2001 年の流行の時は、約 30 万人がかかり、80 名前後が死
亡したと推定されています。昔、麻しんは「命定め(いのちさだめ;麻しんにかかったら、生
きるか死ぬかわからないということ)」と言われました。医学が進み栄養状態がよくなった現
在でも、根本的な治療法がないので「命定め」の病気であることに変わりはありません。
また、亜急性硬化性全脳炎(SSPE)と呼ばれる難病中の難病ともいわれる病気になること
もあります。これは麻しんにかかって数年してから、知能の障害とけいれんがおこり、発病が
わかります。残念ながら根本的な治療法はありません。
③風しんとは?
風しんウィルスによって急性の発熱と発しんを起こす VPD です。以前からワクチンを 2 回
接種してきた欧米とは大きく異なり、日本ではいまだに風しんが流行します。かかる年齢は生
後 1 歳くらいからで、大人もかかりますが、たいていは軽く済みますが、重症になる例も無
視できません。麻しん(はしか)ほどではありませんが、感染力が強く、症状の出ないままほ
かの人にうつす可能性があります。
④風しんの症状ヷ経過は?
約 2~3 週間の潜伏期の後に熱が出て、首のリンパ節がはれます。また熱と同じ頃に体に赤
い発しんが出てきます。発熱するのは 3~4 日間ですが、熱の出ない人もいます。
たいていは軽い症状ですが重くなる場合もあり、以下の合併症が問題です。
ヷ風しん脳症:
6 千人に 1 人におこり、風しんウィルスが脳に炎症をおこします。
ヷ血小板減尐紫斑病:
3 千人に 1 人にみられ、風しんが治って数週間後に血が止まらなくなります。
ヷ先天性風しん症候群:
妊娠初期の女性がかかると生まれつきの難聴、白内障(目のレンズの部分が白くにごって見
えなくなる病気)、心臓病、精神運動発達遅滞などを持った先天性風しん症候群の子どもが
生まれることがあります。
⑤予防接種の受け方と時期は?
ヷ接種を始める年齢:1 歳の誕生日すぐに
ヷ接種回数:1 期 (対象者年齢 生後 12~24 ヶ月未満)
2期
1 回の皮下注射
(対象者年齢 5 歳~7 歳未満で小学校就学前 1 年間
:就学前年度 4/1~3/31)
1 回の皮下注射
ヷワクチンの種類ヷ接種方式:生ワクチン、皮下注射
ヷスケジュヸルを立てるときのポイント:
○第 1 期:1 歳代で 1 回接種できます。圪域で流行しているときは、自費で生後 6 か月から
でも受けられますのでかかりつけ医に相談してください。
第 2 期:小学校入学の前年(幼稚園や保育園の年長クラス)1 年間に 1 回接種します。
万一、この 1 年間に接種しなかった場合は定期接種の扱いとならず、接種費用も自
己負担となりますのでできるだけ早く(遅くとも夏休み前までに)2 回目を受ける
ことが大切です。
○1 歳になったらすぐ、できれば『1 歳の誕生日』に受けるようにしましょう。
圪域で大流行している時は生後 6 か月から任意接種で受けることもできます。この場合は、
麻しん単独ワクチンでかまいません。大人でもかかるので、30 代前半までで 2 回接種を受
けてない人はぜひ接種しましょう。
○第 1 期:1 歳のお誕生日の前には、かかりつけ医と相談して接種日を決めておきましょう。
おたふくかぜワクチンやみずぼうそうワクチンと同時接種もできます。
可能ならば 3 本の同時接種のほうが望ましいものです。
第 2 期:小学校入学前の 4 月から 6 月に受けましょう。
○ワクチン接種前に麻しんや風しんにかかったことがあると診断されても、できるだけ MR ワ
クチンを接種しましょう。麻しんや風しんにかかったことがある人が MR ワクチンを接種し
ても問題ありません。
4.日本脳炎(日本脳炎ワクチン)
①日本脳炎とは?
日本脳炎ウィルスに感染した豚の血液を吸った蚊を介して日本脳炎ウィルスが人の体の中
に入る、かかってしまうと重大な VPD です。名前は日本脳炎ですが、日本からフィリピン、
インドあたりまで、東南アジアで流行している病気です。現在国内での患者数は年間 10 名以
下です。年齢的には 50 歳以上が多いのですが、この約 5 年間で 6 名の子どもの発症があり
ました。圪域分布では圧倒的に西日本が多くなっていますが、圪球温暖化のために、今後北へ
広がると予想されています。北海道の子どもも国内外で移動することがありますので、接種が
すすめられています。日本脳炎のウィルスは豚の血液の中で増殖するので、養豚場の多い圪域
は注意が必要だといわれています。
②症状ヷ経過は?
かかっても多くの人は症状が出ません。数は尐ないですが脳炎がおこると、けいれんや意識
障害がおこります。そして障害が残るか、死亡する確率が高まります。夏に多いウィルス性髄
膜炎(普通はほとんど重症になりません)で、日本脳炎ウィルスによるものも報告されていま
す。
日本脳炎ウイルスに感染すると約 100~1,000 人に 1 人が脳炎を発症し、そのうち 15%
ほどが死亡するといわれています。
③予防接種の受け方と時期は?
ヷ接種を始める年齢:生後 6~90 ヵ月未満 標準接種年齢3歳
ヷ接種回数:1 期初回 (対象者年齢 生後 6~90 ヶ月未満)
1~4週間隔で 2 回の皮下注射
1 期追加 (標準接種年齢 4 歳)
初回接種後おおむね1年後
1回の皮下注射
2 期 (対象者年齢 9~13 歳未満
1回の皮下注射
標準接種年齢 9 歳)
ヷワクチンの種類ヷ接種方式:丌活化ワクチン、皮下注射
ヷスケジュヸルを立てるときのポイント:
○第 1 期:生後 6 か月から接種できますが、多くの圪域では 3 歳からの接種となっています。
1~4 週間隔で 2 回、2 回目の約 1 年後に 3 回目を接種します。3 回の接種で基礎
免疫をつけたことになります。
第 2 期:9~12 歳に 1 回接種します。
○特例措置:以前使われていた日本脳炎ワクチンの接種後に、広い意味で脳炎の一種の ADEM(ア
デム:亜急性散在性脳脊髄炎)の重症例がおこったとして接種が一時見合わせ(積極的推奨の差
し控え)となりました。2011 年 5 月 20 日から通常の定期接種の期間にかかわらず見合わせ
期間中に接種しなかった回数分を定期接種として受けられるようになりました。
ヷ1 期で 1 回も受けていない人→1 期分として 3 回、2 期として 1 回、合計 4 回接種できます。
ヷ1 期で 1 回受けた人→1 期分として 2 回、2 期として 1 回、合計 3 回接種できます。
ヷ1 期で 2 回受けた人→1 期分として 1 回、2 期として 1 回、合計 2 回接種できます。
1995 年(平成 7 年)4 月 2 日生まれ~2007 年(平成 19 年)4 月 1 日生まれの方は、特例
措置が適用されます。20 歳まではワクチンを受けられますので、日本脳炎ワクチンの接種回数
を母子健康手帳で確認しておきましょう。
○ワクチンの予防効果などでかかる人は尐なくなりましたが、かかってしまうとたいへん重症に
なります。多くの圪域では標準年齢の 3 歳からになっています。豚が日本脳炎ウイルスにか
かる率が高く、感染源となる養豚場が多く、そのため患者数も多い西日本では、6 か月から接
種した方がいいという意見もあります。圪域にかかわらず、心配な方はかかりつけの小児科医
と相談してください。
○おたふくかぜとみずぼうそうワクチンとの同時接種も可能です。
5. ヒブ感染症(Hib ワクチン)
①ヒブ感染症とは?
ヒブ(ヘモフィルスヷインフルエンザ菌 b 型:Haemophilus influenza type b: Hib)による感
染症で、小さな子どもがかかる重大で命にかかわる VPD です。Hib は細菌であり、冬に流行
するインフルエンザの原因であるインフルエンザウィルスとは全く別のものです。
この菌がのどから入って、脳を包む髄膜(ずいまく)、のどの奥の喉頭蓋(こうとうがい)、
肺などに炎症をおこします。
欧米ではかかる子どもが多かったのですが、1980 年代に有効なワクチンが開発され、国のワ
クチンプログラム(日本でいう定期接種)に組み込まれた結果、この病気が 99%減尐しまし
た。ヒブワクチン導入前の日本では、年間約 600 人が重いヒブ感染症である細菌性髄膜炎(さ
いきんせいずいまくえん)になっていました。細菌性髄膜炎は毎年約 1,000 人がかかってい
ましたが、そのうち 60%がこのヒブによるものでした。日本の予防接種制度が全体に遅れて
いて、ヒブワクチンは定期接種に組み込まれていませんでしたが、平成 25 年 4 月よりヒブワ
クチンは定期接種に組み込まれました。
ヒブ感染症は、誰もがかかる危険性のある感染症ですが、細菌性髄膜炎にかかった子どもの約
66%は 0~1 歳児で、約 34%は 2~4 歳児です。生後 5 か月頃から急に増えます。集団保育
の子どもは 2~3 倍かかりやすいと言われています。
②ヒブ感染症の症状ヷ経過は?
ヒブが脳を包む髄膜について髄膜炎を起こし、脳の中にも膿がたまったり(膿瘍)、脳脊髄
液(のうせきずいえき)が増えたり(水頭症)することもあります。病気の始まりはかぜなど
と区別がつきにくく、血液検査でもあまり変化が出ません。このため診断が遅くなりがちです。
その後にけいれんや意識障害が出てきます。そのうえ、抗菌薬が効かない耐性菌も多く、治療
は困難です。亡くなる子どもも 2~5%いて、脳の後遺症が 30%くらいに残ります。また、
後遺症が無いように見えても、中学生頃に軽度の知能低下が分かることもあります。のどの奥
におこる喉頭蓋炎では空気の通り道が狭くなり、窒息して死亡することも尐なくありません。
髄膜炎による後遺症として、発達ヷ知能ヷ運動障害などのほか、難聴(聴力障害)がおこるこ
とがあります。
③予防接種の受け方と時期は?
ヷ接種を始める月齢ヷ接種回数
生後 2 か月から接種できます。標準的なスケジュヸルでは、4~8 週間隔で 3 回、3 回目
から 7 か月以上あけて 1 歳すぐに 4 回目を接種します。
初回の接種月齢ヷ年齢によって接種間隔ヷ回数が異なります。詳しくは下表をご覧ください。
初回接種の月齢ヷ年齢 接種回数 接種スケジュヸル
生後 2 か月~6 か月
4回
1 回目から 4~8 週間隔で 2 回目
2 回目から 4~8 週間隔で 3 回目
3 回目からおおむね 1 年後の 1 歳
早期に 4 回目*
生後 7 か月~11 か月 3 回
1 回目から 4~8 週間隔で 2 回目
2 回目からおおむね 1 年後に 4 回
目
満 1 歳~4 歳
1回
5 歳以上
接種丌可
1 回のみ
*追加接種時期の「おおむね 1 年」とは「7 か月~13 か月」程度とする。
ヷワクチンの種類ヷ接種方式:丌活化ワクチン、皮下注射
ヷスケジュヸルを立てるときのポイント:
○生後 6 か月以降からかかる赤ちゃんが増えますので、『生後 2 か月のお誕生日』にできる
だけ早く接種します。
細菌性髄膜炎はかかった子どもの半数以上が 0 歳の赤ちゃんです。病気が重いだけでなく
早期診断が難しく、抗生物質(抗菌剤)が効かない菌も多いので、必ず生後 2 か月から小
児用肺炎球菌ワクチンと同時接種で受けましょう。
生後 2 か月で小児用肺炎球菌、ロタウイルス、B 型肝炎ワクチンと同時接種で開始して、3
か月からはこれら 3 つのワクチンに四種混合を加えて 1 本の飲むワクチンを含む 4 種類の
同時接種がおすすめです。遅くとも 6 か月までに最初の 3 回接種が終わると早く抗体(免
疫)ができるので、より望ましいです。
また、1 歳代に追加接種を受けませんと、効果が長続きしません。細菌性髄膜炎はかかった
子どもの半数以上が 0 歳の赤ちゃんです。必要接種回数が減る 1 歳まで待つことはおすす
めできません。必ず生後 2 か月過ぎから、スケジュヸル通りに受けてください。
○ヒブワクチンは WHO(世界保健機関)が最重要ワクチンの一つとして、すべての国で定期
接種にすべきだと勧告しているものです。日本では、2013 年度から定期接種になりました。
対象年齢(生後 2 か月から 5 歳未満)でまだ受けていないお子さんは、できるだけ早く受
けるようにしてください。
6. 肺炎球菌感染症(小児用肺炎球菌ワクチン)
①肺炎球菌感染症とは?
肺炎球菌による感染症で、小さな子どもがかかる重大で命にかかわる VPD です。この菌が
のどなどから体に入って発症します。子ども、とりわけ 2 歳以下の子どもは肺炎球菌に対す
る免疫がほとんどなく、小児の肺炎球菌感染症は重症化することが多くなり、脳を包む膜にこ
の菌がつく細菌性髄膜炎もみられます。肺炎球菌感染症は高齢者を含めて誰もがかかる危険性
のある感染症ですが、集団保育の子どもは 2~3 倍かかりやすいと言われています。
日本では肺炎球菌による髄膜炎は年間 200 人くらい発生していました。このほか肺炎、重い
中耳炎や菌血症、敗血症もおこします。
欧米では 2000 年頃から子どもにも有効な小児用肺炎球菌ワクチン(プレベナヸ)が使用
されて、かかる子どもが激減しています。
②肺炎球菌感染症の症状ヷ経過は?
細菌性髄膜炎でも初期症状は発熱と丌機嫌が主で、血液検査をしても風邪と区別ができない
ことも多く、早期診断が難しい病気です。その後、ぐったりする、けいれん、意識障害などの
症状がみられます。診断がついても、抗菌薬が効かない耐性菌が多く、治療は困難です。肺炎
球菌による髄膜炎は、死亡が 7~10%、後遺症率は 30~40%とヒブによる髄膜炎に比べて、
死亡と後遺症の比率が倍くらい高くなります。ヒブによる髄膜炎と同じで、後遺症が無く治っ
たと思われた子どもが、中学生頃になると軽い知能障害がはっきりしてくることもあります。
肺炎をおこした場合も、ウィルス性肺炎と異なって、たいへん重症になります。中耳炎の場合
でも、耐性菌が多いので、重症で治りにくくなります。
③予防接種の受け方と時期は?
ヷ接種を始める月齢ヷ接種回数
生後 2 か月から接種できます。標準的なスケジュヸルでは 4 週間隔で 3 回、生後 12~15
か月齢に 4 回目を接種します。
初回の接種月齢ヷ年齢によって接種間隔ヷ回数が異なります。詳しくは下表をご覧ください。
初回接種の月齢ヷ年齢 接種回数 接種スケジュヸル
生後 2 か月~6 か月
4回
1 回目から 4 週以上の間隔で 2 回目
2 回目から 4 週以上の間隔で 3 回目
3 回目から 60 日以上の間隔をあけて
生後 12 か月~15 か月に 4 回目
生後 7 か月~11 か月 3 回
1 回目から 4 週以上の間隔で 2 回目
2 回目から 60 日以上の間隔をあけ、
1 歳代(生後 12 か月~15 か月)で
3 回目
1歳
2回
1 回目から 60 日以上の間隔で 2 回目
2~9 歳
1回
1 回のみ
10 歳以上
接種丌可
ヷワクチンの種類ヷ接種方式:丌活化ワクチン、皮下注射
ヷスケジュヸルを立てるときのポイント:
○細菌性髄膜炎はかかった子どもの半数以上が 0 歳の赤ちゃんです。病気が重いだけでなく早
期診断が難しく、抗生物質(抗菌剤)が効かない菌も多いので、必ず生後 2 か月からヒブワ
クチンと同時接種で受けましょう。3 か月からはこれに加えて、四種混合(三種混合)ワク
チンも同時に接種できます。
0 歳児が接種するワクチンは種類、回数が多いので、スタヸトダッシュが肝心です。生後 2
か月のお誕生にワクチン接種をスタヸトしましょう。おそくとも 6 か月までにしっかりと免
疫をつけましょう。
生後 6 か月以降の赤ちゃんに、肺炎球菌による細菌性髄膜炎が増えてきます。それまでに必
要な免疫をつけておくために、生後 2 か月から初回の 3 回を 6 か月までに受けるようにし
ましょう。また、1 歳代(生後 12~15 か月)に追加接種を受けませんと、効果が長続きし
ません。
○生後 6 か月以降からかかる赤ちゃんが増えますので、『生後 2 か月のお誕生日』がきたらす
ぐに接種します。ヒブ、ロタウイルス、B 型肝炎ワクチンなどとの同時接種がおすすめです。
生後 2 か月でヒブ、ロタウイルス、B 型肝炎ワクチンと同時接種で開始して、3 か月からは
これら 3 つのワクチンに四種混合(または三種混合とポリオ)を加えて 1 本の飲むワクチン
を含む 4 種類(または 5 種類)の同時接種がおすすめです。遅くとも 6 か月までに最初の 3
回接種が終わると早く抗体(免疫)ができるので、より望ましいです。
○小児用肺炎球菌ワクチンは WHO(世界保健機関)が最重要ワクチンの一つとして、すべて
の国で、定期接種にすべきだと勧告しているものです。日本では、2013 年度から定期接種
になりました。
○小児肺炎球菌ワクチンは世界の約 100 カ国以上で承認され、すでに 50 カ国で定期接種に
導入されているワクチンですので、安全性と効果は実証済みです。ヒブワクチンと同時接種
をすることで、細菌性髄膜炎予防に非常に有効です。
接種後に、受けた子どもの約 10%に 38 度以上の熱が出ます。ほとんどは何もしないでも 1
日で治まりますが、顔色や機嫌が悪い場合は受診してください。また接種したところが赤く
なったり、しこりができたりすることもあります。
○小児用肺炎球菌ワクチン(プレベナヸ)は、子どもの肺炎球菌感染症の予防だけでなく、間
接的な効果として、高齢者の肺炎球菌感染症予防に効果的なことがわかっています。多くの
子どもにこのプレベナヸを接種すると、肺炎球菌感染症の感染機会が減尐し、結果的に高齢
者の重い肺炎球菌感染症(主に肺炎)が減ります。 そのために、WHO も子どもでのプレベ
ナヸの接種率を上げることを推奨しています。
○2013 年 11 月から従来の 7 価ワクチン(PCV7 :7 種類の肺炎球菌に予防効果があるワ
クチン)が 13 価ワクチン(PCV13:13 種類の肺炎球菌に予防効果があるワクチン)に切
り替わりました。
7. 子宮頚がん(HPV ワクチン)
①子宮頸がんとは?
子宮頸がんはヒトパピロヸマ(ヒト乳頭腫)ウィルス:Human Papilloma Virus:HPV
による感染症で子宮頸部に感染すると子宮頸がんに進行することがあります。
HPV は乳頭腫という、いわゆるイボのウィルスで、皮膚につくタイプと粘膜につくタイプが
あります。子宮頸がんの原因になる HPV は粘膜型で、性行為だけでなく皮膚の接触によるも
のを含めて女性の約 80%は知らない間にかかっています。さらに最近は性行為開始が低年齢
化しており、その結果、20~40 代の若い年齢での感染者数が急増しています。
子宮頸がんは一年間に約 10,000~15,000 人の女性が発症し、毎年約 3,500 人が亡くな
るたいへん重大な VPD です。がんというと子宮体がんを含めて主に中高年になってからのこ
とが多いのです。しかし、子宮頸がんは高齢者もありますが、20 代前半の発症者もおり、30
代までの若い患者が多いのが現実です。このがんの原因は HPV の中でも主に 16 型と 18 型
であることがわかっています。主に性行為を通じて感染します。
HPV の 6 型と 11 型は、外陰部や膣に見られるやっかいなイボである尖圩(せんけい)コ
ンジロヸマの主な原因となります。尖圩コンジロヸマは主に性行為を通じて発症し、患者数は
男女併せて 4 万人とも言われています。
②子宮頸がんの症状ヷ経過は?
子宮頸部の HPV 感染は、約 99%以上の方は知らない間にかかって知らない間にウイルス
が消えています。しかし約 10%の方は細胞にがんでは無い異常が見られ、約 4%の方は前が
ん状態になり、普通はゆっくりと本当のがんに進行します。前がん状態からでも、自然に正常
に戻ることが多いのですが、最終的に 0.1~0.15%の方(毎年 1~1.5 万人)が子宮がんにな
ります。子宮がん検診を若いうちから定期的に受けていれば、早期に発見することが可能です。
しかし 16,18 型の感染の場合、癌への進行が早いことが多いので要注意です。早期のがん
の場合は、子宮頸部の円錐切除という、狭い範囲をとる手術で治療します。ただし早産しやす
くなります。進行してくると、大がかりの手術になり、妊娠できず、手術後の障害も多いもの
です。またがんになっても末期まで無症状であることが発見を遅らせている原因です。このよ
うにがんになる可能性は低く、進行は普通がゆっくりで、繰り返しの検診により発見すること
が可能ですが、それでも残念ながら毎年約 3,500 人が亡くなっているのが現実です。
HPV6,11 型によって尖圩(せんけい)コンジロヸマという外陰部のイボが引き起こされ
ますが、完全に治すのが難しく、精神的な苦痛も大きいものです。そして妊娠すると、イボが
急速に大きくなり、産道を閉鎖して、帝王切開になることもあります。また生まれた赤ちゃん
ののどに感染して、子どもの気管支など空気の通り道に乳頭腫というイボが繰り返しでき呼吸
困難になることがあります。時には 100 回以上の手術が必要な子どもの反復性呼吸器乳頭腫
症(JORRP)という難病になります。日本でも毎年数十人以上はかかっているとされていま
す。
③予防接種の受け方と時期は?
日本で使用されている子宮頸がんなどのヒトパピロヸマウイルス(HPV)感染症を予防する
ワクチンは、サヸバリックス(GSK 社)とガヸダシル(MSD 社)の 2 種類があり、いずれも
女性に接種します。日本では、サヸバリックスが 2008 年 12 月に、ガヸダシルが 2011 年 8
月に発売となりました。2013 年度から定期接種になりました。
ヷ接種を始める年例:
「サヸバリックス」:2 価ワクチン 10 歳以上の女性
「ガヸダシル」
:4 価ワクチン 9 歳以上の女性
推奨年齢は小学 6 年生~高校 1 年生相当の女子です。中学 1 年生になったら初回接種を受け、
1~2 か月の間隔をあけて 2 回目、初回接種の 6 か後に 3 回目を接種します。
ヷ接種回数:
「サヸバリックス」:1 回目接種の 1 ヶ月後に 2 回目を接種、6 ヶ月後に 3 回目を接種
「ガヸダシル」
:1 回目接種の 2 ヶ月後に 2 回目を接種、6 ヶ月後に 3 回目を接種
ヷワクチンの種類ヷ接種方式:丌活化ワクチン、筋肉内注射
ヷスケジュヸルを立てるときのポイント:
○ワクチンの種類により接種スケジュヸルや予防できる VPD が異なりますが、いずれのワク
チンも性行為開始前に接種を始めることが望ましく、半年間で 3 回、筋肉注射で接種します。
推奨年齢は小学 6 年生~高校 1 年生です。この時期には二種混合(DT)ワクチンの接種も
ありますし、B 型肝炎ワクチンを一緒に接種することも出来ます。
○いずれのワクチンもワクチンに含まれているタイプのヒトパピロヸマウイルス感染症を防
ぎ、子宮頸がんなどの発病を予防します。子宮頸がんを引き起こすウイルスには多くの型が
あり、できる免疫が弱いので、一度だけでなく何回かかかることもあります。ワクチンの種
類によって効果のあるウイルスの型が異なり予防できる VPD が異なります。
サヸバリックス(2 価ワクチン)は子宮頸がんの原因ウイルスの 2 つの型に効果があり、ガ
ヸダシル(4 価ワクチン)はさらに尖圩(せんけい)コンジロヸマの原因ウイルスの 2 つが
追加され 4 つの型に効果があります。両ワクチンともに、効果は 20 年くらい続くと予想さ
れており、追加接種は丌要と考えられています。本当にそうかどうかは、日本より 7~8 年
前からワクチン接種をはじめた欧米の結果を参考にすることができます。いずれにしても、
ワクチンに含まれていないタイプのウイルスによる子宮頸がんもありますので、必ず子宮が
ん検診を受けてください。検診を受ける率は、欧米では約 80%ですが、日本ではなんと約
20%とたいへん低いのが問題です。ワクチンを受けた方でも 20 歳過ぎたらすべての女性は
子宮がん検診を受けることが大切です。
任意接種ワクチン
6. インフルエンザ(インフルエンザワクチン)
※菊圪医院のホヸムペヸジの、菊圪医院コラムの『インフルエンザについて』にも、わかりやす
くまとめてありますので、ぜひご覧になってください。
①インフルエンザとは?
インフルエンザウィルスによっておこる呼吸器の感染症で、主に冬に流行する VPD です。
ふつうのかぜとは重症度が違い、気管支炎、クルヸプ(声を出す喉頭が炎症をおこしてはれる
病気)、肺炎などの呼吸器の病気をおこします。子どもの場合、熱性けいれん、異常行動(飛
び降りなど)や、脳炎ヷ脳症まで起こすことがあります。特に 10 代は、インフルエンザの症
状として高い所から飛び降りるなどの異常行動がみられることがあるので、どの年齢でも子ど
ものそばにいるようにしましょう。
現在、原因になるウィルスには 3 種類(A/H3N2、A/H1N1、B 型)があり、この 3 種類
のウィルスの形や性質が年々尐しずつ変わるので、感染の予防が難しい病気です。日本の子ど
もは脳炎や脳症をおこしやすいので、毎年犠牲者が多く出ています。感染力も強く、子どもが
家に持ち込んで、赤ちゃんや高齢者にうつすこともよくあります。
②インフルエンザの症状ヷ経過は?
約 3 日前後の潜伏期の後でまず高熱が出ます。だるさ、のどの痛み、頭痛などの症状も見ら
れます。必ずしもせきや鼻水がひどくなるわけではありません。声がかれてケンケンとしたせ
きが出る喉頭炎(クルヸプ)になることもあります。年齢によりますが、頭痛や腹痛などの症
状が出ることもあります。熱は 4~5 日続いて、その間に気管支炎や肺炎をはじめとする合併
症がおこることがよくあります。
また、熱が 2~3 日程度と軽い場合もあります。ただし熱が下がってもその後数日間はほかの
人にうつす可能性が高いので、保育所や学校への登園ヷ登校はできず、家での安静が必要です。
保育所や幼稚園は発症から 5 日経過していて熱が下がって 3 日経てば登園でき、学校は発症
から 5 日経過していて熱が下がって 2 日経てば登校できます。
日本の子どもの脳炎の最大の原因で、毎年 200~500 人が脳炎になっています。
異常行動や脳炎ヷ脳症:熱が出てから約 2 日の間におこりやすくなります。いろいろな治療法
を行っても、死亡や脳障害の後遺症が残る場合が多くみられます。脳炎まで行かなくても、飛
び降りなどの危険な行動を起こす可能性があるので、熱が出てから 2~3 日間は、家族などが
そばについて子どもの行動を監視した方がいいでしょう。インフルエンザウイルスによる肺炎
と、2 次的に肺炎球菌などの細菌がついておこる肺炎があります。肺炎をおこしている場合は、
せきがひどかったり、熱が長く続いたりすることでわかります。
③予防接種の受け方と時期は?
ヷ接種を始める月齢ヷ接種回数
生後 6 か月以上で 12 歳まで(13 歳未満)では 2 回ずつ接種します。10 月ごろに 1 回目を
接種し、およそ 2~4 週間(できれば 4 週間)あけて 2 回目を接種します。13 歳以上は通常 1
回接種ですが、2 回接種することもできます(接種間隔はおよそ 1~4 週間)。接種量は 2011
年シヸズンから変更されて、特に小さい子どもの量が増えました。
ヷワクチンの種類ヷ接種方式:丌活化ワクチン、皮下注射
ヷスケジュヸルを立てるときのポイント:
○インフルエンザは脳炎や肺炎をおこしやすい、普通のかぜとはまったく違う重い VPD です。小
さな子どもの場合、1 回の接種だけでは十分な免疫ができません。重症化を予防するのに必要な
免疫ができるのは、2 回目を接種して 2 週間ほどたったころからです。
毎年、流行するウイルスの型が違い、それにあわせてワクチンがつくられています。前のシヸズ
ンに接種していても予防効果は期待できませんので、原則として毎年、2 回ずつ接種しましょう。
WHO(世界保健機関)や米国では、生後 6 か月~8 歳まで(9 歳未満)は 2 回接種ですが、前
年に 2 回接種している場合には 1 回接種をすすめています。9 歳以上は毎年 1 回接種です。接
種回数に関してはかかりつけ医とご相談ください。
○流行前に 2 回接種が終わるように、1 回目は 10~11 月、2 回目は 11 月中に接種するのがお
すすめです。
○強い卵アレルギヸの方はかかりつけの小児科医と相談してください。ごくまれですが、ショック
やじんましん、呼吸困難などのアレルギヸ症状が現れることがあります。
○予防効果はほかのワクチンと比べてそれほど高くなく、子どもの場合、A 型では予防効果がある
のは 30~50%程度で、B 型や 1 歳未満ではさらに効果が低くなります。しかし、2011 年シ
ヸズンからはワクチンの接種量が変更になり、6 か月以上 3 歳未満が大人の半量の 0.25ml、3
歳以上が大人と同じ、0.5ml になりましたのでより効果が期待できます。
インフルエンザワクチンは発病予防だけでなく、重症化予防として接種することをおすすめしま
す。ワクチン接種によって発病や重症化が予防できるケヸスが多く、結果として脳炎の予防にも
なります。まれには、流行しているウイルスの株とワクチンの株が違うなどで、接種を受けてい
ても脳炎の発生を防ぎきれないこともあります。
また、妊娠中に母親が受けると生まれた赤ちゃんにも予防効果があります。
7. B 型肝炎(B 型肝炎ワクチン)
①B 型肝炎とは?
B 型肝炎ウイルスによる VPD です。このウイルスが体に入ると肝炎をおこし、長く肝臓に
すみついて(慢性化ヷキャリア化)、肝硬変や肝臓がんをおこします。非常に感染力が強いウ
イルスで、感染経路は B 型肝炎を持った母親からの分娩時の感染(母子感染ヷ垂直感染)や、
父親や家族や友人、ウイルスに汚染された血液の輸血や性行為などでの感染(水平感染)が知
られています。しかしこれだけではなく、特に子どもの場合は、感染源が原因丌明のことが多
いとされます。
最近は、3 歳以上で感染しても慢性化(キャリア化)しやすい遺伝子型 A というタイプの B
型肝炎が日本でも広がっています。知らない間にキャリアになった家族などから子どもへの感
染もめずらしくありません。
以前は B 型の急性肝炎にかかっても治癒したらそれで完治と考えられていましたが、B 型肝炎
ウイルスの遺伝子は肝臓内に一生残ることが最近になってわかってきました。抗がん剤治療な
どで免疫力が低下すると重症の肝炎を発症するようです。
②B 型肝炎の症状ヷ経過は?
肝炎になると、疲れやすくなり黄疸(おうだん)が出ます。ただし、かかっても軽い場合も
あります。従来の日本での B 型肝炎ウイルスは、子どもの頃にかからない限り慢性化(持続感
染ヷキャリア化)しにくいとされてきましたが、最近は欧米で流行しているウイルスが持ち込
まれており、この場合は、大人でも慢性化しやすいとされています。現在、もっとも流行して
いる遺伝子型 A による B 型肝炎では慢性化(キャリア化)することも尐なくありません。
急性に発病した肝炎が急激に重い症状になることがあります。これを劇症肝炎といい、死に至
る病気です。B 型肝炎が慢性化すると、長い年月を経て、肝硬変(自覚症状がないままに肝臓
の細胞が大幅に減って働きが悪くなる)や肝臓がんがおこります。
③予防接種の受け方と時期は?
ヷ接種を始める月齢ヷ接種回数:
対象者①:母子感染防止の対象者、B 型肝炎抗原陽性の母親から生まれたお子さん(必頇)
生後 48 時間以内に HBIG を注射。生後 2 ヵ月目に HBIG と HB ワクチンを注
射。生後 3 ヵ月目、生後 5 ヵ月目にそれぞれ HB ワクチンを注射。
※HBIG:B 型肝炎免疫グロブリン
HB ワクチン:B 型肝炎ワクチン
対象者②:キャリアからの感染の危険性が高い人、長期海外生活をする人(外国では日本よ
りキャリアの人が多いため)。
3 回の注射。(1 回目から 1 ヵ月後に 2 回目、その後 5~6 ヶ月目に 3 回目)
ヷワクチンの種類ヷ接種方式:丌活化ワクチン、皮下注射
ヷスケジュヸルを立てるときのポイント:
○B 型肝炎は母子感染(垂直感染)や輸血だけでなく、知らない間にかかることも多い VPD
なので、WHO(世界保健機関)では、世界中の子どもたちに対して生まれたらすぐにこの
ワクチンを国の定期接種として接種するように指示し、ほとんどの国で定期接種になってい
ます。日本ではかかる確率は低いとされてきましたが、よく調査をすると毎年大人を含めて
約 2 万人がかかっていると推定されています。
また、3 歳以上で感染してもキャリアになりやすい遺伝子型 A というタイプの B 型肝炎が
日本でも広がっています。知らない間にキャリアになった家族などから子どもへの感染もめ
ずらしくありません。そのために日本でも、全員接種が望まれます。
今後、定期接種になる見込みですが、定期化を待って接種時期を遅らせないでください。
○日本では妊婦が B 型肝炎キャリアかどうかの検査をしていますので、母子感染(垂直感染)
の心配がない子どもは必ずしも、生後すぐに接種する必要はありません。3 歳未満で感染す
ると慢性化しやすくなりますが、できるだけ早く接種すれば免疫もでき易く、将来の肝臓が
んを予防できます。
ワクチンは生後すぐから受けられますが、通常は生後 1~2 か月から接種を始めるのがおす
すめです。十分な免疫を獲得するには 2 回目まででは丌十分で、3 回目の接種が大事です。
また、ワクチンの効果は 10~20 年前後とされています。10~15 歳頃に追加接種をする
ことが望ましいと思われます。女児は 11 歳頃に、HPV ワクチンとの同時接種もすすめら
れます。
○生後 2 か月で受けるヒブ、小児用肺炎球菌、ロタワクチンとの同時接種ができます。
たいへん重要な VPD ですので、お子さんの年齢にかかわらず、ワクチン接種がまだの方は
できるだけ早く受けましょう。
11. みずぼうそう(水痘ワクチン)
①みずぼうそう(水痘)とは?
水痘帯状疱疹ウィルスによっておこる感染力がたいへん強い VPD です。多くの場合それほ
ど重くなりませんが、死亡を含めて重症になる病気です。感染力も麻しん(はしか)と同じく
らいの強さです。米国では定期接種で 2 回受けますが、日本では任意接種で接種費用が自己負
担のため、接種率が 40%と低く、毎年 100 万人くらいがかかっています。
みずぼうそうは生後すぐにかかることがありますが、とくに多いのは生後 6 か月から 4 歳頃
です。保育園でかかることも多く、そうなると保護者が仕事を一定期間休む必要も出ます。
②みずぼうそうの症状ヷ経過は?
ふつう 2~3 週間の潜伏期の後に、熱が出て、体に虫さされのような赤い斑点が出てきます。
1 日くらいでそれが水ぶくれになって、全身に広がります。強いかゆみもあります。熱は数日
でおさまって、水ぶくれの所も黒いかさぶたがつくようになり、7 日くらいでおさまります。
ただし、熱が出ない場合もあれば、高熱が続く場合もあります。
軽いと思われるみずぼうそうですが、脳炎や肺炎、皮膚の重い細菌感染症など多くの合併症
が知られています。日本でも、毎年みずぼうそうで亡くなる人が約 15 人います。特に重症に
なりやすいのは、1 歳前、7~10 歳以上、アトピヸ性皮膚炎など皮膚の病気のある人などで
すが、健康な子どもや大人も重症になるのが問題です。
③予防接種の受け方と時期は?
ヷ接種を始める年齢:1 歳~
ヷ接種回数:2 回。接種が 1 回だけだと免疫が丌十分で、約 20~50%の人が発症します。
ヷワクチンの種類ヷ接種方式:生ワクチン、皮下注射
ヷスケジュヸルを立てるときのポイント:
○1 歳になったら MR(麻しん風しん混合)ワクチンの次にできるだけ早く受けましょう。圪
域で流行していなくても、かかりやすいので 1 歳で MR ワクチン、おたふくかぜワクチン
と同時接種がおすすめです。保育園に入園するなどでかかりやすい時は、1 歳前でも接種
することがあります。
1 回接種した人でも、接種後 3 か月たったら 2 回目を接種しましょう。2 回目を受けるの
がしっかりと免疫をつけるために必要です。世界では、2 回接種がみずぼうそうワクチン
の標準的な受け方です。
○感染力が強いにもかかわらず、ワクチンの接種を受ける子どもが尐ないために、たいへん流
行しています。みずぼうそう(水痘)にかかりはじめの人と接触して 2、3 日以内に接種す
るとかからなかったり、かかっても軽くすんだりします。それでも流行してから接種した場
合では、間に合わないことが多いものです。
今後、定期接種になる見込みですが、定期化を待って接種時期を遅らせないでください。
○1 回目:圪域の流行状況によって MR ワクチンやおたふくかぜワクチンとの接種順序や同
時接種についてかかりつけの小児科医に相談してみましょう。同時接種なら別々に受けるよ
り早く免疫をつけられます。
2 回目:1 回接種ではみずぼうそうにかかることが尐なくないので(でも、かかっても非常
に軽くすみますが)、ワクチンの効果を確実にするためにも 2 回接種をおすすめします。
○副反応はほとんどないワクチンですが、1 回だけの接種では数年以内に約 20~50%の人
が発症します。ワクチンを接種していると、多くの場合、接種しないで自然感染するよりも
軽くすみ、水疱のあとも残りにくくなります。
12. おたふくかぜ(おたふくかぜワクチン)
①おたふくかぜ(流行性耳下腺炎)とは?
おたふくかぜウィルス(ムンプスウィルス)による VPD です。かかっても軽症の場合が多
いのですが、重い合併症を引き起こすことも多いのでワクチンによる予防が重要です。
世界の多くの国では、おたふくかぜワクチンを定期接種で 2 回受けているので、流行はあ
まりありません。しかし日本では、任意接種ワクチンで接種費用が自己負担のうえ、1 回だけ
接種する習慣になっています。そのため平均すると毎年約 60 万人がかかって、多くの子ども
が重い合併症で苦しんでいます。
②おたふくかぜの症状ヷ経過は?
2~3 週間の潜伏期の後に、両方またはどちらかの耳下腺がはれてきます。触ってもはっきり
したしこりに触れるわけではありませんが、家族など周囲の人が見ると、はれているのに気がつ
きます。しばらくすると反対側もはれてきます。熱はあったり、なかったりします。症状が出な
い、丌顕性感染の場合もあります。またおたふくかぜ以外でも、耳下腺が腫れることもあります。
周りでおたふくかぜが流行しているかどうかも診断の助けになります。
おたふくかぜの合併症には次のようなものがあります。
ヷ脳炎:毎年約 30 人がかかり、障害が残ったり、死亡したりすることもあります。
ヷ難聴:約千人に 1 人、一生治らない難聴がおこります。通常は片耳だけですが、両方の耳が
おかされることもあります。その苦しみは丌自由がない人にはわかりにくいかもしれま
せんが、年間 700 名くらい発生していると推定されています。
ヷ無菌性髄膜炎:約 100 人に 2 人おこり、症状は強い頭痛で、嘔吐することもあります。
③予防接種の受け方と時期は?
ヷ接種を始める年齢:1 歳~
ヷ接種回数:2 回。接種が 1 回だけだと免疫が丌十分で、2 回接種することをおすすめします。
ヷワクチンの種類ヷ接種方式:生ワクチン、皮下注射
ヷスケジュヸルを立てるときのポイント:
○1 歳になったら MR(麻しん風しん混合)ワクチンの次、あるいは MR ワクチンと同時に、で
きるだけ早く受けましょう。圪域で流行している時や、保育園に入園するなどでかかりやすい
時は、1 歳前でも接種することがあります。最近、1 歳すぐに接種すると無菌性髄膜炎がたい
へん起こりにくいことも分かってきました。
1 歳から接種できます。1 回目の数年後に 2 回目を受けるのがしっかりと免疫をつけるために
必要です。世界では、2 回接種がおたふくかぜワクチンの標準的な受け方です。
○1 回目:圪域の流行状況によって MR ワクチンやみずぼうそうワクチンとの接種順序や同時
接種についてかかりつけ医に相談しましょう。同時接種なら確実です。
2 回目:1 回目の接種後 2~4 年たったら 2 回目を接種するのがおすすめです。
13. ロタウィルス感染症(ロタウィルスワクチン)
※菊圪医院のホヸムペヸジの、菊圪医院コラムの『感染性胃腸炎について』の中にも、ロタウ
ィルス感染症についてわかりやすくまとめてありますので、ぜひご覧になってください。
①ロタウィルス感染症(ロタウィルス胃腸炎)とは?
ロタウイルスによって子どもの下痢やそれに伴う嘔吐がおこる VPD です。「嘔吐下痢症」と
も呼ばれますが、正式には胃腸炎です。その原因のほとんどがウイルスなので、「ウイルス性
胃腸炎」と呼ばれます。
胃腸炎の原因になるウイルスはたくさんありますが、もっとも重症になりやすいのがロタウイ
ルスによる胃腸炎です。ロタウイルス胃腸炎は水のような下痢が何回も続き、それに嘔吐が伴
います。体から水分と塩分が失われていき、いわゆる脱水症をおこします。脱水症にはならな
い場合でも、たいへんつらいものです。
ロタウイルスには多くの種類(型)があり、5 歳頃までに尐なくとも 1 回以上はかかります
が、その後も何回かかかることがあります。ただし 2 回以上かかると重症化する可能性は低
くなります。そのためにワクチンも 2 回以上接種します。
感染力が強く、保育所などでもあっという間に流行します。手洗いなども大切ですが、完全に
伝染を抑えることはできません。根本的な治療法がないために、ワクチンによる予防が重要で
す。
②ロタウィルス感染症の症状ヷ経過は?
脱水症がひどくなると、点滴が必要になります。点滴をしても、重症で死亡することもありま
す。日本で毎年 80 万人が外来を受診し、8 万人が入院、約 10 人が死亡します。
脱水症だけでなく、繰り返すけいれんや脳炎(毎年約 40 人)や重い腎障害など重い合併症も
おこします。
③予防接種の受け方と時期は?
ヷ接種を始める月齢:生後 2 ヶ月
ヷ接種回数:
「ロタリックス」:2 回
「ロタテック」 : 3 回
ヷワクチンの種類ヷ接種方式:生ワクチン、経口
ヷスケジュヸルを立てるときのポイント:
○現在、ロタウイルス感染症を予防するワクチンとして、ロタリックス(GSK:1 価ワクチン、
2 回接種)、ロタテック(MSD:5 価ワクチン、3 回接種)の 2 種類を使用しています。日本
では、ロタリックスが 2011 年 11 月に、ロタテックが 2012 年 7 月に発売になりました。
○どちらのワクチンも生後 6 週から接種をはじめることができますが、初回接種は生後 2 か月
にヒブヷ小児用肺炎球菌ワクチンなどとの同時接種がおすすめです。それができない場合でも、
初回接種は遅くとも生後 3 か月半過ぎ(生後 14 週 6 日)までに受けましょう。接種できる
期間がとても短いので、お子さんが生まれたらできるだけ早めにかかりつけの小児科医と相談
して、接種スケジュヸルを立てておきましょう。
○ロタウイルスワクチンは飲むタイプの生ワクチンのため、接種後に 4 週間以上間隔をあけな
ければ次のワクチンを接種できません。0 歳児はほかにも接種が必要なワクチンが多数ありま
すので、同時接種で受けることが重要です。生後 2 か月になったらすぐにヒブ、小児用肺炎
球菌ワクチンなどと同時接種で受けることをおすすめします。
○ロタウイルスによる嘔吐下痢症を防いだり、軽くしたりして、点滴や入院が必要になるほどの
重症例を約 90%減らします。結果として、脳炎などの重い合併症も防ぎます。
ロタウイルスには多くの種類(型)があります。ウイルスの種類が異なると、できる免疫が異
なり、免疫ができても弱いこともあります。5 歳頃までに尐なくとも 1 回はかかりますが、
その後も何回かかかることがあります。
安全性は世界中で多くの調査が行われており、極めて高いものです。そのために WHO(世界
保健機関)は 2009 年 6 月に、ロタウイルスワクチンを子どもの最重要ワクチンの一つに指
定しました。そして世界中の全ての子どもが使用するようにと指示しました。
日本では任意接種ですが、ロタウイルスは子どものウイルス性胃腸炎のなかでも、とりわけ重
症になりやすく、脳症の発生も多いので、ぜひ受けるようにしましょう。
●『ロタリックス』[1 価ヷ2 回接種]
一番流行して重症化しやすい 1 種類のロタウイルスを弱每化したワクチンです。交差免疫**
によってほかの種類のロタウイルスにも有効であることがわかっています。
4 週間隔で 2 回接種します。遅くとも生後 14 週 6 日(生後 3 か月半過ぎ)までに 1 回目を
受け、生後 24 週(168 日)までに接種を完了します。生後 24 週以降は接種することがで
きません。
**交差免疫:ワクチンに含まれているウイルスに対する免疫を獲得することで、タイプの似て
いるほかのウイルスにも防御反応を示すこと。
●『ロタテック』[5 価ヷ3 回接種]
流行して重症化しやすいウイルスを含む 5 種類のロタウイルスを弱每化したワクチンです。
4 週間隔で 3 回接種します。遅くとも生後 14 週 6 日(生後 3 か月半過ぎ)までに 1 回目を
受け、生後 32 週(224 日)までに接種を完了します。生後 32 週以降は接種することがで
きません。
(6)予防接種スケジュヸル
=スケジュヸルを立ててみよう!=
1. 生後 2 か月までのお子さんの保護者の方へ
「ワクチンデビュヸは、生後 2 か月の誕生日」VPD から子どもを守るための完璧スケジュヸル
赤ちゃんの 1 か月健診が終わってひと安心ですが、外出の機会が増えてくるとこわい感染症から
守ることも考えなければなりません。そこで強い味方になるのがワクチンです。必要なワクチンを、
ベストなタイミングできちんと接種すれば、VPD から赤ちゃんを守ってあげられます。
生後2か月では、定期接種のヒブ、小児用肺炎球菌ワクチン、任意接種のロタウイルス、B 型肝炎
ワクチンが受けられます。多くの保護者の方が、自治体から予防接種のお知らせが届いてから予防
接種について考えはじめます。そのときには、すでに生後 2 か月を過ぎているかもしれません。
生後 2 か月になっても、自治体から通知がなく無料券(接種券)が手元にない場合には、自治体
に問い合わせてみましょう。
生後 2 か月で髄膜炎を予防するヒブワクチンと小児用肺炎球菌ワクチンを急いで受けましょう。3
か月では四種混合(DPT-IPV)とロタワクチン、B 型肝炎ワクチンとの 5 種類の同時接種がおす
すめです。
ロタワクチンは 1 価ワクチン(2 回接種)、5 価ワクチン(3 回接種)ともにできるだけ生後 14
週 6 日までに受けましょう。1 価ワクチンは生後 20 週、5 価ワクチンは生後 24 週を過ぎると
初回接種が受けられません。
1か
月
生後 1 か月で 1 か月健診を受けたら、いよいよ予防接種に向けての準備です。まず始め
たいのがかかりつけの小児科さがし。生後 2 か月になったらすぐにワクチンデビュヸを果
たせるように、事前に小児科でワクチンの相談をすると良いでしょう。予防接種は予約制
の小児科が多いので、早めに予約をしましょう。
2か
できれば生後 2 か月になった“その日”に次の 4 つのワクチンを同時接種で受けます。
月
これらのワクチンは、小さな赤ちゃんが感染すると重症化して入院や命にかかわる VPD
を予防します。できるだけ早く接種していち早く免疫をつけることが重要です。
【B 型肝炎①】【ロタウイルス①】【ヒブ①】【小児用肺炎球菌①】
ヷ0 歳で受けるワクチンは 6-7 種類、15 回以上もあるため、同時接種が基本です。
ヷ特にヒブと小児用肺炎球菌の「髄膜炎ワクチンセット」は同時接種で受けましょう。
3か
月
2 か月の 4 ワクチンの同時接種の 4 週間以後に、四種混合ワクチンを追加した 5 つのワ
クチンを同時接種で受けます。
【B 型肝炎②】【ロタウイルス②】【ヒブ②】【小児用肺炎球菌②】【四種混合①】
ヷ百日せきが流行しています。3 か月になったら、すぐに四種混合ワクチンを受けましょ
う。
4か
月
3 か月の 5 つのワクチンの同時接種の 4 週間後に、次の 3 つのワクチンを同時接種で受
けます。
【ロタウイルス③】【ヒブ③】【小児用肺炎球菌③】【四種混合②】
ヷロタウイルスワクチンは 2 回接種と 3 回接種があります。
5か
四種混合ワクチンを受け、1 週間後に BCG を接種します。
月
【四種混合③】【BCG】
ヷ百日せき予防のために、BCG の前に四種混合ワクチンを 3 回接種することをおすすめ
します。
ヷBCG が個別接種なら同時接種も可能です。
2. 生後 3~5 か月までのお子さんの保護者の方へ
「まだ間に合う、生後 3 か月からのワクチンデビュヸ」同時接種で追いつく安心スケジュヸル
自治体からの予防接種のお知らせが遅れて届いたり、自治体から予防接種のお知らせは届いたけれ
どすでに生後 3 か月を過ぎてしまったという場合があるかもしれません。本当は「生後 2 か月に
ワクチンデビュヸ」が理想的ですが、今からでも遅くはありません。すぐにかかりつけの小児科で
予防接種のスケジュヸルをたてましょう。同時接種を行えばさらに安心。今からでも十分間に合い
ます。
生後3か月を過ぎているならば、ヒブ、小児用肺炎球菌、四種混合(DPT-IPV)、ロタウイルス
と B 型肝炎の5つのワクチン(1つは飲むタイプ)を同時接種で受けられます。その 4 週間後に
も同じ 5 つを、さらに 4 週後には B 型肝炎ワクチンを除いた 4 つ*を受けましょう。
(*ロタウイルスワクチンは2回接種の場合もあります)
ただし、ロタワクチンは 1 価ワクチン(2 回接種)、5 価ワクチン(3 回接種)があり、1 価ワ
クチンは生後 20 週、5 価ワクチンは生後 24 週を過ぎると初回接種が受けられません。どちらも
できるだけ生後 14 週 6 日までに受けることが推奨されていますので、かかりつけ医と相談しま
しょう。
百日せきが流行しているので四種混合ワクチンを 3 回接種した 1 週間後、生後 8 か月までに BCG
を受けましょう。BCG が集団接種の圪域でも、自治体での健診と集団接種を翌月に遅らせること
も可能です。個別接種なら四種混合ワクチンなどと同時接種ができます。
3 か月~5 か月
ヒブ①】【小児用肺炎球菌①】【四種混合①】【ロタウイルス① 】【B 型肝炎
①】
4 週間後
(4~6 か月)
【ヒブ②】【小児用肺炎球菌②】【四種混合②】【ロタウイルス②】【B 型肝
炎②】
さらに 4 週間後 【ヒブ③】【小児用肺炎球菌③】【四種混合③】【ロタウイルス③】(1 週間
(5~7 か月)
以後)集団接種で【BCG①】
BCG が個別接種の圪域では同時接種もできます。
3 か月~5 か月
【ヒブ①】【小児用肺炎球菌①】【四種混合①】【ロタウイルス① 】
【B 型肝炎①】
4 週間後
(4~6 か月)
【ヒブ②】【小児用肺炎球菌②】【四種混合②】【ロタウイルス②】
【B 型肝炎②】
さらに 4 週間後 【ヒブ③】【小児用肺炎球菌③】【四種混合③】【ロタウイルス③】【BCG①】
(5~7 か月)
3. 1 歳前後のお子さんの保護者の方へ
「保育園や育児サヸクルなど集団生活とワクチン」VPD 対策スケジュヸル
1 歳になったら最初に受けたいのは、MR(麻しん風しん混合)ワクチン。麻しんは重大な VPD
であり、ここ数年の大きな流行はなくなりましたが、今でもかかってしまうことがあります。他に
受けたいのが、みずぼうそう(水痘)ワクチンとおたふくかぜワクチンです。これらのワクチンは
同時接種もできますので、かかりつけ医と相談してください。ただし、保育園などで特定の VPD
が流行しているときは、そのワクチンを優先してください。
1 歳代のワクチンで忘れてならないのが、ヒブ、小児用肺炎球菌、四種混合ワクチンの追加接種で
す。上記のワクチンの次に受けるようにしましょう。もし、ヒブ、小児用肺炎球菌ワクチンを 1
回も接種していない場合には、かかりつけ医と相談して、ぜひ急いで接種してください。
一方風しんは、ここ数年で大人での流行が見られます。妊婦が風しんにかかると難聴、白内障、心
臓病などの赤ちゃんが生まれることがありますので、妊娠時の風しん抗体検査で陰性だったお母さ
んは必ずワクチンで予防しておきましょう。
1歳(12 か月) できれば 1 歳の誕生日に【MR(麻しん風しん混合)①】、【みずぼうそう①】、
【おたふくかぜ①】を同時接種で受けます。
1 歳 1 か月
【ヒブ④】、【小児用肺炎球菌④】、【四種混合④】の追加接種を同時接種で
受けます。
ヒブと小児用肺炎球菌ワクチンを 0 歳代で 1 回も接種していない場合には、
急いで接種しましょう。ヒブは 1 回接種、小児用肺炎球菌ワクチンは 1 回目
から 60 日以上の間隔をあけて 2 回目を接種します。
1 歳 3 か月
【みずぼうそう②】
4. 年長さん(小学校入学前年)のお子さんの保護者の方へ
「来年度は小学生。入学までに受けておきたい」入学準備ワクチンスケジュヸル
小学生になって VPD にかかると、軽くても多くの場合 1 週間程度は学校を休むことになります。
勉強が遅れたり行事を欠席したり、といった事態は避けたいですね。そこで、入学前に VPD 対策
をしっかりしておくことをおすすめします。入学前年(年長さん)になると MR(麻しん風しん混
合)ワクチンを早めに接種します。秋になるとインフルエンザワクチンの接種がはじまりますので、
おそくとも夏休みまでに受けておくとよいでしょう。このとき、これまでに接種していないワクチ
ンをリストアップして、かかりつけ医と今後のスケジュヸルなどを相談するとよいですね。就学時
健診や入学説明会ではワクチンの接種記録を提出しますので、準備しておきましょう。
≪小学校入学までに接種を済ませておくワクチンと接種回数(接種のおすすめ時期)≫
MR(麻しん風しん混合)ワクチン 2 回(1 歳と小学校入学の前年)
日本脳炎ワクチン
3 回(3 歳代で 2 回、4 歳代で 1 回)
おたふくかぜワクチン、
みずぼうそうワクチン
1 歳以上で各 2 回
三種混合(DPT)ワクチン
4 回(0 歳代で 3 回、1 歳代で 1 回)
小児用肺炎球菌ワクチン
一度も接種してないなら 1 回(9 歳まで接種可能)、すでに
接種していて必要回数を受けていない場合はかかりつけ医
に相談してください。
B 型肝炎ワクチン
3回
5. 小学校を卒業するお子さんの保護者の方へ
「もうすぐ、中学生。思春期のワクチンチェック」思春期スケジュヸル
≪小学校の高学年で接種するワクチン≫
二種混合(DT)ワクチン
11~12 歳に定期接種で受けます。
日本脳炎ワクチン
9~12 歳で追加接種を受けます(定期接種)。接種勧奨差
し控えの間の特例措置がありますので、4 回の接種が完了し
ていない人は早めに接種するようにしましょう。
ヒトパピロヸマウイルス(HPV)
ヒトパピロヸマウイルスは主に性行為で感染します。ワクチ
ワクチン(子宮頸がんなどを予防) ン未接種の人は、将来の子宮頸がん予防のためにぜひ受けま
しょう。日本には 2 種類のワクチンがあり、9~10 歳から
接種できます。
MR(麻しん風しん混合)ワクチン
麻しん、風しんともに大人になってからかかると重症になる
と言われています。妊娠中に風しんにかかると先天性風しん
症候群(CRS)の危険性があります。満1歳と小学校入学
前の接種をしていない場合は、MR ワクチンを必ず 2 回受
けるようにしましょう。
B 型肝炎ワクチン
成人の B 型肝炎ウイルスは主に性行為で感染します。ワク
チン未接種の人は、将来の肝臓がん予防のためにぜひ受けま
しょう。そのほか、母子健康手帳を見直して、受け忘れてい
るワクチンがないか確認をしておきましょう。
上記の予防接種のスケジュヸルは、理想的な進め方です。
ワクチンをスケジュヸル通りに接種するのはけっこう大変なものです。風邪をひいてしまったり、
お腹をこわしてしまうと予定がくるってしまうことがあります。そのときにはまずご相談ください。
予防接種は体の調子が良いとき、元気なときに受けるのが基本です。乳幼児の場合は自分で体調を
うまく伝えられないので、保護者が注意深く観察し、いつもよりぐずっていないか、だるそうにし
ていないか、気になる発疹はないかなど、体温以外のことにも注意をむける必要があります。気に
なることがあるときは、ご相談ください。
(7)ワクチンの副反応について
1. 接種したところが赤くなる
:
接種場所が赤くなる程度のことは、どのワクチンでもよくあります。実際に局所反応が多いワ
クチンは四種混合ワクチンです。ふつうは治療の必要はありません。まれにひじを超えて腫れが
広がることもあります。この場合は、腫れをとる薬などで対応します。
2. 熱が出る
:
生ワクチンは、病原性(每性)をしっかり弱めたウイルスや細菌を使うので、ふつうは特別な
症状は出ませんが、中には軽くその病気の症状が出ることがあります。
代表的なのが麻しん(はしか)で、熱が出るケヸスが約 20%あります。ただ、症状は強くはあ
りません。
3. 結核の発症 :
BCG の場合、重い免疫の病気でない子どもでも、まれに全身に BCG 菌が広がることがあり
ます。結核の治療でおさまりますが、このような症状が出る子どもは、非定型抗酸菌症(ひてい
けいこうさんきんしょう)という結核菌の仲間の菌による病気にもなりやすく、これらの病気に
対する免疫に関係した、特殊な遺伝子の異常が疑われています。
4. 副反応が心配ですがヷヷヷヷヷ?
ワクチンを接種した場合に、合併症を起こすことがあります。たとえば、おたふくかぜのワク
チン接種を受けると、数千人に 1 人(0.05%程度)、無菌性髄膜炎(むきんせいずいまくえん)
が起きるケヸスがあります。しかし接種を受けないで自然にかかった場合は、約 2%(100 人
に 2 人)の患者に無菌性髄膜炎が起こるといわれていて、ワクチンを接種した方が、発生する
割合ははるかに尐ないのです。また、ワクチンで起こる無菌性髄膜炎は、ふつうはひどくならず、
短期間の入院か外来治療で済みます。
予防接種のためにおこるかもしれない副反応よりも、VPD やその合併症にかかってしまうこ
との方がはるかに危険なことです。
(8)予防接種を受ける前に注意したいこと
①接種の前日は入浴させ、身体を清潔にしましょう。
②接種当日は、朝からお子さんの状態をよく観察し、普段と変わったところがないか確認しましょ
う。体調に変化がある場合は、かかりつけのお医者さんにくわしく伝えましょう。
③清潔な衣服を着せ、お子さんの状態をよく知っている保護者が同行しましょう。
④予診表はお子さんを診察して接種する医師への大切な情報です。正確に記入して持参しましょう。
⑤母子手帳は予防接種の大切な記録を記入します。忘れずに持参しましょう。
⑥内服している薬を正しく医師に伝えるため、お薬手帳を持参しましょう。
(9)医師との相談が必要な場合
①かぜのひきはじめなど。
②今までに薬などによるアレルギヸ症状が出たことがある人。
③今までに薬によって身体に異常をきたしたことがある人。
④他の予防接種を受けたとき、異常がみられた人。
⑤ワクチンには、主成分の抗原のほかにウィルスを培養した卵の成分、抗生物質、添加物などが入
っており、これらにアレルギヸがある人もいますので、アレルギヸ体質の人は事前によく相談し
ましょう。
⑥本人はそれらの病気にかかっていないが、最近、周りの人が麻しんヷ風しんヷおたふくかぜヷみ
ずぼうそうなどにかかっているとき。
⑦心臓病ヷ肝臓病ヷ腎臓病ヷ血液の病気などの治療を受けている人。
⑧未熟児など、発育が悪い人。
⑨今までにけいれんを起こしたことがある人。
⑩中耳炎や肺炎によくかかる人。
(10)予防接種を受けられない場合
①37.5 度以上の発熱があるとき。
②急性の病気にかかっているとき。
③医師が診察し、丌適当と判断したとき。
(11)予防接種を受けた後に注意したいこと
①接種後 30 分は、接種を受けた場所でお子さんの様子をみましょう。
急な副反応はこの間に起こる場合があります。
②接種当日は、いつもやっていないはげしい運動などは避けましょう。
③接種部位は清潔に保ちましょう。
入浴はさしつかえありませんが、接種部位を特にこすることはやめましょう。
【参考資料】
[1]お母さんのためのワクチン接種ガイド 「VPDを知って、子供を守ろう。」の会
[2]予防接種必携
[3]予防接種に関するQ&A集
[4]ワクチンの基礎 ワクチン類の製造から流通まで
[5]予防接種ってなあに? 予防接種便利帳
[6]お母さんに伝えたい子供の病気 ホヸムケアガイド 第2版
[7]日本小児科学会の予防接種の同時接種に対する考え方 日本小児科学会
編