歯科医学教育における教員を対象とする ICT ワークショップの取り組み

歯科医学教育における教員を対象とする ICT ワークショップの取り組み
発表者
: 割田 幸恵・日本歯科大学生命歯学部
共同研究者:
新井 一仁 1、鹿野 千賀2、南雲
山瀬
保 1、宮坂
平 1、秋山 仁志 2、柵木 寿男1、高橋 幸裕1、
勝2、高田 清美 1、小倉 陽子 1、長谷川 充2、伊藤 菜穂2
日本歯科大学生命歯学部 1・日本歯科大学附属病院 2
連絡先
:〒102-8159
東京都千代田区富士見1-9-20
TEL/FAX;03-3261-5757/03-5216-3720・E-mail;[email protected]
については 5 段階の評価として、年度間で回答結果に
1.はじめに
近年、歯科医学教育では、多様化する学生に対して、
より質の高い教育を行うために、教員の技能や意識を
ついて t 検定による統計学的分析を行った。
3.結
果
含む教育力の向上が求められている 。中でもコンピュ
受講者は、平成 20 年度 24 名、21 年度 18 名、22 年
ータ技術(internet and computer technology 以下、
度 12 名、23 年度 23 名、のべ 77 名で、アンケート回
ICT)は、講義や実習における説明、試験問題の作成な
収率は 100%であった。
ど、教育のあらゆる分野で教員にとって必須なものと
1)ICT 習得度について(図1、2)
1)
なってきた。そこで、本学ではファカルティ・ディベ
2 項目ともに各年度間で有意差は認められず、
「十分
ロップメント(以下、FD)の一環として、特に客観試
な応用力が得られた」(35.1%、46.8%)または「理解
験問題に用いる視覚素材作成のための画像処理をテー
できたが、応用力は不十分」(57.1%、48.1%)との回
マとするワークショップ(以下、WS)を開催し、教員
答が多く、「十分に理解できなかった」と答えた者は、
の ICT 利活用力の向上を図ってきている。今回は、本
5~8%と少なかった。
学で開催された ICT を活用した視覚素材作成のための
WS について紹介し、受講者に対するアンケート調査結
果を報告する。
2.方
法
平成 20 年度から 23 年度に本学の教員を対象に、ICT
利活用力の向上の一環として「客観試験問題等に用い
る視覚素材を作成するために必要な基本的技能、知識
および態度を身につけること」を目標に、画像処理技
図1
画像処理ソフトの習得度
術の習得を中心とした WS は計 4 回開催された。WS
の実施概要を表1に示す。各 WS 受講後に、全受講者
を対象にアンケート調査を行った。質問項目は、ICT
習得度に関する 2 項目(① 画像処理ソフトウェア、②
Microsoft office PowerPoint)と WS に関する 5 項目(①
内容の価値、②内容に対する時間量、③内容の難易度、
④WSの学習効果、⑤WSの内容に対する興味) の計
7 項目、回答法は ICT 習得度については 3 段階、WS
表1
項
目
図2
Microsoft office PowerPoint の習得度
平成 20 年度~平成 23 年度における本学 FDWS の実施概要
内
容
撮影に関する講義・
撮影対象が歯科用器具・器材である場合と、口腔内(実習ではファントームの口腔内に設置された歯
実習
列模型を代用)である場合に分けてその撮影に必要な技術および考慮すべきポイントを習得する。
画像処理
撮影した画像の回転、切り抜き、明るさや色調の調節の技術などを修得する。
画像処理後の加工
複数の画像の合成および描画などの技術を修得する。
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2)WS の内容について(図3~7)
4.考
察
WS の内容に「かなり価値あり」および「きわめて価
本学のカリキュラムに情報リテラシー・コースが組
値あり」と答えた者が 91%(図3)、WS の学習効果に
み込まれて2)から 5 年以上が経過し、多様化する学生
関しては、
「かなり効果的」および「きわめて効果的」
の資質に見られる情報格差3)とともに、現在歯科医学
との回答が 78%(図6)を占めた。
教育の現場で中心にある世代の教員とこれから新たに
参画する世代の教員との間の ICT 利活用力の格差が及
ぼす影響を緩和することが急務であると考えらえる。
平成 20 年に文部科学省は、充実した教育を展開するた
めにすべての大学・短期大学に FD を義務付ける方針を
打ち出し、翌年度から省令が施行されている4) 。本学
ではそれ以前より WS を用いた FD を実施してきたが、
今回の ICT 利活力向上のための WS 受講後の感想には、
「今後の診療や講義に活用したい」、「症例発表や学会
発表に活かしたい」などのような意見が挙げられ、受
講者である教員の教育力に対する意識の向上に本 WS
図3
WS内容の価値
図4
WSの時間量
も貢献できたと推察された。このように ICT には、新
しい学習効果があると考えられ5)、今後も ICT を活か
した教育システムや教育コンテンツの開発が必要であ
ることを念頭に置き、今回のアンケート結果をふまえ
て、
さらに教員の ICT 利活用力を高められるような FD
WS を開催することにより、歯科医学教育の向上を目指
していきたい。
【参考文献】
1)平出
敦、森本
剛:医療系教育におけるFDの
展開-医師臨床研修必修化とFD-、京都大学高
図5
WS難易度
図6
WSの学習効果
等教育研究 2008;96:83-86.
2)新井一仁:生命歯学部での情報リテラシー教育、
歯学春季特集号 96、2009;117-122.
3)鹿野千賀、宮下
渉、織田聰一郎、河合泰輔、小
倉陽子、ほか:歯科医学教育における情報リテラ
シー・コースに対する学生の反応、第 26 回日本歯
科医学教育学会総会・学術大会・プログラム抄録
集、2008;124.
4)石田佳代子:看護系大学の新人教員に対するファ
カルティ・ディベロップメント(FD)推進のた
図7
WS内容に対する興味
めの文献調査に基づく課題、看護科学研究 2010;
9:10-18.
5)青葉孝昭、佐藤かおり、柬理頼亮:歯学部病理診
断学における Web 教材の活用と学習効果の検証、
メディア教育研究 2007;3(2):115~124.
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