H25厚労省研究p165 新しいeuAルプライマーを利用した

厚生労働科学研究費補助金(健康安全・危機管理対策総合研究事業)
レジオネラ検査の標準化及び消毒等に係る公衆浴場等における
衛生管理手法に関する研究
新しい"euAルプライマーを利用したLegionellapneumop"肱臨床分離株の
SBT法による遺伝子型別
研究代表者倉文明
国立感染症研究所細菌第一部
研究分担者前川純子
国立感染症研究所細菌第一部
研究要旨:レジオネラ症患者に由来する臨床分離株を収集して、SBT(sequence-based
typing)法を用いて遺伝子型別を行った。2012年度に収集された臨床分離株は55株
(うち2株は同一の集団感染事例に由来する)で、血清群の内訳は血清群lが50株、
血清群2,3,5,9,10が各1株だった。臨床分離株55株は41種類の遺伝子型に分
けられ、そのうち新規遺伝子型は15種類だった。当初は散発事例と見られていた2
事例の遺伝子型が一致したことから、2事例の関連性が確認できた。
A.研究目的
イマーを評価するために、これまで型別
不能であった臨床分離株について型別を
公衆浴場等の入浴施設において衛生管
理が不適切な場合、レジオネラ症例が発
行った。
生することがある。その際、感染源を確
定するにはレジオネラ症患者からの分離
B.研究方法
昨年度(2012年度)にレジオネラ・レ
株と環境からの分離株の遺伝子型を比較
し、同一菌株であるかどうかを確認しな
ファレンスセンターで収集したL、
ければならない。レジオネラ症の起因菌
p"eumop吻加臨床分離株55株(さかのぼっ
として最も多いLegionellapne""topル肋の
て収集された2010年分離の2株、2011
遺伝子型別法として世界的に普及してい
年分離の4株以外は2012年∼2013年に分
るSBT法を用いて、収集されたL、
離された)、およびそれ以前に収集された
p"“"”〃池臨床分離株について、遺伝子
型別不能株であったL、p"eumop〃池臨床
型別を行った。また、これまで主として
分離株10株について、EWGLI(European
血清群I以外の一部の株が型別不能で
WorkingGroupforLegionellaInfections)の
あったが、それを解消するための新しい
方法(http://www.ewgli.org/)に従って、
プライマーが提案されたので、そのプラ
JlaA、PiノE、asd、、わ、耐ompS、proA、〃euA
165
遺伝子の一部の領域の塩基配列に基づく
て温泉関連事例であった。次いで多いST1、
型別(SBT)を行い、遺伝子型を決定した
ST23(各3株)は国内外で従来からよく
1.2)。今までに収集された臨床分離株のう
分離されるSTで、ST1の1例が自宅風呂
ち、〃euA遺伝子が従来のプライマーで増
と推定されている以外、感染源は不明で
幅できない菌株10株(血清群5が7株、
ある。ST89も3株分離されたが、国内で
血清群2,4,10が各1株)および昨年度
は今まで1株しか分離されておらず、地
収集分で"euA遺伝子が従来のプライマー
域も異なっており、増加した理由は不明
で増幅できなかった菌株2株(血清群5,
である。他に2株分離されたSTは5種類
10が各1株)については新しく提案され
あり、1株ずつのSTは32種類だった。
た〃euAh(neuAホモログ)プライマー3)
新規STは15種類あり、EWGLIのデータ
を用いて、遺伝子座を決定した。7遺伝子
ベースに登録され、ST番号が付与された
の遺伝子型が決まった分離株をEWGLI
(表1)。
のデータベース3)に登録すると、新しい遺
neuA遺伝子が従来のプライマーで増幅
伝子型の組み合わせについてはST
できない血清群1以外の株(血清群5が8
(sequencetype)番号が付与される。
株、血清群10が2株、血清群2,4が各1
株)について、〃euAルプライマーを用いた
c.研究結果
ところすべて増幅でき、STを得ることが
臨床分離株55株は1つの集団感染事例
できた(表lのNIIB2915、NIIB2961およ
(患者数3名)の2人の患者からの分離
び表2)。
株を含むため、54事例に由来している。
血清群1が50株で、血清群は2,3,5,9、
D.考察
10が各1株ずつだった。感染源が温泉・
血清群1のSTは、minimumspanning
公衆浴場などの浴槽水と推定・確定され
tree解析により、Bl、B2、B3、CI、C2、
ている例が21例(39%)、田・畑作業と
SI、S2,S3、Uの9つのグループに大き
推定されている例がl例、使用している
く分けられる。環境分離株で見ると、Bl-3
給水タンクの疑い例が1例、旅行後に発
のほとんどが浴槽水分離株で、冷却塔水
症している例が2例で、29例(54%)は
分離株あるいは土壌分離株のほとんどが
感染源不明だった。別々の自治体から届
それぞれ、Cl-2あるいはSl-3に所属して
けられた2株は同時期に同一の公衆浴場
いる4)。今回調べられた血清群lの臨床分
を利用しており、同じST(新規ST)で、
離株は、集団感染事例の重複を除くと、B
集団感染事例の可能性が示唆された。55
グループ(候補を含む)が18例、Sグルー
株は41種類のSTに分けられた。日本固
プが19例、Cグループが4例であった。
有のSTであるSTBSが4株(集団感染事
感染源について、浴槽水(あるいは温泉)
例を含むため3事例)と最も多く、すべ
と推定(あるいは確定)されるのはBグ
166
ループに属する18例中12例であるのに
れているものの職業が建設業でそれがリ
対し、sグループでは19例中2例に過ぎ
スクファクターと考えられる例が2例
ず有意な差があった(p<0.001)。遺伝子型
あった。
により、大まかな感染源が推定可能であ
これまで血清群5の臨床分離株の多く
ると考えられた。Sグループに属する臨床
が〃euAが増幅しないために型別不能で
分離株で、実際に田・畑作業が感染源と
あったが、それは"euAh220を有するため
推定されている例や、感染源は不明とさ
であったことが分かった。〃euAル220は国
表12012年度に収集した臨床分離株(55株)
血 S T
理境分瞳
株との
溝(巽甲罰“
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2 鍾 麺 1 2 男 謹 泉 ( 推 定 ) L 犀 … 1
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津 7 m 1 2 男 不 明 睡 行 後 ) L 犀 … 1
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2 9 5 3 2 0 1 2 男 温 泉 ( 推 定 ) L … … 鞄 1
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29562012女湿泉(推定、自宅が迅泉)L卸時凶…必1
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1
1
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咽B分敵性
番号年嗣感母亜
(B1)錘
S1国内16例ロ.四外
B2鐘
S1国内3倒目、囲外
B1国内3例日.国外2例
(“)鰹
S$国内2例目
C1画内13例日.国外
一四外多.鳳内6例目
一国内3例日
B2錐
印国内19例日
S1国外(欧州)9例
(B2)国内2例目
U国内5例目.国外1
s1四内9例目
一国内3例日、四外10例SQ2
N 鮭
u国内3例日・国外4例
N歳
日1国内3例B
S1国内3例目
B1国内4例目
S1国内13例目,国外
S1国内16例目、国外
S1田内4例日
S1国内17例目.皿外
一国外で1例
S1国内17例目.国外
B1国内.例日
B3国内16例目
B1無
S1画内2例目
81国内4例日
S1国内4例ロ、国外
C2無
C1国内14例日.国外
S1餓
一田内4例日(1例はSO10)
“国内$例日
S1■
S1国内ID例g
S1国内5例目、国外
B1銭
(B刀飯
C1画内15例日.国外
U録
S3国内2例ロ.国外
B3国内17例日
B3国内17例ロ
B1国内7例日
B1国内2例日、国外
U国内3
国(
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が1
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《B1)無
無
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N 無
鋤14鋤13男公余浴場(推定)LP姥…1
蛎
●血澗群1のgTは、両営、師如な函gwe解構により.80.82、B3、C1,唾、S1.壁、S3.uの9つのグループに大きく分けられるが.そのいずれに風するかを毎睡I-たこ
Nは、いずれのグループにも固さ嘩いもの.かっこ内に配したのは間をつなぐ国株の発見により今後国する訂瞳墜が高いグループ
167
表2neuAhプライマーを用いたこれまで型別不能だった臨床分離株の型別結果
(nel脚hプライマーを用いた場合の遺伝子座番号は200番台となる。)
不明
L……伽51424
浬泉(推定)
L…””紬213別
不明
Lα"”“蝿5I531
湿泉(推定)
L … 蝿 5 1 4 2 7
入浄監岨
Lα”…蝿5I427
湿泉(推定)
L … 極 5 1 4 2 4
不明(膝行)
L……101425
不明
L……鐘51413
257
6 4 8
6 4 8
2 8 4
6 1 4
6 1 4
6 1 4
6 4 8
2814
9 5 3
麺麺麺諏麺麺麺麺麺麺
Lp碇…他5I424
咽訓訓4899訓98
不明
肥訓訓型711訓1卿
血澗ST(Soauoneo
nTypo)ftaAp距口sdmわ厩酎”Spr胡、。。戒h同じSTの紐告があるか
L”E…蝿4I377
叫吃吃、謹吃瞳吃40
租名
不明
2測調2咽33羽38
女女男女男男男男男男
卿卿卿唖唾鋤麺趣岬皿
唖唖唖岬岬獅癖麺御趣
NuB分離性
番号年別唾縫塞
国外1例
国内
国内
国外2例(廻境)
儲
国内
図内
国内
儀
国外2例(理境)
内固有の遺伝子座である。それ以外の遺
ター)、勝川千尋(大阪府立公衆衛生研究
伝子座(血清群2,4,5,10の株に由来
所)、金津祐子(和歌山市衛生研究所)、
する〃euAh206、〃euAh207,〃euAh209)は
金谷潤一(富山県衛生研究所)、北川恵美
国外でも見られる遺伝子座であった。
子(石川県保健環境センター)、小嶋由香
(川崎市衛生研究所)、後藤考市(群馬県
E.結論
衛生環境研究所)、佐原啓二(静岡県環境
L、pnei""”〃北臨床床分離株55株につ
衛生科学研究所)、鈴木匡弘(愛知県衛生
いて遺伝子型別を行った。別々の自治体
研究所)、鈴木裕(山形県衛生研究所)、
から届けられた2株は同時期に同一の公
田中忍(神戸市環境保健研究所)、富田隆
衆浴場を利用しており、同じST(新規ST)
弘(千葉県衛生研究所)、中嶋洋(岡山
で、集団感染事例の可能性が示唆された。
県環境保健センター)、長島史子(宇都宮
55株は41種類のSTに分けられ、SBT法
市衛生環境試験所)村上光一(福岡県保
の疫学的有用性が確認できた。15種類は
健環境研究所)、吉田英弘(福岡市保健環
新規STだった。また〃euAルプライマーが
境研究所)(敬称略)の諸氏に感謝いたし
導入されたことによりほとんどの分離株
ます。
の遺伝子型別が可能となった。今後も分
離株の遺伝子型を調べ、分離株の動向を
F.
明らかにしていく必要がある。
1
)
参考文献
Gaia,V,Fry,NK,Afshar,B,Lack,PC,
Meugnier,H,Etienne,J,Peduzzi,R,
謝辞
andHarrison,TG.2005.Consensus
今回解析した分離株を分与くださった
sequence-basedschemefor
緒方喜久代(大分県衛生環境研究セン
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d
168
)
2
environmentalisolatesofLeg""e比
衆浴場等におけるレジオネラ属菌対
p"“加叫フ〃わ.J.Clin・Microbiol.
策を含めた総合的衛生管理手法に関
43:2047-52.
する研究」平成22∼平成24年度総
RatzowS,GaiaV,HelbigJH,FryNK,
合研究報告書.研究代表者:倉文明
LuckPC.2007.AdditionofneuA,the
)
3
)
4
geneencodingN-acylneuraminate
G.研究発表
cytidylyltransferase,increasesthe
学会発表
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JunkoAmemura-Maekawa,MichikoKoyano,
sequence-basedschemefortyping
ToshioYamazaki,MiyoMurai,Makoto
Legionellapne"腕叩フ〃"serogroup1
Ohnishi,andFumiakiKura・Identificationof
strains.J.Clin・Microbiol.45:1965-8.
L電""ellapne"腕叩版わsubspeciesin
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themicroplateDNA-DNAhybridization
page.php
method.The8thinternationalconferenceon
厚生労働科学研究費補助金(健康安
Legione"口,MelbourneAustralia,Oct.-Nov.,
全・危機管理対策総合研究事業)「公
2013.
169