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テクニカルノート
科学と整合する目標設定
(Science-Based Targets)
CDP 気候変動質問書 2016
CDP
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1
+44 (0) 20 3818 3900
www.cdp.net
目次
気候変動質問書における科学と整合する目標設定(SBT)の取扱い ......................... 3
本稿の目的 ............................................................................................................................ 3
Science Based Targets イニシアティブ(SBTI)によるクオリティチェック ................................ 3
科学と整合する目標設定の目的 ............................................................................ 3
SBT イニシアティブ(SBTI)について ................................................................ 4
SBT 情報 ................................................................................................................................ 4
Call to Action ....................................................................................................................... 4
SBT の設定と報告について ................................................................................. 5
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気候変動質問書における科学と整合する目標設定(SBT)の取扱い
本稿の目的
このテクニカルノートでは、新たに設定する科学と整合する削減目標(SBT)及び現在の削減目
標の評価について説明しています。CDPでは、企業が気候科学に沿った戦略や排出削減目標を設
定することを期待しています。それに伴い、2016年のCDP気候変動質問書には、企業が科学と整
合する排出削減目標を設定する動機づけとなる内容が加えられました。
Science Based Targets イニシアティブ(SBTI)によるクオリティチェック
企業には、自社の削減目標をSBTIによる認定を受けることを強く求めています。CDPではSBTIか
らの認定を受けた目標を、科学と整合する削減目標(SBT)であるとみなします。2016年4月15
日までにSBTIに査定申請をすれば、2016年のCDP質問書のスコアリング対象となります。なお、
SBTIの認定がない目標や、前述の締切日までに認定申請が出されなかった目標であっても、CDP
の質問書に記載された開示内容によってはリーダーシップレベルになりえます。
自社の削減目標の査定申請をするには、SBTIクオリティチェックの申請フォームに必要事項を
記入して、こちら([email protected])まで送ってください(締切:2016年4月15
日)。 申請フォームでは、公式査定を受けることを表明するチェックボックスにチェックを
し、明確及び正確に、そして可能な限り全ての項目に記入するようにしてください。情報が不
足していたり不明確な場合は、査定に不要な時間を要してCDP質問書の締切に間に合わない可能
性があります。
CDPは企業の開示負担を軽減するため、質問内容の修正を最小限にすることを目標としています
が、分析に必要な十分な数の情報を収集することも必要です。気候変動質問書はこの相反する
二つの目的を満たす内容となっています。その結果、SBTIが削減目標に求める要件とCDP質問書
が求める要件には異なる部分があります。SBTの採点方法については2016年の回答評価方法をご
確認ください。
本稿に関するご質問ご意見は、こちらまでご連絡ください( [email protected])。
科学と整合する目標設定の目的
近年のGHG排出傾向や緩和政策の効果を鑑みると、地球の気温は4℃上昇のシナリオをたどりつ
つあります。世界の温暖化ガス排出量の大半を占める企業には、グローバルに認められた2℃
目標に沿うよう排出削減の努力をし、さらに気温上昇を1.5℃に抑えられるよう取り組むことが
期待されています。
この目標を達成するために、2050年には2010年と比較して相当程度、排出削減が実現できてい
なければなりません。科学と整合する目標設定手法は、排出削減義務枠を企業ごとに公正に分
散させることを基礎としており、各企業にとって最適な目標を設定するために必要なファクタ
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ーを多く組み込んでいます。詳細についてはSBTIによるSBT設定マニュアルをご参照ください。
このマニュアルはパブリックコメントを募集した後、2016年の春には完成する予定です。
SBT イニシアティブ(SBTI)について
CDPは、SBTI創設に際し国連グローバルコンパクト、WRI、WWFと協働しました。SBTIは現在の削
減目標設定の在り方を変え、各企業への公正な排出削減義務枠の分散を提案し2℃目標(もし
くはそれ以上)の実現を推進します。具体的には次の活動をします。
1. 企業によるSBTへの理解増進、SBT設定およびその実現に必要な情報等を提供する。
2. Call to Actionを通してSBT導入の機運を作り、賛同企業を増やす。
SBT 情報
一部の情報は SBTI から提供されたものです。
 SBT 設定マニュアル– SBT の理解、設定方法、目標達成等について説明しています。現
在このマニュアルはドラフト段階ですが、2016 年前半には完成予定です。
 Sectoral Decarbonization Approach (SDA) – 緩和ポテンシャルや経済・人口増加に伴う
影響を考慮して、セクター別の SBT 設定方法を説明しています。企業による目標算定の
ためにオンラインツールも用意されています。
 Mind the Science – 世界の GHG 排出量の 9%を占める企業による削減目標を双方向ツール
で閲覧ができます。
 CAIT Business – WRI によって開発されたウェブサイトで、企業の排出削減目標を統計
的に閲覧できます。CDP データを使用しています。
Call to Action
このイニシアティブは、企業による SBT への参加、及び参加から 24 か月以内に削減目標を公表
することを促すものです。SBTI は以下の基準から企業の削減目標を評価し、認定を受けた企業
は SBT ウェブサイトで公表されます。
以下の基準は現時点のものです。最新の基準については SBTI ウェブサイトをご確認ください。
SBT 基準
バウンダリ: 削減目標は、企業全体のスコープ1及び2をカバーし、かつ GHG プロトコル・コ
ーポレート・スタンダードで必要とされる全ての温暖化ガスについて設定しなければならな
い。
タイムフレーム: 削減目標は、目標設定の公表日から最低 5 年、最長 15 年のタイムフレームで
あること。
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目標のレベル: 最低でも2℃目標に即した削減目標を設定していなければならない。さらに、
1.5℃目標を目指すことを推奨する。
スコープ3: 企業の全排出量のうち、スコープ3が占める割合が大きい場合(全スコープ合計
の 40%以上)、スコープ3の目標をタイムフレームと共に具体的に設定しなければならない。
目標とするバウンダリは、GHG Protocol Corporate Value Chain (Scope 3) Accounting and
Reporting Standard に定義されるほとんどのカテゴリー (例: 上位3カテゴリー又は全スコー
プ3排出量の 3 分の2)を含まなければならない。
報告: 企業は企業全体の GHG 排出状況を毎年開示しなければならない。
さらに期待されること
企業には長期的目標(例:2050 年)も設定することが推奨されます。
企業には総量目標及び原単位目標の両方を設定することが推奨されます。
長期的な効果を検証するため、成長予測、SBT 方法論から得られた情報、事業や収集データに
おける大きな変化、排出係数の変化等に応じて、目標は見直されなければなりません。場合に
よっては基準年からの再計算が必要になります。
なお、GHG 削減目標を設定する前に、スコープ3の把握をしておくことが望ましいです。
金融機関
金融機関も、スコープ1及び2の目標設定や Call to Action の一環の投資を通して SBT に参加
することができます。しかし、金融機関におけるスコープ3の査定方法が確立していないた
め、SBTI のパートナーは、現在、金融機関の削減目標の認定を行っていません。
コミットメントレターを提出した金融機関は、今後、金融機関の SBT 方法論の構築にご協力い
ただけます。
SBT の設定と報告について
このセクションでは、上記基準(Call to Action の SBT 基準)に関する追加情報を記載しま
す。別段の記載が無い限り、CDP 気候変動質問書の CC3.1a 及び CC3.3b に関連する内容となり
ます。
方法論
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SBT 設定にはいくつかの方法論があります。 Science-Based Target Setting Manual では、全方
法論に共通する概要、各方法論の特徴、どの方法論がどの産業に最も適しているかについて解
説しています。
スコープ
各方法論はスコープ1及び/又は2の目標設定に使用できます。スコープ1の SBT 目標は全て
の方法論で設定できます。スコープ2の SBT 目標は一部を除いた方法論で設定でき、スコープ
1と2は、共に同じ削減径路をたどるよう設計されています。なお、Sectoral Decarbonization
Approach (SDA)もスコープ1と2に使用できますが、両スコープは別の削減径路をたどるよう
に設計されています。スコープ3はデータが限られているため使用できる方法論はごく一部で
す。なお、スコープ3もスコープ1や2と同じような削減径路を辿るような設計となっていま
す。ただし、SDA では軽自動車産業についてのみ、スコープ3独自の削減径路のモデルが用意
されています。
スコープ1と2を合わせて、同じ削減目標
を設定していただけます。例えば、2010 年
から 2030 年にかけたスコープ1+2の総量
削減目標を 30%と設定したとします。この場
合、スコープ1と2、それぞれの削減目標
を設定する必要はありません。なお、
CC3.1a や CC3.1b のコメント欄には手短に設
定根拠(削減努力)を示していただくこと
を推奨しております。設定根拠としては、
エネルギー効率の向上、クリーンエネルギ
ーへの転換、社内における発電等があげら
れます。これら情報は、直接的・間接的排
出を削減する企業努力として、将来的には
評価の対象になる可能性があります。
スコープ3と金融機関
スコープ3のデータ収集と算定方法は非常
に複雑です。そのため、2016 年の CDP 質
問書ではスコープ3の削減目標について評
価をしません。今後、十分なデータが揃う
ようになった際に評価を開始します。
金融機関については SBT の要件が決まって
いないため SBTI による認定は得られませ
ん。しかし、リーダーシップレベルになる
ことは可能です。
今年からスコープ2算定に関して追加質問が設けられました(CDP Technical Note on
Accounting of Scope 2 Emissions をご参照ください)。スコープ2の目標が、ロケーション基
準とマーケット基準のどちらの算定方法を使用しているか回答していただきます。マーケット
基準法で算定し、排出削減につながった場合、将来的には評価の対象となる可能性がありま
す。
バウンダリからの除外
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バウンダリの設定や除外可能な項目についての
一般的な情報については Greenhouse Gas
Protocol Corporate Standard をご参照くださ
い。意義ある削減目標を設定するには、除外を
最小限にすることが肝要です。
削減目標の対象とする温暖化ガスの種類
CC3.1a と CC3.1b では削減目標を CO2e で
記載することを求めており、温暖化ガスの
全種類について記載する必要性はありませ
ん。セメントや運輸等の CO2 以外のガスが
ほとんど発生しない産業は、コメント欄に
削減目標が対象とするガスを明記してくだ
さい。
もし重大な除外があった場合、それが関連しな
いと考えられても、コメント欄に簡潔に記載を
してください。なお、CC8.4a でも詳細を記載す
ることができます(2016 気候変動質問書ガイダ
ンスをご参照ください)。除外について開示することはデータ精度の確保や意義ある目標設定
に重要です。CDP では将来的に、企業に対して除外が適切か否か、外部検証をとっていただく
ことを検討しております(2016 年では不要です)。
タイムフレーム
基準年には遠い過去ではなく、できるだけ最近の年を設定してください。また長期目標は、大
規模な削減を実現する戦略や投資の推進につながるため、設定をすることが推奨されます。
中期目標に加えて長期目標を開示することで、近い将来にどの程度まで削減が進むかを想定す
ることができます。
SBT 設定モデルでは様々な基準年や目標年がありますが、目標年はいずれも 2050 年以降での設
定はできません。
意欲的な目標設定
オフセット
オフセットは SBT では計算に入れないた
SBT 設定方法論の詳細は Science-Based
め、オフセットによる削減量は SBT とは別
Target Setting Manual のチャプター2と3
にしてください。SBT 手法で削減目標を設
をご参照ください。その産業(企業)、地
定する際も、オフセットでの削減予定量を
域、成長予測によって、最適な方法論は異
入れないでください。
なります。各社でそれぞれの方法論のパラ
メーターや強みを評価して選択してくださ
い。その際に、複数の方法論の要素を組みあわせた方が良い場合もあります。 御社では複数の
方法論が適していると判断した場合、最も意欲的な削減目標を設定できるものを採用すること
が推奨されます。それにより、2℃目標達成のために残されたカーボンバジェットの保存が可
能となります。
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総量目標と原単位目標
企業には総量目標と原単位目標の両方を設定することが推奨されています。
総量目標は、世界全体での排出削減を保証する点において最も意義があります。そのた
め、科学と整合する目標設定には最も重要で、全ての SBT 方法論は総量目標の達成を目
的としています。しかし、成長過程にある企業にとってはこの目標を達成するのは時に
困難となります。また、縮小傾向にある企業が総量削減に成功しても、それは環境対策
の成果というよりも、活動の縮小によるものである可能性があります。
原単位目標は必ずしも世界の排出削減には貢献しません。なぜなら、原単位での削減が
達成されても総量では増加していることもあり得るからです。原単位目標は、売上高
等、企業が公表したくない情報を示す場合があります。しかし、企業間のパフォーマン
スを比較する材料になります。
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