商友会ニューズレター OCU BUSINESS ALUMNI NEWS No.6・January 2012 目 次 ●思い出の記……………………………………………… ●OBよりのメッセージ………………………………… ●フォーミュラプロジェクト支援……………………… ●日本・海外(香港)における上場戦略………………… ●市大卒業生を講師とした商友会講座開催…………… ●編集後記………………………………………………… ●2011年度後期 商友会講座に参加して……………… し、当時の会長「井尻雄士」氏より、色々と暖かいご配慮を 思い出の記 していただいた。井尻氏は私とほぼ同年であるが、そんな 商学部昭28年卒 山形 休司 (大阪市立大学名誉教授) 若い人が会長に選ばれる、アメリカ会計学会の競争原理の 貫徹には、驚愕した。もう10年若ければ、このままアメリ 編集子より「学生時代、教員時代、現 カに残って勉強しただろうにと、何度も思った。 在の様子」を書くように求められた。乏 現在の様子、定年の一年前に市大を退職した。それは、 しい記憶の糸をたどって書いてみる。 ガンを患ったからである。私はガンと闘うのでなく「共生」 学生時代、我々市大一期生(昭和28年 しようと考えた。そのためには、精神的・肉体的にストレ 卒)は、杉本町の学舎に入れたのは、卒業式の日のみ、そ スをかけないことである。行雲流水の人生を送るために、 れも本館の講堂にのみ入ることを許された。進駐軍に接収 すべてのことを抛つのである。そして、静かにあるがまま され、大阪市内の小学校を転々として授業を受けた。食べ の人生を送ろうと思った。 るものに不足し、遅れて行けば生協食堂のうどんすら売り 現在は、午前中はお天気であれば、ゴルフの打ち放しに 切れであった。焼け跡の中を小学校の校舎に着き、小さ 行く。往復₆kmを自転車をこぐ。午後は頭の体操で、専 い椅子に苦労したことを憶えている。設備は劣悪であった らパソコンを相手に写真、囲碁、麻雀を楽しんでいる。幸 が、勉強意欲は旺盛であった。講義によく出たし、研究会 いガンは₂度程再発して手術したが、無事で元気に生きて 活動も盛んであり、川合一郎教授の研究会は現在まで続い いる。ゴルフは楽しみと運動の両方に役立つ。 ている。 最後に、私の生きる上でのモットーを書いておく。「謙 研究以外にクラブ活動も盛んで、ボート祭など、本当の 虚であれ」これがすべてである。つまらぬ雑文を読んでい 意味の全学行事であった。私は哲学書を好んで読み、旅行 ただいて、厚くお礼申し上げる。 もよくした。夏には田舎町を好んで旅行し、立山登山もし ―大阪市立大学フォーミュラプロジェクトに ご支援をお願いします― た。冬は専らスキーをした。赤倉や志賀高原が好きであっ た。田舎町の第一歩は山陰の出雲大社が第一号で、大山に 私たちは全日本学生フォーミュラ大会に参戦して も登り、弓ヶ浜の海岸も歩いた。大都会は就職すれば必ず います。この活動では自分たちでレーシングカーを 行けるので行けない田舎町を歩いて、日本の美しさを見よ 企画・設計・製作・評価し、その動的性能と開発コス うとした。 トや商品性を競います。私たちはこの活動を通して、 教員時代、大学院を卒業後、市大の教員になり、簿記、 “ものづくり”の厳しさ、楽しさを学んでいます。毎 外書購読、原価計算、財務諸表論,会計学などの講義を担 年1台の車両を製作するためには多くの学生および支 当した。昭和36年外書講読を始めて担当した年度の学生と 援が必要となりますので、ご支援いただける学生や は、いまでも交流がある。私は、研究者は、歴史的発展的 スポンサー様を探しています。興味を持っていただけ に対象を把握すべきであるとの基本方針に立ち、研究を進 ましたら以下までご連絡いただければ幸いです。 めてきたつもりである。 2012年度プロジェクトリーダー 林 真吾(工学部4回生) 教員時代に最もショックを受けたのは、昭和50年に始め http://www.osaka-cu.com/formula/ てアメリカに渡った時である。アメリカ会計学会に出席 1 商友会ニューズレター OCU BUSINESS ALUMNI NEWS No.6・January 2012 市大卒業生を講師とした商友会講座開催 昨年10月から、商学部の科目として新たに「商友会講 座」が誕生した。この科目は、商学部あるいは市大の卒業 生で実社会の第一線で活躍されている方々を講師として、 実際の経営の現場あるいは長年にわたるビジネスマンとし ての経験を学生に伝授していただくことを目的としてい る。当初の履修希望生は400名近くであったが、₃年生以 上に限定して受講を制限したので、現在239名が受講して いる。 今年の講座テーマは「グローバル社会における経営と期 待される人材」である。グローバル経済の中でどのような 企業経営が必要かとともに、関西経済という地域で活躍さ ₈.栗本友和(㈱ナイス代表取締役社長) 商44卒 れている方々にも関西経済の活性化という視点でも講義い 「中小企業の経営実践」 ただいている。講義の具体的な講師陣とテーマは以下のと ₉.戸奈常光(戸奈公認会計事務所代表) 商38卒 おりである。 「財務分析から見る日本企業評価 企業経営や経済の視点だけではなく、ガンジーの7つの (企業評価のポイント)」 大罪、町の活性化、天王寺の活力の起点となる阿倍野ハル 10.矢追善也(大日本スクリーン製造㈱常勤相談役) 商44卒 カスの魅力、人生成功の秘訣等、内容は多岐にわたってい 「京都企業のグローバル戦略」 る。また、それぞれに人生観やキャリア上での重要なポイ 11.熨斗谷(のしたに)泰司(ソニー㈱グルーバルセールス &マーケティング本部統括部長) 商60卒 ントなども学生に教示いただき、通常では学ぶことのでき ない「ビジネスマンとしていかにあるべきか」という話を 「国際マーケティング戦略について」 聞けることは学生にとっても大変魅力的なことである。 12.柴田洋(柴田公認会計士事務所代表) 商57卒 講義終了後は、数名の学生との交流会を設けており、最 「国際会計基準と企業経営」 初緊張しながら学生が質問しても簡単にかわされてしまっ 13.森井義雄(㈱アスコット代表取締役社長) 商39卒 ていましたが、意見もいろいろと交換できるようになりつ 「企業情報システムの歴史的展開」 (下崎千代子:商学部教授・商友会事務局) つあるのが現状です。12月13日の戸奈先生で年内は終了し て、残るは₄回の講義となりました。卒業生も久しぶりに みる商学部の学生をどのようにとらえられたかは大変興味 2011年度後期 商友会講座に参加して のあるところです。 商学部昭和33年卒 吉田幸雄 【講師陣・テーマ一覧・卒業年次】 10月初め、突然お誘いが係り、はから ₁.岡本直之(三重交通グループホールディングス㈱代表 ずも講座に参画させて頂くことになりま 取締役社長、前近畿日本鉄道㈱副社長) 商45卒 した。役割は、講座の講師の方々へのエ 「公共交通機関の役割と今後の期待される人材像」 スコート役を担っております。講座の約 ₂.尾山基(㈱アシックス代表取締役社長CEO) 商49卒 ₃分の₂が終了したこの時点で、何か感 「アシックスのグローバル戦略」 想をとのことですので、以下に感じたことを述べさせて頂 ₃.花井健(興和不動産㈱顧問、前楽天㈱取締役常務執行 きます。まずは、建設業の会社勤め40年、他の業界には疎 役員、元みずほコーポレート銀行常務執行役員アジ い小生にとって、今まで経験したことのない、色々なその ア・中国総代表) 商52卒 道のベテラン講師の方々のお話を聞かせていただける貴重 「歴史的円高が日本に意味するところー為替が解ると な機会を与えられたことを感謝いたしております。 世界が見える」 (1)講座の雰囲気について ₄.上野昌彦(読売新聞社大阪本社広告第₃部長(前経済部長)) 久しぶりに大学での講義を受けましたが、受講生は就職 「関西経済を20年取材して」経57卒 活動開始の直前とはいえ、私語も無く非常に熱心に講義を ₅.武田勝玄(大阪府河南町長) 受けています。また、受講生の約半分は女子学生であり、 「地域活力に何が必要か」理49卒 講義の後に開かれる講師を囲んでの交流会での質疑応答で ₆.山本文彦(南海電気鉄道株式会社顧問) 商50卒 も、女子学生が非常に活発で熱心であるのも印象的です。 「地域活性化と鉄道業界」 また、大教室(法学棟₃階730号室)正面のスクリーンだ ₇.米田昭子(㈱近鉄百貨店新本店準備本部統括部長) けでなく、パワーポイントを駆使しての映像は、補助スク 「小売業界の戦略と女性のキャリア構築」文55卒 リーン₄台にも映し出されており、約50年前の私自身の在 学時代を回顧して時代の変遷を感じました。 2 商友会ニューズレター OCU BUSINESS ALUMNI NEWS No.6・January 2012 (2)講座内容と時間について は、会計実践・学、すなわち時々理論に戻って実践を振り テーマに対して講師の方々は、事前に色々と講義内容を 返ることが極めて重要だと考えています。 豊富に準備されています。実務経験が皆無に近い学生にそ 先日も商友会講座で決算書分析ツールの話をしました れらを時間内に伝達することは非常に難しく、内容によっ が、これは若い頃からのライフワークで、夢でもありま ては、貴重な内容が少し消化不良かなという場合も見受け す。絶えざる夢の完成が私に元気を与えてくれます。 られます。しかし、この講義を契機にして、学生自身の更 私の好きな本に「オプティミストはなぜ成功するか」と なる自己研鑽するキッカケとなることは大いに期待される いうのがあります。日々の仕事の困難に出会った時、悲観 効果です。 的でなく、乗り越える方法を直感的に見つけるのがオプ (3)講座の結果についての受講生の感想について ティミストです。今日まで仕事ができたのは、前向きにプ 今回の講座について受講生は講義内容についての感想や ラス思考で向かい合った結果かと思っています。 小テストを一枚の用紙に記述しているが、その感想の結果 私の恩師、木村和三郎先生はいわゆる批判会計学の泰斗 はどうであっただろうか? でしたが、実業界を見る慧眼は鋭く、最適の仕事の場を与 (4)商友会講座の効果について えていただいたことに心から感謝している次第です。 在学中に各業界で活躍されている先輩の講座を聞く事 は、学生の今後の進路を決める上で、非常に役立つし、そ 「今も大学の厩舎に足を運ぶ」 こに歴史ある商学部の後輩に対する先輩よりの後方支援と しての意義があると思います。 商学部昭和52年卒 北 博幸 年が明けてからも、この講座がまだ4回残っております 今から35年前、1977年の春の出来事は今でも記憶に鮮明 が、非常に楽しみにしております。 です。₃月の合格発表はさすがにうれしかった。自分の受 験番号が見つかったとき、心配をかけた両親への公衆電話 の順番待ちが長く感じられました。こういう情景は今はも OBよりのメッセージ うない。大学の景色も今と違っていた。専門の校舎では高 い建物はなかった。太い棕櫚か椰子の木は、きちんと存在 「会計士としての半世紀人生を振り返って」 感がありました。私は馬術部に真っ先に入部しました。 まず馬に乗りたかった。試合成績は良くはなかったが、 商学部昭和38年卒・経営修士昭和40年卒 戸奈 常光 今もOBの役員として大学の厩舎に足を運んでいます。だ 昭和40年(1965年)、学業を終えてイ から、専門校舎もグランドも馬場も厩舎もその風景が今も ギリス系の会計事務所に入り、その 好きです。就職は商学部とは畑違いの製薬会社(旧藤沢薬 年、幸運にも公認会計士2次試験(当 品、現アステラス製薬)の営業一筋で、一定の成果があっ 時)に合格し、外国会社の日本法人や たのか支店長までやらせてもらいました。昔ほどの学閥は 日本支社など小さな会社の決算書や税 なかったが、会社のOB会も必要と思いました。それだけ 務申告書を作る仕事に従事しました。 大学や商学部との縁が濃かったということか。皆さんも学 この結果を親会社に監査報告もしていましたから自分で 生生活、社会人のフレッシュさを大切に頑張ってください。 作った書類を自分で証明するような今考えるとおかしな状 況が数年続きました。このスモールビジネスの経験が、40 年後に開業した現在の個人事務所の税務申告等で本当に役 だっていますので、人生は解りません。 日々の仕事に全力で努力すれば必ず人生のどこかで役立 つものです。若い頃は与えられた仕事に余り疑問無く知識 と経験を摂取する姿勢が重要だと思っています。 数年してアメリカの会計事務所と合併し、本格的な監査 経験が始まりました。それは厳しい日本人パートナーに罵 声を浴びせられながら仕込まれました。当時、日本の監査 は揺籃期でしたので、世界的な会計事務所で会計理論と監 査技術を習得できたのは幸いでした。造船所、精油所、大 工場、それに今問題となっている原子力発電所など多くの 現場を見ることも出来ました。日本の成長期の時代に得た 先進の会計理論と実務経験は、その後の人生の基礎となり ました。 10年程で英語力に限界を感じて、日本の監査法人に移り ました。定期的に開催される監査学会に出席して、学者の 方の話を聞くといつも新しい発見がありました。会計実務 大学の馬場にて 3 商友会ニューズレター OCU BUSINESS ALUMNI NEWS No.6・January 2012 だきたいのは、香港の資金調達額が32,024百万ドルと非常 日本・海外(香港)における上場戦略 に高い水準にある点にあります。 先ほど日本の上場社数の推移の図をご覧いただきました 今回は、私が現在携わっている上場戦略についてお話を が、香港における上場社数の推移もご覧いただきましょ していきます。タイトルにあがっておりますとおり、日本 う。 と香港における上場戦略の話になりますが、なぜ日本だけ でなく香港での上場戦略がテーマに入っているのか。そこ を皆様に御理解いただけるように重点的に説明していきた いと思います。 まず、日本における上場のメリットとしましては、上場 することによりその会社の知名度が上昇します。知名度が 上昇することにより、新規取引が行いやすくなり、また、 優秀な新卒が採用しやすくなります。また、今までなら社 長が連帯保証人となって銀行から融資を受けていた場合で 2008年のリーマン・ショック等、世界経済を震わす出来 あっても、上場することによって社長が連帯保証人から外 事があったにもかかわらず、香港においては2000年から れることができます。 2009年において上場社数がほとんど変動しておりません。 しかし、日本で上場した場合、以下のようなデメリット 香港市場における上場社数が安定しており、世界でもト も存在しています。まず、日本では、上場するまでに厳し ップレベルの資金調達額を得ているのは、香港市場に以下 い審査をクリアしなければならず、また、その審査をクリ のような特色があり、香港市場に上場することに様々なメ アするのに長い期間を要します。そして、上場までのコス リットがあるからです。 トが高く、このような不況下においては上場したところで まず、香港市場の特色といたしましては、香港市場は、 得られる資金も限られてきます。さらに、上場すれば監査 中国やシンガポールといった他のアジア諸国への登竜門と 役を3人以上置く必要があるなど、役所の規制が非常に多 なっており、マーケット・テストに最適の市場です。すな くなっております。 わち、日本企業がより多くの利益を獲得しにアジアに目を このようなデメリットが目立ち、日本における上場社数 向けた場合、いきなり中国等に進出するよりも、香港で の推移は以下の図のようになっています。 マーケット・テストを行い、成功した場合に中国等に進出 するほうがカントリー・リスク等様々なリスクを考慮する と、無難であるといえます。このように、現時点において は、香港市場は非常に活発な市場であるといえます。 そして、香港市場に上場するメリットといたしまして は、日本で上場した場合よりも明らかに上場審査のハード ルが低い点が挙げられます。また、先ほど申し上げました 香港市場が非常に活発な市場であるところに付随して、上 場後、非常に大きな資金調達が可能となります。さらに、 日本のような法的な縛りも少なく、税率においても日本と この図をご覧になられて明らかなとおり、2007年から 比べ非常に低い税率となっております。 2009年にかけて、日本の上場社数は急減しております。 香港市場に上場することによって、以上のような日本に また、世界の上場における調達額は以下の図のようにな はない恩恵を受けることが可能となります。皆様方の会社 っております。 の発展のためにひとつ、香港上場を考えてみてはいかがで しょうか。 US 商学部昭和57年卒 柴田 洋 今回のニューズレターは図らず も会計分野の特集となりました。 商学部の卒業生で会計士として活躍されている方々は数 多く、 現役生もその伝統を受け継いでもらいたいものです (下崎)。 編 集 後 記 商友会ニューズレター No.6 2012年1月25日発行 日本の新規上場時の調達額は243百万ドルであり、他国 発行:大阪市立大学商友会 住所:〒558-8585 大阪市住吉区杉本3-3-138 大阪市立大学商学部内 編集担当:羽原顕三(S38卒)、下崎千代子(S52卒)、大西基勝(S52卒) 問い合わせ先:[email protected] と比較して非常に低い水準となっております。日本にも注 目していただきたいところですが、もう一つ注目していた 4
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