セクター分析 - 第一生命保険

セクター分析
産業別収益動向
建設
住宅
減益
不動産
横ばい
小売
横ばい
運輸
横ばい
減益
前 回
電力
繊維
横ばい
鉄鋼
紙、パルプ
横ばい
非鉄
横ばい
造船
横ばい
電機
増益
自動車
増益
化学
石油
横ばい
精密
増益
食品
増益
機械
増益
医薬品
横ばい
前 回
横ばい
横ばい
外食
増益
横ばい
(注)
業種の代表企業群について、水平線は経常収支均衡水準、矢印は今後1年間の方向感を示す。
増益・減益はそれぞれ経常利益が 10%以上変化することを示す。
トレンドに変化のあったセクターのみ前回見通しを併せて掲載している。
今月の注目セクター
食品 横ばい
台湾の口蹄疫の影響は1∼2年続く
今年3月に台湾で発生した口蹄疫(豚の伝染病)は、1ヶ月間で国
内豚肉価格を約25%ほど引き上げた。台湾産豚肉は、日本の輸入量
の17%を占めており、輸入禁止による影響は様々な形で現れている。
一部の百貨店やスーパーでは豚肉の小売価格を引き上げたり、豚肉
需要の代替として牛肉の販促を行っているが、口蹄疫の影響はハム
メーカーなど、豚肉を原料とする食品メーカーの収益を圧迫している。
養豚場の自社保有や、原料調達方法の多様化などにより、原料価格の
上昇に対応している大手メーカーに対し、中小のメーカーの被る影響は相対的に大きいと推測され
る。97年度、98年度に増収増益を予想していたメーカーでは増益分が吹き飛び、一部のメーカー
では赤字転落する可能性も考えられる。
82年にも、当時日本の豚肉輸入先トップシェアを誇っていたデンマークで口蹄疫が発生した。
この時は1年半の禁輸措置が取られ、現地調査によって安全が確認された後、輸入は再開されてい
る。今回も同様に2年ほどの禁輸措置が予想されているが、もし長期化するようであれば、ハム
メーカーへの影響も大きくなると思われ、今後の動向が注目される。
(第一生命 投資調査部 高田 慎也)
電機 業績好調の陰で跛行色あらわれる民生電機
増益
96年度の民生電機主要各社は、円安効果により大幅に収益を改善さ
せた。97年度も現在の為替水準が続くと仮定すれば、更に収益を伸ば
すことは必至である。
しかし事業環境は必ずしもバラ色とは言い切れない。例えば価格動
向について、或る主要メーカーでは、海外市場のVTR平均出荷価格が
現地通貨ベースで前年同期比20%弱低下した模様であり、価格動向の
厳しさは内外ともに共通している。台数ベースでも、国内では消費税
増税等の影響、海外では北米景気の減速懸念など、幾つかの不安要素を抱える。
このような環境にあって、ユーザーニーズを捉えた製品開発力やブランド力を備えた企業と、そ
うでない企業との間では、円安メリットを除いて分析した業績動向に跛行色が現れてきている。昨
年度はDVDやCS放送の立上り等に象徴されて「デジタル化元年」と言われたが、これらによってデ
ジタル・情報家電などの新たなニーズを取り込めた企業では、力強い収益の伸びを示している。
今後、円安効果が薄らいでいく一方、デジタル化などの流れは一層加速することが必至である。
新たな事業機会の獲得能力如何で、中期的に収益格差が顕在化してくるものと思われる。
(第一生命 投資調査部 横山 征至)
鉄鋼 海外需給に注目集まる鉄鋼業界
横ばい
96年度の高炉各社の決算は、鋼材需要の増加と合理化効果によって
増収・増益を果たし、97年度も各社増収・増益を見込んでいる。
粗鋼生産動向をみると、公共関連需要の減少がマイナスに寄与する
ものの、同時に円安による輸入の減少が想定され、トータルの国内向
け鋼材生産は若干の減少に留まる見通しである。一方輸出は、東南ア
ジアの在庫調整の一巡と中国向け輸出の回復がプラスに寄与すると思
われる。さらに円安による輸出価格(円換算)の上昇と、合理化によ
るコストダウンの継続により、増収・増益は確保できるだろう。
注目すべきは海外の動向である。特に下期以降にアジア地域で計画されている生産設備の立ち上
がりには注意を要する。アジアの需給緩和は国際市況の軟化要因となる一方、最近の国内市況は国
際市況に連動する面が強い。これは輸出への影響等と相俟って、国内メーカーの業績にとってリス
ク要因である。多くの関係者の見方は、供給能力拡大は需要の伸びで吸収可能というものであるが、
海外需給の状況については注目していきたい。
(第一生命 投資調査部 山本 敏弘)
ニュービジネス 法人向け通信サービス業の出現
4月8日から千葉県幕張メッセで行なわれた「コムデックス・ジャパン」は、ネットワーク・コン
ピューティングの発展形として、モバイルの取り込みを強く印象づけるものだった。
この4月にはPHSの32Kビットでの高速データ通信が始まった。企業内に基地局を設置すれば、
PHSは社内では内線電話になり、そのまま外に出ると通常のPHS端末機として使える。また携
帯型のパソコンに繋げば、いつでもどこからでも会社のLANやインターネットにアクセスできる
ようになった。
ハードの通信インフラが整備された今、これらの機器をより使いやすくする通信サービス業の登
場が待望されている。例えば、社用電話と私用電話を区別して料金を徴収するシステム、端末ごと
ではなく電話をかけた使用者別に課金するシステム、電話の使用状況を分析するサービス、複数の
電話会社への支払いを一括して支払代行するサービスなどがビジネスとして始まろうとしている。
携帯電話・PHSは思わぬスピードで通信に対する個人需要を掘り起こした。法人向け新通信
サービス業の登場が、未だ眠っている莫大な法人需要をこれから揺り起こすものと思われる。
(第一生命 投資調査部 水波 悟)