53号 - 名古屋市立大学大学院医学研究科・医学部

Nagoya City University Hospital Clinical Trial Management Center
名古屋市立大学病院
臨床試験管理センターNEWS
編集人: 名古屋市立大学病院 臨床試験管理センター センター長 藤井 義敬
内線:2898,052-858-7215 FAX:052-853-8321 e-mail:[email protected]
http://igaku.med.nagoya-cu.ac.jp/hosp/cr/index.htm
No.53 Apr.2009
臨床研究、がんばりましょう!
産科婦人科部長 杉浦 真弓
2008 年 4 月から名古屋市立大学病院 医薬品等臨床試験審査委員会(IRB)委員をさせてい
ただいています。毎月開催される委員会の 1 週間前に IRB 審査資料の配布があり、研究者の皆
さんから提出された臨床研究実施計画を審査しています。時に、海外では使用薬であって国内
未承認のものを使用せざるを得ない緊急時などにも緊急 IRB を開催して審査を実施していま
す。毎回、多くの申請があり、委員としては IRB 前の査読に忙しいですが、名古屋市立大学病
院の臨床研究が活発であることをうれしく思います。
本学ではまもなく IRB 申請の医薬品等を用いる(介入を伴う)臨床試験のみならず、大学院
医学研究科倫理審査委員会、ヒト遺伝子解析研究倫理審査委員会においても、これまでの毎年
度始めの利益相反自己申告に加え、臨床研究実施計画毎に“
「臨床研究に係る利益相反」審査
自己申告書”の提出が義務化されます。申請書類が膨大でうんざり、というご意見もあるかと
思います。私も IRB 委員になる前は、事前審査会議(peer review;同等者による審査)の段
階でくじけそうになったこともあります。
われわれ研究者主体の臨床研究の場合、ヘルシンキ宣言は言うまでもなく、
「臨床試験に関
する倫理指針」
(平成 20 年 7 月全部改正)を遵守しなければなりません(公的資金申請には上
記の指針遵守が要件)
。論文投稿の際には、IRB 承認および実施計画事前登録の手続きが必須
でもあります。IRB は、被験者(患者)さんの権利と安全確保を守って臨床研究を行うための
砦ともいえるもので、研究者の皆さんにとっても重要な委員会です。IRB 審査の手続きには、
臨床試験管理センターホームページの活用、臨床試験管理センター所属員(臨床研究コーディ
ネーター(CRC)さんなど)による支援が得られます。臨床試験管理センター部門の開設以来
6年間、企業依頼治験および医師主導臨床試験などの臨床研究が一元管理され、円滑に行われ
ていると思います。
最近は医師のみならず、看護師さんからも介入を伴う臨床研究の申請があります。病院で働
く皆さんは目の前の患者さんの診療に忙しい毎日ですが、臨床研究は近い将来の多くの患者さ
んに還元される科学的データの創出であり、医療の進歩に役立つ重要な研究活動です。われわ
れ大学病院で働く者の使命でもあります。皆さん、臨床研究をがんばりましょう。
❀❀❀ No.53 4 月号の話題 ❀❀❀
❀ 臨床研究 がんばりましょう!
❀ 第 9 回東大病院臨床試験セミナーに参加して
❀ 4 月 30 日 第 18 回(平成 21 年度第 1 回)臨床試験実施セミナー開催のご案内
❀ 臨床研究デザインの留意点としての 4 項目
❀ Q&A「有害事象の併用薬を症例報告書に記載する理由」
❀ Q&A「治験参加をお考えいただく際に、重要なことは?」
❀ はじめまして、新任の“臨床研究コーディネーター”です。
第 9 回東大病院臨床試験セミナーに参加して
― 臨床試験のパラダイムシフトが臨床現場に及ぼす影響 ―
日時:3 月 27 日、場所:東京大学医学部鉄門記念講堂
東大病院臨床試験部主催の標題セミナーは、臨床試験におけるパラダイムシフト(新しいモデ
ル)が臨床現場に及ぼす影響というタイトルで、3 部構成で行われました。
第 1 部「グローバル化が臨床現場に及ぼす影響」では、国際共同治験は効率的・短時間で必要
なデータが収集できること、開発のコンセプトの統一が図れる利点に対して、投与量・病名など
日本の医療現場になじみにくい設定があるなどの問題点もあることが理解できました。また、デ
ータマネージャー(DM;統計学の知識を有し実施計画書を理解してデータの質確保)の役割の
重要性や各大学病院間での臨床試験アライアンス(グループ化)の必要性が強調されました。特
に、サンプリングモニタリング(SDV;原資料との照合)の実例として、基準準拠の特別な方
法あるいは 1、3、5 例目のサンプルデータを 100%採取し、5 例目までに合格ならば以降 5 例目
毎にサンプリングを行う方式のように特別なツールを必要としない手順などが紹介されました。
第 2 部「多様な臨床試験デザインが臨床現場に及ぼす影響」では、アダプティブデザイン(適
合デザイン)の導入により試験中に集積されたデータを基に中間解析を行い、以後の試験方法に
修正を加えるなどの説明が行われました。また、分子標的抗がん剤の有効性評価には腫瘍の減少、
無増悪生存期間の延長に加えバイオマーカー(生物学的変化の指標)そのものを用いた評価など
が行われることなど説明が行われました。
第 3 部「アカデミア主導による治験・臨床試験の推進」では、各大学病院での臨床試験アライ
アンスの業務手順、依頼者との協力関係および実施計画説明会を開催して治験・臨床試験を推進
していく重要性などが説明されました。
本セミナーに出席して『臨床研究に関わる倫理指針』などが臨床試験の妨げにならないよう研
究者への支援システムの構築が大切であることなどを再確認する機会となりました。本院にて開
催される臨床試験実施セミナーについて、より一層の充実を図る必要があると思いました。
(副センター長 鰐部 昌彦)
第18 回 (平成 21 年度 第 1 回)名古屋市立大学病院
臨床試験実施セミナー開催のご案内
(主催:名市大病院 臨床試験管理センター)
日時:平成 21 年 4 月 30 日(木)17:30~18:30
場所:病棟・中央診療棟 3 階 大ホール
演題:① 医薬品等を用いる臨床試験実施について
② 臨床試験における役割分担 ~ CRC 業務の紹介~
★ 臨床試験を担当されます医師の皆様の要件として、「臨床試験実施セミナー聴講証番号 H 20-・・-・・」
を有していることがあります。「聴講証番号 H19-・・-・・」の皆様には、平成 21 年度の上記セミナーにご
出席いただき、「H 21-・・-・・」を入手されますようご案内させていただきます。
★ 平成 21 年度臨床試験実施セミナーの開催時期として、8 月、11 月、翌年 1 月が予定されています。
★ 「臨床試験実施セミナー聴講証番号 H 20-・・-・・」を有する皆様が上記セミナーにご出席の場合は、
平成 22 年 3 月に新聴講証番号「「H 21-・・-・・」としてお手元に届けられます。
<臨床研究デザインの留意点としての 4 項目>
ICRWeb スライド一部改変
① 明らかにしたい仮説は何か?
・Clinical Question を「疑問文」で書いてみる。
② 意味がある仮説か?
・研究の結果、Clinical Decision Making が変わるか?
③ 標準治療は何か?
・評価したい治療のどこが「未確立?」
④ どういう結果が出れば「良い治療」とするか?
・Decision Criteria の明確化
(どれくらいの優越性か、どれくらいの非劣性か)
臨床試験
A B C !
Q& A
集
Q
31
A
治験実施期間中に起こった有害事象(被験者さんに生じたあらゆる好ましくない事象)に使用した
併用薬についての情報を、治験依頼者は症例報告書(CRF)に詳細に記載することを求めます。し
かし、実際には、新薬の承認申請の調査対象である「総括報告書」には併用薬の記載は、使用『あ
り』と使用『なし』の区別しかなされず、詳細な情報は表記されません。にもかかわらず、治験
依頼者が併用薬の詳細な情報を求めるには訳があります。
それは、適合性調査(総括報告書に記載される集計・解析データの信頼性を保証する調査)において
治験実施データの信頼性を確保するためです。併用薬は、有害事象と治験薬の関連性を判断する
材料になりますし、有害事象の発現や症状の程度を裏付ける情報となります。医師等に調査記載
が求められて煩雑な作業に思えることですが、詳細な記載は“データの信頼性を保証する”重要
な作業なのです。
Q
32 患者さんに治験参加をお考えいただく際に、重要なことは?
A
有害事象の併用薬を症例報告書に記載する理由
治験参加をお考えいただく際、患者(被験者候補)さんには“治験の目的および治験の具体
的な方法など”を説明します。その内容を理解して、先進治療ともいえる治験(新薬誕生など
の手続き)に自ら参加することを選択・同意いただくことが重要と考えています。日常診療に
加えて症状・検査値などの「異常が無い」ことの確認など多くの医師評価および説明が必要で
あることより院内滞在時間が通常より長くなる傾向があります。治験参加中の診察は、薬の候
補(治験薬)の有効性・安全性を確認する機会でもあります。このため、治験参加時には治験
薬と同じ薬効の薬は使えない(治験薬の効果に影響を与えるため)
、薬局の購入薬についても
制限がある場合があるため、医師およびコーディネーター(CRC)は、治験の説明時に他の医療
機関に受診の場合はその治療状況や使用薬剤などを確認するという重要な作業を行います。こ
のように、医療者側には過去および現在の治療歴・使用薬の情報を認識して適正に治験を遂行
することが求められています。治験参加時の問診は、治験実施データの信頼性を保証する重要
な作用なのです。被験者候補の患者さんに“創薬ボランティア”としてご協力いただける気持
ちを重く受け止め、感謝して 1 日も早い新薬誕生に努めています。
(CRC 坂美子)
★★ はじめまして、新任 臨床研究コーディネーターです。
臨床研究コーディネーターの前田圭子(看護師)です。
この 4 月から当センターでお世話になることになりました。看護師として、血液内科
(造血細胞移植センター)
・小児科を経験した後に、治験コーディネーター(CRC)とし
て血液内科・化学療法部の第Ⅰ相試験・小児科・老年科・消化器外科(抗がん剤)で多
くを経験させていただきました。これからは治験以外の医師主導臨床試験も含めて臨床
研究コーディネーター(CRC)として臨床試験の円滑な実施を支援したいと思います。
CRC の業務は多岐にわたります。治験で重篤な有害事象が発生した場合、治験実施計
画書で定められた治験責任(分担)医師の皆さまの業務を支援すること以外にも、治験
に参加いただいている患者(被験者)さん・そのご家族への精神的ケア、入院病棟の看
護師の皆さまへの治験実施に関る説明等、CRC には短時間に平行して多くのタスク(仕
事)を求められます。それでも、私はとてもやりがいのある職業だと感じていますし、
CRC の存在なしには「質の高い臨床試験」の遂行は困難だと思っています。
医師主導治験(効能追加などを医師自らが治験と同様に行い、国の承認を得るデータ
創出の試験)も含め、まだまだ未経験の領域の治験等もありますが、1 日でも早く当病
院のシステムを覚えて、被験者さん・臨床試験実施チームの一員となり、院内の関連部
門との調整等を行えるよう鋭意取り組んで参ります。
今後ともご指導賜りますよう、宜しくお願い申し上げます.
臨床研究コーディネーターの萩原麻弓里(薬剤師)です。
本年 4 月より、当センターで臨床研究コーディネーター(CRC)として働かせていただ
くことになりました。これまでは、誕生した薬を適正に使用する薬剤師として経験を重
ねてまいりました。この経験を生かして、新薬誕生の前の創薬の段階から関れる CRC と
なって、眼科、関節リウマチ、肝炎などの疾患が対象の治験を支援させていただいてき
ました。CRC は、治験チーム(被験者さん、医師、CRC、看護師、臨床検査技師、放射線
技師、事務・医事業務担当など)の車輪をスムーズに回すための潤滑油のような役割を
担っていると考えています。この 2 年間の CRC としての経験を通して、治験を取り巻く
環境は、EDC(電子症例報告書)や国際共同治験など新たな流れが加わり、より着実に実
施すること、迅速性に実施することが求められてきていると感じています。そして、円
滑でより安全な治験の遂行には、CRC の役割がより一層重要になっていくのを実感して
います。
精一杯がんばっていきたいと思いますので、何卒宜しくお願い申し上げます。
【編 集 後 記】
当病院 臨床試験管理センターは、臨床研究および使用成績調査の手続き等を一元管理する部門として、受
付・契約・交付等の事務局業務および研究審査委員会(IRB)事務局業務の他、臨床研究コーディネーター(CRC)
による臨床試験実施の支援を行って開設 7 年目を順調に迎えることができました。毎月開催の有害事象評価会
議および事前審査会議には各診療科臨床試験管理センター登録医師の委員の皆様にご協力いただいています。
受理文書の「申請書」等には、副作用報告(薬事法上の自発報告)
、使用成績調査(通常診療における安全性の
調査)の他、治験 (新薬誕生手続きとしての企業依頼の臨床試験)、製造販売後臨床試験(医薬品承認後の検
証的試験)に係るものなど約 60 種類にわたります。平成 21 年度 4 月より新任2名が加わる 6 名の固有職員
CRC が臨床試験の質向上を目指して被験者さんと共に外来診療棟、中央放射線部、中央臨床検査部、
薬剤部、医事課などにて業務を担当致します。新しい治療法の確立に貢献して患者さんの治療に
役立てるよう努めたいと思います。皆様のご理解、ご支援を引き続きよろしくお願いいたします。