∑ ミクセル分解法を用いた低空間分解能画像による土地被覆分布計測に関する

ミクセル分解法を用いた低空間分解能画像による土地被覆分布計測に関する研究
Study on a measurement of land cover distribution from coarse spatial resolution
images using un-mixing methods
沖一雄,○植西マイケル高照,大政謙次(東京大学),田村正和(国立環境研究所)
Kazuo OKI, Takateru M. UENISHI, Kenji OMASA (The University of Tokyo), Masakazu TAMURA (NIES)
Abstract: A practical un-mixing method for mixed pixels of coarse resolution images has been proposed. This
method utilizes high resolution images, such as Landsat TM images, in order to determine endmembers for
mixed pixels in coarse resolution images, such as NOAA AVHHR images. In this study, the actual land cover
distribution was measured from NOAA AVHRR images of Siberia’s wetlands. Furthermore, a validation
analysis was practiced.
keywords:
un-mixing method, Landsat TM, NOAA AVHHR, endmember, Siberia wetlands
1. は じ め に
このモデルから a を算出するには,まず,Landsat TM
広域の土地被覆分布を精度良く評価するためには,低空
画像を基準として NOAA 画像の幾何補正を実施する。次に,
間分解能画像を必要とし,低空間分解能画像から詳細な土
Landsat 画像における 1 ピクセルは全て一様なカテゴリー
地被覆情報を抽出する必要がある。現在までに,このよう
で覆われていると仮定し,k 種類のカテゴリーに分類する。
なピクセルデータから各ピクセルに占めている複数カテ
ここで,Landsat 画像により評価された土地被覆分布を
ゴリーの面積比率を推定しようとする手法(ミクセル分
NOAA 画像に重ね合わせ,NOAA 画像における各ピクセルの
解)がいくつか提案されている。
土地被覆面積比率 ah を算出する。さらに,未知である NOAA
従来のミクセル分解手法ではエンドメンバーが既知で
画像における各カテゴリーのエンドメンバーを m l とする
なければならないなどの問題があった。本研究では,対象
と,NOAA 画像における各ピクセルの示す観測分光ベク
地域の低空間分解能画像(NOAA AVHHR 画像)と重な
トル pl は,
る高空間分解能画像(Landsat TM 画像)を用いて各カテ
ゴリーの平均分光ベクトルを算出し,これをエンドメンバ
ーとして低空間分解能画像の各ピクセルにおける土地被
k
p l = ∑ a jh ⋅ m jl
(4)
m jl ≥ 0
(5)
j =1
ただし,
覆カテゴリーの決定や土地被覆カテゴリーの面積比率を
と表せる。(4 )式において未知である各カテゴリーのエ
評価する手法を確立した。さらに,低空間分解能画像の各
ンドメンバーml を,(5)式の条件下で最小二乗法により
ピクセルにおける土地被覆カテゴリーの決定や土地被覆
推定する。最後に(4),(5)式により評価された NOAA
カテゴリーの面積比率を推定する提案手法により,NOAA
画像における各カテゴリーの分光ベクトル m l を(1)式
画像からシベリア湿原エリアの土地被覆分布計測を行い,
の m として,NOAA 画像において未知である各カテゴリ
精度評価も行った。
ーの面積比率 a を QP 法により推定する。
2. 手法
3. 結 果 お よ び 精 度 検 証
分光ベクトルの線形モデルとは,ピクセル内に k 種類
NOAA 画像のミクセル分解のカテゴリー数を 8 および
の面積比率が a で存在するとき各ピクセルの示す観測分
3 カテゴリーとした。8 カテゴリーは Fig. 2 に示している
光ベクトル P が各カテゴリーを代表するエンドメンバーm
ものによって構成されている。Wetland 1 は,ヨシが優先
によって次式で与えられるモデルとする。
的に含まれている。さらに,Wetland 2 は,スゲが優先的
k
P = ∑a jm j
(1)
aj ≥ 0
(2)
j =1
ただし,
k
∑aj = 1
j =1
(3)
に含まれている。また,3 カテゴリーは Fig. 4 に示してい
るものによって構成されている。これらのカテゴリーから
得られたデータの分解誤差を Landsat TM データの分類
結果と比較し,RMSE で評価した(Fig. 2, Fig. 4)。
8 カテゴリーの場合,植生によって分解精度は異なった
が,特定のカテゴリーについて解析を行う場合有効である
手法では各カテゴリーの面積を定量的に推定できること
ことを示せた。今回の結果では,wetland 1 と water
を示せた。Fig.3 には 1 例として,推定された植生の被覆
(Fig.1)が最も精度良く推定された。Wetland 1は誤差
率を示した。
が 12∼13% で,water が 9∼16% だった。すなわち,研究
対象がヨシや水の場合,低空間分解能画像により面的にそ
れらを精度良く推定できることを示せた。従来においては,
4. まとめ
従来のミクセル分解手法における問題を解決するため
NOAA 画像のような低空間分解能画像からでは大まかな
に,対象地域の低空間分解能画像と重なる高空間分解能画
植生などの有無しか判別できなかったが,本研究のミクセ
像を用いて低空間分解能画像のエンドメンバーを算出し,
ル分解法を用いれば広範囲でヨシなどの解析が容易とな
低空間分解能画像の各ピクセルにおける土地被覆カテゴ
る。このことは,小さな土地被覆の変化を本手法により評
リーの決定や土地被覆カテゴリーの面積比率を評価した。
価することが可能であることを意味している。
また,本手法の誤差評価も行った。
一方,3 カテゴリーに分解した場合も,低空間分解能画
像により詳細な土地被覆変化を評価できることを示せた。
今後はさらに分解精度の向上を目指していきたいと考
えている。
従来では NOAA 画像において,NDVI を算出し植生を評
価することが多いが,NDVI では植生の量が相対的にしか
参考文献
把握できないという問題があった。また,NDVI 以外に植
沖一雄・大政謙次, 2000:低分解能画像のためのエンドメ
生等を評価する手法として VSWI があるが,
NDVI 同様,
ンバー決定法. 日本農業気象学会 2000 年度全国大会 講
VSWI はあくまでも指数であるため,植生・土壌・水の相
演要旨,B01,124-125.
対量しか知ることができない問題がある。これに対し,本
100
percentage [%]
80
60
40
20
0
RMSE
wetland 1
wetland 2
13.3
25.2
grassland evergreen
26.6
19.6
deciduous agricultural
urban / soil
trees
area
37.0
36.7
18.5
category
Fig. 1. Comparison of un-mixed NOAA image (left) and
classified Landsat image (right) (water )
Fig. 2. RMSE (8 categories)
100
percentage [%]
80
60
40
20
0
RMSE
vegetation
20.5
urban / soil
17.3
category
Fig. 3. Comparison of un-mixed NOAA image (left) and
classified Landsat imaged (right) (vegetation )
Fig. 4. RMSE (3 categories)
water
15.7
water
16.4